JP4581195B2 - 二液型ポリウレタン系塗膜防水材 - Google Patents

二液型ポリウレタン系塗膜防水材 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、常温で硬化し、重金属系の触媒を使用しなくても優れた硬化性を有し、かつ充分な可使時間を保持でき、さらに硬化後の塗膜外観および機械強度に優れた二液型ポリウレタン系塗膜防水材に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタンエラストマーは、その優れた柔軟性により、防水材、床材、シーリング材、弾性舗装材などの幅広い建材用途に用いられている。
【0003】
このポリウレタンエラストマーは、通常、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とする主剤成分と、活性水素化合物からなる硬化剤成分とからなる常温で硬化する二液型組成物である。防水材の用途においてはポリオキシプロピレンポリオールとトリレンジイソシアネートとの反応により得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とする主剤成分と、ポリオキシプロピレンポリオールおよび4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)を主成分とする硬化剤成分からなり、硬化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛(オクチル酸鉛)を使用する二液型が現在でも主流である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の硬化剤に使用されている4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)とポリオキシプロピレンポリオールの組み合わせでは、特にポリオールの方が主剤成分のイソシアネート基との反応性があまり高くないため、常温での反応を完結させるために上記のように2−エチルヘキサン酸鉛などの重金属系の硬化触媒を使用する必要があるが、このような硬化触媒を使用してもその硬化性は必ずしも充分とはいえなかった。また、環境や人体への安全性の点から、重金属系の硬化触媒の使用は好ましいものではなかった。
【0005】
さらに、従来の二液型ポリウレタン系塗膜防水材は、たとえば20℃においては塗布してから約16時間後には歩行可能な程度に硬化するが、さらに硬化速度を速くしたい場合(たとえば5〜10時間で歩行可能にする場合)、充分な可使時間を保持できなくなり、使用しにくくなるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、重金属系の硬化触媒を使用することなく、優れた硬化性を有すると共に充分な可使時間を保持できる二液型ポリウレタン系塗膜防水材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の二液型ポリウレタン系塗膜防水材は、ポリイソシアネート化合物を主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを含む活性水素化合物とからなる硬化剤を混合して常温で反応硬化させる二液型ポリウレタン系塗膜防水材であって、硬化触媒としてイミダゾール化合物と有機酸とからなる塩を用いることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記塩が1,2−ジメチル−イミダゾールと2−エチルヘキサン酸との塩であることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、重金属系の硬化触媒を使用することなく、優れた硬化性を有すると共に充分な可使時間を保持できる二液型ポリウレタン系塗膜防水材を提供できる。この二液型ポリウレタン系塗膜防水材は、重金属系の硬化触媒を使用しないので環境や人体にも安全である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の二液型ポリウレタン系塗膜防水材は、ポリイソシアネート化合物を主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを含む活性水素化合物からなる硬化剤からなり、硬化触媒としてイミダゾール化合物と有機酸とからなる塩が用いられる。
以下、各成分について説明する。
【0011】
1.主剤
主剤に含まれるポリイソシアネート化合物としては、低分子量ポリイソシアネートおよび低分子量ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが好ましい。低分子量ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIという。)、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(クルードMDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートなどの液状MDIが好ましい。また、イソシアネート基末端プレポリマーとしては、ポリオールとトリレンジイソシアネート、MDIなどを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが好ましい。本発明においては、トリレンジイソシアネートとポリオールを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが特に好ましい。
【0012】
イソシアネート基末端プレポリマーの原料となるポリオールとしては、ポリエステルポリオールや、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンオキシエチレンポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールが挙げられる。本発明においては、ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリオキシプロピレンポリオールが特に好ましい。
【0013】
ポリオールの水酸基数は2〜4が好ましい。また、水酸基価は20〜80が好ましく、40〜70が特に好ましい。
【0014】
2.硬化剤
硬化剤は活性水素化合物として芳香族ポリアミンを含む。芳香族ポリアミンとしては、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、ビス(メチルチオ)トルエンジアミンなどが挙げられ、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)が特に好ましい。
【0015】
また、硬化剤は上記芳香族ポリアミンのほかに活性水素化合物としてポリオールを含んでいてもよい。ポリオールとしては、ポリオキシプロピレンポリール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールが好ましい。
【0016】
硬化剤には、上記基本成分の他に充填剤、顔料、安定剤、可塑剤および溶剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。本発明においては、充填剤、可塑剤が特に好ましく用いられる。
【0017】
充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、カーボンなどが挙げられる。本発明においては炭酸カルシウムが特に好ましい。充填剤を用いることにより、適度な揺変性を付与できると共に、硬化性と硬化後の塗膜性能(硬度や強度)を良好にできる。硬化剤における充填剤の配合量は40〜70質量%が好ましく、50〜60質量%がより好ましい。充填剤の添加量を増やすことで硬化性が速くなり、硬度や強度を高くすることができる。しかし、添加量が70質量%超では混練が困難になり、防水材として使用しにくくなり、40質量%未満では硬化性および塗膜の機械強度が不充分になる。
【0018】
顔料としては、酸化クロム、酸化チタンなどの無機顔料およびフタロシアニン顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0019】
可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、塩素化パラフィン、石油系可塑剤などが挙げられる。本発明においては、フタル酸ジオクチルが特に好ましい。可塑剤を用いることにより、上記充填剤をより均一に効率よく混練することができ、硬化塗膜の表面外観を良好にできる。硬化剤における可塑剤の添加量は20質量%以下が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。
【0020】
溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素およびn−ヘプタン、n−デカンなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0021】
安定剤としては、ポリウレタン樹脂に一般的に使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、脱水剤などが挙げられる。
【0022】
3.硬化触媒
硬化触媒としては、イミダゾール化合物と有機酸とからなる塩が用いられる。イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位と2位に置換基を有するものが好ましい。置換基としてはアルキル基、アセチル基、アリール基、アミノ基などが挙げられる。具体的には、1,2−ジメチル−イミダゾール、1−メチル−イミダゾール、1−アセチル−イミダゾール、1−{(3−ジメチルアミノプロピル)}−イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。本発明においては、1,2−ジメチル−イミダゾールが好ましい。
【0023】
また、有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、2−エチルヘキサン酸などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、触媒活性がより高く、可使時間も長い2−エチルヘキサン酸と1,2−ジメチル−イミダゾールとの塩が特に好ましい。
【0025】
硬化触媒の添加量は、主剤および硬化剤の合計量(質量)に対して0.01〜0.5質量%が好ましい。硬化触媒は、常温で液体なので混合が容易であり、予め硬化剤に混合して使用してもよい。
【0026】
本発明の二液型ポリウレタン系塗膜防水材は、上記主剤と上記硬化剤の混合割合が質量比で1/0.5〜3.0で使用することが好ましく、1/1〜2で使用することがより好ましい。硬化剤の混合割合が0.5未満では揺変性が不充分となり、3.0超であると機械強度が低下しやすいため好ましくない。また、その際、主剤中のイソシアネート基と硬化剤中の活性水素基とのモル比{NCO/(NH2+OH)}が1.0〜1.3が好ましい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例(1〜2)、比較例(1〜3)によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、各例においては、表1に示すポリオールを用いた。
【0028】
【表1】
Figure 0004581195
【0029】
また、各例で得られたサンプルは、下記の方法によりその性能を評価し、その結果を表2に示した。
【0030】
<可使時間>
23℃、50%RHの実験室にて、主剤と硬化剤とを混合し、混合開始から100Pa・sの粘度に到達する時間(可使時間)(分)を測定した。可使時間が40分以上であれば夏場においても充分施工できると判断した。
【0031】
<硬化性>
23℃、50%RHの屋外において、スレート板上に各防水材を塗布(塗布量2kg/m2)し、8時間後の状況(タックの有無と歩行可能性)を比較した。
【0032】
<塗膜物性>
JIS−A6021に準じ、塗膜の機械物性を測定した。なお、表中、Tsは引張り強度(単位:N/mm2)、Eは破断時の伸び(単位:%)を示す。
【0033】
実施例1
ポリオールA17質量部と、ポリオールB68質量部に、15質量部のトリレンジイソシアネート(2,4−異性体80質量%)(NCO/OH比=2.03)を反応させ、NCO基含有率3.6質量%のプレポリマーを得、これを主剤とした。
【0034】
4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.30質量部と、ポリオールB21.04質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル5.46質量部、キシレン3質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および硬化触媒として2−エチルヘキサン酸と1,2−ジメチル−イミダゾールとの塩0.2質量部を混合した液を硬化剤とした。
【0035】
そして、主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH2+OH)比=1.13)の配合割合で防水材として使用した。
【0036】
実施例2
実施例1のプレポリマーを主剤として用い、硬化触媒としてオレイン酸と1−メチル−イミダゾールとの塩を0.2質量部用いた以外は実施例1と同様の組成の硬化剤を用いた。
【0037】
そして、主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH2+OH)比=1.13)の配合割合で防水材として使用した。
【0038】
比較例1
ポリオールC24.1質量部に、25.9質量部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(NCO/OH比=3.0)を反応させ、NCO基含有率11.6質量%のプレポリマーを得、これに50質量部のカルボジイミド変性MDIを混合した液を主剤(NCO基含有率20.4質量%)とした。
【0039】
ポリオールC85.2質量部に、フタル酸ジオクチル11.75質量部、2−エチルヘキサン酸と1,2−ジメチル−イミダゾールとの塩0.05質量部、顔料ペースト3質量部、炭酸カルシウム90質量部およびゼオライト10質量部混合した液を硬化剤とした。
【0040】
そして、主剤/硬化剤の質量比=1/4(NCO/OH比=1.0)の配合割合で防水材として使用した。
【0041】
比較例2
実施例1と同じプレポリマーを主剤として用いた。
【0042】
4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.30質量部、ポリオールB21.04質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル4.66質量部、キシレン3質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)1質量部を混合した液を硬化剤とした。
【0043】
そして、主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH2+OH)比=1.13)の配合割合で防水材として使用した。
【0044】
比較例3
実施例1と同じプレポリマーを主剤として用いた。
【0045】
4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.30質量部、ポリオールB21.04質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル2.66質量部、キシレン3質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)3質量部を混合した液を硬化剤とした。
【0046】
そして、主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH2+OH)比=1.13)の配合割合で防水材として使用した。
【0047】
【表2】
Figure 0004581195
【0048】
表2から、芳香族ポリアミンを含む活性水素化合物からなる硬化剤を用い、かつ硬化触媒としてイミダゾール化合物と有機酸との塩を用いた実施例1〜2の防水材は、優れた硬化性を有すると共に充分な可使時間を保持していることが分かる。特に硬化触媒として2−エチルヘキサン酸と1,2−ジメチル−イミダゾールとの塩を用いた実施例1の防水材は、硬化性および硬化塗膜の物性に優れていることが分かる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、重金属系の硬化触媒を使用することなく、優れた硬化性を有すると共に充分な可使時間を保持できる二液型ポリウレタン系塗膜防水材を提供できる。この二液型ポリウレタン系塗膜防水材は、重金属系の硬化触媒を使用しないので環境や人体にも安全である。

Claims (2)

  1. ポリイソシアネート化合物を主成分とする主剤と、芳香族ポリアミンを含む活性水素化合物からなる硬化剤を混合して常温で反応硬化させる二液型ポリウレタン系塗膜防水材であって、硬化触媒としてイミダゾール化合物と有機酸とからなる塩を用いることを特徴とする、二液型ポリウレタン系塗膜防水材。
  2. 前記塩が1,2−ジメチル−イミダゾールと2−エチルヘキサン酸との塩である、請求項1に記載の二液型ポリウレタン系塗膜防水材。
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