JP2022113111A - 軟磁性合金、軟磁性合金薄帯およびその製造方法、磁心、ならびに部品 - Google Patents

軟磁性合金、軟磁性合金薄帯およびその製造方法、磁心、ならびに部品 Download PDF

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Abstract

【課題】飽和磁束密度が高く、鉄損が低い軟磁性合金および軟磁性合金薄帯を提供する。【解決手段】組成式(Fe1-xAx)aSibBcCudMeで表され、AはNiおよびCoの少なくとも1種であり、MはNb,Mo,V,Zr,HfおよびWからなる群から選択される1種以上であり、原子%で82.4≦a≦86、0.2≦b≦2.4、12.5≦c≦15.0、0.05≦d≦0.8、0.4≦e≦1.0、0≦x≦0.1である軟磁性合金であって、粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有する軟磁性合金。【選択図】図1

Description

本開示は、軟磁性合金、軟磁性合金薄帯およびその製造方法、磁心、ならびに部品に関する。
ナノ結晶構造を有する軟磁性合金は、優れた磁気特性が得られ、変圧器、電子部品、モータなどに利用されている。それらの変圧器、電子部品、モータなどは、小型化や高効率化が求められている。そのため、それらの部品(変圧器、電子部品、モータなど)に用いられる軟磁性合金には、更なる特性の向上が求められている。その軟磁性合金に求められる特性としては、飽和磁束密度が高いこと、鉄損が低いことがある。それらの部品のなかには、半導体などの高周波化にともない動作周波数を高くして小型化を進めているものも多く、鉄損の低い、Fe基非晶質合金やFe基ナノ結晶合金が着目されている。また、商業的に普及させるためには、価格、生産性、熱処理性に優れた軟磁性合金が求められている。
特許文献1では、組成式Fe100-a-b-cCuM’で、M’は、Nb、Mo、Ta、W、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の元素であり、10≦a≦16、0<b≦2、及び0≦c≦8を満たす組成を有し、かつ非晶質相を有する合金を昇温速度10℃/秒以上で加熱し、かつ、結晶化開始温度以上、Fe-B化合物の生成開始温度未満で、0~80秒にわたり保持することにより、高飽和磁化と低保磁力を両立する軟磁性材料の製造方法が記載されている。
特許文献2では、組成式((Fe(1-(α+β))X1αX2β(1-(a+b+c+d+e))SiCuからなる軟磁性合金であって、X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、0.140<a≦0.240、0≦b≦0.030、0<c<0.080、0<d≦0.020、0≦e≦0.030、α≧0、β≧0、0≦α+β≦0.50、であることを特徴とする軟磁性合金が開示されている。この軟磁性合金は、高い飽和磁束密度、低い保磁力および高い透磁率μ´を同時に有する軟磁性合金となることが記載されている。
特許文献3では、Fe100-x-y-zにより表され、ここで、AはCuおよびAuから選ばれた少なくとも1種以上の元素、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選ばれた少なくとも1種以上の元素、XはBおよびSiから選ばれた少なくとも一種以上の元素であり、原子%で、0<x≦5、0.4≦y<2.5、10≦z≦20であり、軟磁性合金の飽和磁束密度が1.7T以上、保磁力が15A/m以下である軟磁性合金が開示されている。
国際公開第2018/025931号 特開2019-94532号公報 国際公開第2008/133301号
特許文献1には、高飽和磁化を有する軟磁性材料の製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の軟磁性材料は、Siを含有しない。このため、特許文献1に記載の軟磁性材料では、耐食性に寄与するSiO膜が材料表面に形成されないため、錆などの防止が困難となる。
特許文献2に記載された軟磁性合金は、飽和磁束密度(Bs)があまり高くない。一般にFe量が多くなれば、飽和磁束密度が高くなるが、Fe量が84.0at%の実施例6で、飽和磁束密度(Bs)は1.76Tとなっている。また、この実施例6は、Siを含有していないため、上記した課題がある。また、特許文献2に記載された軟磁性合金は、比較的B量が多いことより、熱処理性が不十分であると考えられる。
特許文献3に記載された軟磁性合金は、高価なM元素(Nbなど)を多く含むため、価格が高くなる。また、鋳造方向に異方性が付与されており、鋳造方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度と、鋳造方向に直交する方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度との比が大きいため、等方性を必要とする用途には不向きである。
本開示は、飽和磁束密度が高く、鉄損が低い軟磁性合金、その軟磁性合金からなる軟磁性合金薄帯およびその製造方法、その軟磁性合金薄帯を用いた磁心、ならびに部品を提供することが好ましい。
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 組成式(Fe1-xSiCuで表され、AはNiおよびCoの少なくとも1種であり、MはNb,Mo,V,Zr,HfおよびWからなる群から選択される1種以上であり、原子%で82.4≦a≦86、0.2≦b≦2.4、12.5≦c≦15.0、0.05≦d≦0.8、0.4≦e≦1.0、0≦x≦0.1である軟磁性合金であって、
前記軟磁性合金は粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有する軟磁性合金。
<2> <1>において、飽和磁束密度が1.74T以上である軟磁性合金。
<3> <1>または<2>において、密度が7.45g/cm以上である軟磁性合金。
<4> 合金組成が、組成式(Fe1-xSiCuで表され、AはNiおよびCoの少なくとも1種であり、MはNb,Mo,V,Zr,HfおよびWからなる群から選択される1種以上であり、原子%で82.4≦a≦86、0.2≦b≦2.4、12.5≦c≦15.0、0.05≦d≦0.8、0.4≦e≦1.0、0≦x≦0.1である軟磁性合金薄帯であって、
前記軟磁性合金薄帯は粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有し、飽和磁束密度が1.74T以上、1kHz,1Tでの鉄損が25W/kg以下である軟磁性合金薄帯。
<5> <4>に記載の軟磁性合金薄帯において、密度が7.45g/cm以上である軟磁性合金薄帯。
<6> <4>または<5>に記載の軟磁性合金薄帯において、占積率が86%以上である軟磁性合金薄帯。
<7> <4>~<6>のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯において、厚さが25μm以上である軟磁性合金薄帯。
<8> <4>~<7>のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯において、前記軟磁性合金薄帯の鋳造方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度Lと、前記軟磁性合金薄帯の鋳造方向に直交する方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度Wとの値の比(L/W)が0.7~1.3である軟磁性合金薄帯。
<9> <4>~<8>のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯において、飽和磁歪が20ppm以下である軟磁性合金薄帯。
<10> <4>~<9>のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯を得る製造方法において、
合金薄帯を熱処理して、粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有する軟磁性合金薄帯の製造方法であり、
前記熱処理では、bccFe結晶化開始温度より10~140℃低い温度を温度T1、FeB化合物析出開始温度より30~120℃低い温度を温度T2として、
室温から温度T1まで、昇温速度50℃/sec.以上で加熱し、
温度T1から温度T2まで、温度T1までの昇温速度より遅く、かつ400℃/sec.以下の昇温速度で加熱し、
温度T2に達したのち冷却する、又は、
温度T2に達したのち、温度T2-50℃から温度T2の間の温度で、0.5~60秒保持し、その後、冷却する、軟磁性合金薄帯の製造方法。
<11> 前記熱処理前の合金薄帯は、合金溶湯を回転する冷却ロール上に噴出させ、前記冷却ロール上で急冷凝固させて得られ、前記冷却ロールの外周部が熱伝導率120W/(m・K)以上となるCu合金で構成されている<10>に記載の軟磁性合金薄帯の製造方法。
<12> 前記熱処理前の合金薄帯の密度をM1とし、前記熱処理後の合金薄帯の密度をM2としたとき、M2/M1が1.005以上である<10>または<11>に記載の軟磁性合金薄帯の製造方法。
<13> <4>~<9>のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯を用いて構成された磁心。
<14> <13>に記載の磁心と、巻線とを備える部品。
本開示の一態様によれば、飽和磁束密度が高く、鉄損が低い軟磁性合金および軟磁性合金薄帯を得ることができる。また、本開示の一態様によれば、等方性を有する軟磁性合金薄帯を得ることができる。また、本開示の一態様の軟磁性合金薄帯を用いた磁心、ならびに部品によれば、飽和磁束密度が高く、低鉄損な特性を備える磁心、ならびに部品を得ることができる。
本開示の一実施例の熱処理パターン例と熱処理パターンの参考例を示す図である。 参考例の熱処理パターンで熱処理した試料の保持温度とB8000,鉄損の相関図である。 本開示の一実施例の熱処理パターンで熱処理した試料の保持温度とB8000,鉄損の相関図である。 本開示の一実施例のNo.2の軟磁性合金薄帯の透過型電子顕微鏡観察画像である。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示の軟磁性合金は、組成式(Fe1-xSiCuで表され、AはNiおよびCoの少なくとも1種であり、MはNb,Mo,V,Zr,HfおよびWからなる群から選択される1種以上であり、原子%で82.4≦a≦86、0.2≦b≦2.4、12.5≦c≦15.0、0.05≦d≦0.8、0.4≦e≦1.0、0≦x≦0.1である軟磁性合金であって、
前記軟磁性合金は粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有する。
まず、本開示の組成に関して、以下に詳細に説明する。
Fe(鉄)は、原子%で82.4%以上86%以下であることが好ましい。
Feの含有量を82.4%以上とすることにより、飽和磁束密度1.74T以上を満たすことができる。好ましくは83%以上であり、さらに好ましくは83.5%以上であり、さらに好ましくは84%以上である。
また、Feの含有量が86%を超えるとアモルファス化が困難となるため、Feの含有量は86%以下とする。好ましくは85.5%以下である。
本開示の組成において、Feの一部をNiおよびCoの少なくとも1種の元素に置換しても良い。このとき、(Fe1-x)と表示でき、AはNiおよびCoの少なくとも1種であり、xは0.1以下である。なお、xは0でも良い。Feの一部をNiおよびCoの少なくとも1種の元素に置換する場合、上記したFeの範囲は、(Fe1-x)の範囲として読み替えることができる。つまり、(Fe1-x)は、原子%で82.4%以上86%以下である。好ましくは83%以上であり、さらに好ましくは83.5%以上であり、さらに好ましくは84%以上である。また、好ましくは85.5%以下である。
Si(ケイ素)は、原子%で0.2%以上2.4%以下である。
Siを含有することにより、合金表面に数十nm厚さのSiOの酸化膜を形成させることができる。これにより、軟磁性合金の耐食性を向上させることができる。この耐食性の向上の効果を得るために、Siを0.2%以上含有させる。好ましくは1.0%以上である。
Siの含有量が2.4%を超えると、1.74T以上の飽和磁束密度を得ることが困難となり、また、軟磁性合金薄帯の厚さを厚肉化することが困難となる。このため、Siの含有量は2.4%以下とする。好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは1.9%以下である。
B(ホウ素)は、原子%で12.5%以上15.0%以下である。
Bの含有量が12.5%未満ではアモルファスの形成が困難となるため、Bの含有量は12.5%以上とする。好ましくは13.0%以上であり、さらに好ましくは13.5%以上である。
Bの含有量が15.0%を超えると、bccFe(αFe)結晶化開始温度とFeB化合物析出開始温度との差が小さくなり、最適な熱処理温度の範囲が狭くなる。このため、均一微細なナノ結晶組織を得ることが難しくなり、1T,1kHzでの鉄損を25W/kg以下とすることが難しくなる。これにより、Bの含有量は15.0%以下とする。好ましくは14.5%以下であり、さらに好ましくは14.4%以下であり、さらに好ましくは14.0%以下である。
Cu(銅)は、原子%で0.05%以上0.8%以下である。
Cuの含有量が0.05%未満では、均一微細なナノ結晶組織を得ることが難しくなり、1T,1kHzでの鉄損を25W/kg以下とすることが難しくなる。このため、Cuの含有量は0.05%以上とする。好ましくは0.2%以上であり、さらに好ましくは0.4%以上であり、さらに好ましくは0.5%以上である。
Cuの含有量が0.8%を超えると、脆化しやすくなり、軟磁性合金薄帯の厚さを厚肉化することが困難となる。このため、Cuの含有量は、0.8%以下とする。好ましくは0.7%以下である。
M元素は、Nb,Mo,V,Zr,HfおよびWからなる群から選択される1種以上であり、原子%で0.4%以上1.0%以下である。
M元素は、磁気磁性を著しく劣化させるFeB化合物の析出が開始する温度を高温側にシフトさせることができる。これにより、bccFe(αFe)結晶化開始温度とFeB化合物析出開始温度との差を広くすることができ、最適な熱処理温度の範囲を広げる効果を有し、熱処理条件を緩和させることができる。そのため、0.4%以上とする。好ましくは0.42%以上であり、さらに好ましくは0.43%以上である。
M元素は、高価であるため価格が上がってしまう。このため、含有量は少ない方が好ましい。したがって、M元素の含有量は、1.0%以下とする。好ましくは0.9%以下であり、さらに好ましくは0.8%以下であり、さらに好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.6%以下である。
本開示の軟磁性合金は、C(炭素)を含有していても良い。Cの含有量は1質量%以下が好ましい。
また、本開示の軟磁性合金は、組成式(Fe1-xSiCuで表される元素の他、上記したC以外にも不純物を含有し得る。
不純物としては、例えば、S(硫黄)、O(酸素)、N(窒素)、Cr、Mn、P、Ti、Al等が挙げられる。例えば、Sの含有量は、好ましくは200質量ppm以下であり、Oの含有量は、好ましくは5000質量ppm以下であり、Nの含有量は、好ましくは1000質量ppm以下である。これらの不純物の総含有量は、0.5質量%以下であることが好ましい。また、上記の範囲であれば、不純物に相当する元素が添加されていてもかまわない。
本開示の軟磁性合金は、粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有する。この粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織をナノ結晶組織とも言う。また、粒径60nm以下の結晶をナノ結晶とも言う。
本開示の軟磁性合金は、ナノ結晶組織を備えることを一つの特徴としている。
また、本開示の軟磁性合金は、ナノ結晶の割合が体積率で50%以上であることが好ましい。この体積率は、例えば、合金断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、ナノ結晶と非晶質相とを観察し、おおよその割合を算出することができる。つまり、上記の観察像からナノ結晶の割合が体積率で50%以上であるか否かの判定は可能である。
また、合金断面を観察したとき、特定の視野面積において、粒径が60nm以下となる結晶粒の面積率が50%以上(特定の視野面積を100%とした値)であることが好ましい。本開示の軟磁性合金は、粒径が60nm以下となる結晶粒と非晶質相とを備え、粒径が60nm以下となる結晶粒の面積率が50%以上であることが好ましい。合金断面を、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより、粒径が60nm以下となる結晶粒と非晶質相を観察し、面積率を判定することができる。
本開示の軟磁性合金は、飽和磁束密度が1.74T以上であることが好ましい。さらに好ましくは1.75T以上であり、さらに好ましくは1.77T以上である。
本開示の軟磁性合金は、密度が7.45g/cm以上であることが好ましい。密度が7.45g/cm以上であることにより、ナノ結晶の体積率が高くなり、飽和磁束密度が高くなる。
本開示の軟磁性合金は、1kHz,1Tでの鉄損が25W/kg以下であることが好ましい。また、この鉄損は18W/kg以下であることが好ましい。また、この鉄損は15W/kg以下であることが好ましい。
また、本開示の軟磁性合金は、飽和磁歪が20ppm以下であることが好ましい。これにより、等方性が得られやすい。
本開示の軟磁性合金によれば、高い飽和磁束密度と、低い鉄損と、を備える軟磁性合金を得ることができる。
本開示の軟磁性合金は、以下に説明する合金薄帯や、合金薄帯を粉砕した粉砕粉や、アトマイズ法などを用いて製造した粉末の形態とすることができる。
本開示の軟磁性合金薄帯は、上記した軟磁性合金組成となる合金溶湯を回転する冷却ロール上に噴出させ、冷却ロール上で急冷凝固させて合金薄帯を得て、その合金薄帯を熱処理することにより、得ることができる。
合金溶湯は、例えば、目的とする合金組成となる各元素源(純鉄、フェロボロン、フェロシリコン等)を配合し、誘導加熱炉等で融点以上に加熱して得ることができる。
合金溶湯を所定形状のスリット状のノズルから回転する冷却ロール上に噴出させて、合金溶湯を冷却ロール上で急冷凝固させて、合金薄帯を得ることができる。このとき、冷却ロールは外径350~1000mm、幅100~400mm、回転の周速は20~35m/sとすることができる。この冷却ロールは内部に外周部の温度上昇を抑制するための冷却機構(水冷など)を備えていることが好ましい。
また、冷却ロールの外周部が熱伝導率120W/(m・K)以上となるCu合金で構成されていることが好ましい。外周部の熱伝導率を120W/(m・K)以上とすることにより、合金溶湯が合金薄帯へ鋳造される際の冷却速度を高めることができる。こうすることにより、合金薄帯の脆化を抑制し、合金薄帯の厚さの厚肉化を可能とすることができる。また、鋳造時の表面結晶化を抑制することができ、合金薄帯の熱処理時の結晶粒の粗大化を抑制し、鉄損を低くすることができる。なお、厚肉化とは、例えば、厚さを15μm以上とするものであり、好ましくは厚さを20μm以上とするものである。
また、冷却ロールの外周部の熱伝導率は150W/(m・K)以上とすることが好ましく、さらに180W/(m・K)以上とすることが好ましい。特に、軟磁性合金薄帯の厚さが30μm以上となる場合は、外周部の熱伝導率を150W/(m・K)以上とすることが好ましい。
なお、冷却ロールの外周部とは、合金溶湯が接する部分であり、その厚さは5~15mm程度あればよい。また、冷却ロールの外周部の内側はロール構造を維持する構造材を用いればよい。
合金溶湯を冷却ロール上で急冷凝固させて、合金薄帯を作製した後、その合金薄帯に熱処理を施すことによって、ナノ結晶組織を備える軟磁性合金薄帯を得ることができる。この熱処理を施す際、合金薄帯をbccFe(αFe)結晶化開始温度以上の温度に昇温するとともに、合金薄帯がFeB化合物析出開始温度に到達しないように温度調整して、熱処理することが好ましい。
従来の合金薄帯の熱処理は、例えば、昇温速度10℃/sec.以上で、室温からFeB化合物析出開始温度より30~100℃低い温度まで加熱し、その後数秒保持する熱処理方法で実施されていた。
しかし、高飽和磁束密度を得るために、CuやNbを低減しFe量を多くした合金薄帯の場合、bccFe(αFe)結晶化開始温度とFeB化合物析出開始温度との温度差が小さくなり、最適な熱処理温度の範囲が非常に狭くなる。このため、狭い温度範囲で熱処理温度(最高温度)を調整しなければならないという課題が生じた。また、幅が50mm以上の広い合金薄帯を製造する場合、幅方向の急冷凝固の状態のばらつきや、幅方向の厚さのばらつきや、ロット毎の組成のばらつきなどが生じるため、最適な熱処理温度の範囲が一層狭くなり、合金薄帯の全体において、均一な熱処理を行うことが難しいという課題があった。
本開示の合金薄帯の熱処理では、bccFe(αFe)結晶化開始温度より10~140℃低い温度を温度T1、FeB化合物析出開始温度より30~120℃低い温度を温度T2として、室温から温度T1まで、昇温速度50℃/sec.以上で加熱し、温度T1から温度T2まで、温度T1までの昇温速度より遅く、かつ400℃/sec.以下の昇温速度で加熱し、その後、冷却することが好ましい。温度T2に達したのち、そのまま冷却してもよいし、温度T2に達したのち、温度T2-50℃から温度T2の間の温度で、0.5~60秒保持し、その後、冷却してもよい。
ここで、昇温速度は、その温度間での平均昇温速度とする。例えば、室温から温度T1までの昇温速度は、室温から温度T1までの時間(秒)を分母とし、温度T1から室温(25℃)を引いた温度を分子として計算できる。
本開示の合金薄帯の熱処理方法によれば、高飽和磁束密度で、低鉄損の軟磁性合金薄帯を安定して製造することができる。
なお、本開示の合金薄帯の熱処理は、合金薄帯を磁心形状に加工した後に行うこともできる。この磁心形状とは、合金薄帯を磁心形状にプレスなどで加工した薄帯、またはその磁心形状の薄帯を積層した磁心、薄帯を巻き回したりして構成される巻磁心などである。
図1に本開示の一実施例の熱処理パターン例と熱処理パターンの参考例とを示す。図2(熱処理パターンの参考例)、図3(本開示の一実施例)にそのときの保持温度をX軸とし、磁界8000A/m印加したときの磁束密度B8000と1T,1kHzでの鉄損(CL)とをY軸とした相関を示し、表1(熱処理パターンの参考例)、表2(本開示の一実施例)にそのときの熱処理条件とB8000,鉄損の値を示す。この試料の合金組成は、下記で説明する表3のNo.3と同一であり、bccFe(αFe)結晶化開始温度は470℃、FeB化合物析出開始温度は590℃である。
図2、表1に示すとおり、参考例C1~C5の熱処理パターンでは、保持温度が480℃と490℃とのとき、B8000が1.82Tとなり、保持温度が470℃以下のとき、および保持温度が500℃のとき、B8000が1.82T未満となった。保持温度が500℃の場合、鉄損が著しく高かった。保持温度が480℃と490℃とのとき、B8000が1.82T以上であり、鉄損も低い結果が得られた。しかし、B8000が1.82T以上で低い鉄損が得られる温度範囲は10℃程度であり、非常に狭かった。
一方、図3、表2に示すとおり、本開示の一実施例E1~E6の熱処理パターンでは、温度T1は、bccFe(αFe)結晶化開始温度(470℃)よりも10℃低く、E1、E2、E3、E4、E5、E6の温度T2は、順に、FeB析出開始温度(590℃)よりも、110℃、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃低い。E1~E6の熱処理パターンにおけるT1の保持時間は0sec.、T2の保持時間は、0.5sec.であった。
本開示の一実施例E1~E6の熱処理パターンでは、温度T2(保持温度)が490~530℃の場合に、B8000が1.82~1.83Tとほぼ安定して高い値を示し、温度T2が480℃の場合もB8000が1.81Tと高い値を示した。また、温度T2(保持温度)が480~530℃の場合に、鉄損が7.2~15.5W/kgとなり、低鉄損の値を示した。このことから、B8000が1.82T以上で、鉄損が25W/kg以下となる保持温度の温度範囲が40℃以上あり、また、B8000が1.81T以上で、鉄損が25W/kg以下となる保持温度の温度範囲は50℃以上あった。
つまり、本開示の熱処理パターンの場合、参考例よりも広い温度範囲において、高飽和磁束密度と低鉄損の軟磁性合金薄帯を得ることができた。
本開示の一実施例の熱処理パターンにより得られた試料は、粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有していた。また、各試料を断面観察したところ、粒径が60nm以下となる結晶粒の面積率が50%以上(観察視野面積を100%とした値)であった。なお、図3、表2において、保持温度は温度T2である。
Figure 2022113111000002
Figure 2022113111000003
熱処理時の昇温速度は薄帯の生産性、生成する核密度、結晶粒径の粗大化の抑制という観点から速い方が好ましい。しかし、昇温速度が速すぎると結晶化が短時間で起き、時間当たりの発熱量が大きくなり、薄帯の温度が上昇しすぎて、以下の課題を生じる。第一に、薄帯がFeB化合物析出開始温度に達してしまい、FeB化合物の析出を誘発する。第二に、薄帯がFeB化合物析出開始温度まで達しない場合でも温度が上昇しすぎて、結晶粒径の成長が加速され、鉄損が劣化してしまう。
そのため、本開示の熱処理では、第1の温度T1から昇温速度を抑え、FeB化合物の析出を抑制することができる。また、第1の温度T1から昇温速度を抑えることで結晶の成長を抑制し、結晶のばらつきを抑制することができる。これにより、本開示の熱処理では、鉄損の増加を抑制し、収縮差によって生じるしわなど熱処理時に生じる形状的不具合を改善することが可能となる。
なお、室温から温度T1までの昇温速度は、速ければ速い方がよく、例えば、50℃/sec.以上である。好ましくは200℃/sec.以上であり、更に好ましくは300℃/sec.以上であり、更に好ましくは400℃/sec.以上である。室温から温度T1までの昇温速度は、設備能力に応じて選択すればよい。
また、温度T1から温度T2までの昇温速度は、温度T1までの昇温速度より遅くする。例えば、温度T1までの昇温速度より遅く、かつ400℃/sec.以下とすることが好ましい。好ましくは温度T1までの昇温速度より遅く、かつ200℃/sec.以下であり、更に好ましくは温度T1までの昇温速度より遅く、かつ150℃/sec.以下であり、更に好ましくは温度T1までの昇温速度より遅く、かつ100℃/sec.以下である。また、温度T1から温度T2までの昇温速度は、10℃/sec.以上が好ましく、更に好ましくは30℃/sec.以上であり、さらに好ましくは50℃/sec.以上である。
本開示の軟磁性合金薄帯では、上記のとおり、速い昇温速度で熱処理を行うとともに、速い昇温速度での熱処理はbccFe(αFe)の結晶化による温度上昇が始まる温度より低い温度T1までとする。そして、温度T1以降の昇温速度をそれまでの昇温速度より遅くし、かつ400℃/sec.以下とする。これにより、結晶化による発熱を制御することにより、FeB化合物の析出を抑制するとともに、αFe結晶の粒成長を抑制する。
本開示の軟磁性合金薄帯では、本開示の熱処理方法により、高い飽和磁束密度と低い鉄損が得られる最適な熱処理温度の範囲を広げることができ、制御する温度範囲が広くなり、熱処理性が優れた軟磁性合金薄帯が得られる。
本開示の軟磁性合金薄帯では、熱処理前の合金薄帯の密度をM1とし、熱処理後の合金薄帯の密度をM2としたとき、M2/M1が1.005以上であることが好ましい。上記した本開示の熱処理により、合金薄帯の密度を向上させることができる。これにより、高い飽和磁束密度が得られる。
本開示の軟磁性合金薄帯は、飽和磁束密度が高く、鉄損が低い。この飽和磁束密度としては、1.74T以上、鉄損としては、1kHz,1Tで25W/kg以下が得られる。また、この鉄損は18W/kg以下であることが好ましく、さらに好ましくは15W/kg以下である。また、飽和磁束密度は1.75T以上であることが好ましく、さらに好ましくは1.77T以上である。
また、本開示の軟磁性合金薄帯は、密度が7.45g/cm以上であることが好ましい。密度が7.45g/cm以上であることにより、ナノ結晶の体積率が高くなり、飽和磁束密度が高くなる。
また、本開示の軟磁性合金薄帯は、飽和磁歪が20ppm以下であることが好ましい。これにより、等方性が得られやすい。
本開示の軟磁性合金薄帯は、上記した軟磁性合金の構成および特徴を備えている。それらの説明は重複するので、上記の記載を適用する。
また、本開示の軟磁性合金薄帯は、厚さが15μm以上であることが好ましく、更には20μm以上であることが好ましく、厚さが25μm以上であることが好ましく、更には30μm以上であることが好ましい。例えば、厚さが25μm以上であることにより、軟磁性合金薄帯を積層して磁心を作製する際の工数および製造コストを低減できる。さらに好ましくは32μm以上である。また、軟磁性合金薄帯の厚さが大きくなると、合金薄帯の製造が難しくなる。そのため、50μm以下が好ましい。より好ましくは35μm以下である。
また、1kHzを超える高周波帯で鉄損をより低くする必要がある用途には厚さ15~25μm程度の軟磁性合金薄帯が好ましい。
また、本開示の軟磁性合金薄帯は、高い占積率が得られる。本開示の軟磁性合金薄帯では、占積率を86%以上とすることが好ましい。また、本開示の軟磁性合金薄帯は、占積率が88%以上であることが好ましい。高い占積率であることにより、軟磁性合金薄帯を積み重ねたとき、占積率の低い合金薄帯に比べ、同じ積層数であっても、積層厚さを薄くすることができ、磁心の小型化、ならびに部品の小型化に寄与する。
なお、占積率は、JIS C 2534:2017に準拠した以下の方法で測定することができる。
長さ120mmに切断した薄帯を20枚重ね、平らな試料台にセットし、直径16mmの平らなアンビルを50kPaの圧力で積層した薄帯に乗せ、幅方向に10mm間隔で高さを測定する。そのときの最大高さをhmax(μm)とし以下の計算式から占積率LFを求める。
LF(%)=試料の重量(g)/密度(g/cm)/hmax(μm)/試料長さ(240cm)/薄帯の幅(cm)×10000
このとき、密度(g/cm)は、熱処理後の合金薄帯の密度である。
また、本開示の軟磁性合金薄帯は、軟磁性合金薄帯の鋳造方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度Lと、軟磁性合金薄帯の鋳造方向に直交する方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度Wとの値の比(L/W)が0.7~1.3であることが好ましい。比(L/W)が0.7~1.3であることにより、等方性の高い軟磁性合金薄帯を得ることができる。
一般に、回転する冷却ロールに合金溶湯を噴出させ、急冷凝固させて製造された合金薄帯は、鋳造方向に異方性が導入される。なお、鋳造方向とは、冷却ロールの回転方向に沿う方向であり、連続して鋳造される合金薄帯の長手方向となる。
上記したように、鋳造時に鋳造方向の異方性が導入された軟磁性合金薄帯では、導入された異方性は、熱処理後(ナノ結晶組織とする熱処理後)の特性にも影響を及ぼす。特に、非晶質相の体積率が高いと、合金薄帯の鋳造方向(合金薄帯の長手方向)と鋳造方向に直交する方向(長手方向に直交する方向であり、合金薄帯の幅方向に相当する)とで磁束密度が異なり、熱処理後も異方性が残ることになる。
しかしながら、モータ用途など、等方性の軟磁性合金薄帯が求められる用途もある。そのため、鋳造方向と鋳造方向に直交する方向との磁束密度の差を、ある範囲内に収めるようにナノ結晶の体積率を上げる熱処理を実施することが好ましい。
一方、ナノ結晶の体積率を上げるため、熱処理温度を高温とする、または熱処理時間を延ばすと、ある条件でFeB化合物が析出し、磁気特性が劣化する。特にFe量が多い軟磁性合金薄帯では等方性を実現する最適な熱処理温度の範囲が狭く、高い飽和磁束密度、低い鉄損、および等方性を兼ね備え、ナノ結晶組織を備える軟磁性合金薄帯を得ることが難しいという課題があった。
本開示によれば、上記の課題を解決し、FeB化合物の析出を抑制しつつ、高い飽和磁束密度と、低い鉄損と、を兼ね備えた軟磁性合金薄帯を得ることができ、さらに、等方性を兼ね備えた軟磁性合金薄帯を得ることができる。
本開示の軟磁性合金薄帯では、所望の特性を得るための最適な熱処理温度の範囲が広く、量産時のばらつきを考慮しても、量産性が高い。特にモータ用磁心などに使用される幅が広い合金薄帯の場合、熱処理時の温度ばらつきが生じやすくなるため、最適な熱処理温度の範囲が広いことが有効となる。
一般に、合金薄帯内で昇温速度や温度のばらつきが生じると部分的に結晶化による発熱の制御ができなくなり、結晶化時の収縮にばらつきが生じ合金薄帯にしわができるなどして、磁心にした時の占積率が低下するなどの不具合が生じやすくなる。
しかしながら、本開示の軟磁性合金薄帯では、上記したとおり、熱処理時の温度ばらつきに対する許容範囲が広く、しわが抑制され、占積率が高く、平滑度の高い軟磁性合金薄帯を得ることができる。
平滑度は占積率測定時に測定した幅方向の厚さの最大値hmaxと最小値hminとから、(hmax―hmin)/20で定義することができる。この平滑度は、3μm以下が好ましい。
本開示の軟磁性合金薄帯を用いて、変圧器、電子部品、モータなどに用いる磁心を構成することにより、優れた特性を備える磁心を得ることができる。
磁心を構成する場合、合金薄帯を所定形状にカットして積み重ねること、合金薄帯を巻き回すこと、合金薄帯を積み重ねて曲げることなどにより、磁心を構成することができる。
また、本開示の軟磁性合金薄帯を粉砕して粉末状とし、その粉末を用いて磁心を構成することもできる。また、アトマイズ法を用いて、本開示の軟磁性合金からなる粉末を作製し、その粉末を用いて磁心を構成することもできる。
また、本開示の磁心と巻線とを組み合わせて、変圧器、電子部品、モータなどの部品を構成することにより、優れた特性を備える部品を得ることができる。この場合、本開示の磁心と他の磁性材料による磁心とを組み合わせても良い。
〔実施例1〕
表3に示す各組成となるように元素源配合し、1300℃に加熱して合金溶湯を作製し、その合金溶湯を周速30m/sで回転する外径400mm、幅200mmの冷却ロール上に噴出させ、冷却ロール上で急冷凝固させて、合金薄帯を作製した。各合金薄帯は、表4に示す熱処理条件にて熱処理を行い、軟磁性合金薄帯を作製した。作製した合金薄帯の幅と厚さは表3に示す。なお、冷却ロールの外周部は、熱伝導率が150W/(m・K)のCu合金で構成されており、冷却ロールの内部には外周部の温度制御用の冷却機構が備えられている。
表3、4において、No.1~6は本開示の軟磁性合金薄帯に相当し、No.51、52は比較例に相当する。各試料のB8000、1T/1kHzでの鉄損、密度、bccFe(αFe)結晶化開始温度、FeB化合物析出開始温度、温度T1、温度T2、室温から温度T1までの昇温速度、T1-T2間の昇温速度を表3、4に示す。なお、室温から温度T1までの昇温速度は400~500℃/sec.とした。また、密度は熱処理後の密度である。
なお、No.1~6の各試料は、粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有していた。また、各試料を断面観察したところ、粒径が60nm以下となる結晶粒の面積率が50%以上(観察視野面積を100%とした値)であった。
〔bccFe(αFe)結晶化開始温度、FeB化合物析出開始温度〕
bccFe(αFe)結晶化開始温度、FeB化合物析出開始温度は昇温速度により変化するが、一般的な熱分析装置の昇温速度の上限は2℃/sec.程度であり、本開示の熱処理時の昇温速度の測定ができないため、下記のような方法で昇温速度50℃/sec.時の値を求め、bccFe(αFe)結晶化開始温度、FeB化合物析出開始温度とした。
リガク製DSC8231にて、昇温速度5℃/min.(0.083℃/sec.)、20℃/min.(0.333℃/sec.)、50℃/min.(0.833℃/sec.)の3点でbccFe(αFe)結晶化開始温度、FeB化合物析出開始温度を測定し、その値をX軸昇温速度の対数、Y軸bccFe(αFe)結晶化開始温度またはFeB化合物析出開始温度でプロットし、その近似曲線より昇温速度50℃/sec.の値を外挿し求めた。
熱処理後の軟磁性合金薄帯を用いて、飽和磁束密度(B8000)、鉄損、密度を測定した。
〔飽和磁束密度(B8000)〕
メトロン技研(株)製の直流磁化特性試験装置にて熱処理後の単板試料に磁界8000A/m印加し、その時の最大磁束密度を測定し、B8000とする。本開示の軟磁性合金薄帯は比較的飽和しやすい特性であるため、磁界8000A/m印加時点で飽和しており、B8000と飽和磁束密度がほぼ同じ値となるため、飽和磁束密度をB8000で表す。
〔鉄損〕
東英工業(株)製の交流磁気測定装置TWM18SRにて熱処理後の単板試料の鉄損を磁束密度1T,周波数1kHzの条件で測定した。
〔密度〕
(株)島津製作所製の乾式密度計アキュピーAccuPyc1330使用し、定容積膨張法にて試料セル寸法外径17mm、高さ33mmに挿入可能な寸法のコア状試料を作成し、その体積を測定し、コアの重量をその体積で割った値を密度として算出した。
Figure 2022113111000004
Figure 2022113111000005
本開示の実施例(No.1~6)では、高い飽和磁束密度と、低い鉄損が得られた。また、密度も7.45g/cm以上であった。
比較例のNo.51は飽和磁束密度が低い。
比較例のNo.52は鉄損がやや高いが、ほぼ特性値は本開示の実施例と同様であった。しかし、Siの含有量が少ないため、大気中保管数日で錆びが発生し、取り扱い上の課題が生じた。
No.1~6,No.51、52の試料の鋳造方向に磁界80A/m印加したときの磁束密度Lと鋳造方向に直交する方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度Wとの値の比(L/W)および、熱処理前の合金薄帯の密度をM1、熱処理後の合金薄帯の密度をM2としたとき、M2/M1を表5に示す。
〔磁束密度L,W〕
メトロン技研(株)製の直流磁化特性試験装置にて熱処理後の単板試料の鋳造方向および鋳造方向と直交する方向にそれぞれ磁界80A/m印加し、その時の最大磁束密度をそれぞれL,Wとし、LとWの比L/Wにて等方性の評価を行った。
本開示の実施例(No.1~6)では、比(L/W)が0.7~1.3の範囲となっており、等方性が高い軟磁性合金薄帯が得られ、密度比(M2/M1)も1.005以上であった。
比較例のNo.51,52は、比(L/W)が1.3を超えていた。
Figure 2022113111000006
No.1~5の飽和磁歪の値を表5に示す。
〔飽和磁歪〕
(株)共和電業製の歪ゲージを張り付けた試料に電磁石で5kOeの磁界を印加し、電磁石を360°回転させ、試料に印加する磁界の方向を360°変化させせたときに生じた試料の伸びおよび収縮の最大変化量を歪ゲージの電気抵抗値の変化から測定した。飽和磁歪=2/3×最大変化量とした。
本開示の実施例は、飽和磁歪が20ppm以下であった。
No.2の軟磁性合金薄帯の断面観察写真を図4に示す。図4は、透過型電子顕微鏡によって観察した透過型電子顕微鏡観察画像(TEM像)である。図4に示すとおり、本開示の軟磁性合金薄帯は、粒径が20~30nmのナノ結晶を備える組織となっており、観察断面の半分以上をナノ結晶粒が占めていることからナノ結晶の体積率が50%以上となっていることが確認できた。
〔実施例2〕
Fe83.07Si2.2013.60Nb0.45Cu0.68からなる組成となるように元素源を配合し、1300℃に加熱した合金溶湯を周速30m/sで回転する外径400mm、幅300mmの冷却ロール上に噴出させ、冷却ロール上で急冷凝固させて、合金薄帯を作製した。各合金薄帯は、表7に示す熱処理条件にて熱処理を行い、軟磁性合金薄帯を作製した。作製した合金薄帯の幅と厚さは表6に示す。なお、冷却ロールの外周部は、熱伝導率が150W/(m・K)のCu合金で構成されており、冷却ロールの内部には外周部の温度制御用の冷却機構が備えられている。
なお、本開示の実施例のNo.7~9の各試料は、粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有していた。また、各試料を断面観察したところ、粒径が60nm以下となる結晶粒の面積率が50%以上(観察視野面積を100%とした値)であった。
各試料の熱処理条件、熱処理後の試料の占積率、平滑度、B8000、鉄損、密度を測定した結果を表6,7に示す。
No.53,54は比較例である。No.53は、温度T2がFeB化合物析出開始温度より150℃低く、No.54は、温度T2がFeB化合物析出開始温度より20℃低い温度とした熱処理条件の試料であり、その結果の値も表6,7に示す。No.53の試料はB8000が1.73Tと低く熱処理が不十分である。No.54の試料は鉄損が大幅に増加し、1T,1kHzの条件では測定することができなかった。このことにより、No.54はFeB化合物の析出による特性劣化と考えらえる。また、No.54の試料では、熱処理時にしわが発生したため、占積率は79%、平滑度は3.5μmと劣化した。
本開示の実施例(No.7~9)は、飽和磁束密度が高く、鉄損が低く、占積率が86%以上であった。また、密度が高く、平滑度も良好であった。
Figure 2022113111000007
Figure 2022113111000008
〔占積率〕
JIS C 2534:2017に準拠した以下の方法で測定を実施した。
長さ120mmに切断した薄帯を20枚重ね、平らな試料台にセットし、直径16mmの平らなアンビルを50kPaの圧力で積層した薄帯に乗せ、幅方向に10mm間隔で高さを測定する。そのときの最大高さをhmax(μm)とし以下の計算式から占積率LFを求める。
LF(%)=試料の重量(g)/密度(g/cm)/hmax(μm)/試料長さ(240cm)/薄帯の幅(cm)×10000
以上のとおり、本開示によれば、飽和磁束密度が高く、鉄損が低い軟磁性合金薄帯が得られた。また、本開示によれば、異方性が抑制され、等方性を有する軟磁性合金薄帯が得られた。また、本開示によれば、密度が高く、占積率も高く、平滑度が良好な軟磁性合金薄帯が得られた。なお、本開示の軟磁性合金薄帯は、本開示の軟磁性合金の一形態である。
本開示の軟磁性合金薄帯を用いて磁心を構成する場合、公知の手段を用いて磁心を構成することができる。そして、本開示の軟磁性合金薄帯を用いて構成された磁心は、本開示の軟磁性合金薄帯が備える高飽和磁束密度や低鉄損、さらに等方性を備えた磁心が構成され、優れた特性を備える磁心が得られる。
さらに、本開示の軟磁性合金薄帯を用いて構成された磁心と、巻線とを備える部品を構成することにより、本開示の軟磁性合金薄帯が備える高飽和磁束密度や低鉄損、さらに等方性を備えた部品が構成され、優れた特性を備える部品が得られる。

Claims (14)

  1. 組成式(Fe1-xSiCuで表され、AはNiおよびCoの少なくとも1種であり、MはNb,Mo,V,Zr,HfおよびWからなる群から選択される1種以上であり、原子%で82.4≦a≦86、0.2≦b≦2.4、12.5≦c≦15.0、0.05≦d≦0.8、0.4≦e≦1.0、0≦x≦0.1である軟磁性合金であって、
    前記軟磁性合金は粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有する軟磁性合金。
  2. 請求項1において、飽和磁束密度が1.74T以上である軟磁性合金。
  3. 請求項1または2において、密度が7.45g/cm以上である軟磁性合金。
  4. 合金組成が、組成式(Fe1-xSiCuで表され、AはNiおよびCoの少なくとも1種であり、MはNb,Mo,V,Zr,HfおよびWからなる群から選択される1種以上であり、原子%で82.4≦a≦86、0.2≦b≦2.4、12.5≦c≦15.0、0.05≦d≦0.8、0.4≦e≦1.0、0≦x≦0.1である軟磁性合金薄帯であって、
    前記軟磁性合金薄帯は粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有し、飽和磁束密度が1.74T以上、1kHz,1Tでの鉄損が25W/kg以下である軟磁性合金薄帯。
  5. 請求項4に記載の軟磁性合金薄帯において、密度が7.45g/cm以上である軟磁性合金薄帯。
  6. 請求項4または5に記載の軟磁性合金薄帯において、占積率が86%以上である軟磁性合金薄帯。
  7. 請求項4~6のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯において、厚さが25μm以上である軟磁性合金薄帯。
  8. 請求項4~7のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯において、前記軟磁性合金薄帯の鋳造方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度Lと、前記軟磁性合金薄帯の鋳造方向に直交する方向に磁界80A/mを印加したときの磁束密度Wとの値の比(L/W)が0.7~1.3である軟磁性合金薄帯。
  9. 請求項4~8のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯において、飽和磁歪が20ppm以下である軟磁性合金薄帯。
  10. 請求項4~9のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯を得る製造方法において、
    合金薄帯を熱処理して、粒径60nm以下の結晶粒がアモルファス相中に存在する組織を有する軟磁性合金薄帯の製造方法であり、
    前記熱処理では、bccFe結晶化開始温度より10~140℃低い温度を温度T1、FeB化合物析出開始温度より30~120℃低い温度を温度T2として、
    室温から温度T1まで、昇温速度50℃/sec.以上で加熱し、
    温度T1から温度T2まで、温度T1までの昇温速度より遅く、かつ400℃/sec.以下の昇温速度で加熱し、
    温度T2に達したのち冷却する、又は、
    温度T2に達したのち、温度T2-50℃から温度T2の間の温度で、0.5~60秒保持し、その後、冷却する、軟磁性合金薄帯の製造方法。
  11. 前記熱処理前の合金薄帯は、合金溶湯を回転する冷却ロール上に噴出させ、前記冷却ロール上で急冷凝固させて得られ、前記冷却ロールの外周部が熱伝導率120W/(m・K)以上となるCu合金で構成されている請求項10に記載の軟磁性合金薄帯の製造方法。
  12. 前記熱処理前の合金薄帯の密度をM1とし、前記熱処理後の合金薄帯の密度をM2としたとき、M2/M1が1.005以上である請求項10または11に記載の軟磁性合金薄帯の製造方法。
  13. 請求項4~9のいずれか1項に記載の軟磁性合金薄帯を用いて構成された磁心。
  14. 請求項13に記載の磁心と、巻線とを備える部品。

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