JP4585059B2 - プレス打ち抜きされた磁性合金薄帯、積層磁心、および積層磁心の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性合金薄帯、磁性合金薄帯を積層して構成される積層磁心、および磁性合金薄帯を積層して構成される積層磁心の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トランス、インダクタンス素子やモータなどに用いられる磁心には、優れた磁気特性を得るために、パーマロイ、非晶質合金、微結晶構造の磁性合金や、けい素鋼板などの薄帯を積層した積層磁心が多く用いられている。この積層磁心は、プレスによって打ち抜いた後、必要に応じた熱処理を行って加工歪を除いた後に積層したものである。また、プレスによって打ち抜いた磁性合金薄帯を一枚でそのまま磁心として使用する場合もあり、この場合プレスによって打ち抜いた磁性合金薄帯とその磁性合金薄帯を用いた磁心は実質的に同一となる。
【0003】
この熱処理のプロセスは、加工歪の残り易い薄帯、そして加工歪による特性の変化が顕著な材料において特に重要である。ここで磁性合金薄帯の熱処理は、薄帯を複数枚ずつ重ね合わせて行う。複数の磁性合金薄帯を重ね合わせて熱処理を行えば、熱処理による磁性合金薄帯の反りの発生を防ぐことができ、しかも熱処理工程の生産性を高めることができる。しかしながら、複数の磁性合金薄帯を重ね合わせて熱処理を行うと、熱処理中に隣り合う磁性合金薄帯が焼付いてしまうことが多いという問題があった。磁性合金薄帯間に焼付きがあると、磁性合金薄帯の端を揃えて積層を行うのに支障があるだけでなく、層間が接続されてしまうために、積層構造にした効果が一部で失われてしまい、高周波に対するインダクタンスが低下してしまうなどの問題が生じる。
【0004】
熱処理によって生じる磁性合金薄帯の焼付きは、プレス油の残留によって生じることから、焼付きを回避するためには、プレス打ち抜き後の磁性合金薄帯を十分に洗浄してプレス油を除くことが必要である。しかしながら、一旦付着させたプレス油を十分に除くのは大変に困難であることから、プレス油の除去が十分でないために焼付きが回避できなかったり、また一方でプレス油を十分に除去するために大変に手間がかかってしまうといった問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような事情から、熱処理によって焼付きを生じない磁性合金薄帯、層間に焼付きのない積層磁心、そして層間に焼き付きを生じない積層磁心の製造方法が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するものであって、熱処理によって焼付きを生じない磁性合金薄帯、この磁性合金薄帯を用いた積層磁心および積層磁心の製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯は、オージェ電子分光法により求めた薄帯表面における炭素の面積占有率が5%以下であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、この磁性合金薄帯を積層して積層磁心を形成する際は、各磁性合金薄帯間に絶縁層を設ける。この絶縁層は、層間絶縁の作用を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0009】
ここでオージェ電子分光法(AES)による薄帯表面の炭素量の定量は、任意の面積、例えば3mm×3mmの範囲を分析することにより、その面積内の炭素量を面積率で特定するものである。
【0010】
本発明において、オージェ電子分光法により求めた炭素の面積率を5%以下とすることによって、磁性合金薄帯の熱処理時の焼付きを防ぐことができる。
【0011】
本発明の磁性合金薄帯の厚さは、10μm 以上500 μm 以下が好ましい。磁性合金薄帯の厚さが10μm 未満では特性の安定した磁気特性を得るのが技術的に容易でなく、また厚さが500 μm を超えると、高周波特性が低下する。ただし、パーマロイやけい素鋼板のように急冷法以外の方法、例えば熱間圧延や冷間圧延で作製される薄帯は、厚さが500 μm を超えても特に問題はない。
【0012】
本発明のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯は、磁性合金薄帯表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上12.5μm以下であり、Raが0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。このような数値範囲に磁性合金薄帯表面の算術平均粗さRaを制御することによって、磁性合金薄帯の焼付きの傾向をさらに弱めることができ、積層してインダクタ磁心として用いた場合の焼付き傾向を有することによる高周波インダクタンスの低下を防止することができる。磁性合金薄帯を積み重ねて熱処理を行う際に、磁性合金薄帯表面の算術平均粗さRaが上記の数値範囲を有する場合には、プレス油の残留があっても、蒸発性のプレス油であれば、熱処理のための加熱の段階で、残留のプレス油は磁性合金薄帯の表面から蒸発して、積み重ねられた層の隙間から抜け出すことができるので、熱処理時には残留プレス油が磁性合金薄帯表面にほとんど存在しないない状態にすることができる。そのためにはRaは大きい方が好ましいが、Raが上記の範囲を超えて大きくなると積層磁心を構成した場合の体積率が低下してしまうので積層磁心の特性が低下することになる。このためRaが上記の数値範囲であれば、層間の焼き付きを防ぐとともに、体積率が確保され、積層磁心としての特性確保ができるので好ましい。
【0013】
また本発明のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯は、高域カットオフ値を0.8mmとし低域カットオフ値を8mmとした前記磁性合金薄帯表面のろ波中心線うねりWCA が 2μm以上10μm以下である。磁性合金薄帯の表面は、ろ波中心線うねりWCAを適切な数値範囲に制御することにより、磁性合金薄帯の焼付き傾向をさらに抑えることができ、このため積層してインダクタの磁心として用いた場合に焼付き傾向による高周波インダクタンスの低下を防止することができる。このような表面粗さRaやうねりWCAは、例えば磁性合金薄帯を圧延する際の圧延ロールの表面粗さやロール圧力等の圧延条件により制御することが可能である。また、非晶質合金薄帯等のようにロール急冷法により製造される場合は、このロール表面粗さ等で制御可能である。
【0014】
磁性合金薄帯を積み重ねて熱処理を行う際に、磁性合金薄帯面のろ波中心線うねりWCAが上記の数値範囲を有する場合には、プレス油の残留があっても、蒸発性のプレス油であれば、熱処理のための加熱の段階で、残留のプレス油は磁性合金薄帯表面から蒸発して、積み重ねられた層の隙間から抜け出すことができるので、熱処理時には残留プレス油が磁性合金薄帯表面にほとんど存在しない状態にすることが可能である。このためにWCAは大きい方が好ましいが、WCAが上記の範囲を超えて大きくなると、積層磁心を構成した場合の体積率が低下するので、積層磁心の特性が低下してしまうことになる。このためWCAについても上記の数値範囲であれば、層間の焼き付きを防ぐとともに、体積率が確保されて、積層磁心としての特性確保ができるので好ましい。
【0015】
また本発明のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯は、複数の磁性合金薄帯を積み重ねて熱処理を行った際の焼付きがないことを特徴とするものである。すでに述べたように、焼付きがあると積層された磁性合金薄帯の表面の絶縁層を破って層間の導通を生じてしまう。このため熱処理をしても焼付きの生じない磁性合金薄帯を磁心として用いることにより、インダクタンスの低下が少なく、周波数特性の優れたトランスを得ることができる。
【0016】
本発明の積層磁心は、上記の磁性合金薄帯を積層して構成した積層磁心である。本発明によれば層の間に焼付きがないので、インダクタ用磁心やトランス用磁心などに用いることにより、周波数特性の優れたインダクタンスやトランスを得ることができる。
【0017】
さらに本発明の積層磁心の製造方法は、沸点が150℃以上300℃以下の蒸発性の油をプレス油として用い、表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上12.5μm以下、かつ高域カットオフ値を0.8mm、低域カットオフ値を8mmとした表面のろ波中心線うねりW CA が2μm以上10μm以下の磁性合金薄帯を打ち抜く工程、この打ち抜かれた磁性合金薄帯からプレス油を乾燥除去することにより、オージェ電子分光法により求められる表面における炭素の面積占有率を5%以下とする工程、前記磁性合金薄帯を熱処理する工程、および前記磁性合金薄帯を複数積層して磁心にする工程とを有することを特徴とするものである。
【0018】
本発明でプレス油として使用する蒸発性の油は、蒸発の困難な油成分をほとんど残すことなく蒸発させることができるものである。プレス打ち抜きの後にプレス油を蒸発させることによって、油成分を薄膜表面からほとんど除くことができき、このため、油成分の残留による熱処理時の焼付きを防止することができる。
従って本発明によれば焼付きがなく、高周波電流または高速電流に対してインダクタンス低下のない積層磁心を生産性よく製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明を実施の形態に基づいて、さらに具体的に説明する。
【0020】
本発明のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯は、蒸発性の油をプレス油として用いて磁性合金薄帯の打ち抜きを行い、プレス油を蒸発除去した後、これらの磁性合金薄帯を熱処理して得られる。
【0021】
本発明に用いる磁性合金薄帯としては、パーマロイ、けい素鋼板、非晶質合金、および微結晶構造の磁性合金を用いることができる。
【0022】
本発明の磁性合金薄帯として用いるパーマロイ合金としては、例えばNi:55 〜85wt% 、Mo:7wt% 以下、Fe: 残部、および/またはCu:2〜27wt% のものが好ましい。このようなパーマロイは、溶解方により合金薄板を形成した後、熱間圧延および冷間圧延によって所定の厚さ、例えば0.4mm 以下、好ましくは 4〜50μm の薄帯に圧延してから、所定形状の磁心にする。その後磁界中熱処理により、所定の方向の磁気特性を調整する。
【0023】
本発明に用いるけい素鋼板としては、各種一方向性けい素鋼板および無方向性けい素鋼板を用いることができる。
【0024】
本発明の磁性合金薄帯として用いる非晶質合金しては、Co系、Fe系およびFe−Ni系の非晶質合金が好ましく用いられる。Co系およびFe系合金は、一般式:
(M1-a M´a )100-b Xb 、
(式中、MはFe、Coから選ばれる少なくとも1種の元素、X はB、Si、C、Pから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0≦a≦0.5、10≦b≦35(各数字はat%))
であって、M元素はCo又は/及びFeとなり磁束密度や鉄損、微小電流に対する感度など、要求される磁気特性に応じて組成比率を調整するものである。M´元素は、熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素であり、好ましくはCr.Mn.Zr.Nb、Moを用いるのがよく、X元素は非晶質合金を得るのに必要な元素であり、特にBは非晶質化するのに有効な元素であり、Siは非晶質形成を助成すること及び結晶化温度の上昇に有効な元素である。
【0025】
Fe−Ni系非晶質合金は、一般式:
(Ni1-a Fea )1-x-y-z Mx Siy Bz 、
(式中、MはV,Cr,Mn,Co,Nb,Mo,Ta,W,Zrから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、0.2≦a≦0.5、0.05≦x≦10、4≦y≦12、 5≦z≦20、15≦y+z≦30(各数字はat%))、
このFe−N1系非晶質合金はNiリッチなFe−Ni系をベースとすることにより前述のCo系よりは安価に製造することができ、磁気特性も良好である。ここでM元素は、熱安定性、耐食性、結晶化温度の制御のために必要な元素であり、好ましくはCr、Mn、Co、Nbである。
【0026】
非晶質合金薄帯の製造方法としては液体急冷法が好ましく.具体的には所定の組成比に調整した合金素材を溶融状態から105 ℃/秒以上の冷却速度で急冷することによって得られる。このような液体急冷法により製造された非晶質合金薄帯の厚みは、20μm 以下が好ましく、さらに好ましくは8〜15μm であり、薄帯の厚さを制御することにより低根失のコアを得ることが可能となる。
【0027】
微細結晶楕造を有する磁性合金については、一般式:
Fea Cub Mc Sid Be 、
(式中、M:周期律表4a.5a、6a族元素又はMn.Ni.Co.Alから選ばれる少なくとも1種以上、a +b 十c 十d +e =100at%、0.01≦b≦4、0.01≦c≦10、10≦d≦25、3≦e≦12、17≦d+e≦30)、
ここでCuは耐食性を高め、結晶粒の粗大化を防ぐとともに、鉄損や透磁率等の軟磁気特性を改善するのに有効な元素であり、M元素は結晶径の均一化に有効であるとともに、磁歪及び磁気異方性の低減、温度変化に対する磁気特性,の改善に有効な元素である。微細結晶構造としては、50〜300オングストロームの結晶粒を合金中に面槓比で50〜90%以上存在することが好ましい。
【0028】
微細結晶楕造を有する磁性合金の製造方法としては、液体急冷法により非晶質薄帯を得た後、前記非晶質の結晶化温度に対し−50〜+120℃、1分〜5時間の熱処埋を行い、微細結晶を析出させる方法、または液体急冷法の急冷速度を制御して微細結晶を直接析出させる方法などにより、得ることが可能となる。このようにして得た微細結晶構造を有する磁性合金薄帯からコアを形成した後、幅方向に磁場をかけながら熱処理することにより、所定の直流角形比を得ることができる。
【0029】
本発明の磁性合金薄帯を積層して磁心にする際には、薄帯の表面に例えば酸化物膜などの絶縁層皮膜を設けておくことが好ましい。
【0030】
本発明において、磁性合金薄帯のプレス打ち抜きの際に用いるプレス油としては、蒸発が容易であって蒸発後に残留物をほとんど残さないか、少々残っていても広く分散していて焼付きを起こさない程度のものであればよく、例えば沸点150 〜300 ℃のパラフィン系およびシクロパラフィン系炭化水素を成分とする石油系鉱物油を主成分とし、これに少量の潤滑剤と油性成分を含むものを用いることができる。
【0031】
炭化水素を成分とする石油系好物油は蒸発性の点で良好であるが、プレス打ち抜きを良好に行うためには、粘性のある油性成分、例えば脂肪酸、脂肪油などを適度に含有していることが好ましい。本発明においては、油性成分20質量% 未満であることがが好ましく、10質量% 以下がより好ましく、また5 質量% 以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明におけるプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯の熱処理条件としては、それぞれの磁性合金薄帯に適した周知の加工歪除去条件を用いればよい。パーマロイ合金薄帯の場合の熱処理温度としては、例えば900 〜1,200 ℃を選ぶことができる。
【0033】
本発明におけるオージェ電子分光法による磁性合金薄帯表面の炭素の面積率の測定方法としては、プレス打ち抜きした薄帯全体を測定し、炭素の面積率を求めるのが理想であるが、薄帯の面積が大きい場合は、任意の面積においてそれぞれ異なる3個所を測定することにより炭素の面積率を測定してもよい。例えば同一表面において3mm×3mmの範囲で異なる3個所を測定することにより、炭素の面積率を測定する。磁心形状により同一の縦横長さが取れない場合は、同一面積となる場所をそれぞれ選定して分析する。なお、用いる電子線のエネルギーは2eV程度が望ましい。
【0034】
本発明は、磁性合金薄帯表面の表面性、即ち算術平均粗さRaおよびろ波中心線うねりWCAを制御することによってさらに良好な結果が得られる。磁性合金薄帯の表面性の制御は、例えば薄帯に加工する際のロールの表面性を制御することによって行うことができる。なお算術平均粗さRaおよびろ波中心線うねりWCAの測定は、表面粗さ計を用い、JIS のB 0601およびB 0610に従って行うことができる。
【0035】
本発明の積層磁心は、プレス成形した磁性合金薄帯についてプレス油を蒸発させてから、適当に積み重ねて熱処理した後に、磁心としての所要の厚さに積層してもよいし、プレス成形した磁性合金薄帯について、プレス油を蒸発させた後に、磁心として所要の厚みに積層したものを熱処理してもよい。
【0036】
図1に本発明の積層磁心の製造方法の1実施形態を示す。図において、(1) のパーマロイ母材を(2) においてロール圧延して厚さ10ないし500 μm の合金薄帯に加工する。このとき、ロールの表面性に従い、合金薄帯表面に所定のRaおよびRCAが付与される。この薄帯を(3) にて蒸発性プレス油を用いてプレス打ち抜きを行ったのち、(4) にてプレス油を一通り乾燥させた後、これら薄帯を積み重ね、(5) にて常法に従って1,100 ℃の熱処理を行う。熱処理を終えた合金薄帯は(6) にて積層して(7) の積層磁心とする。
【0037】
ここではパーマロイ合金薄帯を例に取り、本発明の積層磁心の製造方法の実施の形態を具体的に述べたが、本発明は磁性合金薄帯がパーマロイ合金の場合に限らず、けい素鋼板、非晶質合金および微結晶構造の磁性合金の薄帯の場合も同様である。
【0038】
(実施例1〜11および比較例1〜3)
まず、表面の算術平均粗さRaおよびろ波中心線うねりWCAの異なる厚さ0.2 mmのパーマロイの磁性合金薄帯を用意した。これら表面性の異なる磁性合金薄帯は、圧延に用いる圧延ロールとして表面性の異なるものを選んで用いることによって得ることができた。これらの磁性合金薄帯の表面には酸化物の表面絶縁層を設けた。
【0039】
この磁性合金薄帯のプレス打ち抜きを行って、図1に示す寸法のEコアを打ち抜いた。プレス打ち抜きに用いたプレス油として、蒸発性の油である沸点150 〜300 ℃のパラフィン系およびシクロパラフィン系炭化水素を主成分とし、これにごく少量の潤滑剤と5質量% の油性成分を含有する鉱物油を用い、打ち抜きの後、このプレス油を蒸発させた。また比較例として一般のプレス油を用いてプレスした後、上記蒸発性の鉱物油で洗浄したものを用意した。
【0040】
これらの打ち抜いた磁性合金薄帯を積み重ねて、1,100 ℃での熱処理を行った。積み重ねて熱処理を行った合金薄帯について、熱処理後の合金薄帯間の剥離力を測定した。剥離力の測定方法は、図2に示すように、下側の合金薄帯を固定し上側の合金薄帯に水平方向の力を加え、この力を徐々に強めて隣接する合金薄帯間のずり応力を強めていくことによって、ずれが始まる点での力の値を測定した。なお、測定は60個の試料について行った。
【0041】
さらに熱処理を終えた磁性合金薄帯は50層の積層体にしてトランスのEコアとし、このコアを有するトランスのインダクタンスの測定を 1 kHzで行った。測定は10個の試料について行った。
【0042】
これらの結果を表1に示す。表1において、剥離に要する力、およびトランスのインダクタンスはともに得られた数値の範囲で示した。
【0043】
表1において、実施例1〜3および比較例1の結果から明らかなように、EPMA分析における炭素ピークが5質量%以下であれば、熱処理した合金薄帯層の剥離に要する力が小さく、これを積層して作った磁心を用いたトランスのインダクタンスは相対的に大きな値を示していることがわかる。このずり応力が小さいということは、各磁性合金薄帯の表面どうしの結合が小さく、積層磁心の磁性合金薄帯間に焼付きなどがないことを示す。一方、ずり応力が大きいということは、各磁性合金薄帯の表面どうしの結合が大きいことを示し、積層磁心の磁性合金薄帯間に焼付きなどの不具合の原因となる。本発明では、このような不具合の原因がプレス油の残留にあることを見出したのである。なお、表1にはオージェ電子分光法(AES)により、3mm×3mmに相当する面積を同一面上から任意の3個所を選定して測定し、その平均値を記載した。
【0044】
【表1】
【0045】
また、表1において、実施例4〜7、参考例1、および比較例2の結果から、磁性合金薄帯の表面の算術平均粗さが 0.1μm以上12.5μm以下において、熱処理した合金薄帯層の剥離に要する力がより小さく、これを積層して作った磁心を用いたトランスのインダクタンスはより大きな値を示しており、より良好な結果が得られていることがわかる。
【0046】
さらに表1において、実施例8、参考例2、3、および比較例3の結果から、磁性合金薄帯表面のろ波中心線うねりWCAについても、0.2μm以上25μm以下において、より良好な結果が得られることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、プレス打ち抜き後の磁性合金薄帯を熱処理する際の焼付きを防ぐことができる。この磁性合金薄帯を積層した積層磁心は、層間の焼き付きによる層間の絶縁破壊が防止されるので、高周波におけるインピーダンスの低下を防ぐことができる。従って特性が良好で特性ばらつきの少ない積層磁心を再現性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層磁心の製造方法の一実施形態を示す工程流れ図である。
【図2】本発明の一実施例における磁性薄帯を打ち抜いて作製したEコアの形状寸法を示す図である。
【図3】本発明の一実施例における熱処理した磁性薄帯の剥離力を測定する際の力の印加方向を示す図である。
【符号の説明】
1……プレス打ち抜きされた磁性合金薄帯、
2……重ね合わせて熱処理した磁性合金薄帯、
3……上側の磁性合金薄帯、
4……下側の磁性合金薄帯。
Claims (10)
- オージェ電子分光法により求めた薄帯表面における炭素の面積占有率が5%以下であるプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯であって、
表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上12.5μm以下、かつ高域カットオフ値を0.8mm、低域カットオフ値を8mmとした表面のろ波中心線うねりWCAが2μm以上10μm以下であることを特徴とするプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯。 - 複数の磁性合金薄帯を積み重ねて熱処理を行った際に、焼付きがないことを特徴とする請求項1記載のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯。
- パーマロイからなることを特徴とする請求項1または2記載のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯。
- 前記炭素の面積占有率が0.5%以上4%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯。
- 前記磁性合金薄帯表面における炭素はプレス油の残留物であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯。
- 請求項1ないし5のいずれか1項記載のプレス打ち抜きされた磁性合金薄帯が絶縁層を介して積層されていることを特徴とする積層磁心。
- 沸点が150℃以上300℃以下の蒸発性の油をプレス油として用い、表面の算術平均粗さRaが0.1μm以上12.5μm以下、かつ高域カットオフ値を0.8mm、低域カットオフ値を8mmとした表面のろ波中心線うねりWCAが2μm以上10μm以下の磁性合金薄帯を打ち抜く工程、
この打ち抜かれた磁性合金薄帯からプレス油を乾燥除去することにより、オージェ電子分光法により求められる表面における炭素の面積占有率を5%以下とする工程、
前記磁性合金薄帯を熱処理する工程、および
前記磁性合金薄帯を複数積層して磁心にする工程と
を有することを特徴とする積層磁心の製造方法。 - 前記積層磁心の製造に用いられる磁性合金薄帯はパーマロイからなることを特徴とする請求項7記載の積層磁心の製造方法。
- 前記打ち抜かれた磁性合金薄帯からプレス油を乾燥除去する工程において、前記炭素の面積占有率を0.5%以上4%以下とすることを特徴とする請求項7または8記載の積層磁心の製造方法。
- 前記磁性合金薄帯表面における炭素は前記プレス油の残留物であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1項記載のプレス打ち抜きされた積層磁心の製造方法。
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