JP4593806B2 - 放射線検出装置の製造方法、蛍光板の製造方法及び放射線検出装置の製造装置 - Google Patents

放射線検出装置の製造方法、蛍光板の製造方法及び放射線検出装置の製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線検出装置及びその製造方法に関し、特に、医療用X線診断装置、非破壊検査装置などに用いられる放射線検出装置及びその製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書においては、放射線の範ちゅうに、X線、α線、β線、γ線などの電磁波も含むものとして説明する。
【0003】
【従来の技術】
近年、医療機業界のデジタル化が加速しており、レントゲン撮影の方式もコンベンショナルなフィルムスクリーン方式からX線デジタルラジオグラフィー方式へのパラダイムシフトが進んでいる。
【0004】
図15は、従来のX線検出装置の断面図である。図15において、110は蛍光板で、柱状結晶化した蛍光体よりなる蛍光体層113と、蛍光体層113を支持するための基材111と、蛍光体層113で変換された光を後述するセンサーパネル100側へ反射するアルミニウム薄膜よりなる反射層112と、蛍光体層113等を外気から保護する有機樹脂よりなる保護層114とを備えている。
【0005】
また、図15において、100はセンサーパネルであり、ガラス基板101と、アモルファスシリコンを用いたフォトセンサー及びTFTからなる光電変換素子部102と、光電変換素子部102で変換された電気信号を伝送する配線部103と、光電変換素子部102及び配線部103を保護する窒化シリコン等よりなる保護層104とを備えている。
【0006】
さらに、センサーパネル100と蛍光体板110とは、接着層120により接着され、その周囲を封止材140によって封止されている。ここで、解像力のばらつきを招かないようにするために、光が透過する各層の厚みを正確に制御する必要がある。特に、接着層120が厚くなりすぎないようにする必要があり、センサーパネル100と蛍光板110とは、接着層120を間に塗布した後に、全体をローラーでしごきながら、接着層120が厚くならないようにしている。
【0007】
なお、図15において、115は蛍光体層113を柱状に結晶化させる際に、ゴミ、蒸着時のスプラッシュ、基材111の表面粗さのばらつきなどによって、部分的に生じた異常成長により形成された数10μmから数100μm程度の突起部である。
【0008】
図16(a)は、図15の突起部115のないセンサーパネル100と蛍光体板110との貼り合わせ部分付近の拡大図である。図16(b)は、図15の突起部115付近の拡大図である。図16において、h0は突起部116付近の接着層120の厚さ、T0’は突起部116から離れた位置の接着層120の厚さをそれぞれ示している。
【0009】
図15の上部から入射したX線が基材111及び反射層112を透過し、蛍光体層113で吸収された後、蛍光体層113は可視光を発光する。この可視光は、図16(a)に示すように、蛍光体層113中をセンサーパネル100側に進むので、拡散することなく、保護層114,接着層120,保護層104を通過して、光電変換素子部102に入射する。
【0010】
光電変換素子部102では、入射した可視光が電気信号に変換され、スイッチングにより、配線部103を通して外部に読み出される。こうして、図15に示すX線検出装置により、入射するX線情報を2次元のデジタル画像に変換している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の技術は、図16(b)に示すように突起部が光電変換素子部のフォトセンサーや、配線部を破壊する場合がある。特に突起部の先端がとがった形状になっていると、先端が容易にフォトセンサーや配線部に侵入してしまい、破壊を増進される。フォトセンサーが破壊されると、デジタル画像に点欠陥が生じるし、配線部が破壊されると線欠陥が生じる。
【0012】
また、突起部の丈が短くて光電変換素子部等を破壊しない場合であっても、突起部がセンサーパネルにより押され、突起部の周辺では突起部を中心にしなり、接着材の厚さh0が他の部分の厚さT0’に比較して厚くなる。そのため、光電変換素子部に入射する可視光の強度が変わり、デジタル画像の解像度が低下する場合がある。
【0013】
一方、突起部がフォトセンサー等を破壊しないように、接着層を厚くして、接着層内に突起部が納まるようにすることも考えられる。しかし、図19に示すように、波長変換層とセンサーパネルとの間のギャップが広くなれば、接着材を厚くする必要があり、よってデジタル画像の解像度は低下する。また、実用的な解像度のレスポンスは一般的に0.7以上であり、この値を切らないようにするためには、接着材の厚さは薄い方が好ましいので、接着層を一律に厚くすることは妥当でない。
【0014】
そこで、本発明は、デジタル画像に欠陥が生じたり、解像度が低下することのない放射線検出装置を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は一つの側面において、放射線を光に変換する柱状結晶構造の波長変換体と、前記波長変換体で変換された光を検知するセンサとが貼り合わされた放射線検出装置の製造方法であって、基材上に蒸着によって前記柱状結晶構造の前記波長変換体を形成する形成工程と、前記波長変換体の表面のうち前記基材とは反対側の表面の凹凸差を低減するように、前記形成工程において前記反対側の表面に部分的に生じたスプラッシュによる異常成長の凸部の少なくとも一部を選択的に除去する除去工程と、前記波長変換体の前記凸部の少なくとも一部が除去された表面に前記センサを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は別の側面において、放射線を光に変換する柱状結晶構造の波長変換体を有する蛍光板の製造方法であって、基材上に蒸着によって前記柱状結晶構造の前記波長変換体を形成する形成工程と、前記波長変換体の表面のうち前記基材とは反対側の表面の凹凸差を低減するように、前記形成工程において前記反対側の表面に部分的に生じたスプラッシュによる異常成長の凸部の少なくとも一部を選択的に除去する除去工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明はさらに別の側面において、放射線を光に変換する柱状結晶構造の波長変換体と、前記波長変換体で変換された光を検知するセンサとを有する放射線検出装置の製造装置にであって、前記波長変換体の表面に部分的に生じたスプラッシュによる異常成長の凸部の位置を検出する手段と、前記凸部の高さを測定する手段と、しきい値と前記凸部の高さとを比較する手段と、前記凸部の高さが前記しきい値を超えている場合に、前記表面の凹凸差を低減するように、前記しきい値を超えた前記凸部の少なくとも一部を選択的に除去する手段とを有することを特徴とする。
【0020】
具体的には、放射線検出装置は、光電変換素子を設けたセンサーパネルと波長変換体を設けた蛍光板とを接着材によって貼り合わせており、蛍光板の貼り合わせ面の凸部である突起部の高さをH、接着層の厚みをTとしたときに、H≦T≦50μmとしている。
【0021】
このために、蛍光板の表面の突起部を検出する工程と、突起部の高さを最大でも50μmとする工程と、波長変換体の全面に保護層を形成する工程と、蛍光板とセンサーパネルとの間の接着層の厚みをコントロールするように貼り合わせる工程とにより、放射線検出装置を製造した。
【0022】
そして、突起部の高さを最大でも50μmとする工程では、突起部を押しつぶす、突起部を削る又は突起部を切り落とすことにより実現している。
【0023】
蛍光板とセンサーパネルと間の接着層の厚みをコントロールするように貼り合わせる工程としては、ローラーによって接着材をしごきながら貼り合わせる、センサーパネルと蛍光板との間に隙間を設け、その中に接着材を流し込む、又は粘着材によって貼り合わせることにより実現している。
【0024】
また、蛍光板の表面の突起を検出する工程は、表面画像のコントラスト異常部を検出し、コントラスト異常部の位置を認識し、コントラスト異常部の高さを顕微鏡で測定するものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のX線検出装置の模式的な断面図である。図1において、110は蛍光板で、柱状結晶化した蛍光体よりなる蛍光体層113と、蛍光体層113を支持するための基材111と、蛍光体層113で変換された光を後述するセンサーパネル100側へ反射するアルミニウム薄膜よりなる反射層112と、蛍光体層113等を外気から保護する有機樹脂よりなる保護層114とを備えている。
【0027】
なお、蛍光体層113は柱状結晶以外に、粒状のものをバインダーで固めたり、単結晶としてもよい。
【0028】
また、図1において、100はセンサーパネルであり、ガラス基板101と、アモルファスシリコンを用いたフォトセンサー及びTFTからなる光電変換素子部102と、光電変換素子部102で変換された電気信号を伝送する配線部103と、光電変換素子部102及び配線部103を保護する窒化シリコン等よりなる保護層104とを備えている。
【0029】
さらに、センサーパネル100と蛍光体板110とは、スペーサ130で蛍光板110とセンサーパネル100との距離が最大で50μm程度となるようにした状態で、接着層120により接着されている。
【0030】
なお、図1において、116は蛍光体層113を柱状に結晶化させる際に、ゴミ、蒸着時のスプラッシュ、基材111の表面粗さのばらつきなどによって、部分的に生じた異常成長により形成された数10μmから数100μm程度の凸部である突起部を高さが最大で50μmに納まるようにしたものである。
【0031】
図2は、図1の突起部116付近の拡大図である。図2において、T1は蛍光板110とセンサーパネル100との距離、H1は突起部116の高さであり、これらの間には後述するような関係が成り立つ。
【0032】
本実施形態は、蛍光板110とセンサーパネル100とを貼り合わせる前に、突起部116の高さを測定し、その高さが以下説明する所定のしきい値を越えていた場合はしきい値内に納まるように修正し、それから蛍光板110とセンサーパネル100とを貼り合わせるものである。
【0033】
そのため、図2に示すように、光電変換素子部102や配線部103が破壊されないようにしたり、蛍光板110がしなることを防止して蛍光板110とセンサーパネル100との距離T1がしきい値内に納まるようになる。
【0034】
図19は、上記しきい値を設定するためのグラフであり、蛍光板とセンサーパネルとの間のギャップと得られるデジタル画像の解像度との関係を示すグラフである。図19において、横軸は蛍光板とセンサー間のギャップ、縦軸はデジタル画像の解像度のレスポンスを示している。
【0035】
図19に示すように、ギャップが広くなるほどデジタル画像の解像度は低下する。また、実用的な解像度のレスポンスは一般的に0.7以上であり、この値を切らないようにするためには、接着材の厚さが0.05mm以下であることが好ましい。
【0036】
これは、一般に接着材として用いられるものは、蛍光体層によって変換された光を充分に透過させる必要があるが、接着材が何もない状態から比べれば若干ではあるが、光を吸収してしまう。したがって図19に示したように蛍光体層113とセンサーパネル100との間のギャップに比べて、実用レベルに達するための厚さを薄くする必要があるためである。
【0037】
そこで、ここでは突起部116の高さが0.05mm、つまり50μm以下となるようにして、突起部116が光電変換素子部102等を破壊しないようにしている。数式で示すと、T1,H1は
50μm≧T1≧H1
となるようにしている。
なお、実際には、工程マージンを考慮すると、より好適にはT1等を、20μm以下にするとよい。そのため、一番高い突起部116の高さH1がたとえば10μmであれば、接着層120の厚さT1は、12μm程度とすればよい。
【0038】
図1の上部から入射したX線が基材111及び反射層112を透過し、蛍光体層113で吸収された後、蛍光体層113は可視光を発光する。この可視光は、蛍光体層113中をセンサーパネル100側に進むので、拡散することなく、保護層114,接着層120,保護層104を通過して、光電変換素子部102に入射する。
【0039】
光電変換素子部102では、入射した可視光が電気信号に変換され、スイッチングにより、配線部103を通して外部に読み出される。こうして、図1に示すX線検出装置により、入射するX線情報を2次元のデジタル画像に変換している。
【0040】
なお、光電変換素子部102は、どのようなタイプのものを用いてもよいが、たとえばCCDやCMOSセンサ、以下説明するようなMIS(Metal Insulator Semiconductor)フォトセンサーを備えるようにしたり、PIN型フォトセンサーを備えるようにすることができる。
【0041】
図17は、MIS型フォトセンサーを備えた光電変換素子部102の等価回路図である。図17において、501,502はそれぞれ変換された電荷を蓄積する第一,第二のキャパシター部、503は第一,第二のキャパシター部501,502に蓄積されている電荷の転送を制御するTFT、510はTFT503のゲートのオン/オフを制御する制御信号を生成するゲートドライブ装置、507はゲートドライブ装置510で生成された制御信号を伝送するゲートライン、506はTFT503により転送された電荷を伝送するシグナルライン、504は転送された電荷を増幅するアンプ、509はアンプ504により増幅された電化を外部に読み出す読み出し装置、508は第一,第二のキャパシター部501,502のバイアス用の電源、505は電源508と第一,第二のキャパシター部501,502とを接続するバイアスラインである。
【0042】
なお、図17では、3×3のピクセルで表現したが、実際は、縦、横方向とも、用途などに応じてN×Mピクセルとすることが可能である。
【0043】
最初、バイアス用電源508より一定の電圧を、バイアスライン505を通して、第一、第二のキャパシター501,502に投入して、これらをリフレッシュしておく。その後、同じくバイアス用電源508より異なる一定電圧を投入した状態で、X線を放射し、蛍光体層113で変換された可視光に応じた量の電子・ホール対(キャリア)を発生させ、第一、第二のキャパシター501,502に蓄積する。
【0044】
この状態でゲートドライブ装置510で制御信号を生成し、ゲートライン507を通じてTFT503のゲートをオンすると、蓄積されていた電荷がシグナルライン506に流れ、アンプ504によって増幅され、読み出し装置509へ転送される。そして、読み出し装置509で所要の信号処理を行うことによって、信号出力を取り出せるようにしている。
【0045】
図18は、PIN型フォトセンサーを備えた光電変換素子部102の等価回路図である。図18において、601はPIN型フォトダイオード部、602は同時に形成されるキャパシター部、603〜610は図17の503〜510とそれぞれ同様の部分である。
【0046】
図18に示す光電変換素子部102は、バイアス用電源608より一定の逆バイアス電圧を、バイアスライン605を通してフォトダイオード601に投入しておく。その状態で、X線を放射し、蛍光体層113で変換された可視光をPIN型フォトダイオード601に照射させて、その光に応じた量の電子・ホール対(キャリア)を発生させ、キャパシター602に蓄積する。
【0047】
この状態でゲートドライブ装置610で制御信号を生成し、ゲートライン607を通じてTFT603のゲートをオンすると、蓄積されていた電荷がシグナルライン606に流れ、以下、図17を用いて説明した場合と同様の手順により信号出力を取り出せるようにしている。
【0048】
つづいて、図1のX線検出装置の製造方法について説明する。本実施形態では、蛍光板110とセンサーパネル100とを接着材の膜厚を制御しながら貼り合せるものである。
【0049】
図3〜図10は、図1のX線検出装置の製造工程図である。まず、図3に示すように、基材111上に反射層112を形成した後に、柱状蛍光体を成長させて蛍光体層113を形成する。図3(a)は蛍光体層113を形成した後の斜視図であり、図3(b)は断面図である。なお、115は蛍光体層113を柱状に結晶化させる際に、ゴミ、蒸着時のスプラッシュ、基材111の表面粗さのばらつきなどによって、部分的に生じた異常成長により形成された数10μmから数100μm程度の突起部である。
【0050】
この際、柱状蛍光体を蒸着によって形成すると、ゴミ等が核になってそこから結晶が異常成長し、突起部115が発生することがある。突起部115の高さは、低いもので10μm程度、高いものになると100〜200μmになる。
【0051】
ここで、上記のように、本実施形態では、接着材の厚みを最大でも50μm、好ましくは20μm以下となるようにするために、突起部115を除去する。ちなみに、蛍光体層113の異常成長のない部分での表面の凹凸はせいぜい数μm程度であるので、解像力の低下を引き起こす心配はない。
【0052】
突起部115を除去するにあたり、まず、図4(a)に示すように、蛍光体層113の表面全体を、蛍光体層113の表面に対して斜めに光源202から光を照射しながら、センサ201で突起部115の位置を特定する。
【0053】
具体的には、突起部115があると、センサ201で検知した信号を画像処理したときに、画像に濃淡が現れるので、処理後の信号を蛍光体層113の位置に対応させて、蛍光体層113の表面のどの部分に突起部116があるかを特定する。
【0054】
ちなみに、実用上、液晶パネルの検査等に用いられる基板検査機を用いるのが好ましい。これには大きくは2種類あり、一つは、光源とラインセンサーとの組み合わせにより、パネル全面の光学画像を読み取って、そのコントラストの異常部を画像処理して把握するものである。もう一つは、光源と光センサとを組み合わせて、異常部の乱反射をセンサで読み取るのものである。
【0055】
前者は、パネル上にパターンが形成されていても異常部を検出できるため、たとえば、蛍光板にパターンが形成されている場合などは、この方法を用いる方がよい。後者は、パターンがない場合のみであるが、検出限界が深く、サブミクロンレベルの異物を検出可能なので、対象とする突起が小さい場合は、この方法を用いるのがよい。どちらを選ぶかは、対象とする蛍光板の状態によって的確な方を選べばよい。
【0056】
つづいて、図4(b)に示すように、位置を特定した各突起部115の高さをさらに顕微鏡203で測定し、除去の必要性を判定する。具体的には、顕微鏡203の焦点位置の差を読み込み、それに基づいて高さを測定する方法や、レーザーを照射して距離の差を読み込む方法とがある。
【0057】
前者は、精度が甘く、数ミクロンの誤差は生じるが、測定が比較的簡単で、マニュアル操作によっても可能である。後者は、特にサブミクロン程度の精度が求められる場合に有効である。得られた高さデータと管理値との比較はソフト上で行えばよい。高さ測定用顕微鏡を異常部に対応させるためには、記憶した位置情報から設置ステージを操作して行う。
【0058】
なお、本実施形態では、突起部115の位置の特定と突起部115の高さの測定とを同工程で行っている。換言すると、一つ目の突起部115の高さの測定は、蛍光体層113上における一つ目の突起部115の位置を特定したら、すぐにその位置に顕微鏡203を移動させて行うようにしている。
【0059】
ここでは、凸部115は、まず解像力レスポンスと接着材120の材料等とに基づいて決定した接着材120の厚さよりも凸部115の高さが高ければ除去し、低ければ除去しない。
【0060】
突起部115の除去は、図5〜図7のいずれかに示すような手法によって行う。図5には、突起部115を押しつぶし治具204によって、上部から押しつぶすことによって、除去する様子を示している。このとき、突起部115だけを押しつぶせるように、先に測定した突起部115の高さに応じて押圧を調整したり、図示しないストッパー機構を設け、必要以上に押しつぶさないようする。また、保護層114が破壊しなければ、保護層114を形成した後に行ってもよい。
【0061】
図6には、回転研磨機205によって突起部115を研磨により除去する様子を示している。除去の際は、削り取られた破片が蛍光体層113の表面を傷つけたりしないように、回転研磨機205にこの破片を吸引する吸引機能を備えておくとよい。なお、回転研磨機205は、ローラー回転機構以外に円盤回転機構を用いてもかまわない。
【0062】
図7には、鋭利な切断手段206を用いて突起部115を切り取る様子を示している。この場合にも、除去の際の破片が、蛍光体層113を傷つけないように吸引機能を備えておくとよい。
【0063】
ちなみに、図6,図7に示すような手法は、押しつぶしに耐えられない蛍光体に適用するとよい。特に、突起部116が細長い形状の場合には図7に示すような手法で行うのが簡易でよい。いずれの方法を選択するかは、突起の特長によって決めればよいが、さまざまな形の突起にも対応するためには、全ての手法を採用可能な装置を用いればよい。
【0064】
図5〜図7に示すいずれかの手法により突起部115を除去した後に、蛍光体層113の表面の凹凸差が50μm以内であるかどうかを、再度、顕微鏡203などによる測定で確かめるとよい。
【0065】
そして、蛍光体層113の表面の凹凸差が50μm以内でなければ、同様の手順により凸部を除去し、蛍光体層113の表面の凹凸差が50μm以内であれば、図8に示すように、保護層114を蛍光体全体に形成することで蛍光板110を完成させる。
【0066】
なお、図8(a)に示すように、保護層114の表面に生じた段差は、必要に応じて図8(b)に示すように、保護層114の表面を平坦にするのが望ましい。保護層114は、平坦化を容易に行えるように、PI、BCBなどの粘性材料をスピンコート等の方法によって塗布するのがよい。なお、保護層114を形成した後に、保護層114の表面の凹凸の有無等を検査するとよい。
【0067】
次に、図9(a)に示すように、蛍光体110の周囲部の構造上の弱さによって発生する接着材の厚さのばらつきや、蛍光体110の端部の破壊を抑えるために、蛍光板110の周囲にスペーサ130を設ける。
【0068】
この状態で、接着材を塗布したセンサーパネル100上に、蛍光板110を載せて、図9(b)に示すように、上からローラー301でしごく。押圧、しごき速度を制御して接着材が最大でも50μm以内に納まるようにする。ローラー301による貼り合わせを行うと、図10に示すように、押圧を下げるほど、また、しごくスピードを速くするほど接着材が厚くなる。
【0069】
図10で説明すると、貼り合わせ前の突起部116の高さがh1だとすると、しごくスピードがV1であれば押圧はP2〜P1になる。しごくスピードがV2であれば押圧はP4〜P3にする。
【0070】
また、ローラー301による貼り合わせを行うと、蛍光板110全体の剛性が高いほど接着材が厚くなる。さらに、接着材の粘度は小さいほど膜厚が薄くなるので、接着材の厚みをコントロールするためには相応の粘性が必要である。十分に粘性を備えたものを使用しない場合には、ストッパー130で、厳密に接着材の厚さが最大で50μm以内になるようにすればよい。
【0071】
このローラーによる貼り合わせ方法は、上部からある程度の圧力で蛍光体を押すので、圧力のコントロールには正確さが必要だが、歩留まりよく製造することが可能である。
【0072】
この他にも、センサーパネル100と蛍光板110との間に決められたギャップを設けて、センサーパネル100と蛍光板110との間に接着材を流し込んだり、接着材として粘着材を用いて、センサーパネル100と蛍光板110とを押しながら貼り合わせてもよい。
【0073】
前者は、貼り合わせる2枚の対象物を別々の平面基準に吸着させ、あらかじめ接着層のギャップを決めた上で、その中に圧力差を用いて低粘度接着材を流し込むものである。ギャップを決める手段としては、装置側にストッパー機構を設けてもよいし、貼り合わせ対象物の間にストッパー130を設けてもかまわない。この方法は、機械的な衝撃が最も少ないため、機械強度の弱い対象物に適している。
【0074】
後者は、接着前に塗布する粘着材の膜厚を目的の値に制御し、貼り合わせるものである。このため、貼り合わせときの制御が楽で、圧力差を利用して膨張する風船で押し付けてもかまわないし、先に述べたローラーで押し付けてもかまわない。
【0075】
以上説明したように、図1に示すX線検出装置は、蛍光体層113の表面には、最大でも高さが50μmである突起部116しか残っていないので、光電変換素子部102等が破壊されないし、デジタル画像の解像度の低下しない。
【0076】
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2のX線検出装置の模式的な断面図である。図11には、図1のスペーサ130に代えて、封止材140を用いている例を示している。
【0077】
図12は、図11に示すX線検出装置の製造装置であって、蛍光板110とセンサーパネル100との貼り合わせ装置の模式的な構成図である。図12に示す貼り合わせ装置は、蛍光板110側を基準プレート401に接触させて、真空配管412を通じてポンプ411でたとえば大気圧以下に引き、基準プレート401で蛍光板110を保持する。
【0078】
また、センサーパネル100側を基準プレート402に接触させて、真空配管422を通じてポンプ421でたとえば大気圧以下に引き、基準プレート402でセンサーパネル100を保持する。
【0079】
このとき、接着面相互のギャップは、基準プレート401,402相互のギャップ調整機能を装置、又は基材111と基板101との間に備えてもよい。また、このギャップ寸法は、突起部116の高さ以上に合せられている。さらに、この状態にする前の基準プレート401,402の表面は清掃してゴミがチャック面に挟まれないようにしなければならない。
【0080】
この状態で、周囲に封止材140を塗布、硬化するが、必要な部分に接着材供給パイプ432とバキュームパイプ444の挿入口を設けておく。一方、接着材タンク431には硬化前の接着材150を充填しておき、真空ポンプ441でバキュームパイプ442,444を通じて排気することによって、接着材150をギャップ内に流し込む。
【0081】
このとき、余分な接着材150が真空ポンプ441側に流れ込まないように、バッファータンク443をバキュームパイプ444と真空ポンプ441側に設けておき、ここで捕獲する。
【0082】
用いる接着材は、流動性のよい低粘度のものがよい。蛍光体110とセンサーパネル100のギャップ内に一様に接着材が満たされたら、バキュームを終え、接着材供給パイプ432とバキュームパイプ444とを抜き取り、封止材140に空いた穴を、封止材140と同じ材料の封止剤でふさいで、硬化させておく。
【0083】
接着材150が硬化するまでは、基準プレート401,402でのチャックを続け、接着層を一定ギャップ幅におさめておかねばならない。接着材150が充分硬化したら、基準プレート401,402の真空を解除し、ワークを抜き取る。
【0084】
このような貼り合わせ工程を用いれば、実施形態1で説明した手法に比べ、貼り合わせたときの蛍光板110とセンサーパネル100との間の衝撃が一層軽減されるので、構造的に弱いもの同士を接着する際には有効である。
【0085】
(実施形態3)
図13は、本発明の実施形態3のX線検出装置の模式的な断面図である。本実施形態では、たとえばペースト状の粘着材160により蛍光板110とセンサーパネル100とを貼り合わせている。
【0086】
図14は、図13のX線検出装置の貼り合わせ工程を説明する断面図である。
図14(a)は、蛍光板に粘着材160を塗布した状態の断面図である。図14(b)は、図13に示すX線検出装置の製造装置であって、蛍光板110とセンサーパネル100との貼り合わせ装置の模式的な構成図である。
【0087】
実施形態1で説明した手法と同様の手法で作成された蛍光板110に、粘着材160を塗布する(図14(a))。すると、粘着材160はペースト状であるので、表面が平坦となり、たとえば図8(a)に示す状態から、図8(b)に示す状態への加工処理が不要となる。なお、粘着材160の膜厚は突起の高さ以上にする必要がある。
【0088】
そして、この蛍光板110をセンサーパネル100側に粘着材160を介して載置した状態にして、その上部からバルーンゴム701によって押し付けて貼り合わせを行う。
【0089】
封止剤703で周囲が封止されたバルーンゴム701と蓋702との間の空間704には、コンプレッサー711から配管712を通して、圧縮気体が供給されており、この中の圧力を上げることによってバルーンゴム701を膨張させるものである。
【0090】
圧縮気体の供給は、コンプレッサー711の削減の意味も含め、工場内の窒素ガスを用いてもかまわず、他の安全な圧縮気体を用いてもかまわない。バルーンゴム701は、図14(b)では、蛍光体110の中心部から周辺部に徐々に基材111を押し始めるので、粘着材160とセンサーパネル100との間に、混入した空気層は周囲の方に押し出され、気泡のない貼り合わせが可能となる。
【0091】
こうして、粘着材160とセンサーパネル100とを貼り合わせると、与えられた衝撃を粘着材160によって支えることができることをはじめ、粘着材160の塗布量によって接着層の厚みを管理することが可能になる。
【0092】
従って、上部から押し付ける際の押し圧コントロールも簡単となり、生産性を高くすることができる。本例では、圧縮気体によってバルーンゴム701を膨張させる方法を述べたが、貼り合わせサンプル全体を真空系に閉じ込め、大気圧によってバルーンゴム701が貼り合わせ面側に膨らみ、その力で押し込むことを利用して行ってもかまわない。
【0093】
さらに、実施形態1で説明したように、ローラーによって粘着材160とセンサーパネル100との間に空気層ができないようにしてもよい。
【0094】
以上、本発明の各実施形態では、たとえばあるしきい値を、突起部116の高さが越えているような場合に、その突起部116を少なくとも一部除去してしきい値内に納まるようにしているが、たとえば蛍光板110とセンサーパネル100との貼り合わせの際にこれらに外力がかかっても、センサを破壊しないように、一律に全ての突起部116の先端を、センサ面に平行となるようにしてもよい。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、表面の凹凸を小さくした波長変換体を、接着材を介してセンサと貼り合わせるので、デジタル画像に欠陥がなく、解像度が低下することのない放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1のX線検出装置の模式的な断面図である。
【図2】図1の突起部付近の拡大図である。
【図3】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図4】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図5】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図6】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図7】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図8】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図9】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図10】図1のX線検出装置の製造工程図である。
【図11】本発明の実施形態2のX線検出装置の模式的な断面図である。
【図12】図11に示すX線検出装置の製造装置の模式的な構成図である。
【図13】本発明の実施形態3のX線検出装置の模式的な断面図である。
【図14】図13のX線検出装置の貼り合わせ工程を説明する断面図である。
【図15】従来のX線検出装置の模式的な断面図である。
【図16】図15の突起部付近の拡大図である。
【図17】MIS型フォトセンサーを備えた光電変換素子部の等価回路図である。
【図18】PIN型フォトセンサーを備えた光電変換素子部の等価回路図である。
【図19】接着材と得られるデジタル画像の解像度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
100 センサーパネル
101 ガラス基板
102 光電変換素子部
103 配線部
104 窒化シリコン等よりなる保護層
110 蛍光板
111 基材
112 Al等よりなる反射層
113 柱状の蛍光体よりなる蛍光体層
114 有機樹脂等よりなる保護層
115,116 蛍光体の突起部
120 透明な接着材よりなる接着層
130 スペーサ
140 封止材
150 接着材
160 粘着材
201 センサ
202 光源
203 顕微鏡
204 押しつぶし治具
205 回転研磨機構
206 切断手段
301 ローラー
401 基準プレート
402 基準プレート
411,421 ポンプ
412,421 真空配管
431 接着材タンク
432 接着材供給パイプ
441 真空ポンプ
433 バッファータンク
444 バキュームパイプ
501 第一のキャパシター部
502 第二のキャパシター部
503,603 TFT部
504,604 アンプ
505,605 バイアスライン
506,606 シグナルライン
507,607 ゲートライン
508,608 バイアス用の電源
509,609 シグナル読み出し装置
510,610 ゲートドライブ装置
601 PIN型フォトダイオード部
602 キャパシター部
701 バルーンゴム
702 蓋
703 封止材
704 空間
711 コンプレッサー
712 配管

Claims (12)

  1. 放射線を光に変換する柱状結晶構造の波長変換体と、前記波長変換体で変換された光を検知するセンサとが貼り合わされた放射線検出装置の製造方法であって、
    基材上に蒸着によって前記柱状結晶構造の前記波長変換体を形成する形成工程と、
    前記波長変換体の表面のうち前記基材とは反対側の表面の凹凸差を低減するように、前記形成工程において前記反対側の表面に部分的に生じたスプラッシュによる異常成長の凸部の少なくとも一部を選択的に除去する除去工程と、
    前記波長変換体の前記凸部の少なくとも一部が除去された表面に前記センサを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
    を有することを特徴とする製造方法。
  2. 前記除去工程において、前記反対側の表面の凹凸差が50μm以内となるように前記凸部の少なくとも一部を選択的に除去することを特徴とする請求項に記載の製造方法。
  3. 前記貼り合わせ工程は、前記凸部の少なくとも一部が除去された波長変換体と前記センサとの間に塗布された接着材を該波長変換体と該センサとで挟む際に前記接着材の厚さを調整する工程と含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記貼り合わせ工程は、
    前記波長変換体と前記センサとの間の隙間が最大で50μmとなるように前記波長変換体と前記センサとを保持する工程と、
    前記隙間に接着材を流し込む工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. 前記接着材は、粘着材であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
  6. 前記除去工程は、前記凸部を押しつぶす工程を含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の製造方法。
  7. 前記除去工程は、前記凸部を削る工程を含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の製造方法。
  8. 前記除去工程は、前記凸部を切り取る工程を含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項記載の製造方法。
  9. 前記除去工程の前に前記凸部の高さを測定する工程をさらに有し、
    前記除去工程において、前記測定された高さがしきい値を越えている凸部の少なくとも一部を、該凸部の高さが前記しきい値内に収まるように除去することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の製造方法。
  10. 前記波長変換体の表面の画像のコントラストの検知結果に基づいて前記凸部の位置を検出する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の製造方法。
  11. 放射線を光に変換する柱状結晶構造の波長変換体を有する蛍光板の製造方法であって、
    基材上に蒸着によって前記柱状結晶構造の前記波長変換体を形成する形成工程と、
    前記波長変換体の表面のうち前記基材とは反対側の表面の凹凸差を低減するように、前記形成工程において前記反対側の表面に部分的に生じたスプラッシュによる異常成長の凸部の少なくとも一部を選択的に除去する除去工程と、
    を有することを特徴とする製造方法。
  12. 放射線を光に変換する柱状結晶構造の波長変換体と、前記波長変換体で変換された光を検知するセンサとを有する放射線検出装置の製造装置であって、
    前記波長変換体の表面に部分的に生じたスプラッシュによる異常成長の凸部の位置を検出する手段と、
    前記凸部の高さを測定する手段と、
    しきい値と前記凸部の高さとを比較する手段と、
    前記凸部の高さが前記しきい値を超えている場合に、前記表面の凹凸差を低減するように、前記しきい値を超えた前記凸部の少なくとも一部を選択的に除去する手段と
    を有することを特徴とする製造装置。
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