JP4576517B2 - 転写式感圧接着テープ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、手持ち型の転写具によって紙面などに押しつけられることにより感圧接着層が紙面などの被転写体に転写されて、当該被転写体と他の物品を糊付けすることができる転写式感圧接着テープに関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、取り扱いの容易さから両面テープやステイック糊に替わって転写式感圧接着テープが注目を集めている。
【０００３】
この種の転写式感圧接着テープとしては、基材の片面に感圧接着層を設けた構造のものが知られており、前記基材としては離型処理したグラシン紙などの紙基材が一般に用いられている。この転写式感圧接着テープは手持ち型の転写具に装着して使用されている。
【０００４】
図１は転写式感圧接着テープを装着した手持ち型の転写具の１例を示す概略図であり、図２はその要部拡大図である。１は転写式感圧接着テープであり、基材２上に感圧接着層３を設けたものである。転写具の主要構成要素は転写式感圧接着テープ１の供給リール１０と、基材２の巻き取りリール１１と、転写式感圧接着テープ１を紙などの被転写体１３に押圧するクサビ形状のヘッド１２とからなる。なお図１〜２においては、供給リール１０、巻き取りリール１１を駆動するためのギヤ機構、供給リール１０、巻き取りリール１１をセットして転写具に装着するためのカートリッジ、ケース本体などは省略されている。
【０００５】
転写具を矢印Ａの方向に被転写体１３上を移動させると、転写式感圧接着テープ１が引き出されヘッド１２で押圧されることにより、感圧接着層３が基材２より剥離されるとともに被転写体１３上に接着されていく。一方、感圧接着層３と分離した基材２は巻き取りリール１１に巻き取られる。
【０００６】
近時この転写具にもコンパクト化が要望されている。そのためには転写式感圧接着テープの薄膜化、細幅化が必要である。しかし従来の紙基材を使用する転写式感圧接着テープではこれらの要求に対応するのが困難である。
【０００７】
そこで基材として離型処理した有機高分子フィルムを使用することが提案された。しかし有機高分子フィルム基材を用いると、基材がフィルム状であることに起因して、転写式感圧接着テープの走行時にスリップが生じる。すなわち、図２に示すように、ヘッド１２の部位の基材２上に感圧接着層３がない場合に転写具にて転写式感圧接着テープ１を引き出そうとすると、フィルムが高平滑であることから、一般的な被転写体（普通紙等）に対して所望の摩擦力が得られず、通常の圧力ではスリップが生じ、その結果転写式感圧接着テープ１を引き出すことができない。以下、基材がスリップしない特性を基材の走行性が良いという。
【０００８】
前記の問題を解決するために、転写具のヘッドをローラーヘッドにすることが行われている。また感圧接着テープのフィルム基材の中に粒子を練り込んだり、フィルム基材の片面をサンドマット加工するなどの手段によって被転写体への摩擦力を向上することも考えられるが、いずれも高コスト化を招く結果となる。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実情に鑑み、基材の走行性に優れたコンパクトタイプの転写式感圧接着テープを低コストで提供することを課題とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項１に係る発明は、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレ−トのいずれかからなる厚さ５〜３８μｍの両面に離型層を設けた基材上に感圧接着層を有する転写式感圧接着テ−プにおいて、該基材の感圧接着層側及び、背面側の離型層がシリコ−ン樹脂又はフッ素樹脂又はワックスを主成分とし、感圧接着層側の離型層が平均粒径０．３〜５μｍの無機または有機の粒子を１重量％以上含有し、該基材の感圧接着層側の離型層のＰＰＣ用紙表面に対する下記測定方法による動摩擦係数が、該基材の背面側の離型層の直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒に対する下記測定方法による動摩擦係数よりも大きく、その差が０．０１以上であることを特徴とする転写式感圧接着テープに関する。
基材背面側とポリアセタ−ルとの動摩擦係数測定方法
（ア）幅５ｍｍ長さ２０ｍｍの基材を、背面側の離型層を上にして、試験機テ−ブルに貼り付ける。
（イ）直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒を、基材に５００ｇで押圧しながら、３０ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を水平にすべらせ、抵抗値を測定した。
（ウ）測定した抵抗値から、動摩擦係数を算出した。
基材感圧接着層側とＰＰＣ用紙との動摩擦係数測定方法
（ア）幅５ｍｍ長さ２０ｍｍの基材を、感圧接着層側の離型層を上にして、試験機テ−ブルに貼り付ける。
（イ）ＰＰＣ用紙を貼り付けた直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒を、基材に５００ｇで押圧しながら、３０ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を水平にすべらせ、抵抗値を測定した。
（ウ）測定した抵抗値から、動摩擦係数を算出した。
【００１２】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前記のフィルム基材の引き出し時のスリップを解消するために鋭意研究した結果、フィルム基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数と、該フィルム基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数の差を０．０１以上とすることによって、前記スリップを解消できることを見出した。
【００１３】
また、フィルム基材の表裏で、それぞれの対象物に対し動摩擦係数の差を設ける手段として、フィルム基材の感圧接着層側の離型層中に無機または有機の粒子を含有させることで離型層表面を凹凸にし、普通紙などの被転写体に対する摩擦係数を向上できることを見出した。この場合、基材に対してマット処理を施す必要がないから、低コストでの製品提供が可能となる。
【００１４】
次に本発明を詳細に説明する。
【００１５】
本発明においては、基材として、有機高分子フィルムの両面に離型層を設け、感圧接着層側の離型層に平均粒径が０．３〜５μｍの粒子を含有せしめたものを用いるのが好ましい。それによって、基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数が、該基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数よりも大きく、その差を０．０１以上にすることが容易であり、優れた基材の走行性が得られる。なお、基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数と、該基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数との差の上限値はとくに制限されないが、通常０．５０程度である。
【００１６】
感圧接着層側の離型層の塗布量としては、０．１〜２．０ｇ／ｍ2程度が好ましい。離型層中に添加する無機または有機の粒子の平均粒径としては、０．３〜５μｍが好ましい。平均粒径が０．３μｍ未満では離型層の表面を凹凸にする効果がほとんど見られず、一方５μｍより大きい場合、該効果は著しいものの、粒子を均一に離型層中に存在させることが困難となったり、粒子の離型層からの脱落が生じ易くなる。
【００１７】
前記無機または有機の粒子としては、無機ではシリカ、ジルコニア、酸化チタンなどが、有機ではメラミン樹脂、高分子量のポリエチレンワックスなどがあげられ、特に限定するものではない。
【００１８】
離型層中での無機または有機の粒子の含有量は、１重量％以上が好ましく、より好ましくは１〜４５重量％の範囲である。粒子の含有量が１重量％未満であると離型層の表面を凹凸にする効果が十分に発揮されない。一方４５重量％より多いと、離型層本来の機能を損ない、離型層の基材への密着不良や感圧接着層の剥離不良を引き起こす傾向がある。
【００１９】
離型層に用いる離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ワックスなどがあげられるが、一般的にはシリコーン樹脂が好ましい。
【００２０】
背面側の離型層としては粒子を配合しないほかは前記感圧接着層側の離型層と同様なものが使用できる。
【００２１】
前記有機高分子フィルムとしては、厚さが約５〜１００μｍ程度のフィルムが用いられる。厚さが５μｍ未満ではリボン状に加工した際、強度が弱く実用上支障をきたす可能性が高く、一方１００μｍより厚くなると、コンパクト化に支障を来すうえに、加工上で不都合を生じる傾向がある。コンパクト化の点からは特に３８μｍ以下の厚さのフィルムが好ましい。フィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレートなどが適当であるが、特に限定するものではない。
【００２２】
前記フィルム基材の粒子を含有する離型層上には感圧接着層が設けられる。
【００２３】
前記感圧接着層はアクリル樹脂系、ロジン系、ゴム系、ビニルエーテル樹脂系、ポリイソブチレン系などの粘着剤の塗工層である。感圧接着層の厚さは１０〜４０μｍ程度が適当である。
【００２４】
本発明の転写式感圧接着テープは手持ち型の転写具に装着して使用に供せられる。使用に際しては、フィルム基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数と、該フィルム基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数の差が０．０１以上であることによって、基材のスリップが防止され、転写式感圧接着テープをスムースに引き出すことができる。
【００２５】
転写式感圧接着テープの一般的な被転写体である普通紙の表面は、かなりの凹凸になっており高い摩擦を得るためには、対象物もその表面が平滑よりも凹凸になっている方が接触面積を増やせるため有効である。本発明においては、感圧接着層と接する側の基材の離型層中の無機または有機の粒子が離型層表面を凹凸面にすることで、被転写体（普通紙等）との摩擦力を高めることができ、良好な基材走行性が得られる。転写具のヘッドの材質は、通常ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ＡＢＳ樹脂、ＡＳ樹脂などのプラスチックである。このような被転写体の材質とヘッドの材質を適切に考慮して基材の両面の動摩擦係数差を所定値に設定する。本発明の感圧接着テープは、基材の走行性が優れているので、ヘッドがクサビ形状の転写具に好適に使用できる。
【００２６】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【００２７】
実施例１
＜基材の離型処理＞
厚さ１２μｍのＰＥＴフィルムの片面に下記に示すシリコーン樹脂液を乾燥後塗布量が約０．５ｇ／ｍ2になるように塗工し乾燥して離型層を形成した。
【００２８】
【００２９】
前記ＰＥＴフィルムの反対面には前記シリコーン樹脂液からシリカ粒子を除いた組成のものを乾燥後厚さが約０．５μｍになるように塗工し、乾燥して背面側の離型層を形成した。
【００３０】
＜感圧接着テープの作成＞
前記基材の粒子を含有する離型層上に下記に示すアクリル系粘着剤を乾燥後厚さが約１５μｍになるように塗工し、乾燥して感圧接着層を形成し、転写式感圧接着テープ原反を得た。
【００３１】
つぎに、前記で得られた転写式感圧接着テープ原反について、幅５ｍｍにスリットしながら１０ｍの長さをコアに巻き取りパンケーキ状のサンプルとした。前記パンケーキサンプルを市販の手持ち型の転写具（図１〜２に示す構造を有するの）に装填し、転写式感圧接着テープ転写具を得た。
【００３２】
実施例２〜３および比較例１〜３
感圧接着層側の離型層中へのシリカ粒子の添加量を表１に示す値に変えたほかは実施例１と同様にして転写式感圧接着テープ原反を得、これからパンケーキを作成し、転写具に装着し転写式感圧接着テープ転写具を得た。なお、比較例３においては基材として厚さ４０μｍのグラシン紙を用いた。
【００３３】
前記基材の動摩擦係数を測定し、前記転写式感圧接着テープの性能を評価した。結果を表１に示す。
【００３４】
動摩擦係数測定方法
フジコピアン（株）製摺動性試験機を用いた。基材を幅５ｍｍ、長さ約２０ｃｍの大きさにサンプリングし、このサンプルを試験機のテーブル上に貼り付けた。対象物を樹脂でできた直径３ｍｍの筒に貼り付けるか（ＰＰＣ用紙の場合）、もしくは対象物で直径３ｍｍの筒を作成し（ポリアセタールの場合）、このものを基材と水平に接触するようにして、接触面に荷重５００ｇをかけ３００ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を滑らせ、その際の抵抗値から動摩擦係数を算出した。
【００３５】
なお、被転写体としてＰＰＣ用紙、転写具のヘッドの材質としてポリアセタールを用いた。
【００３６】
基材走行性の評価
前記転写式感圧接着テープ転写具を用い、図２に示されるようにヘッド部分におけるテープから感圧接着層を剥した状態でＰＰＣ用紙上にて転写具を走行させた。転写具を走行させて転写式感圧接着テープを容易に引き出すことができる場合を◎、転写具を走行させて転写式感圧接着テープを引き出すことができる場合を○、転写具を走行させて転写式感圧接着テープを引き出すのにかなりの力を要する場合を×とした。
【００３７】
基材のＰＰＣ用紙に対する動摩擦係数が高いほど、良好な基材走行性を得ることができる。
【００３８】
【表１】
【００３９】
表１に示される結果から明らかなように、感圧接着層側の離型層における粒子の含有量が１重量％以上の範囲であれば、基材走行性などの要求特性が確保できた（実施例１〜３）。
【００４０】
粒子の含有量が１重量％未満であると、基材の引き出しにかなりの荷重が必要であった（比較例１〜２）。基材がグラシン紙（厚さ４０μｍ）の場合、基材特性は確保できていたが、材質が紙であることから薄膜（例えば２０μｍ程度）にすると強度が確保できなかった。
【００４１】
【発明の効果】
本発明により、フィルム基材にて、基材走行性の優れた転写式感圧接着テープを低コストで提供することが可能となった。これによって、基材の薄膜化が可能となり、転写式感圧接着テープのコンパクト化が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明で用いる手持ち型の転写具の１実施例を示す概略図である。
【図２】図１の要部拡大図である。
【符号の説明】
１ 転写式感圧接着テープ
２ 基材
３ 感圧接着層
１０ 供給リール
１１ 巻き取りリール
１２ ヘッド
１３ 被転写体
【発明の属する技術分野】
本発明は、手持ち型の転写具によって紙面などに押しつけられることにより感圧接着層が紙面などの被転写体に転写されて、当該被転写体と他の物品を糊付けすることができる転写式感圧接着テープに関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、取り扱いの容易さから両面テープやステイック糊に替わって転写式感圧接着テープが注目を集めている。
【０００３】
この種の転写式感圧接着テープとしては、基材の片面に感圧接着層を設けた構造のものが知られており、前記基材としては離型処理したグラシン紙などの紙基材が一般に用いられている。この転写式感圧接着テープは手持ち型の転写具に装着して使用されている。
【０００４】
図１は転写式感圧接着テープを装着した手持ち型の転写具の１例を示す概略図であり、図２はその要部拡大図である。１は転写式感圧接着テープであり、基材２上に感圧接着層３を設けたものである。転写具の主要構成要素は転写式感圧接着テープ１の供給リール１０と、基材２の巻き取りリール１１と、転写式感圧接着テープ１を紙などの被転写体１３に押圧するクサビ形状のヘッド１２とからなる。なお図１〜２においては、供給リール１０、巻き取りリール１１を駆動するためのギヤ機構、供給リール１０、巻き取りリール１１をセットして転写具に装着するためのカートリッジ、ケース本体などは省略されている。
【０００５】
転写具を矢印Ａの方向に被転写体１３上を移動させると、転写式感圧接着テープ１が引き出されヘッド１２で押圧されることにより、感圧接着層３が基材２より剥離されるとともに被転写体１３上に接着されていく。一方、感圧接着層３と分離した基材２は巻き取りリール１１に巻き取られる。
【０００６】
近時この転写具にもコンパクト化が要望されている。そのためには転写式感圧接着テープの薄膜化、細幅化が必要である。しかし従来の紙基材を使用する転写式感圧接着テープではこれらの要求に対応するのが困難である。
【０００７】
そこで基材として離型処理した有機高分子フィルムを使用することが提案された。しかし有機高分子フィルム基材を用いると、基材がフィルム状であることに起因して、転写式感圧接着テープの走行時にスリップが生じる。すなわち、図２に示すように、ヘッド１２の部位の基材２上に感圧接着層３がない場合に転写具にて転写式感圧接着テープ１を引き出そうとすると、フィルムが高平滑であることから、一般的な被転写体（普通紙等）に対して所望の摩擦力が得られず、通常の圧力ではスリップが生じ、その結果転写式感圧接着テープ１を引き出すことができない。以下、基材がスリップしない特性を基材の走行性が良いという。
【０００８】
前記の問題を解決するために、転写具のヘッドをローラーヘッドにすることが行われている。また感圧接着テープのフィルム基材の中に粒子を練り込んだり、フィルム基材の片面をサンドマット加工するなどの手段によって被転写体への摩擦力を向上することも考えられるが、いずれも高コスト化を招く結果となる。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実情に鑑み、基材の走行性に優れたコンパクトタイプの転写式感圧接着テープを低コストで提供することを課題とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項１に係る発明は、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレ−トのいずれかからなる厚さ５〜３８μｍの両面に離型層を設けた基材上に感圧接着層を有する転写式感圧接着テ−プにおいて、該基材の感圧接着層側及び、背面側の離型層がシリコ−ン樹脂又はフッ素樹脂又はワックスを主成分とし、感圧接着層側の離型層が平均粒径０．３〜５μｍの無機または有機の粒子を１重量％以上含有し、該基材の感圧接着層側の離型層のＰＰＣ用紙表面に対する下記測定方法による動摩擦係数が、該基材の背面側の離型層の直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒に対する下記測定方法による動摩擦係数よりも大きく、その差が０．０１以上であることを特徴とする転写式感圧接着テープに関する。
基材背面側とポリアセタ−ルとの動摩擦係数測定方法
（ア）幅５ｍｍ長さ２０ｍｍの基材を、背面側の離型層を上にして、試験機テ−ブルに貼り付ける。
（イ）直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒を、基材に５００ｇで押圧しながら、３０ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を水平にすべらせ、抵抗値を測定した。
（ウ）測定した抵抗値から、動摩擦係数を算出した。
基材感圧接着層側とＰＰＣ用紙との動摩擦係数測定方法
（ア）幅５ｍｍ長さ２０ｍｍの基材を、感圧接着層側の離型層を上にして、試験機テ−ブルに貼り付ける。
（イ）ＰＰＣ用紙を貼り付けた直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒を、基材に５００ｇで押圧しながら、３０ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を水平にすべらせ、抵抗値を測定した。
（ウ）測定した抵抗値から、動摩擦係数を算出した。
【００１２】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前記のフィルム基材の引き出し時のスリップを解消するために鋭意研究した結果、フィルム基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数と、該フィルム基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数の差を０．０１以上とすることによって、前記スリップを解消できることを見出した。
【００１３】
また、フィルム基材の表裏で、それぞれの対象物に対し動摩擦係数の差を設ける手段として、フィルム基材の感圧接着層側の離型層中に無機または有機の粒子を含有させることで離型層表面を凹凸にし、普通紙などの被転写体に対する摩擦係数を向上できることを見出した。この場合、基材に対してマット処理を施す必要がないから、低コストでの製品提供が可能となる。
【００１４】
次に本発明を詳細に説明する。
【００１５】
本発明においては、基材として、有機高分子フィルムの両面に離型層を設け、感圧接着層側の離型層に平均粒径が０．３〜５μｍの粒子を含有せしめたものを用いるのが好ましい。それによって、基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数が、該基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数よりも大きく、その差を０．０１以上にすることが容易であり、優れた基材の走行性が得られる。なお、基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数と、該基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数との差の上限値はとくに制限されないが、通常０．５０程度である。
【００１６】
感圧接着層側の離型層の塗布量としては、０．１〜２．０ｇ／ｍ2程度が好ましい。離型層中に添加する無機または有機の粒子の平均粒径としては、０．３〜５μｍが好ましい。平均粒径が０．３μｍ未満では離型層の表面を凹凸にする効果がほとんど見られず、一方５μｍより大きい場合、該効果は著しいものの、粒子を均一に離型層中に存在させることが困難となったり、粒子の離型層からの脱落が生じ易くなる。
【００１７】
前記無機または有機の粒子としては、無機ではシリカ、ジルコニア、酸化チタンなどが、有機ではメラミン樹脂、高分子量のポリエチレンワックスなどがあげられ、特に限定するものではない。
【００１８】
離型層中での無機または有機の粒子の含有量は、１重量％以上が好ましく、より好ましくは１〜４５重量％の範囲である。粒子の含有量が１重量％未満であると離型層の表面を凹凸にする効果が十分に発揮されない。一方４５重量％より多いと、離型層本来の機能を損ない、離型層の基材への密着不良や感圧接着層の剥離不良を引き起こす傾向がある。
【００１９】
離型層に用いる離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ワックスなどがあげられるが、一般的にはシリコーン樹脂が好ましい。
【００２０】
背面側の離型層としては粒子を配合しないほかは前記感圧接着層側の離型層と同様なものが使用できる。
【００２１】
前記有機高分子フィルムとしては、厚さが約５〜１００μｍ程度のフィルムが用いられる。厚さが５μｍ未満ではリボン状に加工した際、強度が弱く実用上支障をきたす可能性が高く、一方１００μｍより厚くなると、コンパクト化に支障を来すうえに、加工上で不都合を生じる傾向がある。コンパクト化の点からは特に３８μｍ以下の厚さのフィルムが好ましい。フィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレートなどが適当であるが、特に限定するものではない。
【００２２】
前記フィルム基材の粒子を含有する離型層上には感圧接着層が設けられる。
【００２３】
前記感圧接着層はアクリル樹脂系、ロジン系、ゴム系、ビニルエーテル樹脂系、ポリイソブチレン系などの粘着剤の塗工層である。感圧接着層の厚さは１０〜４０μｍ程度が適当である。
【００２４】
本発明の転写式感圧接着テープは手持ち型の転写具に装着して使用に供せられる。使用に際しては、フィルム基材の感圧接着層側の、被転写体の表面に対する動摩擦係数と、該フィルム基材の背面側の、転写具のヘッドに対する動摩擦係数の差が０．０１以上であることによって、基材のスリップが防止され、転写式感圧接着テープをスムースに引き出すことができる。
【００２５】
転写式感圧接着テープの一般的な被転写体である普通紙の表面は、かなりの凹凸になっており高い摩擦を得るためには、対象物もその表面が平滑よりも凹凸になっている方が接触面積を増やせるため有効である。本発明においては、感圧接着層と接する側の基材の離型層中の無機または有機の粒子が離型層表面を凹凸面にすることで、被転写体（普通紙等）との摩擦力を高めることができ、良好な基材走行性が得られる。転写具のヘッドの材質は、通常ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ＡＢＳ樹脂、ＡＳ樹脂などのプラスチックである。このような被転写体の材質とヘッドの材質を適切に考慮して基材の両面の動摩擦係数差を所定値に設定する。本発明の感圧接着テープは、基材の走行性が優れているので、ヘッドがクサビ形状の転写具に好適に使用できる。
【００２６】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【００２７】
実施例１
＜基材の離型処理＞
厚さ１２μｍのＰＥＴフィルムの片面に下記に示すシリコーン樹脂液を乾燥後塗布量が約０．５ｇ／ｍ2になるように塗工し乾燥して離型層を形成した。
【００２８】
前記ＰＥＴフィルムの反対面には前記シリコーン樹脂液からシリカ粒子を除いた組成のものを乾燥後厚さが約０．５μｍになるように塗工し、乾燥して背面側の離型層を形成した。
【００３０】
＜感圧接着テープの作成＞
前記基材の粒子を含有する離型層上に下記に示すアクリル系粘着剤を乾燥後厚さが約１５μｍになるように塗工し、乾燥して感圧接着層を形成し、転写式感圧接着テープ原反を得た。
【００３１】
つぎに、前記で得られた転写式感圧接着テープ原反について、幅５ｍｍにスリットしながら１０ｍの長さをコアに巻き取りパンケーキ状のサンプルとした。前記パンケーキサンプルを市販の手持ち型の転写具（図１〜２に示す構造を有するの）に装填し、転写式感圧接着テープ転写具を得た。
【００３２】
実施例２〜３および比較例１〜３
感圧接着層側の離型層中へのシリカ粒子の添加量を表１に示す値に変えたほかは実施例１と同様にして転写式感圧接着テープ原反を得、これからパンケーキを作成し、転写具に装着し転写式感圧接着テープ転写具を得た。なお、比較例３においては基材として厚さ４０μｍのグラシン紙を用いた。
【００３３】
前記基材の動摩擦係数を測定し、前記転写式感圧接着テープの性能を評価した。結果を表１に示す。
【００３４】
動摩擦係数測定方法
フジコピアン（株）製摺動性試験機を用いた。基材を幅５ｍｍ、長さ約２０ｃｍの大きさにサンプリングし、このサンプルを試験機のテーブル上に貼り付けた。対象物を樹脂でできた直径３ｍｍの筒に貼り付けるか（ＰＰＣ用紙の場合）、もしくは対象物で直径３ｍｍの筒を作成し（ポリアセタールの場合）、このものを基材と水平に接触するようにして、接触面に荷重５００ｇをかけ３００ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を滑らせ、その際の抵抗値から動摩擦係数を算出した。
【００３５】
なお、被転写体としてＰＰＣ用紙、転写具のヘッドの材質としてポリアセタールを用いた。
【００３６】
基材走行性の評価
前記転写式感圧接着テープ転写具を用い、図２に示されるようにヘッド部分におけるテープから感圧接着層を剥した状態でＰＰＣ用紙上にて転写具を走行させた。転写具を走行させて転写式感圧接着テープを容易に引き出すことができる場合を◎、転写具を走行させて転写式感圧接着テープを引き出すことができる場合を○、転写具を走行させて転写式感圧接着テープを引き出すのにかなりの力を要する場合を×とした。
【００３７】
基材のＰＰＣ用紙に対する動摩擦係数が高いほど、良好な基材走行性を得ることができる。
【００３８】
【表１】
表１に示される結果から明らかなように、感圧接着層側の離型層における粒子の含有量が１重量％以上の範囲であれば、基材走行性などの要求特性が確保できた（実施例１〜３）。
【００４０】
粒子の含有量が１重量％未満であると、基材の引き出しにかなりの荷重が必要であった（比較例１〜２）。基材がグラシン紙（厚さ４０μｍ）の場合、基材特性は確保できていたが、材質が紙であることから薄膜（例えば２０μｍ程度）にすると強度が確保できなかった。
【００４１】
【発明の効果】
本発明により、フィルム基材にて、基材走行性の優れた転写式感圧接着テープを低コストで提供することが可能となった。これによって、基材の薄膜化が可能となり、転写式感圧接着テープのコンパクト化が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明で用いる手持ち型の転写具の１実施例を示す概略図である。
【図２】図１の要部拡大図である。
【符号の説明】
１ 転写式感圧接着テープ
２ 基材
３ 感圧接着層
１０ 供給リール
１１ 巻き取りリール
１２ ヘッド
１３ 被転写体
Claims (1)
- ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレ−トのいずれかからなる厚さ５〜３８μｍの両面に離型層を設けた基材上に感圧接着層を有する転写式感圧接着テ−プにおいて、該基材の感圧接着層側及び、背面側の離型層がシリコ−ン樹脂又はフッ素樹脂又はワックスを主成分とし、感圧接着層側の離型層が平均粒径０．３〜５μｍの無機または有機の粒子を１重量％以上含有し、該基材の感圧接着層側の離型層のＰＰＣ用紙表面に対する下記測定方法による動摩擦係数が、該基材の背面側の離型層の直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒に対する下記測定方法による動摩擦係数よりも大きく、その差が０．０１以上であることを特徴とする転写式感圧接着テープ。
基材背面側とポリアセタ−ルとの動摩擦係数測定方法
（ア）幅５ｍｍ長さ２０ｍｍの基材を、背面側の離型層を上にして、試験機テ−ブルに貼り付ける。
（イ）直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒を、基材に５００ｇで押圧しながら、３０ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を水平にすべらせ、抵抗値を測定した。
（ウ）測定した抵抗値から、動摩擦係数を算出した。
基材感圧接着層側とＰＰＣ用紙との動摩擦係数測定方法
（ア）幅５ｍｍ長さ２０ｍｍの基材を、感圧接着層側の離型層を上にして、試験機テ−ブルに貼り付ける。
（イ）ＰＰＣ用紙を貼り付けた直径３ｍｍのポリアセタ−ル筒を、基材に５００ｇで押圧しながら、３０ｍｍ／ｍｉｎの速度で基材上を水平にすべらせ、抵抗値を測定した。
（ウ）測定した抵抗値から、動摩擦係数を算出した。
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