JP4585902B2 - 化粧シート - Google Patents

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Description

本発明は、電子線硬化性樹脂組成物を架橋硬化した表面保護層を有する化粧シートであって、基材として紙質系基材を用いており、強度の高い、真空プレス積層成形においても破れのない化粧シートに関する。
絵柄や模様等が印刷された化粧シートを、基板の外表面に密着積層する有効な方法として、真空プレス積層成形方法がある。真空プレス積層成形方法によれば、基板と化粧シートとの間に空気が残存することがなく、良質な積層成形品を効率的に生産することができる(特許文献1参照)。このような真空プレス積層成形方法は、真空状態とすることによって、化粧シートが基板に密着するものであるが、その際に化粧シートが伸ばされ、破れる場合があった。特に、紙質系基材を用いた場合には、これが顕著である。
一方、紙質系基材を用いた化粧シートは、紙が持つ風合いや質感を得るために必要であり、紙質系基材をベースにした、強度の高い、真空プレス積層成形方法においても破れが生じない化粧シートが望まれていた。
特開平5−31743号公報
本発明の目的は、上記課題に対して、紙質系基材を用いた化粧シートであって、強度が高く、真空プレス積層成形方法に適する化粧シートを提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材として、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.1:2000 A法により測定した値が18以上である紙質系基材からなる紙層と、該紙層に挟持されるポリオレフィンフィルムからなる基材を用いることで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材上に、絵柄層及び/又は着色層と表面保護層を有する化粧シートであって、表面保護層が電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、該基材がJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.1:2000 A法により測定した値が18以上である複数の紙質系基材からなる紙層と、該紙層に挟持されるポリオレフィンフィルムからなることを特徴とする化粧シート、
(2)前記ポリオレフィンフィルムが電子線の照射により架橋硬化する上記(1)に記載の化粧シート、
(3)ポリオレフィンフィルムが高密度ポリエチレンである上記(2)に記載の化粧シート、
(4)紙層を構成する複数の紙質系基材の坪量が、それぞれ18〜40g/m2である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化粧シート、
(5)前記基材のヤング率が800〜1400MPaである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧シート、
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化粧シートを基板に貼付した化粧板、及び
(7)貼付を真空プレス積層成形方法により行う上記(6)に記載の化粧板、
を提供するものである。
本発明によれば、紙質系基材を用いた化粧シートであっても、強度が高く、真空プレス積層成形方法に適する化粧シートを提供することができる。
本発明の化粧シートで用いる基材は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.1:2000 A法(以下「ワックスピッキング法」という。)により測定した値が18以上である複数の紙質系基材からなる紙層と、該紙層に挟持されるポリオレフィンフィルムからなる。
ワックスピッキング法により測定した値が18以上である紙質系基材は、一般に紙間強化紙といわれ、例えば、アクリルアミド樹脂等の合成樹脂を添加し、混抄させて紙間強度を強化した薄葉紙などが挙げられる。このワックスピッキング法により測定した値が18以上であると本発明の効果が十分に得られる。効果の点からは、さらに該値が20以上であることが好ましく、また、該値が32以上である含浸紙も好適に使用し得る。
本発明における基材は、少なくとも2層の紙質系基材からなる紙層でポリオレフィンフィルムを挟んで一体化したものであり、それぞれの紙質系基材の坪量は、18〜40g/m2であることが好ましい。18g/m2以上であると、本発明の化粧シートを木質系基板等の基板に貼付する際に、木質系基板等の充分な遮蔽性を得ることができ、一方、40g/m2以下であると、成形曲げ時の追従性が良好である。
なお、紙層を構成する少なくとも2層の紙質系基材は、それぞれ互いに同一種であっても異種であってもよいが、製造上は同一種であることが好ましい。
本発明で使用されるポリオレフィンフィルムとしては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、電子線の照射により架橋硬化する樹脂が好ましい。本発明の化粧シートにおいては、後に詳述する表面保護層として、電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものを用いており、これを電子線の照射により硬化させる際に、該ポリオレフィンフィルムも架橋硬化し、基材の強度をさらに高めることができる。
本発明で使用されるポリオレフィンフィルムの具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレン単独重合体樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、エチレンと炭素数3〜5のアルキルアクリレートとの共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−プロピレン共重合体樹脂などのポリエチレン系共重合体樹脂;ホモ又は共重合ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレンなどのプロピレン系共重合体樹脂、また、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。これらうち、高密度ポリエチレンが、電子線照射により充分な架橋強度が得られる点から最も好ましい。なお、ここで高密度ポリエチレンとは、密度が0.941g/cm3以上のポリエチレンをいう。
上記ポリオレフィンフィルムの厚みとしては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、通常、15〜30μmの範囲である。15μm以上であると、基材に十分な強度を与えることができ、一方、30μm以下であると、成形曲げ時の追従性が良好である。
本発明の基材は、上述のようにポリオレフィンフィルムを紙質系基材で構成される紙層で挟んで一体化したものである。該基材の製造方法については、特に限定されず種々の方法を用いることができ、例えば、ポリオレフィンフィルムと紙質系基材を接着剤にて貼着させる方法、ポリオレフィンフィルムと紙質系基材を熱によって融着させる方法、2枚の紙質系基材にエクストルージョンラミネート法により、ポリオレフィンフィルムを溶融押出しすると同時にラミネートする方法などがあり、ポリオレフィンフィルムの種類によって適宜選択される。
これらのうち、エクストルージョンラミネート法が、工程が少なくてすみ効率的である。
本発明の基材は、紙質系基材であって高い強度を有する点に特徴があり、具体的には、ヤング率が800MPa以上のものであることが好ましい。ヤング率が800MPa以上であると、基材として十分な強度があり、真空プレス積層成形に用いても破れることがない。ヤング率の上限については、特に制限はないが、1400MPa以下が好ましい。1400MPa以下であると、木質系基板等に本発明の化粧シートを平面張りする場合に、基板の繊維質に由来する凹凸形状が化粧シートに映ることを抑制することができる。以上の観点から、ヤング率は、800〜1200MPaの範囲であることがさらに好ましい。
以下、本発明の化粧シートの構成について、図1を用いて具体的に説明する。図1は本発明の化粧シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に全面を被覆する一様均一な着色層3、絵柄層4、プライマー層5、及び電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化した表面保護層6がこの順に積層されたものである。
図1に示される基材2については、上記にて詳細に記載したように、ワックスピッキング法により測定した値が18以上である紙質系基材21及び23と、該紙質系基材に挟持されるポリオレフィンフィルム22からなる。
図1に示される全面にわたって被覆される一様均一な着色層3は、本発明の化粧材の意匠性を高める目的で所望により設けられる、隠蔽層、あるいは全面ベタ層とも称されるものであり、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。基材2が白色であることを活かす場合や、基材2自身が適切に着色されている場合には着色層3の形成を行う必要はない。
着色層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
この着色層3は厚さ1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
図1に示される絵柄層4は基材2に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。絵柄層4に用いる絵柄インキとしては、着色層3に用いるインキと同様のものを用いることができる。
図1に示されるプライマー層5は、所望により設けられる層であって、表面保護層6を構成する電子線硬化性樹脂が、紙質系基材23中に浸透することを抑制する機能を持つものである。また、基材2上にある着色層3、絵柄層4等の表面をならし、表面保護層5との接着性を高める機能を併せて果たすものである。
次に、表面保護層6は上述のように電子線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。ここで、電子線硬化性樹脂組成物とは、電子線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電子線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
本発明における電子線硬化性樹脂組成物には、表面の鏡面性及びマジック消去性を付与するため、シリコーン系の添加剤を添加することができる。これは基材として、紙質系の基材を用いているためである。すなわち、例えば本発明の化粧シートをロール状にして保管する場合に、表面保護層に接するのが紙質系基材であるため、シリコーンが該紙質系基材に一部移行しても、後述する真空プレス積層成形方法等により成形した後の剥離の問題がない。これに対し、基材の強度のみを求めて、基材としてプラスチック性の基材を用いた場合には、上述のようなシリコーンの移行のために成形後の剥離の問題が生じる。
シリコーン系の添加剤としては、特に限定されるものではないが、単官能又は二官能以上のシリコーン(メタ)アクリレートが好ましい。
また本発明における電子線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
本発明においては、前記の電子線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電子線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電子線の加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定される。電子線の加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、紙質系基材の電子線により劣化を考慮して、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。具体的には、加速電圧30〜300kVの範囲で選定される。
また、照射線量に関しては、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy、好ましくは10〜100kGy、さらには30〜50kGyの範囲で選定される。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
本発明の化粧材は、各種基板に貼着して化粧板として使用することができる。被着体となる基板は、特に限定されず、プラスチックシート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧材との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基板の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
プラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーチクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基板として使用できる。
本発明の化粧シートは、特に真空プレス積層成形用として用いることが好ましく、真空プレス等の貼着装置を用いて圧締して、化粧シートを基板表面に接着し、化粧板とする。本発明の化粧シートは、基材の強度が高いために、真空プレス積層成形においても破れることがない。そのため、紙質系基材の持つ意匠感を、真空プレス積層成形であっても達成することができる。
以上のようにして製造される化粧板は、また、該化粧板を任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装または外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。なお、ヤング率Eは、試料片に荷重をかけた際の伸びから、以下の式により求めた。
E=(W×L)/(A×Δt)
ここで、Wは荷重(kg)、Lは試験前の標線間距離(cm)、Aは試験片の断面積、及びΔtは荷重Wにおける標線間距離(cm)である。また、使用した試料の形状は、試料長さ3.5cm、試料幅0.65cmとした。
実施例1
(1)基材の製造
坪数23g/m2の紙間強化紙21(ワックスピッキング法により測定した値が20)と坪数30g/m2の紙間強化紙23(ワックスピッキング法により測定した値が20)との間に、高密度ポリエチレン22(密度;0.95g/cm3)をポリエチレンフィルムの厚さが40μmとなるように挟持させ、エクストルージョンラミネート法により、3層構造の基材を得た。基材全体の厚さは100μmであった。また、上記方法によりヤング率を測定したところ、845MPaであった。
(2)化粧シートの製造
上記方法で製造した基材2の片面にアクリル樹脂と硝化綿をバインダーとし、チタン白、弁柄、黄鉛を着色剤とするインキを用いて、塗工量20g/m2の(全面ベタ)層をグラビア印刷にて施して着色層3とした。次いで、数平均分子量20,000、ガラス転移温度(Tg)−59.8℃のポリエステルウレタン系樹脂とトリレンジイソシアネートからなるポリイソシアネートをバインダーとする塗料組成物を用いて、塗工量3g/m2で全面にグラビア印刷してプライマー層5を形成した。
このプライマー層5の上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、平均粒子径5μmのシリカ粒子2質量部及びシリコーンアクリレートプレポリマー1質量部からなる電子線硬化性樹脂組成物を塗工量5g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層5とした。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シートを得た。
該化粧シートを用い、基板であるMDF(合板)に、真空プレス積層成形法によって、化粧シートを密着積層した。真空プレス成形は、事前にルータ加工によって3D加飾加工を施したMDFに、酢酸ビニル系接着剤を塗布し、十分に水分を蒸発させた後、真空プレス機にて、以下の条件で成形加工を行った。
温度;ヒーター上部100℃(メンブレン部)、ヒーター下部55℃
真空引き時間;70秒
本発明の化粧シートに破れが生じることなく、基板と化粧シートとの間に空気がかみこまない化粧板を製造することができた。
比較例1
基材として、坪量30g/m2の紙間強化紙を用い、ポリオレフィンフィルムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、化粧板を製造した。なお、該紙間強化紙のワックスピッキング法により測定した値は20であり、ヤング率は7000MPaであった。化粧シートの一部に破れが生じ、化粧板を製造することができなかった。
本発明によれば、紙質系基材を用いた化粧シートであっても、強度が高く、真空プレス積層成形方法に適する化粧シートを得ることができ、紙質系基材の持つ風合いや意匠感を損なうことなく、耐汚染性及び耐摩耗性などの表面物性に優れた化粧材を得ることができ、壁等の建築物内装材、扉等の建具や家具等の表面材等の用途に好適に用いられる。
本発明の化粧材の断面を示す模式図である。
符号の説明
1.化粧シート
2.基材
21.紙質系基材
22.ポリオレフィン
23.紙質系基材
3.着色層
4.絵柄層
5.プライマー層
6.表面保護層

Claims (7)

  1. 基材上に、絵柄層及び/又は着色層と表面保護層を有する化粧シートであって、表面保護層が電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、該基材がJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.1:2000 A法により測定した値が18以上である複数の紙質系基材からなる紙層と、該紙層に挟持されるポリオレフィンフィルムからなり、該ポリオレフィンフィルムが電子線の照射により架橋硬化したものであり、該基材のヤング率が800〜1400MPaであることを特徴とする化粧シート。
  2. ポリオレフィンフィルムが高密度ポリエチレンである請求項1に記載の化粧シート。
  3. 紙層を構成する複数の紙質系基材の坪量が、それぞれ18〜40g/m2である請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シートを基板に貼付した化粧板。
  5. 貼付を真空プレス積層成形方法により行う請求項4に記載の化粧板。
  6. 下記の工程を有する化粧板の製造方法。
    工程(1)JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 No.1:2000 A法により測定した値が18以上である複数の紙質系基材からなる紙層でポリオレフィンフィルムを挟持し、ヤング率が800〜1400MPaである基材を製造する工程
    工程(2)絵柄層及び/又は着色層を設ける工程
    工程(3)次いで、電子線硬化性樹脂組成物を塗工する工程
    工程(4)工程(3)で塗工した電子線硬化性樹脂組成物及びポリオレフィンフィルムを電子線の照射により架橋硬化させる工程
  7. ポリオレフィンフィルムが高密度ポリエチレンである請求項6に記載の製造方法。
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