JP4588526B2 - N−メタクリロイルアジリジン系重合体ならびにその重合体の製造方法 - Google Patents
N−メタクリロイルアジリジン系重合体ならびにその重合体の製造方法 Download PDFInfo
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こうした背景の下で、特許文献1に見られるように、N−メタクリロイルアジリジン系化合物はα,β‐エチレン性不飽和化合物との共重合だけが試みられている。
すなわち、本発明は、以下(1)〜(4)のN−メタクリロイルアジリジン系重合体ならびにその重合体の製造方法を提供する。
(1)重合開始剤として1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、及び重合添加剤として塩化リチウム。
(2)重合開始剤としてジフェニルメチルカリウム。
本発明のN−メタクリロイルアジリジン系重合体は一般式(II)で表されるN−メタクリロイルアジリジン系化合物単量体を付加重合することにより製造される。
特公平4−65059号公報の「N−置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド類の製造方法」及びそれに引用されている引例では、N−メタクリロイルアジリジン系化合物単量体は、下記一般式(III)で表されるメタクリル酸ハライド
を、下記一般式で表されるアジリジン系化合物(IV)
本発明のN−メタクロイルアジリジン系化合物の具体的な例としては、N−メタクロイル−2−メチルアジリジン、N−メタクロイル−2−エチルアジリジン、N−メタクロイル−2,2−ジメチルアジリジン、N−メタクロイル−2,3−ジメチルアジリジン、N−メタクロイル−2−(n−プロピル)アジリジン、N−メタクロイル−2−(n−ブチル)アジリジンなどが挙げられる。
重合反応を停止させた後、反応混合物から目的のN−メタクリロイルアジリジン系重合体を分離取得する方法としては、特に限定されず、公知の方法に準じた任意の方法を採用することができる。例えば、反応混合物を重合体の貧溶媒に注いで重合体を沈殿させ取得する方法、反応混合物から溶媒を留去して重合体を取得する方法等が採用可能である。
本発明のN−メタクリロイルアジリジン系重合体は、重合に際してアジリジン環が開環せずに、メタクリロイル基の二重結合がビニル重合した構造である。アジリジン環が保持されているため、接着剤や塗料、シーリング剤などの硬化(架橋)システムなど幅広い用途に利用可能である。
なお、各実施例における物性値の測定法は以下の通りである。
また、(a)及び(b)において、核磁気共鳴装置(NMR)は次の仕様のものを用いた。
装置:BRUKER GPX300(300MHz)
重溶媒:CDCl3(1H:7.26ppm、13C:77.1ppm)
単量体(N−メタクリロイル−2−メチルアジリジン)及びその重合体の化学構造を確認するために各試料の1H−NMRと13C−NMRを測定した。
(b)数平均分子量(Mn)
重合開始剤の末端官能基部分と1H‐NMR測定から得られる重合体の繰返し構造単位に含まれる官能基部分との面積比から算出した。
なお、この1H‐NMR測定により算出される数平均分子量(Mn)の実測値(実測分子量)とは別に、重合開始剤の末端官能基部分と単量体/重合開始剤モル比から算出される分子量の計算値(設計分子量)を求め、分子量が設計通りに得られているかを確認した。
(c)分子量分布(Mw/Mn)
下記のゲル浸透クロマトグラフ(GPC装置)において、移動相としてN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF、ヨウ化リチウム0.01モル/L添加品)を用い、カラム温度40℃、送液速度1.0mL/分で測定し、標準ポリスチレン(Mn=36900、9610)を用いて換算した。
装置:TOSOH HLC‐8120(DMF溶媒)、カラム:TSK‐GEL GMHxl ×2+G2000HXL
(d)赤外吸収スペクトル
装置:フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−460Puls(日本分光株式会社製)
測定方法:KBr錠剤法
(1)単量体(N−メタクリロイル−2−メチルアジリジン)の合成
窒素雰囲気下で500mLの二口ナスフラスコにプロピレンイミン(2−メチルアジリジン)8.19g(143ミリモル)とトリエチルアミン14.7g(145ミリモル)を120mLの脱水エーテルで希釈した混合溶液に、メタクリル酸クロリド14.8g(142ミリモル)の脱水エーテル溶液20mLを氷浴下にて20分間かけて滴下し、滴下終了後に氷浴を外して、さらに100mLの脱水エーテルを加え、室温にて5時間撹拌を行った。生成した塩酸塩を吸引ろ過にてろ別し、留出温度61〜62℃、圧力14mmHgにて減圧蒸留を行った。さらに水素化カルシウム存在下、留出温度51〜52℃、圧力9.0mmHgにて減圧蒸留を行い、無色透明の液体であるN−メタクリロイル−2−メチルアジリジン9.92g(79.4ミリモル、収率56%)を得た。
得られたN−メタクリロイル−2−メチルアジリジンの留分を高真空ラインで水素化カルシウム存在下、蒸留した後、テトラヒドロフランで希釈してブレークシールを備えたアンプル中に溶封した。ここで得られた最後の蒸留の成分について、1H−NMR及び13C−NMR測定を行った。図1に1H−NMRの測定結果、図2に13C−NMRの測定結果を示す。1H−NMRスペクトルのシグナルに付されたa、b、c等は、該スペクトルに記された構造式のa、b、c等が付された水素原子に帰属されるものであり、また13C−NMRのシグナルに付されたa、b、c等は、該スペクトルに記された構造式のa、b、c等が付された炭素原子に帰属されるものである。これら1H−NMR及び13C−NMR測定結果から、該留分は目的とするN−メタクリロイル−2−メチルアジリジンであることが確認された。また、ガスクロマトグラフィーにより、該留分はほぼ単一成分であることが確認された。
上記(2)で得られた精製N−メタクリロイル−2−メチルアジリジンの重合は、ブレークシール法によるアニオン重合により10-6mmHgの高真空下、−78℃で72時間行った。重合開始剤にはs−ブチルリチウム/1,1−ジフェニルエチレンの付加物(sBuLi/Ph2C=CH2)を用い、溶媒には少量のシクロヘキサンを含むテトラヒドロフランを用いた。また、重合添加剤(以下、添加剤という)として塩化リチウム(LiCl)を添加した。単量体、重合開始剤及び添加剤の使用量を第1表に示す。所定時間アニオン重合を行った後、ガラス製重合容器を開封し、イソプロパノールを少量添加して重合を停止した。さらに得られた重合溶液を多量のn−ヘキサン中に注ぎ込み、重合体を沈殿させた。この沈殿させた重合体をろ別し、乾燥させた後、収量を測定した。また、乾燥させた重合体をテトラヒドロフランに再溶解し、多量のn−ヘキサン中に注ぎ込み、再沈殿精製を行った。最後にベンゼンに溶解してから凍結乾燥を行い、1H−NMR及び13C−NMR測定を行った。重合条件及び重合結果、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の測定結果を第1表に示す。また、図3に精製した重合体の1H−NMR、図4に13C−NMR、図5に赤外吸収スペクトル及び図6にゲル浸透クロマトグラムの各測定結果を示す。図3中、1H−NMRスペクトルのシグナルに付されたa、b、c等は、それぞれ該スペクトルに記された構造式のa、b、c等が付された水素原子に帰属されるものであり、また、図4中、13C−NMRのシグナルに付されたa、b、c等は、それぞれ該スペクトルに記された構造式のa、b、c等が付された炭素原子に帰属されるものである。
図3及び図4に示したNMRスペクトルから精製した重合体は、ビニル重合体のみからなり、アジリジニル基はアニオン重合に関与せず、定量的に残存していることが確認された。
図5に示した赤外吸収スペクトルにおいて、1,123cm-1付近に見られるアジリジニル基のC−N伸縮振動に帰属されるシグナルと、2,987cm-1付近に見られるアジリジニル基のC−H伸縮振動に帰属されるシグナルからも、得られた重合体がアジリジニル基を含有していることが確認された。また、第1表と図6から、得られた重合体は分子量分布が極めて狭く、数平均分子量の実測値と設計値がほぼ近い値を示していることが確認された。
実施例1の(3)単量体の重合において、単量体、重合開始剤及び添加剤の量を第1表に示すように変更し、重合温度を−40℃、重合時間を5時間とした以外は実施例1と同一の重合条件でアニオン重合を行った。重合結果、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定結果を第1表に示す。
実施例1と同様にして得られた重合体を精製し、1H−NMR、13C−NMR及び赤外吸収スペクトルを測定したところ、精製した重合体はビニル重合体のみからなり、アジリジニル基はアニオン重合に関与せず、定量的に残存していることが確認された。
実施例1の(3)単量体の重合において、単量体、重合開始剤及び添加剤の量を第1表に示すように変更し、重合時間を15時間、重合開始剤としてジフェニルメチルカリウム(Ph2CHK)を用い、塩化リチウムを用いなかったこと以外は実施例1と同一の重合条件でアニオン重合を行った。重合結果、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定結果を第1表に示す。
実施例1と同様にして得られた重合体を精製し、1H−NMR、13C−NMR及び赤外吸収スペクトルを測定したところ、精製した重合体はビニル重合体のみからなり、アジリジニル基はアニオン重合に関与せず、定量的に残存していることが確認された。
実施例1の(3)単量体の重合において、単量体をN,N−ジメチルメタクリルアミド(市販品(東京化成工業株式会社製)を同様の操作で精製したもの)に変更し、単量体、重合開始剤及び添加剤の量を第1表に示すように変更した以外は実施例1と同一の重合条件でアニオン重合を行った。重合条件および重合結果、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定結果を第1表に示す。
比較例1において、単量体、重合開始剤及び添加剤の量を第1表に示すように変更し、重合温度を0℃とした以外は比較例1と同一の重合条件でアニオン重合を行った。重合条件および重合結果、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定結果を第1表に示す。
比較例1及び2において、環形成していないN,N−ジアルキルメタクリルアミドがアニオン重合で重合物を与えないことを確認できた。
上記の実施例1の(2)で得られた精製N−メタクリロイル−2−メチルアジリジンの重合は、ブレークシール法によるアニオン重合により10-6mmHgの高真空下、−40℃で5時間行った。重合開始剤にはs−ブチルリチウム/1,1−ジフェニルエチレンの付加物を用い、溶媒には少量のシクロヘキサンを含むテトラヒドロフランを用いた。また、重合系への添加剤としては塩化リチウムを添加した。単量体、重合開始剤及び添加剤の使用量を第2表に示す。5時間アニオン重合を行った後、重合溶液を−78℃に冷却し、重合溶液の16容量%を分取した。残存した重合溶液を再び−40℃に戻し、精製N−メタクリロイル−2−メチルアジリジンを重合系内に所定量(4.66ミリモル)再添加して、−40℃で5時間行った。その後、ガラス製重合容器を開封し、分取した重合溶液(プレポリマー溶液)と精製N−メタクリロイル−2−メチルアジリジンを再添加した重合溶液(ポストポリマー溶液)それぞれにイソプロパノールを少量添加して重合を停止した。得られた重合溶液をそれぞれ多量のn−ヘキサン中に注ぎ込み、重合体を沈殿させた。この沈殿させた重合体をろ別し、乾燥させた後、収量を測定した。また、乾燥させた重合体をテトラヒドロフランに再溶解し、多量のn−ヘキサン中に注ぎ込み、再沈殿精製を行った。最後にベンゼンに溶解してから凍結乾燥を行い、1H−NMR及び13C−NMR測定を行った。重合条件及び重合結果、数平均分子量(Mn)、分子量分布の測定結果を第2表に示す。1H−NMR、13C−NMR及び赤外吸収スペクトルを測定結果から、プレポリマー及びポストポリマーは共にビニル重合体のみからなり、アジリジニル基は定量的に残存していることが確認された。また、図7に得られたプレポリマーとポストポリマーのゲル浸透クロマトグラムの比較を示す。狭い分子量分布を保ったまま、分子量が増加していることが分かる。
Claims (3)
- 分子量分布(Mw/Mn)が1.2以下である請求項1記載のN−メタクリロイルアジリジン系重合体。
- 請求項1または2に記載のN−メタクリロイルアジリジン系重合体の製造方法であって、
下記一般式(II)で表されるN−メタクリロイルアジリジン系化合物をアニオン重合し、該アニオン重合に際して、下記の(1)または(2)の化合物を用いることを特徴とするN−メタクリロイルアジリジン系重合体の製造方法。
(1)重合開始剤として1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、及び重合添加剤として塩化リチウム。
(2)重合開始剤としてジフェニルメチルカリウム。
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