JP4582495B2 - 加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加工方法に関し、特に光学素子の成形用金型を加工するのに好適な加工方法に関する。
従来より、例えば光ピックアップ装置用の対物レンズなどの高精度光学素子の成形用金型の光学転写面加工には、すくい面のノーズ半径が0.1〜1.5mm程度、頂角が40〜60°程度の単結晶ダイヤモンド製のRバイトが使用されており、それにより光学転写面形状が例えば一般非球面方程式で表現される単一面で構成される場合には、超精密加工機を使用することにより切削加工のみで高精度な光学転写面を得ることが可能である。一方、より微細な形状構造を有する光学転写面を創成加工する際には、特許文献1に記載するように、さらに微細なノーズ半径を有するRバイトが使用されている。
特開2003−62707号公報
特許文献1に記載する微細なノーズ半径を有するRバイトを用いることで、より精密な光学転写面の創成が可能となった。ところで、近年における光ピックアップ装置の分野では、青紫色レーザなどを用いてより高密度な情報の記録及び/又は再生を行うことが望まれており、これに対して、光ピックアップ装置に用いる光学素子に、少なくとも一方の光学機能面が光軸を中心とした複数の光学機能領域に分割され、該複数の光学機能領域のうちの少なくとも1つが、光軸を中心とした輪帯状の領域に分割され、かつ各輪帯に所定数の不連続な段差が設けられるとともに、当該不連続な段差が設けられた輪帯が連続的に配された回折構造を設けようとする試みがある。しかるに、このような段差のある微細な回折構造を光学素子に形成するためには、その金型の光学面を、100μm以下の幅で輪帯状に深く切削する必要がある。ところが、上述したRバイトでは、縁部が干渉してしまい、そのように狭い幅で輪帯形状を切削することはできない。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、例えば回折レンズに代表されるような光学素子の成形用金型の加工に好適であり、高精度な加工面を形成できる加工方法を提供することを目的とする。
本発明について、図面を参照して説明する。図1は、本発明にかかる加工方法に用いると好適なダイヤモンド工具Tの先端のすくい面側から見た図(a)及びその側面図(b)である。図1(a)において、ダイヤモンド工具Tは、直線状に延在する先端の第1の縁部T1(100μm以下)と、第1の縁部T1の両端から直交する方向に直線状に延在する第2の縁部T2と第3の縁部T3とを有し、これらによって方形状のすくい面T5を形成している。第2の縁部T2は、第3の縁部T3から離隔するように延在する第4の縁部T4に接続されている。ここで方形とは、互いに平行に延在する縁部T2,T3のうち短い方の第2の縁部T2における第4の縁部T4側の端部(先端から距離βの位置)から、第1の縁部T1に平行な線T6を引くことで、縁部T1,T2、T3,線T6で囲われる領域をいうものとする。尚、本明細書中、縁部同士が接続するとは、縁部同士が直接接続している場合のほか、他の単一もしくは複数の直線及び/又は円弧を介して間接的に接続している場合も含む。
図2は、図1のダイヤモンド工具を用いて加工された後の金型Mの斜視図であり、図3は、その光学転写面の概略拡大断面図である。本発明の加工方法によって加工される金型Mは、少なくとも一方の光学機能面が光軸を中心とした複数の光学機能領域に分割され、該複数の光学機能領域のうちの少なくとも1つが、光軸を中心とした輪帯状の領域に分割され、かつ各輪帯に所定数の不連続な段差が設けられるとともに、当該不連続な段差が設けられた輪帯が連続的に配された構造である回折構造を有する光学素子成形に用いられると好適である。かかる回折構造は、断面が階段状になっており、それに相補する形で、図3に示すような金型Mの光学転写面(光学素子の光学面を転写する面をいうが、ニッケル・隣・銅メッキが施されていると好ましい)に輪帯状の溝が、複数段の階段を有して形成されることとなる。尚、図3において、ダイヤモンド工具Tは、X軸方向(回転軸に近づく方向ともいう)及びZ軸方向(金型の回転軸と平行な方向ともいう)に移動可能となっている。
本発明の加工方法の一例を示す。本発明の加工は、段々と深くなる複数段の階段を備えた輪帯状の溝構造(単に溝又は輪帯溝ともいう)を形成する場合に効果的であるが、金型に形成されるべき溝構造の形状は、予め超精密加工機の制御装置にインプットされているものとする。図3に示す例では、光軸Oから外周に向かって、この順序で溝構造G1,G2、G3が光学転写面に形成されるものとするが、溝構造G1,G2は外周に向かうにつれて階段状の段差(階段ともいう)が深くなり、溝構造G3は逆に内周に向かうにつれて階段状の段差が深くなるものとする。尚、ここで「浅い」又は「深い」とは、回転軸の方向において、加工前の金型の表面からダイヤモンド工具を用いて切り込んだ場合における切り込み量により相対的に区別されるものとする。又、「直線部を含む第1の縁部」とは、直線部のみから第1の縁部を構成してもよく、或いは直線部と、その一方の端部もしくは両端に連結した別の直線部もしくは円弧とで、第1の縁部を構成しても良いことを意味する。更に、「切り込み方向」とは、回転軸に平行であって、金型に接近する方向をいうものとする。
加工を行うには、まず金型Mを光軸(回転軸ともいう)Oの回りに回転させ、ダイヤモンド工具Tの第1の縁部T1を、金型Mの光学転写面(ここでは上面)に対して押し当てながら光軸Oから外周側に向かって(X軸方向に)移動させ、溝構造G3におけるここでは4段目の段(溝構造G3内で最も深い段)に対応した基準位置(点線の位置であり、溝構造G3の最も内周側の位置)で、光軸Oに対して平行に且つ金型Mに更に押しつける方向(Z軸方向)に第1の位置まで移動させる(第1のステップ)。すると、ダイヤモンド工具Tが金型Mの光学転写面を切削加工し、輪帯状の溝が形成されるが、溝の底面は第1の縁部T1により切削され、溝の側面は第2の縁部T2及び第3の縁部T3により切削される。更にX軸方向の位置を維持しつつ、ダイヤモンド工具Tを加工面から遠ざかる方向に第2の位置まで移動し即ち戻し(第2のステップ)、更にダイヤモンド工具Tを光軸Oから離れる方向に移動させることで溝構造G3の光軸Oから遠い方の側面(内周面)が第2の縁部T2により切削される(第3のステップ)。これを複数回繰り返すことで、複数段の階段を備えた溝構造G3が加工形成される。
一方、次いで溝構造G2を加工する場合には、以下のようにする。ダイヤモンド工具Tを溝構造G2を加工するための基準位置と等しいZ軸方向位置にセットした状態で、光軸Oに近づく方向(X軸方向)に移動させ、溝構造G2におけるここでは4段目の段(溝構造G2内で最も浅い段)に対応した基準位置(実線の位置であり、溝構造G2の最も外周側の位置)で、光軸Oに対して平行に且つ金型Mに押しつける方向(Z軸方向)に第1の位置まで移動させる(第1のステップ)。すると、ダイヤモンド工具Tが金型Mの光学転写面を切削加工し、輪帯状の溝が形成されるが、溝の底面は第1の縁部T1により切削され、溝の側面は第2の縁部T2及び第3の縁部T3により切削される。更にX軸方向の位置を維持しつつ、ダイヤモンド工具Tを加工面から遠ざかる方向に第2の位置まで移動し即ち戻し(第2のステップ)、更にダイヤモンド工具Tを光軸Oに近づける方向に移動させることで溝構造G2の光軸Oに近い方の側面(外周面)が第3の縁部T3により切削される(第3のステップ)。これを複数回繰り返すことで、複数段の階段を備えた溝構造G2が加工形成される。更に、ダイヤモンド工具Tを溝構造G1を加工するための基準位置と等しいZ軸方向位置にセットした状態で、光軸Oに近づく方向(X軸方向)に移動させ、上述と同様にして溝構造G1の加工を行う。その加工後、形成すべき溝がなければ、ダイヤモンド工具Tを光軸に近づく方向に移動させて加工を終了する。溝構造G1〜G3の加工順序にはこだわらず、例えば溝構造G1の加工を最初に行ったり、ランダムに行っても良い。
ここで、本発明の作用効果を述べると、通常ダイヤモンド工具Tは片持ち状態にあり、しかも細長いすくい面を有するため、切削加工時に側面から大きな力を受けたとき、先端がしなるように変形しやすいという特性を有する。即ち、最も深い溝の側面を、ダイヤモンド工具Tを光軸に交差する方向に移動させて、第2の縁部T2又は第3の縁部T3を用いて切削しようとすると、溝の側面より大きな力を受けて、例えば本来光軸Oと平行にならなければならない側面が傾斜してしまう恐れがある。図8は、本発明者らが行った試験結果の例を示しており、側面が傾斜した溝の断面形状を示す顕微鏡写真である。
そこで、本発明においては、溝構造G1〜G3のいずれにおいても、段が最も深い位置から加工を行うようにしているので、図4に示すように、その溝構造内で最初に加工される最も深い溝の底面が第1の縁部T1により切削され、且つその側面は第2の縁部T2及び第3の縁部T3により等しい切削抵抗力を受けながら切削されるから、側面が傾斜しない溝構造を精度良く形成でき、精度の良い光学素子を成形できる金型を製造できる。
請求項に記載の加工方法は、ダイヤモンドからなる切れ刃のすくい面に、金型の回転軸に対して交差する方向に少なくとも100μm以内の長さで直線状に延在する直線部を含む第1の縁部と、前記第1の縁部より長く且つ前記第1の縁部の端部に接続する直線状の第2の縁部及び第3の縁部とを形成したダイヤモンド工具を用いて、光学機能面に、光軸を中心とした輪帯状で、かつ輪帯に所定数の不連続な段差が設けられた回折構造を有する光学素子を成形するための金型の光学転写面を加工する加工方法であって、
前記金型の光学転写面に複数段の階段を有する輪帯溝を加工する場合において、前記金型を回転させながら、前記輪帯溝の内周面を再加工するときは、前記ダイヤモンド工具を、形成されている内周面の位置よりも前記回転軸に近い位置で前記輪帯溝内に挿入し、その後前記ダイヤモンド工具を前記回転軸と交差する方向に移動することによって加工を行い、又は前記輪帯溝の外周面を再加工するときは、前記ダイヤモンド工具を、形成されている外周面の位置よりも前記回転軸から遠い位置で前記輪帯溝内に挿入し、その後前記ダイヤモンド工具を前記回転軸と交差する方向に移動することによって加工を行うことを特徴とする。
請求項2に記載の加工方法は、請求項1に記載の発明において、前記ダイヤモンド工具の前記第2の縁部及び第3の縁部は、第1の縁部の両端側から直交する方向に直線状に延在することを特徴する。
本発明について、図面を参照して説明する。図5は、金型の光学転写面の概略拡大断面図である。加工が終了した金型は超精密加工機から取り外されて検査されるが、この際に許容される精度が得られていないことが判明した場合、修正加工が行われることがある。かかる場合、その金型は超精密加工機に再度取り付けられるが、前回加工された位置と完全に同一な位置に取り付けられることはまれである。従って、修正加工を行うために、前回加工されたときのX軸方向位置に基づいて、ダイヤモンド工具を最も深い位置に合わせて溝構造内に挿入しようとしたときに、溝構造の側面と、ダイヤモンド工具とがわずかに交差していると、挿入時にダイヤモンド工具が側面から大きなストレスを受け折損してしまう恐れがある。
そこで、本発明においては、金型Mを回転させながら、光軸(回転軸)位置の位置は右方である図5において、輪帯溝Gの内周面Giを再加工するときは、ダイヤモンド工具Tを、形成されている内周面Giの位置よりも回転軸に近い位置(ここでは右方)で輪帯溝G内に挿入し、その後ダイヤモンド工具Tを回転軸と交差する方向(ここでは左方)に移動することによって加工を行う(太い矢印参照)ことで、ダイヤモンド工具Tの折損等を回避できる。尚、同様にして、輪帯溝Gの外周面Goを再加工するときは、ダイヤモンド工具Tを、形成されている外周面Goの位置よりも回転軸から遠い位置で輪帯溝G内に挿入し、その後ダイヤモンド工具Tを回転軸と交差する方向に移動することによって加工を行えることはいうまでもない。
請求項に記載の加工方法は、請求項1または2に記載の発明において、前記ダイヤモンド工具の第1の縁部の長さは、前記光学素子の前記階段状の段部の光軸直交方向の最小幅より小さいことを特徴とする。光学素子に設ける回折構造の種類によっては、段部の光軸直交幅が異なる場合もあるが、その場合、ダイヤモンド工具の第1の縁部T1の長さα(図1(a)参照)を最小幅B(図3参照)より小さくすれば、ダイヤモンド工具Tを光軸に交差する方向に移動させることで全ての回折構造に対応した溝を形成できる。
請求項に記載の加工方法は、請求項1乃至のいずれかに記載の発明において、前記金型の光学転写面にニッケル・隣・銅メッキを施していることを特徴とする。特に、ニッケル・隣・銅メッキは被切削性に優れるため、長い工具寿命を確保できるからである。尚、光学転写面に、ニッケル・隣メッキを用いても良く、銅、アルミ、金属ガラス等のコーティングを行っても類似の効果が得られる。

ここで「光学素子」としては、例えばレンズ、プリズム、回折格子光学素子(回折レンズ、回折プリズム、回折板、色収差補正素子)、光学フィルター(空間ローパスフィルター、波長バンドパスフィルター、波長ローパスフィルター、波長ハイパスフィルター等々)、偏光フィルター(検光子、旋光子、偏光分離プリズム等々)、位相フィルター(位相板、ホログラム等々)があげられるが、以上に限られることはない。
本発明によれば、例えば回折レンズに代表されるような光学素子の成形用金型の加工に好適であり、高精度な加工面を形成できる加工方法を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図6は、請求項1〜6に記載の発明にかかる加工方法を実行するのに好適な実施の形態である2軸超精密加工機10の斜視図であり、図7は、ダイヤモンド工具の斜視図である。図7に示す2軸超精密加工機10において、不図示の制御装置によってX軸方向に駆動されるX軸テーブル2が、台座1上に配置されている。X軸テーブル2上には、ダイヤモンド工具Tが取り付けられている。又、不図示の制御装置によってZ軸方向に駆動されるZ軸テーブル4が、台座1上に配置されている。Z軸テーブル4上には、不図示の制御装置によって回転駆動される主軸(回転軸)5が取り付けられている。主軸5は、加工すべき転写光学面を有する光学素子成形用の金型(図2参照)を取り付け可能となっている。ダイヤモンド工具Tは、その先端にダイヤモンドチップTcを取り付けており、その形状は図1に示すものと同様である。
本実施の形態にかかる加工方法によれば、主軸5やX・Z軸テーブル2,4の剛性が非常に高く、軸制御分解能が100nm以下の超精密加工機を用いて、主軸5にワークであるところの光学素子成形用の金型を取り付け、主軸回転数1000min−1で回転させ、切り込み量1μm、送り0.2mm/minの条件で、ダイヤモンド工具Tにより、切れ刃の切削点が加工中に連続的に移動するようにして、延性モードで切削加工することにより、図3に示すごとき階段状の輪帯を含む回折構造に対応する溝を、金型の光学転写面に創成することができる。
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、本発明の加工方法は、光学素子の成形用金型の加工以外にも用いることができる。又、本発明の加工方法に用いるダイヤモンド工具は、すくい面の形状が、方形状ではなく、第1の縁部より付け根側が狭幅の先太形状であってもよい。
本発明にかかる加工方法に用いると好適なダイヤモンド工具Tの先端のすくい面側から見た図(a)及びその側面図(b)である。 図1のダイヤモンド工具を用いて加工された後の金型Mの斜視図である。 金型Mの光学転写面の概略拡大断面図である。 ダイヤモンド工具Tの刃先形状と金型Mの段部形状との関係を示す概略拡大断面図である。 金型Mの光学転写面の概略拡大断面図である。 本発明にかかる加工方法を実行するのに好適な実施の形態である2軸超精密加工機10の斜視図である。 ダイヤモンド工具の斜視図である。 側面が傾斜した溝の断面形状を示す顕微鏡写真である。
符号の説明
M 金型
T ダイヤモンド工具
10 超精密加工機

Claims (4)

  1. ダイヤモンドからなる切れ刃のすくい面に、金型の回転軸に対して交差する方向に少なくとも100μm以内の長さで直線状に延在する直線部を含む第1の縁部と、前記第1の縁部より長く且つ前記第1の縁部の端部に接続する直線状の第2の縁部及び第3の縁部とを形成したダイヤモンド工具を用いて、光学機能面に、光軸を中心とした輪帯状で、かつ輪帯に所定数の不連続な段差が設けられた回折構造を有する光学素子を成形するための金型の光学転写面を加工する加工方法であって、
    前記金型の光学転写面に複数段の階段を有する輪帯溝を加工する場合において、前記金型を回転させながら、前記輪帯溝の内周面を再加工するときは、前記ダイヤモンド工具を、形成されている内周面の位置よりも前記回転軸に近い位置で前記輪帯溝内に挿入し、その後前記ダイヤモンド工具を前記回転軸と交差する方向に移動することによって加工を行い、又は前記輪帯溝の外周面を再加工するときは、前記ダイヤモンド工具を、形成されている外周面の位置よりも前記回転軸から遠い位置で前記輪帯溝内に挿入し、その後前記ダイヤモンド工具を前記回転軸と交差する方向に移動することによって加工を行うことを特徴とする加工方法。
  2. 前記ダイヤモンド工具の前記第2の縁部及び第3の縁部は、第1の縁部の両端側から直交する方向に直線状に延在することを特徴する請求項1に記載の加工方法。
  3. 前記ダイヤモンド工具の第1の縁部の長さは、前記光学素子の前記階段状の段部の光軸直交方向の最小幅より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の加工方法。
  4. 前記金型の光学転写面にニッケル・隣・銅メッキを施していることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の加工方法。
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