JP4289819B2 - 光学薄膜の積層方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好な光学特性を有する薄膜、即ち、光学薄膜のスパッタ成膜時の積層方法に関する。光学薄膜は、導波路、回折格子、発光、表示素子、光メモリ、太陽電池などの各種光学部品や光素子に用途が拡大しており、これらの用途で良好な光学特性を確保するため、酸化膜などの誘電体膜から成る光学薄膜を積層構造で形成する際に、優れた膜質を維持しながら成膜を行うことが求められている。
【0002】
【従来の技術】
光学薄膜に用いられる金属酸化膜のスパッタ成膜を行う際に、従来、スパッタガスと反応ガスとを用いる反応性スパッタリング法が知られている。このものは、例えばアルゴン等のスパッタガスや酸化反応のための酸素等の反応ガスを導入した状態で、プラズマ雰囲気中のイオンやラジカルをターゲットに加速衝突させるものである。スパッタされて活性粒子となったターゲット中の金属は、ターゲットから基板に飛行する過程でプラズマ中の酸素イオンや酸素ラジカル等の反応性粒子と接触反応し、基板上で薄膜として堆積形成される際に金属酸化物として生成される。
【0003】
しかしながら、この反応性スパッタリング法を用いる場合、反応ガスたる酸素ガスが未反応のままターゲット近傍に拡散し、ターゲット表面を酸化してスパッタ成膜時の成膜速度を低下させることがある。そして、これを防ぐため、反応ガス中の酸素流量を減少させると基板上で形成される金属酸化物から成る薄膜は、酸化反応が充分に進行しないまま生成され、これにより光学特性が劣化してしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、反応性スパッタリング法により金属酸化物薄膜のスパッタ成膜を行うに際し、金属成膜領域と酸化領域とを分割して作動させる方法が既に実用化されている。このものは、成膜室内に、防着板やシャッタなどにより金属成膜領域を酸化領域から独立して設け、金属単体から成る金属薄膜のスパッタ成膜を行うと共に、酸化領域の酸化源を作動させて、この金属薄膜を酸化し、これにより光学特性に優れた誘電体膜を形成する。
【0005】
ところが、このような方法を採用しても、異なる金属成分を用いた金属酸化膜同士を積層して光学薄膜を形成しようとする場合、薄膜を積層させる際の界面の形成初期には、先の成膜サイクルにおいて形成された金属酸化物から成る酸化膜上に次の成膜サイクルに用いる単体状態の金属成分が付着する状況が出現する。このとき、酸化膜表面に、金属酸化物よりも相対的に活性に富む金属が接触することになり、新たな問題の発生が危惧される。例えば、直前の成膜サイクルにより形成されたSiO2膜上に、その次の成膜サイクルで形成されるTa25膜の金属成分たるTaが単体状態で付着すると、付着した金属Taにより、既に形成されていたSiO2膜が還元されたり、SiO2膜起源のSi金属がSi-Ta合金として化合されたりして、これにより直前に形成されていたSiO2膜の誘電特性を低下するおそれが生じる。このようにして、酸化反応が不充分な薄膜や合金酸化膜が形成された状態で、これらにより構成した光学薄膜を形成すると、このものは製品設計時の所定透過波長の光に対する吸収要因を内在することとなり、これにより当該光の透過率の減少を招くこともある。
【0006】
このような不具合は、光学薄膜の構成単位となる各薄膜のそれぞれを個別に観察する場合には無視できる程度のものであっても、多層構造から成る積層膜を形成した場合には、上記のような透過率の減少が累積されて、結局は、製品が所望の光学特性を備えられないという問題に帰結する。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明は、スパッタ成膜本来の高速の成膜速度を維持したまま、反応性スパッタリング法により、良好な光学特性を備える光学薄膜を多層構造で積層して形成する方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、回転可能な基板ホルダを有し成膜領域と酸化領域を有する反応性スパッタリングにより金属成分が互いに異なる化合物膜を有する光学薄膜を積層して形成する方法において、基板外で金属成分の酸化物を生成し飛着した酸化膜層を介在させて前記金属成分の酸化物層を成膜し、前記金属成分が異なる化合物膜の一方に他方の化合物膜を積層することを特徴とする光学薄膜を形成できるようにしている。
【0009】
これによれば、一方と他方の両化合物膜間の界面において、一方の化合物膜側には反応の終端部分として化合物膜が形成されており、また、他方の化合物膜側には、飛着した金属に対する反応を基板上で終了させるのではなく、基板への堆積時に、既に金属成分の酸化物の状態で飛着して酸化膜を形成させるので、上記した両化合物膜間の界面は、異なる金属成分を用いた化合物同士に狭持されて構成される。金属化合物の状態は、一般に、金属単体に比べて化学的に安定であるので、界面間で金属間の酸化還元反応や合金反応は抑制され、上記両化合物膜間で安定した膜質を維持した積層構造が形成される。また、他方の化合物膜を構成する金属成分の酸化物から成る酸化膜層に続けて他方の化合物膜の成膜を行う際、酸化膜層と他方の化合物膜とが同じ金属成分を用いているうえ、化合物膜が酸化膜の場合は、両者とも金属酸化物として同一の化学組成を有するので、実質的に同一の膜質構造となる。
【0010】
したがって、このような積層構造を多層に繰り返して形成される光学薄膜は、良好な光学特性を備えることができる。
【0011】
なお、上記したように基板への堆積時に既に他方の化合物膜を構成する金属成分の酸化物の状態で飛着させるには、スパッタガスに酸素等の酸化ガスを添加したり、スパッタリングターゲットを金属酸化物で形成して用いたりする方法が考えられる。
【0012】
この場合、上記した酸化膜層を、0.5nm以上の厚さで形成することにより、相対的に反応性が高い金属層による干渉をさらに抑制できる。したがって、このように酸化膜層と金属層とを有する構造の他方の化合物膜と、上記した一方の化合物膜とにより構成される一対の化合物膜を繰り返し単位として多層に形成される光学薄膜は、良好な光学特性を確実に備えることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に用いる反応性スパッタリング装置の概略を示す。装置チャンバ1内部の上方領域には、回転軸2で軸支されて回転可能な基板ホルダ3が設けられ、該ホルダ3上に円板状のガラス基板4が取り付けられている。また、装置チャンバ1の下方空間は、回転軸5を挟んで成膜領域6と酸化領域7とに分割され、成膜領域6には、基板4に対向するように配置した、いずれも矩形型の2式のSiターゲット8a、8bとTaターゲット9a、9bとをそれぞれ載置したスパッタカソード8、9を設置している。Siターゲット8a、8bとTaターゲット9a、9bとは、スパッタカソード8及び9とそれぞれ一体化して構成され、これらは、いずれも防着板10により、それぞれ外側から覆設されている。そして、装置チャンバ1の酸化領域7には、マイクロ波励起プラズマ源12が酸化源として設置されている。
【0014】
さらに、これらのスパッタカソード8、9は、回転軸5で軸支されて同軸5まわりに回転移動可能なシャッタ13により、これらと対向して位置させたガラス基板4との間を遮断されるようにしている。なお、基板ホルダ3の回転軸2とシャッタ11の回転軸5とはそれぞれ独立の回転駆動機構により回転作動する。
【0015】
また、装置チャンバ1は、図外の真空ポンプに接続される真空排気系14によりバルブ14aを介して真空排気できるように構成される。さらに、装置チャンバ1の成膜領域6の底面にはスパッタガス導入口15が設けられ、これによりスパッタガスを導入でき、また、酸化領域7の底面には反応ガス導入口16が設けられ、これにより酸素ガスなどの反応ガスを導入できるようにしている。
【0016】
図2は、図1のI−I線における截断面図であり、円周状に形成された側壁を有する装置チャンバ1内に、回転軸5まわりに回転可能な略扇型形状のシャッタ1が配置され、上記したようにシャッタ13が回転移動により選択的にスパッタカソード8及び9の直上に位置できるように構成されている。
【0017】
このように成膜領域6と酸化領域7とを空間的に分割して設けたスパッタ成膜装置の装置チャンバ1を用い、Siターゲット8a、8bとTaターゲット9a、9bとを選択的に使用することにより、基板4上にSiO膜とTa膜との積層成膜を行うことができる。
【0018】
即ち、SiO2膜を形成するためには、スパッタガス導入口15よりアルゴンガスから成るスパッタガスを導入すると共に、反応ガス導入口16より酸素ガスを含む酸化ガスを導入し、スパッタカソード8の直上にシャッタ13を位置させ、この状態で、Siターゲット8a、8bを載置したスパッタカソード8とマイクロ波励起プラズマ源12とを作動させる。そして、スパッタカソード8の作動が所望の定常状態に到達した時点で、シャッタ13を開放し、所定の膜厚で形成されるまで基板上に対するSiO2膜の成膜を行う。この間、スパッタカソード9は停止あるいは待機状態に保ち作動させない。
【0019】
上記のSiO2膜の成膜を終了した後、次に、スパッタカソード8を停止あるいは待機状態に保ち、これの替りにスパッタカソード9を作動させてTa25膜を所定の膜厚で基板上に形成する。
【0020】
このようにすることにより、基板4上にSiO2膜とTa25膜との積層成膜を行うことができ、さらに、このような成膜を繰り返すことにより、SiO2膜とTa25膜とから成る交互層をも形成することができる。
【0021】
上記のSiO2膜やTa25膜は、その優れた誘電特性により光学薄膜の構成膜として適しており、これらから成る交互層で構成される多層構造により形成される光学薄膜は優れた性能を具備することが期待される。
【0022】
ところで、このような光学用途の材料に求められる特性は、特定波長の光に応じてこれを変質させずに伝播し、あるいは、さらにこれを制御し得るようにするものであり、特段に高い精度での取り扱いが必要である。したがって、光学薄膜に採用されるSiO2膜やTa25膜においても優れた膜質を有することが求められる。
【0023】
しかしながら、上記の反応性スパッタリング法を採用して積層成膜を行う場合、SiO2膜とTa25膜との界面近傍から膜質の劣化が生じ、このような方法による光学用途への用途拡大の障害となるおそれがある。
【0024】
即ち、上記した界面は、SiO2膜上にTa25膜が積層されることにより形成されるものであるが、一般に、スパッタ成膜の成膜速度は、酸化反応の反応速度よりもかなり高速の水準にあるため、Ta25の大部分は酸素ガス中よりも基板上で生成する。したがって、上記界面の初期形成段階では酸素ガスによる酸化反応が追いつかず、ターゲットから放出されたTaが金属原子状態でSiO2膜に付着する状況が存在する。このような金属原子状態も、遅れて進行する酸素ガスによる酸化反応により解消され、さらにこれによる反応生成物たる金属酸化物が化学的に安定であるため膜質の劣化を抑制し得るものである。ところが、一部の金属原子は酸化反応により捕捉される前に、その高い反応性により基板側のSiO2膜に対し還元作用してSi金属を遊離させたり、これと反応してTa-Si合金を形成したりするなど、いずれにしても膜質の劣化要因となり得る。このようにTa25膜は、最初に形成される基板4側の表面は金属成分が過多であり、最後に形成される基板4とは反対側の表面が化学的に安定な酸化物状態であるように分布した膜構造となっている。このため、SiO2膜とTa25膜との界面近傍ではその両側の薄膜において、良好な膜質を確保できる金属酸化物の状態のみで分布することが阻害される傾向にある。
【0025】
このため、本発明においては、SiO2膜による先行成膜を行った後に、基板外で生成されたTa25により緩衝層を介在させ、その後に、上記のようにTa25膜を基板上で形成する成膜を続いて行うようにした。この緩衝層は、その介在により、先に行った成膜によるSiO2に対して相対的に反応性に富む原子状態のTa金属が直接付着するのを回避するという点と、これに続いて行う成膜の生成物と同一物質(Ta25)で構成するために、積層完成後には、後に行った成膜によるTa25膜の一部となるという点とにおいて、SiO2膜とTa25膜との双方に対し一定の機能を有する。即ち、SiO2膜に対しては、原子状態のTa金属により膜質を変化させるような反応を発生させず、Ta25膜に対しては、その一部として構成される際に局所的には原子状態のTa金属が相対的に高い密度で分布するとしても、基本的に同一の化学組成として一体的に構成することにより示される親和性の方がより支配的である。そして、いずれの機能も光学薄膜に望まれない膜質の変化を誘発しないという点で重要である。
【0026】
このような本発明の着想に基づいて、スパッタ成膜装置1を用いて光学薄膜を積層して形成するには、前述した低屈折率のSiO2膜を基板4上に所定の膜厚で形成した後に、反応ガス導入口16からの酸素ガスの導入条件は変更せず、一方で、スパッタガス導入口15からスパッタガスとしてアルゴンガスに加え、所定流量の酸素ガスを添加して導入する。このようにしてから、スパッタカソード9とマイクロ波励起プラズマ源12を作動させることにより、基板4のSiO2膜上にTa25膜を形成する。このときに形成されるTa25膜は、酸化雰囲気に曝されて表面が酸化され易くなったTaターゲット9a、9bの表面近傍から基板4までの空間で生成されるTa25を堆積種として形成されるものであり、スパッタガスにアルゴンガスのみを用いた場合のTa25膜とは生成過程が異なる。そして、この生成過程によるTa25膜を所定の膜厚に形成した後、スパッタガス中への酸素ガスの添加を停止し、スパッタガスとしてアルゴンガスのみを用いる状態に復帰させて、この状態で基板4上へのTa25膜の成膜を続行し、所定の膜厚が得られたところでこの成膜を終了する。
【0027】
なお、スパッタガス中への酸素ガスの添加を停止する際には、Taターゲット9a、9bの表面近傍の酸化雰囲気を完全に取り除くためにターゲット表面のクリーニングを行うのが効果的である。
【0028】
そして、SiO2膜とTa25膜との交互層を形成する際には、Ta25膜上にSiO2膜の成膜を行うときにも、上記と同様にSiO2膜の生成過程を2段階に分割して行って、SiO2から成る緩衝層をTa25膜とSiO2膜との間に介在するようにする。
【0029】
このような成膜を繰り返して行ってバンドパスフィルタなどの光学薄膜を形成し、そのフィルタ性能を下記[実施例]に示すように測定することにより、この反応性スパッタリング法により積層して形成される光学薄膜の優劣を判定することができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、緩衝層を形成する際、基板4に到達する前にTa25として堆積種を形成するために、スパッタガスに酸素ガスを添加しているが、次善の方法として上記堆積種の形成時にTa25をターゲット材質として含有するスパッタターゲットを用い、その後のTa25膜の通常成膜時に上記のようなTaターゲット9a、9bにより成膜を行うような構成としても良い。ただ、この場合、ターゲット材質のTa25は、スパッタされる際に活性粒子に分解されて出射されるため、基板4上で化学量論にしたがったTa25から成る膜構造を形成する確証はない。したがって、補助的にスパッタガスに酸素ガスを添加し、酸化物生成の効果を確実にすることが望ましい。
【0031】
また、本実施の形態においては、交互層を構成する両薄膜に、SiO2膜とTa25膜とを用いたが、光学薄膜の構成膜に用いる他の化合物、例えば、金属窒化物や金属窒素酸化物から成る化合物膜を用いても良い。この場合、反応ガスに含有させて用いた酸素ガスは、適宜、窒素ガスや窒素酸化ガスに変更させる必要がある。
【0032】
そして、本実施の形態でスパッタガスに含有させて用いた酸素ガスについても、緩衝層として形成される化合物膜が化学的に安定である限りにおいて、他の化合ガスを用いても良く、例えば、窒素ガスなどを用いることが考えられる。
【0033】
【実施例】
[実施例1]図1及び図2に示すスパッタ成膜装置において、基板4として直径300mmのガラス円板を用い、Siターゲット8a、8bとTaターゲット9a、9bとしていずれも2式の2インチ×8インチサイズのものを用いた。この装置の排気系14を作動させて、装置1内部が5×10-5Paに到達するまで排気した後に、スパッタガス導入口15より30sccmのアルゴンガスを導入すると共に、反応ガス導入口16より30sccmの酸素ガスと10sccmのアルゴンガスとを混合させて導入し、装置1内の圧力条件を0.5Paに保つようにした。この状態で、基板ホルダ3を200rpmで回転させ、マイクロ波励起プラズマ源12に2kWの電力を印加すると共に、2式のSiターゲット8a、8bをシャッタ13で覆い、これを載置したスパッタカソード8に1.5kWで40kHzの交流電圧を印加した。そして、シャッタ13を開放し、基板4上に所定膜厚のSiO2膜を第1成膜として形成した。
【0034】
次に、スパッタガス導入口15より導入するガス成分を、40sccmの酸素ガスと30sccmのアルゴンガスとの混合ガスに変更し、シャッタ13で覆ったTaターゲット9a、9bを載置したスパッタカソード9に1.5kWで40kHzの交流電圧を印加した。その後、シャッタ13を開放し、基板4上にTa25膜を形成する。このときにTaターゲット9a、9bの表面は、スパッタガスに添加された酸素ガスにより酸化されているため、これをターゲットに用いて基板4上に形成されるTa25膜は、基板4に到達する前に生成された酸化物状態の堆積種により形成され、全体に亘って完全な酸化膜となる。その後、スパッタガス導入口15より導入していた酸素ガスを遮断すると共に、Taターゲット9a、9bの表面をクリーニングした後、このターゲットを用いた成膜を続行し、所定膜厚の薄膜が形成された時点で、第2成膜の終了とした。
【0035】
その後、第2成膜開始時と同様に、スパッタガスに酸素ガスを添加した状態でSiターゲット8a、8bを用いて第3成膜を開始した後、成膜途中に上記と同様にスパッタガス中の酸素ガスの添加を停止して、基板4上に所定膜厚のSiO2膜を形成した。
【0036】
このようにして、Ta25膜とSiO2膜とから成る交互層を含んだ(LH)52L(HL)5の多層構造の光学薄膜を形成し、中心波長600nmのバンドパスフィルタとした。このようにして得られたフィルタサンプルのフィルタ性能を分光光度計により測定したところ、図3に示すように中心波長における透過率として92%を示し、これにより、おおむね設計値通りの積層膜が形成されたことが分る。
【0037】
[比較例][実施例1]と同様にして第1成膜を行った後も、スパッタガスに酸素ガスを添加せずアルゴンガスのみを用いて以降の成膜を行い、[実施例1]と同様に(LH)52L(HL)5の多層構造を有するバンドパスフィルタを作製した。このフィルタサンプルを分光光度計により測定したところ、図4に示すように中心波長(600nm)における透過率が78%に留まった。
【0038】
[実施例1]と[比較例]とにより、本発明の方法を用いて積層形成した光学薄膜は、光の吸収の少ない良好な光学特性を有することが分る。
【0039】
[実施例2][実施例1]と同様にして多層構造の光学薄膜を形成するに際し、スパッタガス中の酸素ガスにより酸化状態となったターゲットにより基板上に形成された酸化膜層(例えば、[実施例1]における第2成膜により形成されるTa25膜)の厚さを変更し、それぞれの厚さ条件でバンドパスフィルタサンプルを作製した。各サンプルに対する分光光度計の測定により、図5に示す結果が得られた。酸化膜層の厚さが小さいと中心波長に対する吸収が大きくなるが、厚さを増していくに伴って透過率が向上していくことが分る。図5において上記の酸化膜層の厚さが0.5nm程度またはこれを上回るようになると、形成されるバンドパスフィルタの透過率が所望値(80%以上)を確実にクリアできる傾向があることが実験的に確認されている。
【0040】
これは、金属層に隣接して先に形成された酸化膜層がその厚みによって、相対的に高い金属層の反応性を抑制しているためであると考えられる。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明方法により、反応性スパッタリング法により多層から成る積層成膜を行うと、隣り合う薄膜の積層時に生じる界面は、異なる金属成分により構成された金属化合物同士に狭持されて形成されるので、相対的に反応性が高い単体状態の金属を界面近傍から隔離できる。したがって、これらの化合物膜を有して多層構造に積層して構成される光学薄膜は化学的に安定であり、良好な光学特性を備えることができる。
【0042】
また、積層される金属化合物膜中で酸化膜層の厚さを0.5nm以上にして形成することにより、単体金属を上記界面から有効に隔離できるので、上記の光学薄膜の良好な光学特性がさらに確実なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】反応性スパッタリング装置の概略断面図
【図2】図1のI−I線における截断面図
【図3】[実施例1]により作製したバンドパスフィルタサンプルの分光透過率を示すグラフ図
【図4】[比較例] により作製したバンドパスフィルタサンプルの分光透過率を示すグラフ図
【図5】[実施例2]により酸化膜層の厚さ条件を変更して作製したバンドパスフィルタサンプルの酸化膜層の厚さと中心波長における分光透過率との相関を示すグラフ図
【符号の説明】
1 スパッタ成膜装置
4 ガラス基板
6 成膜領域
7 酸化領域
8、9 スパッタカソード
8a、8b 2式Siターゲット
9a、9b 2式Taターゲット
12 マイクロ波励起プラズマ源
13 シャッタ

Claims (4)

  1. 回転可能な基板ホルダを有し成膜領域と酸化領域を有する反応性スパッタリングにより金属成分が互いに異なる化合物膜を有する光学薄膜を積層して形成する方法において、
    基板外で金属成分の酸化物を生成し飛着した酸化膜層を介在させて前記金属成分の酸化物層を成膜し、前記金属成分が異なる化合物膜の一方に他方の化合物膜を積層することを特徴とする光学薄膜の積層方法。
  2. 前記基板外で金属成分の酸化物を生成し飛着した酸化膜層は、前記酸化領域において導入する反応ガスとしての酸素ガスの導入条件は変更せず、前記成膜領域において酸素ガスを導入して形成する請求項1に記載の光学薄膜の積層方法。
  3. 前記酸化膜層は金属酸化物スパッタリングターゲットをスパッタリングして形成する請求項1に記載の光学薄膜の積層方法。
  4. 前記酸化膜層は、0.5nm以上の厚さで形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学薄膜の積層方法。
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