JP4382167B2 - 火力発電所排水の処理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、火力発電所排水の処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ペルオキソ硫酸、ヨウ素酸、セレン酸などの酸化性物質を含有する火力発電所排水を、効率的に生物脱窒処理することができる火力発電所排水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所においては、排煙脱硫排水、復水脱塩排水、一般排水など種々の排水が発生する。排煙脱硫排水には硝酸性窒素、亜硝酸性窒素が含まれ、復水脱塩排水にはアンモニア性窒素が含まれるので、これらの排水は脱窒処理により窒素を除去する必要がある。火力発電所において発生する種々の排水は、状況に応じて別々に処理されたり、あるいは、混合して一括処理されたりする。
排煙脱硫方式がスーツ混合型の場合、排水は有害物質として重金属類、フッ素、窒素などを含み、さらに酸化性物質としてペルオキソ硫酸、ヨウ素酸、セレン酸など、いわゆる酸素酸を含有する場合が多い。排煙脱硫排水は一般的には排水貯槽より凝集沈殿処理、ろ過処理を経由して生物脱窒処理に送られ、さらに凝集沈殿処理及びろ過処理を経て処理水槽へ送られる。しかし、この処理フローによると、生物脱窒処理工程における窒素除去機能がしばしば低下し、安定して火力発電所排水の処理を行うことが困難であった。
また、火力発電所排水中に含まれるペルオキソ硫酸、ヨウ素酸、セレン酸などの有害物質も除去する必要があるが、従来の処理方法ではセレン濃度を排水基準である0.1mg/リットル以下まで低減することは困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、生物脱窒処理工程において安定した窒素除去機能を発揮し、排水中に含まれる有害物質、特にセレンを効率的に除去することができる火力発電所排水の処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、生物脱窒処理工程における機能低下が火力発電所排水中に含まれる酸化性物質によることを見いだし、さらに、排水のpHを5以下に調整して鉄と接触させたのち凝集処理及び固液分離を行うことにより、酸化性物質を効率的に除去することが可能となることを見いだして、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)セレン酸を含む酸化性物質、重金属類及びフッ素、並びに硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及び/又はアンモニア性窒素を含有する火力発電所排水のpHを5以下に調整して、該排水を鉄と接触させて2価の鉄イオンを液相に溶出させ、該2価の鉄イオンと水中の酸化性物質を反応させて、前記セレン酸を還元セレンまで還元せしめ、次いでアルカリ剤を添加してpH7以上にすることにより鉄イオンを水不溶性の水酸化第一鉄又は水酸化第二鉄に変化させて水酸化鉄のフロックを形成し、該水酸化鉄フロックに、前記還元セレン及びフッ素を吸着させるとともに、水酸化物が不溶性である金属イオンを水酸化物に変化させて水酸化物のフロックを形成する凝集処理及び固液分離を行うことによって、セレン酸を含む酸化性物質、重金属類及びフッ素を分離除去して、セレン濃度が0.1mg/リットル以下に低減した排水を得て、該排水中の硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及び/又はアンモニア性窒素を生物脱窒処理することを特徴とする火力発電所排水の処理方法、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(2)pHの調整に、塩酸又は硫酸を使用する第(1)項記載の火力発電所排水の処理方法、
(3)鉄が、最大径3mm以下の微粒子、網線又は粒状の鉄又は鉄含有率85重量%以上の鉄合金である第(1)項又は第(2)項記載の火力発電所排水の処理方法、及び、
(4)生物脱窒処理を、浮遊生物法、生物膜法又はこれらの組み合せにより行う第(1)項、第(2)項又は第(3)項記載の火力発電所排水の処理方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、火力発電所排水の処理に適用することができる。本発明方法は、火力発電所において、排煙脱硫排水を単独で処理する場合にも、また、排煙脱硫排水に火力発電所で発生する他の排水、例えば、一般排水や復水脱塩排水を混合して処理する場合にも適用することができる。火力発電所排水は、通常、ペルオキソ硫酸、ヨウ素酸、セレン酸などの酸化性物質を含有し、これらの酸化性物質は硝化細菌、脱窒細菌に対して阻害作用を有するので、本発明方法においては、火力発電所排水中の酸化性物質をあらかじめ除去したのちに生物脱窒処理を行う。
本発明方法においては、火力発電所排水にpH調整剤を加えてpHを5以下、好ましくはpHを2〜3に調整する。使用するpH調整剤には特に制限はないが、塩酸及び硫酸を好適に使用することができる。被処理水のpHが5を超えると、鉄と接触させたとき、被処理水への鉄の溶出に時間がかかり、あるいは被処理水に鉄が十分に溶出しないおそれがある。火力発電所排水のpHが5以下である場合は、必ずしもpH調整を行う必要はない。被処理水のpHが2〜3であると、速やかに鉄が溶出して反応に寄与するので好ましい。被処理水のpHが1以下であると、鉄の溶出が速すぎて過剰の鉄が溶出するおそれがある。本発明方法において、pH調整は任意の場所において行うことができ、例えば、pH調整槽を設けてあらかじめpH調整することができ、反応槽においてpH調整剤を添加することができ、あるいは、被処理水の配管に直接pH調整剤を供給することにより行うことができる。
本発明方法において、pHを5以下に調整した被処理水を接触させる鉄としては、純鉄、粗鋼、合金鋼、その他の鉄合金などを挙げることができる。鉄は、鉄微粒子、鉄網線、粒状鉄など表面積の大きい形状であることが好ましく、最大径が3mm以下であることが好ましく、0.1〜1mmであることがより好ましい。また、鉄が鉄合金であるときは、鉄の含有率が85重量%以上であることが好ましい。
【0006】
本発明方法において、pHを5以下に調整した被処理水と鉄を接触させる方法には特に制限はなく、例えば、鉄微粒子、鉄網線、粒状鉄などを充填したカラムに通水することにより接触させることができ、あるいは、反応槽中において被処理水に鉄微粒子、鉄網線、粒状鉄などを加えることにより接触させることができる。被処理水と鉄の接触時間は、通常2〜30分とすることが好ましいが、被処理水のpH値あるいは酸化還元電位を測定して制御することが可能である。pHは、鉄の溶解により酸が消費されるので上昇し、pHが5〜7となることを適切な接触時間を判断する基準とすることができる。酸化還元電位は、酸化性物質が還元されることにより低下するので、酸化還元電位が−100mV以下に到達することを適切な接触時間を判断する基準とすることができる。
本発明方法において、pHを5以下に調整した被処理水と鉄を接触させることにより、鉄は2価の鉄イオンとなって水中に溶出する。2価の鉄イオンは、水中のペルオキソ硫酸、ヨウ素酸、セレン酸などの酸化性物質と反応する。本発明方法において、ペルオキソ硫酸は、次式にしたがって分解されると考えられる。
Fe → Fe2++2e
S2O8 2-+2Fe2+ → 2SO4 2-+2Fe3+
また、ヨウ素酸は次式にしたがって還元処理されると考えられる。
2IO3 -+10Fe2++12H+ → I2+10Fe3++6H2O
さらに、セレン酸は次式にしたがって還元処理されると考えられる。
SeO4 2-+6Fe2++8H+ → Se0+6Fe3++4H2O
【0007】
本発明方法においては、鉄と接触することにより水中の酸化性物質を還元したのち、被処理水の凝集処理を行う。凝集処理の方法には特に制限はないが、アルカリ剤を添加することにより、水中の2価の鉄イオン及び3価の鉄イオンを水不溶性の水酸化第一鉄及び水酸化第二鉄とし、鉄フロックを形成して凝集することが好ましい。アルカリ剤の添加により、被処理水のpHを7以上とすることが好ましく、pHを9〜10とすることがより好ましい。被処理水のpHが7未満であると、鉄フロックなどの凝集が不十分となるおそれがある。被処理水のpHを7以上とすることにより、次式のように、水中の2価の鉄イオンは水不溶性の水酸化第一鉄となり、3価の鉄イオンは水不溶性の水酸化第二鉄となる。
Fe2++2NaOH → Fe(OH)2+2Na+
Fe3++3NaOH → Fe(OH)3+3Na+
このとき、還元されたセレンは、生成する水酸化鉄のフロックに吸着され、凝集分離される。さらに、フッ素の一部も、鉄フロックに吸着され、凝集分離される。
本発明方法においては、被処理水のpHを7以上にすることにより、水酸化物が水不溶性であるその他の金属イオンも、同様に水酸化物となってフロックを形成する。また、この際、火力発電所排水に含まれる懸濁物質、還元されたセレン、フッ化物成分などは、鉄フロックに吸着されて同時に凝集する。さらに、水中に鉄の超微粒子が浮遊している場合は、鉄の超微粒子も鉄フロックに吸着されて凝集する。また、反応系が空気に開放されている場合は、2価の鉄イオンが空気酸化を受けて、一部が酸化第二鉄の微粒子となり、酸化第二鉄の微粒子は鉄フロックに吸着されて凝集する。
【0008】
本発明方法において、被処理水のpHを7以上にするためのアルカリ剤には特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、消石灰、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、カーバイド滓など使用することができるが、水酸化ナトリウム及び消石灰を特に好適に使用することができる。
本発明方法においては、アルカリ剤の添加による凝集処理の際に、さらに高分子凝集剤を添加することができる。高分子凝集剤の添加により、フロックが粗大化し、水からの分離が容易になる。使用する高分子凝集剤には特に制限はなく、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素−ホルマリン樹脂などのノニオン性高分子凝集剤、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサンなどのカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド)−2−メチルプロパン硫酸塩などのアニオン性高分子凝集剤などを使用することができる。これらの高分子凝集剤の中で、アニオン性高分子凝集剤は凝集効果に優れているので、特に好適に使用することができる。
本発明方法においては、凝集処理ののち固液分離を行うことにより、凝集処理により生成したフロックを除去し、被処理水を分離する。固液分離方法には特に制限はなく、沈殿、ろ過、遠心分離、膜分離など任意の固液分離方法を使用することができる。これらの固液分離方法の中で、膜分離は微細なSSをも除去することができ、装置を小型化することが可能であるので、特に好適に使用することができる。
【0009】
本発明方法においては、固液分離により得られた被処理水を、つづいて生物脱窒処理する。生物脱窒処理は、硝化工程及び脱窒工程の組み合せにより行う。硝化工程においては、アンモニアが硝化細菌により亜硝酸や硝酸に酸化される。硝化細菌は、自然界に広く存在する独立栄養菌であり、Nitrosomonasがアンモニアを亜硝酸に酸化し、Nitrobacterが亜硝酸を硝酸に酸化して、いずれも遊離するエネルギーを二酸化炭素の還元的同化に利用する。脱窒工程においては、亜硝酸や硝酸が脱窒細菌により還元されて窒素ガスとなる。脱窒細菌としては、Pseudomonas、Micrococcus、Spirillumなどがあり、硝酸、亜硝酸の還元過程において、これらが酸素に代わって生体酸化の終局酸化剤となる。排水中の窒素分として、アンモニア性窒素が少なく、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素を主とするときは硝化工程を省いて脱窒細菌による処理のみとすることができるが、通常は、硝化工程及び脱窒工程を利用して行う。硝化は、曝気して酸素を供給する好気的条件下に、被処理水と活性汚泥を接触させることにより進行する。脱窒は、嫌気条件下に炭素源を供給しながら、被処理水と活性汚泥とを接触させることにより進行する。本発明方法において、生物脱窒法は、活性汚泥法などの浮遊生物法又は懸濁粒子生物膜法、固定生物膜法などの生物膜法のいずれの処理法によっても行うことができ、さらにこれらの方法を組み合わせて行うことができる。また、硝化及び脱窒からなる生物脱窒処理は、通常知られている方式を採用することができ、例えば、硝化槽、脱窒槽をそれぞれ設ける二槽式、あるいは、硝化、脱窒を一槽で行う方式により行うことができる。また、連続式又は回分式のいずれの処理方法でもよく、さらに、硝化処理水を脱窒槽に循環する循環脱窒法、原水を分注するステップ脱窒法などによることができる。
本発明方法において、鉄との接触、凝集処理後の被処理水は、必要に応じてpH調整して、生物脱窒処理することができる。生物脱窒処理における硝化工程では、被処理水のpHが低下するので、硝化槽内の水のpHを弱アルカリ性に維持することが好ましい。本発明方法によれば、凝集処理後の被処理水は通常アルカリ性であり、そのまま硝化槽に導入できることが多いが、pH調整をする場合でも必要とするpH調整剤は少量である。
【0010】
本発明方法において、排煙脱硫排水に他の排水を混合して処理する場合は、あらかじめ混合した火力発電所排水を本発明方法に従って処理することができ、あるいは、排煙脱硫排水を鉄接触工程及び凝集工程で処理したのち、他の排水と混合して生物脱窒処理することができる。排煙脱硫排水のみを鉄接触工程及び凝集工程で処理する方法は、処理装置が小さくなり、使用薬品も少なくなるので好ましい。
本発明方法においては、鉄との接触工程の前に、凝集処理、ろ過などの前処理工程を設けることができる。前処理工程を設けることにより、排水中の除去しやすい懸濁物や汚染物の一部を除去し、後続の工程の負荷を軽減することができる。特に、鉄接触のためにカラムを使用するときは、懸濁物が鉄充填層を目詰まりさせないよう、あらかじめ除去しておくことが好ましい。また、生物脱窒処理工程後にも、所望の処理水質により、凝集、ろ過などの後処理工程を設けることができる。さらに、COD吸着工程を任意の位置に設けることができる。
図1は、本発明方法の実施の一態様の工程系統図である。火力発電所排水をpH調整槽1に導き、塩酸を加えてpHを5以下に調整する。pH調整を終了した被処理水を、ポンプ2により鉄微粒子充填カラム3へ送り、鉄を2価の鉄イオンとして溶出させ、被処理水中の酸化性物質やセレン化合物を還元処理する。鉄微粒子充填カラムより流出した被処理水は反応槽4へ送り、水酸化ナトリウムを注入し、pHを7以上に調整して鉄イオンを水酸化鉄として凝集させる。反応槽において鉄フロックを形成した被処理水は、沈殿分離槽5へ送り、固液分離する。沈殿分離槽の上澄水は、硝化槽6において好気性硝化、次いで脱窒槽7において嫌気性脱窒を行い、さらに沈殿分離槽8において再び固液分離を行って処理水を得る。
【0011】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
参考例1(ペルオキソ硫酸による硝化の阻害)
ペルオキソ硫酸イオン(S2O8 2-)100mg/リットルを含む凝集沈殿ろ過水を、そのまま及び2倍、10倍、20倍に希釈して、ペルオキソ硫酸イオン濃度が5〜100mg/リットルの水4種類を調製した。純水及びペルオキソ硫酸イオンを含む水に、アンモニアを濃度が50mg/リットルとなるよう添加した。これら5種類の検水に、硝化細菌を付着した担体を一定量添加し、25℃でロータリーシエカー内で振盪させ、一定時間毎にアンモニア濃度を測定し、アンモニア濃度の減少速度から硝化速度を求めた。ペルオキソ硫酸イオンを含まない検水との硝化速度の比を、硝化活性比とした。
ペルオキソ硫酸イオン濃度が5、10、50及び100mg/リットルのときの硝化活性比は、それぞれ82、77、50及び34%であった。結果を図2に示す。ペルオキソ硫酸イオン濃度の増加とともに、硝化活性が低下することが分かった。
参考例2(ヨウ素酸イオンによる硝化の阻害)
純水に、ヨウ素酸イオン濃度が1、5、10及び20mg/リットルになるようヨウ素酸を添加し、さらに純水及びヨウ素酸イオンを含む水に、アンモニアを濃度が50mg/リットルとなるよう添加した。これら5種類の検水に、硝化細菌を付着した担体を一定量添加し、25℃でロータリーシエカー内で振盪させ、一定時間毎にアンモニア濃度を測定し、アンモニア濃度の減少速度から硝化速度を求めた。ヨウ素酸イオンを含まない検水との硝化速度の比を、硝化活性比とした。
ヨウ素酸イオン濃度が1、5、10及び20mg/リットルのときの硝化活性比は、それぞれ100、100、68及び38%であった。結果を図3に示す。ヨウ素酸イオン濃度が5mg/リットル以下では硝化活性比は100%となり硝化の阻害は認められないが、ヨウ素酸イオン濃度が5mg/リットルを超えると硝化活性比は急激に低下し、ヨウ素酸イオン濃度約15mg/リットルで半減することが分かった。
参考例1及び参考例2の結果から、ペルオキソ硫酸イオンは5mg/リットル以下の濃度でも硝化を阻害し、濃度50mg/リットルにおいて硝化活性が半減する。一方、ヨウ素酸イオンは5mg/リットル以下の濃度では硝化を阻害しないが、濃度15mg/リットルにおいて硝化活性が半減する。このように、ペルオキソ硫酸イオンとヨウ素酸イオンは、硝化を阻害する状態は細部では異なるが、いずれも硝化細菌に対して強い阻害作用を有する。
実施例1(火力発電所排水の処理)
pHが6.5であり、ペルオキソ硫酸イオン10mg/リットル、ヨウ素酸イオン5mg/リットル、銅1mg/リットル、鉛0.5mg/l、亜鉛0.5mg/リットル、セレン0.5mg/リットル、フッ素30mg/リットル及び硝酸性窒素20mg/リットルを含む排煙脱硫排水に、アンモニア性窒素100mg/リットルを含む一般排水を1:1で混合し、図1に示す装置を用いて処理を行った。
pH調整槽において塩酸300mg/リットルを注入してpHを2.5に調整し、この水をポンプにより粒径0.6mmの鉄粒子を充填したカラムに上向流で通水速度SV20hr-1で通水し、流出する水を反応槽に導いた。反応槽において水酸化ナトリウム350mg/リットルを注入してpHを9に調整し、凝集反応を行った。その後、沈殿分離槽に導き固液分離を行った。
固液分離後の上澄水の水質は、pHは7.0であり、ペルオキソ硫酸イオン0.1mg/リットル以下、ヨウ素酸イオン0.1mg/リットル以下、銅、鉛、亜鉛、セレンはいずれも0.1mg/リットル以下の濃度であった。また、フッ素の濃度は10mg/リットルであった。
この水を、つづいて窒素除去のため、硝化槽及び脱窒槽へ通水処理し、さらに沈殿槽において懸濁物を除去した。処理水中の全窒素の濃度は、8mg/リットルであった。
比較例1
実施例1に用いた排煙脱硫排水と一般排水の1:1混合水を、凝集沈殿処理したのち生物脱窒処理を行った。
凝集処理工程においては、水酸化ナトリウム200mg/リットル及びアニオン性高分子凝集剤0.5mg/リットルを添加して凝集処理及び固液分離し、次いで実施例1と同様に硝化槽及び脱窒槽へ通水処理し、さらに沈殿槽において懸濁物を除去した。
硝化槽出口における被処理水のアンモニア性窒素の濃度は10mg/リットルであり、通水を継続すると徐々に高くなる傾向が確認された。処理水のpHは7.5であり、ヨウ素酸イオン2.5mg/リットル、セレン0.3mg/リットル、全窒素20mg/リットルが残留していた。
実施例1及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
【発明の効果】
本発明方法によれば、従来は処理が困難であった酸化性物質を含む火力発電所排水を、あらかじめ鉄と接触させて還元反応処理、凝集処理及び固液分離することによって、生物脱窒処理の機能を向上させ、安定して硝化及び脱窒を行うことができる。また、従来は低濃度まで除去することが困難であった排水中のセレンを、規制値0.1mg/リットル以下まで低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法の実施の一態様の工程系統図である。
【図2】図2は、ペルオキソ硫酸イオン濃度と硝化活性比の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、ヨウ素酸イオン濃度と硝化活性比の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 pH調整槽
2 ポンプ
3 鉄微粒子充填カラム
4 反応槽
5 沈殿分離槽
6 硝化槽
7 脱窒槽
8 沈殿分離槽
Claims (1)
- セレン酸を含む酸化性物質、重金属類及びフッ素、並びに硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及び/又はアンモニア性窒素を含有する火力発電所排水のpHを5以下に調整して、該排水を鉄と接触させて2価の鉄イオンを液相に溶出させ、該2価の鉄イオンと水中の酸化性物質を反応させて、前記セレン酸を還元セレンまで還元せしめ、次いでアルカリ剤を添加してpH7以上にすることにより鉄イオンを水不溶性の水酸化第一鉄又は水酸化第二鉄に変化させて水酸化鉄のフロックを形成し、該水酸化鉄フロックに、前記還元セレン及びフッ素を吸着させるとともに、水酸化物が不溶性である金属イオンを水酸化物に変化させて水酸化物のフロックを形成する凝集処理及び固液分離を行うことによって、セレン酸を含む酸化性物質、重金属類及びフッ素を分離除去して、セレン濃度が0.1mg/リットル以下に低減した排水を得て、該排水中の硝酸性窒素、亜硝酸性窒素及び/又はアンモニア性窒素を生物脱窒処理することを特徴とする火力発電所排水の処理方法。
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