JP4576086B2 - 光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法および光機能性多層体の製造方法 - Google Patents

光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法および光機能性多層体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光機能性化合物半導体超格子構造物製造方法および光機能性多層体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
InGaAlN系の化合物半導体は、2〜6eVの比較的大きなエネルギーバンドギャップ(Eg)を有している。このため、伝導帯と価電子帯との間での電子遷移を利用した紫外〜緑色領域の光を発する発光ダイオード或いはレーザダイオードが作製されている。また、GaN井戸層とAlGaN障壁層とから成る超格子構造も作製されている。この超格子構造は、アクセプタ不純物を添加したp型低抵抗層として利用されている。さらに、AlGaN/GaN超格子内の伝導帯サブバンド間遷移を利用した赤外デバイスに関する研究が始められている。しかし、AlGaN/GaN超格子やAlN/GaN超格子を発光層として用いる場合には、大きなピエゾ効果が問題となり、効率の良い発光は得られにくい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上述のような紫外〜緑色領域の発光素子への応用のみならず、InGaAlN系化合物半導体のサブバンド間遷移デバイスへの応用に着目している。
【0004】
GaNとAlNとのEgの差は2.8eVと比較的大きいため、これら2つの半導体から構成される超格子構造においては、2つの半導体層の層厚及び層厚比を適宜設計することにより様々な光学的特性を実現可能である。特に、GaNとAlNとのEg差が大きいこと、さらに伝導帯下端のエネルギー差ΔEcが2eV程度であることから、様々なバンド構造を実現し得る。
【0005】
本発明者らは、伝導帯中に形成されるサブバンドに着目し、サブバンドに関する光学的特性について研究を行った。その結果、井戸層となるGaN層(5〜100原子層)と、障壁層となるAlN層の1〜3原子層とを交互に積層した超格子構造において、伝導帯に形成される複数のサブバンドは比較的広いバンド幅を有することがわかった。しかも、GaN層及びAlN層の層厚を上記範囲内で調整すれば、サブバンドのバンド幅とサブバンド間のエネルギーギャップとを様々に制御することができ、その結果、様々な光学的性質が奏されることがわかった。さらに、このような構造によれば、ピエゾ効果を抑えることができることもわかった。すなわち、上記の構成を有する超格子構造によれば、中赤外域光を発する発光素子を始めとする種々の光学素子の実現が期待される。言い換えると、上記の構成を有する超格子構造は、光機能性化合物半導体超格子構造としての特徴的な光学的性質を備えている。
【0006】
また、本発明者らは鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。すなわち、ピエゾ効果は効率の良い発光を妨げるが、これを利用することにより、これまでにない光学的特性を奏する材料が得られる。本発明者らは、以上の考えに基づき、本発明に到達した。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法および光機能性多層体製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法は、m原子層(mは自然数)のGaNから構成される第1の膜と、n原子層(nは自然数)のAlNまたはAlxGa1-xN(0<x<1)から構成され第1の膜より薄い第2の膜と、が交互に積層されて、量子カスケードレーザ装置の活性層の一部を構成し量子障壁層と交互に積層される光機能性化合物半導体超格子構造物を製造する方法である。ここで、m=5〜100、n=1〜3といった関係を満たすのが好ましい。
【0009】
このような構成を有する光機能性化合物半導体超格子構造物においては、複数のサブバンドが形成される。しかも、Egの大きい第2の膜(AlN又はAlxGa1-xN)がEgの小さい第1の膜(GaN)よりも薄く形成されているため、これらの複数のサブバンドは所定のバンド幅を有することになる。したがって、この半導体超格子構造物によれば、サブバンドのバンド幅及びサブバンド間のエネルギーギャップを利用することにより、新しい半導体素子を開発することが可能となる。また、第1の膜と第2の膜との厚さ及び厚さの比を適宜調整することにより様々な光学的特性を有する光機能性化合物半導体超格子構造物が得られるので、所望の光学的特性を有する半導体素子を実現することが可能である。
【0010】
本発明に係る光機能性化合物半導体超格子構造の製造方法は、基板上に複数の原料を供給し、上記の光機能性化合物半導体超格子構造物を製造する方法であって、基板上にガリウム原子を吸着させる第1の工程と、ガリウム原子が吸着した基板上に窒素原子を吸着させる第2の工程と、基板上にアルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子を吸着させる第3の工程と、アルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子が吸着した基板上に窒素原子を吸着させる第4の工程と、を有し、第1の工程と第2の工程とを1回ずつ又は複数回交互に行うことによるm原子層のGaNの形成と、第3の工程と第4の工程とを1回ずつ又は複数回交互に行うことによるn原子層のAlN、またはAlxGa1-xN(0<x<1)の形成と、を交互に行うことを特徴とする。このようにすれば、所望の構成を有する光機能性化合物半導体超格子構造が容易に製造される。
【0012】
また、上記の基板が、Al23、ZrB2、BN、SiC、GaAsまたはZnOの何れかからなる基板であると好ましい。
【0013】
AlN/GaN超格子の格子歪に起因するピエゾ効果は、しばしば、この超格子を発光層として用いる際の妨げになる恐れがある。しかし、本発明者らの知見によれば、ピエゾ電界を積極的に利用することもまた可能である。すなわち、ピエゾ電界を利用すれば、伝導帯基底サブバンドの電子を上位のサブバンドへ効率良く注入することも可能である。
【0014】
そこで、本発明に係る光機能性多層体の製造方法は、上記の光機能性化合物半導体超格子構造物と、n2原子層のAlNまたはAlxGa1-xN(0<x<1)から構成される量子障壁層と、が交互に積層され、m原子層のGaNから構成される第1の膜の数がn1(n1nより大きい自然数)であり、n原子層のAlNから構成される第2の膜の数がn1−1であり、量子カスケードレーザ装置の活性層として用いられる光機能性多層体を製造する方法である。ここで、m=5〜100(mは自然数)、n=1〜3(nは自然数)、n1=2〜10(n1は自然数)、n2=4〜10(n2は自然数)、といった関係を満たすのが好ましい。
【0015】
上記の光機能性多層体は、上記の光機能性化合物半導体超格子構造物とn2原子層のAlN層、またはAlxGa1-xN(0<x<1)層とが交互に積層されて構成される。光機能性化合物半導体超格子構造物は、m原子層の厚さを有するGaN層のn1層と、n原子層の厚さを有するAlN層のn1−1層と、が交互に一層ずつ積層されて構成される。ここで、mは5〜100の自然数であり、nは1〜3の自然数であり、n1は2〜10の自然数であり、n2は4〜10の自然数である。
【0016】
このように構成されると、AlN層及びGaN層に生じる比較的大きな格子歪により、ピエゾ効果が強く現れる。AlN層には2次元的な圧縮歪が生じ、GaN層には2次元的な引張り歪が生じるため、AlN層とGaN層とに生じるピエゾ電界はそれぞれ反対方向となる。また、n2原子層のAlN層とn原子層のAlN層とには一層当たり同じ大きさのピエゾ電界が発生するので、厚さの違いにより、n2原子層のAlN層内には、n(n<n2)原子層のAlN層内に比べて大きなピエゾ電界が発生することとなる。このように生じるピエゾ電界によって、光機能性多層体においては、価電子帯の上端及び伝導帯の下端に比較的大きな傾きが生じる。その結果、光機能性化合物半導体超格子構造物中の量子準位は、個々のGaN層内に局在化されるとともに、n2原子層のAlN層の両側にある2つの光機能性化合物半導体超格子構造物のうち、一方に形成される各量子準位は、他方に形成される各量子準位よりも高エネルギーレベル側に位置することとなる。
【0017】
このようなバンド構造を有する光機能性多層体に電圧を印加すると、光機能性化合物半導体超格子構造物の内部に複数のサブバンドが形成されるが、サブバンドについても、n2原子層のAlN層内に生じるピエゾ電界により、この層の両側でサブバンドにレベル差が生じることとなる。そのため、n2の値を正しく設計すれば、n2原子層のAlN層を介して隣り合う2つの光機能性化合物半導体超格子構造物のうち、一方の基底サブバンド(量子準位n=1のサブバンド)と他方の第2サブバンド(量子準位n=2のサブバンド)とのエネルギーを一致させることができる。したがって、ピエゾ効果を利用して基底サブバンドから第2サブバンドへのキャリアの注入が可能である。
【0018】
本発明に係る光機能性多層体の製造方法は、基板上に複数の原料を供給し、上記の光機能性多層体を製造する方法であって、基板上にガリウム原子を吸着させる第1のステップと、ガリウム原子が吸着した基板上に窒素原子を吸着させる第2のステップとをm回交互に行うことにより、m原子層のGaNを形成する第1の工程と、基板上に、アルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子を吸着させる第3のステップと、アルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子が吸着した基板上に窒素原子を吸着させる第4のステップとをn回交互に行うことにより、n原子層のAlN、またはAlxGa1-xN(0<x<1)を形成する第2の工程と、を有し、第1の工程がn1回となり、第2の工程がn1−1回となるように両工程を交互に繰り返して、光機能性化合物半導体超格子構造物を形成し、第3のステップと第4のステップとを交互にn2回繰り返すことにより、n2原子層のAlN、またはAlxGa1-xN(0<x<1)から構成される量子障壁層を形成することを特徴とする。このようにすれば、上記の光機能性多層体が確実に製造される。
【0020】
本発明に係る量子カスケードレーザ装置は、キャリアの注入に応じて光を発生する活性層と、活性層で発生した光からレーザ光を得るための光共振器と、を備え、活性層は、上記の光機能性多層体から構成されることを特徴とする。光機能性多層体においては、基底サブバンド(量子準位n=1のサブバンド)から第2サブバンド(量子準位n=2のサブバンド)へのキャリアの注入が容易化される。そのため、この光機能性多層体を活性層として有するレーザ装置に適用すれば、サブバンド間遷移を利用したレーザ装置が確実に実現される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、説明の便宜上、光機能性化合物半導体超格子構造物を(AlN)n/(GaN)m超格子層と略称する。
【0022】
(第1の実施形態)
第1の実施形態においては、金属のGa、トリメチルアルミニウム(Trimethyl Aluminum:TMA)及びNH3を原料とし、サファイア(Al23)基板上に、(AlN)n/(GaN)m(n=1〜3,m=5〜100)を成長させる場合を説明する。ここで、金属のGaは、市販のペレット状或いはケーク状のものでよく、99.9999%程度の純度のGaを使用できる。
【0023】
図1は、本実施形態の光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法に好適に使用されるホットウォール法による化合物半導体結晶成長装置を示す構成図である。図2(a)〜(b)は、本実施形態の光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法における工程を模式的に示す図である。
【0024】
図1に示すように、この結晶成長装置10は、サファイア基板900(図4参照)を、その鉛直下方の表面を露出させて収納すると共に、当該基板に加熱及び光照射を行う基板収納部100と、鉛直上方が開放され、窒素ガスを含む気体を加熱する成長室200と、鉛直上方が開放され、成長させるべき陽イオン元素材料を加熱する成長室300と、鉛直上方が開放され成長室300の陽イオン元素材料とは別の成長させるべき陽イオン元素材料を加熱する成長室400と、基板収納部100で露出された基板の表面(図示下面)を、成長室200,300,400の何れかの開放部の上方へ移動する基板ステージ500と、基板収納部100、成長室200,300,400及び基板ステージ500の駆動部(不図示)を収納すると共に、内部の残留蒸気圧が1×10-4Pa程度以下とする真空槽600と、を備えている。
【0025】
基板収納部100は、サファイア基板を保持する基板ホルダ110と、鉛直下方が開放され基板ホルダ110を収納する石英管120と、この石英管120に巻回されたタングステン線からなる基板ヒータ130と、石英管120及び基板ヒータ130の回りを取り囲むステンレス管140と、を備える。ステンレス管140は加熱効率を高める。
【0026】
成長室200は、有底の石英管210と、この石英管210に巻回されたタングステン線からなるヒータ220と、石英管210及びヒータ220の回りを取り囲むステンレス管230と、を備える。ステンレス管230は加熱効率を高める。石英管210には、アンモニア(NH3)を供給する石英管240が挿入されている。
【0027】
成長室300は、有底の石英管310と、この石英管310に巻回されたタングステン線からなるヒータ320と、石英管310及びヒータ320の回りを取り囲むステンレス管330と、を備える。ステンレス管330は加熱効率を高める。
【0028】
成長室400は、有底の石英管410と、この石英管410に巻回されたタングステン線からなるヒータ420と、石英管410及びヒータ420の回りを取り囲むステンレス管430と、を備える。ステンレス管430は加熱効率を高める。石英管410には、TMAを供給する石英管440が挿入されている。
【0029】
基板ステージ500と、成長室200,300,400との間のギャップは任意に設定可能であり、また、基板ステージ500は、成長室200,300,400の上を自由にスライドすることが可能とされている。
【0030】
なお、サファイア基板の温度は、サファイア基板に接触させた熱電対(不図示)でモニタでき、成長室200,300,400の底部と開口部とには同じく熱電対(不図示)が接触されていて温度をモニタすることができる。
【0031】
次に、結晶成長装置10を用いて(AlN)1/(GaN)1超格子層を成長させる方法について説明する。
【0032】
(基板清浄化工程)
先ず、準備段階として、基板の清浄化を行う。サファイア基板900を、基板収納部100の基板ホルダ110に取り付け、石英管310の底部にGa金属を導入した後、真空槽600内の残留蒸気圧を1×10-4Pa台まで真空引きを行い、不純物ガスを排気する。
【0033】
次に、サファイア基板900を成長室200の上部に移動して、ヒータ220により、基板900を1000℃に加熱して、不純物を蒸発させ、サーマルクリーニングを施す。このとき、NH3は供給しない。この工程により、基板900の表面が清浄化される。
【0034】
(初期層堆積工程)
引き続き、基板900の温度を1000℃は保ったまま、成長室200の温度を880℃まで上昇させるとともに、アンモニアガスを10〜100cm3/minの流量で導入し、30分間、基板900の表面をアンモニアガスに晒す。これにより、基板900の表面に窒素が化合される。
【0035】
次いで、アンモニアガスの供給を止め、基板900を成長室200の上部からはずし、基板900の温度を550℃まで下げる。この間に、成長室300の底部及び開口部の温度を810℃とする。この温度が安定、すなわち、Gaの蒸気圧が安定した後、基板900を成長室300の上部に移動させ、温度を550℃に保った状態で1〜10分の間、Ga蒸着膜を基板900の表面に堆積させる。
【0036】
次に、再度、成長室200にアンモニアガスを10〜100cm3/min供給し、流量が安定した後、基板900を成長室300の上部から成長室200の上部に移動し、この状態を1分間保つ。その後、基板900の位置はそのままに保持し、基板900の温度を910℃まで3分間程度で上昇させる。910℃となった後、1分間保持すると、基板900の表面にGaNの初期層が形成される。
【0037】
(AlN堆積工程)
次いで、基板900を成長室400の上部に移動して、ヒータ420により基板900を所定の温度に加熱しながらTMAを導入し、基板900表面を任意時間TMAに晒し、基板900表面に一様にAlを堆積させる(図4(a)参照)。基板900表面に一様にAlが堆積すると、それ以上はAlは堆積しない。
【0038】
次いで、基板900を成長室200の上部に移動して、ヒータ220により基板900を所定の温度に加熱しながらNH3を導入し、基板900表面を任意時間NH3に晒す(図4(b)参照)。この時、基板900上には、1層のAlNが形成される。
【0039】
(GaN堆積工程)
次いで、基板900を成長室300の上部に移動して、ヒータ320により基板900を所定の温度に加熱しながら基板900表面を任意時間Gaに晒し、基板900表面に一様にGaを堆積させる(図4(c)参照)。基板900表面に一様にGaが堆積すると、それ以上はGaは堆積しない。
【0040】
次いで、基板900を成長室200の上部に移動して、ヒータ220により基板900を所定の温度に加熱しながらNH3を導入し、基板900表面を任意時間NH3に晒す(図4(d)参照)。この時、基板900のAlN上には、GaNが一層形成される。以上の工程で、AlN層の1原子層とGaN層の1原子層とが形成される。以降、AlN堆積工程とGaN堆積工程とを交互に繰り返すことにより、(AlN)1/(GaN)1を得ることができる。
【0041】
なお、(AlN)n/(GaN)m(n=1〜10、m=1〜100)の構造を作製する場合には、上記AlN堆積工程をn回行い、GaN堆積工程をm回行えば良い。そして、これらの工程を繰り返すことにより、(AlN)n/(GaN)mを得ることができる。例えば、n=1とし、m=18とすることにより、(AlN)1/(GaN)18超格子層が得られる。
【0042】
次に、上述の製造方法により作製した(AlN)1/(GaN)18超格子層の評価結果について説明する。
【0043】
図3は、(AlN)1/(GaN)18超格子層のX線回折パターンを測定値と理論値とで比較して示す線図である。同図において、符号Aで示すパターンは測定パターンである。また、符号Bで示すパターンは、18原子層のGaNと1原子層のAlNとから成る超格子層に対する理論計算により求めたパターンである。ただし、理論計算においては、X線回折ピークの強度、各ピークが現れる角度、及び各ピーク幅のみを求めた。
【0044】
図3から、測定結果と理論計算の結果とは良く一致していることが分かる。すなわち、本実施形態の製造方法により製造した超格子層は、所望の構成(GaN18原子層、AlN1原子層)を有していることが分かった。
【0045】
図4は、(AlN)1/(GaN)18超格子層のフォトルミネッセンス(Photoluminescence:PL)の測定結果を示す線図である。なお、この測定は室温にて行った。また、励起光として、ヘリウム−カドミウムレーザからの波長 325nmの紫外域光を使用した。
【0046】
図4中、ピークEは、(AlN)1/(GaN)18超格子層により形成される伝導帯の基底サブバンドと価電子帯の基底サブバンドとの間の電子遷移による発光ピークを表している。このピークEの強度は、本発明者らの知見によれば、従来のAlGaN/GaNの超格子構造よりも比較的強い。このことから、本実施形態の製造方法により製造した超格子層は優れた結晶性を有していることが分かった。
【0047】
図5は、PLE(フォトルミネッセンス励起スペクトル)の測定結果を示す線図である。また、図5に点線で示すピークは、図4に示したピークEである。PLEは、図4において矢印で示す波長540nmにおけるフォトルミネセンス光の強度をモニターし、その強度が励起光の波長に対してどのように変化するかを調べたものである。
【0048】
図5に示す通り、PLE(曲線F)は、励起光の波長が360nm以下では略一定であるが、360nmよりも励起光波長が長くなると急激に減少していく。また、励起光の波長が365nm以上では、PLEは認められなくなる。PLEが減少していく波長は、伝導帯の基底サブバンドと価電子帯の基底サブバンドとの間の電子遷移による発光を示すピークEとほぼ一致している。この結果から、波長540nmのフォトルミネセンス光は、伝導帯の基底サブバンドと価電子帯の基底サブバンドとの間に形成された深い準位を介して、伝導帯の基底サブバンドから価電子帯の基底サブバンドへと電子が遷移する際に放出される光であることが分かる。この結果は、また、(AlN)1/(GaN)18超格子層に、所望のサブバンドが形成されていることを示唆している。
【0049】
次に、本発明者らは、上述の製造方法により(AlN)1/(GaN)11超格子を作製した。以下に、(AlN)1/(GaN)11超格子層の特性評価について説明する。
【0050】
図6は、(AlN)1/(GaN)11超格子層のX線回折パターンを測定値と理論値とで比較して示す線図である。同図において、符号Cで示すパターンは測定パターンであり、符号Dで示すパターンは理論計算によるパターンである。理論計算は、11原子層のGaNと1原子層のAlNとから成る超格子層に対して行い、X線回折ピークの強度、各ピークが現れる角度、及び各ピーク幅を求めた。
【0051】
図6から分かるように、測定結果と理論計算の結果とは良く一致している。すなわち、本実施形態の製造方法により製造した超格子層は、目標通り、11原子層のGaNと1原子層のAlNとから構成されていることが分かった。
【0052】
上述の製造方法によれば、結晶性が良く、しかも、井戸層及び障壁層の層厚が極めて精度良く調整された(AlN)1/(GaN)m超格子層が得られる。また、本実施形態の成長方法によれば、有機金属気相成長(Metalorganic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法、及び化学ビームエピタキシー(Chemical Beam Epitaxy:CBE)法などといった装置構成が複雑で高価な装置を用いることなく、高品質な(AlN)1/(GaN)m超格子層を提供できる。
【0053】
(AlN)1/(GaN)m超格子層は、伝導帯において、大きなサブバンドブロードニングを持ち、薄いAlN障壁層とGaN井戸層の間に生じる格子歪みが小さいため、ピエゾ効果も小さい。また、サブバンド間の遷移を利用すれば、中赤外域の発光素子等への応用が可能である。例えば、(AlN)1/(GaN)m(m= 9)の構造において、波数k=π/Lにおいて電子がサブバンド間遷移すると、中赤外領域に相当する光が放出される。さらに、波数k=0におけるサブバンド間遷移(吸収)は、光ファイバ通信への応用に好適な波長領域に相当する。これらの遷移を利用すれば、新たな光学素子が実現され得る。
【0054】
(第2の実施形態)
(AlN)n/(GaN)m超格子層において生じるピエゾ効果を積極的に利用すれば、更に新しい光学素子を実現することも可能である。第2の実施形態においては、ピエゾ効果が顕著に現れる半導体光機能性多層体について説明する。なお、以下の説明では、簡単のため、半導体光機能性多層体を多層体と記す。
【0055】
図7(a)は、外部電圧を印加していないときの多層体のバンド構造を示す模式図である。図7(b)は、外部電圧を印加したときの同多層体のバンド構造を示す模式図である。なお、図7(a),(b)においては、伝導帯のバンド構造のみが示されている。
【0056】
図7(a)を参照すると、多層体100は、GaN層W1〜W6とAlN層B1〜B5とがW1,B1,W2,…,W5,B5,W6といった順に交互に形成された超格子101を有する。さらに、GaN層W6のAlN層B5と反対側の面にAlN層P1が形成されている。そして、AlN層P1に隣接して超格子102が形成され、さらに、AlN層P2を介して超格子103が形成されている。すなわち、多層体100においては、超格子101,102,103と、AlN層P1,P2,P3とが交互に積層されている。ここで、GaN層W1〜W6は9原子層から構成されることができる。また、AlN層B1〜B5は1原子層から構成されることができ、AlN層P1,P2,P3はAlNの5原子層から構成されることができる。以下、このような構成を場合により[(AlN)1/(GaN)9]6/(AlN)4と記す。この表記において、[(AlN)1/(GaN)9]6は、(AlN)1層と(GaN)9層とが交互に6層ずつ積層されることを示す。すなわち、上記の表記は、図7(a)におけるGaN層W6のAlN層B5と反対側に1原子層AlNが形成され、さらに、この1原子層AlNに隣接して(AlN)4層が形成されていることを示している。この1原子層AlNと(AlN)4層とにより、5原子層のAlN層P2が構成されている。
【0057】
このような構成は、例えばサファイア(Al23)基板の(0001)面上に構成されることができる。この場合、AlN及びGaNの間には成長面内で2.4%の格子不整合がある。AlNの格子定数はGaNより小さいため、多層体100中では、AlN層B1〜B5,P1〜P3には2次元的な引張り応力が働き、GaN層W1〜W6には2次元的な圧縮応力が働く。引張り応力と圧縮応力とが釣り合い、成長面内での各層の格子定数は等しくなる。すなわち、AlN層には、成長面内の格子定数がバルクのAlN層よりも大きくなるよう格子歪が生じ、GaN層には、成長面内の格子定数がバルクのGaNよりも小さくなるよう格子歪が生じている。このようにして生じる格子歪により、各層内にはピエゾ電圧が発生する。具体的には、AlN層B1〜B5(1原子層)には0.1V程度のピエゾ電圧が加わり、GaN層W1〜W6(9原子層)にはAlNと反対方向にピエゾ電圧が加わる。また、AlN層P1,P2,P3(5原子層)には、0.5V程度の比較的高いピエゾ電圧が生じている。各層においてピエゾ電圧が生じる結果、この超格子の伝導帯の下端は、図7(a)に示す通り、平衡状態において、傾くこととなる。このような傾きにより、平衡状態時には、超格子101〜103における量子準位はGaN層W1〜W6に局在化される。
【0058】
超格子101,102,103内での平均的な電界がゼロになるように多層体100に外部電圧を印加すると、図7(b)に示す通り、局在化された量子準位からサブバンドが形成される。ここで、量子井戸層P2に生じる0.5Vのピエゾ電圧のために、超格子103の基底サブバンドは、超格子102の量子準位n=2のサブバンド(以下、第2サブバンド)とほぼ等しいエネルギーレベルに位置する。したがって、超格子103の基底サブバンドの電子は、AlN層P2をトンネルし、超格子102の第2サブバンドへと注入される。すなわち、第2の実施形態の半導体光機能性多層体においては、電流注入が容易化される。
【0059】
以下に、図1に示す結晶成長装置10を用いて実施される多層体100の製造方法を説明する。先ず、第1の実施形態において説明した基板清浄化工程及び初期層堆積工程を行って、基板900上にGaNの初期層を形成する。
【0060】
(1原子層のAlNを堆積する工程)
次いで、基板900を成長室400の上部に移動して、ヒータ420により基板900を所定の温度に加熱しながらTMAを導入し、基板900表面を任意時間TMAに晒し、基板900表面に一様にAlを堆積させる(図4(a)参照)。基板900表面に一様にAlが堆積した後には、Alは堆積されない。そのため、基板900上にはAl原子が一層分堆積されることとなる。次に、基板900を成長室200の上部に移動して、ヒータ220により基板900を所定の温度に加熱しながらNH3を導入し、基板900表面を任意時間NH3に晒す(図4(b))。この時、基板900上には、AlNが一層形成される。
【0061】
(超格子形成工程)
先ず、GaNを1原子層だけ堆積する手順を説明する。基板900を成長室300の上部に移動して、ヒータ320により基板900を所定の温度に加熱しながら基板900表面を任意時間Gaに晒し、基板900表面に一様にGaを堆積させる(図4(c))。基板900表面に一様にGaが堆積した後には、Gaは堆積されない。そのため、基板900上にはGa原子が一層分だけ堆積されることとなる。次に、基板900を成長室200の上部に移動して、ヒータ220により基板900を所定の温度に加熱しながらNH3を導入し、基板900表面を任意時間NH3に晒す(図4(d))。以上により、GaNが1原子層堆積される。この後、GaNを1原子層堆積する手順が8回繰り返されて、9原子層からなるGaN層B1が堆積される。
【0062】
次いで、上述した1原子層のAlNを堆積する工程及び9原子層のGaNを堆積する工程が交互に5回ずつ繰り返されると、1原子層のAlN層W1〜W5と、9原子層のGaN層B2〜B6とが形成される。すなわち、超格子101が形成される。
【0063】
(5原子層のAlNを堆積する工程)
この工程においては、上述の1原子層のAlNを堆積する工程が5回繰り返される。これにより、5原子層からなるAlN層P1が形成される。
【0064】
以降、超格子形成工程と、5原子層のAlNを堆積する工程とを交互に繰り返すことにより、[(AlN)1/(GaN)9]6/(AlN)4を得ることができる。この製造方法においては、超格子101を形成する際に、1原子層のAlNを堆積する工程は9原子層のGaNを堆積する工程と交互に5回行われる。そして、次の6回目には、この工程そのものが5回繰り返される。このような手順によれば、多層体100を容易に得ることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
第3の実施形態においては、上記の多層体を応用した量子カスケードレーザ装置について説明する。図8は、本実施形態の量子カスケードレーザ装置の構造を示す模式図である。量子カスケードレーザ装置1は、サファイア基板2の(0001)面上に、バッファ層3、n型コンタクト層4、クラッド層5、光ガイド層6、活性層7、光ガイド層8、クラッド層9、及び上部n型コンタクト層10が順次積層されて構成される。コンタクト層4の一部には電極11が設けられ、コンタクト層10には電極12が設けられている。
【0066】
バッファ層3はアンドープGaNから形成される。コンタクト層4は、シリコン(Si)が添加されたGaNから形成され、その電子濃度は1×1018cm-3とすることができる。クラッド層5は、Siが添加されたn型のAlGaNから形成されてよく、その電子濃度は5×1017cm-3とすることができる。活性層7は、上述の[(AlN)1/(GaN)9]6/(AlN)4といった構成を有する。また、活性層7においては、[(AlN)1/(GaN)9]6層とAlN4層とが交互に数十層から百層程度積層されている。活性層はアンド−プで電子濃度は1×1017cm-3程度とすることができる。光ガイド層8は、アンドープn型のGaNから形成される。クラッド層9は、Siが添加されたn型のAlGaNから形成され、その正孔濃度は5×1017cm-3とすることができる。n型コンタクト層10は、Siが添加されたn型GaNから形成され、その正孔濃度は1×1018cm-3とすることができる。また、量子カスケードレーザ装置1においては対となる端面に、光共振器としてのミラー面7a,7bが形成されている。なお、活性層7は、上述の多層体100の製造方法により形成されることができる。層3〜6,8〜10については、図1に示す結晶成長装置10を利用して形成できる。
【0067】
以下、量子カスケードレーザ装置1の動作を図7及び図8を参照しながら説明する。図7において、左が基板側であり、右側に成長表面がある。AlN層とGaN層に生じるピエゾ電界は、成長の際の結晶方位により異なり、この成長法では、図7(a)に示す通り、ピエゾ電界が加わる。上記の構成を有する量子カスケードレーザ装置1において、電極11に対して電極12が負電位となるように両電極11,12間に電圧を印加する。すると、電子が、電極12、コンタクト層10、クラッド層9、及び光ガイド層8を順次通過し、活性層7へ至る。活性層7においては、図7(b)に例示される通り、超格子103の基底サブバンドから、超格子102の第2サブバンドへと電子が注入される。注入された電子は基底サブバンドへ遷移する。このとき、両サブバンド間のエネルギーギャップに相当するエネルギーが光hνとして放出される。超格子102の基底サブバンドに遷移した電子は、続いて、超格子101の第2サブバンドへと注入される。この後、第2サブバンドに注入された電子は、超格子101内において基底サブバンドへと遷移する。このときにも、両サブバンド間のエネルギーバンドギャップに相当するエネルギーが光hνとして放出される。このようにして、電子は各超格子へと次々と移動していき、光ガイド層6へと到達する。以降、電子は、クラッド層5及びコンタクト層4を順次通過し、電極11を通って外部回路(図示せず)に至る。
【0068】
活性層7において、電子がサブバンド間で遷移する際に放出された光hνは、ミラー面7a,7bとの間で共振されてレーザ発振が起こり、レーザ光Lがミラー面7bを通して放射される。
【0069】
量子カスケードレーザ装置は、1994年にベル研究所で開発され、現在まで著しい進歩を示している。ベル研究所において開発されたAlGaAs/InGaAs量子カスケードレーザ装置では、文献「J.Faist, F.Capasso, D.L.Sivco, C.Sirtori, A.L.Hutchinson, and A.Y.Cho, "Quantum cascade laser," Science, vol.264, p.553, 1994」)に示されるように、量子井戸の幅が発光層へと向かう方向に沿って漸次狭くなる構造を利用し、基底サブバンドから上位のサブバンドへ電流を注入している。このような構造では、各層の膜厚が高度に制御されなければ電流注入効率が低下し、発光強度が低下することとなる。したがって、製造歩留まりを向上させることは難しい。また、このような構造を形成するには、高度な膜厚制御性及び平坦性を可能とする高価な結晶成長装置が必要である。そのため、当該量子カスケードレーザ装置は高価となってしまうという問題もある。
【0070】
これに対し、本実施形態の量子カスケードレーザ装置1は、上述した多層体100を活性層7として利用しているため、基底サブバンドから第2サブバンドへ電子が容易に注入される。また、量子カスケードレーザ装置1は、従来の量子カスケードレーザ素子と異なり、量子井戸層幅が漸次変化する注入層を有していないため、構成が単純であり、その作製もまた容易である。高価な結晶成長装置を用いなくても、量子カスケードレーザ装置1は、例えば、図1に示す結晶成長装置10により容易に作製されることができる。
【0071】
さらに、活性層5の [(AlN)n/(GaN)mn1/(AlN)n2 nといった構成において、n及びmを適宜決定すれば、レーザ光の波長を所望の値にすることができる。また、n2を適当な値に選ぶことにより(AlN)n2層に加わるピエゾ電界を調整できるので、電子を伝導帯基底サブバンドから第2サブバンドへ一層効率良く注入することが可能である。また、[(AlN)n/(GaN)m]層の波数k=π/Lでの電子の反転分布が容易に得られるため、レ−ザ発振が容易に得られるという利点も有している。
【0072】
以上、本発明を幾つかの実施形態を参照しながら説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々に変形が可能である。また、上記実施形態においては、伝導帯に形成される量子準位及びサブバンドについて説明したが、価電子帯にも同様に量子準位及びサブバンドが形成されるため、これらを用いても同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0073】
上記実施形態においては、基板としてサファイア(Al23)基板を用いているが、ZrB2、BN、SiC、GaAsまたはZnOの何れかからなる基板を使用しても同様に良質の窒素系化合物半導体の形成が可能である。
【0074】
また、上記実施形態においては、化合物半導体の金属元素材料の供給を、金属のGaとTMAとを原料として行っているが、TMGと金属のAlとの組み合わせであっても良い。
【0075】
さらに、上記実施形態においては、ホットウォール法による化合物半導体結晶成長装置を用いたが、本発明の製造方法は、この成長装置による実施に限られるものではない。例えば、Gaと窒素原料とを基板上に同時に供給できる成長装置を用いても良い。このような成長装置は、例えば、成長室200と同様、成長室300にアンモニア(NH3)を供給する石英管を設けることにより実現される。この場合には、Ga及び窒素原料の供給量を適宜調整の上、Ga及び窒素原料を同時に基板上に供給することにより、GaNがm原子層成長される。その後、成長室200と成長室400とを用いて、上述のAlNの作製工程をn回行なうことにより、AlN層がn原子層形成される。以降、このようなGaNのm原子層の成長と、AlNのn原子層の成長とを繰り返すことにより、n原子層のAlNとm原子層のGaNと有する光機能性化合物半導体超格子構造物が製造され得る。また、光機能性多層体における光機能性化合物半導体超格子構造物を製造する際に、Ga及び窒素原料を同時に基板上に供給することにより、m原子層のGaNを形成することもできる。
【0076】
さらに、各成長室の温度、NH3ガスの供給量、基板をNH3ガスに晒す時間、及び真空槽内の圧力等の成長条件は適宜設定されて良いことは言うまでもない。
【0077】
さらにまた、第3の実施形態における多層体100は、9原子層のGaN6層と1原子層のAlN5層とが交互に積層された超格子と、5原子層のAlNとが交互に積層されて構成された。しかしながら、本発明に係る光機能性多層体は、N1層のm原子層GaN及びn1−1層のn原子層AlN又はAlxGa1-xN(0<x<1)とが交互に積層された光機能性化合物半導体超格子構造物と、n2原子層のAlNとが交互に積層されて構成されてよい。ここで、mは5〜100の範囲の自然数であり、nは1〜3の範囲の自然数であり、n1は2〜100の範囲の自然数であり、n2は4〜10の範囲の自然数であるように、適宜選択されて良い。これらを適宜選択することにより、所望の性質を有する光機能性多層体を得ることができる。また、このような光機能性多層体を用いれば、所望の特性を有する量子カスケードレーザ装置を実現できる。
【0078】
なお、GaNとAlxGa1-xN(0<x<1)とが交互に積層された光機能性化合物半導体超格子構造物を作製する場合には、第1の実施形態におけるAlN堆積工程において、基板900表面にAl原子を堆積させた後、基板900を成長室300の上部に移動する。次に、基板900表面にGa原子を堆積させた後、基板900を成長室200の上部に移動する。そして、基板900表面にN原子を堆積させれば良い。Al原子を堆積させる際に、TMA供給量、TMA供給時間、又は基板900の温度を調整することにより、基板900表面に堆積するAl原子の数を決定できる。また、Ga原子を堆積させる際に、堆積時間又は基板900の温度を調整することにより、基板900表面に堆積されるGa原子の数を決定できる。すなわち、これら条件を調整することにより、AlxGa1-xN(0<x<1)の組成比xを決定できる。本発明に係る光機能性化合物半導体超格子構造物において、第2の膜がAlxGa1-xNから構成されると、AlNから構成される場合に比べ、第1サブバンドのバンド幅を広く保った状態で、第1及び第2のサブバンド間のエネルギー差を小さくできる。この小さなエネルギー差を利用すれば、レーザ光の長波長化が実現される。また、このエネルギー差を利用すれば、長波長光レーザ装置の高温動作が実現される。
【0079】
さらに、第3の実施形態においては、ミラー面7a,7bを有するファブリ・ペロー共振器型の量子カスケードレーザ装置を例示したが、本発明に係る量子カスケードレーザ装置は、分布帰還(distributed feedback:DFB)型共振器、又は分布ブラッグ反射(Distributed Bragg Reflector:DBR)型共振器を備えるよう構成されてよい。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、独特な光学的特性を有する光機能性化合物半導体超格子構造物を提供するものである。また、本発明による光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法によれば、結晶性に優れ、しかも、井戸層及び障壁層の層厚が極めて精度良く調整された光機能性化合物半導体超格子構造物が提供される。すなわち、本発明によれば、従来にない特性を有する光学素子が実現される可能性が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本実施形態による光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法に好適に使用されるホットウォール法による化合物半導体結晶成長装置を示す構成図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、本実施形態の光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法における工程を模式的に示す図である。
【図3】図3は、(AlN)1/(GaN)18超格子層のX線回折パターンを測定値と理論値とで比較して示す線図である。
【図4】図4は、(AlN)1/(GaN)18超格子構造のフォトルミネッセンス測定結果を示す線図である。
【図5】図5は、(AlN)1/(GaN)18超格子構造のフォトルミネッセンス励起スペクトル測定結果を示す線図である。
【図6】図6は、(AlN)1/(GaN)11超格子構造のX線回折パターンを測定値と理論値とで比較して示す線図である。
【図7】図7(a)は、外部電圧を印加していない場合の半導体構造物のバンド構造を示す模式図である。図7(b)は、外部電圧を印加したときの当該半導体構造物のバンド構造を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明に係る量子カスケードレーザ装置の一実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
100…基板収納部、110…基板ホルダ、120…石英管、130…基板ヒータ、140…ステンレス管、200…成長室、210…石英管、220…ヒータ、230…ステンレス管、240…石英管、300…成長室、310…石英管、320…ヒータ、330…ステンレス管、500…基板ステージ、600…真空槽、900…基板。

Claims (3)

  1. m原子層(mは自然数)のGaNから構成される第1の膜と、n原子層(nは自然数)のAlNまたはAlxGa1-xN(0<x<1)から構成され前記第1の膜より薄い第2の膜と、が交互に積層されて、量子カスケードレーザ装置の活性層の一部を構成し量子障壁層と交互に積層される光機能性化合物半導体超格子構造物を製造する方法であって、
    基板上にガリウム原子を吸着させる第1の工程と、
    ガリウム原子が吸着した前記基板上に窒素原子を吸着させる第2の工程と、
    前記基板上にアルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子を吸着させる第3の工程と、
    アルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子が吸着した前記基板上に窒素原子を吸着させる第4の工程と、
    を有し、
    前記第1の工程と前記第2の工程とを1回ずつ又は複数回交互に行うことによる前記m原子層のGaNの形成と、
    前記第3の工程と前記第4の工程とを1回ずつ又は複数回交互に行うことによる前記n原子層のAlN、またはAlxGa1-xN(0<x<1)の形成と、
    を交互に行うことを特徴とする光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法。
  2. 前記基板が、Al23、ZrB2、BN、SiC、GaAsまたはZnOの何れかからなる基板であることを特徴とする請求項1に記載の光機能性化合物半導体超格子構造物の製造方法。
  3. m原子層(mは自然数)のGaNから構成される第1の膜とn原子層(nは自然数)のAlNまたはAlxGa1-xN(0<x<1)から構成され前記第1の膜より薄い第2の膜とが交互に積層された光機能性化合物半導体超格子構造物と、n2原子層(n2はnより大きい自然数)のAlNまたはAlxGa1-xN(0<x<1)から構成される量子障壁層と、が交互に積層され、m原子層のGaNから構成される第1の膜の数がn1(n1は自然数)であり、n原子層のAlNから構成される第2の膜の数がn1−1であり、量子カスケードレーザ装置の活性層として用いられる光機能性多層体を製造する方法であって、
    基板上にガリウム原子を吸着させる第1のステップと、前記ガリウム原子が吸着した前記基板上に窒素原子を吸着させる第2のステップとをm回交互に行うことにより、前記m原子層のGaNを形成する第1の工程と、
    前記基板上に、アルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子を吸着させる第3のステップと、アルミニウム原子、またはアルミニウム原子及びガリウム原子が吸着した前記基板上に窒素原子を吸着させる第4のステップとをn回交互に行うことにより、前記n原子層のAlN、またはAlxGa1-xN(0<x<1)を形成する第2の工程と、
    を有し、
    前記第1の工程がn1回となり、前記第2の工程がn1−1回となるように両工程を交互に繰り返して、前記光機能性化合物半導体超格子構造物を形成し、
    前記第3のステップと前記第4のステップとを交互にn2回繰り返すことにより、n2原子層のAlN、またはAlxGa1-xN(0<x<1)から構成される量子障壁層を形成する
    ことを特徴とする光機能性多層体の製造方法。
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