JP2008231533A5 - - Google Patents

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本発明の軟磁性薄帯は、薄帯の表面より深さ120nmの位置で結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ薄帯の表面から深さ120nm以内の深さにアモルファス層を有することを特徴とする。
また、前記アモルファス層と母相組織の間に、前記母相組織の平均粒径よりも大きい結晶粒を含む粗大結晶粒層を有する軟磁性薄帯でもよい。
本発明の軟磁性薄帯は、組成式:Fe100-x-y(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0x≦5、10≦y≦24により表されるものが好ましい。
本発明の軟磁性薄帯の製造方法は、Feおよび半金属元素を含む合金溶湯を急冷し、非晶質中に平均粒径30nm以下(0nmを含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織からなるFe基合金の軟磁性薄帯を作製する工程と、前記軟磁性薄帯に熱処理を行い薄帯の表面より深さ120nmの位置で平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、薄帯の表面から120nm以内の深さにアモルファス層を有する組織となす熱処理工程を有し、前記熱処理工程は300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるように行うことを特徴とする。
アモルファス層を有することにより靭性が向上する。アモルファス層とは、薄帯の断面を観察したときに表面側にアモルファス状態の部分が平均して10nm以上で層状に確認できる部分である。アモルファス層は薄帯の表面に沿ってほぼ平行に観察される。また、表面から120nm以内で観察される。完全に連続した層状でなくてもよく、部分的に途切れていることも有る。アモルファスの出現に伴い、結晶の核が欠乏する領域が表面近傍に生じるため、アモルファス層に隣接した領域で、母相の平均結晶粒径よりも結晶粒径の大きい粗大化結晶粒が析出しやすくなる。すなわち、アモルファス層は、最表面の結晶層や粗大結晶粒層を安定的に析出させる効果がある。
結晶粒径の測定は、電子顕微鏡による組織写真で観察される組織の長径と短径の平均値を取ったものである。平均粒径とは、その結晶粒径を30個以上測定した値の平均値である。
結晶粒の体積分率V V は、線分法、すなわち顕微鏡組織中に任意の直線を想定し、そのテストラインの長さをLt、結晶相により占められる線の長さLcを測定し、結晶粒により占められる線の長さの割合LL=Lc/Lt×100より求められる。ここで、結晶粒の体積分率VV=LL ある。
ここで、粗大結晶粒層Cとは、母相組織の平均結晶粒径に対して1.5倍以上の部分を指すものとする。また、粗大結晶粒層Cの平均結晶粒径は、母相組織の平均結晶粒径の2倍以下とすることが好ましい。
粗大結晶粒層の平均結晶粒径が母相の平均結晶粒径の2倍よりも大きくなると、磁気異方性が大きくなり、母相とは異なる磁化過程を示す。そのため、磁場印加過程と磁場除去過程の間でヒステリシスが生じやすくなる。組織が異なる複合相状態であるため、異なる磁化回転機構の領域が混在し、損失の増大につながる。粗大結晶粒層の平均結晶粒径を母相の平均結晶粒径の2倍以下とすることで、1.6T、50Hzにおける鉄損が方向性ケイ素鋼板よりも低い0.65W/Kg以下にすることが可能である。この場合、アモルファス層を最表面から120nm以内の深さに有することで、母相の平均粒径よりも2倍以上となる粗大結晶粒の発生確率を抑えることができる。
粗大結晶粒層の平均結晶粒径は母相の平均結晶粒径の1.9倍以下、更には1.8倍以下とすることが好ましい。
本発明の軟磁性薄帯は、飽和性が悪いケイ素鋼板よりも皮相電力を抑えることができる。飽和磁束密度は1.70T、さらには1.72Tのものも得ることができる。本発明の軟磁性薄帯は飽和性に優れ、例えば1.60T、50Hzの皮相電力を1.2VA/Kg以下とすることでき、従来のFe系材料では困難であった高磁束密度領域における皮相電力の低減を実現でき、高効率材料が得られる。
A元素(Cu、Au)の量は5原子%以下(0%を含まず)とする。本発明の合金組成におけるA元素は特に重要である。前述したように、A元素はFeとほぼ非固溶のため、熱処理や機械的振動、電気的衝撃、磁気的衝撃等の外的あるいは内的な要因によって、拡散を起こす。特に、薄帯表面と内部で温度分布や温度差が生じやすい熱処理を施した場合には、拡散が起き易い部位と相互の拡散が妨げられ易い部位が存在し、内部で組織は傾斜的、層状的に変質する。磁気的性質を制御するには、薄帯の厚さ、組成の制御、熱処理時の熱処理温度、熱処理時間、昇温速度、降温速度を制御することが有効であり、用途に合わせて、B−H曲線の形を変えられる。また、他の方法、振動等を与えること等でCu原子の拡散を促進することも可能である。
A元素の量は5原子%を超えるとA元素同士が凝集し、熱拡散が起こりにくくなる。好ましくは3原子%以下とする。また、A元素は、上記の効果を得るために0.1原子%以上、さらには0.5原子%以上、さらには0.8原子%以上を添加することが好ましい。A元素は原料コストを考慮するとCuを選択することが好ましい。
X元素(B,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Be)はA元素(Cu,Au)が同一薄帯内に存在する本発明の軟磁性薄帯を形成するために不可欠な元素である。10原子%未満であるとアモルファスの形成を促進する効果が不十分である。また24原子%を超えると軟磁気特性が悪化してしまう。好ましい範囲は12原子%以上20原子%以下である。
特にBはアモルファスの形成を促進するために重要な元素であり添加することが好ましい。Bの濃度が10≦y≦20原子%であると、Feの含有量を高く維持しつつアモルファスが安定に得られる。
また、Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beを添加すると、結晶磁気異方性の大きいFe−Bが析出開始する温度が高くなるため、熱処理温度を高温にできる。高温の熱処理を施すことで微結晶相の割合が増え、Bsが増加し、B−H曲線の角形性が改善される。また、試料表面の変質、変色を抑える効果がある。Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beの添加量は、0原子%超〜7原子%とすることが好ましい。特にSiはこの効果が顕著であり、好ましい。
Feの一部をFeとA元素に共に固溶するNi、Coから選ばれた少なくとも一種以上の元素で置換してもよい。これらの元素を置換した軟磁性薄帯はアモルファスの形成能が高くなり、A元素の含有量を増加させることが可能である。A元素の含有量が増加することで、結晶組織の微細化が促進され軟磁気特性が改善される。また、Ni、Coを置換した場合には飽和磁束密度が増加する。これらの元素を多く置換すると、価格の高騰につながるため、Niの置換量は10原子%未満、好ましくは5原子%未満、さらには2原子%未満が適当であり、Coの場合は10原子%未満、好ましくは2原子%未満、より好ましくは1原子%未満が適当である。
Feの一部をTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、白金族元素、Ag、Zn、In、Sn、As、Sb、Sb、Bi、Y、N、O及び希土類元素から選ばれた少なくとも一種以上の元素で置換した場合、これらの元素はA元素やメタロイド元素と共に熱処理後も残留するアモルファス相に優先的に入るため、Fe濃度の高い微細結晶粒の生成を助ける働きをする。そのため、軟磁気特性の改善に寄与する。一方、本発明の軟磁性薄帯における実質的な磁性の担い手はFeであるため、Feの含有量を高く保つ必要があるが、これら、原子量の大きい元素を含有することは、単位重量あたりのFeの含有量が低下することになる。特に、置換する元素がNb、Zrの場合、置換量は5原子%未満程度、より好ましくは2原子%未満が適当であり、置換する元素がTa、Hfの場合、置換量は2.5原子%未満、より好ましくは1.2原子%未満が適当である。また、Mnを置換する場合は、飽和磁束密度の低下がおこるため、置換量は5原子%未満が妥当であり、より好ましくは2原子%未満である。
但し、特に高い飽和磁束密度を得るためには、これらの元素の総量が1.8原子%以下とすることが好ましい。また、総量が1.0原子%以下とすることがさらに好ましい。
熱処理前の非晶質相中に分散する結晶粒の平均粒径は30nm以下である必要がある。この理由は、熱処理前の状態で平均粒径がこの範囲を超えている場合、熱処理を行うと結晶粒が大きくなりすぎ、不均一な結晶粒組織となるなどが原因で軟磁性が劣化するためである。好ましくは、非晶質相中に分散する結晶粒の平均粒径は20nm以下である。この範囲で、より優れた軟磁気特性を実現できる。また、平均結晶粒間距離(各結晶の重心と重心の距離)は通常50nm以下である。平均結晶粒間距離が大きいと熱処理後の結晶粒の結晶粒径分布が広くなる。また、熱処理後に非晶質相中に分散する体心方構造の結晶粒は、平均粒径60nm以下、体積分率で30%以上分散している必要がある。結晶粒の平均粒径が60nmを超えると軟磁気特性が劣化し、結晶粒の体積分率が30%未満では、非晶質の割合が多く高飽和磁束密度が得にくいためである。より好ましい熱処理後の結晶粒の平均粒径は、30nm以下、より好ましい結晶粒の体積分率は50%以上である。この範囲で、より軟磁性が優れ、Fe基非晶質合金に比べて磁歪の低い合金を実現できる。
本発明の具体的な製造方法は、前記組成の溶湯を単ロール法等の急冷技術によって100℃/sec以上の冷却速度で急冷し、非晶質相中に平均粒径30nm以下の結晶粒が非晶質相中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織のFe基合金を作製後、これを加工し、結晶化温度の近傍で熱処理を施し、平均粒が60nm以下の微結晶組織を形成することによって得られる。
保持温度は化合物が析出する温度(TX2)に対し、TX2−50℃以上とすることが好ましい。保持時間が1時間以上であると、上記の効果が得られにくく、かつ処理時間が長くなり、生産性が悪い。好ましい保持時間は30分以内であり、20分以内であり15分以内である。熱処理は1段階でなく、多段階、複数回行っても良い。さらに、合金に直流、交流あるいはパルス電流を流して、ジュール熱によって熱処理を施すこと、応力下で熱処理することも可能である。
また、2つ以上の異なる組織の層を同一薄帯内に存在する本発明の軟磁性薄帯を得るためには、熱処理温度が300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上とする。高温域での熱処理速度が特性に大きな影響を与える。また、300℃の熱処理温度を超える際の昇温速度が130℃/min以上、さらには150℃/min以上となるようにすることが好ましい。
以上の熱処理を施すことによりアモルファス層の出現する場所を薄帯の表面から120nm以内に制御でき、目的とする組織が得られやすくなる。
本発明の軟磁性微結晶合金は、必要に応じて、SiO、MgO、Al等の粉末あるいは膜で合金薄帯表面を被覆する、化成処理により表面処理し絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成し、薄帯と薄帯の層間の絶縁を行う等の処理を行うことにより好ましい結果が得られる。これは特に層間を渡る高周波における渦電流の影響を低減し、高周波における磁心損失を改善する効果があるためである。この効果は表面状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された磁心に使用した場合に特に著しい。更に、本発明の軟磁性薄帯から磁心を作製する際に必要に応じて含浸やコーティング等を行うことも可能である。本発明の軟磁性薄帯は高周波の用途として特にパルス状電流が流れるような応用に最も性能を発揮するが、センサや低周波の磁性部品の用途にも使用可能である。特に、磁気飽和が問題となる用途に優れた特性を発揮でき、ハイパワーのパワーエレクトロニクスの用途に特に適する。
使用時に磁化する方向とほぼ垂直な方向に磁界を印加しながら熱処理した本発明の軟磁性薄帯は、従来の高飽和磁束密度の材料よりも低い磁心損失が得られる。
(実施例1)
単ロールを用いた液体急冷法で幅5mm、厚さが約20μmの表1に示す組成の薄帯を作製した。1300℃に加熱した合金溶湯を周速32m/sで回転する外径300mmのCu−Be合金ロールに噴出し合金薄帯を作製した。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、非晶質相中に体積分率で30%未満で分散した組織であることが確認された。この薄帯に300℃以上の平均昇温速度が約200℃/minとなるように熱処理を施した。保持温度を450℃で10分間とし、その後、放冷して本発明の軟磁性薄帯を得た。
各試料において、薄帯の最表面に厚さ約20nmの結晶層、その内側に厚さ約30nmのアモルファス層、さらにその内側に厚さ約50〜60nmの粗大結晶粒層が存在し、それよりも内部側には平均粒径が約20nmの微細結晶粒が80%以上で存在する母相組織が存在していた。図1に本発明の軟磁性薄帯(実施例1−1〜1−4)の鉄損(P)の磁束密度(B)依存性を示す。また、表1に本発明の軟磁性薄帯の合金組成(原子%で表す。以下の表も同様)、1.6T、1.7Tで50Hzの条件で測定した飽和磁束密度Bs、および鉄損P16/50、P17/50のデータを示す。比較のため、方向性ケイ素鋼板のデータも共に示す。異相はいずれの組成においても1%以下であった。特に実施例1−4では、1.75Tにおける鉄損P17.5/50は0.51W/Kgで、この領域でも方向性ケイ素鋼板の鉄損の約半分である。
本発明の軟磁性薄帯の飽和磁束密度はFe系アモルファス材の飽和磁束密度の上限の1.65Tよりも約15%高く、本発明の軟磁性薄帯の鉄損は約1.55Tから1.76Tまでの広い磁束密度の領域でFe系アモルファス材および方向性ケイ素鋼板よりも優れた鉄損特性を示す。
(実施例2)
実施例1で作製した軟磁性薄帯を使用し、皮相電力を測定した。図2に本発明の軟磁性薄帯の皮相電力(S)と磁束密度(B)との関係を示す。また、表2に本発明の軟磁性薄帯(実施例1−1〜1−4)の合金組成で、1.55T、1.60T、1.65Tで50Hzの条件で測定した皮相電力S15.5/50、S16/50、S16.5/50のデータを示す。比較のため、方向性ケイ素鋼板のデータも共に示す。
本発明の軟磁性薄帯は、約1.55Tから1.7Tの広い磁束密度の領域で、Fe系アモルファス材および方向性ケイ素鋼板よりも優れた皮相電力特性を示す。実施例1の結果とあわせると、磁束密度範囲が1.55Tから1.75Tの領域で本発明の軟磁性薄帯が特に優れた軟磁気特性を示している。
(実施例4)
単ロールを用いた液体急冷法で厚さが約20μmのFebal.Cu1.4Si4B14 (原子%)の合金組成からなる薄帯を作製した。X線回折および透過電子顕微鏡(TEM)観察の結果、非晶質相中に体積分率で30%未満で分散した組織であることが確認された。
この薄帯に300℃以上の平均昇温速度が約200℃/minとなるように熱処理を施した。保持温度を450℃で10分間とし、その後、放冷して本発明の軟磁性薄帯を得た。
図4にこの軟磁性薄帯の熱処理後の組織写真を示す。図8はこの組織写真の模式図である。また、図5は本発明軟磁性薄帯の結晶層A、アモルファス層B、粗大結晶粒層Cの状態を示す簡略図である。最表面2から順に、薄帯の最表面に厚さ約20nmの結晶層A、その内側に厚さ約30nmのアモルファス層B、さらにその内側に平均粒径30nmの粗大化した結晶粒からなる層(粗大結晶粒層C)が厚さ約50〜60nmで存在し、それよりも内部側には平均粒径が約25nmの微細結晶粒が80%以上で存在する母相組織Dが存在していた。
(実施例5)
図6のように単板状の軟磁性薄帯の試料を折り曲げた際、薄帯が割れずに曲げることができる最小の限界の直径Dcを測定した。限界の直径Dcが小さいほど靭性に優れていると判断できる。表4には液体急冷法で実施例1と同様にして約20μmの各組成の薄帯を作製し、熱処理の際の300℃以上の平均昇温速度が約200℃/minとなるように、450℃で10分間の熱処理を施した軟磁性薄帯を作製した。この軟磁性薄帯の表面近傍のアモルファス層の幅と限界の直径Dcの関連を示す。また、表4には熱処理条件を変えて、アモルファスの幅を広くした試料と、エッチングによりアモルファスを除去した試料の限界の直径Dcも示す。アモルファス層が存在することで、試料の靭性が向上することが解る。一方、アモルファス層がない場合、薄帯は脆化し、取り扱いが困難になる。本発明材料は、損失が少なく、かつ薄帯の靭性が高いという特徴を持つ。
(実施例6)
単ロール法で、厚さ約20μmのFebal.Cu1.35Si2B14 (原子%)の合金組成からなる薄帯を作製した。この合金を用いてJIS規格C12コアを作製し、磁場中で熱処理を施し、高周波特性を観測した。図7は本発明の軟磁性薄帯の0.2Tにおける鉄損の周波数特性を示したものである。比較のためにFe系アモルファスと電磁鋼板のデータも示す。いずれの周波数領域においても本発明の軟磁性薄帯の鉄損Pは低く、高周波特性が良好である。そして、交流初透磁率μ/μの周波数依存性を確認したところ、100kHzにおいてもμ/μは約7000を示した。また熱処理時の印加磁場を100kA/m以上の強磁場とすることで、100kHzにおけるμ/μは約3500となる。
(実施例7)
表5−1、表5−2に示す組成の本発明の軟磁性薄帯を製造した。軟磁性薄帯の幅は約5mm、厚さは約21μmである。いずれも薄帯の表面から120nm以内の深さに厚さが40nm以下のアモルファス層、および、その内部側に微細結晶粒が80%以上で存在する母相組織が存在していた。
熱処理温度と飽和磁束密度、および、1.6T、50Hzにおける鉄損の値を示す。300℃以上の平均昇温速度は100℃/minと200℃/minの二通りで行った。得られた軟磁性薄帯の鉄損P16/50は、全て0.65W/Kg以下である。また、この表5−1、表5−2で示す組成の軟磁性薄帯は、いずれも図6に示した折り曲げ限界直Dcが5mm以下である。
(実施例8)
合金組成がFebal.Cu1.25Si2B14(原子%)の1250℃に加熱された合金溶湯をスリット状のノズルから回転する外径約300mmのCu−Be合金ロールに噴出し、幅5mmで非晶質相中の結晶粒体積分率の異なる合金薄帯を作製し、結晶粒体積分率を透過電子顕微鏡像より求めた。次にこの合金薄帯を外径19mm、内径15mmに巻き回し巻磁心を作製し410℃で1時間の熱処理を行い、熱処理後の飽和磁束密度Bs、保磁力Hcを測定した。なお、熱処理後の合金の結晶粒体積分率は30%以上であり、Bsは1.8T〜1.87Tを示した。
表6に熱処理後の保磁力Hcを示す。熱処理前の合金中に結晶粒が存在しない合金を熱処理し、熱処理後非晶質相中の結晶粒が60%になるように熱処理した場合、保磁力Hcは750A/mと著しく大きくなった。熱処理前における非晶質相中の結晶粒の体積分率が30%未満の合金を熱処理した場合、熱処理後のHcは小さく、本発明製造方法により高Bsで軟磁性に優れた合金が実現できることが確認された。これに対して、熱処理前における非晶質相中の結晶粒の体積分率が30%以上の合金を熱処理し、残りの非晶質相を結晶化させた合金では、粗大化した結晶粒が存在するようになり保磁力Hcが増加する傾向を示すことが分った。
以上のように、Fe量の多い高Bs材で熱処理前の急冷したままの状態で微細な結晶粒が0%超30%未満分散した組織の合金を熱処理し、更に結晶化を進めた合金の軟磁性は、完全な非晶質状態の合金や結晶粒が30%以上存在する合金よりも優れていることが分った。
50Hzにおける鉄損の磁束密度依存性を示す図である。 50Hzにおける皮相電力の磁束密度依存性を示す図である。 各周波数における鉄損の磁束密度依存性を示す図である。 透過型電子顕微鏡で撮影した表面近傍の断面組織写真である。 本発明の軟磁性薄帯の組織の状態を示す模式図である。 単板折り曲げを説明する模式図である。 鉄損の周波数依存性を示す図である。 図4の断面組織写真の模式図である。

Claims (9)

  1. 薄帯の表面より深さ120nmの位置で結晶粒径が60nm以下(0を含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、かつ薄帯の表面から120nm以内の深さアモルファス層を有することを特徴とする軟磁性薄帯。
  2. 前記軟磁性薄帯は、最表面に結晶組織から成る結晶層が形成され、前記結晶層の内部側に前記アモルファス層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性薄帯。
  3. 前記アモルファス層と母相組織の間に、前記母相組織の平均粒径よりも大きい結晶粒を含む粗大結晶粒層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟磁性薄帯。
  4. 前記軟磁性薄帯は、組成式:Fe100-x-y(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0x≦5、10≦y≦24により表されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の軟磁性薄帯。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の軟磁性薄帯を用いた磁心。
  6. 磁束密度1.6T、周波数50Hzで測定した鉄損が0.65W/Kg以下であることを特徴とする請求項5に記載の磁心。
  7. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の軟磁性薄帯、または請求項5又は請求項6に記載の磁心を用いた磁性部品。
  8. Feおよび半金属元素を含む合金溶湯を急冷し、非晶質中に平均粒径30nm以下(0nmを含まず)の結晶粒が非晶質中に体積分率で0%超30%未満で分散した組織からなるFe基合金の軟磁性薄帯を作製する工程と、前記軟磁性薄帯に熱処理を行い薄帯の表面より深さ120nmの位置で平均粒径60nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質中に体積分率で30%以上分散した母相組織を有し、薄帯の表面から120nm以内の深さにアモルファス層を有する組織となす熱処理工程を有し、前記熱処理工程は300℃以上の平均昇温速度が100℃/min以上となるように行うことを特徴とする軟磁性薄帯の製造方法。
  9. 前記Fe基合金は、組成式:Fe100-x-y(但し、AはCu,Auから選ばれた少なくとも一種以上の元素、XはB,Si,S,C,P,Al,Ge,Ga,Beから選ばれた少なくとも一種以上の元素)で表され、原子%で、0x≦5、10≦y≦24により表されることを特徴とする請求項8に記載の軟磁性薄帯の製造方法。
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