JP4580138B2 - 殺菌済み軟質ナチュラルチーズ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器内で軟質ナチュラルチーズを製造する方法、及び加熱殺菌され保存中の酸度上昇が防止され、風味や品質の劣化が防止され、離水のない賞味期間の長いカッテージチーズやクワルク、マスカルポーネ、クリームチーズ等の軟質ナチュラルチーズに関する。
【0002】
【従来の技術】
カッテージチーズやクワルク、マスカルポーネ、クリームチーズ等のフレッシュチーズは、世界各地で生産されている伝統的な乳製品であり、脱脂乳又は全乳を原料として製造される非熟成タイプのチーズである。これらのチーズは軟質ナチュラルチーズと総称される。
【0003】
カッテージチーズは、通常、加熱殺菌した脱脂乳又は全乳に乳酸菌スターターを添加し、あるいは、さらに少量のレンネットを添加して得られるカードを所定の大きさに切断した後、攪拌しながら所定の温度(50〜60℃)まで徐々に加温し、適当な硬さのカードが形成した時点でホエーを排除する。次に、このカードを冷水で洗浄し、充分水分を切った後、容器に充填する。このようにして製造されたカッテージチーズは、そのまま容器に入れたプレーンタイプの製品として、また、食塩、クリーム、香辛料、果実、野菜等を添加、混合して風味付けをした製品として販売されている。日本では、一般にカードに食塩やクリームを添加、混合した形態のカッテージチーズが最もポピュラーなタイプの製品としてよく知られている。このようなカッテージチーズを機械的に摩砕した、裏ごしタイプのカッテージチーズがケーキや調理の原料として大量に生産されている。
【0004】
また、クワルクは、カッテージチーズと同様の方法で得られるカードを攪拌した後、クワルクセパレーターという特殊な遠心分離機を使用してホエーを分離し、遠心分離機から排出されたカードを冷却して容器に充填することにより製造される。また、マスカルポーネは、脂肪分25%程度の原料乳を用いて、これにレンネットと乳酸菌を加え、カードを形成させ、ホエー分離を行って製造される。クリームチーズは、脂肪分30乃至50%程度のクリーム又は脂肪調整乳にレンネットと乳酸菌を加え、カードを形成させ、ホエー分離を行って製造される。
【0005】
このように、カッテージチーズやクワルクをはじめとする軟質ナチュラルチーズは、世界的な規模で製造され食されているフレッシュチーズであるが、一般的に保存性が悪く、比較的短期間のうちに変質変敗してしまうという問題がある。
つまり、フレッシュチーズの製造にスターターとして使用する乳酸菌は、製品中で生存し、増殖し続け、製品中の乳糖を資化して乳酸や酢酸を生産するので、製品の酸度が上昇し、風味や品質が劣化してしまうのである。これらの問題を解決するために、フレッシュチーズにレトルト処理等を施し、製品中に含まれる乳酸菌を死滅させたり、酵素を失活させて、製品の保存性を高めることが試みられたが、従来の方法で製造したチーズにレトルト処理等の加熱処理を行うと製品の組織や風味等の品質が著しく劣化するという新たな問題が発生することとなった。
また、種々の抗菌剤をフレッシュチーズに添加することにより、製品の組織や風味等の品質を良好な状態で長期間維持する方法も検討されている。
【0006】
一方、乳を限外濾過(UF)膜で処理すると、乳中のタンパク質は膜を透過しないが、乳糖等の低分子量物質は膜を透過する。また、精密濾過(MF)膜で処理すると乳中のカゼインミセルは膜を透過しない。したがって、乳成分を選択的に濃縮することができる。また、UF膜やMF膜で処理することにより得られる濃縮側の濃縮乳に水を加え、さらに、UF膜やMF膜で処理することにより、濃縮乳中の乳糖やその他の低分子量物質を減少させることもできる。このようなUF膜を利用した乳の加工技術は実用化されており、ホエーをUF膜で処理することによりホエータンパク質濃縮物(WPC)が製造されたり、脱脂乳をUF膜で処理することによりミルクタンパク質濃縮物(MPC)が製造されたりしている。
また、乳をUF膜で処理する技術は、チーズを製造する際にも利用されており、(1)UF膜で処理して得られた濃縮乳をチーズの原料乳として使用することにより、生産の効率化を図ったり、チーズカードの物性を制御したり、(2)原料乳をUF膜で処理してチーズの固形率となるまで濃縮した後、乳酸菌スターター及びレンネットを添加してそのままチーズを製造することにより、生産の効率化及び歩留りの向上を図ったり、(3)チーズホエーをUF膜で処理して濃縮したホエータンパク質を原料乳に戻してチーズを製造することにより、歩留りの向上を図る等の試みがなされている。このような膜濃縮を利用したチーズ製造に関する先行技術として特許文献1〜7に開示されたものがある。
【0007】
【特許文献1】
特開平2-357037号
【特許文献2】
特開平2-203875号
【特許文献3】
特開平7-143845号
【特許文献4】
特開平8-289727号
【特許文献5】
特開平11-32675号公報
【特許文献6】
特開平11-69942号公報
【特許文献7】
特開2001-131号公報
【0008】
しかしこれらの膜濃縮技術はチーズカードの生産に限られており、本発明で開示するところの、密封容器入り軟質ナチュラルチーズの製造にまでいたったものはないし、さらに殺菌した密封容器入り軟質ナチュラルチーズの製造技術については示唆すらされていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、カッテージチーズやクワルク等の軟質ナチュラルチーズの保存中における酸度の上昇を防止し、風味や品質の劣化を防止することにより、フレッシュチーズの保存性を向上させて賞味期間の延長を図るべく、鋭意研究を進めていたところ、乳をUF膜やMF膜で処理することにより得られる濃縮乳にレンネットと乳酸菌を添加し、ついでこれを密封容器内に充填し、容器内で醗酵を完了させるとホエー排除がまったく必要なく、さらにこの容器内で調製されたフレシュチーズを容器ごとレトルト等の加熱殺菌を行うと、従来フレッシュチーズの加熱殺菌で問題となっていた組織の悪化や離水の増加等の欠点が生じないことを見出した。また、フレッシュチーズの保存中の酸度上昇を防止することができ、風味や品質の劣化も防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、従来の軟質ナチュラルチーズで問題となっていた保存中の酸度上昇を防止し、風味や品質の劣化を防止することにより、保存性を向上させた賞味期間の長いフレッシュチーズ及びこのフレッシュチーズの製造法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の通りである。
本発明の密封容器入り軟質ナチュラルチーズの製造方法は、
原料乳を精密濾過処理して、水分、灰分及び乳糖を含む画分を除去してカゼイン濃度を高めた濃縮原料乳を調製する濃縮工程、
該濃縮原料乳を95℃〜150℃の温度で加熱殺菌し、次いで冷却する工程、
加熱殺菌し、冷却した該原料乳に乳酸菌及び/又はレンネットを添加し混合して醗酵用の原料混合物を調製する混合工程、及び
該原料混合物を容器に充填し密封後、10乃至40℃で該原料混合物を醗酵させる醗酵工程を有し、
前記濃縮工程において除去される画分が、チーズホエーとして除去される量に相当する水分、灰分及び乳糖を含む
ことを特徴とする密封容器入り軟質ナチュラルチーズの製造方法である。
【0011】
上記の醗酵工程で得られた密封容器入り軟質ナチュラルチーズは、容器に密封された状態を維持した状態でそのまま加熱処理することができる。
【0012】
一方、本発明の密封容器入り加熱殺菌軟質ナチュラルチーズは、精密濾過法で濃縮された原料乳と乳酸菌、レンネットを密封容器に充填し、10乃至40℃で保温し醗酵させて調製された容器入りチーズを加熱殺菌して調製される加熱殺菌軟質ナチュラルチーズであって、90日間冷蔵保存後の離水率が5%以下であることを特徴とする密封容器入り加熱殺菌軟質ナチュラルチーズである。
【0013】
本発明においては、軟質ナチュラルチーズとフレッシュチーズを同義の用語として用いる。軟質ナチュラルチーズとは当業者において半軟質または軟質ナチュラルチーズとして分類されているチーズが含まれ、例えば、脂肪以外の質量中の水分含量が61質量%以上のものが含まれる。なお、この水分含量は、以下の式により算出されるものである(FAO/WHO国際食品規格のチーズ 一般国際規格、1972)。
【0014】
脂肪以外の質量中の水分含量(質量%)=[(チーズ中の水分重量)/(チーズの全重量−チーズの脂肪重量)]×100
【0015】
具体例としては、カッテージチーズ、モツァレラチーズ、カマンベールチーズ、クワルクチーズ、クリームチーズ、マスカルポーネ等を挙げることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明においては、乳をUF膜やMF膜で処理することによって、従来の軟質ナチュラルチーズの製造工程で行われていたカード形成後に行うホエー排除をあらかじめ行うことが特徴のひとつである。従来チーズ製造に使用する原料乳はホエー排除を速やかに行うため、可能な限りタンパク質変性(特にホエータンパク質の加熱変性)が生じないように配慮し、75℃以下の低温で殺菌を行っていた。しかし、本方法を採用することによって、濃縮後殺菌を行うことによってホエータンパク質の変性を考慮せずに加熱殺菌が可能となる。従って、殺菌は従来のように原料乳を直接殺菌しても良いし、また濃縮後クリームやゲル化剤などの安定剤を添加後殺菌しても良いが、殺菌温度は従来方法のように75℃以下の低温で行う必要性はなく、95〜150℃の高温短時間殺菌を行うことができる。また高温殺菌を行うことによって、長期保存に適した組織を持つチーズを調製することが可能となる。原料乳はUF濃縮やMF濃縮されることによってカゼイン含量が高まることになる。カゼインの濃度が高まったことは、常法によって濃縮乳のタンパク質含量を測定することで確認できる。なお、本発明の実施にあたっては、好ましいカゼイン濃度を達成するためには、チーズ原料乳をMF膜等を用いて、約1.5〜6.0倍に濃縮する。チーズの硬さは、濃縮乳のタンパク質濃度に依存し、濃度が高いほど硬く、濃度が低いほどやわらかくなる。一方、ミネラル濃度や乳糖濃度は、チーズの呈味性に影響する。タンパク質濃度はチーズ原料乳の濃縮倍率によって決まる。目的とするチーズの硬さと、呈味性のバランスを取るために、必要であれば、チーズ原料乳を高濃度に濃縮してから、その後に水を加えて希釈すると、やわらかくすっきりとした味のチーズを得ることができる。なお、2倍濃縮することによってカゼイン濃度は約2.8%から約5.6%となる。本発明においては、製造しようとする軟質ナチュラルチーズの種類や原料乳の脂肪含量によって適宜濃縮率を調整し、さらに水を添加して目的の濃度まで希釈する。通常は、1.5倍乃至6.0倍に濃縮し、これを目的とするチーズの水分量にあわせて加水希釈する。なお、UF濃縮した場合はホエータンパク質はチーズ中に残留する。
【0017】
原料乳を濃縮する際には、孔径0.2μm以上の精密濾過(MF)膜を使用することもできるが、タンパク質の一部が透過し歩留まりが低下する可能性があるため、MF濾過膜を使用する場合には孔径が0.1乃至0.2μmの濾過膜を使用することが好ましい。このような孔径サイズの膜を使用すると、乳タンパク質(特にカゼイン)は通過しないが、チーズ製造時にホエーとして排出されるホエータンパク質、乳糖、ミネラル、水分の大部分は通過、除去される。
【0018】
このようにして濃縮した乳を得ることができる。膜による濃縮を行うためには、原料乳は脱脂乳が好ましいが、目的とする軟質ナチュラルチーズの脂肪含量に適した脂肪率に調整したものを用いても良い。脱脂乳を用いて濃縮した場合にはクリームや植物性脂肪等を添加して脂肪率を調整しても良い。また場合によっては均質機を用いて均質化処理を行っても良い。
かくして調製した濃縮乳に必要に応じて安定剤等を添加した後、加熱殺菌を行う。本発明においては殺菌温度を考慮する必要はなく、可能な限り効率的で且、殺菌効果の高い殺菌方法を選択することができる。たとえば、飲用牛乳の殺菌等に用いられているUHT法等であっても良い。
【0019】
殺菌終了後、原料乳の温度を20〜45℃に冷却し、レンネットと乳酸菌を添加する。使用するレンネットの添加量や乳酸菌の種類は目的に応じて適宜選択することができる。添加後、密封可能な容器に充填し密封する。密封可能な容器としては、最終的な流通に適した容器を選択することが好ましいが、加熱殺菌に適した材質を選択することがより好ましい。このような容器としてプラスチック製、あるいは金属製、ガラス製、陶器等が例示できる。またポリエチレン等を内部ラミネートした紙容器であっても良い。
【0020】
充填密封後、所望する温度条件、例えば10℃〜40℃で10〜24時間醗酵を行い、チーズカードを形成させる。チーズカードを形成するに適した温度条件、時間等の諸条件は使用するレンネットと乳酸菌にあわせて適宜選択することができる。
【0021】
チーズカード形成後、容器ごと加熱殺菌を行う。殺菌は添加したレンネットの失活と乳酸菌の死滅が達成できれば良い。特に好ましくはF0値6〜7になるように加熱すれば良い。殺菌はレトルト殺菌が好ましい。また流通形態や製品の特性によっては、殺菌を省略することも可能である。以上の方法を採用することで殺菌軟質ナチュラルチーズは長期間保存後も風味変化(劣化)がなく離水の少ないものとなる。
【0022】
次に、実施例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の実施例における「質量%」は質量基準である。
【0023】
【実施例】
実施例1(クワルク)
【0024】
脱脂乳を孔径0.1〜0.2μmの精密濾過膜(MF膜)でカゼイン濃度が脱脂乳の1.5倍になるまで濃縮した。この濃縮乳に50%の乳脂肪を含有したクリームを混合し乳の脂肪率を8.6%とした(配合比は表1に示す)。この乳を60℃に加温し、TKホモミキサー(8000rpm、5分間)で攪拌して予備乳化した後、高圧ホモジナイザー(9.8MPa(=100kg/cm2)の均質圧)で脂肪を均質化し、150℃、3〜4秒間加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。この原料乳500kgに、Lactococcus lactis subsp.cre oris及びLactococcus lactis subsp. lactisの2菌種からなる市販の乳酸菌スターター(XT-112,クリスチャンハンセン社製)を0.01%接種し、レンネット(Naturen、クリスチャンハンセン社製)を0.000001%乳に添加して、耐熱性の合成樹脂製容器に各80g充填して密閉し、25℃で約16時間保持した。その後、80℃の湯浴中で約30分間、中心温度が72℃に達するまで加熱してその後16秒間72℃以上の温度を保持し、さらに、密封状態を維持しつつ水道水で容器外部から冷却した。
【0025】
上記方法で得られた本発明品であるクワルクを、5℃で90日間保存して品質評価を行った。品質評価はpH、離水率、硬さ、組織状態、風味について行った。
チーズの硬さは、破断強度試験を行って測定した。すなわち、直径5mmの円柱型のプランジャーを用い、1mm/秒の速度でチーズサンプルに貫入させ10mm貫入した時点の荷重(gf)をチーズの硬さとした。
チーズの離水は、チーズを容器ごと直角に傾けて15秒間静置し、出てきた液体を容器にうけ、その重量を測定した。出てきた液体の重量を、容器に充填したときのチーズの重量で除して、100を乗じた値を離水率(%)とした。
【0026】
【表1】
Figure 0004580138
【0027】
【表2】
Figure 0004580138
風味評価: nor: normal、正常
組織評価: nor: normal、正常
【0028】
本発明品は長期間良好な風味、組織を維持していることが判った。又、離水率は製造直後と殆ど変化がなかった。
【0029】
実施例2(裏ごしタイプのカッテージチーズ)
脱脂乳を実施例1と同様に処理して、孔径0.1〜0.2μmの精密濾過膜(MF膜)でカゼイン濃度を脱脂乳の2.5倍に濃縮した濃縮乳を用い、脂肪分は4.5%とした。チーズ調製乳の配合は表3に示した。この乳を60℃に加温し、TKホモミキサー(8000rpm、5分間)で攪拌して予備乳化した後、高圧ホモジナイザー(9.8MPa(=100kg/cm2)の均質圧)で脂肪を均質化し、150℃、3〜4秒間加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。この原料乳500kgに、Lactococcus lactis subsp. cre oris及びLactococcus lactis subsp. lactisの2菌種からなる市販の乳酸菌スターター(XT-112,クリスチャンハンセン社製)を0.01%接種し、レンネット(Naturen、クリスチャンハンセン社製)を0.000001%の濃度で乳に添加して、耐熱性の合成樹脂製デザート容器に各80g充填して密閉し、25℃で約16時間保持した。その後、80℃の湯浴中で約30分間、中心温度が72℃に達するまで加熱した後、16秒間72℃以上の温度を保持し、さらに、密封状態を維持しつつ水道水で容器外部から冷却した。
【0030】
上記方法で得られた本発明品の裏ごしタイプのカッテージチーズを、5℃で90日間保存して品質評価を行った。品質評価はpH、離水率、硬さ、組織状態、風味について実施例1と同様にして行った。
【0031】
【表3】
Figure 0004580138
【0032】
【表4】
Figure 0004580138
風味評価: nor: normal、正常
組織評価: nor: normal、正常
【0033】
本発明品は長期間良好な風味、組織を維持していることが判った。又、離水率は製造直後と殆ど変わらなかった。
【0034】
実施例3(クリームチーズ)
脱脂乳を実施例1と同様に処理して、孔径0.1〜0.2μmの精密濾過膜(MF膜)で濃縮し、脱脂乳のカゼイン濃度を2倍にした濃縮乳を用い、この濃縮乳に50%の乳脂肪を含有したクリームを混合し乳の脂肪率を33%とした(配合比は表5に示す)。この乳を60℃に加温し、TKホモミキサー(8000rpm、5分間)で攪拌して予備乳化した後、高圧ホモジナイザー(9.8MPa(=100kg/cm2)の均質圧)で脂肪を均質化し、150℃、3〜4秒間加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。この原料乳500kgに、Lactococcus lactis subsp. cre oris及びLactococcus lactis subsp. lactisの2菌種からなる市販の乳酸菌スターター(XT-112,クリスチャンハンセン社製)を0.01%接種し、レンネット(Naturen、クリスチャンハンセン社製)を0.000001%の濃度で乳に添加して、耐熱性の合成樹脂製デザート容器に各80g充填して密閉し、25℃で約16時間保持した。その後、80℃の湯浴中で約30分間、中心温度が72℃に達するまで加熱した後、16秒間72℃以上の温度を保持し、さらに、密封状態を維持しつつ水道水で容器外部から冷却した。
【0035】
上記方法で得られた本発明品のクリームチーズを、5℃で90日間保存して品質評価を行った。品質評価はpH、離水率、硬さ、組織状態、風味について実施例1と同様にして行った。
【0036】
【表5】
Figure 0004580138
【0037】
【表6】
Figure 0004580138
風味評価:nor:normal、正常
組織評価:nor:normal、正常
【0038】
本発明品のクリームチーズは長期間良好な風味、組織を維持していることが判った。又、離水率は製造直後と殆ど同一であった。
【0039】
実施例4(マスカルポーネ)
脱脂乳を実施例1と同様に処理して、孔径0.1〜0.2μmの精密濾過膜(MF膜)でカゼイン濃度を1.5倍にした濃縮乳を用い、この濃縮乳に50%の乳脂肪を含有したクリームを混合し乳の脂肪率を25%とした(配合比は表7に示す)。この乳を60℃に加温し、TKホモミキサー(8000rpm、5分間)で攪拌して予備乳化した後、高圧ホモジナイザー(9.8MPa(=100kg/cm2)の均質圧)で脂肪を均質化し150℃、3〜4秒間加熱殺菌した後、25℃まで冷却した。この原料乳500kgに、Lactococcus lactis subsp. cre oris及びLactococcus lactis subsp. lactisの2菌種からなる市販の乳酸菌スターター(XT-112,クリスチャンハンセン社製)を0.01%接種し、レンネット(Naturen、クリスチャンハンセン社製)を0.000001%の濃度で乳に添加して、耐熱性のデザート容器に各80g充填して密閉し、25℃で約1時間保持した。その後、80℃の湯浴中で約30分間、中心温度が72℃に達するまで加熱して、その後16秒間72℃以上の温度を保持し、ただちに密封状態を維持しつつ水道水で容器外部から冷却した。
【0040】
上記方法で得られた本発明品のマスカルポーネを、5℃で90日間保存して品質評価を行った。品質評価はpH、離水率、硬さ、組織状態、風味について実施例1と同様にして行った。
【0041】
【表7】
Figure 0004580138
【0042】
【表8】
Figure 0004580138
風味評価:nor: normal、正常
組織評価:nor: normal、正常
【0043】
本発明品は長期間良好な風味、組織を維持していることが判った。又、離水率は製造直後よりも少なかった。
[比較例1〜6]
定法によって製造されたクリームチーズ、クワルク、マスカルポーネ(いずれも未殺菌、合成保存料無添加、カード形成後ホエー分離を行ったもの)を実施例と同様の密閉容器に充填した試料(比較例1〜3)、及びさらに実施例と同様にして加熱殺菌を行い冷却した試料(比較例4〜6)をそれぞれ調製した。この殺菌済み軟質ナチュラルチーズを上記実施例と同様条件で90日間保存し、pH、離水率、硬さ、組織状態、風味を評価した。未殺菌のチーズは、90日間の保存期間終了前のカビ発生などの変敗が生じ、商品価値を失った。また殺菌後90日間保存した試料は、いずれのチーズも実施例と比べて、組織、風味が不良との評価となった。特に組織はクワルクにおいて硬化や組織のざらつきが感じられた。また90日間保存後は実施例と比較して顕著な離水現象が観察された。
【0044】
【発明の効果】
本発明の実施により、容器内で軟質ナチュラルチーズを製造する方法、及び加熱殺菌され保存中の酸度上昇を防止し、風味や品質の劣化を防止され、離水のない賞味期間の長いカッテージチーズやクワルク、マスカルポーネ、クリームチーズ等の軟質ナチュラルチーズが提供される。本発明で提供されるカッテージチーズやクワルク等のフレッシュチーズはいずれも90日以上の長期保存を行っても保存中の酸度上昇もなく、風味劣化のない製品となる。

Claims (3)

  1. 軟質ナチュラルチーズの製造方法であって、
    原料乳を精密濾過処理して、水分、灰分及び乳糖を含む画分を除去してカゼイン濃度を高めた濃縮原料乳を調製する濃縮工程、
    該濃縮原料乳を95℃〜150℃の温度で加熱殺菌し、次いで冷却する工程、
    加熱殺菌し、冷却した該原料乳に乳酸菌及び/又はレンネットを添加し混合して醗酵用の原料混合物を調製する混合工程、及び
    該原料混合物を容器に充填し密封後、10乃至40℃で該原料混合物を醗酵させる醗酵工程を有し、
    前記濃縮工程において除去される画分が、チーズホエーとして除去される量に相当する水分、灰分及び乳糖を含む
    ことを特徴とする密封容器入り軟質ナチュラルチーズの製造方法。
  2. 前記醗酵工程で調製された密封容器入り軟質ナチュラルチーズを容器とともに更に加熱殺菌する請求項1に記載の軟質ナチュラルチーズの製造方法。
  3. 請求項1に記載の製造方法によって製造される密封容器入り軟質ナチュラルチーズを加熱殺菌して調製される加熱殺菌軟質ナチュラルチーズであって、
    90日間冷蔵保存後の離水率が5%以下であることを特徴とする密封容器入り加熱殺菌軟質ナチュラルチーズ。
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