JP4584547B2 - ハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法、顔料着色組成物および着色物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊離銅の含有量が著しく低減されたハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法、ならびに該顔料を用いた顔料着色組成物および着色物品に関する。更に詳しくは、該顔料中の遊離銅の含有量が55ppm以下に低減されたハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法、ならびに該顔料を用いた顔料着色組成物および着色物品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料は鮮明で高堅牢性の青色から緑色の顔料として、各種印刷インキのシアン色およびグリーン色インキ、フルカラー電子写真複写機やフルカラープリンターのシアン色およびグリーン色トナー、インクジェットプリンターのシアン色およびグリーン色インク、筆記具類の青色やグリーン色に使用する顔料として、あるいは塗料やプラスチックの青色およびグリーン色の着色剤として賞用されている。
【0003】
このハロゲン化銅フタロシアニン顔料は、ポルフィリン環を配位子とし、銅を中心金属とする錯体顔料である。ハロゲン化銅フタロシアニンの代表的製造方法としては、例えば、ハロゲン化フタル酸類、尿素、塩化第1銅などの銅塩と縮合触媒を使用して合成するワイラー(Wyler)法、ハロゲン化フタロジニトリルと銅塩を使用して合成する方法、無置換のフタル酸類やフタロジニトリルから銅フタロシアニンを合成した後、無水塩化アルミニウムと塩化ナトリウムの共融混合物などを溶媒としてハロゲン化する方法などが挙げられる。上記のハロゲン化フタル酸類としては、ハロゲンが0ないし4個置換したフタル酸、その無水物、ナトリウム塩またはフタルイミドなどが挙げられる。また縮合触媒としてはモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、四塩化チタンなどが使用される。
【0004】
着色剤などに使用するハロゲン化銅フタロシアニン顔料(以下、単に顔料と称する場合がある。)は、通常上記の製造方法により顔料クルードを合成後、ソルトミリング、ソルベントミリング、ソルベントソルトミリングやアシッドスラリーおよびソルベントフィニッシュ法により顔料化処理(ピグメンテーション)することで製造されている。これらの顔料化処理は、いずれも顔料クルードの微粒子化あるいは結晶成長および/または目的に応じてハロゲン化銅フタロシアニンの着色剤として使用しうる結晶形の変換を目的としたものであり、錯体の中心金属として顔料中に取り込まれなかった未反応の銅塩(本発明において「遊離銅」と称する場合がある)をある程度しか取り除くことができず、顔料粒子中に残存することは避けられない。
【0005】
このように、これらの方法で得られた顔料は粒子中に遊離の銅を含有していることから、顔料を着色剤に加工するために、種々の分散媒体中に分散されたとき、分散条件により磨砕(破砕)された顔料粒子中から未反応の銅が遊離析出してくる。このような形で析出した遊離銅は、着色剤として用いられたハロゲン化銅フタロシアニンと共に分散媒体中に分散され、例えば、分散媒体であるポリオレフィン樹脂などの酸化を促進したり、耐熱性に対し悪影響を与えることがある。また、負電荷電子写真用トナーの顔料としてハロゲン化銅フタロシアニンを用いた場合、高湿環境下では帯電量が低下し、画像濃度が変化したり、カブリが発生するなどの不具合が生じることがある。この不具合は、該顔料中の遊離銅の含有量と関係があり、該顔料中の遊離銅の含有量を2000ppm以下とした該顔料の使用が提案されている(特許文献1)。また、銅は重金属に属しているので、環境にやさしい材料が優先される時代には好ましくない影響を与える可能性がある。そこで、時代の要請からも、顔料中に含まれる遊離銅の含有量が極めて少ないハロゲン化銅フタロシアニン顔料が要望されている。
【0006】
特許文献1に示されている該顔料中の遊離銅含有量を減らす方法は、合成後の反応生成物から溶媒を減圧留去し、残留物(粗製顔料)を水や希硫酸などの酸で十分に洗浄したり、粗製該顔料を微細化する顔料化工程で水や酸で十分に洗浄する方法である。しかしながら、これらの方法では上記の残留物を水で洗浄した場合の遊離銅含有量(顔料を硫酸に溶解、この溶液を水に加えて顔料の結晶を析出させ、濾別、洗浄し、濾液と洗浄液との混合液中の銅を原子吸光法により求めた)12000ppmを2000ppmに減らすことができることが特許文献1には記載されているが、これ以下に遊離銅含有量を減らした該顔料およびその場合の遊離銅含有量の低減方法は特許文献1には全く示されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−7161号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
顔料中の遊離銅は、塗料やインキの保存安定性を損ない、ポリオレフィン樹脂などの耐熱性や劣化を促進する傾向があり、遊離銅の少ないハロゲン化銅フタロシアニンが要望されている。また、遊離銅は、プラスチックの高温発泡剤として使用されているアゾジカルボアミド系発泡剤の発泡速度を速める傾向があるため、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料を用いた青色および緑色プラスチック発泡体と他の顔料を用いた別の有彩色プラスチック発泡体との間で発泡速度に差が生じ、発泡状態が不均一となるなどの不具合が発生する。また、銅は重金属であり、化合物に結合していない遊離の銅は、環境問題の面からも可能な限り含有量を零に近くすることが好ましい。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は従来公知の方法では得られない遊離銅の含有量が著しく低減されたハロゲン化銅フタロシアニン顔料を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述の目的を達成すべく鋭意研究の結果、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料をその溶解度に応じて硫酸または発煙硫酸に溶解し、その溶液からハロゲン化銅フタロシアニンの結晶を氷水に析出させる工程を経、濾過洗浄することにより、顔料粒子中に含有する全遊離銅を著しく低減できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料クルードを、濃硫酸または発煙硫酸に完全に溶解し、これを氷水中に加えハロゲン化銅フタロシアニンの結晶を析出させ、これを濾別、洗浄した後、濾液および洗浄水中の銅の含有量を原子吸光分析法で測定した値を55ppm以下とし、引き続き顔料化処理を行うことを特徴とするハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明のハロゲン化銅フタロシアニン顔料は、従来公知の方法では得られない、顔料中の全遊離銅の含有量が55ppm以下であることが特徴である。
尚、本発明における全遊離銅の含有量は、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料またはクルードを、発煙硫酸に完全に溶解した後、氷水にハロゲン化銅フタロシアニンを析出させ、濾過、洗浄し、濾液および洗浄水の混合液中に含まれている銅の量を原子吸光分析法で定量した値である。
【0011】
ハロゲン化銅フタロシアニンは前記したように、合成上遊離の銅を含有することは避けられない。特に、ハロゲン化銅フタロシアニン粒子中に含有する遊離銅は数パーセント濃度の酸による浸漬、洗浄処理では除去することはできない。また、一般に遊離銅の分析方法である塩酸法では、顔料粒子内に含まれている遊離銅を全て抽出あるいは溶出させて定量することは難しい。また、ハロゲン化銅フタロシアニンを如何に細かく磨砕しても含有されている全ての遊離銅を除去することは困難である。顔料粒子を溶解させてはじめて結晶内に含まれている全ての遊離銅を抽出あるいは溶出除去できることを本発明者らは見出した。従って、本発明における顔料中の全遊離銅とは、顔料を完全に溶解することによって抽出あるいは溶出される顔料に含まれる全ての遊離銅をいう。
【0012】
例えば、合成上がりのハロゲン化銅フタロシアニンクルードを5重量%の硫酸水溶液中に浸漬、攪拌、濾過、洗浄(酸処理と称する)した粗粒子中に含有する遊離銅を塩酸法(顔料1gを精秤し、200mlコニカルビーカーに入れる。これに、エタノール10ml、(1+9)塩酸100mlを加え、10分間煮沸する。放冷後200mlメスフラスコに濾過し、濾過残を0.4重量%塩酸水溶液で洗浄する。200mlまで希釈し、原子吸光スペクトル装置で測定する。)で測定すると485ppmである。ところが、粗粒子を発煙硫酸に完全に溶解し、これを水あるいは氷水中に加えハロゲン化銅フタロシアニンの結晶を析出させ、これを濾別、洗浄した後、濾液および洗浄水中の銅の含有量を原子吸光分析法で測定する(以下では硫酸法という。)と2080ppmであった。
【0013】
また、無水フタル酸より銅フタロシアニンを合成し、この銅フタロシアニンクルードを無水塩化アルミニウムおよび塩化ナトリウムの溶融塩中で塩素ガスを通じ塩素化したハロゲン化銅フタロシアニンの遊離銅を塩酸法で測定すると242ppmであるが、硫酸法では540ppmであった。
ハロゲン化銅フタロシアニンクルード粗粒子を磨砕後、5重量%の硫酸水溶液などで酸処理し、溶剤で顔料化したハロゲン化銅フタロシアニンの遊離銅を塩酸法で測定すると365ppmであるが、硫酸法では1460ppmであった。
【0014】
更に、合成上がりのハロゲン化銅フタロシアニンの粗粒子を硫酸、発煙硫酸またはクロロ硫酸に溶解及び析出させ、濾過分離後、顔料化したハロゲン化銅フタロシアニン顔料は塩酸法で遊離銅を測定すると7.8ppmであるが、硫酸法では55ppmである。このように、顔料中の全遊離銅を測定するには、顔料を完全に溶解させることが必要である。
【0015】
以上のように、発煙硫酸などの溶解工程を経ている顔料のみが、硫酸法で測定した全遊離銅の含有量が55ppm以下となることが判明した。
従って、ハロゲン化銅フタロシアニン中に含有する全遊離銅を55ppm以下にするには、合成終了後溶剤を留去したハロゲン化銅フタロシアニン顔料クルードを、発煙硫酸などの酸に完全に溶解し、酸で全ての遊離銅を溶解除去する工程を経ることが不可欠である。顔料粒子を溶解させる可溶性溶剤としては、溶解度、安全性、廃液処理、経済性などから、硫酸、発煙硫酸の使用が好ましい。ハロゲン化銅フタロシアニンの溶液からハロゲン化銅フタロシアニンの結晶を析出させ再生する方法は、従来公知の方法がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、ハロゲン化銅フタロシアニンの溶液を、氷水に加える方法が挙げられる。
【0016】
上記のハロゲン化銅フタロシアニン顔料クルードを、例えば、発煙硫酸を使用して溶解する場合には、該顔料クルードを、好ましくはその10重量倍以上の発煙硫酸に完全に溶解し、この溶液を、好ましくは該発煙硫酸溶液量の10重量倍以上の氷水に注いでハロゲン化銅フタロシアニン顔料の結晶を析出させ、結晶を濾過、水洗した後、必要に応じて更にアルカリ性水溶液で洗浄し、該顔料クルード中の全遊離銅の含有量を55ppm以下とし、次いで該顔料の微細化および/または結晶転移処理などの顔料化処理を行うことが好ましい。顔料化処理は、従来公知の方法が使用され、特に限定されない。例えば、有機溶剤中での処理、もしくは無機塩類の存在下あるいは非存在下の磨砕処理などが挙げられる。
【0017】
顔料を着色剤として使用した場合の顔料中の遊離銅によって悪影響を受ける可能性がある例としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂では樹脂の熱安定性を低下させ、紫外線硬化インキ、電子線硬化塗料、インクジェットインキ、カラーフィルターカラーなどでは、これらの保存安定性を悪くし、表示不良の原因となり、カラー電子写真用トナーではトナーの帯電性を低下させることが知られている。また、前記したようにプラスチックの高温発泡剤として使用されているアゾジカルボアミド系発泡剤は、銅の存在で発泡温度が低下し、発泡速度が促進されることが知られており、他の有彩色の顔料と併用した時に発泡速度の差により、ハロゲン化銅フタロシアニンを用いたところが先に発泡し、均一な発泡体が得られないことがある。
【0018】
また、近年、銅は重金属であるため環境に悪影響を与える可能性があるといわれており、できるだけ環境に排出されないことが好ましい。しかし、遊離銅を含有するハロゲン化銅フタロシアニンを使用する限りにおいては、上記問題を解決することが難しいといえる。そこで、上記問題点を解決するためには、ハロゲン化銅フタロシアニンを完全に溶解させてハロゲン化銅フタロシアニン骨格を形成する銅以外の全遊離銅を55ppm以下にする工程を経て製造された本発明のハロゲン化銅フタロシアニン顔料を用いることが必要である。
【0019】
本発明の全遊離銅が著しく低減されたハロゲン化銅フタロシアニン顔料は、各種用途の着色剤として使用される。用途としては、例えば、各種印刷インキ、インクジェット記録用インキ、塗料、顔料捺染剤、繊維・プラスチック用、電子写真複写機用のトナーなどの画像記録用、カラーフィルターなどの画像表示用などが挙げられる。該顔料は、それを繊維・プラスチック用の着色剤として使用する場合には、これらに直接分散させて使用される。他の用途においては、該顔料は、通常バインダー樹脂あるいはビヒクルなどの分散媒体に分散させた顔料着色組成物として使用されるが、分散媒体は各用途において従来から使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。また、上記用途の製造方法も特に限定されず、それぞれの公知の製造方法がいずれも使用できる。
【0020】
【実施例】
以下に実施例、比較例および参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下の文中の部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
尚、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料中の全遊離銅の含有量は、該顔料0.5gを10mlの発煙硫酸に完全に溶解し、この硫酸溶液を100mlの氷水に徐々に加えて該顔料の結晶を析出させ、該結晶を濾別、200mlの洗浄水で洗浄し、濾液と洗浄水との混合液中の銅の含有量を原子吸光分析法(日立製作所製偏光ゼーマン原子吸光分光光度計Z8000型を使用)で測定した値である。以下ではこの測定方法を「硫酸法」と称する。
【0021】
実施例1
(1)モノクロロ無水フタル酸8.8部、無水フタル酸21.2部、尿素60部と触媒としてモリブデン酸アンモニウム0.3部を芳香族系高沸点溶媒120部に加え、撹拌しながら徐々に昇温し、150℃で塩化第一銅5.3部を反応容器に加え、更に昇温して180℃とし、この温度で4時間反応させる。反応後、得られた生成物を濾過し、次いでメタノールで洗浄した後、希酸、希アルカリで処理し、濾過、水洗、乾燥して塩素含有量5.7%の低塩素化銅フタロシアニンクルードを得た。硫酸法による全遊離銅の含有量は3850ppmであった。
【0022】
(2)上記で得た低塩素化銅フタロシアニンクルード25部を室温の濃硫酸250部に撹拌しながら徐々に添加し、溶解させる。その後80℃に昇温し、2時間撹拌して完全に溶解させる。その後、この硫酸溶液を5リットルの氷水に徐々に添加して低塩素化銅フタロシアニンの結晶を析出させ、濾過、水洗、乾燥して低塩素化銅フタロシアニン23.5部を得た。硫酸法による全遊離銅の含有量は50ppmであった。
【0023】
(3)(2)で得た低塩素化銅フタロシアニン400部を、食塩1600部およびジエチレングリコール400部と共にニーダー中で内容物の温度を80〜100℃に保って6時間磨砕を行った。得られた内容物を希酸処理、濾過、水洗、乾燥し、微細な低塩素化銅フタロシアニン顔料を得た。硫酸法による全遊離銅は50ppmであった。
【0024】
比較例1
実施例1(1)で得た低塩素化銅フタロシアニンクルード15部を、スチールボール500部、釘50部と共に3時間振動ミルにて磨砕した。
得られた内容物を取り出し、ソルベントフィニッシュにより顔料化を行ない、希酸処理、水洗、乾燥して14部の低塩素化銅フタロシアニン顔料を得た。硫酸法による全遊離銅は1570ppmであった。
【0025】
実施例2
(1)無水フタル酸30部、尿素45部と触媒として無水フタル酸に対し0.2%のモリブデン酸アンモニウムを芳香族系高沸点溶媒90部に加え、撹拌しながら徐々に昇温し、150℃で塩化第一銅5.3部を反応容器に加え、更に昇温し175℃とする。この温度で4時間反応させる。反応後得られた生成物を濾過し、次いでメタノールで洗浄した後、希酸、希アルカリで処理し、濾過、水洗、乾燥して銅フタロシアニンクルード27.8部を得た。この銅フタロシアニンクルード25部を無水塩化アルミニウム110部、塩化ナトリウム25部、無水塩化第二鉄1.3部を150℃に撹拌加熱している中に加える。180〜200℃で約20時間塩素ガスを通じた後、熔融物を水1500部中に注入し、濾過、水洗、乾燥する。塩素を15原子含有した高塩素化銅フタロシアニンクルードを得た。硫酸法による全遊離銅の含有量は540ppmであった。
【0026】
(2)上記で得た高塩素化銅フタロシアニンクルード10部を、発煙硫酸150部に撹拌しながら徐々に添加し、溶解させる。その後80℃に昇温して2時間撹拌し、完全に溶解させる。その後、この硫酸溶液を3リットルの氷水に徐々に添加して高塩素化銅フタロシアニンの結晶を析出させ、濾過、水洗、乾燥して高塩素化銅フタロシアニン9.8部を得た。硫酸法による全遊離銅の含有量は55ppmであった。
【0027】
実施例3
ポリプロピレンナチュラル樹脂300gに実施例1(3)で得た微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料1.2gを添加ブレンドし、2オンス成形機(成形設定温度200℃)にて成形プレートを作製した。成形した成形プレートをギヤーオーブンに入れ、熱老化試験を行った。熱老化現象は、クラック発生を終点とした。試験温度は150℃、熱老化現象の観察は50時間までは2時間毎、50時間以上は24時間毎に行った。結果を表1に示す。
【0028】
参考例1
顔料を添加しない以外は実施例3と同様にして成形プレートを作製し、熱老化試験を行った。結果を表1に示す。
【0029】
比較例2
実施例1(3)で得た微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料に代えて比較例1で得た顔料1.2gを用いる以外は実施例3と同様に成形プレートを作製し、熱老化試験を行った。結果を表1に示す。遊離銅の多い比較例2の熱老化時間は極めて短くなっている。
【0030】
【0031】
実施例4
ジアリルフタレートポリマー(ダイソーダップA 大阪曹達株式会社製)7部をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニクスM402 東亜合成株式会社製)50部で溶解する。これに実施例1(3)で得た微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料20部、炭酸カルシウム5部、変性ビスフェノールAジアクリレート(アロニクスM210 東亜合成株式会社製)15部およびα−アミノアセトフェノン(IG907 チバガイギー製)3部を入れプレミキシングし、更に三本ロールで3回練りし、オフセット印刷用UVインキを得た。このインキは60℃で3週間の保存試験でゲル化することなく、流動性は良好であった。
【0032】
比較例3
実施例1(3)で得た微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料に代えて比較例1で得た顔料20部を用いる以外は実施例4と同様にオフセット印刷用UVインキを得た。実施例4と同様に60℃で保存したが、24時間保存した時点でゲル化し、印刷インキとして使用は困難となった。
【0033】
実施例5
ビスフェノール型ポリエステル樹脂粉末と、実施例1(3)で得た微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料、微細化赤色顔料(C.I.ピグメントレッド122)、微細化黄色顔料(C.I.ピグメントイエロー155)およびカーボンブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7)を、それぞれ高速混合機で予備混合後、加熱三本ロールにより十分混練りし、冷却後、粗砕し、微細に分散した顔料を30%の濃度で含有する青色、赤色、黄色および黒色の粗砕粉を得た。
次いで、上記の青色粗砕粉12.4部、赤色粗砕粉18.3部、黄色粗砕粉14.0部、黒色粗砕粉18.3部のそれぞれに荷電制御剤2.8部およびビスフェノール型ポリエステル樹脂粉末を加えて全量を100部にし、常法に従って押出成型機にて混練し、冷却、粗砕後、ジェットミルで微粉砕し、分級して平均粒径7〜8μmの上記4色の微粉末を得た。これらの微粉末のそれぞれに流動化剤を添加し、更にキャリアの磁性鉄粉と混合し、4色のフルカラー電子写真乾式現像剤とした。フルカラー複写機にて現像し、カブリの発生もなく鮮明な4色フルカラー画像が得られた。
【0034】
実施例6
実施例1(3)で得た微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料5部、スチレン−アクリレート−メタクリル酸ジエタノールアミン塩共重合体3部、エチレングリコール22部、グリセリン8部および水62部からなる水性顔料分散液を作り、分散しなかった顔料の粗粒子を超遠心分離機で除去し、インクジェット用水性シアンインキを得た。オンデマンド型のインクジェットプリンターで、上記シアンインキを用いて画像情報をプリントし、鮮明な青色画像を得た。
【0035】
実施例7
実施例2の高塩素化銅フタロシアニン顔料100部、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(60/20/20モル比)共重合体(重量平均分子量30,000)100部、シクロヘキサン140部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160部をペイントコンディショナーでプレミキシングした後、顔料濃度が15%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、顔料分散剤としてDisperbyk−163(ビックケミー社製)を顔料に対して20%添加し、ダイノミル分散機(シンマルエンタープライズ社製)で分散させた。ここで得られた緑色分散物は70℃、1週間で増粘することはなかった。この分散物をガラス基板に塗布し、透過率、コントラスト比、耐熱性および耐光性を評価した結果、いずれの物性にも優れた緑色カラーフィルターが得られた。
【0036】
実施例8
実施例1(3)の微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料0.5gと発泡剤(ダイブローAC2040L:大日精化工業製)0.5gを試験管に入れ、更に流動パラフィンを添加する。これらを均一に混ぜた後、ガス量自動測定装置(CELLTECHNO社製)で昇温中のガス発生量を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
参考例2
実施例1(3)の微細化低塩素化銅フタロシアニン顔料に代えて実施例1(1)で得た低塩素化銅フタロシアニンクルードを用いる以外は実施例8と同様にして試験を行った。結果を表2に示す。
【0038】
参考例3
低塩素化銅フタロシアニンを入れずに、発泡剤ダイブローAC2040L 0.5gのみで発生ガス量を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
遊離銅の少ない実施例8は発泡剤単独とガス発生温度およびガス量共に差がないが、遊離銅の多い参考例2はガス発生温度が約10度低く、また発生ガス量も10mlほど少ない。
【0040】
【0041】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、塗料やインキの保存安定性を損ない、オレフィン系樹脂などの酸化劣化を促進し、プラスチック用高温発泡剤であるアゾジカルボアミド系発泡剤の発泡速度を速めるなどの悪影響を及ぼす全遊離銅の含有量が著しく低減されたハロゲン化銅フタロシアニン顔料が提供される。本発明のハロゲン化銅フタロシアニン顔料は、繊維・プラスチック用着色剤、顔料捺染剤、インキ、塗料、トナーなどの画像記録用、カラーフィルターなどの画像表示用などの顔料着色組成物に好適である。
Claims (5)
- ハロゲン化銅フタロシアニン顔料クルードを、濃硫酸または発煙硫酸に完全に溶解し、これを氷水中に加えハロゲン化銅フタロシアニンの結晶を析出させ、これを濾別、洗浄した後、濾液および洗浄水中の銅の含有量を原子吸光分析法で測定した値を55ppm以下とし、引き続き顔料化処理を行うことを特徴とするハロゲン化銅フタロシアニン顔料の製造方法。
- 請求項1に記載の方法で得られる、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料と分散媒体とからなることを特徴とする顔料着色組成物。
- インキ、塗料、顔料捺染剤、繊維用、プラスチック用、画像記録用および画像表示用から選ばれる用途に使用される請求項2に記載の顔料着色組成物。
- 物品を着色するに際し、請求項2に記載の顔料着色組成物を使用することを特徴とする物品の着色方法。
- 請求項4に記載の方法で得られた着色物品。
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