図1は、本発明に係る各実施例としてのデジタルの複写機100の断面の構成例を示す概念図である。図1に示す複写機100は第1及び第2の画像形成装置の一例であり、交流電源に接続して使用可能な装置であって、直接転写方式によりモノクロ画像を得る複合機等を構成するものである。複写機100は、装置本体を有している。
装置本体には原稿読取手段11が設けられ、装置本体内には全体制御部15、給紙カセット30A,30B、画像書き込み部60、画像形成手段70等が備えられる。原稿読取手段11は自動原稿給紙装置(以下ADFという)40を有して、所望の原稿20を自動給紙すると共に、その原稿20を読み取って原稿画像データDoutを出力するように動作する。
ADF40は、装置本体上部に取り付けられる。ADF40は、原稿載置部41、ローラ42a、ローラ42b、ローラ43、搬送ローラ44及び排紙皿46を有している。これらのローラ42a,42b,43及び搬送ローラ44は、図示しないDCモータにより駆動される。
上述の原稿載置部41には一又は複数の原稿20が載置される。上述の原稿載置部41の下流側にはローラ42a及びローラ42bが設けられ、自動給紙モードが選択されたとき、原稿載置部41から繰り出された原稿20は下流側のローラ43によってU字回転するように搬送される。原稿読取手段11では、原稿20がローラ43によってU字状に反転するときに、その原稿20を読み取って原稿画像データDoutを出力するようになされる。原稿20は、搬送ローラ44により搬送されて排紙皿46へ排紙される。
一方、本体装置内には、第1のプラテンガラス51、第2のプラテンガラス52、光源53、ミラー54,55,56、結像光学部57、CCD撮像装置58及び図示しない光学駆動部が備えられる。プラテンモード時には、プラテンガラス51上に載置された原稿(図示せず)を読み取るようになされる。例えば、光学駆動部は、光源53及びミラー54を走査する。光源53から原稿に照射された光は、当該原稿から読取光となって反射されてくる。読取光は、ミラー54〜56を通じて結像光学部57により結像され、CCD撮像装置58に取り込まれる。
CCD撮像装置58は縮小型イメージセンサを構成する。CCD撮像装置58の出力段には画像処理手段21が接続され、アナログの原稿読取信号Soutを画像処理した後のデジタルの原稿画像データDinが画像形成手段70に出力される。画像形成手段70は、所定の用紙(記録媒体)P上に画像を形成するために、有機感光体ドラム(以下感光体ドラムという)71、帯電部72、現像部73、転写部74、分離部75、クリーニング部76、搬送機構部77及び定着手段78を有している。感光体ドラム71、現像部73及び搬送機構部77は、図示しないDCモータにより駆動される。
この感光体ドラム71の上方には帯電部72が配設され、所定の帯電電位に基づいて予め感光体ドラム71が一様に帯電される。感光体ドラム71の例えば斜め右上方には画像書き込み部60が設けられ、画像処理手段21から出力された画像データDinによる露光電位に基づいて感光体ドラム71が露光され、その感光体ドラム71上に静電潜像が形成される。
感光体ドラム71の右側にはトナー及びキャリア(現像剤)が収容された現像部73が配設され、画像書き込み部60によって露光された静電潜像はトナーによって現像される。この現像部73の下方にはレジストローラ62や給紙カセット30A及び30B等が設けられる。給紙カセット30A及び30B内に収容された用紙Pは、これらの給紙カセット30A及び30Bにそれぞれ設けられた図示しない送り出しローラ及び給紙ローラにより給紙され、搬送ローラ61、レジストローラ62等を経て感光体ドラム71下に搬送される。これらの送り出しローラ、給紙ローラ、搬送ローラ61及びレジストローラ62等は、図示しないDCモータにより駆動される。
感光体ドラム71の下方には転写部74が配設され、帯電、露光、現像を経てその感光体ドラム71上に形成されたトナー像が、レジストローラ62により搬送タイミング制御される用紙Pに転写される。この転写部74に隣接して分離部75が設けられ、トナー像を転写した用紙Pが感光体ドラム71から分離される。
この分離部75の下流側には搬送機構部77が設けられ、その終端部には定着手段78が設けられる。定着手段78では用紙Pに転写されたトナー像が熱定着される。定着手段78は、図2に示す定着ヒータ駆動回路79及び定着ヒータ97から構成される(図2参照)。定着処理後の用紙Pは、排紙ローラ95に挟持されて機外の排紙トレイ等に排紙される。上述の処理で画像形成が完了した用紙Pは排紙トレイに限られることはなく、フィニッシャ部90によってステープル処理や綴じ込み処理等を行われる場合もある。
搬送機構部77と上述の帯電部72との間であって、感光体ドラム71に対向してクリーニング部76が設けられ、感光体ドラム71に残留したトナーがクリーニングされる。その後、次のコピーサイクルに移行する。これらの画像形成の際には、用紙Pとして52.3〜63.9kg/m2(1000枚)程度の薄紙や64.0〜81.4kg/m2(1000枚)程度の普通紙や83.0〜130.0kg/m2(1000枚)程度の厚紙や150.0kg/m2(1000枚)程度の超厚紙を用い、線速度を80〜350mm/sec程度とし、環境条件として温度が5〜35℃程度、湿度が15〜85%程度の設定条件とすることが好ましい。用紙Pの厚み(紙厚)としては0.05〜0.15mm程度の厚さのものが用いられる。
図2は、第1の実施例としての複写機101の制御系の構成例を示すブロック図である。図2に示す複写機101は、原稿読取手段11、全体制御部15、画像処理手段21、電流制限付きの回路遮断器(Circuit Breaker;CBR)22、給紙手段23、ノイズフィルタ(Noise Filter;NF)24、DCモータ35A,35B、操作パネル48、画像形成手段70、定着手段78及び電源供給システム100’から構成される。
電源供給システム100’は、電源スイッチ26、直流電源33、電流検知手段4、電力制御手段38、一次側電流検出手段65及びDC電源パラメータ補正手段(以下単に補正手段68という)を有している。電源スイッチ26は、回路遮断器22及びノイズフィルタ24を通じて交流電源1に接続される。回路遮断器22は、当該複写機101内への使用電流(一次側電流)Iを例えば15A以内に制限するように機能する。
交流電源1から供給する一次側電流Iに関しては、15Aに限られることはなく、例えば、機種や国別によって、10A,20A・・・等のように制限して使用される。回路遮断器22は、I=15Aを越える電流Iが流入すると、所定時間(数秒単位)の経過後に回路を遮断するようになされる。回路遮断器22には、ノイズフィルタ24が接続され、交流電源1から供給する一次側電流Iをフィルタ処理するようになされる。
電源スイッチ26には、一次側電流検出手段65及び定着手段78が接続される。一次側電流検出手段65には直流電源33が接続される。一次側電流検出手段65は、交流電源1から直流電源33へ流入する一次側電流Iを検出して一次側検出信号Siを出力する。直流電源33は、一次側が電源スイッチ26、ノイズフィルタ24及び回路遮断器22を通じて交流電源1に接続され、二次側が負荷の一例となるDCモータ35,36等に接続されて直流電力を供給するようになされる。
直流電源33にはDC電圧多出力用のAC−DCコンバータが使用される。直流電源33で、その一次側は交流電源1に接続され、二次側には、12V駆動系(シリーズ)のDCモータ35及び24V駆動系のDCモータ36が接続される。直流電源33は、例えば、交流電圧を2種類の直流電圧Vin(t)=12V、Vout=24Vに変換し、直流電力を12V駆動系のDCモータ35及び、24V駆動系のDCモータ36に各々供給するようになされる。
直流電源33と各々のDCモータ35及び36との間には電流検知手段4A,4Bが接続される。電流検知手段4Aは、直流電源33の二次側の電流Id1を検知して二次側電流検出信号S1を出力する。電流検知手段4Bは、直流電源33の二次側の電流Id2を検知して二次側電流検出信号S2を出力する。これは、二次側電流検出信号S1,S2によってDCモータ35及び36等の直流負荷の変動をいち早く見出すためである。電流検知手段4A,4Bには、二次側電流Id1やId2を各々電圧に変換する電流−電圧(IV)変換器等が使用される。
電流検知手段4Aには、ローパスフィルタ(LPF)8Aが接続され、二次側電流検出信号S1をフィルタ処理した後の二次側電流検出信号S1’を出力する。
電流検知手段4Bには、ローパスフィルタ(LPF)8Bが接続され、二次側電流検出信号S2をフィルタ処理した後の二次側電流検出信号S2’を出力する。
LPF8A,8Bには、電力制御手段38が接続され、2種類の二次側電流検出信号S1’,S2’を入力し、この二次側電流検出信号S1’,S2’及び直流電源33のパラメータ(以下でDC電源パラメータという)に基づいて、交流電源1に接続された定着手段78の電力供給制御をするようになされる。
電力制御手段38は、例えば、A/D変換器84A,84B,CPU85等から構成される。電力制御手段38内のA/D変換器84Aは、ノイズ低減後の二次側電流検出信号S1’をA/D変換して電流検知データD1を出力する。A/D変換器84Bは、ノイズ低減後の二次側電流検出信号S2’をA/D変換して電流検知データD2を出力する。
電力制御手段38は、交流電源1に接続された定着手段78の電力供給制御をする。例えば、電力制御手段38内のCPU85は、電流検知データD1,D2に基づく二次側電流Iout(t)にDC電源伝達関数f(t)を演算して一次側電流Iin(t)を算出し、ここに算出された一次側電流Iin(t)に基づいて定着手段78への供給可能な電力を制御する。DC電源伝達関数f(t)は、例えば、直流電源33の一次側電圧(交流実効値)をVin(t)とし、二次側電圧(直流出力電圧)をVoutとしたとき、f(t)=Vout/Vin(t)で示される。例えば、Vin(t)=100Vとし、Vout=24Vとしたとき、DC電源伝達関数はf(t)=0.24となる。CPU85は、一次側電流Iin(t)から最適な電力指令値PC1をリアルタイムに演算するようになされる。
CPU85は、電力指令値PC1と全体制御部15からの電力指令値PC2との比較結果に基づいて決定される電力指令値PC3に基づいて定着手段78の電力供給制御をする。このようにすると、交流電源1から供給する一次側電流Iを所定の値、例えば、I=15A以下に制御することができる(第1の画像形成装置)。
この例で、電力制御手段38には補正手段68が接続され、一次側電流検出手段65から出力される一次側電流検出信号Siと、電流検知データD1,D2とに基づいてDC電源パラメータを算出し、当該パラメータに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。補正手段68はCPU(中央処理装置)又はDSP(デジタルシグナルプロセッサ)から構成される。この例で、パラメータは、直流電源33の効率(η)である。効率はη=直流出力/(損失+直流出力)=直流出力/交流入力である。DC電源伝達関数f(t)は、例えば、補正後のDC電源伝達関数をf(t)’としたとき、f(t)・1/η、すなわち、DC電源伝達関数f(t)を効率ηの逆数で補正するようになされる。なお、電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)の補正動作は、当該複写機101の工程出荷時、設置時又はユーザ使用中に実行される。
また、上述の電源スイッチ26には、直流電源33の他に、定着手段78が接続される。定着手段78は、画像形成手段70により用紙P上に形成されたトナー画像を熱定着する。定着手段78は、定着ヒータ駆動回路79及び定着ヒータ97から構成される。定着ヒータ駆動回路79の一方の側は、上述の電源スイッチ26に接続され、他方には、定着ヒータ97が接続される。定着ヒータ駆動回路79にはPWM制御を実行可能な通電制御回路等が使用される。このPWM制御によれば、交流電圧AC100Vを全波整流した後の整流波形の立ち上がりをスイッチ素子によって通電制御をするようになされる。スイッチ素子には、バイポーラトランジスタ又は電界効果トランジスタが使用される。
例えば、バイポーラトランジスタをスイッチ素子として使用する場合は、そのコレクタが全波整流源に接続され、そのエミッタが定着ヒータ97に接続され、ベース電流を制御することで、定着ヒータ97に流入する駆動電流が制御される。また、電界効果トランジスタをスイッチ素子として使用する場合は、そのソースが全波整流源に接続され、そのドレインが定着ヒータ97に接続され、ゲート電流をオンオフ制御することで、定着ヒータ97に流入する駆動電流が制御される。定着ヒータ97には、抵抗発熱体が使用され、定着ヒータ駆動回路79によって制御される駆動電流に基づいて発熱し、定着温度を例えば180℃程度に保持するようになされる。
なお、電源供給システム100’は、画像形成手段70及び定着手段78の他に、原稿読取手段11、全体制御部15、画像処理手段21、給紙手段23、操作パネル48等に電力を供給するようになされる。
原稿読取手段11は画像処理手段21に接続され、図1で説明したように原稿20を読み取って得た原稿画像データDinを全体制御部15からの画像処理信号Sgに基づいて画像処理する。画像処理後の原稿画像データDinは、図示しない画像メモリに一旦格納しておいてもよい。原稿画像データDinは、画像メモリから画像形成手段70に出力するようになされる。
全体制御部15は複写機全体を制御するものであり、例えば、操作パネル48から入力される操作データD31に基づいて画像処理手段21、給紙手段23及び画像形成手段70等の入出力を制御する。この例で全体制御部15は、電力指令値PC2をCPU85に設定するようになされる。また、全体制御部15は、給紙手段23に給紙制御信号Sfを出力して、図1に示した給紙カセット30A又は30Bから用紙Pを繰り出す給紙制御を実行する。更に、DCモータ35,36にモータ制御信号Smを出力してモータ駆動制御を実行する。
操作パネル48は、操作手段14及び表示手段18から構成される。操作パネル48は、図示しない液晶表示ディスプレイ及びタッチセンサパネルを組み合わせたものが使用される。表示手段18には原稿画像データDoutに基づく画像を形成する際に、複写枚数、画像形成濃度等の画像形成条件が表示される。画像形成条件は表示データD21に基づいて表示される。操作手段14は自動給紙モードや、プラテンモード等を設定するように操作される。もちろん、モード設定のみならず、操作手段14は、電力指令値を設定する場合に使用してもよい。これらの画像形成条件の選択により得られた操作データD31は全体制御部15に出力される。
画像形成手段70は、原稿読取手段11より得られた原稿画像データDoutに基づいて、所定の用紙(記録媒体)P上に画像を形成するようになされる。例えば、画像形成手段70では操作手段14によって設定された画像形成条件に基づいて図示しない画像メモリから原稿画像データDoutが読み出される。
この原稿画像データDoutは、例えば、画像処理手段21で伸長され復号化される。復号化後の原稿画像データDoutは、画像形成手段70に転送される。画像形成手段70では原稿画像データDoutが、図1に示した画像書き込み部60に入力される。画像書き込み部60では、原稿画像データDoutに基づいて感光体ドラム71に静電潜像を形成される。感光体ドラム71に形成された静電潜像はトナーにより現像される。
給紙手段23では、給紙制御信号Sfに基づいて給紙カセット30A等から画像形成条件の設定に基づく用紙Pが繰り出され、当該用紙Pが画像形成手段70の方へ搬送される。給紙制御信号Sfは全体制御部15から給紙手段23へ出力される。画像形成手段70では感光体ドラム71上に形成されたトナー像を用紙Pに転写し、定着手段78では用紙Pに形成されたトナー像を定着するようになされる。定着後の用紙Pは排紙される。
図3は、複写機101の電力制御系の構成例を示すブロック図である。
この実施例では、電力制御手段38に一次側電流算出手段39が備えられ、直流電源33の二次側の電流変動がその一次側に波及する以前に、電流検知手段4A,4Bから入力した直流電源3の二次側電流を反映する二次側電流検出信号S1と予め設定されたDC電源伝達関数f(t)の乗算値に基づいて、いち早く定着手段78に供給可能な電力を制御するようになされる。
図3に示す複写機101の電力制御系は、直流電源(DCPS)33、電流検知手段4A、4B、ローパスフィルタ8A,8B、全体制御部15、電力制御手段38、一次側電流検出手段65及びDC電源パラメータ補正手段68を有して構成される。図2に示した同じ名称及び同じ符号のものは同じ機能を有するのでその説明を省略する。
この例で、電力制御手段38は、一次側電流算出手段39、A/D変換部84A,84B、電力指令値決定部290を有して構成され、一次側電流算出手段39によって算出された一次側電流Iinに基づいて定着手段78へ供給可能な電力を制御する。一次側電流算出手段39及び電力指令値決定部290は、図2に示したCPU85によって具現化される。A/D変換部84A,84Bには、一次側電流算出手段39が接続される。一次側電流算出手段39は、電流検知手段4A,4Bから出力された直流電源33の二次側電流Ioutを反映する二次側電流検出信号S1,S2に基づいて当該直流電源33の一次側電流Iinを算出するためのDC電源伝達関数f(t)を保有する。
一次側電流算出手段39は、Z領域変換部49、伝達関数乗算部59及び時間領域逆変換部69を有している。Z領域変換部49では、A/D変換部84A,84Bから出力される電流検知データD1,D2を入力して、時間領域に依存した二次側電流Iout(t)を時間領域に依存しないラプラス領域等のZ領域(又は周波数領域)に変換して二次側電流Iout(Z)を出力する。
Z領域変換部49には伝達関数乗算部59が接続され、Z領域に変換された二次側電流Iout(Z)にDC電源伝達関数f(Z)を乗算して、Iin(Z)=Iout(Z)・f(Z)を出力する。DC電源伝達関数f(Z)は、例えば、予め直流電源33の二次側負荷電流波形と当該直流電源33の一次側電流波形から遅延量を含む伝達関数f(t)を求めておき、このDC電源伝達関数f(t)を関数式又は参照テーブルとして一次側電流算出手段39に保持するようになされる。DC電源伝達関数f(t)のパラメータは、二次側電流検出信号S1,S2、一次側電圧Vin、温度、力率、一次側電流周波数のうちのいずれか1つ又は複数である。
伝達関数乗算部59には時間領域逆変換部69が接続され、Z領域で乗算されたIin(Z)を時間領域に逆変換して時間に依存したIin(t)を出力するようになされる。時間領域逆変換部69には、電力指令値決定部290が接続され、時間領域逆変換部69から出力される一次側電流Iin(t)に基づいて定着手段78に対する電力指令値を決定するようになされる。これは、二次側電流を反映する電流検出データD1,D2が激しく変動した場合であっても、一次側電流Iinの制限値を越える事態を回避するためである。例えば、全体制御部15から電力指令値PC1を入力し、時間領域逆変換部69から電力指令値PC1=一次側電流Iin(t)を入力して両者を比較する。
電力指令値決定部290は、上述の比較結果で、例えば、電力指令値PC1,PC2のいずれか小さい方を選択し、ここで選択された電力指令値PC1又はPC2のいずれかに基づいて定着手段78の電力供給制御をする。この例で、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも小さい場合は、電力指令値PC1が選択される。
また、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも大きい場合は、電力指令値PC2が選択される。このようにすると、電力指令値決定部290により新たに決定された、電力指令値PC1,PC2のいずれかに基づく第3の電力指令値PC3=PC1又はPC3=PC2により定着手段78への電力供給制御をすることができる。
この例で、電力制御手段38と一次側電流検出手段65との間には、補正手段68が接続され、一次側電流検出信号Siと、電流検知データD1,D2とに基づいてDC電源パラメータを算出し、当該パラメータに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数を補正するようになされる。
図4は、DC電源パラメータ補正手段68の内部構成例を示すブロック図である。この実施例では、電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)の補正動作は、当該複写機101の工程出荷時、設置時又はユーザ使用中に実行される。
図4に示すDC電源パラメータ補正手段68は、A/D変換部801、一次側電流算出部802、二次側電流算出部803及びパラメータ算出部804を有して構成される。A/D変換部801は、上述した一次側電流検出手段65に接続され、一次側電流検出信号SiをA/D変換して一次側電流検知データDiを出力する。A/D変換部801には一次側電流算出部802が接続され、一次側電流検知データDiから一次側電流Iinを演算する。
一方、A/D変換部84A,84Bからの電流検知データD1,D2は、二次側電流算出部803に入力される。二次側電流算出部803では、電流検知データD1,D2に基づいて二次側電流Ioutを演算する。一次側電流算出部802及び二次側電流算出部803には、パラメータ算出部804が接続され、一次側電流Iin及び二次側電流IoutからDC電源パラメータとして、例えば、直流電源33の効率ηを演算する。効率はη=出力/入力である。入力は一次側電流Iinに比例し、出力は二次側電流Ioutに比例する。
パラメータ算出部804は、効率η=α・Iout/Iin(η<1)を演算して効率値を決定する。αは定数であり、例えば、α=Vout(t)/Vin(t)である。ここに決定された効率値は、伝達関数補正信号Sηとして一次側電流算出手段39に出力される。一次側電流算出手段39では、伝達関数補正信号Sηに基づいてDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。
図5A及びBは、直流電源33と、そのDC電源伝達関数との関係例を示す構成図である。
図5Aに示す直流電源33は、整流回路901、電解コンデンサ902、チョッピング回路903、トランス904、整流ダイオード905及び906を有して構成される。整流回路901は、交流電流計12を介して交流電源1に接続され、一次側の電圧Vinを整流して直流電圧を発生する。交流電流計12は、一次側の電流Iin(実効値)を測定するようになされる。整流回路901には電解コンデンサ902が接続され、整流出力(脈流)を平滑して、例えば、DC120Vの電圧を出力するようになされる。整流回路901及び電解コンデンサ902には、チョッピング回路903が接続され、所定の周波数でDC120Vの電圧をチョッピングにして、所望の周波数のAC120の交流電圧を出力するようになされる。
チョッピング回路903には、例えば、巻数比が5:1のトランス904が接続される。トランス904は、その一次側に印加されたAC120の交流電圧をAC24Vの交流電圧に降圧する。トランス904の二次側には、例えば、全波整流用のダイオード905及び906が接続される。トランス904の二次側から中性線が引き出され、その中性線は接地される。ダイオード905及び906は、AC24Vの交流電圧を全波整流してDC24Vの直流電圧を、例えば、直流電流計13を通じてモータ35,36等の負荷に供給するようになされる。直流電流計13は、二次側の電流Ioutを測定するようになされる。
ここで、直流電源33の二次側の電流変動が一次側に波及する状態を考察する。例えば、二次側の電流がある一定負荷に供給されている場合に、負荷電流が時間と共に増加した場合、その変動が一次側に波及するまでの間には、ダイオード905及び906に流れる電流が増加し、この電流増に伴ってトランス905に誘起されるAC電圧が降下し、この電圧降下は、トランス905の一次側に波及する。トランス905の一次側のAC電圧の降下は、チョッピング回路903に伝搬する。通常、チョッピング回路903には、フィードバック回路が組み込まれることから、AC電圧の降下分を上昇するように補正機能が働く。
チョッピング回路903で、補正機能が働くと、整流回路901から出力される出力電流が増加し、電解コンデンサ902の端子電圧が降下する。従って、整流回路901へ流入する一次電流が増加する。通常、二次側の電流が増加してから、一次側の電流が増加するまで、負荷及び電源容量にもよるが、約10ms程度の伝搬時間を要することが知られている。この例では、直流電源33の二次側(負荷側)を変動入力側とし、その一次側(交流電源側)をその変動出力側と見立てたとき、DC電源伝達関数=出力/入力を定義することができる。
図5Bは、DC電源伝達関数f(t)を取り扱うブロック図である。図5Bにおいて、交流電源1から直流電源33に流入する一次側電流をIin(t)とし、整流回路901、電解コンデンサ902、チョッピング回路903、トランス904、整流ダイオード905及び906を直流電源33とし、そのDC電源伝達関数をf(t)とし、この直流電源33から負荷回路35,36等へ流出する二次側の電流をIout(t)としたとき、一次側電流Iin(t)と二次側の電流Iout(t)との間には、(1)式、すなわち、
Iin(t)=f{Iout(t)} ・・・・(1)
によって与えられる。この二次側の電流Iout(t)の変動に伴う一次側電流Iin(t)は、時間領域でも演算は可能であるが、高次かつ演算が複雑となるので、この例では、乗算処理で取り扱える領域に一度変換するようになされる。ここで、(1)式を時間領域からラプラス領域等のZ領域(周波数領域でも可)に変換すると、(1)式は、(2)式、すなわち、
Iin(Z)=f(Z)・Iout(Z) ・・・・(2)
によって与えられる。
DC電源伝達関数f(t)は、出力/入力で定義され、この例では、直流電源33の二次側(負荷側)を変動入力側とし、その一次側(交流電源側)をその変動出力側と見立ているので、(2)式からDC電源伝達関数f(Z)を算出すると、(3)式、すなわち、
f(Z)=Iin(Z)/Iout(Z) ・・・・(3)
によって与えられる。(3)式のDC電源伝達関数f(Z)は、伝達関数乗算器59のプログラム内に保持するようになされる。このプログラムは二次側電流Iout(t)に基づいて一次側電流Iinを算出する際に使用する。
図6A及びBは、DC電源伝達関数f(t)の機能例を示す波形図である。図6Aに示す二次側の電流Iout(t)によれば、直流電源33から負荷回路35,36等に一定電流を供給している状態から時刻t1で電流Iout(t)が増加に転じ、時間経過と共に電流Iout(t)が増加し、時刻t3で電流Iout(t)がピーク値に到達している。このピーク値を供給した時刻t3で電流Iout(t)が減少に転じ、時間経過と共に電流Iout(t)が減少し、時刻t5で元の一定電流Iout(t)となった場合である。
図6Bは、一次側電流Iin(t)の波形である。DC電源伝達関数f(t)との関係では、一次側電流Iin(t)=f{Iout(t)}で示される。この例では、図6Aに示したような二次側の電流Iout(t)が増減を伴う場合、一次側電流Iin(t)は、図6Bのように示される。図6Aに示した電流Iout(t)が増加に転じた時刻t1から、ディレイ時間DL1’だけ遅れた時刻t2で、一旦電流が減少に転じ、その後、増加に転じた時刻t4で元の値を越えて増加を継続するようになされる。つまり、時刻t2と時刻t4との間は、振動期間Tξ1が設定されている。この振動期間Tξ1は、トランス905のインダクタンスや、チョッピング回路903に接続された電解コンデンサ902の遅れ要素が介入しているためである。
また、二次側の電流Iout(t)がピーク値に到達した時刻t3から、ディレイ時間DL2’だけ遅れた時刻t5で、一次側電流Iin(t)がピーク値に到達し、その後、減少に転じる。時刻t6で元の値を越えても減少を継続し、その後、増加に転じ、二次側の電流Iout(t)が元の値に復帰した時刻t5から、ディレイ時間DL3’だけ遅れた時刻t7で元の値に復帰するようになされる。この例でも、時刻t6と時刻t7との間は、振動期間Tξ2が設定されている。この振動期間Tξ2は、トランス905のインダクタンスや、チョッピング回路903に接続された電解コンデンサ902の遅れ要素が介入しているためである。このように、DC電源伝達関数f(t)は、ディレイ時間DL1’,DL2’,DL3’と、振動期間Tξ1,Tξ2を設定した関数で与えられるものである。
これらのインダクタンス等の振動要素、静電容量等の遅延要素、増加関数を具現化する増幅器及び減衰関数を具現化する減衰器を組み合わせて直流電源33をモデル化し、モデル化したDC電源回路で伝達関数を求めるようにしてもよい。
次に、使用電流Iの制限値、例えば、国内仕様でI=15Aを直流電源33の一次側電流Iin(t)で制御する場合であって、DC電源伝達関数f(t)から求めた一次側電流Iinの瞬時値(i・sinωt)で制限値=15Aを制御する場合について説明をする。図7は、直流電源33の一次側電圧Vinをサンプリングする回路例を示す構成図である。
図7に示すサンプリング回路9は、所定の周波数、例えば、16MHzのクロック信号CLKに基づいて直流電源33の一次側電圧Vinをサンプリングするようになされる。ここにサンプリングされた一次側電圧Vinは、DC電源伝達関数f(t)内のパラメータとして使用され、一次側電圧Vinに基づいて一次側電流Iin(t)の瞬時値を算出するようになされる。
図8A及びBは、一次側電圧Vinのサンプリング例を示す波形図である。図8A及びBにおいて、横軸はいずれも時間tである。図8Aにおいて、縦軸はクロック信号のCLKのパルス振幅であり、図8Aにおいて、縦軸は一次側電圧Vinの振幅である。
図8Aに示すクロック信号CLKは、図7に示したサンプリング回路9に供給される。図8Bに示す一次側電圧Vinは、正弦波(Vin=v・sinωt)で示される。電圧波形中の黒印のドットは、クロック信号CLKによるサンプリングポイントである。この例では、一次側電圧Vinのサンプリングポイントにおける瞬時値に基づいて、直流電源33の一次側に換算された一次側電流Iin(t)の瞬時値を求めるようになされる。これにより、使用電流Iの瞬時値と一次側電流Iinの瞬時値の差に基づくベクトル合成により定着電流を制御することができる。
図9A及びBは、直流電源33へ流入する一次側電流Iinの電流波形例を示す図である。図9A及びBにおいて、横軸はいずれも時間tである。図9A及びBにおいて、縦軸は直流電源33の一次側の電流Iinの振幅である。図9Aにおいて、波線に示す波形は、直流電源33の二次側の負荷変動を受けている一次側の電流波形である。実線に示す波形は、一次側電流波形の最大振幅を結んだ包絡線である。この包絡線は、一次側電圧Vinをパラメータとして使用しない場合に、直流電源33に流入する一次側電流波形として使用される。
図9Bに示す実線は、直流電源33の二次側の負荷変動を受けている一次側の電流Iinを一次側電圧Vinのサンプリングに基づいて再現した波形である。この一次側電流波形によれば、一次側電流Iinが瞬時値で示されるので、包絡線に依存した一次側電流波形に比べて、直流電源33に流入する一次側電流波形をリアルタイムに再現することができる。これにより、瞬時値で示された一次側電流Iinに基づいて定着電流をより高精度に制御できるようになる。
図10A〜Dは、電力制御手段38における定着電力の制御例を示す波形図である。図10A〜Dにおいて、横軸は時間tである。縦軸は振幅である。図10Aに示す実線は、直流電源33の二次側の電流Iout(t)又はそれを反映する二次側電流検出信号S1を示す波形である。この例で、モータ35や36等の負荷変動により、二次側電流が増加及び減少するように二次電流波形が変化している。
図10Bに示す実線は、無制御時の演算結果に基づく一次側電流波形である。一次側電流Iin(t)の波形は、二次側電流検出信号S1に基づく二次側電流Iout(t)及びDC電源伝達関数f(t)を利用して求められる。一次側電流波形は、図10Aに示した二次側電流に比べてディレイ期間だけ遅れて波形が立ち上がっている。一次側電流波形は、図中、波線に示す制限値を越えているので、無制御のままでは回路遮断器22が動作してしまう。
図10Cに示す上下の波線は、当該複写機101が使用できる電力量である。この電力量には、定着手段で使用可能な定着電力や、モータ35,36等の負荷電力等を含んでいる。図10Cの斜線に示す部分が、本件制御時の定着電力である。図10Dに示す実線は、一次側電流Iin(t)であり、本発明に係る制御時の波形である。
この例で、図10Aに示した二次側電流検出信号S1に基づく一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が増加して、当該一次側電流Iinが制御値を越える場合は、一次側電流Iinと制御値との差分に基づいて定着電力を変更するようになされる。例えば、一次側電流Iinと制御値との差分に基づく制御を多段階に分けて実行する(昇り多段階制御)。
この昇り多段階制御では、図10Bに示す第1の段階で制御値と、一次側電流波形の振幅との間に差ε1が生じたような場合に、まず、昇り第1段階制御を実行する。昇り第1段階制御では、一次側電流Iinと制御値との差分ε1に基づいて定着電力量を変更する。例えば、制限値一杯で定着手段78に供給している定着電力を低減する。その後、更に二次側電流が増加して、第2の段階で制御値と、一次側電流波形の振幅のピーク値との間に差ε2が生じたような場合に、昇り第2段階制御を実行する。昇り第2段階制御では、一次側電流Iinと制御値との差分ε2に基づいて定着電力量を変更する。例えば、第1段階で変更された定着電力を更に低減する。
その後、一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が減少して、当該一次側電流Iinが制御値に戻るような場合も、一次側電流Iinと制御値との差分に基づく制御を多段階に分けて実行する(下り多段階制御)。この下り多段階制御では、第1の段階で制御値と、一次側電流波形の振幅との間に差ε1が生じたような場合に、まず、下り第1段階制御を実行する。
下り第1段階制御では、一次側電流Iinと制御値との差分ε1に基づいて定着電力量を変更する。例えば、昇り第2段階制御で定着手段78に供給されていた定着電力を増加する。その後、二次側電流が減少して、第2の段階で制御値と、一次側電流波形の振幅との間に差が無くなった場合に、下り第2段階制御を実行する。下り第2段階制御では、一次側電流Iinと制御値との差分「0」に基づいて定着電力量を変更する。例えば、下り第1段階制御で変更された定着手段78に供給されている定着電力を更に増加して、制限値一杯で定着手段78を駆動する。
このように、図10Dの細線で示した本発明の制御時の一次側電流Iin(t)に基づいて使用電流I−Iin(t)のような定着制御することができ、図10Cに示した上下の波線内の使用可能電力量で割り当てられた定着電力を制限値一杯まで定着手段78で使用することが可能となる。
次に、第1の実施例としての定着電力の制御例について説明をする。図11は、複写機101における定着電力の制御例を示すフローチャートである。
この実施例では、電力制御手段38に備えられた一次側電流算出手段39を、定着電力制御時に、伝達関数補正信号Sηに基づいて補正し、補正後の一次側電流算出手段39で、直流電源33の二次側の電流変動がその一次側に波及する以前に、電流検知手段4A,4Bから入力した直流電源33の二次側電流を反映する二次側電流検出信号S1と予め設定されたDC電源伝達関数f(t)の乗算値に基づいて定着電力を制御するようにした。この例で、使用電流Iが15Aの場合について説明をする。
これらを制御条件にして、電力制御手段38は、図11に示すフローチャートのステップA1で一次側の電流Iinを検出する。このとき、一次側電流検出手段65は、一次側電流検出信号Siを検出し、A/D変換部801は、当該信号SiをA/D変換して一次側電流検知データDiを出力する。
これに並行して、ステップA2で電流検知手段4A,4Bは、二次側の電流Iout(t)を検出する。このとき、一次側電流算出手段39では、電流検知手段4A,4Bから出力された二次側電流検出信号S1,S2に基づいて直流電源33の二次側電流Ioutを検出する。二次側電流Ioutを示す電流検出データD1はA/D変換器84AからZ領域変換部49に出力され、電流検出データD2はA/D変換器84BからZ領域変換部49に出力される。
次に、ステップA3で補正手段68は、DC電源パラメータを算出する。このとき、一次側電流算出部802は、一次側電流検知データDiから一次側電流Iinを演算する。二次側電流算出部803は、電流検知データD1,D2に基づいて二次側電流Ioutを演算する。
パラメータ算出部804は、一次側電流算出部802から一次側電流Iinを入力し、二次側電流算出部803から二次側電流Ioutを入力し、効率η=α・Iout/Iin(η<1)を演算して効率値を決定する。ここに決定された効率値は、伝達関数補正信号Sηとして一次側電流算出手段39に出力される。
その後、ステップA4で一次側電流算出手段39は、伝達関数補正信号Sηに基づいてDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。伝達関数補正信号Sηで補正した後のDC電源伝達関数f(t)’=f(t)1/ηは、Z領域に変換されてDC電源伝達関数f(Z)となる。
この動作に並行して、ステップA5でZ領域変換部49は、A/D変換部84A,84Bから出力される電流検知データD1,D2を入力して、時間領域に依存した二次側電流Iout(t)を時間領域に依存しないラプラス領域等のZ領域(又は周波数領域)に変換する。Z変換後の二次側電流Iout(Z)は、伝達関数乗算部59に出力される。
そして、ステップA6で伝達関数乗算部59は、補正後のDC電源伝達関数f(Z)と、Z領域に変換された二次側電流Iout(Z)とを乗算する。DC電源伝達関数f(t)は、一次側電流算出手段39に予め保持された関数式又は参照テーブルから読み出される。乗算後のIin(Z)=Iout(Z)・f(Z)は、時間領域逆変換部69に出力される。
その後、ステップA7で時間領域逆変換部69は、Z領域で乗算されたIin(Z)を時間領域に逆変換する。逆変換後の時間に依存したIin(t)は、電力指令値決定部290に出力される。
次に、ステップA8で電力指令値決定部290は、時間領域逆変換部69から出力される一次側電流Iin(t)に基づいて定着手段78に対する電力指令値を決定するようになされる。この例で電力指令値決定部290は、供給可能定着電力=15A−Iin(t)を算出する。
そして、ステップA9で電力指令値決定部290は、供給可能定着電力=15A−Iin(t)から定着手段78に対する電力指令値を決定する。電力指令値の決定は、二次側電流が激しく変動した場合であっても、一次側電流Iinの制限値を越える事態を回避するためである。例えば、全体制御部15から電力指令値PC1を入力し、時間領域逆変換部69から電力指令値PC1=一次側電流Iin(t)とを比較する。
電力指令値決定部290は、上述の比較結果で、電力指令値PC1,PC2のいずれか小さい方を選択する。例えば、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも小さい場合は、電力指令値PC1が選択される。また、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも大きい場合は、電力指令値PC2が選択される。
選択された電力指令値PC1又はPC2のいずれかに基づいて定着手段78の電力供給制御をするべく、ステップA10に移行して、電力指令値決定部290は、電力指令値を定着手段78に設定する。このとき、電力指令値決定部290は、新たに決定された、第1又は第2の電力指令値PC1,PC2のいずれかに基づく第3の電力指令値PC3=PC1又はPC3=PC2を定着手段78に設定して、定着電力の供給制御を実行する。
この例で、二次側電流検出信号S1に基づく一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が増加して、当該一次側電流Iinが制御値を越える場合は、昇り多段階制御が実行される。また、一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が減少して、当該一次側電流Iinが制御値に戻るような場合、下り多段階制御が実行される(図10A〜D参照)。
このように、第1の実施例としての複写機101によれば、DC電源パラメータ補正手段68が備えられ、定着電力制御時に、一次側電流検出手段65から出力される一次側電流検出信号Siと、電流検知手段4A,4Bから出力される二次側電流検出信号S1,S2とに基づいてDC電源パラメータを算出し、当該パラメータに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)を補正するようになる。電力制御手段38は、電流検知手段4A,4Bから出力される二次側電流検出信号S1,S2に基づく二次側電流Iout(t)に、パラメータ補正後のDC電源伝達関数f(t)を演算して一次側電流Iin(t)を算出し、算出後の一次側電流Iin(t)に基づいて定着手段78への供給可能な電力を制御する。
従って、定着電力制御時に、DC電源伝達関数f(t)の誤差を補正できるので、誤差補正がなされたDC電源伝達関数f(t)により一次側電流Iin(t)を高い精度で算出できるようになる。これにより、各々の複写機101の直流電源33の効率差を補正できるようになり、直流電源33の損失のバラつきを考慮した一次側電流Iin(t)で、より高精度に、交流電源1から使用電流の制限内で極力多くの電力を定着手段78に供給できるようになる。
図12は、第2の実施例としての複写機102の直流電源のパラメータ取得例を示すブロック図である。
この実施例では、DC電源パラメータηxとなるデータDηを各動作モード毎に記憶するメモリ部83を備え、当該複写機102の工程出荷時又は設置時に、DC電源パラメータηxをメモリ部83へ書き込むようになされる。
図12に示す複写機102は画像形成装置の一例を構成し、第1の実施例に比べて一次側電流検出手段65が省略され、その代わりにDC電源パラメータ補正手段68’にメモリ部83が接続され、各動作モード毎にメモリ部83からDC電源パラメータηxとなるデータDηを読み出し、このデータDηに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。
メモリ部83には、各動作モード毎に、直流電源33の一次側の電流Iを測定して得た一次側電流Iinと、当該直流電源33の二次側の電流Idを測定して得た二次側電流Ioutとに基づいて算出されたDC電源パラメータηxとなるデータDηが格納される。メモリ部83には、例えば、EEPROMなど不揮発メモリが使用される。メモリ部83へのDC電源パラメータηxとなるデータDηの書き込みは、当該複写機102の工程出荷時又は設置時に実行される。
例えば、工程出荷時に、当該複写機102の直流電源33の一次側に一次側電流測定器201を接続し、各動作モード毎に、直流電源33の一次側の電流Iを測定する。一次側電流測定器201には一次側電流値データ抽出部(以下データ抽出部という)202を接続し、この一次側電流測定器201から出力される一次側電流測定値をデータ抽出部202に取り込む。データ抽出部202には、データベース203が接続された大型計算機が使用される。
データ抽出部202には、一次側電流測定器201の他に、当該複写機102の電力制御手段38が接続され、上述の動作モード毎に電流検知手段4A,4Bから出力される二次側電流検出信号S1,S2をアナログ・デジタル変換した後の電流検知データD1,D2が入力される。
データ抽出部202は、各動作モード毎に抽出した、一次側電流検知データDiと電流検知データD1,D2とに基づいてDC電源パラメータηxを算出する。DC電源パラメータηxは、機種毎かつ動作モード毎に算出され、算出後のDC電源パラメータηxのデータDηをデータベース203に格納するようになされる。
また、DC電源パラメータηxのデータDηのメモリ部83への書き込みは、操作部14’又はパーソナルコンピュータ(PC:以下パソコンという)204を使用したネットワーク経由で実行される。例えば、工程出荷時、当該複写機102の補正手段68に操作部14’を介してデータ抽出部202に接続する。操作部14を操作して、当該複写機102の各動作モード毎に取得したDC電源パラメータηxをデータベース203から読み出し、ここで読み出されたDC電源パラメータηxを操作部14’及び補正手段68を介してメモリ部83に格納する。もちろん、これに限られることはない。
例えば、機器の設置時に、当該複写機102の通信機能を利用して、パソコン204を通じてデータ抽出部202と接続すると共に、ネットワーク経由で複写機102の補正手段68とを接続する。パソコン204を操作して、当該複写機102の各動作モード毎に取得したDC電源パラメータηxをデータベース203から読み出し、ここで読み出されたDC電源パラメータηxをパソコン204及び補正手段68を介してメモリ部83に格納する。このようにすると、DC電源パラメータηxを一元管理することができる。なお、第1の実施例と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、その説明を省略する。
図13は、メモリ部83へのDC電源パラメータηxの格納例(ηx)を示す表図である。図13に示すDC電源パラメータηxは、データDηをメモリ部83へ格納することで実行される。
複写機102の動作モードとしては、片面複写モード、両面複写モード、白黒複写モード(カラー機の場合はカラー複写モード)、紙種別複写モード、用紙サイズ別複写モード・・・等が挙げられ、これらをAモード、Bモード、Cモード・・・Zモードとすると、Aモードに対してDC電源パラメータηaが記述され、Bモードに対してDC電源パラメータηbが記述され、Cモードに対してDC電源パラメータηbが記述され、・・・Zモードに対してDC電源パラメータηzが記述される。これらのDC電源パラメータηa,ηb,ηc・・・ηzはデータDηとなってメモリ部83へ格納される。
DC電源パラメータηxは、ユーザが動作モードを設定すると、制御系はこの動作モードをトリガにしてメモリ部83からDC電源パラメータηxに係るデータDηを読み出すようになされる。これらの動作モードは画像形成前に、例えば、操作手段14を介して設定される。操作手段14は、全体制御部15に動作モードを示す操作データD31を出力する。全体制御部15は操作データD31に基づいて動作モードを判別し、当該動作モードを補正手段68’に設定する。これにより、補正手段68’では、例えば、B動作モードに基づくデータDηをメモリ部83から読み出すので、DC電源パラメータηbを一次電流算出手段39に設定できるようになる。
図14は、複写機102における定着電力の制御例を示すフローチャートである。
この実施例では、DC電源パラメータηxとなるデータDηを各動作モード毎に記憶するメモリ部83を備え、当該複写機102の工程出荷時又は設置時に、DC電源パラメータηxをメモリ部83へ書き込むようになされる。
そして、当該複写機器使用時に、各動作モード毎にメモリ部83からDC電源パラメータηxとなるデータDηを読み出し、このデータDηに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。
もちろん、定着電力制御時に、一次側電流算出手段39で、直流電源33の二次側の電流変動がその一次側に波及する以前に、電流検知手段4A,4Bから入力した直流電源33の二次側電流を反映する二次側電流検出信号S1と、補正後のDC電源伝達関数f(t)の乗算値に基づいて定着電力を制御するようにする。この例でも、使用電流Iが15Aの場合について説明をする。
これらを制御条件にして、まず、ユーザが操作手段14を使用して動作モードを設定すると、補正手段68’は、図14に示すフローチャートのステップB1で動作モードを検出する。例えば、操作手段14から全体制御部15へ動作モードを示す操作データD31が出力される。全体制御部15は操作データD31に基づいて動作モードを判別し、例えば、B動作モードを検出して補正手段68’に設定する。
ステップB2で補正手段68は、動作モードに対応したDC電源パラメータηxを読み出す。この例では、メモリ部83には、予め、DC電源パラメータηxが各動作モード毎に記憶されている。ここで補正手段68’では、先に設定されたB動作モードに基づくデータDηをメモリ部83から読み出す。ここに読み出されたB動作モードのDC電源パラメータ(効率値)ηbは、伝達関数補正信号Sηとして一次側電流算出手段39に出力される。これにより、DC電源パラメータηbを一次電流算出手段39に設定できるようになる。
その後、ステップB3で一次側電流算出手段39は、伝達関数補正信号Sηに基づいてDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。伝達関数補正信号Sηで補正した後のDC電源伝達関数f(t)’=f(t)・1/ηは、Z領域に変換されてDC電源伝達関数f(Z)となる。
また、上述のステップB1〜ステップB3の処理に並行して、ステップB4で電流検知手段4A,4Bは、二次側の電流Iout(t)を検出する。このとき、一次側電流算出手段39では、電流検知手段4A,4Bから出力された二次側電流検出信号S1,S2に基づいて直流電源33の二次側電流Ioutを検出する。二次側電流Ioutを示す電流検出データD1はA/D変換器84AからZ領域変換部49に出力され、電流検出データD2はA/D変換器84BからZ領域変換部49に出力される。
次に、ステップB5でZ領域変換部49は、A/D変換部84A,84Bから出力される電流検知データD1,D2を入力して、時間領域に依存した二次側電流Iout(t)を時間領域に依存しないラプラス領域等のZ領域(又は周波数領域)に変換する。Z変換後の二次側電流Iout(Z)は、伝達関数乗算部59に出力される。
その後の処理は、第1の実施例と同様にして、ステップB6で伝達関数乗算部59は、補正後のDC電源伝達関数f(Z)と、Z領域に変換された二次側電流Iout(Z)とを乗算する。DC電源伝達関数f(t)は、一次側電流算出手段39に予め保持された関数式又は参照テーブルから読み出される。乗算後のIin(Z)=Iout(Z)・f(Z)は、時間領域逆変換部69に出力される。
そして、ステップB7で時間領域逆変換部69は、Z領域で乗算されたIin(Z)を時間領域に逆変換する。逆変換後の時間に依存したIin(t)は、電力指令値決定部290に出力される。
次に、ステップB8で電力指令値決定部290は、時間領域逆変換部69から出力される一次側電流Iin(t)に基づいて定着手段78に対する電力指令値を決定するようになされる。この例で電力指令値決定部290は、供給可能定着電力=15A−Iin(t)を算出する。
そして、ステップB9で電力指令値決定部290は、供給可能定着電力=15A−Iin(t)から定着手段78に対する電力指令値を決定する。電力指令値の決定は、二次側電流が激しく変動した場合であっても、一次側電流Iinの制限値を越える事態を回避するためである。例えば、全体制御部15から電力指令値PC1を入力し、時間領域逆変換部69から電力指令値PC1=一次側電流Iin(t)とを比較する。
電力指令値決定部290は、上述の比較結果で、電力指令値PC1,PC2のいずれか小さい方を選択する。例えば、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも小さい場合は、電力指令値PC1が選択される。また、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも大きい場合は、電力指令値PC2が選択される。
選択された第1又は第2の電力指令値PC1又はPC2のいずれかに基づいて定着手段78の電力供給制御をするべく、ステップB10に移行して、電力指令値決定部290は、電力指令値を定着手段78に設定する。このとき、電力指令値決定部290は、新たに決定された、電力指令値PC1,PC2のいずれかに基づく第3の電力指令値PC3=PC1又はPC3=PC2を定着手段78に設定して、定着電力の供給制御を実行する。
この例で、二次側電流検出信号S1に基づく一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が増加して、当該一次側電流Iinが制御値を越える場合は、昇り多段階制御が実行される。また、一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が減少して、当該一次側電流Iinが制御値に戻るような場合、下り多段階制御が実行される(図10A〜D参照)。
このように、第2の実施例としての複写機102によれば、当該複写機102を交流電源1に接続して使用する場合であって、DC電源パラメータηxとなるデータDηを各動作モード毎に記憶するメモリ部83を備え、当該複写機102の工程出荷時又は設置時に、DC電源パラメータηxをメモリ部83へ書き込むようになされる。そして、当該複写機器使用時に、各動作モード毎にメモリ部83からDC電源パラメータηxとなるデータDηを読み出し、このデータDηに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。
従って、各動作モード毎に、DC電源伝達関数の誤差を補正できるので、誤差補正がなされたDC電源伝達関数f(t)により一次側電流Iinを高い精度で算出できるようになる。これにより、各々の複写機102の直流電源33の効率差を補正できるようになり、各動作モード毎に、直流電源33の損失のバラつきを考慮した一次側電流Iinで、より高精度に、交流電源1から使用電流Iの制限内で極力多くの電力を定着手段78に供給できるようになる。
図15は、第3の実施例としての複写機103におけるパラメータ格納例(Ix)を示す表図である。
図15に示すパラメータは、各動作モード毎に、一次電流測定値Ixが格納されるものである。一次電流測定値Ixは、補正手段68’でDC電源パラメータηxを演算するためのデータDiによって与えられる。例えば、Aモードに対して一次側電流値Ix=Iaが記述され、Bモードに対して一次側電流値Ix=Ibが記述され、Cモードに対して一次側電流値Ix=Icが記述され、・・・・Zモードに対して一次側電流値Ix=Izが記述される。これらの一次側電流値Ix=Ia,Ib,Ic・・・・IzはデータDiとなってメモリ部83へ格納される。なお、メモリ部83への一次電流測定値IxとなるデータDiの書き込みは、当該複写機102の工程出荷時又は設置時に実行される。
例えば、図12に示したデータ抽出部202では、各動作モード毎に抽出した、一次側電流検知データDiをデータベース203に格納する。データ抽出部202では、読み出し指示に従って、機種別に各動作モード毎の一次側電流検知データDiを補正手段68’のメモリ部83に格納するようになされる。このようにすると、一次側電流検知データDiを一元管理することができる(図12参照)。
一次側電流値Ixは、ユーザが動作モードを設定すると、制御系はこの動作モードをトリガにしてメモリ部83から一次側電流値Ixに係るデータDiを読み出すようになされる。これらの動作モードは画像形成前に、例えば、操作手段14を介して設定される。操作手段14は、全体制御部15に動作モードを示す操作データD31を出力する。
全体制御部15は操作データD31に基づいて動作モードを判別し、当該動作モードを補正手段68’に設定する。これにより、補正手段68’では、例えば、B動作モードに基づくデータDbをメモリ部83から読み出すので、一次側電流値Ix=Ibを補正手段68’の一次側電流算出部802に設定できるようになる。一次側電流算出部802は、一次側電流検知データDiから一次側電流Iinを演算する。パラメータ算出部804は、効率η=Iout/Iin(η<1)を演算して効率値を決定する。ここに決定された効率値を伝達関数補正信号Sηとして一次側電流算出手段39に出力することができる。
図16は、複写機103における定着電力の制御例を示すフローチャートである。
この実施例では、一次電流値IxとなるデータDiを各動作モード毎に記憶するメモリ部83を備え、当該複写機102の工程出荷時又は設置時に、一次電流値Ixをメモリ部83へ書き込むようになされる。そして、当該複写機器使用時に、各動作モード毎にメモリ部83から一次電流値IxとなるデータDiを読み出し、このデータDiに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。
もちろん、定着電力制御時に、一次側電流算出手段39で、直流電源33の二次側の電流変動がその一次側に波及する以前に、電流検知手段4A,4Bから入力した直流電源33の二次側電流を反映する二次側電流検出信号S1と、補正後のDC電源伝達関数f(t)の乗算値に基づいて定着電力を制御する。この例でも、使用電流Iは15Aの場合について説明をする。
これらを制御条件にして、まず、ユーザが操作手段14を使用して動作モードを設定すると、補正手段68’は、図16に示すフローチャートのステップC1で動作モードを検出する。例えば、操作手段14から全体制御部15へ動作モードを示す操作データD31が出力される。全体制御部15は操作データD31に基づいて動作モードを判別し、例えば、A動作モードを検出して補正手段68’に設定する。
ステップC2で補正手段68は、動作モードに対応した一次電流値Ixを読み出す。この例では、メモリ部83には、予め、一次電流値Ixが各動作モード毎に記憶されている。ここで補正手段68’では、先に設定されたA動作モードに基づくデータDiをメモリ部83から読み出す。ここに読み出されたA動作モードの一次電流値Ix=Iaを一次側電流算出部802に出力する。
次に、ステップC3で補正手段68’は、DC電源パラメータを算出する。このとき、一次側電流算出部802は、一次電流値IxとなるデータDiから一次側電流Iinを演算する。二次側電流算出部803は、電流検知データD1,D2に基づいて二次側電流Ioutを演算する。パラメータ算出部804は、一次側電流算出部802から一次側電流Iinを入力し、二次側電流算出部803から二次側電流Ioutを入力し、効率η=α・Iout/Iin(η<1)を演算して効率値を決定する。ここに決定された効率値は、伝達関数補正信号Sηとして一次側電流算出手段39に出力される。
その後、ステップC4で一次側電流算出手段39は、伝達関数補正信号Sηに基づいてDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。伝達関数補正信号Sηで補正した後のDC電源伝達関数f(t)’=f(t)・1/ηは、Z領域に変換されてDC電源伝達関数f(Z)となる。
また、上述のステップC1〜ステップC4の処理に並行して、ステップC5で、電流検知手段4A,4Bは、二次側の電流Iout(t)を検出する。このとき、一次側電流算出手段39では、電流検知手段4A,4Bから出力された二次側電流検出信号S1,S2に基づいて直流電源33の二次側電流Ioutを検出する。二次側電流Ioutを示す電流検出データD1はA/D変換器84AからZ領域変換部49に出力され、電流検出データD2はA/D変換器84BからZ領域変換部49に出力される。
次に、ステップC6でZ領域変換部49は、A/D変換部84A,84Bから出力される電流検知データD1,D2を入力して、時間領域に依存した二次側電流Iout(t)を時間領域に依存しないラプラス領域等のZ領域(又は周波数領域)に変換する。Z変換後の二次側電流Iout(Z)は、伝達関数乗算部59に出力される。
その後の処理は、第1及び第2の実施例と同様にして、ステップC7で伝達関数乗算部59は、補正後のDC電源伝達関数f(Z)と、Z領域に変換された二次側電流Iout(Z)とを乗算する。DC電源伝達関数f(t)は、一次側電流算出手段39に予め保持された関数式又は参照テーブルから読み出される。乗算後のIin(Z)=Iout(Z)・f(Z)は、時間領域逆変換部69に出力される。
そして、ステップC8で時間領域逆変換部69は、Z領域で乗算されたIin(Z)を時間領域に逆変換する。逆変換後の時間に依存したIin(t)は、電力指令値決定部290に出力される。次に、ステップC9で電力指令値決定部290は、時間領域逆変換部69から出力される一次側電流Iin(t)に基づいて定着手段78に対する電力指令値を決定するようになされる。この例で電力指令値決定部290は、供給可能定着電力=15A−Iin(t)を算出する。
そして、ステップC10で電力指令値決定部290は、供給可能定着電力=15A−Iin(t)から定着手段78に対する電力指令値を決定する。電力指令値の決定は、二次側電流が激しく変動した場合であっても、一次側電流Iinの制限値を越える事態を回避するためである。例えば、全体制御部15から電力指令値PC1を入力し、時間領域逆変換部69から電力指令値PC1=一次側電流Iin(t)とを比較する。
電力指令値決定部290は、上述の比較結果で、電力指令値PC1,PC2のいずれか小さい方を選択する。例えば、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも小さい場合は、電力指令値PC1が選択される。また、電力指令値PC1が、電力指令値PC2よりも大きい場合は、電力指令値PC2が選択される。
選択された電力指令値PC1又はPC2のいずれかに基づいて定着手段78の電力供給制御をするべく、ステップC11に移行して、電力指令値決定部290は、電力指令値を定着手段78に設定する。このとき、電力指令値決定部290は、新たに決定された、電力指令値PC1,PC2のいずれかに基づく第3の電力指令値PC3=PC1又はPC3=PC2を定着手段78に設定して、定着電力の供給制御を実行する。
この例で、二次側電流検出信号S1に基づく一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が増加して、当該一次側電流Iinが制御値を越える場合は、昇り多段階制御が実行される。また、一次側電流Iinの演算結果から、二次側電流が減少して、当該一次側電流Iinが制御値に戻るような場合、下り多段階制御が実行される(図10A〜D参照)。
このように、第3の実施例としての複写機103によれば、当該複写機103を交流電源1に接続して使用する場合であって、一次電流値IxとなるデータDiを各動作モード毎に記憶するメモリ部83を備え、当該複写機103の工程出荷時又は設置時に、一次電流値Ixをメモリ部83へ書き込むようになされる。そして、当該複写機器使用時に、各動作モード毎にメモリ部83から一次電流値IxとなるデータDiを読み出し、このデータDiに基づいて電力制御手段38のDC電源伝達関数f(t)を補正するようになされる。
従って、各動作モード毎に、DC電源伝達関数の誤差を補正できるので、誤差補正がなされたDC電源伝達関数f(t)により一次側電流Iinを高い精度で算出できるようになる。これにより、各々の複写機103の直流電源33の効率差を補正できるようになり、各動作モード毎に、直流電源33の損のバラつきを考慮した一次側電流Iinで、より高精度に、交流電源1から使用電流Iの制限内で極力多くの電力を定着手段78に供給できるようになる。
図17A及びBは、効率ηによる直流電源33のDC電源伝達関数f(t)の補正例を示すブロック図である。
この補正例では、ある機種の複写機の直流電源33の効率ηを基準にしたとき、効率ηが±αのように変動する場合に、DC電源伝達関数f(t)を効率ηの逆数(DC電源パラメータ)により補正するようになされる。
例えば、直流電源33の一次側入力電圧(交流入力電圧:実効値)をVin(t)とし、その二次側出力電圧(直流出力電圧)をVout(t)とし、その一次側電流をIin(t)とし、その二次側電流Iout(t)とし、その一次側入力をPin(t)とし、その二次側出力(直流出力)をPout(t)としたとき、例えば、効率η=85%±2%と変動する場合に、次のようにDC電源伝達関数f(t)が補正される。ここで、一次側入力電圧Vin(t)=100[V]とし、二次側出力電圧Vout(t)=24[V]としたとき、DC電源伝達関数f(t)=Vout/Vin(t)=24/100=0.24である。
[効率η=85%時]
この例で、二次側電流Iout(t)=15A時、二次側出力Pout(t)=360[W]で、基準効率がη=85%時、一次側入力Pin(t)は423[W]となる。一方、DC電源伝達関数f(t)=0.24は1/0.85で補正されるので、補正後のDC電源伝達関数f(t)’は0.24・1/0.85=0.282となる。この補正後のDC電源伝達関数f(t)’を利用して、一次側電流Iin(t)、すなわち、
Iin(t)=f(t)’・Iout(t)
=0.282×15
=4.23[A]
を演算することができる。
[効率η=83%時]
図17Aに示す例によれば、上述の条件で基準効率η=85%に対して効率2%だけ低下したとき、一次側入力Pin(t)は433[W]となる。一方、DC電源伝達関数f(t)=0.24は1/0.83で補正されるので、補正後のDC電源伝達関数f(t)’は0.24・1/0.83=0.2888となる。この補正後のDC電源伝達関数f(t)’を利用して、一次側電流Iin(t)、すなわち、
Iin(t)=f(t)’・Iout(t)
=0.2888×15
=4.33[A]
を演算することができる。
[効率η=87%時]
図17Bに示す例によれば、上述の条件で基準効率η=85%に対して効率2%だけ上昇したとき、一次側入力Pin(t)は413[W]となる。効率η=83%の場合に比べて20Wの差が発生している。一方、DC電源伝達関数f(t)=0.24は1/0.87で補正されるので、補正後のDC電源伝達関数f(t)’は0.24・1/0.87=0.2753となる。この補正後のDC電源伝達関数f(t)’を利用して、一次側電流Iin(t)、すなわち、
Iin(t)=f(t)’・Iout(t)
=0.2753×15
=4.13[A]
を演算することができる。
このように、直流電源33のDC電源伝達関数f(t)に関して効率ηを固定して取り扱うよりも、本発明のDC電源パラメータ補正手段を利用して、効率ηの変動幅に応じて、DC電源伝達関数f(t)を補正する。これにより、一層正確な一次側電流Iin(t)を演算することができ、各々の複写機103のDC電源33の効率差を補正できるようになり、直流電源33の損失のバラつきを考慮した一次側電流Iin(t)で、より高精度に、交流電源1から使用電流の制限内で極力多くの電力を定着手段78に供給できるようになる。
図18A及びBは、二次側電流Iout(t)=15A時のDC電源伝達関数f(t)より導かれる損失比較例を示すブロック図である。
図18Aに示す損失例によれば、直流電源33の二次側電流Iout(t)=15A時、その二次側出力Pout(t)=360[W]で、その効率η=73%を固定した例で、一次側入力Pin(t)は493[W]となる。一方、DC電源伝達関数f(t)=0.24は1/0.73で補正されるので、補正後のDC電源伝達関数f(t)’は0.24・1/0.73=0.3287となる。この補正後のDC電源伝達関数f(t)’を利用して、一次側電流Iin(t)、すなわち、
Iin(t)=f(t)’・Iout(t)
=0.3287×15
=4.93[A]
が演算される。
これに対して、図18Bの例に示すように、本発明のDC電源パラメータ補正手段68を利用して、効率ηの変動幅に応じて、DC電源伝達関数f(t)を補正する。すなわち、直流電源33の効率をその二次側電流Iout(t)に追従した形態、この例では、Iout(t)=15A時、その二次側出力Pout(t)=360[W]で、そのDC電源伝達関数f(t)を効率η=87%で補正した場合、一次側入力Pin(t)は413[W]となる。効率η=73%の場合に比べて80Wの差が発生している。一方、DC電源伝達関数f(t)=0.24は1/0.87で補正されるので、補正後のDC電源伝達関数f(t)’は0.24・1/0.87=0.2753となる。この補正後のDC電源伝達関数f(t)’を利用して、一次側電流Iin(t)、すなわち、
Iin(t)=f(t)’・Iout(t)
=0.2753×15
=4.13[A]
を演算することができる。上述のように、本発明のDC電源パラメータ補正を行うことで、最大80Wの損失が低減できるようになる。
上述した第1〜第3の実施例では、画像形成装置に関して、白黒用の複写機101〜103の場合について説明したが、これに限られることはなく、本発明に係る電源供給システム及び画像形成装置は、カラー用のプリンタや、同ファクシミリ装置、同複写機、これらの複合機等に適用した場合も同様な効果が得られる。