JP4588902B2 - ガルバノミラーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、光ディスクへのデータの記録・再生処理を行なう光ディスク装置や、複数の光ファイバ間の光路の切り換えを行なう光スイッチング装置などの各種の光学装置に組み込まれることにより、所望の光の進路方向を変更するのに用いられるガルバノミラーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来における一般的なガルバノミラーの一例を図10に示す。同図に示すガルバノミラーBは、いわゆる静電駆動方式のものであり、ミラー基板8と電極基板9とが積層されたものである。ミラー基板8は、図11に示すように、表面にミラー面80aが形成されたミラー形成部80が、一対のトーションバー部81を介して枠部82に支持された構造を有している。ミラー形成部80の裏面には、一対の電極83a,83bが設けられているのに対し、図10に示すように、電極基板9には、それらの電極83a,83bに対向する一対の電極90a,90bが設けられている。
【0003】
このような構成によれば、たとえばミラー形成部80の電極83a,83bを正極に帯電させた状態において、電極基板9の電極90aを負極にすると、これらの間には静電力が発生し、ミラー形成部80は、一対のトーションバー部81を捩じりながら矢印Na方向に回転する。また、これに代えて、電極90bを負極にすると、ミラー形成部80は上記とは反対方向に回転することとなる。このように、ミラー形成部80を回転させると、ミラー面80aに向けて進行してくる光の反射方向を所定の方向に切り換えることができる。
【0004】
従来において、上記したミラー基板8を製造するには、その原材料となる適当な基板(図示略)に対してその片面側からウエットエッチングを行い、上記基板に一対のスリット85を上記基板に設ける工程を行なっていた。一対のスリット85は、図11に示すように、互いに向かい合った恰好のコ字状を有しており、上記基板の厚み方向に貫通している。このような手段によれば、ミラー基板8の各部の外形をエッチング処理のみによってかたち取ることができ、その製造が容易化される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の手段においては、次のように未だ改善すべき点があった。
【0006】
すなわち、ガルバノミラーのミラー形成部80に回転動作を行なわせる場合、このミラー形成部80の回転角度は、電極間に発生する静電力と各トーションバー部81の捩じり抵抗とが釣り合う角度となる。したがって、ガルバノミラーの光の反射方向を正確に規定するためには、ガルバノミラーの製造に際して、各トーションバー部81の捩じり抵抗が予め設計された値となるように、各トーションバー部81を正確な寸法に形成する必要がある。
【0007】
ところが、従来の手段においては、基板の片面側からウエットエッチングを施すことによってのみ各トーションバー部81を形成しているために、たとえば上記基板がエッチングに対する異方性をもつような場合には、上記エッチングの時間制御のみによって各トーションバー部81の各部を所望の正確な寸法に仕上げることは難しいものとなっていた。また、従来の手段においては、各トーションバー部81の厚みt1は、ミラー形成部80の厚みt2と常に同一となってしまう。このため、従来においては、ミラー形成部80の厚みt2とは別個に、厚みt1のみを種々に変更することによって、各トーションバー部81が所望の捩じり抵抗をもつようにその設計に多様性をもたせて対処するといったことも難しいものとなっていた。
【0008】
本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、トーションバー部の設計仕様に多様性をもたせることができるとともに、上記トーションバー部の各部を所望の寸法に正確に仕上げることができるガルバノミラーの製造方法を提供することをその課題としている。
【0009】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本願発明の第1の側面によって提供されるガルバノミラーの製造方法は、基板にその厚み方向に貫通する複数のスリットを形成することにより、ミラー形成部と、このミラー形成部を上記複数のスリットを介して囲む枠部と、この枠部に上記ミラー形成部を繋ぐトーションバー部と、を形成する基板処理工程を有している、ガルバノミラーの製造方法であって、上記基板処理工程は、上記基板の片面に有底状の複数の凹溝を設けることにより、上記ミラー形成部、上記枠部および上記トーションバー部のそれぞれの一部を形成する第1のエッチング処理と、上記基板の上記片面とは反対の面のうち、上記複数の凹溝に対向する部分および上記トーションバー部の一部に対向する部分を上記基板の厚み方向にエッチングする第2のエッチング処理と、この第2のエッチング処理の前において、上記複数の凹溝のうち、上記トーションバー部の一部を挟む領域の底面を、上記第2のエッチング処理に対する耐食性を備えた保護部によって覆う工程と、を含んでおり、上記保護部は、上記基板の厚み方向に高さを有しており、かつ上記第2のエッチング処理においては、上記基板のエッチングを上記保護部の中間高さまで行なうことを特徴としている。
【0011】
このような製造方法によれば、次のような効果が得られる。
【0012】
第1に、本願発明によれば、従来とは異なり、トーションバー部の厚みを、ミラー形成部よりも小さな厚みにすることができる。また、このトーションバー部の厚みは、第2のエッチング処理によって所望の寸法に規定することができる。したがって、本願発明によれば、トーションバー部の捩じり剛性を所望の値にするための要素としては、トーションバー部の幅に加えて、その厚みをも要素とすることができ、トーションバー部が所望の捩じり剛性をもつように設計するときのトーションバーの寸法および形状に多様性をもたせて、きめ細かな対応が可能となる。また、このような構成によれば、上記トーションバー部をたとえば断面矩形状に形成するのに好適となる。すなわち、上記基板にエッチング処理を施した場合、厳密には、そのエッチングされた部分の断面は曲面状になり易く、たとえば上記各凹溝の底面が曲面状となる場合がある。したがって、上記第2のエッチング処理において、上記基板のエッチング深さが上記各凹溝の底面の高さに丁度達した時点でそのエッチング処理を終えたのでは、最終的に得られるトーションバー部の角度が直角状にはならず、歪んだ形状に仕上がってしまう虞れがある。これに対し、上記構成によれば、上記トーションバー部に上記各凹溝の底面の近傍部分が含まれないようにして、上記トーションバー部の各角部を直角またはこれに近い角度に仕上げることができるのである。
【0013】
第2に、本願発明によれば、第2のエッチング処理を行なって上記トーションバー部の全体形状を完成させるときには、上記各凹溝の底面が上記保護部によって保護されていることにより、上記トーションバー部の両側面が第2のエッチング処理の雰囲気中に曝されないようにすることができる。すなわち、上記トーションバー部の幅は、上記第2のエッチング処理によっては変化しないようにすることができ、その幅は、上記第1のエッチング処理によって規定することができる。結局、本願発明においては、上記トーションバー部の幅は、上記第1のエッチング処理によって独自に規定することができるとともに、上記トーションバー部の厚みは、上記第2のエッチング処理によって独自に規定することができる。したがって、本願発明においては、従来の基板の片面側からのエッチング処理のみによってトーションバー部全体を形成していた場合と比較すると、トーションバー部の各部を所望の寸法に正確に仕上げることができる。このことは、ミラー形成部を所望の角度に正確に回転させることができる高性能のガルバノミラーを得るのに役立つ。
【0014】
本願発明の好ましい実施の形態においては、上記第1および第2のエッチング処理は、いずれもドライエッチングである。
【0015】
一般的に、ドライエッチングは、ウエットエッチングとは異なり、異方性があり、または異方性が強く、基板を厚み方向にエッチングする際に、それと直交する方向に大きな誤差を生じ難くすることが可能である。したがって、トーションバー部の各部を正確な寸法に仕上げるのにより好ましいものとなる。
【0018】
本願発明の第2の側面によって提供されるガルバノミラーの製造方法は、基板にその厚み方向に貫通する複数ずつの第1および第2のスリットを形成することにより、ミラー形成部と、このミラー形成部を上記複数の第1のスリットを介して囲む中間枠部と、この中間枠部を上記複数の第2のスリットを介して囲む外枠部と、上記ミラー形成部を上記中間枠部に繋ぐ第1のトーションバー部と、上記中間枠部を上記外枠部に繋ぐ第2のトーションバー部と、を形成する基板処理工程を有している、ガルバノミラーの製造方法であって、上記基板処理工程は、上記基板の片面に有底状の複数ずつの第1および第2の凹溝を設けることにより、上記ミラー形成部、上記中間枠部、上記外枠部、ならびに上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を形成する第1のエッチング処理と、上記基板の上記片面とは反対の面のうち、上記各第1および第2の凹溝に対向する部分および上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部に対向する部分を上記基板の厚み方向にエッチングする第2のエッチング処理と、この第2のエッチング処理の前において、上記各第1および第2の凹溝のうち、上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を挟む領域の底面を、上記第2のエッチング処理に対する耐食性を備えた保護膜によって覆う工程と、を含んでおり、上記第1のエッチング処理においては、上記各第1の凹溝を形成する工程と、上記各第2の凹溝を形成する工程とを別々に行ない、これら第1の凹溝と第2の凹溝との深さを相違させることを特徴としている。
【0019】
このような製造方法によれば、上記ミラー形成部が、上記第1およひ第2のトーションバー部のそれぞれの軸心周りに回転可能ないわゆる2軸タイプのガルバノミラーが製造される。そして、上記構成によれば、本願発明の第1の側面の場合と同様な作用により、上記第1および第2のトーションバー部をいずれもミラー形成部、中間枠部および外枠部のそれぞれの厚みとは異なる厚みに形成することができ、第1および第2のトーションバー部が所定の捩じり剛性をもつように設計するときのトーションバーの寸法および形状に多様性をもたせて、きめ細かな対応が可能となる。また、第2のエッチング処理時には、上記保護膜の存在により上記第1及び第2のトーションバー部の両側面が不当にエッチングされないようにすることができ、上記第1および第2のトーションバー部の幅および厚みは、第1および第2のエッチング処理のそれぞれによって個別にかつ正確に規定することができる。したがって、それらの寸法精度を高めることもできる。また、このような構成によれば、第2のエッチング処理において、上記第1の凹溝と第2の凹溝とのそれぞれの深さに見合うように上記基板をエッチングすることにより、上記第1および第2のトーションバー部どうしの厚みを簡単に相違させることが可能となる。
【0022】
本願発明の第3の側面によって提供されるガルバノミラーの製造方法は、基板にその厚み方向に貫通する複数ずつの第1および第2のスリットを形成することにより、ミラー形成部と、このミラー形成部を上記複数の第1のスリットを介して囲む中間枠部と、この中間枠部を上記複数の第2のスリットを介して囲む外枠部と、上記ミラー形成部を上記中間枠部に繋ぐ第1のトーションバー部と、上記中間枠部を上記外枠部に繋ぐ第2のトーションバー部と、を形成する基板処理工程を有している、ガルバノミラーの製造方法であって、上記基板処理工程は、上記基板の片面に有底状の複数ずつの第1および第2の凹溝を設けることにより、上記ミラー形成部、上記中間枠部、上記外枠部、ならびに上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を形成する第1のエッチング処理と、上記基板の上記片面とは反対の面のうち、上記各第1および第2の凹溝に対向する部分および上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部に対向する部分を上記基板の厚み方向にエッチングする第2のエッチング処理と、この第2のエッチング処理の前において、上記各第1および第2の凹溝のうち、上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を挟む領域の底面を、上記第2のエッチング処理に対する耐食性を備えた保護膜によって覆う工程と、を含んでおり、上記第1のエッチング処理においては、上記各第1および第2の凹溝を同時に形成し、かつ上記第2のエッチング処理においては、上記第1のトーションバー部を形成するためのエッチングの深さと、上記第2のトーションバー部を形成するためのエッチングの深さとを互いに相違させることを特徴としている。
【0023】
このような構成によっても、上記第1および第2のトーションバー部との厚みを互いに相違させることができる。また、上記第1のエッチング処理においては、上記各第1および第2の凹溝を同時に形成するため、全体の工程数を少なくするのに好適となる。
【0026】
本願発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0028】
図1および図2は、本願発明に係るガルバノミラーの一実施形態を示している。本実施形態のガルバノミラーAの基本的な構造は、図10に示した従来のガルバノミラーと同様である。すなわち、このガルバノミラーAは、いわゆる静電駆動方式のものであり、ミラー基板1と電極基板2とが積層された構成を有している。ミラー基板1は、たとえばシリコン製の基板を用いて後述する製造方法により製造されたものであり、厚み方向に貫通する所定形状の一対のスリット10が設けられていることにより、これら一対のスリット10によって外周形状がかたち取られた略矩形のミラー形成部11と、このミラー形成部11を一対のスリット10を介して囲んでいる枠部12と、この枠部12とミラー形成部11とを繋ぐ一対のトーションバー部13とを有している。
【0029】
ミラー形成部11の表面には、ミラー面11aが形成され、かつその裏面には、一対の電極14a,14bが設けられている。これらミラー面11aや電極14a,14bは、金属膜を蒸着するなどして形成されている。各スリット10の幅は、たとえば数十μm程度の細幅とされている。ミラー形成部11の厚みは、たとえば300μm程度である。一対のスリット10の両端部10aどうしは、一定方向(図1のx方向)において互いに間隔を隔て、かつ上記一定方向とは直交する方向(図1のy方向)に延びる直線状に形成されており、各トーションバー部13は、一対のスリット10のそれぞれの端部10aどうしの間に挟まれたかたちに形成されている。各トーションバー部13の厚みtaは、ミラー形成部11の厚みtbよりも小さくされている。ミラー基板1は、枠部12の裏面が電極基板2の外周縁の凸状段部20の上向き面に接合されていることにより、電極基板2の上に積層されている。電極基板2は、ミラー基板1の一対の電極14a,14bに対して適当な間隔を隔てて対向する一対の電極21a,21bを具備している。
【0030】
次に、上記構成のガルバノミラーAの製造方法の一実施形態について、図3および図4を参照して説明する。
【0031】
まず、図3(a)に示すように、ミラー基板1の原材料となるシリコン製の基板1aの表面(片面)に、レジスト層30をパターン形成する。基板1aとしては、シリコンウェハを用いることができる。レジスト層30は、基板1aの表面のうち、各スリット10の形成予定箇所に開口部30aを有し,かつ基板1aの表面のそれ以外の部分の全体を覆うパターン形状にされたものである。
【0032】
レジスト層30の形成後には、基板1aに対してその表面側から第1のエッチング処理を施す。このエッチングは、たとえばICP(Inductivery Coupled Plasma) エッチングとする。このICPエッチングは、半導体製造プロセスで多用されているドライのエッチング方式であり、異方性を有し、深溝を形成するのに好適である。この第1のエッチング処理により、図3(b)に示すように、一定深さL1の有底状の凹溝10a',10’を形成する。なお、凹溝10a'は、図1に示した各スリット10の端部10aを形成するための部分であり、凹溝10’は各スリット10の端部10a以外の箇所を形成するための部分である。このような凹溝10a',10’を基板1aに設けることにより、この基板1aの上面部には、図1に示したミラー形成部11、枠部12および各トーションバー部13のそれぞれの一部(上部)が形成されることとなる。図3(b)において、一対の凹溝10a',10a'の間には、トーションバー部13の一部13’が形成されている。
【0033】
次いで、図3(c)に示すように、各凹溝10a'内に、ICPエッチングに対する耐食性をもつ保護部4を適当な高さh1に設け、この保護部4によって各凹溝10a'の底面を覆う。この保護部4を設けるための具体的な手段としては、適当なレジストを基板1aの表面側からスプレイする手段を用いることができる。このような手段によれば、各凹溝10a'の底面以外の部分にもレジストが広く塗布される虞れがあるが、そのようになってもかまわない。要は、保護部4は、スリット10を形成するための凹溝のうち、少なくともトーションバー部の一部13’を挟む領域の底面に設けられていればよい。保護部4を設けるための他の手段としては、たとえば各凹溝10a'の底面部分に酸化処理を施す手段を採用することもできる。
【0034】
保護部4を設けた後には、基板1aの裏面側から第2のエッチング処理を行なう。より具体的には、まず図3(d)に示すように、基板1aの裏面にレジスト層31をパターン形成する。このレジスト層31は、各凹溝10',10a'に対向する部分、およびトーションバー部の一部13’に対向する部分に開口部31aを有している。その後は、図4(e)に示すように、基板1aに対してその裏面側からICPエッチングを施す。これにより、基板1aのレジスト層31の開口部31aに対応する箇所に凹溝10",10a"を形成し、これらの深さを深くしていく。
【0035】
この第2のエッチング処理は、図4(f)に示すように、各凹溝10a"の深さが、保護部4の底面を越えて、保護部4の中間高さになるまで、すなわち保護部4の底面よりも上方であって、かつ保護部4の上面を越えない高さになるまで行なう。これにより、一定の厚みを有するトーションバー部13を形成することができる。各凹溝10a"の深さが、保護部4の底面の高さを越えた場合であっても、各凹溝10a'の底面はこの保護部4によって覆われているために、トーションバー部13の両側面13a,13aが、ICPエッチングの処理雰囲気に曝されないようにすることができる。したがって、各側面13aが第2のエッチング処理時に不当にエッチングされることはない。
【0036】
また、この第2のエッチング処理によれば、凹溝10" を凹溝10' に連通させることができ、これにより基板1aの厚み方向に貫通したスリット10の端部10a以外の部分が適切に形成される。上記した第2のエッチング処理を終えた後には、保護部4やレジスト層31を除去する。これにより、図4(g)に示すように、トーションバー部13を挟むスリット10の端部10aを基板1aに貫通させた状態に形成することができる。
【0037】
上記した一連の工程によれば、図1および図2に示したガルバノミラーAのミラー基板1の各部の外形をかたち取ることができる。ミラー面11aや一対の電極14a,14bは、上記した一連の工程を行なう前に基板1aに予め設けておけばよく、このようなことによりミラー基板1を製造し、ガルバノミラーAを製造することができる。もちろん、ミラー面11aや一対の電極14a,14bの形成工程は、上記した一連の工程の後に行なうようにすることもできる。
【0038】
上記製造方法によれば、第2のエッチング処理時においては、トーションバー部13の両側面13a,13aが不当にエッチングされないようにされているために、トーションバー部13の幅Wは、第1のエッチング処理によって規定された幅のままに維持される。したがって、第1のエッチング処理は、トーションバー部13の幅Wを所定の幅にできるように配慮して行なえばよいこととなり、その幅の寸法精度を高くすることができる。とくに、ドライエッチングであるICPエッチングによれば、上記の幅Wをより正確に規定することができる。一方、第2のエッチング処理は、トーションバー部13の厚みtaが所定の高さになるように時間制御すればよい。したがって、その厚みtaの寸法精度も高いものにすることができる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、各トーションバー部13の幅Wおよび厚みtaを所望の寸法に正確に規定することができる。したがって、図1および図2に示すガルバノミラーAにおいて、電極14a,21a間、または電極14b,21b間に静電力を発生させることによってミラー形成部11を各トーションバー部13の軸心周りに回転させるときには、各トーションバー部13に所望の捩じり抵抗力を発揮させて、ミラー形成部11を所定の傾斜角度で正確に停止させることが可能となる。また、各トーションバー部13は、ミラー形成部11の厚みtbとは異なる厚みにすることができるために、各トーションバー部13の捩じり剛性を所定の値に設定する場合には、各トーションバー部13の幅Wと厚みtaとのそれぞれの寸法値を適宜選択することにより、きめ細かく対応することも可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態においては、トーションバー部13を形成するに際して、図4(f)に示したように、凹溝10a"の深さが、保護部4の底面を越える深さとなるようにしているために、トーションバー部13の断面を正確な矩形にするのに好ましいものとなる。すなわち、図面においてはエッチングされた部分の外形を直線状に表わしているが、ICPエッチング法を用いてエッチングされた部分の外形は、厳密には直線状にはならず、曲線状となる。このため、たとえば図3(b)に示した凹溝10a'の底部は、実際には、丸みを帯びた形状となっている。したがって、図4(e),(f)に示す凹溝10a"の深さが保護部4の底面の高さに丁度一致する位置となったときに第2のエッチング処理を終了すると、トーションバー部13の下部が凹溝10a'の底部の丸みを帯びた形状の影響を受けることとなって、トーションバー部13が正確な断面矩形状にならない虞れがある。これに対し、本実施形態においては、凹溝10a'を越える高さまでエッチングを行なうために、各トーションバー部13の下部が凹溝10a'の底部形状の影響を受けないようにすることができ、各トーションバー部13を所望の断面矩形状にすることができるのである。
【0041】
図5は、本願発明に係るガルバノミラーの他の実施形態を示している。なお、図5以降の図面においては、先の実施形態と同一または類似の要素には、先の実施形態と同一符号を付している。
【0042】
同図に示すガルバノミラーAaは、いわゆる2軸タイプのものであり、そのミラー基板1Aは、ミラー形成部11、このミラー形成部11を一対の第1のスリット10を介して囲む中間枠部12、この中間枠部12にミラー形成部11を繋ぐ一対の第1のトーションバー部13、一対の第2のスリット10Aを介して中間枠部12を囲む外枠部12A、およびこの外枠部12Aに中間枠部12を繋ぐ一対の第2のトーションバー部13Aを具備している。ミラー形成部11、中間枠部12、および第1のトーションバー部13は、先の実施形態に係るガルバノミラーAの各部と同様な構成である。
【0043】
各第2のスリット10Aは、ミラー基板1Aの厚み方向に貫通しており、その両端部10bは、各第1のスリット10の両端部10aが延びる方向とは直交する方向に延びている。各第2のトーションバー部13Aは、一対の第2のスリット10Aの互いに隣り合う端部10bどうしの間に挟まれている。第1および第2のトーションバー部13,13Aは、いずれもミラー基板1の他の部分よりも厚みが小さくされており、第2のトーションバー部13Aの厚みtcは、第1のトーションバー部13の厚みtaよりも大きくされている。中間枠部12の裏面には、一対の電極14c,14dが設けられている。これに対し、電極基板2には、それらの電極14c,14dに対応する電極21c,21dが電極21a,21bに加えて設けられている。
【0044】
このガルバノミラーAaは、電極14a,14bと電極21a,21bとの間に生じる静電力によって、ミラー形成部11を各第1のトーションバー部13の軸心周りの矢印N1方向に回転させることができるのに加え、電極14c,14dと電極21c,21dとの間に生じる静電力によって、ミラー形成部11および中間枠部12を各第2のトーションバー部13Aの軸心周りの矢印N2方向にも回転させることができる。
【0045】
上記構成のガルバノミラーAaのミラー基板1Aは、次のようにして製造することができる。ただし、この製造方法においては、所定の基板に各第1および第2のスリット10,10Aを形成することにより、第1および第2のトーションバー部13,13Aが形成されると同時に、ミラー基板1Aの他の部分の外形も同時に形成されるために、以降の説明においては、主として、第1および第2のトーションバー部13,13Aの形成工程について説明する。
【0046】
まず、図6(a)に示すように、基板1aの表面に所定のパターン形状のレジスト層32を形成した後に、同図(b)に示すように、基板1aに対してその表面側からICPエッチングを行なう。これにより、有底状の複数の凹溝10b'を形成する。各凹溝10b'は、第2のスリット10Aの端部10bを形成するための凹溝であり、互いに隣り合う一対の凹溝10b'の間には、第2のトーションバー部13Aの一部13A'が形成されている。図面上は省略しているが、各凹溝10b'の形成と同時に第2のスリット10Aの端部10b以外の部分を形成するための凹溝も形成される。
【0047】
次いで、同図(c)に示すように、基板1aの表面に、上記したレジスト層32に代えて、異なるパターン形状のレジスト層33を形成する。このレジスト層33は、第1のスリット10に対応する凹溝を形成するためのものであり、このレジスト層33を形成するときには、その一部のレジストが各凹溝10b'の底面に付着することにより、各凹溝10b'内には保護部4A が設けられる。その後は、基板1aの表面側から再度のエッチングを行い、同図(d)に示すように、凹溝10a'を形成する。この凹溝10a'は、第1のスリット10の端部10aに対応する凹溝であり、互いに隣り合う一対の凹溝10a'の間には、第1のトーションバー部13の一部13’が形成されている。各凹溝10a'は、各凹溝10b'よりも浅い深さとする。なお、この場合にも、図面上は省略しているが、各凹溝10a'の形成と同時に第1のスリット10の端部10a以外の部分を形成するための凹溝も形成される。
【0048】
各凹溝10a'の形成後には、図7(a)に示すように、各凹溝10a'内の底面に保護部4を設けて、その底面を覆う。その後は、同図(f)に示すように、基板1aの裏面にレジスト層34を形成してから、基板1aの裏面側からICPエッチングを施し、各凹溝10b'に対向する部分、および第2のトーションバー部の一部13A'に対向する部分をエッチングする。その際のエッチング深さは、保護膜4Aの中間高さとする。これにより、所定厚みを有する第2のトーションバー部13Aを形成することができる。
【0049】
その後は、同図(g)に示すように、基板1aの裏面に、レジスト層34に代えて、レジスト層35を形成してから、基板1aの裏面側からICPエッチングを再度施し、各凹溝10a'に対向する部分および第1のトーションバー部の一部13’に対向する部分をエッチングする。その際のエッチング深さは、保護部4の中間高さとする。これにより、所定厚みを有する第1のトーションバー部13の全体をかたち取ることができる。その際、第2のトーションバー部13Aの下部については、レジスト層35の一部をなすレジストによって覆っておくことにより、この部分が不当にエッチングされないようにすることが可能である。第1のトーションバー部13を形成した後には、同図(h)に示すように、保護部4,4Aおよびレジスト層34,35を除去する。
【0050】
上記した一連の工程によれば、第1および第2のトーションバー部13,13Aのそれぞれの厚みを互いに相違させることができ、図5に示した構成のミラー基板1Aを適切に製造することができる。2軸タイプのガルバノミラーAaにおいては、第2のトーションバー部13Aがミラー形成部11および中間枠部12を支持するために、第2のトーションバー部13Aの剛性を第1のトーションバー部13の剛性よりも大きくする必要がある。これに対し、上記した製造工程によれば、第2のトーションバー部13Aを第1のトーションバー部13よりも大きな厚みにすることができるために、この厚みの差によって第2のトーションバー部13Aの剛性を第1のトーションバー部13の剛性よりも大きくすることが簡単に行なえることとなる。第1および第2のトーションバー部13,13Aを形成する際に、保護部4,4Aの存在により、それらの両側面が不当にエッチングされないようにできることは先の実施形態と同様である。
【0051】
図8および図9は、上記したミラー基板1Aの製造方法の他の例を示している。
【0052】
まず、図8(a)に示すように、基板1aの表面にレジスト層35を形成してから、エッチングを行なうことにより、有底状の複数の凹溝10a',10b'を形成する。これらの凹溝10a',10b'は、同時に形成されるため、その深さは同一である。次いで、同図(b)に示すように、各凹溝10a',10b'内にレジストを充填するなどして保護部4,4Aを設ける。この場合、保護部4,4Aのそれぞれの高さh2を比較的高くしておく。凹溝10a',10b'内の全域を保護部4,4Aによって埋め尽くしてもかまわない。
【0053】
その後は、同図(c)に示すように、基板1aの裏面にレジスト層36を形成してから、基板1aの裏面側に対してエッチングを施し、各凹溝10b'に対向する部分、および第2のトーションバー部の一部13A'に対向する部分をエッチングする。このエッチングにより、第2のトーションバー部13の全体をかたち取ることができる。その後、図9(d)に示すように、基板1aの裏面には、レジスト層36に代えて、レジスト層37を新たにパターン形成する。このレジスト層37の一部をなすレジストにより、第2のトーションバー部13Aの下部を覆う。
【0054】
次いで、同図(e)に示すように、基板1aの裏面側に対してICPエッチングを施し、基板1aの裏面側の各凹溝10a'に対向する部分、および第1のトーションバー部の一部13’に対向する部分をエッチングする。このエッチング処理に際しては、そのエッチング深さが、第2のトーションバー部13Aの形成時のエッチング深さよりも深くなるまで行なう。このようにすれば、そのエッチングにより形成される第1のトーションバー部13の厚みを、第2のトーションバー部13Aの厚みよりも小さくすることができる。その後は、同図(f)に示すように、保護部4,4Aやレジスト層36,37を基板1aから除去し、基板1aに貫通した端部10a,10bを含む第1および第2のスリット10,10Aを完成させることができる。
【0055】
上記した一連の工程によっても、第1および第2のトーションバー部13,13Aの厚みを互いに相違させることができ、図5に示した構成のミラー基板1を適切に製造することができる。また、上記工程によれば、基板1aの表面に各凹溝10a',10b'を同時に形成しているために、図6および図7に示したように各凹溝10a',10b'を別々の工程で形成する場合と比較すると、全体の作業工程数を少なくし、生産性を高めることができる利点が得られる。
【0056】
本願発明の内容は、上述した実施形態に限定されない。本願発明に係るガルバノミラーの製造方法の各作業工程の具体的構成は、種々に変更自在である。本願発明に係るガルバノミラーの製造方法は、ガルバノミラーのミラー基板の形成工程に特徴があり、たとえば電極基板の製造工程や、電極基板とミラー基板とを接合するための工程などの内容は一切問うものではない。また同様に、本願発明に係るガルバノミラーの各部の具体的な構成も、種々に設計変更自在である。
【0057】
たとえば、本願発明に係るガルバノミラーは、ミラー形成部11の表裏両面に電極が設けられていることにより、これら表裏の電極のそれぞれを利用した静電力によってミラー形成部11が回転する構造とされていてもかまわない。また、本願発明に係るガルバノミラーは、必ずしも静電駆動方式のものとされている必要もなく、それ以外の圧電力や磁力などによって駆動するように構成されていてもかまわない。また、本願発明に係るガルバノミラーの製造方法で実施されるエッチング処理は、ICPエッチングとは異なる方式のエッチング方法を用いることもできる。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本願発明によれば、トーションバー部の設計仕様に多様性をもたせることができるとともに、トーションバー部の各部を所望の寸法に正確に仕上げることができるガルバノミラーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るガルバノミラーの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すガルバノミラーの組立状態を示す断面図である。
【図3】本願発明に係るガルバノミラーの製造方法の一実施形態の一部の工程を示す断面図である。
【図4】本願発明に係るガルバノミラーの製造方法の一実施形態の一部の工程を示す断面図である。
【図5】本願発明に係るガルバノミラーの他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】本願発明に係るガルバノミラーの製造方法の他の実施形態の一部の工程を示す断面図である。
【図7】本願発明に係るガルバノミラーの製造方法の他の実施形態の一部の工程を示す断面図である。
【図8】本願発明に係るガルバノミラーの製造方法の他の実施形態の一部の工程を示す断面図である。
【図9】本願発明に係るガルバノミラーの製造方法の他の実施形態の一部の工程を示す断面図である。
【図10】従来技術を示す断面図である。
【図11】図10に示すガルバノミラーのミラー基板を示す斜視図である。
【符号の説明】
A,Aa ガルバノミラー
1,1A ミラー基板
1a 基板
10 スリット(第1のスリット)
10A 第2のスリット
10a,10b スリットの端部
11 ミラー形成部
12 枠部(中間枠部)
12A 外枠部
13 トーションバー部(第1のトーションバー部)
13A 第2のトーションバー部
Claims (4)
- 基板にその厚み方向に貫通する複数のスリットを形成することにより、ミラー形成部と、このミラー形成部を上記複数のスリットを介して囲む枠部と、この枠部に上記ミラー形成部を繋ぐトーションバー部と、を形成する基板処理工程を有している、ガルバノミラーの製造方法であって、
上記基板処理工程は、
上記基板の片面に有底状の複数の凹溝を設けることにより、上記ミラー形成部、上記枠部および上記トーションバー部のそれぞれの一部を形成する第1のエッチング処理と、
上記基板の上記片面とは反対の面のうち、上記複数の凹溝に対向する部分および上記トーションバー部の一部に対向する部分を上記基板の厚み方向にエッチングする第2のエッチング処理と、
この第2のエッチング処理の前において、上記複数の凹溝のうち、上記トーションバー部の一部を挟む領域の底面を、上記第2のエッチング処理に対する耐食性を備えた保護部によって覆う工程と、
を含んでおり、
上記保護部は、上記基板の厚み方向に高さを有しており、かつ上記第2のエッチング処理においては、上記基板のエッチングを上記保護部の中間高さまで行なうことを特徴とする、ガルバノミラーの製造方法。 - 上記第1および第2のエッチング処理は、いずれもドライエッチングである、請求項1に記載のガルバノミラーの製造方法。
- 基板にその厚み方向に貫通する複数ずつの第1および第2のスリットを形成することにより、ミラー形成部と、このミラー形成部を上記複数の第1のスリットを介して囲む中間枠部と、この中間枠部を上記複数の第2のスリットを介して囲む外枠部と、上記ミラー形成部を上記中間枠部に繋ぐ第1のトーションバー部と、上記中間枠部を上記外枠部に繋ぐ第2のトーションバー部と、を形成する基板処理工程を有している、ガルバノミラーの製造方法であって、
上記基板処理工程は、
上記基板の片面に有底状の複数ずつの第1および第2の凹溝を設けることにより、上記ミラー形成部、上記中間枠部、上記外枠部、ならびに上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を形成する第1のエッチング処理と、
上記基板の上記片面とは反対の面のうち、上記各第1および第2の凹溝に対向する部分および上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部に対向する部分を上記基板の厚み方向にエッチングする第2のエッチング処理と、
この第2のエッチング処理の前において、上記各第1および第2の凹溝のうち、上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を挟む領域の底面を、上記第2のエッチング処理に対する耐食性を備えた保護膜によって覆う工程と、
を含んでおり、
上記第1のエッチング処理においては、上記各第1の凹溝を形成する工程と、上記各第2の凹溝を形成する工程とを別々に行ない、これら第1の凹溝と第2の凹溝との深さを相違させることを特徴とする、ガルバノミラーの製造方法。 - 基板にその厚み方向に貫通する複数ずつの第1および第2のスリットを形成することにより、ミラー形成部と、このミラー形成部を上記複数の第1のスリットを介して囲む中間枠部と、この中間枠部を上記複数の第2のスリットを介して囲む外枠部と、上記ミラー形成部を上記中間枠部に繋ぐ第1のトーションバー部と、上記中間枠部を上記外枠部に繋ぐ第2のトーションバー部と、を形成する基板処理工程を有している、ガルバノミラーの製造方法であって、
上記基板処理工程は、
上記基板の片面に有底状の複数ずつの第1および第2の凹溝を設けることにより、上記ミラー形成部、上記中間枠部、上記外枠部、ならびに上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を形成する第1のエッチング処理と、
上記基板の上記片面とは反対の面のうち、上記各第1および第2の凹溝に対向する部分および上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部に対向する部分を上記基板の厚み方向にエッチングする第2のエッチング処理と、
この第2のエッチング処理の前において、上記各第1および第2の凹溝のうち、上記第1および第2のトーションバー部のそれぞれの一部を挟む領域の底面を、上記第2のエッチング処理に対する耐食性を備えた保護膜によって覆う工程と、
を含んでおり、
上記第1のエッチング処理においては、上記各第1および第2の凹溝を同時に形成し、かつ、
上記第2のエッチング処理においては、上記第1のトーションバー部を形成するためのエッチングの深さと、上記第2のトーションバー部を形成するためのエッチングの深さとを互いに相違させることを特徴とする、ガルバノミラーの製造方法。
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