JP4595354B2 - 光学多層膜の製造方法 - Google Patents

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本発明は、スパッタ法を用いた光学多層膜の製造方法および該製造方法により製造される光学多層膜に関する。
従来、光学素子用の誘電体薄膜に用いられる光学多層膜を製造する方法として、電子ビーム蒸着法が多く用いられていたが、最近では、膜厚制御の精度が高く、かつ膜を安定的に形成できるスパッタ法の利用が増えてきている。
また、近年の光学素子、特に、光通信に用いられる薄膜干渉フィルタなどの種々のフィルタや発光素子等は、従来と比較して一段と高機能化が要求されていることから、光学素子用いられる光学多層膜においては、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層したものが主として用いられてきている。
具体的には、光学多層膜の積層材料として広く用いられているSiO2からなる低屈折率膜(屈折率:1.46)とTa25からなる高屈折率膜(屈折率:2.18)とをスパッタ法で成膜する場合、ターゲットとしてケイ素(Si)ターゲットおよびタンタル(Ta)ターゲットを用い、(1)不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガスを用いて該ターゲットをスパッタする反応性スパッタ法(以下、単に「反応性スパッタ法」という。)や、(2)不活性ガスを用いて該ターゲットをスパッタして金属膜を形成し、該金属膜を別の場所で酸化性ガスを用いて酸化するプロセスを繰り返す成膜方法(以下、単に「半反応性スパッタ法」という。)が知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
また、一般的にスパッタ法は、成膜速度の点においては蒸着法に劣ることが多いため、カソードへの投入電力を極力大きくすることによって成膜を高速化することが行われている。
特開平3−229870号公報 特開平11−279757号公報
しかしながら、カソードへの投入電力を大きくすることで良好な成膜速度とし、さらに単層膜として光学吸収が十分に小さく実用上問題のないレベルの酸化物薄膜を成膜する条件を見出した場合であっても、その条件を光学多層膜の作製にそのまま適用した場合には、多層化に伴う層の界面反応によって生じる界面遷移層による光学吸収により、得られる光学多層膜が所望の透過率を有しないという問題がある。
そこで、本発明は、良好な成膜速度を維持しつつ、多層化に伴う界面反応によって生じる界面遷移層による光学吸収がなく、光吸収が十分に小さいといった所望の透過率とすることができる光学多層膜を製造する光学多層膜の製造方法および該製造方法により製造される光学多層膜を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、上述の問題が以下の機構により引き起こされるのではないかと推測した。すなわち、カソードへの投入電力を大きくすることによって、ターゲットから弾き出されるスパッタ粒子のエネルギーが増加し、該スパッタ粒子が該スパッタ粒子の原子とは異なる直前に形成された層である金属酸化物膜の表面に付着する時に該金属酸化物を還元するため、具体的には、Ta25膜上にSiO2膜を成膜する際に、Ta25表面の一部が還元されることによって、界面の少なくとも一部に極めて薄いTa2x(例えば、x=4.5,4.8等)膜が形成されるために引き起こされるのではないかと推測した。
そこで、本発明者は、上記推測に基づき、高屈折率膜(例えば、Ta25膜)上に低屈折率膜(例えば、SiO2膜)をスパッタにより成膜する際に、少なくともスパッタ初期において、Siのスパッタ粒子がTa25膜表面に付着した時に該付着面の金属酸化物であるTa25から酸素を引き抜かない条件、すなわち、Ta25を還元しない条件でスパッタしたところ、良好な成膜速度を維持しつつ、多層化に伴う界面反応によって生じる界面遷移層による光学吸収がなくなることを見出すことができ、本発明を達成するに至った。すなわち、本発明は、下記(1)〜(7)に記載の光学多層膜の製造方法および(8)に記載の光学多層膜を提供する。
(1)スパッタ法を用いて光学多層膜を製造する光学多層膜の製造方法であって、
異なる金属酸化物からなる2以上の膜をスパッタにより成膜する場合において、先に成膜された一の膜上に他の膜をスパッタにより成膜する際に、少なくともスパッタ初期において、他の膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が一の膜表面に付着した時に該一の膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かない条件で成膜する、光学多層膜の製造方法(第1の態様)。
(2)スパッタ法を用いて光学多層膜を製造する光学多層膜の製造方法であって、
光学多層膜を構成する高屈折率膜および低屈折率膜がそれぞれ異なる金属酸化物から形成さており、該高屈折率膜上に該低屈折率膜をスパッタにより成膜する際に、少なくともスパッタ初期において、該低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が該高屈折率膜表面に付着した時に該高屈折率膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かない条件で成膜する、上記(1)に記載の光学多層膜の製造方法。
(3)上記高屈折率膜が、Ta、ニオブ(Nb)およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物膜であり、上記低屈折率膜が、Siの酸化物膜である上記(2)に記載の光学多層膜の製造方法。
(4)上記低屈折率膜をスパッタにより成膜する際の少なくともスパッタ初期において、該低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が上記高屈折率膜表面に付着した時に該高屈折率膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かないように、該ターゲットに印加する電力密度を設定する上記(2)または(3)に記載の光学多層膜の製造方法。
(5)スパッタ初期における電力密度が、スパッタ初期後のスパッタにおける電力密度よりも低い上記(4)に記載の光学多層膜の製造方法。
(6)上記低屈折率膜をスパッタにより成膜する前において、該低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が上記高屈折率膜表面に付着した時に該高屈折率膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かないように、酸化性ガス量を設定してプリスパッタを行う上記(2)〜(5)のいずれかに記載の光学多層膜の製造方法。
(7)プリスパッタにおける酸化性ガス量が、プリスパッタ後のスパッタにおける酸化性ガス量よりも多い上記(6)に記載の光学多層膜の製造方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法により製造される光学多層膜(第2の態様)。
以下に説明するように、本発明によれば、良好な成膜速度を維持しつつ、多層化に伴う界面反応によって生じる界面遷移層による光学吸収がなく、光吸収が十分に小さいといった所望の透過率とすることができる光学多層膜を製造することができるため有用である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係る光学多層膜の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という。)は、スパッタ法を用いて光学多層膜を製造する光学多層膜の製造方法であって、異なる金属酸化物からなる2以上の膜をスパッタにより成膜する場合において、先に成膜された一の膜上に他の膜をスパッタにより成膜する際に、少なくともスパッタ初期において、他の膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が一の膜表面に付着した時に該一の膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かない条件で成膜する、光学多層膜の製造方法である。
具体的には、光学多層膜を構成する高屈折率膜および低屈折率膜がそれぞれ異なる金属酸化物から形成さており、該高屈折率膜上に該低屈折率膜をスパッタにより成膜する際に、少なくともスパッタ初期において、該低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が該高屈折率膜表面に付着した時に該高屈折率膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かない条件で成膜する、光学多層膜の製造方法が好適に例示される。
本発明において、スパッタ法とは、上述した半反応性スパッタ法もしくは反応性スパッタ法のことをいい、直流放電によるものであっても交流放電によるものであってもよい。なお、ターゲットは、上述したSiターゲット、Taターゲットに限定されない。
次に、半反応性スパッタ法および反応性スパッタ法を用いた製造方法を用いた製造方法をそれぞれ詳述する。
<半反応性スパッタ法を用いた製造方法>
半反応性スパッタ法によるスパッタは、上述したように、不活性ガスを用いてターゲットをスパッタして金属膜を形成し、該金属膜を別の場所で酸化性ガスを用いて酸化するプロセスを繰り返す成膜方法であり、用いるターゲットの表面が理想的には酸化しない状態もしくは酸化の程度が非常に低い状態でするスパッタである。
ここで、不活性ガスを用いたターゲットのスパッタと酸化性ガスを用いた酸化を、図1を用いて説明するが、半反応性スパッタ法によるスパッタはこれに限定されない。図1は、スパッタ装置の構成を示す平面模式図である。
図1において、スパッタ装置1は、真空槽2内に、円筒状の基板ホルダ3と該基体ホルダ3の外周面上に設けられた基板4とを有し、各基板4が基板ホルダ3の中心軸を回転中心として回転可能に支持された構造を有している。
また、真空槽2の内部には、第1カソード5および該第1カソード5の前に設置された第1ターゲット(例えば、高屈折率膜を形成するターゲット)6からなる第1スパッタ源7と、第2カソード8および該第2カソード8の前に設置された第2ターゲット(例えば、低屈折率膜を形成するターゲット)9からなる第2スパッタ源10と、両スパッタ源から離間したプラズマ酸化源11とが設置されている。
また、第1スパッタ源7および第2スパッタ源10の成膜方向には、成膜を開始・停止させるための第1シャッタ12および第2シャッタ13が設けられており、さらに、各スパッタ源とプラズマ酸化源11とを分離させるための仕切り板(遮蔽板)14および15が設けられている。
不活性ガスを用いたターゲットのスパッタを、図1を用いて説明すると、第1シャッタ12を開けて、第2シャッタ13を閉じた状態で、第1ターゲット6の材料のみを基板上に形成させるスパッタ、または、第2シャッタ13を開けて、第1シャッタ12を閉じた状態で、第2ターゲット9の材料のみからなる金属膜を基板上に形成させるスパッタのことである。
同様に、酸化性ガスを用いた酸化プロセスを、図1を用いて説明すると、ターゲットのスパッタ後に、基板上に形成された金属膜をプラズマ酸化源11からの酸化性ガスにより酸化させ、金属酸化物膜とする工程のことである。このような金属膜を形成し、形成された金属膜を酸化して金属酸化物を形成するプロセスを繰り返すことで所望の膜厚を有する金属酸化物膜を形成できる。
半反応性スパッタ法によるスパッタは、成膜と酸化とが別々の場所で行われるため、ターゲット表面が理想的には酸化されず、もしくは酸化性ガスの混入により酸化されたとしてもその程度が非常に低い状態でするスパッタとなる。
本発明において、上記不活性ガスとしては、具体的には、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。これらのうち、経済性および放電のしやすさの点からアルゴンが好ましい。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
また、上記酸化性ガスとしては、具体的には、例えば、酸素、オゾン、炭酸ガス、酸化窒素ガス(例えば、N2O)、水蒸気、これらの混合ガス(例えば、酸素とオゾンとの混合ガス等)が挙げられる。これらのうち、経済性の点から酸素が好ましい。
本発明において、上記高屈折率膜を形成するターゲットとしては、公知の材料を用いることができ、具体的には、例えば、Ta、NbおよびTiからなる群から選択される少なくとも1種の金属が挙げられる。
これらのターゲットにより形成される高屈折率膜は、該ターゲットから弾き出されるスパッタ粒子が酸化性ガスにより酸化された金属酸化物膜である。
具体的には、Ta25(2.10〜2.20)、Nb25(2.35)、TiO2(2.40)が、屈折率が十分に大きく、広い波長範囲にわたって屈折率の消衰係数(k)が小さい理由から好適に例示される。なお、括弧内の数字は屈折率である。
また、上記低屈折率膜を形成するターゲットとしては、公知の材料を用いることができ、具体的には、例えば、金属Si等が挙げられる。なお、Siは厳密には半導体であるが、純粋なSiは慣用上メタリックシリコンと称呼される場合が多い。
これらのターゲットにより形成される低屈折率膜は、該ターゲットから弾き出されるスパッタ粒子が酸化性ガスにより酸化された金属酸化物膜である。
具体的には、SiO2(1.46)が、屈折率が十分に小さく、また広い波長範囲にわたって屈折率の消衰係数(k)が小さく、さらに耐候性に優れ、安価である理由から好適に例示される。なお、括弧内の数字は屈折率である。
本発明の製造方法においては、上述した高屈折率膜および低屈折率膜を形成する金属酸化物膜は、それぞれ窒素を含有した金属酸化物膜であってもよい。
また、本発明の製造方法においては、先に成膜された一の膜上に他の膜を成膜するスパッタ、具体的には、上記高屈折率膜上に上記低屈折率膜を成膜するスパッタは、少なくともスパッタ初期において、該低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が該高屈折率膜表面に付着した時に該高屈折率膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かない条件で行われる。
ここで、「スパッタ初期」とは、上記先に成膜された一の膜(高屈折率膜)上に成膜される上記他の膜(低屈折率膜)の膜厚が、該他の膜(低屈折率膜)を構成する金属酸化物の単分子膜の膜厚(例えば、SiO2膜なら約2nm)になるまでのスパッタのことをいう。
また、「他の膜(低屈折率膜)を形成するターゲットのスパッタ粒子が先に成膜された一の膜(高屈折率膜)表面に付着した時に先に成膜された一の膜(高屈折率膜)表面の金属酸化物から酸素を引き抜かない条件」としては、例えば、1)上記低屈折率膜を形成するターゲットに印加する電力密度の設定によるもの、および/または、2)スパッタ前に酸化性ガス量を設定したプリスパッタを行うもの等が好適に挙げられる。
電力密度の設定によるものとしては、具体的には、スパッタ初期における電力密度をスパッタ初期後のスパッタにおける電力密度よりも低くする条件が挙げられ、より具体的には、スパッタ初期における電力密度を1〜6W/cm2とし、スパッタ初期後のスパッタにおける電力密度を8〜14W/cm2とする条件が挙げられる。
電力密度の値がこの範囲であれば、得られる光学多層膜の界面反応によって生じる界面遷移層による光学吸収を確実に抑制することができ、所望の透過率とすることができるため好ましい。その理由は、上記低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子から弾き出されるスパッタ粒子のエネルギーを抑制することができ、それにより該スパッタ粒子による上記高屈折率膜の金属酸化物の還元も抑制することができるためと考えられる。
また、この電力密度の設定と同時に、成膜領域を安定に維持するため、金属膜を形成する際のスパッタ雰囲気中の酸化性ガス量を再設定する必要があることが多い。特に、電力密度を低くすると同時に、電力密度の低減割合(スパッタ初期における電力密度/その後のスパッタにおける電力密度)よりも小さい割合で、酸化性ガス量を少なくすることが好ましい。通常、金属膜を形成する場合、スパッタ雰囲気中には酸化性ガスを含有させることはない。しかし、プラズマ酸化源からの酸化性ガスが金属膜を形成するスパッタ雰囲気に不可避的に流入するため、酸化プロセスにおける酸化性ガス量をスパッタ初期には減少させる必要がある。このとき、スパッタ初期における酸化プロセスにおける酸化性ガス量は、金属膜を形成するスパッタ雰囲気中の不活性ガスと酸化プロセスにおける酸化性ガスとの総量に対して、装置の種類によっても異なるが、35〜60体積%であることが好ましく、スパッタ初期後のスパッタ時における酸化プロセスにおける酸化性ガス量は60〜80体積%であることが好ましい。このように酸化性ガス量を調整することにより、スパッタ初期からその後のスパッタまでを通じて成膜領域が変化することなく、安定にスパッタが進行するという理由から好ましい。
また、「プリスパッタ」とは、プリスパッタ後の通常のスパッタによる成膜前に、ターゲット表面の汚染層(自然酸化膜を含む)の除去、またはターゲット表面の安定化を目的として行われる予備スパッタのことをいい、通常は、ターゲット表面の上部(基板側)に設置されたシャッタを閉じた状態でスパッタするものである。
そこで、酸化性ガス量を設定したプリスパッタとしては、具体的には、プリスパッタにおける酸化性ガス量を、プリスパッタ後のスパッタにおける酸化性ガス量よりも増加させる条件で行うプリスパッタが挙げられ、より具体的には、装置の種類によっても異なるが、プリスパッタ時における酸化プロセスにおける酸化性ガス量を69〜75体積%とし、プリスパッタ後のスパッタ時における酸化プロセスにおける酸化性ガス量を60〜68体積%とする条件で行うプリスパッタが挙げられる。
酸化性ガス量がこの範囲であれば、得られる光学多層膜の界面反応によって生じる界面遷移層による光学吸収を確実に抑制することができ、所望の透過率とすることができるため好ましい。その理由は、上記低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子と酸化性ガスとの接触機会の増加により、該スパッタ粒子の還元能を低下させることができるためであると考えられる。
本発明の製造方法においては、後述する実施例にも示すように、このような条件のスパッタが、スパッタ初期、言いかえれば、成膜される上記低屈折率膜の膜厚が2nm程度になるまで行われていてもよい。しかし、界面遷移層を減少させ、設計値どおりの膜を得るという観点から0.5nm以上であることが好ましく、経済性および光学特性の観点から3nm以下であることが好ましい。
<反応性スパッタ法を用いた製造方法>
反応性スパッタ法によるスパッタは、上述したように、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガスを用いてターゲットをスパッタするものであって、本発明においては、単層膜として得られる膜が透明となる条件、すなわち、メタルモードの成膜領域でも遷移領域寄りの領域、遷移領域もしくはオキサイドモード(酸化モード)で利用することができる。
なお、不活性ガス、酸化性ガス、ターゲットおよび膜、ならびに電力密度の設定およびプリスパッタ等による条件は、上述した半反応性スパッタ法を用いた製造方法と基本的に同様である。
ここで、反応性スパッタ法の成膜領域を図2を用いて説明する。図2は、投入電力一定下で、スパッタ雰囲気中の不活性ガスの流量を一定とする一方で、該雰囲気中の酸化性ガスの流量を変化させて、単層膜を製造する場合における、酸化性ガス流量と電圧との関係を示す模式図(電圧変化曲線)である。
図2において、酸化性ガス流量を少なくすることで得られる、電圧が高くかつスパッタ率の高い領域が、メタルモードでの成膜領域である。
一方、酸化性ガス流量を多くすることで得られる、電圧が低くかつスパッタ率の低い領域が、オキサイドモードでの成膜領域である。
なお、これらの両モードの間の電圧が大きく変化する領域が遷移領域である。
本発明の第2の態様に係る光学多層膜(以下、単に「本発明の光学多層膜」という。)は、上述した本発明の製造方法により製造される光学多層膜であって、高機能化の観点から、上述したように、基体上に、異なる金属酸化物からなる2以上の膜を有する多層膜であり、具体的には、高屈折率膜と低屈折率膜とをそれぞれ1層以上、好ましくは合計して4〜40層となるようにそれぞれを交互に積層してなる多層膜である。
また、高屈折率膜の膜厚は、50〜200nmであることが好ましく、低屈折率膜の膜厚は、50〜400nmであることが好ましい。
ここで、上記基体は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば石英、硬板、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム等を用いることができる。
また、このような基体の厚さは、強度および透過率の観点から0.2〜6.0mmであることが好ましい。
本発明の光学多層膜は、上述した本発明の製造方法により製造されているため、良好な成膜速度を維持しつつ、多層化に伴う界面反応によって生じる界面遷移層による光学吸収がない効果を有している。
また、本発明の光学多層膜の用途は、特に限定されないが、例えば、薄膜干渉フィルタ、ルゲートフィルタ、反射防止膜、ダイクロイックミラー、紫外・赤外カットフィルター、バンドパスフィルターに好適に用いることができため有用である。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ1.0mmの石英基板に、交流放電を用いた半反応性スパッタ法により、高屈折率膜であるTa25膜(各層の平均膜厚90nm)を成膜し、その上に低屈折率膜であるSiO2膜(各層の平均膜厚135nm)を成膜するという操作を繰り返して、ガラス基体上に、Ta25膜とSiO2膜とを交互に合計15層有する光学多層膜を作製した。Ta25膜およびSiO2膜の成膜条件を以下に示す。
なお、SiO2膜の成膜においては、スパッタにより成膜されるSiO2膜の膜厚が2nmになるまでの間は、酸素ガス量50体積%、交流電源電力3kWで行い、その後のスパッタにおいては、酸素ガス量64体積%、交流電源電力6kWで行った。
<Ta25膜の成膜条件>
・スパッタターゲット:金属Taターゲット(Ta99.99質量%)
・雰囲気:アルゴンガス80sccm
・成膜中圧力:0.22Pa
・交流の周波数:50kHz
・交流電源電力:3kW(電力密度:5W/cm2
・カソード電圧:520V
・カソード電流:6.9A
・成膜速度:0.32nm/sec
・プラズマ酸化源:酸素ガス120sccm
<SiO2膜の成膜条件>
・スパッタターゲット:金属BドープSiターゲット(Si99.99質量%)
・雰囲気:アルゴンガス80sccm
・成膜中圧力:0.25Pa
・交流の周波数:50kHz
・交流電源電力:3kW→6kW(電力密度:5W/cm2→10W/cm2
・カソード電圧:630V
・カソード電流:10.8A
・成膜速度:0.43nm/sec
・プラズマ酸化源:酸素ガス80sccm→140sccm
(比較例1)
SiO2膜の成膜において、酸素ガス量64体積%、交流電源電力6kWの値で一定にスパッタを行った以外は実施例1と同様の条件で光学多層膜を作製した。
作製した各光学多層膜付き基体について、波長650nm前後の透過帯(透過帯域約40nm)の分光透過率を調べた。その結果を図3に示す。なお、分光透過率とは、650nm前後の透過率の最大の透過率をいい、この透過帯における分光透過率の理論値は、約96.5%であった。
図3に示す結果から、比較例1で製造した光学多層膜付き基体では、石英基板の裏面反射を含めて約95%であるのに対し、実施例1で製造した光学多層膜付き基体では、理論値と同様、約96.5%であった。これにより、多層膜の界面における光吸収が抑制されていることが分かった。
図1は、スパッタ装置の構成を示す平面模式図である。 図2は、光学多層膜の製造を実施する場合における、酸化性ガス流量と電圧との関係を示す模式図(電圧変化曲線)である。 図3は、実施例1および比較例1で得られた光学多層膜における分光透過率を示すグラフである。
符号の説明
1 スパッタ装置
2 真空槽
3 基板ホルダ
4 基板
5 第1カソード
6 第1ターゲット
7 第1スパッタ源
8 第2カソード
9 第2ターゲット
10 第2スパッタ源
11 プラズマ酸化源
12 第1シャッタ
13 第2シャッタ
14、15 仕切り板

Claims (2)

  1. スパッタ法を用いて光学多層膜を製造する光学多層膜の製造方法であって、
    光学多層膜を構成する高屈折率膜および低屈折率膜がそれぞれ異なる金属酸化物から形成されており、該高屈折率膜上に該低屈折率膜をスパッタにより成膜する際に、スパッタ初期において、該低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が該高屈折率膜表面に付着した時に該高屈折率膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かないように、該ターゲットに印加する電力密度を設定し、スパッタ初期における電力密度が、スパッタ初期後のスパッタにおける電力密度よりも低く、
    スパッタ初期における電力密度を1〜6W/cm2とし、スパッタ初期後のスパッタにおける電力密度を8〜14W/cm2とし、
    前記低屈折率膜を形成する金属酸化物が、不活性ガスを用いてターゲットをスパッタして金属膜を形成し、該金属膜を別の場所で酸化性ガスを用いて酸化するプロセスにより得られ、前記スパッタ初期での酸化プロセスにおける酸化性ガス量が、不活性ガスと酸化性ガスとの総量に対して、35〜60体積%であり、前記スパッタ初期後での酸化プロセスにおける酸化性ガス量が、不活性ガスと酸化性ガスとの総量に対して、60〜80体積%であり、
    前記高屈折率膜が、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物膜であり、前記低屈折率膜が、ケイ素(Si)の酸化物膜である光学多層膜の製造方法。
  2. 前記低屈折率膜をスパッタにより成膜する前において、該低屈折率膜を形成するターゲットのスパッタ粒子が前記高屈折率膜表面に付着した時に該高屈折率膜表面の金属酸化物から酸素を引き抜かないように、酸化性ガス量を設定してプリスパッタを行う請求項1に記載の光学多層膜の製造方法。
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