JP5454729B1 - ハロゲン化キナクリドンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全性と生産性に優れたハロゲン化キナクリドンの新規な製造方法を提供すること。また、広い範囲の色調を持ち、微細に分散されたハロゲン化キナクリドンとその着色組成物を提供すること。
【解決手段】ハロゲン化キナクリドンの製造方法であって、ハロゲン化剤として、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸金属塩、トリブロモイソシアヌル酸およびジブロモイソシアヌル酸金属塩からなる群より選ばれる一種以上のN−ハロイミド化合物でキナクリドンをハロゲン化することを特徴とするハロゲン化キナクリドンの製造方法と、その製造方法により得られるハロゲン化キナクリドンを用いた着色組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、キナクリドンを特定のN−ハロイミド化合物でハロゲン化することによる、安全性および生産性に優れたハロゲン化キナクリドンの製造方法、ならびにそれを用いた着色組成物に関するものである。
ハロゲン化キナクリドンは、キノ[2,3−b]アクリジン−7,14(5H,12H)−ジオンを基本骨格とし、この水素原子の一部がハロゲン原子に置換された化合物の総称であって、その例としては、非特許文献1に示されているとおり、2,9−ジクロロキナクリドンおよび3,10−ジクロロキナクリドンが、それぞれピグメントレッド202およびピグメントレッド209としてカラーインデックスインターナショナルのデータベースに登録されているほか、無置換キナクリドンと4,11−ジクロロキナクリドンとの固溶体が、ピグメントレッド207として登録、開示されている。
さらに、ハロゲン化キナクリドンのその他の例として、特許文献1に示されているとおり、3,10−ジクロロキナクリドンスルホン酸ナトリウムおよびフタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドンが開示されており、インクジェットインキの顔料分散助剤として使用することが記載されている。
これらのハロゲン化キナクリドン以外では、キノ[2,3−b]アクリジン−7,14(5H,12H)−ジオンそのものである無置換キナクリドンおよび2個のメチル基が置換した2,9−ジメチルキナクリドンが、それぞれピグメントバイオレット19およびピグメントレッド122として知られている。また、特許文献2にはフタルイミドメチル基が置換したキナクリドンが、特許文献3にはスルホン酸基が置換したキナクリドンが、特許文献4には−SO2NH−(CH23−N(C252基が置換したキナクリドンが開示されている。
以上の全てのキナクリドンに共通するキノ[2,3−b]アクリジン−7,14(5H,12H)−ジオンの基本骨格は、比較的に単純な化学構造であるため、キナクリドンを顔料として使用する場合、調整可能な色調の範囲が狭く、また、結晶性が良好なため微細な粒子を調製するのが難しいという本質的な課題があった。しかし、前述のピグメントレッド207のようにジクロロキナクリドンを主体とする2種類以上のキナクリドンを均質に混合した固溶体顔料が多数見出されることによって、色調の範囲が広がってきたと同時に、混合物であるために結晶性が低下して微細な顔料粒子に調製しやすくなり、カラートナー、インクジェットインキ、カラーフィルタレジストインキ等の極めて微細な顔料粒子が望まれる用途にも広く使用されるようになってきた。さらに、顔料分散助剤として使用されるキナクリドンにおいても、前述のとおり、ジクロロキナクリドンにフタルイミドメチル基またはスルホン酸基を導入したキナクリドン等の多種類のキナクリドンが見いだされてきた。
このように、ハロゲン原子が1個以上導入されたハロゲン化キナクリドンは、産業上ますます重要な化合物になってきているなかで、その製造に関する課題についても注目されるようになってきた。例えば、塩素化キナクリドンの製造に際して原料として使用するクロロアニリンは、発がん性の疑いがあるという安全性の課題があり、工業薬品としては比較的高価で入手が難しく、また、クロロアニリンを出発原料に用いて塩素化キナクリドンを製造する場合、アニリンを出発原料に用いて無置換キナクリドンを製造する場合と比較して、トータルの収率が低くなるといった生産性の課題がある。
さらに、工業的に製造されている塩素化キナクリドンは、実質的にジクロロキナクリドンおよびその固溶体のみであり、インキ、塗料、プラスチック、カラートナー、インクジェットインキおよびカラーフィルタレジストインキ等の着色組成物に使用する場合、調整可能な色調の範囲が未だに狭く、微細な粒子に調製することが困難であるという課題がある。
特開2005−206630号公報 特開昭55−108466号公報 特公昭50−4019号公報 特開昭56−118462号公報
Willy Herbstら著、「Industrial Organic Pigments: Production, Properties, Applications」、John Wiley&Sons(1993年)
上記のように、従来のハロゲン化キナクリドンの製造方法は、出発原料としてクロロアニリン等を使用するために、安全性と生産性に課題があり、また、着色組成物に用いる場合、調整可能な色調の範囲が狭く、微細な粒子に調製するのが困難という課題があった。
したがって、本発明の目的は、クロロアニリン等の発がん性の疑いがある原料を使用しない安全性と生産性に優れたハロゲン化キナクリドンの新規な製造方法を提供するものであり、また、広い範囲の色調を持ち、微細な粒子に調製されたハロゲン化キナクリドンとその着色組成物を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題を解決するための手段を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の実施態様は、ハロゲン化キナクリドンの製造方法であって、ハロゲン化剤として、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸金属塩、トリブロモイソシアヌル酸およびジブロモイソシアヌル酸金属塩からなる群より選ばれる一種以上のN−ハロイミド化合物でキナクリドンをハロゲン化することを特徴とするハロゲン化キナクリドンの製造方法に関する。
また、本発明の実施態様は、ハロゲン化剤が、トリクロロイソシアヌル酸およびジクロロイソシアヌル酸ナトリウムからなる群より選ばれる一種以上のN−クロロイミド化合物である上記製造方法に関する。
また、本発明の実施態様は、溶媒として、強酸を用いる上記製造方法に関する。
また、本発明の実施態様は、溶媒が、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸およびポリリン酸からなる群より選ばれる一種以上の強酸である上記製造方法に関する。
また、本発明の実施態様は、溶媒が、90重量%以上の濃度の硫酸である上記製造方法に関する。
また、本発明の実施態様は、キナクリドンが、下記式Iで示されるキナクリドン化合物である上記製造方法に関する。
Figure 0005454729
(式中、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13は、それぞれ独立的に、水素原子、塩素原子、臭素原子、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシル基、フタルイミドメチル基、−CH2NHCOCH2Cl、−SO2Cl、−SO3Mまたは−X1−X2−N(X3)2を表す。Mは、水素原子またはアルカリ金属を表す。X1は、−SO2NH−または−CH2NHCOCH2−を表す。X2は、C1〜C4のアルキレン基を表す。X3は、ヘテロ原子を有しても良いC1〜C4のアルキル基を表す。X3同士は、互いに連結して環を形成しても良い。ただし、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13の少なくとも一つは、水素原子である。)
本発明は、発がん性の疑いがあるクロロアニリン等の原料を使用しないために安全性に優れ、トータル収率が高く生産性に優れるハロゲン化キナクリドンの製造方法を提供することができた。また、この製造方法によって得られるハロゲン化キナクリドンは、広い範囲の色調を持ち、微細に分散できるため、カラートナー、インクジェットインキおよびカラーフィルタレジストインキ等の着色組成物に用いたときに、優れた鮮明性や高い着色力を示す印刷物や塗工物等の最終製品を提供することが可能となった。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ハロゲン化剤としてのN−ハロイミド化合物>
本発明で使用されるハロゲン化剤は、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸金属塩、トリブロモイソシアヌル酸およびジブロモイソシアヌル酸金属塩からなる群より選ばれる一種以上のN−ハロイミド化合物である。
これらのN−ハロイミド化合物を用いたハロゲン化反応の利点として、毒性の高い塩素ガスや臭素を使用せず、また、反応の際に有害なハロゲン化水素ガスを副生することが無いので、極めて安全性の高い製造方法であることが挙げられる。上記の内、塩素化反応に使用されるN−クロロイミド化合物は、水泳プール水の消毒剤等に広く使用されており、取り扱いやすく、安全性の高い化合物といえる。
上記金属塩は、特に限定されるものではないが、コストと入手の容易さの観点から、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩またはカリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。したがって、本発明で使用されるハロゲン化剤の好ましい態様として、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリブロモイソシアヌル酸およびジブロモイソシアヌル酸ナトリウムからなる群より選ばれる一種以上のN−ハロイミド化合物が挙げられる。また、ハロゲン化キナクリドンの内、塩素化キナクリドンが、産業界で広く用いられている重要な化合物であることから、塩素化剤として用いられる、トリクロロイソシアヌル酸およびジクロロイソシアヌル酸ナトリウムからなる群より選ばれる一種以上のN−クロロイミド化合物が好ましい態様として挙げられる。
N−ハロイミド化合物の使用量は、キナクリドンに対して、所望のハロゲン原子の置換数に応じた理論量の1〜2重量倍することが好ましいが、反応温度や触媒の添加等の反応条件を調節することで、理論量の1〜1.2重量倍に低減することができる。
<溶媒>
本発明の製造方法で使用される溶媒は、ハロゲン化反応を阻害せず、キナクリドン骨格の分解を引き起こす恐れがないものであれば、特に制限はないが、反応収率等の観点から、強酸を使用することが好ましい。強酸としては、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、ポリリン酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、これらは単独もしくは混合して使用することができる。コストや反応収率、製造工程上利点等の観点から無機酸が好ましく、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、ポリリン酸およびこれらの混合物がより好ましい。硫酸は、含水率が多いとキナクリドン骨格の分解を引き起こす恐れがあるので、90重量%以上の高濃度の硫酸が好ましい。
溶媒の量は、特に制限されるものではないが、強酸を使用する場合、キナクリドンに対して2〜50重量倍を使用することが好ましく、キナクリドンの溶解性とハロゲン化するハロゲン原子の置換数ならびに工業的な経済性の観点から、3〜20重量倍を使用することがより好ましい。
<キナクリドン>
本発明の製造方法の原料として使用するキナクリドンは、式Iで示されるキナクリドン化合物が好ましい。
Figure 0005454729
(式中、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13は、それぞれ独立的に、水素原子、塩素原子、臭素原子、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシル基、フタルイミドメチル基、−CH2NHCOCH2Cl、−SO2Cl、−SO3Mまたは−X1−X2−N(X3)2を表す。Mは、水素原子またはアルカリ金属を表す。X1は、−SO2NH−または−CH2NHCOCH2−を表す。X2は、C1〜C4のアルキレン基を表す。X3は、ヘテロ原子を有しても良いC1〜C4のアルキル基を表す。X3同士は、互いに連結して環を形成しても良い。ただし、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13の少なくとも一つは、水素原子である。)
ここで、C1〜C4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。C1〜C4のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。Mは、水素原子またはアルカリ金属を表わし、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。C1〜C4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基が挙げられる。また、フタルイミドメチル基とは、下記(式II)で表される基を意味する。
Figure 0005454729
また、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。したがって、ヘテロ原子を有しても良いC1〜C4のアルキル基としては、上記のC1〜C4のアルキル基の他、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基等が挙げられる。更に、X3同士は、互いに連結して環を形成しても良い。この場合、X3には窒素原子が結合しているので、式I中の−N(X3)2で表わされる部分は、環状アミノ基の構造となる。X3同士が互いに連結して環を形成する場合の環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チアゾリジン環等が挙げられる。
したがって、式I中の−N(X3)2で表わされる部分としては、ピペリジノ基、モルホリノ基等が挙げられる。
式Iで示されるキナクリドン化合物の内、好ましい態様としては、R2、R3、R9、R10のいずれか一つまたは二つが水素原子以外の原子または置換基であり、それ以外のR1〜R4、R6、R8〜R11、R13が、全て水素原子である場合が挙げられる。ここで、R1、R2、R9、R10のいずれか二つが水素原子以外の原子または置換基である場合においては、R2およびR9、または、R3およびR10が水素原子以外の原子または置換基であり、それ以外のR1〜R4、R6、R8〜R11、R13が全て水素原子である場合が、より好ましい態様として挙げられる。特に、R2およびR9、または、R3およびR10が、塩素原子、臭素原子、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシル基からなる群より選ばれる一種であり、それ以外のR1〜R4、R6、R8〜R11、R13が全て水素原子である場合は、特に好ましい一態様として挙げられる。また、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13が全て水素原子である場合も、特に好ましい一態様である。
本発明のハロゲン化キナクリドンの製造方法では、式IのR1〜R4、R6、R8〜R11、R13の少なくとも一つの水素原子をハロゲン原子に置換することができ、反応収率が極めて高いので、式Iで示される種々のキナクリドンに適用できる。その中でも、最も多量に市場に流通している、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13の全てが水素原子である無置換キナクリドンを原料に使用するのが、産業上のメリットが多く、好ましい。
<ハロゲン化反応>
本発明の製造方法は、従来の製造方法である発がん性の疑いのあるクロロアニリン等の原料を使用しないので、明らかに安全性が優れている。例えば、クロロアニリンは、ベンゼンの塩素ガスによる塩素化反応、ニトロ化反応および還元反応により得られるが、毒性の高い塩素ガスを使用すること、および多量に副生する塩化水素ガスの処理が必要であること等の危険性や製造工程上のデメリットが挙げられる。これに対して、本発明の製造方法では、有害なハロゲン化水素ガスの副生が無いので、安全性が高く、大規模な処理装置を必要としないというメリットが挙げられる。
本発明の製造方法は、従来の方法に比較して反応収率が高く、生産性に優れている。例えば、従来のクロロアニリンを出発原料に用いて塩素化キナクリドンを製造する方法では、その製造条件が反応収率に影響するが、本発明者らの知見によれば、標準的な製造条件での反応収率は約80%である。これに対して、本発明の製造方法では、アニリンを出発原料に無置換キナクリドンを経由して塩素化キナクリドンを製造するという製造工程から収率を見積もると、反応収率は約90%である。
本発明の製造方法でのハロゲン化の反応温度は、キナクリドン骨格の分解反応や、スルホン化反応やクロロスルホン化反応等の副反応を抑制できる温度が好ましく、キナクリドン、溶媒、N−ハロイミド化合物の種類、ならびに触媒の有無および所望のハロゲン原子の置換数に応じて、適宜、決めることができるが、概ね0〜150℃、好ましくは10〜100℃である。反応時間は、溶媒へのN−ハロイミド化合物の溶解速度にも影響されるため、N−ハロイミド化合物の粒子の大きさや、反応槽中での反応液の攪拌速度に応じて、適宜、決めることができるが、N−ハロイミド化合物の粒子が数ミリメートルで十分な攪拌が行われる場合、30分間〜10時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。
本発明の製造方法では、ハロゲン化反応の際に、反応率を向上させるために触媒を添加することができる。所望のハロゲン原子の置換数が多いとき、特に、3個以上のハロゲン原子を置換する場合、触媒を添加することで反応収率が向上する。触媒としては、硫黄、二塩化二硫黄等の硫黄化合物、ヨウ素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素等のヨウ素化合物、塩化第二鉄、塩化第二銅、塩化アルミニウム、塩化アンチモン等の金属塩化物等が挙げられる。
本発明により得られるハロゲン化キナクリドンは、ハロゲン原子の置換数が異なる複数のハロゲン化キナクリドンの混合物である。例えば、無置換キナクリドンをハロゲン原子の置換数が2個になるようにハロゲン化して得られた反応物をTOF−MS等によって質量分析すると、ハロゲン原子の置換数が1個、2個および3個のハロゲン化キナクリドンに相当する分子イオンピークが検出され、マススペクトラムのピーク強度から算出される含有比率は、約1:2:1(モル比)となる。塩素化キナクリドンを例に挙げると、本発明により得られる塩素化キナクリドンは、従来の製造方法により得られる塩素原子の平均置換数が同一の2個である2,9−ジクロロキナクリドンと比較して、色相は近似しているものの、鮮明性と着色力に優れる長所を有する。すなわち、2,9−ジクロロキナクリドンが単一成分であるのに対して、本発明により得られる塩素化キナクリドンは、塩素原子の置換数が1個、2個および3個のキナクリドン(約1:2:1(モル比))からなる3成分の混合物であるため、結晶性が低下し、微細な粒子に仕上がることで優れた色調を示すものと推察される。
また、本発明により得られるハロゲン化キナクリドンは、ハロゲン原子の置換数を変化させることで、幅広い色調に調整することができる。キナクリドンの水素原子がハロゲン原子に置換すると、可視吸収が長波長化するので、ハロゲン原子の置換数を増やしていくにしたがって深色になり、例えば、無置換キナクリドンに塩素原子を8個程度まで導入するとマルーン色になる。
従来のキナクリドンの製造方法に、本発明の製造方法を組み込むことで、生産性をさらに向上させることもできる。例えば、2,5−ジアニリノテレフタル酸をポリリン酸で閉環して無置換キナクリドンを合成した反応液をそのまま用いて、本発明によるハロゲン化反応を行うことで、無置換キナクリドンの単離操作が不要になり、また、ポリリン酸を溶媒にして閉環反応とハロゲン化反応の両方を行わせることができるので、優れた生産性を得ることができる。また、前述の分散助剤として開示されているジクロロキナクリドンスルホン酸ナトリウムは、ジクロロキナクリドンをスルホン化して得ているが、本発明の製造方法において、硫酸を溶媒に使用することで、塩素化反応とスルホン化反応の両方を同時に行わせることができるため、一工程で製造することが可能となる。
さらに、塩素化キナクリドンを含む固溶体顔料に対しても、本発明の製造方法は生産性が優れている。従来の固溶体顔料の製造方法では、例えば、無置換キナクリドンおよびジクロロキナクリドンを硫酸、または強塩基を含む有機溶剤で溶解して均一に混合した後に、貧溶媒および中和剤等を添加して析出、単離し、さらに必要に応じて、溶剤でスラリーとして加熱処理、または、無機塩および多価アルコール等を加えてソルトミリングする顔料化を行う。これに対して、本発明の製造方法において、例えば、硫酸を溶媒に使用して無置換キナクリドンを塩素化する際に、その一部分だけが塩素化されるようにN−クロロイミド化合物の添加量を調整することで、上記と同様の色調を持つ固溶体顔料を得ることができるため、塩素化反応と固溶体顔料の調製の両方を同時に行わせることが可能となる。
<顔料化>
本発明により得られるハロゲン化キナクリドンは、色材として利用価値の高い顔料形態に仕上げる顔料化工程(コンディショニングまたはフィニッシング工程とも称する)を加えることができる。すなわち、本発明に従い、強酸を溶媒としてキナクリドンをN−ハロイミド化合物でハロゲン化した後に、反応液から溶媒を留去、または反応液を多量の水で希釈してハロゲン化キナクリドンを析出させ、濾過してハロゲン化キナクリドンの含水ケーキまたは乾燥品として分離し、次いで、公知の顔料化工程、例えば、有機溶剤存在下の加熱処理、無機塩と多価アルコール等を加えたソルトミリング処理あるいは硫酸等に溶解させた後に多量の水で希釈するアシッドペースティング処理等を行うことが好ましい。とくに、アシッドペースティング処理による顔料化の方法は、本発明の製造方法と類似した方法であるので、ハロゲン化した後にハロゲン化キナクリドンを分離することなしに、続けてアシッドペースティング処理できるため、製造工程の簡略化が可能となり、本発明の優位性がさらに発揮される。また、顔料化工程の中または前後で、樹脂、活性剤、体質顔料および顔料分散剤等を添加し、顔料の利用価値を高めることもできる。ここで、顔料分散剤とは顔料骨格に酸性置換基または塩基性置換基等が導入された化合物、ならびに顔料と相互作用の大きい部分構造を分子内に有する高分子化合物等を指し、顔料分散能を持つ化合物の総称である。
<着色組成物>
以上述べた通り、本発明のハロゲン化キナクリドンの製造方法は、安全性と生産性が優れた方法であり、さらに、色材として使用する際に、色相の調製範囲が広く、高着色力で高鮮明な着色組成物が得られるため、印刷インキ、塗料、プラスチック、捺染剤、カラートナーおよびカラーフィルタレジストインキ等の着色組成物に好適に使用することができ、とくに、微細な顔料粒子が望まれる、カラートナー、インクジェットインキおよびカラーフィルタレジストインキに好適に使用することができる。
色組成物は、本発明の製造方法で得られるハロゲン化キナクリドンおよびビヒクル成分を混合し、ボールミル、ビーズミル、ロールミルまたは高速度衝撃ミル等の分散機器でハロゲン化キナクリドンを分散し、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、分散剤、色調調整材料および物性調整材料等を混合したものである。着色組成物中でのハロゲン化キナクリドンの含有量は、0.1重量%〜80重量%の範囲が好ましい。また、着色組成物中でのビヒクル成分の含有量は、20重量%〜99.9重量%の範囲が好ましい。
色組成物に用いられるビヒクル成分は、オフセットインキ用ビヒクル、グラビアインキ用ビヒクル、塗料用ビヒクル、プラスチック用樹脂、捺染用ビヒクル、トナー用樹脂、インクジェットインキ用ビヒクルおよびカラーフィルタレジストインキ用ビヒクル等が挙げられる。
オフセットインキ用ビヒクルは、例えば、ロジン変成フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂またはこれら乾性油変成樹脂等の樹脂と、必要に応じて、アマニ油、桐油、大豆油等の植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィン等の溶剤から成るものであって、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:植物油:溶剤=10〜50重量%:0〜30重量%:20〜60重量%の範囲が好ましい。オフセットインキには、必要に応じて、インキ溶剤、ドライヤー、レベリング改良剤、増粘剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
グラビアインキ用ビヒクルは、樹脂と溶剤から成るものであって、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:溶剤=5〜40重量%:60〜95重量%の範囲が好ましい。樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ギルソナイト、ダンマル、セラック、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、環化ゴム、塩化ゴム、エチルセルロース、酢酸セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、イソプロピルアルコール、クロルベンゾール、エチルエーテル、メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル等が挙げられる。グラビアインキには、必要に応じて、例えば硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、アルミナホワイト、クレー、シリカ、シリカホワイト、タルク、珪酸カルシウム、沈降性炭酸マグネシウム等の体質顔料の他、補助剤として、顔料分散剤、可塑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
塗料用ビヒクルは、樹脂と溶剤から成るものであって、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:溶剤=5〜45重量%:55〜95重量%の範囲が好ましい。樹脂としては、例えば、ニトロセルロース、アミノアルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等が挙げられる。溶剤としては、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、エーテル・アルコール系、エーテル・エステル系の有機溶剤、水等が挙げられる。塗料には、必要に応じて、顔料分散剤、レベリング改良剤、増粘剤、硬化剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
プラスチック用樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、αオレフィンとアクリル酸またはマレイン酸との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸または無水マレイン酸との共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のビニル樹脂、ホルマル樹脂やブチラール樹脂等のアセタール樹脂、ポリアクリロニトリルやメタクリル樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等のスチロール樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のポリエステル樹脂、6−ナイロン等のナイロン、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、セルロース樹脂等がある。プラスチックには、必要に応じて、可塑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
捺染用ビヒクルは、顔料を非イオン界面活性剤水溶液、アニオン界面活性剤水溶液等で高濃度に分散して得た顔料分散体に混合するレジューサー、固着剤等であって、樹脂と溶剤から成るものであり、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:溶剤=1〜20重量%:80〜99重量%の範囲が好ましい。樹脂としては、アクリル樹脂、アミノアクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。溶剤としては、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、エーテル・アルコール系、エーテル・エステル系の有機溶剤、水等が挙げられる。捺染剤には、必要に応じて、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、界面活性剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
トナー用樹脂は、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、塩化樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ロジンエステル、ロジン等がある。カラートナーには、必要に応じて、顔料分散剤、荷電制御剤、離型剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
インクジェットインキ用ビヒクルは、樹脂と溶剤から成るものであって、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:溶剤=1〜10重量%:90〜99重量%の範囲が好ましい。樹脂としては、アクリル、スチレン−アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、フッ素樹脂等の水に溶解する樹脂および水に分散性のエマルションないしコロイダルディスパージョン樹脂が挙げられる。これらの樹脂には、必要に応じアンモニア、アミン、無機アルカリ等の中和剤が加えられる。また、溶剤としては、例えば、水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、置換ピロリドン等が挙げられる。また、インクジェットインキの乾燥性を速める目的で、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類も使用できる。さらに、インクジェットインキには、必要に応じて、防腐剤、浸透剤、キレート剤や、顔料の分散安定性を向上させるためにアニオン、非イオン、カチオン、両性イオン活性剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。なお、インクジェットインキは、カラーフィルタの製造に用いることもできる。
カラーフィルタレジストインキ用ビヒクルは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂と、モノマー及び/又はオリゴマー、溶剤とから成るものであり、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:モノマー及び/又はオリゴマー:溶剤=4〜15重量%:2〜8重量%:77〜94重量%の範囲が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル化合物、桂皮酸等の光架橋性基を導入した樹脂が挙げられる。
モノマー及びオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
溶剤としては、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、エーテル・アルコール系、エーテル・エステル系の有機溶剤が挙げられる。
カラーフィルタレジストインキには、必要に応じて、顔料分散剤、光重合開始剤、増感剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。実施例中、「部」および「%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」を表す。
なお、化合物の同定は、ブルカー・ダルトニクス社製飛行時間型質量分析装置autoflexIII(TOF−MS)を用いて得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致、さらに、パーキン・エルマー社製2400CHN元素分析装置を用いて得られる炭素、水素および窒素の比率と、理論値との一致をもって行った。また、ハロゲン原子の量については、化合物を酸素燃焼フラスコ法にて燃焼させ、水に吸収させた液体をイオンクロマトグラフィーにより含有量を定量してハロゲン置換数に変換した。
また、得られたハロゲン化キナクリドン中の各成分(ハロゲン化化合物)の含有率(モル比)は、TOF−MSの測定により得られたマススペクトラムの各成分の信号強度(ピーク)の比を、各成分のモル比とした。
顔料粒子の平均粒径は以下の方法により測定、算出した。顔料の粉末にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、樹脂型分散剤としてDisperbyk−161(ビックケミー社製)を少量添加し、超音波洗浄機の水浴中で1分間分散処理して測定用試料を調整した。この試料を透過型電子顕微鏡(TEM)により、200個以上の顔料の一次粒子が観察出来る写真を5〜10万倍で6葉(6視野分)撮影し、任意に1000個の一次粒子の大きさ(粒子の短軸径と長軸径)を1nm単位で計測し、その平均値を顔料粒子の平均粒径とした。
[実施例1〜13]
まず、キナクリドンの単純なハロゲン化反応によるハロゲン化キナクリドンの製造例を示す。
表1に記載の溶媒にキナクリドン、N−ハロイミド化合物および触媒を加え、表1記載の反応条件でハロゲン化反応を行った。次いで、水600部に攪拌しながら反応液を注ぎ入れ、70℃に加熱して、濾過、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄、乾燥してハロゲン化キナクリドンを得た。実施例10および11については、反応物が3級アミノ基を有するため硫酸イオンと相互作用し、水600部を加えた反応液(スラリー)の濾過性が極めて不良であったため、このスラリーに水酸化ナトリウムを加えて弱アルカリ性にした後に濾過、温水洗浄、乾燥してハロゲン化キナクリドンを得た。
ハロゲン原子の置換基数が4個までは、ほぼ定量的にハロゲン化反応が進行し、使用したN−ハロイミド化合物のほとんどが消費され、収量から算出した収率は99%と極めて良好であった。また、種々のN−ハロイミド化合物は全て粒状の白色固体で、取り扱いは容易であり、ハロゲン化反応中のガスの発生もほとんど認められず、一連の操作は極めて容易であった。
なお、表1中において、無置換キナクリドンはBASF社製シンカシャレッドY、ジメチルキナクリドンはクラリアント社製ホスタパームピンクE、ジクロロキナクリドンはBASF社製シンカシャマゼンタRTを使用した。ジメトキシキナクリドンおよびジブロモキナクリドンは米国特許2821529号公報記載の製造方法により合成して使用した。フタルイミドメチル化キナクリドンは特開昭55−108466号公報記載の製造方法で得た置換基数が1.4個の合成物を使用した。ジエチルアミノプロピルアミノスルホニルキナクリドンは特開昭56−118462号公報記載の製造方法で得た置換基数が1.5個の合成物を使用した。ジエチルアミノエチルアミノメチルカルボニルアミノメチルキナクリドンは特開昭51−18736号公報記載の製造方法で得た置換基数が1.0個の合成物を使用した。
Figure 0005454729
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[実施例14]
−SO3H基が置換したキナクリドンの塩素化反応による塩素化キナクリドンの製造例を示す。本例では、スルホン化反応と塩素化反応を連続して行う、ジクロロキナクリドンスルホン酸の製造例を示す。
98%硫酸100部と30%発煙硫酸50部の混合液に無置換キナクリドン10部を加え、60℃で2時間攪拌してスルホン化反応を行った。次いで、25℃に温度を下げてトリクロロイソシアヌル酸5部を加え、同温度で3時間攪拌した。水600部に攪拌しながら反応液を注ぎ入れ、濾過、水洗浄して得た水ペーストを水500部に加えてスラリーとした。25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH11に調整して、濾過、水洗浄、乾燥して塩素化キナクリドン16.1部を得た(収率98%)。
この塩素化キナクリドンは、塩素原子の置換数が2.0個、−SO3Na基の置換数が1.3個で、特開2005−206630号公報に開示されている、ジクロロキナクリドンスルホン酸と同一組成の化合物であった。
[実施例15]
−SO2Cl基が置換したキナクリドンの塩素化反応による塩素化キナクリドンの製造例を示す。本例では、クロロスルホン化反応と塩素化反応を連続して行って、ジクロロキナクリドンスルホニルクロリドを製造し、次いで、アミノ化反応を行う製造例を示す。
クロロスルホン酸150部に、無置換キナクリドン10部を加え、40℃で2時間攪拌してクロロスルホン化反応を行った。次いで、25℃に温度を下げてトリクロロイソシアヌル酸5部を加え、同温度で3時間攪拌した。さらに、塩化チオニル6部を加え、同温度で1時間攪拌した。氷水1000部に反応液を注ぎ入れ、濾過、水洗浄して得た水ペーストを水500部に加えてスラリーとした。ジエチルアミノプロピルアミン13部を加え、60℃で5時間攪拌して、濾過、水洗浄、乾燥して塩素化キナクリドン20.6部を得た(収率98%)。この塩素化キナクリドンは、塩素原子の置換数が2.0個、ジエチルアミノプロピルアミノスルホニル基(−SO2NH(CH23N(C252)が1.5個で、実施例10と同一組成の化合物であった。
[実施例16]
−CH2NHCOCH2Clが置換したキナクリドンの塩素化反応による塩素化キナクリドンの製造例を示す。本例では、クロロアセトアミドメチル化反応と塩素化反応を連続して行って、ジクロロ(クロロアセトアミドメチル)キナクリドンを製造し、次いで、アミノ化反応を行う製造例を示す。
98%硫酸150部に、無置換キナクリドン10部、クロロアセトアミド4.5部およびパラホルムアルデヒド1.5部を加え、20℃で4時間攪拌してクロロアセトアミドメチル化反応を行った。次いで、トリクロロイソシアヌル酸5部を加え、同温度で3時間攪拌した。氷水1000部に反応液を注ぎ入れ、濾過、水洗浄して得た水ペーストを水500部に加えてスラリーとした。ジエチルアミノエチルアミン8部を加え、60℃で5時間攪拌して、濾過、水洗浄、乾燥して塩素化キナクリドン17.8部を得た(収率98%)。この塩素化キナクリドンは、塩素原子の置換数が2.0個、ジエチルアミノエチルアミノメチルカルボニルアミノメチル基(−CH2COCH2NHC24N(C252)が1.0個で、実施例11と同一組成の化合物であった。
[実施例17]
キナクリドンの製造工程に、本発明の製造方法を組み入れた製造例を示す。本例では、閉環反応と塩素化反応を連続して行う、ジクロロキナクリドンの製造例を示す。
常法にしたがい、ポリリン酸150部に2,5−ジアニリノテレフタル酸10部を加えて、125℃で3時間攪拌して閉環し、無置換キナクリドンのポリリン酸溶液を得た。次いで、50℃に温度を下げてトリクロロイソシアヌル酸4.5部を加え、同温度で2時間攪拌した。反応液を50℃の水600部に注ぎ入れ、濾過、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄、乾燥して塩素化キナクリドン11.5部を得た(収率96%)。この塩素化キナクリドンは、塩素原子の置換数が2.0個で、実施例1と同一組成の化合物であった。
[実施例18]
次に、本発明の製造方法による塩素化キナクリドンを溶剤で処理して顔料に仕上げた製造例を示す。
N,N−ジメチルホルムアミド2000部に、前記実施例1で得られた塩素化キナクリドン100部を加え、120〜140℃で3時間攪拌して、濾過、水洗浄、乾燥して顔料に仕上げた塩素化キナクリドンを得た。
この顔料に仕上げた塩素化キナクリドンを電子顕微鏡で観察したところ、顔料粒子の平均粒径は0.025μmであった。後述する比較例1の従来の製造方法による塩素化キナクリドンも同様に電子顕微鏡で観察したところ、顔料粒子の平均粒径は0.034μmであり、本発明による塩素化キナクリドンの方が微細であった。また、比較例1の塩素化キナクリドンは全てジクロロキナクリドンであるの対して、本発明による塩素化キナクリドンは、モノクロロキナクリドン、ジクロロキナクリドンおよびトリクロロキナクリドンが1:2:1(モル比)の割合の混合物であるために、結晶性が低下して小さな粒径になったと思われる。
次に、色材としての性能を評価するためにオフセットインキを作製して色調を評価した。顔料に仕上げた塩素化キナクリドン0.5部およびロジン変性フェノール樹脂(荒川化学社製タマノル340)0.45部、溶剤としてAFソルベント7号(JX日鉱日石エネルギー社製)1.05部から成るオフセットインキワニス2部を、東洋精機製フーバーマーラーを用いて150ポンドの荷重を掛けて練肉し、赤色インキを作製した。これとは別に、二酸化チタン(石原産業社製R−680)2部およびオフセットインキワニス(上記ロジン変性フェノール樹脂0.9部とAFソルベント7号2.1部からなる混合物)3部を同様に練肉して白インキを作製した。次いで、上記赤色インキと白インキを混合して淡赤色インキを作製し、2枚の透明フィルムに挟み込んで測色試料とした。測色は日本電色社製測色機SE2000を用いて、L値(明度)、H値(色相)、C値(鮮明性)を測定した。ただし、赤色インキに対する白インキの混合割合を徐々に増やしていくとL値が増大するが、H値も増大、すなわち黄味になるとともに、C値が低下するので絶対的な評価は難しい。そこでL値が一定値になるように白インキの混合割合を調整して測色し、そのときのH値およびC値で色調を評価した。なお、着色力は白インキの混合割合の逆数を採用した。
表2は評価結果で、L値が55のときの数値である。本発明による塩素化キナクリドンは後述する比較例1に対して、色相は大差なかったが、鮮明性が高く、着色力が優れていた。
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[比較例1]
従来の製造方法による塩素化キナクリドンを溶剤で処理して顔料に仕上げた製造例を示す。
98%硫酸1500部にジクロロキナクリドン(BASF社製シンカシャマゼンタRT)100部を加えて溶解させ、20℃で3時間攪拌した後に、水6000部に攪拌しながら溶解液を注ぎ入れ、70℃に加熱して、濾過、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄、乾燥した。次いで、N,N−ジメチルホルムアミド2000部に加え、120〜140℃で3時間攪拌して、濾過、水洗浄、乾燥して顔料に仕上げた塩素化キナクリドンを得た。
[実施例19]
実施例1で得られた塩素化キナクリドンに替えて実施例2で得られた塩素化キナクリドンを用いて、実施例18と同一の操作を行い、顔料に仕上げた塩素化キナクリドンを得た。
この顔料に仕上げた塩素化キナクリドンを、リガク社製X線回折測定装置MiniFlexIIを用いて、X線回折測定を行った。主ピークはCuKα線のブラッグ角度が、6.2°、13.2°、24.0°、26.4°であって、米国特許3160510号公報の表3に記載の固溶体とほぼ一致したピークであった。また、顔料に仕上げる前の実施例2の塩素化キナクリドンをX線回折測定すると、その主ピークのブラッグ角度は上記と全く同一であった。この塩素化キナクリドンの塩素置換数は0.8個であって、分析の結果、約35%の無置換キナクリドンが含まれていたが、α型やγ型の無置換キナクリドンがX線回折測定で検出されなかったことから、固溶体を形成していることが確認できた。さらに、溶剤処理前後でX線回折のピークに変化が認められなかったことから、安定な結晶を持つ固溶体であることが確認できた。
[実施例20]
実施例1で得られた塩素化キナクリドンに替えて実施例3で得られた塩素化キナクリドンを用いて、実施例18と同一の操作を行い、顔料に仕上げた塩素化キナクリドンを得た。
この顔料に仕上げた塩素化キナクリドンの電子顕微鏡観察による粒子の平均粒径は0.14μmであった。後述する比較例2は、塩素化されていない無置換キナクリドンを実施例3に準じて硫酸処理した後に実施例18と同一の操作を行って顔料に仕上げたものであって、電子顕微鏡観察による粒子の平均粒径は0.36μmであった。すなわち、本発明による顔料に仕上げた塩素化キナクリドンは塩素置換数が0.2個であって、分析の結果、その大部分が塩素が置換されていない無置換キナクリドンであったが、少量含まれる塩素化キナクリドンの存在によって粒子が効果的に微細化されていることが確認できた。
また、実施例19と同様にX線回折測定を行ったところ、実施例20および比較例2の両方ともに、γ型の結晶型であった。
次に、実施例18と同様に、オフセットインキを作製して色調を評価した結果を表3に示す。
本発明による塩素化キナクリドンは後述する比較例2に対して、色相は大差なかったが、鮮明性が高く、着色力が優れていた。すなわち、本発明の製造方法によりキナクリドンを僅かに塩素化することで、塩素化前のキナクリドンの本質的な物性を保ちながら、優れた色調に調製することができた。
Figure 0005454729
[比較例2]
無置換キナクリドンを硫酸処理後に溶剤で処理して顔料に仕上げた製造例を示す。
98%硫酸150部に無置換キナクリドン(BASF社製シンカシャレッドY)10部を加えて溶解させ、20℃で3時間攪拌した後に、水600部に攪拌しながら溶解液を注ぎ入れ、70℃に加熱して、濾過、温水洗浄、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、温水洗浄、乾燥した。
次いで、N,N−ジメチルホルムアミド200部に加え、120〜140℃で3時間攪拌して、濾過、水洗浄、乾燥して顔料に仕上げた無置換キナクリドンを得た。
参考例21]
本発明の塩素化キナクリドンおよびビヒクル成分を含む着色組成物の例としてカラートナーの利用例を示す。
実施例18で得られた塩素化キナクリドン50部およびポリエステル樹脂(特開2012−198438号公報の樹脂実施例1に記載のポリエステル樹脂A)50部を加圧ニーダーを用いて120℃で混合し、次いで3本ロールを用いて95℃で混練して着色樹脂組成物を得た。この着色樹脂組成物10部、ポリエステル樹脂(特開2012−198438号公報の樹脂実施例1に記載のポリエステル樹脂A)87.5部、荷電制御剤(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸カルシウム塩)1部および離型剤(エチレンホモポリマー、重量平均分子量850、分散度1.08、融点107℃)1.5部をヘンシェルミキサーで混合した後に、二軸混練押出機を用いて120℃で溶融混練し、次いで粉砕機で粉砕し、分級して平均粒径が5〜10μmの微細なトナー母粒子を得た。さらに、疎水性酸化チタン(チタン工業社製STT−30A)0.5部を加えて混合して、カラートナーAを得た。
これとは別に、実施例18で得られた塩素化キナクリドンに替えて、比較例1で得られた塩素化キナクリドンを使用して同様の操作を行って、カラートナーBを得た。
これらのカラートナーを熱プレスにより溶融させてガラス板上に均一な薄層を作製し、目視で透明性を評価したところ、カラートナーAはカラートナーBよりも透明性が高かった。
また、これらのカラートナー6部およびキャリアとして平均粒径が60μmのシリコーンレジンでコーティングされたフェライトキャリア(同和鉄粉社製DFC−350C)100部を混合して現像剤を作製し、キャノン製複写機CLC−730を用いて、コピー用紙(富士ゼロックス社製カラーアプリケーション用紙 Ncolor127、A4サイズ、127g/m2)に画像を印刷して印刷物を作成した。これらの印刷物を、目視で評価したところ、カラートナーAを用いて作成した印刷物は、カラートナーBを用いて作成した印刷物よりも、鮮明性が優れ、高濃度であった。
参考例22]
本発明の塩素化キナクリドンおよびビヒクル成分を含む着色組成物の例としてインクジェットインキの利用例を示す。
実施例18で得られた塩素化キナクリドン19部、ジョンクリル61J(BASF社製、スチレン−アクリル酸共重合物樹脂、重量平均分子量10000、酸価195mgKOH/g、固形分31%)16.4部、非イオン界面活性剤(花王社製エマルゲンA−90、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル)5部、イオン交換水59.6部を混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mmφ)を加えてペイントシェーカーで12時間分散して、濃縮液を作成した。この濃縮液12.5部、エマポリーTYN−40(岐阜セラツク製造所社製、スチレン−アクリル共重合体、固形分44.8%)2.5部、非イオン界面活性剤(花王社製エマルゲンA−90、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル)2.0部、イオン交換水64.9部を混合し、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを適宜加えて、粘度が2.5cps(E型粘度計による25℃での値)、表面張力40dyne/cmに調整後、1.0μmメンブランフィルターを用いてろ過し、更に0.45μmメンブランフィルターを用いてろ過して、インクジェットインキAを作製した。
これとは別に、実施例18で得られた塩素化キナクリドンに替えて、比較例1で得られた塩素化キナクリドンを使用した以外は、同様の操作を行い、インクジェットインキBを得た。これらのインクジェットインキをエプソン社製HG5130のインクカートリッジに充填して、上質紙(日本製紙社製npi上質、坪量64.0g/m2)およびコート紙(王子製紙社製OKトップコートN、坪量104.7g/m2)に、600×600dpiの解像度で、カラーチャート画像(X−rite社製ProfileMaker用チャート画像TC3.5 CMYK i1_iO」)を印刷し、印刷物を作成した。印字された印刷物を目視で評価したところ、インクジェットインキAはインクジェットインキBよりも鮮明性に優れ、高濃度であった。
参考例23]
本発明の塩素化キナクリドンおよびビヒクル成分を含む着色組成物の例としてカラーフィルタレジストインキの利用例を示す。
実施例18で得られた塩素化キナクリドン10.5部、分散助剤として実施例15で製造した塩素化キナクリドン1.5部、アクリル樹脂溶液(特開2013−120309号公報の実施例に記載のアクリル樹脂溶液1)23部、分散剤としてアジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)3.6部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート61.4部を混合し、ジルコニアビーズ(直径0.1mmφ)を加えてピコミル(浅田鉄工社製)で8時間分散して、濃縮液を作製した。
この濃縮液40部、アクリル樹脂溶液(特開2013−120309号公報の実施例に記載のアクリル樹脂溶液2)213.2部、光重合性単量体(東亞合成社製アロニックスM400)2.8部、光重合開始剤(BASF社製イルガキュアー907)2部、増感剤(保土谷化学工業社製EAB−F)0.4部およびエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート39.6部を混合し、1μmのフィルタで濾過して、カラーフィルタレジストインキAを作製した。
これとは別に、実施例18で得られた塩素化キナクリドンに替えて、比較例1で得られた塩素化キナクリドンを使用した以外は、同様の操作を行い、カラーフィルタレジストインキBを得た。
これらのカラーフィルタレジストインキを、0.7mm厚のガラス板に膜厚が1.5μmになるように塗布して、塗板を作製し、乾燥後、300mJ/cm2の紫外線を照射した。さらに、230℃で1時間加熱することでカラーフィルタを得た。
得られたカラーフィルタの評価は、コントラスト比の数値で判断した。コントラスト比は、2枚の偏光板にカラーフィルタを挟み込み、トプコン社製色彩輝度計BM−5Aを用いて輝度を測定し、偏光板が平行のときの輝度を偏光板が直行のときの輝度で除算して算出した。
その結果、カラーフィルタレジストインキAによるカラーフィルタのコントラスト比は3500、カラーフィルタレジストインキBによるカラーフィルタのコントラスト比は1700であって、カラーフィルタレジストインキAの方が優れていた。

Claims (6)

  1. ハロゲン化キナクリドンの製造方法であって、ハロゲン化剤として、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸金属塩、トリブロモイソシアヌル酸およびジブロモイソシアヌル酸金属塩からなる群より選ばれる一種以上のN−ハロイミド化合物でキナクリドンをハロゲン化することを特徴とするハロゲン化キナクリドンの製造方法。
  2. ハロゲン化剤が、トリクロロイソシアヌル酸およびジクロロイソシアヌル酸ナトリウムからなる群より選ばれる一種以上のN−クロロイミド化合物である請求項1に記載の製造方法。
  3. 溶媒として、強酸を用いる請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 溶媒が、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸およびポリリン酸からなる群より選ばれる一種以上の強酸である請求項3に記載の製造方法。
  5. 溶媒が、90重量%以上の濃度の硫酸である請求項3に記載の製造方法。
  6. キナクリドンが、下記式Iで示されるキナクリドン化合物である請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
    Figure 0005454729

    (式中、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13は、それぞれ独立的に、水素原子、塩素原子、臭素原子、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシル基、フタルイミドメチル基、−CH2NHCOCH2Cl、−SO2Cl、−SO3Mまたは−X1−X2−N(X3)2を表す。Mは、水素原子またはアルカリ金属を表す。X1は、−SO2NH−または−CH2NHCOCH2−を表す。X2は、C1〜C4のアルキレン基を表す。X3は、ヘテロ原子を有しても良いC1〜C4のアルキル基を表す。X3同士は、互いに連結して環を形成しても良い。ただし、R1〜R4、R6、R8〜R11、R13の少なくとも一つは、水素原子である。)
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