JP4585137B2 - 炭化珪素単結晶インゴットの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素単結晶及びその製造方法に係わり、特に、青色発光ダイオードや電子デバイスなどの基板ウエハとなる良質で大型の単結晶インゴットの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭化珪素(SiC)は、耐熱性及び機械的強度も優れ、放射線に強いなどの物理的、化学的性質から耐環境性半導体材料として注目されている。SiCは、化学組成が同じでも、多数の異なった結晶構造をとる結晶多形(ポリタイプ)構造を持つ代表的物質である。ポリタイプとは、結晶構造においてSiとCの結合した分子を一単位として考えた場合、この単位構造分子が、結晶のc軸方向([0001]方向)に積層する際の周期構造が異なることにより生じる。代表的なポリタイプとしては6H型、4H型、15R型または3C型がある。ここで、最初の数字は積層の繰り返し周期を示し、アルファベットは結晶系(Hは六方晶系、Rは菱面体晶系、Cは立方晶系)を表わす。各ポリタイプは、それぞれ物理的、電気的特性が異なり、その違いを利用して各種用途への応用が考えられている。たとえば、6Hは近年、青色から紫外にかけての短波長光デバイス用基板として用いられ、4Hは高周波高耐圧電子デバイス等の基板ウエハとしての応用が考えられている。
【0003】
しかしながら、大面積を有する高品質のSiC単結晶を、工業的規模で安定に供給し得る結晶成長技術は、いまだ確立されていない。それゆえ、SiCは、上述のような多くの利点及び可能性を有する半導体材料にもかかわらず、その実用化が阻まれていた。
【0004】
従来、研究室程度の規模では、例えば、昇華再結晶法(レーリー法)でSiC単結晶を成長させ、半導体素子の作製が可能なサイズのSiC単結晶を得ていた。しかしながら、この方法では、得られた単結晶の面積が小さく、その寸法及び形状を高精度に制御することは困難である。また、SiCが有する結晶多形及び不純物キャリア濃度の制御も容易ではない。また、化学気相成長法(CVD法)を用いて、珪素(Si)などの異種基板上にヘテロエピタキシャル成長させることにより、立方晶のSiC単結晶を成長させることも行われている。この方法では、大面積の単結晶は得られるが、基板との格子不整合が約20%もあること等により、多くの欠陥(〜107cm-2)を含むSiC単結晶しか成長させることができず、高品質のSiC単結晶を得ることは容易でない。これらの問題点を解決するために、SiC単結晶ウエハを種結晶として用いて、昇華再結晶を行う改良型のレーリー法が提案されている(Yu.M.Tairov and V.F.Tsvetkov,Journal of Crystal Growth,vol.52(1981)pp.146−150)。この方法では、種結晶を用いているため、結晶の核形成過程が制御でき、また、不活性ガスにより雰囲気圧力を100Paから15kPa程度に制御することにより、結晶の成長速度等を再現性良くコントロールできる。改良レーリー法の原理を図1を用いて説明する。種結晶となるSiC単結晶と原料となるSiC結晶粉末は坩堝(通常黒鉛)の中に収納され、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中(133Pa〜13.3kPa)、摂氏2000〜2400度に加熱される。この際、原料粉末に比べ、種結晶がやや低温になるように、温度勾配が設定される。原料は、昇華後、濃度勾配(温度勾配により形成される)により、種結晶方向へ拡散、輸送される。単結晶成長は、種結晶に到着した原料ガスが種結晶上で再結晶化することにより実現される。
【0005】
この際、結晶の抵抗率は、不活性ガスからなる雰囲気中に不純物ガスを添加する、あるいはSiC原料粉末中に不純物元素あるいはその化合物を混合することにより、制御可能である。SiC単結晶中の置換型不純物として代表的なものに、窒素(n型)、ホウ素、アルミニウム(p型)がある。キャリア型及び濃度を制御しながら、SiC単結晶を成長させることができる。
【0006】
改良レーリー法は、結晶成長速度が毎時1mm以上と大きく、生産性の点でも優れているという長所を有する。しかしながら、改良レーリー法でSiC単結晶を製造した場合、昇華現象を利用しているために、原料から昇華する各種ガス分子(主にSi、SiC2、Si2Cが発生する)の組成を任意に制御することは困難であり、また、長時間の結晶成長中に、断熱材等の特性変化により成長温度が変化すると、安定したガス組成比を確保できないという問題があった。ガス中のSi/C組成比が成長中に変化することは、成長の不安定性を増加させ、多結晶発生等の結晶品質劣化を引き起こす要因となる。さらに、昇華ガス中のSi/C組成比が変化すると、発生し易いポリタイプの種類が変化し(Yu.A.Vodakov,G.A.Lomakina and E.N.Mokhov,Soviet Physics−Solid State vol.24(5)(1982)pp.780−784)、基板として用いたポリタイプ結晶と異なるポリタイプの結晶相が発生し易くなる。この際に生じる異種ポリタイプの界面からはマイクロパイプ欠陥が発生し、結晶品質劣化(マイクロパイプ欠陥密度にして100個/cm2以上)の原因となっていた。
【0007】
一方、上記したガス中のSi/C組成比を制御できる成長法としては、単結晶薄膜作製法として用いられる高温化学気相成長法(以下高温CVD法と記す)が存在する。高温CVD法は、珪素及び炭素を含有した組成を有する原料ガスを高温下で反応させる方法である。高温CVD法は、ガス系全体のSi/C比を最適化でき、且つ、成長時間中一定に保つことが出来るという長所を持つ。これは、反応に用いるガスの分子構造が選択可能であり、かつ、Si含有ガスとC含有ガスの流量調節により、Si/C比が制御可能だからである。これに対して、短所としては、毎時0.5mm以下と成長速度が小さく、薄膜作製には使用できても、大型バルク単結晶生産法としては、生産性が悪く適用できないことが挙げられる。高温CVD法にて成長速度を増加させるためには、原料ガスの流量を大きくすることが必要となる。しかし、この場合、原料ガスと断熱材との反応により断熱特性が劣化し、長時間の結晶成長が困難となり、やはり生産性が劣化する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来の単結晶成長技術(改良レーリー法)では、作られたSiC単結晶には結晶中に異なるポリタイプ(6H型、4H型、15R型等)が混在し易く、異種ポリタイプ同士の界面から発生する多量のマイクロパイプ欠陥(密度にして100個/cm2以上)が含まれていた。Tairov et al.,J.Cryst.Growth 43(1976)pp.209−211に記載されているように、改良レーリー法による成長では、インゴット中への異種ポリタイプの混在が抑制できていない。さらに、このように異種ポリタイプが発生した場合に、その界面で発生するマイクロパイプ欠陥は、P.G.Neudeck et al.,IEEE Electron Device Letters,vol.15(1994)pp.63−65に記載されているように、素子を作製した際に、漏れ電流等を引き起こすとされている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、欠陥の少ない良質の大口径{0001}ウエハを、工業的に十分な成長速度を確保しながら、再現性良く製造し得るSiC単結晶の製造方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のSiC単結晶の製造方法は、
(1) 原料SiCを加熱して昇華再結晶法により種結晶上に単結晶成長させる工程を包含するSiC単結晶の製造方法であって、雰囲気不活性ガス中に珪素及び/又は炭素を含有する反応性ガスを導入して、反応系の全圧を665Pa〜66.5kPaとし、前記反応性ガスの分圧を、珪素の水素化物ガスでは1.33〜66.5Paとし、炭素の水素化物ガス、並びに珪素及び炭素を含む水素化物ガスでは0.133〜66.5Paとして、種結晶上にSiC単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法、
(2) 前記反応性ガスが、炭化水素、珪素の水素化物又は珪素と炭素の水素化物から選ばれる1種又は2種以上のガスである(1)記載のSiC単結晶の製造方法、
(3) 前記珪素の水素化物ガスがシラン(SiH4)であり、その分圧が1.33〜66.5Paである(2)記載のSiC単結晶の製造方法、
(4) 前記炭化水素がプロパン(C3H8)及び/又はエチレン(C2H4)である(2)記載のSiC単結晶の製造方法、
(5) 前記珪素と炭素の水素化物がテトラメチルシラン(Si(CH3)4)である(2)記載のSiC単結晶の製造方法、
(6) 前記炭化水素または前記珪素と炭素の水素化物の分圧が0.133〜66.5Paの範囲である(4)又は(5)に記載の炭化珪素単結晶の製造方法、
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、成長時に珪素を含む水素化物、炭素を含む水素化物または珪素、炭素両者を含む水素化物のガスを導入することにより、反応ガス中のSi/C比を最適化することで、高品質のSiC単結晶を十分な成長速度を保持しつつ、安定して製造することができるものである。
【0012】
図2を用いて、本発明の効果を説明する。
【0013】
導入するガスをガスボンベより配管を通して成長装置に導入する。実験に用いられる各種ガスの分圧は、成長時の全圧(ガス排気側に設置した圧力調節バルブにより調整)に対して、使用する各ガス種のガス流量比を掛けた値となる。
【0014】
改良レーリー法にてSiC単結晶を成長させた場合、成長の初期段階においては、坩堝断熱材の断熱特性が良好なために、原料と種結晶間において安定した温度分布が保たれている。しかし、成長時間が経過するにつれて、昇華ガスの影響により断熱材の断熱特性が徐々に劣化していく。このため、坩堝の温度が下がる、あるいは原料〜種結晶間の温度分布が変化することでガス中のSi/C比が変化する。SiC原料から昇華する各種ガス分子(主にSi、SiC2、Si2Cが発生する)の蒸気圧曲線は、A.O.Konstantinov,EMIS Datareviews Series13(1995)pp.170−203に報告されており、1950℃〜2380℃の温度範囲では、温度が低いほど、Si/Cが大きくなることが分っている。これより、成長中の断熱材劣化に伴う温度の低下により、ガス中のSi/C比は変化し、これが原因となって成長条件が変化して、種結晶と異なるポリタイプ相が発生しやすくなる。ここで、断熱材劣化によるガス中のSi/C比の増加、即ち、昇華ガス中のCの減少を補う形で、成長途中より炭素の水素化物ガスを適量導入することで、成長中のSi/C比変化を抑制して、安定したSi/C比の条件下で結晶成長が持続でき、異種ポリタイプ相の発生を抑制して、欠陥の少ない良質の単結晶が得られる。
【0015】
また、昇華ガス中のSi/C組成比が変化すると、発生し易いポリタイプの種類が変化する(Yu.A.Vodakov,G.A.Lomakina andE.N.Mokhov,Soviet Physics−Solid State vol.24(5)(1982)pp.780−784)ということは、逆にSi/C組成比を意図的に制御することで、ある特定のポリタイプ相をより安定して得る手法として利用可能である。具体的には、ガス中のSi/C比が、通常の成長条件のそれよりもSiが多い状態になると、6Hポリタイプが安定に成長し易い条件となる。これと逆に、Cが多い状態にシフトした場合、4Hポリタイプ相が安定して発生し易くなる。この効果を有効利用することで、種結晶と同種あるいは全く異種のポリタイプを安定して得ることができる。
【0016】
昇華ガス中のSi/C組成比の制御が可能であることは、高温CVD法と同様の利点であるが、高温CVD法は、珪素の水素化物、炭素の水素化物又は珪素及び炭素を含む水素化物等のガスのみを導入する方法である。この場合、導入されたガスのみでは、充分な原料供給が行なわれずに、結晶成長速度が毎時0.5mm以下と小さくなってしまう。また、ガスの流量増加により成長速度を増加させようとした場合、ガスと断熱材との反応により断熱特性が劣化し、長時間に渡って安定した結晶成長が困難となる。これに対して、本方法は、固体原料からの昇華ガスの利用により、まず毎時1mm以上の大きな結晶成長速度を確保した上で、珪素の水素化物、炭素の水素化物又は珪素及び炭素を含む水素化物のガスを微量に導入することにより、ガス中のSi/C組成比を意図的に制御することが可能である。すなわち、本発明では、工業的に十分な大きい成長速度を持ち、かつ成長時の昇華ガス中のSi/C組成比の制御により、異種ポリタイプ、それに伴うマイクロパイプ欠陥等の発生を抑制でき、結晶全域に渡って良質なSiC単結晶を得ることができる。
【0017】
本発明における反応系の全圧については、665Pa〜66.5kPaの範囲が望ましい。この圧力範囲外での成長は、結晶成長速度が大きすぎて、反応系の制御が困難(より低圧)であったり、成長速度が小さすぎる(より高圧)ため、工業的に有用とならない等、実用的見地からみて有用でない。本発明に使用する炭素の水素化物としては、C2H4、C3H8、C2H2が利用可能なガスとして挙げられる。また、珪素の水素化物としては、SiH4、Si2H6が挙げられる。さらに、珪素及び炭素を含む水素化物としては、SiH2(CH3)2、SiH(CH3)3、Si(CH3)4が挙げられる。これらの内でも、ガスの取り扱い易さ(安定性、生産性)という点から考えると、炭素の水素化物ではC2H4及びC3H8、珪素の水素化物ではSiH4、珪素及び炭素を含む水素化物ではSi(CH3)4が、最も実用に適している。導入するガスの成長時の分圧としては、珪素の水素化物ガスでは1.33〜66.5Pa、炭素の水素化物ガス、珪素及び炭素を含む水素化物ガスの分圧としては0.133〜66.5Paの範囲が望ましい。珪素の水素化物のガス分圧が66.5Pa以上になると、昇華ガス中のSi/C組成比がSi過剰に成りすぎ、結晶成長表面にSiの液滴が発生して、マイクロパイプ欠陥、多結晶相の発生原因となる。また、炭素の水素化物ガスの分圧が66.5Pa以上となった場合には、逆にC過剰に成りすぎることで、結晶成長表面に炭化物が形成され、やはりマイクロパイプ欠陥や多結晶相の発生原因となる。珪素及び炭素を含む水素化物ガスの場合も、炭素の水素化物ガスと同様に66.5Pa以上の分圧において、炭化物発生を起こし易く、欠陥発生の原因となる。また、上記ガス分圧が規定値より小さい場合は、これらガス成分の導入効果が得られない恐れがある。
【0018】
本発明の製造方法を用いることにより、50mm以上の大口径を有し、且つインゴット全体に渡り単一ポリタイプにて構成されたSiC単結晶インゴットを作製することが可能となる。また、デバイスに悪影響を及ぼすマイクロパイプ欠陥が30個/cm2以下と極めて少ない、という特徴を有する。
【0019】
このようにして製造したSiC単結晶インゴットを切断、研磨してなるSiC単結晶ウエハは、50mm以上の口径を有しているので、このウエハを用いて各種デバイスを製造する際、工業的に確立されている従来の半導体(Si、GaAs等)ウエハ用の製造ラインを使用することができ、量産に適している。
【0020】
さらに、このSiC単結晶ウエハ上にCVD法等によりエピタキシャル薄膜を成長して、作製されるSiC単結晶エピタキシャルウエハは、その基板となるSiC単結晶ウエハ中にマイクロパイプ欠陥が極めて少ないために、良好な特性(エピタキシャル薄膜の表面モフォロジー、電気特性、等)を有するようになる。
【0021】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を述べる。
【0022】
(実施例1)
図2は、本発明の製造装置であり、種結晶を用いた改良型レーリー法によって、SiC単結晶を成長させる装置の一例である。まず、この単結晶成長装置について、簡単に説明する。結晶成長は、種結晶として用いたSiC単結晶1の上に、SiC粉末原料2を昇華再結晶化させることによって行われる。種結晶のSiC単結晶1は、黒鉛製坩堝3の黒鉛製坩堝蓋4の内面に取り付けられる。SiC粉末原料2は、黒鉛製坩堝3の内部に充填されている。このような黒鉛製坩堝3は、二重石英管5の内部に、黒鉛の支持棒6により設置される。黒鉛製坩堝3の周囲には、熱シールドのための黒鉛製フェルト7が設置されている。二重石英管5は、真空排気装置により高真空排気(10-3Pa以下)することができ、かつ内部雰囲気をArガスにより圧力制御することができる。また、二重石英管5の外周には、ワークコイル8が設置されており、高周波電流を流すことにより黒鉛製坩堝3を加熱し、原料及び種結晶を所望の温度に加熱することができる。坩堝温度の計測は、坩堝上部及び下部を覆うフェルトの中央部に直径2〜4mmの光路を設け、坩堝上部及び下部からの光を取りだし、二色温度計を用いて行う。坩堝下部の温度を原料温度、坩堝上部の温度を種温度とする。製造装置へのガス配管9には、内部雰囲気制御用のArガスのほかに各種ガス(珪素水素化物、炭素水素化物、珪素および炭素を含んだ水素化物)が、ガス流量調節計10を通って導入される。
【0023】
次に、この結晶成長装置を用いたSiC単結晶の製造について、実施例を説明する。まず、種結晶として、口径50mmの(000−1)C面を有した六方晶系、4Hポリタイプを有するSiC単結晶ウエハを用意した。次に、種結晶1を黒鉛製坩堝3の黒鉛製坩堝蓋4の内面に取り付けた。黒鉛製坩堝3の内部には、SiC粉末原料2を充填した。次いで、原料を充填した黒鉛製坩堝3を、種結晶を取り付けた黒鉛製坩堝蓋4で閉じ、黒鉛製フェルト7で被覆した後、黒鉛製支持棒6の上に乗せ、二重石英管5の内部に設置した。そして、石英管の内部を真空排気した後、ワークコイルに電流を流し、原料温度を摂氏2000度まで上げた。その後、雰囲気ガスとしてArガスを流量2.34×10-6m3/sec、昇華ガス組成比制御用ガス(この場合は、組成比をよりCリッチな方向に振る目的のため、炭化水素化物ガスを使用)としてエチレン(C2H4)を8.35×10-9m3/sec(成長時の分圧として4.73Pa)流入させ、石英管内圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を目標温度である摂氏2400度まで上昇させた。成長圧力である1.3kPaには約30分かけて減圧し、その後約20時間成長を続けた。この際の坩堝内の温度勾配は摂氏15度/cmで、成長速度は約1mm/時であった。得られた結晶の口径は51mmで、高さは20mm程度であった。
【0024】
こうして得られた炭化珪素単結晶をX線回折及びラマン散乱により分析したところ、種結晶のポリタイプと同種のポリタイプのみを有し、異種ポリタイプ混在の抑制された4H単一ポリタイプの炭化珪素単結晶が成長したことを確認できた。
【0025】
次に、このようにして製造したSiC単結晶インゴットを切断、研磨して、厚さ300μm、口径51mmのSiC単結晶ウエハを作製した。ウエハの面方位は、(0001)面から<11−20>方向に3.5度オフとした。マイクロパイプ欠陥を評価する目的で、摂氏約530度の溶融KOHでウェハ表面をエッチングし、顕微鏡によりマイクロパイプ欠陥に対応する大型の六角形エッチピットの数を調べたところ、種結晶より引き継いだマイクロパイプ欠陥以外の同欠陥発生が完全に抑えられ、かつ一部は成長中に消滅しており、結果として、同欠陥密度が30個/cm2以下に減少していることがわかった。
【0026】
さらに、この51mm口径のSiC単結晶ウエハを基板として用いて、SiCのエピタキシャル成長を行った。SiCエピタキシャル薄膜の成長条件は、成長温度摂氏1500度、シラン(SiH4)、プロパン(C3H8)、水素(H2)の流量が、それぞれ5.0×10-9m3/sec、3.3×10-9m3/sec、5.0×10-5m3/secであった。成長圧力は、大気圧とした。成長時間は2時間で、膜厚としては約5mm成長した。
【0027】
エピタキシャル薄膜成長後、ノマルスキー光学顕微鏡により、得られたエピタキシャル薄膜の表面モフォロジーを観察したところ、ウエハ全面に渡って非常に平坦で、ピット等の表面欠陥の非常に少ない良好な表面モフォロジーを有するSiCエピタキシャル薄膜が成長しているのが分かった。
【0028】
(実施例2)
この例では、種結晶として、口径50mmの(0001)Si面を有した六方晶系、6Hポリタイプを有するSiC単結晶ウエハを用意した。次に、種結晶1を黒鉛製坩堝3の黒鉛製坩堝蓋4の内面に取り付けた。黒鉛製坩堝3の内部には、SiC粉末原料2を充填した。次いで、原料を充填した黒鉛製坩堝3を、種結晶を取り付けた黒鉛製坩堝蓋4で閉じ、黒鉛製フェルト7で被覆した後、黒鉛製支持棒6の上に乗せ、二重石英管5の内部に設置した。そして、石英管の内部を真空排気した後、ワークコイルに電流を流し、原料温度を摂氏2000度まで上げた。その後、雰囲気ガスとしてArガスを流量2.34×10-6m3/sec、昇華ガス組成比制御用ガス(この場合は、組成比をよりSiリッチな方向に振る目的のため、珪素水素化物ガスを使用)としてシラン(SiH4)を1.67×10-8m3/sec(成長時の分圧として9.43Pa)流入させ、石英管内圧力を約80kPaに保ちながら、原料温度を目標温度である摂氏2400度まで上昇させた。成長圧力である1.3kPaには約30分かけて減圧し、その後約8時間成長を続けた。この際の坩堝内の温度勾配は摂氏15度/cmで、成長速度は約1mm/時であった。得られた結晶の口径は51mmで、高さは8mm程度であった。
【0029】
こうして得られた炭化珪素単結晶をX線回折及びラマン散乱により分析したところ、種結晶のポリタイプと同種のポリタイプのみを有し、異種ポリタイプ混在の抑制された6H単一ポリタイプの炭化珪素単結晶が成長したことを確認できた。
【0030】
次に、このようにして製造したSiC単結晶インゴットを切断、研磨して、厚さ300μm、口径51mmのSiC単結晶ウエハを作製した。ウエハの面方位は、(0001)面から<11−20>方向に3.5度オフとした。マイクロパイプ欠陥を評価する目的で、摂氏約530度の溶融KOHでウェハ表面をエッチングし、顕微鏡によりマイクロパイプ欠陥に対応する大型の六角形エッチピットの数を調べたところ、種結晶より引き継いだマイクロパイプ欠陥以外の同欠陥発生が完全に抑えられ、かつ一部は成長中に消滅しており、結果として、同欠陥密度が30個/cm2以下に減少していることがわかった。
【0031】
さらに、この51mm口径のSiC単結晶ウエハを基板として用いて、SiCのエピタキシャル成長を行った。SiCエピタキシャル薄膜の成長条件は、成長温度摂氏1500度、シラン(SiH4)、プロパン(C3H8)、水素(H2)の流量が、それぞれ5.0×10-9m3/sec、3.3×10-9m3/sec、5.0×10-5m3/secであった。成長圧力は大気圧とした。成長時間は2時間で、膜厚としては約5mm成長した。
【0032】
エピタキシャル薄膜成長後、ノマルスキー光学顕微鏡により、得られたエピタキシャル薄膜の表面モフォロジーを観察したところ、ウエハ全面に渡って非常に平坦で、ピット等の表面欠陥の非常に少ない良好な表面モフォロジーを有するSiCエピタキシャル薄膜が成長しているのが分かった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、種結晶を用いた改良型レーリー法において、珪素の水素化物、炭素の水素化物または珪素、炭素両方を含む水素化物系ガスの導入により、昇華ガス中のSi/C組成比を制御することによって、欠陥の少ない良質の炭化珪素単結晶を適度な成長速度を維持しつつ、再現性、及び均質性良く成長させることができる。このような炭化珪素単結晶ウエハを用いれば、光学的特性の優れた青色発光素子、電気的特性の優れた高耐圧・耐環境性電子デバイスを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】改良レーリー法の原理を説明する図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられる単結晶成長装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
1 種結晶(SiC単結晶)
2 SiC粉末原料
3 黒鉛製坩堝
4 黒鉛製坩堝蓋
5 二重石英管
6 支持棒
7 黒鉛製フェルト
8 ワークコイル
9 ガス配管
10 ガス流量調節計
Claims (6)
- 原料炭化珪素を加熱して昇華再結晶法により種結晶上に単結晶成長させる工程を包含する炭化珪素単結晶の製造方法であって、雰囲気不活性ガス中に珪素及び/又は炭素を含有する反応性ガスを導入して、反応系の全圧を665Pa〜66.5kPaとし、前記反応性ガスの分圧を、珪素の水素化物ガスでは1.33〜66.5Paとし、炭素の水素化物ガス、並びに珪素及び炭素を含む水素化物ガスでは0.133〜66.5Paとして、種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
- 前記反応性ガスが、炭化水素、珪素の水素化物又は珪素と炭素の水素化物から選ばれる1種又は2種以上のガスである請求項1記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
- 前記珪素の水素化物ガスがシラン(SiH4)であり、その分圧が1.33〜66.5Paである請求項2記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
- 前記炭化水素がプロパン(C3H8)及び/又はエチレン(C2H4)である請求項2記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
- 前記珪素と炭素の水素化物がテトラメチルシラン(Si(CH3)4)である請求項2記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
- 前記炭化水素または前記珪素と炭素の水素化物の分圧が0.133〜66.5Paである請求項4又は5に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
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