JP4574179B2 - 定着ベルトの製造方法 - Google Patents
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また、パイプの中に中子を挿入しパイプの外側からカッターで切込みを入れ、軸方向に引っ張って分断する手法では、100μm以下の厚みの金属層の場合引っ張り時に切断部近傍が変形してしまい、厚みが変わったり、形状が変形したりしてしまい使えなくなってしまう場合があった。
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、このような弊害をもたらすことのない端部形状の薄肉金属ベルトを容易に得ることを目的とする。
すなわち、本発明は、最内層としての金属ベルトと該金属ベルトの外周面を被覆している弾性層とを有する定着ベルトの製造方法であって、
該弾性層で外周を被覆されている薄肉金属ベルトの両端部の余剰部分の除去工程を有し、
該除去工程は、
(1)該薄肉金属ベルトに外周側から該薄肉金属ベルトの厚み方向に、該薄肉金属ベルトが所定の厚みの切込み残しを有するように切込み部を形成する工程と、
(2)該薄肉金属ベルトの端部から該切込み部近傍まで、該薄肉金属ベルトの略軸方向にハサミで切断し、次いで該薄肉金属ベルトの略軸方向に切断した端部をクランプ保持して該端部を引っ張って、その引っ張りせん断応力により該切込み部より該薄肉金属ベルトを切り裂いていくことにより該薄肉金属ベルトの端部の余剰部分を除去する工程と、
を含むことを特徴とする定着ベルトの製造方法に関する。
次に、薄肉金属ベルトの切込み部形成方法を説明する。まず、直円筒状の薄肉金属ベルトの内周側に直円筒状の中子を挿入する。中子は、ベルトに対して0≦中子の外径−ベルト内径≦50μmの必要がある。中子とベルトが上記関係にない場合には、中子によってベルトを固定することが不可能となり、安定的に切断処理を行うことが不可能となる。中子はベルトに対して0μm≦中子の外径−ベルト内径≦30μmであることが好ましく、10μm≦中子の外径−ベルト内径≦20μmであることがより好ましい。なお、中子をベルトに挿入する際には、中子の内側からエアーを吹き付けるのが良い。エア−が潤滑作用を有し、ベルトへの中子の挿入を容易に行うことができる。
カッターの刃先の角度は15°≦刃先の角度≦45°以下が好ましく30°がより好ましい。また刃先の形態は両刃でも片刃でも良いが、多層のベルトを切断する場合には軸方向に力が働きづらい両刃が好ましい。刃厚もできるだけ薄いほうが好ましいが、その強度から0.3mm以上1mm以下であることが好ましく、例えば、0.5mmであることがより好ましい。カッターの金属の部分での厚み方向への送りスピードはベルト材質によっても異なるが、1μm/s以上50μm/s以下が好ましい。また、切断スピードはベルトを回転させてカッターを挿入する為その相対速度となるが、刃先の磨耗およびカケを考慮して50mm/s以上500mm/s以下が好ましい
この切込み部を形成する切断手段としてはカッターに限られるわけではなく、例えばレーザーのような高エネルギーの除去加工、ディスクカッター等の研摩による摩擦力を用いる切断手段を用いることもできる。
この切込み部を形成する際、切断は金属層の一部が切断される深さまで行うが、いまだ切断されていない所定厚さの金属層が残る位置で切断を止める(従って、金属層には所定厚さの切込み残しが生じる。)。このとき本発明のベルトが金属層の外周上に更に別の層を有する場合には、金属層以外の層は全て切断されることとなる。この切断時に切断部において切断されずに残った金属層(切込み残し)の厚みは1μm以上15μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下であることがより好ましい。切込み残しがこれらの範囲内にあることによって、切断時に部分的に分断されてしまう部分が発生せず、バリ、カエリが発生しない。また、後の工程でせん断応力を付加することにより切込み部分に沿ってベルトをきれいに切り裂くことができる。このため、切込み残し厚みがこれらの範囲内にあることによってその後のせん断応力による切り裂きの工程でバリ、カエリを発生させることなくかつ切断部近傍の変形および、厚み変化を押さえて切込み部分に沿ってスムーズに分断することが可能となる。
次に、該切込み部(切断部)両側のベルトのうち少なくとも一方にせん断応力を加えることによって最終的な切断を行う。ここで、この工程はベルトの一方を固定し、他方にのみせん断応力をかけることによって行っても良いし、ベルトの一方と他方に互いに反対方向にせん断応力を付加することによって行っても良い。
また、切込み部はせん断応力を加える際に余剰部分である端部をしっかりと固定する必要があり、またあまり無駄な部分を多くしない為ベルト軸方向の端部から5mm以上30mm以下の位置に設けることが好ましい。切断位置がこれらの範囲内にあることによって、せん断応力による切断時に両端部を担持することが容易となる。
図1に本発明の薄肉金属ベルトの一例を示す。図1は、ベルトの所定位置を切断した場合に形成される端面の厚さ方向断面を表す。本例のベルトは、基層となる金属層11と、その外周面に積層した弾性層12と、さらにその外周面に積層した離型層13を有する。ベルトにおいて、金属層11が内面側(ベルトガイド面側)であり、離型層13が外面側(加圧ローラ面側)である。金属層11と弾性層12との間、弾性層12と離型層13との間には接着のためにプライマー層(不図示)を設けても良い。プライマー層はシリコーン系、エポキシ系、ポリアミドイミド系等の公知のものを使用すればよく、その厚さは、通常、1μm以上10μm以下程度である。弾性層は省略しても良く、特に本発明のベルトを被記録材上のトナーのり量が少なくトナー層の凹凸が比較的小さいモノクロ画像の定着ベルトとして用いた場合は、弾性層を省略することができる。
金属層は、SUS等の円柱状母型を電鋳浴に浸漬させ、母型表面に電鋳プロセスにより成長させたニッケル(合金も含む)を用いることが好ましい。この金属層のマイクロビッカース硬度は、より好ましくは330以上または420以下であり、特に好ましくは330以上420以下である。ニッケル電鋳は例えば、ステンレス鋼製などの母型を陰極として、電鋳プロセスにより製造される。この場合の電解浴としては、例えばスルファミン酸系などの公知のニッケル電解浴を用いることができ、pH調整剤、ピット防止剤、光沢剤などの添加剤を適宜加えてもよい。そして、電解浴温度、陰極電流密度などを制御することによって、所望のニッケルまたはニッケル合金からなるニッケル電鋳が得られる。金属層の厚みは10μm以上100μm以下の必要がある。金属層の厚みが10μm未満のときベルトの強度が弱くなり、100μmを超えるときは安定的なベルトの切断が困難となる。金属層の厚みは20μm以上50μm以下が好ましい。なお、ベルトが多層からなる場合、金属層は最内層となる。
弾性層は設けても設けなくてもよい。弾性層を設けることにより、本発明のベルトを画像形成装置の定着ベルトとして用いた場合に、ニップ部において被加熱像を覆って熱の伝達を確実にするとともに、金属層の復元力を補って回転・屈曲による疲労を緩和することができる。また、弾性層を付与することにより、定着ベルト離型層表面の未定着トナー像表面への追従性を増し、熱を効率よく伝達させることが可能になる。弾性層を設けた定着ベルトは、特に、未定着トナーののり量が多いカラー画像の加熱定着に適している。
離型層の材料としては特に限定されず、離型性、耐熱性のよいものを選べばよい。離型層3としては、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、特にPFAが好ましい。なお、必要に応じて、離型層にはカーボン、酸化すず等の導電剤等を離型層の10質量%以下含有させてもよい。
本発明の薄肉金属ベルトは、画像形成装置に用いられる定着装置用の定着ベルトとして用いることができる。定着ベルトとして上記ベルトを使用することにより、実使用時の定着ベルトの端部からのバリ・カエリ・変形および厚み変化を発生起因とする割れ等の破壊を防止出来る。このためより高耐久の定着ベルトとして使用することができる。定着装置はセラミック加熱方式と電磁誘導加熱方式の2種類の定着装置がある。セラミック加熱方式の定着装置を図5(a)に示す。この定着装置内では本発明のベルトは定着ベルト54として用いられている。また、電磁誘導加熱方式の定着装置を図6に示す。
本参考例で使用した薄肉金属ベルトは電鋳により作製した約30μm厚みのニッケルを金属層として持つベルトである。本ベルトは、電子写真の定着プロセスに使用する定着ベルトであり、その特性上、金属層の外側にゴム層とフッ素樹脂層をあわせもつ。以下に順を追ってベルトの構成を説明する。まず基材としてのニッケル電鋳ベルト(内径φ24mm,軸方向の長さ250mm)表面にプライマー(プライマー No.051(商品名):東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を塗布し、200℃で1時間熱処理した後、硬度21°(JIS−A)の付加反応型シリコーン(DY35−561(商品名):A/B=1:1質量比:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)を厚みが200μmになるようにコーティングし、150℃で30分間温風循環炉内で硬化させ、その後200℃の温風循環炉内で4時間、二次硬化させた。次に、エポキシ系プライマー(GLP−103(商品名):ダイキン工業株式会社製)で処理したシリコーンゴム層上に、フッ素樹脂を混合したポリアミン系フッ素ゴム塗料(ダイエルGLS−213(商品名):ダイキン工業株式会社製)を厚みが乾燥後20μmになるようにスプレー塗布した。60℃で30分間乾燥後、200℃で30分間温風循環炉内にて架橋硬化させた。次に、水性フッ素樹脂分散塗料(ネオフロンFEPディスパージョンND−1(商品名):ダイキン工業株式会社製)を厚みが乾燥後10μmになるようにスプレー塗布した。その後、60℃で30分間乾燥し、300℃の温風循環炉内で30分間焼成を行い、定着ベルトを得た。
この際、端部の金属層の切断面が少なくとも切断形態の異なる2層からなり、少なくともそのうちの1層がせん断力応力による破断面とすることで切断形態の異なる2層を形成しバリ、カエリを発生を防ぎ、しかも破断する際にベルトを変形させぬようにせん断方向の力を加えるせん断応力による破断をすることで切断部近傍の変形および、厚み変化を防止するために以下のように加工した。
以上より図1に示すような金属層の端部の切断面が二層からなっており、切断面の切断形態がカッターの刃を入れる工程よってできた破断面(A)と、未切断部分をヒネルことによる、せん断応力で破断させる工程によってできた破断面(B)を有する金属切断面形状のベルトを得た。図1からも分かるように金属切断面にバリ、カエリおよび切断部近傍の変形および、厚み変化は見られなかった。しかしながら切断した両端部の余剰部分37の除去はエアーを導入しても短くなってしまっている為、エアー漏れが発生し特に下側の余剰部分37は中子上で切開かなくては除去できなかった。
参考例1と同様に作製した定着ベルトを参考例1と同じように所望の長さ(軸方向の長さ230mm)にベルトを仕上げた。ただし本比較例においては参考例1と金属層が完全に切断されるまで刃を入れること以外はすべて同じである。この様に端部を切断されたベルトの金属切断面の形状は、図2からも分るように切断形態が刃を入れる工程によってできた摩擦切断面の単層であり、金属切断面に刃の進行方向にバリ、カエリが発生していた。そればかりではなく刃先は中子と接触し中子表面と刃先にも磨耗が見られ繰り返し使用は困難であった。
参考例1と同様に作製した定着ベルトを参考例1と同じように所望の長さ(軸方向の長さ230mm)にベルトを仕上げた。ただし本実施例においては、切込み残し厚みが10μmとなるように切込みを入れた後に中子から取り外し、ベルト製品部分内面を回転自在な軸に固定し、(本実施例ではブリヂストン社製のエアーピッカー内面用41を使用)切断と同時に切断部分をクランプ保持できるハサミ42を用い、ベルト両端部から切込み部分近傍まで刃先がくるようにハサミを挿入した。実際にこのハサミでベルト端部から切込み部近傍まで切断する際にその切断終点43(ハサミの先)から切込み部44までの距離が0.5mmになるように調整した。切断終点43から切込み部44までの距離は0.1mm以上2mm以下であればよいが、好ましくは0.3mm以上1mm以下がより好ましい。切断と同時に切断した端部をクランプ保持しそのままベルト円周の接線方向(せん断方向)に引っ張った。
図5に本実施例で使用した定着装置構成図を示す。図5(a)の装置断面図において、51は発熱体であり、アルミナ、セラミックなどからなる発熱体基板上に電流が流れることにより発熱する銀パラジウム(Ag/Pd)、Ta2Nなどの電気抵抗材料をスクリーン印刷等により線状あるいは帯状に塗工した層、さらにこの上に電気抵抗材料の保護と絶縁性を確保するために、厚み10μm程度のガラスコーティング層を順次形成しているものである。
そこで実施例2で作製した定着ベルトを図5に示すように配置し、発熱体最大電力700W、発熱体と定着ベルトを介した加圧ローラ間の加圧力12Kgの条件下でベルト表面に温調点を取り、ベルト表面が定着可能温度である180℃に設定した状態で空回転耐久テストを行った。
発熱体最大電力:700W
温調:ベルト表面温度180℃制御
発熱体と耐熱性ベルトを介した加圧ローラ間の総加圧力:12Kg
プロセススピード:120mm/sec
空回転耐久条件を上記条件とすると、この条件では500hr以上ベルト端部の破壊が起こらず良好な耐久性を示した。
実施例2と同様に比較例1で作製した定着ベルトの空回転耐久テストを行ったところ、
10hrで端部のバリ、カエリを起点とした端部破壊が観察された。
11 金属層(Ni電鋳)
12 シリコーンゴム層
13 フッ素樹脂層
14 摩擦破断面
15 せん断応力による破断面
16 ベルトガイド
17 磁性コア
18 励磁コイル
19 絶縁部材
21 金属層(Ni電鋳)
22 加圧用剛性ステイ
24 摩擦切断面
25 バリ
26 温度検知素子(サーミスタ)
27 励磁回路
28 ベルト
30 加圧部材(加圧ローラ)
31 金属層(Ni電鋳)
32 シリコーンゴム層
33 フッ素樹脂層
34 中子
35 切断刃
36 コロ
37 余剰部分
38 切込み部
40 摺動板
41 ベルトクランプ
42 切断端部保持機能付ハサミ(切断 兼 切断端部保持部材)
43 切断終点
44 切込み部
51 発熱体
54 ベルト
55 加圧ローラ
56 ベルトガイド部材
57 加圧部材
58 フランジ
100 定着装置
N 定着ニップ部
t トナー画像
P 被記録材
Claims (1)
- 最内層としての金属ベルトと該金属ベルトの外周面を被覆している弾性層とを有する定着ベルトの製造方法であって、
該弾性層で外周を被覆されている薄肉金属ベルトの両端部の余剰部分の除去工程を有し、
該除去工程は、
(1)該薄肉金属ベルトに外周側から該薄肉金属ベルトの厚み方向に、該薄肉金属ベルトが所定の厚みの切込み残しを有するように切込み部を形成する工程と、
(2)該薄肉金属ベルトの端部から該切込み部近傍まで、該薄肉金属ベルトの略軸方向にハサミで切断し、次いで該薄肉金属ベルトの略軸方向に切断した端部をクランプ保持して該端部を引っ張って、その引っ張りせん断応力により該切込み部より該薄肉金属ベルトを切り裂いていくことにより該薄肉金属ベルトの端部の余剰部分を除去する工程と、
を含むことを特徴とする定着ベルトの製造方法。
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