JP2941003B2 - スチレン類重合体の製造方法 - Google Patents

スチレン類重合体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、スチレン類重合体の製造方法に関するもの
であり、詳しくは、カチオン重合系リビング重合法によ
るスチレン類重合体の製造方法に関するものである。
スチレン類のリビング重合法は、周知の通り、シャー
プな分子量分布のポリマーを与え、ブロックポリマー、
テレケリックポリマー、マクロモノマー等の合成に利用
される重要な技術である。
〔従来の技術〕
スチレン類のリビング重合法は、アニオン重合系によ
るものしか知られていなかったが、本発明者等により、
カチオン重合系のリビング重合法が見い出され、先に提
案されている(特開昭64−43507号)。
上記カチオン重合系のリビング重合法は、プロトン酸
の1つであるHI(ヨウ化水素)とルイス酸の1つである
2価の金属のハロゲン化物(MX2)からなる開始剤を使
用する方法である。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記方法は、スチレン誘導体について
は十分なる重合体を与えるが、スチレンについては未だ
十分ではなく、改良の余地が残されている。
一方、Kennedy等〔Polym.Bull.,19,21(1988)〕とMa
tyjaszewsky等〔Polym.Prepr.,Am.Chem.Soc.,Div.Poly
m.Chem.,29(2),67(1988)〕により、それぞれ独立
して、スチレンと酢酸誘導との付加体よりなる開始剤、
三塩化ホウ素よりなる活性化剤を用いたスチレン自体の
カチオン重合系リビング重合法の報告がなされている。
しかしながら、いずれも、理想的なリビング重合系は
得られず、Kennedy等の系では、生成ポリマーの数平均
分子量(n)は反応したモノマーの量に比例して増加
しているものの、分子量分布(MWD)が広く、Matyjasze
wsky等の系では、生成ポリマーの分子量分布は狭いもの
の、停止反応が併発するという問題がある。
本来、スチレンは、重合反応性が小さく、その成長炭
素カチオンが不安定なため、完全なリビングポリマーを
得ることは必ずしも容易ではない。
本発明の目的は、上機従来法の問題点を解決した、カ
チオン重合系リビング重合法によるスチレン類重合体、
殊に、スチレン重合体の製造方法を提供することにあ
る。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を進め
た結果、特定の開始剤を見出し、本発明を完成するに至
った。
すなわち、本発明の要旨は、一般式〔I〕で表わされ
るスチレン類を一般式〔II〕で表わされる化合物、ルイ
ス酸および四級アンモニウム塩の存在下に重合すること
を特徴とするスチレン類重合体の製造方法に存する。
(式〔I〕中、R1は一価の有機基、R2は水素原子又はメ
チル基を示し、nは0〜5の整数を示す) (式〔II〕中、R3及びR5は水素原子又は一価の有機基、
R4は水素原子又はメチル基、Xは一価のプロトン酸(H
X)のアニオンX-に由来する基を示し、nは0〜5の整
数を示す) 以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法の原料モノマーであるスチレン類
は、前示一般式〔I〕で表わされ、式中、R1は一価の有
機基を示し、有機基としては、例えば、アルキル基、ア
リール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキ
シ基、アルケニル基、アルコキシアルキル基、アリール
オキシアルキル基等が挙げられ、それらはヘテロ基で置
換されていてもよい。nは0〜5の整数を示しまた、R2
は水素原子又はメチル基を示す。
上記の原料モノマーは、1種でも2種以上を共存させ
て使用してもよい。また、上記の1種又は2種以上のス
チレン類を重合させた後、別のスチレン類あるいはアル
ケニルエーテルの1種又は2種以上を添加して更に重合
させることによりブロック共重合体にしてもよい。勿
論、マクロモノマーにすることも可能である。
原料モノマーである上記スチレン類の具体例として
は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチ
レン、p−フェノキシスチレン、P−t−ブトキシスチ
レン、m−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、
p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロ
ロメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、m−メチ
ルスチレン、p−トリメチルシロキシスチレン等が挙げ
られる。これらの中で、スチレン、p−メトキシスチレ
ン、p−フェノキシスチレン、P−トリメチルシロキシ
スチレン、p−t−ブトキシスチレン、P−メチルスチ
レンが好ましく、特にスチレン及びp−メチルスチレン
が好ましく、最も好ましいのはスチレンである。本発明
の製造方法がスチレンに適用できることは経済的効果が
非常に大である。
本発明の製造法で使用される開始剤は、一般式〔II〕
で表される化合物、ルイス酸及び四級アンモニウム塩か
らなる。
上記一般式〔II〕のR3及びR5は水素原子又は一価の有
機基を示す。有機基としては、前記一般式〔I〕のR1
おいて例示した有機基の他エステル基含有アルキル基、
イミド基含有アルキル基、シリル基、シリルオキシル基
などが挙げられる。そして、エステル基含有アルキル
基、イミド基含有アルキル基の例としては、 等を挙げることができる。
特に、R3としては、水素原子、炭素原子1〜6のアル
キル基又はエステル基含有アルキル基が好ましく、特
に、水素原子が最も好ましい。
前記のエステル基含有アルキル基、イミド基含有アル
キル基は、重合中及び/又は重合終了後に修飾し、極性
の官能基にすることも可能であり、その場合、末端に官
能基が導入されたポリマーを得ることが可能となる。
R4は水素原子又はメチル基を示し、R5のnは0〜5の
整数を示す。
Xは1価のプロトン酸(HX)のアニオンX-に由来する
基を示す。具体的には、例えば、CH3SO3−,−HSO4,−C
lO4, FSO3−,CF3SO3−,CF3CO2−,CCl3CO2−,−Cl,−Br,−I
等を挙げることができる。このうちハロゲンが好まし
く、特に、−Br,−Clが好ましい。一般式〔II〕で表さ
れる化合物は、スチレン誘導体にプロトン酸誘導体の共
有結合付加体とみることもできる。
一般式〔II〕で表わされる化合物は、実験室的に簡単
に合成することもできるし、市販品として購入できるも
のは購入してもよい。
ルイス酸は、金属のハロゲン化物から成る電子対受容
体のことであり、SnCl4,SnBr4,BF3,BCl3,AlCl3,AlBr3Et
AlCl2,ZnI2,ZnBr2,ZnCl2,SnCl2等が挙げられる。好まし
いルイス酸は、SnCl4又はSnBr4である。
四級アンモニウム塩は、一般式R6 4NYで表わされ、式
中、R6は一価の有機基、Yは一価のアニオンを示す。R6
としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキ
ル基、シクロアルキル基が挙げられ、Yとしては、I,B
r,Cl,ClO4,SO3CF3,CH3SO3が挙げられる。特に好ましい
四級アンモニウム塩はテトラアルキルアンモニウムクロ
ライド(R6=アルキル基、Y=Cl)である。
本発明における開始剤は、上記の一般式〔II〕で表わ
される化合物、ルイス酸、四級アンモニウム塩をすべて
共存させて構成され、1つでも存在しない場合は、分子
量分布が広くなったり、停止反応が顕著になったり、本
発明の目的は達成し得ない。
上記開始剤の各成分の使用割合は次の通りである。
一般式〔II〕で表わされる化合物、ルイス酸、四級ア
ンモニウム塩の使用モル数を各々〔A〕、〔B〕、
〔C〕で表わした場合、〔B〕/〔A〕及び〔C〕/
〔A〕は、いずれも、0.01〜500、好ましくは0.1〜10
0、特に好ましくは1〜50の範囲である。
〔B〕/〔A〕が0.01未満の場合は、重合速度が著し
く低下すると共に生成物の分子量分布も広くなるので好
ましくなく、500を超えた場合は、ルイス酸自身による
重合が優先し、その結果、生成物の分子量が小さく、分
子量分布が広くなるので好ましくない。〔C〕/〔A〕
が0.01未満の場合は、重合速度が過度に大きくなり、生
成物の分子量分布が広くなるので好ましくなく、500を
超えた場合は、停止反応が起り易くなるので好ましくな
い。
また、前記スチレン類と開始剤との使用割合は、特に
制限されないが、スチレン類のモル数を〔I〕で表わし
た場合、〔I〕/〔A〕は、通常2以上、好ましくは3
以上、更に好ましくは3〜50,000、最も好ましくは5〜
10,000の範囲である。
因みに、生成ポリマーの重合度は、一般には、上記の
モル比〔I〕/〔A〕で規定される。
重合反応は、バルクで行ってもよいが、通常、溶媒を
用いる。溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロ
ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の
芳香族炭化水素、四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲ
ン化炭化水素などが望ましい。特にハロゲン化炭化水素
が好ましい。
溶媒と原料モノマーとの仕込比は、通常1:100〜100:
1、好ましくは1:5〜50:1、特に好ましくは5:1〜30:1の
範囲である。
重合温度は、+80℃以下から好適に選ばれ、好ましく
は+40℃以下から選ばれる。勿論、従来通り、0℃以下
の低温で重合することも何ら差し支えない。
停止反応は、種々の停止剤(塩基)を使用して行うこ
とが可能である。例えば、アルコール、アルコラート
(金属塩)、アルコキサイド、1〜3級アミン、カルバ
ニオン塩(例えば、マロン酸ジエチルのナトリウム塩
等)を使用することができる。
そして、上記の停止剤の使用により、生成ポリマーの
片末端に官能基を導入することが可能となる。
本発明の製造法で得られるスチレン類重合体は、特
に、分子量分布が非常に狭く、w/n1.3(w:重
量平均分子量、n:数平均分子量を表す)という特徴を
有する。そして、好ましい条件下では、ばw/n1.
2を達成することも可能である。
ここに、w/n比は、GPC(日本分光製“TRIROTAR"
クロマトグラフ、カラム:昭和電工製ポリスチレンゲル
A802、A803、A804:内径8mm、長さ500mm)により求めた
値である。
〔実施例〕
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
実施例1 スチレン0.58ml(54.6mmol)とテトラ−n−ブチルア
ンモニウムクロライド(nBu4NCl)55.6mg(0.2mmol)を
塩化メチレン3.3mlに溶解し、−15℃に冷却した後、こ
こへ、1−フェニルエチルクロライド(CH3CH(Ph)C
l)と四塩化スズ(SnCl4)とからなる開始剤溶液(塩化
メチレン溶液:CH3CH(Ph)Cl 100mM、SnCl4 500mM、両
者を混合後、約30分間エージング)1mlを乾燥窒素気流
下で注射器により加えた。
充分に撹拌後、−15℃で静置し、150分後に少量のア
ンモニア水を含むメタノールで重合を停止した。この
時、スチレンの反応率はガスクロマトグラフィーよりは
ぼ100%であることを確認した。
次いで、重合停止によって得られた混合物を希塩酸、
続いて、水で洗浄した後、混合物から溶媒を蒸発させて
生成ポリマーを回収した。
こうして得られたポリスチレンは、GPC測定の結果、
二量体、三量体などのオリゴマーを含まず、n=480
0、w/n=1.1であり、分子量分布の狭いものであっ
た。
実施例2 実施例1と同様にしてスチレンを重合し、150分後、
重合がほぼ100%完了した反応溶液に、新たに、初めの
仕込み量と同量(0.58ml)のスチレンを乾燥窒素気流下
で注射器によって加えた。
充分に撹拌後、−15℃で150分間静置し、実施例1と
同様にして重合を停止し、ポリマーを回収した。ガスク
ロマトグラフィーにより、新たに加えられたスチレンが
ぼ完全に消費されたことを確認した。
こうして得られたポリスチレンは、GPC測定の結果、
n=9100であり、実施例で得られたポリスチレン(
n=4800)と比べてほぼ倍の分子量を有し、しかも、そ
の分子量分布はw/n=1.23と狭かった。
実施例3 実施例1において、nBu4NX、CH3CH(Ph)Xにおける
各ハロゲン(X:Br,I)の種類を表−1のように変更した
他は、実施例1と同様に重合を行った。
表−1に得られた結果を実施例の結果と共に示す。
比較例1 実施例1において、nBu4NClを使用しない他は、実施
例1と同様に重合を行った。
重合は、約1時間で終了したが、生成したポリスチレ
ンの分子量分布は、分子量(n)1000と40000に2つ
のピークを持つ二峰性であった。
比較例2 実施例1において、SnCl4を使用しない他は、実施例
1と同様に重合を行ったところ、スチレンは重合しなか
った。
比較例3 実施例1において、CH3CH(Ph)Clを使用しない他
は、実施例1と同様に重合を行った。
重合が完了するのに約18時間要し、また、得られたポ
リスチレンは、n=15000、w/n=1.7であった。
〔発明の効果〕
以上説明した本発明によれば、特定の開始剤を使用す
ることにより、スチレン類、殊にスチレン自体のカチオ
ン系リビング重合が達成され、本発明の工業的価値は顕
著である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08F 4/00 - 4/40 C08F 12/00 - 12/36 C08F 297/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式〔I〕で表わされるスチレン類を一
    般式〔II〕で表わされる化合物、ルイス酸および四級ア
    ンモニウム塩の存在下に重合することを特徴とするスチ
    レン類重合体の製造方法。 (式〔I〕中、R1は一価の有機基、R2は水素原子又はメ
    チル基を示し、nは0〜5の整数を示す) (式〔II〕中、R3及びR5は水素原子又は一価の有機基、
    R4は水素原子又はメチル基、Xは一価のプロトン酸(H
    X)のアニオンX-に由来する基を示し、nは0〜5の整
    数を示す)
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