JP2004109929A - 定着ローラおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】定着ローラの離型層と、分離爪との接触部の平滑性を更に向上させ、より高寿命化された定着ローラおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】電子写真式の画像形成装置に使用され芯金1上に離型層4が形成された定着ローラ11において、表面粗さの異なる部分Ar,Bmが離型層4上に設けられた。表面形状が湾曲状の硬質ローラを用い、要求される離型層4の表面粗さ以下に硬質ローラの表面粗さを設定し、一定圧力で硬質ローラを離型層4に押付けるバニシング加工により、画像形成装置内に設けられた分離爪と当接される部分Bmの離型層4の表面粗さと、分離爪が非当接とされる部分Arの離型層4の表面粗さとを小さい表面粗さに加工する。
【選択図】 図1
【解決手段】電子写真式の画像形成装置に使用され芯金1上に離型層4が形成された定着ローラ11において、表面粗さの異なる部分Ar,Bmが離型層4上に設けられた。表面形状が湾曲状の硬質ローラを用い、要求される離型層4の表面粗さ以下に硬質ローラの表面粗さを設定し、一定圧力で硬質ローラを離型層4に押付けるバニシング加工により、画像形成装置内に設けられた分離爪と当接される部分Bmの離型層4の表面粗さと、分離爪が非当接とされる部分Arの離型層4の表面粗さとを小さい表面粗さに加工する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真式の画像形成装置に使用される長寿命化された定着ローラおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の定着装置の一形態を示すものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−181258公報(第4頁、第1図)
【0004】
複写機などの電子写真式の画像形成装置には、定着装置Uすなわち定着ユニットUが装着され、定着ユニットUには定着ローラ10が使用されている。
【0005】
図8に示す定着ユニットUの加熱は、誘導加熱装置40によって行われる。この誘導加熱装置40は、励磁コイル41を備えるものとして構成されており、定着ローラ10の外周面側に配置されている。図示しない励磁回路いわゆるインバータ回路から、励磁コイル41に印加される高周波電流で発生される磁束によって、磁界の変化を妨げるように、定着ローラ10に磁束と渦電流が発生される。この渦電流と加熱ローラ抵抗によってジュール熱が発生し、定着ローラ10が加熱される。例えば数十kHz〜数百kHzの高周波電流が励磁コイル41に流されると、定着ローラ10が加熱される。
【0006】
また、定着ローラの内部に、ハロゲンヒータなどの熱発生装置(図示せず)が内装された定着ユニット(図示せず)も一般に使用されている。
符号42は、磁場遮蔽材42とされている。磁場遮蔽材42の材料としては磁性材がよく、磁場遮蔽材42は、透磁率が高く発熱され難いフェライト材が用いられて形成されている。
【0007】
加圧ローラ20は、加圧機構(図示せず)により、前記定着ローラ10に対し加圧接触され、一定のニップ幅を持つように維持されている。このように、定着ローラ10は、加圧ローラ20と圧接され、定着ローラ10と、加圧ローラ20との境界に、定着ローラ10と加圧ローラ20との接触位置すなわちニップ部Npが形成されている。
【0008】
定着ローラ10は、駆動モータ(図示せず)により矢印方向R1に駆動され、これにより加圧ローラ20は従動されて矢印方向R2に回転される。その際に、前記ニップ部Npに発生される圧力と、加熱源40から発生される熱とにより、ニップ部Npに送りこまれた転写紙Pに対しトナーTが溶融定着される。
【0009】
定着ローラ10の周上において、前記ニップ部Npよりも回転方向下流側に、用紙Pを定着ローラ10から剥離させる分離爪45、定着ローラ10上にオフセットされたトナーTなどの現像剤Tや紙屑などのごみを除去するクリーニング部材46、オフセット防止用離型剤を塗布する離型剤塗布装置48、定着ローラ10の温度検出を行うサーミスタ49が設けられている。
【0010】
不図示の励磁回路の電流は、定着ローラ10の表面に圧接された温度ヒューズとされるサーモスタット43の検知、判定により、誘導加熱装置40の励磁コイル41に供給される。このサーモスタット43には、予め定着ローラ10の表面温度が設定されており、定着ローラ10の表面温度が異常温度に達すると、サーモスタット43は、回路に供給する電流を遮断させる。
【0011】
定着ローラ10は、芯金1と、この芯金1の表面に形成された離型層4とを備えるものとして構成されている。定着ローラ10の製造工程について説明すると、まず、アルミニウム合金材を円筒状の長尺ローラに成形し、これを所定の長さに切断して短尺のローラ芯金1を形成し、さらにその外周面に離型層4を確実に密着させるため、切削または研削などによって芯金1の表面を粗面化した後に、離型層4の形成と、離型層4の表面の仕上げ処理を行って、完成品の定着ローラ10が得られるものとされている。
【0012】
複写機などの電子写真式の画像形成装置内において、定着ローラ10には、トナーTを転写紙Pに溶融定着させる機能と、転写紙Pを定着ローラ10から分離する機能とが必要とされ、このようなことから、定着ローラ10の表面に離型層4が形成されている。定着ローラ10から転写紙Pを確実に分離させるという機能に関しては、定着ユニットU内の構成品とされる分離爪45などによって、その機能が確保されている。
【0013】
定着ローラ10の表面の離型層4に対して分離爪45が摺動接触するため、分離爪45の接触による磨耗によって離型層4が破損されることがあり、定着ローラ10は消耗品扱いのものとされている。定着ローラ10が消耗品として取り扱われると、定着ローラ10の交換などのためのランニングコストや、定着ローラ10の破棄による環境への影響等が課題となり、このようなことから、定着ローラ10の長寿命化のニーズは依然として高いものとされていた。
【0014】
従来、定着ローラ10の長寿命化の方法として、例えばデュポン社製:テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂を含む合成重合体がローラ芯金1の表面上に静電塗装され、これの焼成工程が行われてローラ芯金1の表面に離型層4が形成された後に、ローラ芯金1上の離型層4の「表面粗さ」を極力低減させることを目的として、金属ローラをローラ胴部11bの端部から一定圧力にて押付けながら、ローラ軸方向にバニシング加工を行うといった方法がとられていた。
【0015】
このようにすると、定着ローラ10の離型層表面の「表面粗さ」及び「うねり」などが小さいものとなる。このように、定着ローラ10の離型層表面の平滑性を向上させることで、通紙や分離爪45による離型層4の摩耗を低減させ、定着ローラ10の長寿命化を図るということが行われてきた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の定着ローラ10にあっては、分離爪45の先端部45aと、定着ローラ10の離型層4との接触部においては、トナーTが転写紙Pに溶融定着される際に、回転される定着ローラ10の離型層4に対し、分離爪45の先端部45aは絶えず接触されるため、定着ローラ10の離型層4と、分離爪45の先端部45aとの接触部は、離型層4の他の部分と比較すると、摩耗による破損が激しいという問題があった。
【0017】
本発明は、上記問題点を鑑みて、定着ローラの離型層と、分離爪との接触部の平滑性を更に向上させ、より高寿命化された定着ローラおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載された発明は、電子写真式の画像形成装置に使用され芯金上に離型層が形成された定着ローラにおいて、表面粗さの異なる部分が前記離型層上に設けられたことを特徴とする定着ローラである。
この構成では、摩擦抵抗の高い部材が離型層の表面粗さの小さい部分に接するときに、定着ローラが回転接触するときの抵抗は小さいものとなる。従って、摩耗による離型層の破損が低減化されることとなる。これにより定着ローラの長寿命化が可能とされる。
【0019】
請求項2に記載された発明は、前記画像形成装置内の定着ユニットに配設された分離爪と当接され、該分離爪と当接される部分の前記離型層の表面粗さは、該分離爪が非当接とされる部分の該離型層の表面粗さよりも小さい表面粗さとされたことを特徴とする請求項1に記載の定着ローラである。
この構成では、定着ローラと分離爪との摩擦力が低減化されて定着ローラの離型層の破損が防止され、定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0020】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載の定着ローラの製造方法であって、表面形状が湾曲状の硬質ローラを用い、要求される前記離型層の表面粗さ以下に該硬質ローラの表面粗さを設定し、一定圧力で該硬質ローラを該離型層に押付けるバニシング加工により、前記画像形成装置内に設けられた分離爪と当接される部分の該離型層の表面粗さと、該分離爪が非当接とされる部分の該離型層の表面粗さとを小さい表面粗さに加工することを特徴とする定着ローラの製造方法である。
この構成では、湾曲状の硬質ローラの表面形状および表面粗さに対応した面が、定着ローラの離型層に転写されることとなる。従って、硬質ローラの表面形状と、硬質ローラの表面粗さとが、良好な状態に維持管理されることで、定着ローラの安定された加工品質が確保されることとなる。また、定着ローラの消耗度合が低下されるため、定着ローラのランニングコストが低減化されることとなる。
【0021】
請求項4に記載された発明は、前記分離爪と当接される部分の前記定着ローラの位置に第1の硬質ローラを押付け、次に、該定着ローラを回転機構によって回転させて第1のバニシング加工を行い、その後、該第1の硬質ローラと同等の前記表面形状および前記表面粗さとされる第2の硬質ローラを、該定着ローラに押付けながら該定着ローラの胴部の端部から該定着ローラの軸方向に移動させて第2のバニシング加工を行うことを特徴とする請求項3に記載の定着ローラの製造方法である。
この構成では、定着ローラの離型層の表面が平滑化されることとなる。従って、定着ローラの離型層の表面にみられるうねり等の表面状態は、良好な状態に確保されることとなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る定着ローラの一実施形態を示す説明図、図2は、本発明に係る定着ローラの他の実施形態を示す断面図である。
【0023】
図1,図2に定着ローラ10,11の基本的な構成を示す。定着ローラ11,12は、略円筒形のローラ芯金1,2に、トナーのオフセットを防止するための離型層4が形成されたものとして構成されている。
【0024】
芯金1,2は、ステンレス鋼などの金属性材料が用いられて形成されている。芯金1,2の材質として、例えばステンレスが好ましいものとされている。これはステンレスが強磁性体であることから、一番共振しやすいものとされ、例えば誘導加熱装置40(図8)に用いられるものとして、強磁性、耐食性などの優れた特性を備えもつものとされているからである。
【0025】
離型層4は、パーフルオロアルコキシ(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFAとPTFEとの混合体などといったフッ素樹脂などにより形成されている。PFAとして、例えばデュポン社製:テフロン(登録商標)PFA等が挙げられる。また、PTFEとして、例えばデュポン社製:テフロン(登録商標)PTFE等が挙げられる。
【0026】
芯金1,2の表面に離型層4が確実に接着されるために、芯金1,2と、離型層4との間に、プライマーが塗装されて介在された状態のものとされている。また、離型層4にプライマーが含有されたものも使用可能とされる。離型層4の厚さは、10〜30μmとされている。
【0027】
また、離型層4の下に、例えば0.2〜0.5mmの厚さに形成されたシリコーンゴム等の弾性層が設けられてもよい。また、シリコーンゴム等の弾性層の上に、離型層4として、例えばフッ素ゴムが設けられたものも使用可能とされる。また、芯金1,2の表面に、離型層4として、直接、フッ素ゴムのみが用いられたものも使用可能とされる。フッ素ゴムとして、例えば、デュポン社:バイトン(登録商標)等が挙げられる。
【0028】
図2に示す定着ローラ12は、胴部12bの両端部12e,12fに対し、胴部12bの中央部12cがくびれた形状とされている。図2に示す定着ローラ12と同じく、図1に示す定着ローラ11の胴部11bの中央部11cも、定着ローラ11の胴部11bの両端部11e,11fに対し、緩やかで僅かにくびれた形状とされている。
【0029】
このような形状に前記定着ローラ11,12が形成されていれば、中心部が緩やかに膨らまされた形状の耐熱ゴム製加圧ローラ(図示せず)が、前記定着ローラ11,12に押接されつつ回転されて用紙P(図8参照)の定着工程が行われる際に、高温に加熱された定着ローラと、加圧ローラとの間を通された用紙Pに、例えば「しわ」が付いてしまう等ということなく、確実に用紙Pの定着工程が行われることとなる。
【0030】
図1に示す定着ローラ11と同じく、図2に示す定着ローラ12にも、分離爪と当接される部分Bm(図1)と、各分離爪が非当接とされる部分Ar(図1)とが設けられている。また、例えば、耐熱性を有するセラミックスフェルト、岩綿などの断熱性材料が用いられて形成された断熱層が、芯金に設けられた定着ローラ(図示せず)も使用可能とされる。
【0031】
図1に示される定着ローラ11は、複写機などの電子写真式の画像形成装置に使用される。この定着ローラ11は、ステンレス鋼が用いられて円筒状に形成され、ステンレス製の芯金1の外周面上に、合成樹脂製の離型層4が形成されている。この定着ローラ11には、「表面粗さ」の異なる領域とされる各部分Ar,Bmが離型層4の表面に存在する。
【0032】
「表面粗さ」の異なる領域とされる各部分Ar,Bmが離型層4の表面に設けられているので、例えば、定着ユニットU(図8参照)の分離爪45や、コピー用紙Pなどのように、定着ローラ11(図1)の離型層4の表面に対し摩擦抵抗が異なる部材として、摩擦抵抗の高い部材が離型層4の表面粗さの小さい部分Bmに接するときに、定着ローラ11が回転接触するときの抵抗は小さいものとなる。従って、摩耗による離型層4の破損を低減させることができる。これにより定着ローラ11の長寿命化が可能となる。
【0033】
図8に示すように、定着ローラは、画像形成装置内の定着ユニットUに配設された各分離爪45の先端部45aと当接される。分離爪45と当接される部分Bm(図1)の離型層4の「表面粗さ」は、各分離爪45(図8)が非当接とされる部分Ar(図1)の離型層4の表面粗さよりも小さい表面粗さとされている。このようにすることで、定着ローラ11と分離爪45との摩擦力が低減化されて、定着ローラ11の離型層4の破損が防止される。従って、定着ローラ11の長寿命化が可能となる。
【0034】
以下に上記定着ローラ11の製造方法について図面を参照して説明する。
図3は、本発明に係る定着ローラの製造方法が行われる際に用いられる製造装置を示す説明図、図4は、同じく定着ローラの製造方法が行われる前の状態を示す図であり、(A)は製造装置を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【0035】
図5は、同じく定着ローラの製造方法における第1のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図、図6は、同じく定着ローラの製造方法における第2のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図、図7は、バニシング回数と表面粗さとの関係を示す説明図である。
【0036】
バニシングとは、相手加工品の表面に工具を押付けて滑らせ、表面の小さい凸部をつぶし、凹部を埋めて、表面を平滑にする方法のことを意味する。バニシングは、バニシ仕上げとも呼ばれる。
【0037】
図3に基づいて、定着ローラの製造装置の構成および動作を説明する。
【0038】
定着ローラの製造装置は、PFAを静電粉体塗装し、焼成を行って離型層4が形成された定着ローラ11と、その定着ローラ11のジャーナル部分11j,11kがエアシリンダ75によってチャッキング可能とされ、ワーク回転用モータ71のプーリ71pからベルト72を介して主軸73側のプーリ73pおよび主軸73、さらにテール軸74へと回転駆動力が伝達される回転機構70と、バニシング加工を行うためのR形状の押付け面53pを有する金属ローラ53と、その金属ローラ53を定着ローラ11の胴部11bに押付けるためのエアシリンダ55と、分離爪が定着ローラ11の離型層4に接触する部分に相当する位置に固定されており金属ローラ53のガイド部を有するローラ押付けユニット51と、定着ローラ11の胴部11bの一端部11eから他端部11fにかけてバニシング加工を行うためのエアシリンダ65付のローラ押付けユニット61と、そのローラ押付けユニット61を定着ローラ11の軸方向に移動可能な手段たとえば1軸の電動アクチュエータ67とを備えるものとして構成されている。
【0039】
各ローラ押付けユニット51は、定着ローラ11に当接される分離爪と同位置となるようにレイアウトされて基板50に装着されている。また、上記定着ローラ11の胴部11bの離型層4よりも硬度の高い硬質ローラ53,63(図3〜図6)として、ここでは金属ローラ53,63が用いられている。
【0040】
定着ローラの製造装置の動作について説明すると、図3に示すように、定着ローラ11が主軸73およびテール軸74にてチャッキングされ、分離爪の位置に相当する位置に固定され且つ分離爪と同数とされる複数のローラ押付けユニット51が、図5に示すように、定着ローラ11側に向けて前進され、金属ローラ53が定着ローラ11の胴部11bに当接される。
【0041】
その時の押付け力は、エアシリンダ55の空気圧いわゆるエア圧により管理される。その状態で、主軸73、テール軸74をワーク回転用モータ71によって回転させることで、金属ローラ53が連れまわりし、分離爪に接触する胴部11bの位置が定着ローラ11の回転数分ほど押圧されて、第1のバニシング加工が行われる。
【0042】
その後、ローラ押付けユニット51が後退され、定着ローラ11の回転が停止される。
【0043】
定着ローラ11の回転停止後、胴部11bの一端部11eから第2のバニシング加工を開始するローラ押付けユニット61が前進し、金属ローラ63が定着ローラ11の胴部11bに当接される。その時の押付け力は、エアシリンダ65の空気圧により管理される。また、その時の押付け力は、定着ローラ11を構成する芯金1の変形強度により異なる。
【0044】
その状態で、主軸73、テール軸74をワーク回転用モータ71によって回転させることで、金属ローラ63が連れ回りし、定着ローラ11の回転と同時に1軸電動アクチュエータ67にてローラ押付けユニット61を定着ローラ11の軸方向に移動させることで、定着ローラ11の胴部11b全体のバニシング加工を行う(図6)。定着ローラ11の胴部11b全体がバニシング加工された後に、ローラ押付けユニット61を後退させ、図3,図4に示すように原点復帰を行い、バニシング加工が完了される。
【0045】
定着ローラ11の長寿命化方法について説明する。
電子写真装置内の加圧ローラ20(図8参照)と、定着ローラとが圧接されて形成されるニップ部Npにおいて、トナーT付の転写紙Pからの離型性が確保されるために、定着ローラ11(図3,図4)の離型層4にPFAが用いられている。ローラ芯金1の表面上に粉体のPFAを静電粉体塗装した後に、約390℃の雰囲気中にて約40分間焼成する。その後、定着ローラ11が常温に冷却されて離型層4が形成される。
【0046】
その後、表面仕上げがRy(最大高さ)0.2s以下であり、且つ、Ra(中心線平均粗さ)0.05a以下で、押付け面53p(図5(B))がR形状を有した金属ローラ53を離型層4に押付けながら、離型層4の表面をバニシング加工する。
【0047】
前記Ryは、JIS B 0601に定めされる「最大高さ」を意味する。また、前記Raは、同じくJIS B 0601に定めされる「算術平均粗さ」いわゆる「中心線平均粗さ」を意味する。
【0048】
焼成後の定着ローラ11の離型層4をバニシング加工すると、金属ローラ53の表面形状が離型層4に転写され、「表面粗さ」が低減化される。さらにその上から、再度、バニシング加工を行うと、図7に示すように「表面粗さ」に関しては、より低減化される結果となる。但し、その低減率は飽和していく傾向にある。
【0049】
これは、金属ローラ53,63を押付けることで離型層4が圧縮転写され、回数を重ねることによって転写率が向上することによる。この特性を応用して、定着ユニットの分離爪に接触する定着ローラ11(図3〜図5)の位置に、バニシング加工用の第1の金属ローラ53を押付け固定し、ローラ芯金1を回転機構70によってチャック回転させてバニシング加工を行う。
【0050】
図5に示すように、分離爪に接触する定着ローラ11の一部分に「すじ」Bmが残される。詳しく説明すると、定着ローラ11の円周上に、リング状のバニシング加工跡いわゆるリング状の「すじ」Bmが残される。
【0051】
その後、定着ローラ11の胴部11bの端部11eから、前記第1の金属ローラ53と略同形態の「表面形状」及び「表面粗さ」を有するバニシング加工用の第2の金属ローラ63を一定圧にて押付けながら、定着ローラ11の軸方向に移動させて従来の方法でバニシング加工を行う。
【0052】
このようにすることで、分離爪が接触する位置の定着ローラ11の胴部11b表面は、金属ローラ53,63を押付け固定させた状態で定着ローラ11を回転させるため、回転数分、同位置をバニシング加工していることになる。従って、定着ローラの軸方向に移動させたバニシング加工を、1回だけ行うことで形成された定着ローラの表面よりも、表面の光沢度が増し、離型層4への金属ローラ53,63の転写率が向上する。このため、定着ローラ11の離型層4の「表面粗さ」も低減され、このことから、定着ユニットU(図8参照)内の分離爪45との接触回転時の摩擦抵抗も低減化されることとなり、これにより、定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0053】
定着ローラ11の製造方法が精度良く確実に行われるために、予め必要とされるものや、予め設定しておくべきことと共に、定着ローラ11の製造方法について説明すると、図5(B)に示すように、まず、押付け面53pの表面形状が略R形状をした金属ローラ53を予め製作しておく。
【0054】
具体的に説明すると、金属ローラ53の外側に向けて押付け面53pが緩やかに膨らまされて、湾曲状の押付け面53pが設けられた金属ローラ53を予め製作しておく。また、電子写真式の画像形成装置に要求される定着ローラ11の離型層4の表面粗さ以下となるように、金属ローラ53の前記押付け面53pの「表面粗さ」を予め調整しておく。
【0055】
図5(B)に示すように、第1の金属ローラ53は、前述した形態の押付け面53pと、略平面状に形成された両側面53sと、ローラ押付けユニット51(図5(A))に備えられた軸に対応する軸孔53hとを備えるものとして形成されている。前記両側面53sの略中央部に前記軸孔53hが貫設されている。
図3〜図6に示される第2の金属ローラ63も、前記第1の金属ローラ53と略同形態をしたローラとして形成されている。
【0056】
図3〜図6に示すように、エアシリンダ55,65に充填される圧縮空気により、エアシリンダ55,65に一定の圧力が加えられることで、金属ローラ53,63は相手加工品に対し押圧可能な状態とされる。金属ローラ53,63を定着ローラ11の離型層4に押付け、これと共に定着ローラ11を回転させることで、バニシング加工が行われる。
【0057】
このようなバニシング加工が行われることにより、画像形成装置内に設けられた分離爪45(図8)と当接される部分Bm(図1,図6)の離型層4の表面粗さと、分離爪45(図8)が非当接とされる部分Ar(図1,図6)の離型層4の表面粗さとが、略均一な小さい表面粗さに加工されることとなる。
【0058】
このようにして定着ローラ11が製造されると、湾曲状の金属ローラ53,63の押付け面53pの表面形状および表面粗さに対応した面が、定着ローラ11の離型層4に転写されることとなる。従って、金属ローラ53,63の押付け面53pの表面形状と、金属ローラ53,63の「表面粗さ」とが、良好な状態に維持管理されることで、定着ローラ11の安定された加工品質が確保できることとなる。また、定着ローラ11の消耗度合が低下されるため、定着ローラ11のランニングコストを低減化させることができる。
【0059】
画像形成装置内の定着ユニットUの分離爪45(図8)と当接される部分Bm(図1,図3〜図5)の定着ローラ11の位置に、第1の金属ローラ53を押付ける。次に、定着ローラ11をチャックなどにより回転機構70(図3)に固定させ、回転機構70によって定着ローラ11を回転させて第1のバニシング加工を行う(図5)。
【0060】
その後、第1の金属ローラ53と略同等の「表面形状」および「表面粗さ」とされる第2の金属ローラ63(図5)を、定着ローラ11の離型層4に押付ける。定着ローラ11を回転機構70によって回転させながら、1軸の電動アクチュエータ67により、定着ローラ11の胴部11bの一端部11eから他端部11fにかけて、定着ローラ11の軸方向すなわち定着ローラ11の長手方向に第2の金属ローラ63を移動させて第2のバニシング加工を行う(図6)。
【0061】
このような手順によって定着ローラ11が製造されることで、定着ローラ11の離型層4の表面を精度よく効率的に平滑化させることができる。従って、定着ローラ11の離型層4の表面にみられる「うねり」等の表面状態や表面特性を良好な状態に確保することができる。
【0062】
バニシング加工が行われた後の定着ローラ11(図1)は、各分離爪の位置に対応する離型層4の部分Bmが複数回ほどバニシング加工されたものである。金属ローラ53(図5)が定着ローラ11の同位置を複数回転して、定着ローラ11の離型層4に、バニシング加工跡とされる部分Bmが形成されたので、例えば1回のみ定着ローラ11の軸方向にバニシング加工が行われたものの表面状態と比べると、複数回のバニシング加工が行われた部分Bmの表面粗さ(Ra、Rz)は低いものとなる(図7参照)。前記Rzは、JIS B 0601に定めされる「十点平均粗さ」を意味する。
【0063】
図5(A)に示すように、外観上、定着ローラ11の胴部11bに、リング状光沢度が向上された「すじ」Bmが見られる。また、図5(B)に示すように、「すじ」Bmの幅Bwは、押付けた金属ローラ53のR形状をした押付け面53pの幅寸法53wに対応したものとされている。
【0064】
しかし、その後、図6(A),(B)に示すように、ローラ押付けユニット61を定着ローラ11の軸方向に移動させ、最後に定着ローラ11の胴部11b全体をバニシング加工するため、複数回のバニシング加工が行われた「すじ」Bmと、1回のみのバニシング加工が行われた面の部分Arとの境界線すなわち「段差」および「うねり」(最大ろ波うねりWCM)は、3μm以下となり、定着ローラ11の機能上、電子写真式の画像形成装置で作成される画像の品質に関して、全くと言っていいほど影響を与えない安定した品質を得ることが可能となる。
【0065】
「ろ波うねり曲線」とは、「断面曲線」から、所定の波長より短い「表面粗さ」の成分を位相補償形低域フィルタで除去した曲線を意味し、JIS B 0601に基づいて定められたものである。また「断面曲線」とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭を意味し、同じくJIS B 0601に基づいて定められたものである。
【0066】
このようにして製造された定着ローラは、複写機などの電子写真式の画像形成装置に装着される定着ユニットに取付けられる。例えば、図8に示す定着ユニットUの定着ローラ10に代えて、図1に示す定着ローラ11または図2に示す定着ローラ12が、図8に示す電磁誘導加熱方式の定着ユニットに装着されたものも使用可能とされる。電磁誘導加熱方式の定着ユニットは、加熱特性に優れるものとされている。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、電子写真式の画像形成装置に使用され芯金上に離型層が形成された定着ローラにおいて、表面粗さの異なる部分が離型層上に設けられた定着ローラとされているので、摩擦抵抗の高い部材が離型層の表面粗さの小さい部分に接するときに、定着ローラが回転接触するときの抵抗は小さいものとなる。従って、摩耗による離型層の破損を低減させることができる。これにより定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0068】
請求項2に記載の発明によれば、画像形成装置内の定着ユニットに配設された分離爪と当接され、分離爪と当接される部分の離型層の表面粗さは、分離爪が非当接とされる部分の離型層の表面粗さよりも小さい表面粗さとされた定着ローラであるので、定着ローラと分離爪との摩擦力が低減化されて定着ローラの離型層の破損が防止され、定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0069】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の定着ローラの製造方法であって、表面形状が湾曲状の硬質ローラを用い、要求される離型層の表面粗さ以下に硬質ローラの表面粗さを設定し、一定圧力で硬質ローラを離型層に押付けるバニシング加工により、画像形成装置内に設けられた分離爪と当接される部分の離型層の表面粗さと、分離爪が非当接とされる部分の離型層の表面粗さとを小さい表面粗さに加工する定着ローラの製造方法とされているので、湾曲状の硬質ローラの表面形状および表面粗さに対応した面が、定着ローラの離型層に転写されることとなる。従って、硬質ローラの表面形状と、硬質ローラの表面粗さとが、良好な状態に維持管理されることで、定着ローラの安定された加工品質が確保できることとなる。また、定着ローラの消耗度合が低下されるため、定着ローラのランニングコストを低減化させることができる。
【0070】
請求項4に記載の発明によれば、分離爪と当接される部分の定着ローラの位置に第1の硬質ローラを押付け、次に、定着ローラを回転機構によって回転させて第1のバニシング加工を行い、その後、第1の硬質ローラと同等の表面形状および表面粗さとされる第2の硬質ローラを、定着ローラに押付けながら定着ローラの胴部の端部から定着ローラの軸方向に移動させて第2のバニシング加工を行う定着ローラの製造方法とされているので、定着ローラの離型層の表面を平滑化させることができる。従って、定着ローラの離型層の表面にみられるうねり等の表面状態を良好な状態に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定着ローラの一実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る定着ローラの他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る定着ローラの製造方法が行われる際に用いられる製造装置を示す説明図である。
【図4】同じく定着ローラの製造方法が行われる前の状態を示す図であり、(A)は製造装置を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【図5】同じく定着ローラの製造方法における第1のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【図6】同じく定着ローラの製造方法における第2のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【図7】バニシング回数と表面粗さとの関係を示す説明図である。
【図8】従来の定着装置の一形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 芯金
4 離型層
11 定着ローラ
11b 胴部
11e 一端部(端部)
45 分離爪
53,63 金属ローラ(硬質ローラ)
70 回転機構
Ar 部分
Bm すじ(部分)
U 定着装置(定着ユニット)
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真式の画像形成装置に使用される長寿命化された定着ローラおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の定着装置の一形態を示すものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−181258公報(第4頁、第1図)
【0004】
複写機などの電子写真式の画像形成装置には、定着装置Uすなわち定着ユニットUが装着され、定着ユニットUには定着ローラ10が使用されている。
【0005】
図8に示す定着ユニットUの加熱は、誘導加熱装置40によって行われる。この誘導加熱装置40は、励磁コイル41を備えるものとして構成されており、定着ローラ10の外周面側に配置されている。図示しない励磁回路いわゆるインバータ回路から、励磁コイル41に印加される高周波電流で発生される磁束によって、磁界の変化を妨げるように、定着ローラ10に磁束と渦電流が発生される。この渦電流と加熱ローラ抵抗によってジュール熱が発生し、定着ローラ10が加熱される。例えば数十kHz〜数百kHzの高周波電流が励磁コイル41に流されると、定着ローラ10が加熱される。
【0006】
また、定着ローラの内部に、ハロゲンヒータなどの熱発生装置(図示せず)が内装された定着ユニット(図示せず)も一般に使用されている。
符号42は、磁場遮蔽材42とされている。磁場遮蔽材42の材料としては磁性材がよく、磁場遮蔽材42は、透磁率が高く発熱され難いフェライト材が用いられて形成されている。
【0007】
加圧ローラ20は、加圧機構(図示せず)により、前記定着ローラ10に対し加圧接触され、一定のニップ幅を持つように維持されている。このように、定着ローラ10は、加圧ローラ20と圧接され、定着ローラ10と、加圧ローラ20との境界に、定着ローラ10と加圧ローラ20との接触位置すなわちニップ部Npが形成されている。
【0008】
定着ローラ10は、駆動モータ(図示せず)により矢印方向R1に駆動され、これにより加圧ローラ20は従動されて矢印方向R2に回転される。その際に、前記ニップ部Npに発生される圧力と、加熱源40から発生される熱とにより、ニップ部Npに送りこまれた転写紙Pに対しトナーTが溶融定着される。
【0009】
定着ローラ10の周上において、前記ニップ部Npよりも回転方向下流側に、用紙Pを定着ローラ10から剥離させる分離爪45、定着ローラ10上にオフセットされたトナーTなどの現像剤Tや紙屑などのごみを除去するクリーニング部材46、オフセット防止用離型剤を塗布する離型剤塗布装置48、定着ローラ10の温度検出を行うサーミスタ49が設けられている。
【0010】
不図示の励磁回路の電流は、定着ローラ10の表面に圧接された温度ヒューズとされるサーモスタット43の検知、判定により、誘導加熱装置40の励磁コイル41に供給される。このサーモスタット43には、予め定着ローラ10の表面温度が設定されており、定着ローラ10の表面温度が異常温度に達すると、サーモスタット43は、回路に供給する電流を遮断させる。
【0011】
定着ローラ10は、芯金1と、この芯金1の表面に形成された離型層4とを備えるものとして構成されている。定着ローラ10の製造工程について説明すると、まず、アルミニウム合金材を円筒状の長尺ローラに成形し、これを所定の長さに切断して短尺のローラ芯金1を形成し、さらにその外周面に離型層4を確実に密着させるため、切削または研削などによって芯金1の表面を粗面化した後に、離型層4の形成と、離型層4の表面の仕上げ処理を行って、完成品の定着ローラ10が得られるものとされている。
【0012】
複写機などの電子写真式の画像形成装置内において、定着ローラ10には、トナーTを転写紙Pに溶融定着させる機能と、転写紙Pを定着ローラ10から分離する機能とが必要とされ、このようなことから、定着ローラ10の表面に離型層4が形成されている。定着ローラ10から転写紙Pを確実に分離させるという機能に関しては、定着ユニットU内の構成品とされる分離爪45などによって、その機能が確保されている。
【0013】
定着ローラ10の表面の離型層4に対して分離爪45が摺動接触するため、分離爪45の接触による磨耗によって離型層4が破損されることがあり、定着ローラ10は消耗品扱いのものとされている。定着ローラ10が消耗品として取り扱われると、定着ローラ10の交換などのためのランニングコストや、定着ローラ10の破棄による環境への影響等が課題となり、このようなことから、定着ローラ10の長寿命化のニーズは依然として高いものとされていた。
【0014】
従来、定着ローラ10の長寿命化の方法として、例えばデュポン社製:テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂を含む合成重合体がローラ芯金1の表面上に静電塗装され、これの焼成工程が行われてローラ芯金1の表面に離型層4が形成された後に、ローラ芯金1上の離型層4の「表面粗さ」を極力低減させることを目的として、金属ローラをローラ胴部11bの端部から一定圧力にて押付けながら、ローラ軸方向にバニシング加工を行うといった方法がとられていた。
【0015】
このようにすると、定着ローラ10の離型層表面の「表面粗さ」及び「うねり」などが小さいものとなる。このように、定着ローラ10の離型層表面の平滑性を向上させることで、通紙や分離爪45による離型層4の摩耗を低減させ、定着ローラ10の長寿命化を図るということが行われてきた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の定着ローラ10にあっては、分離爪45の先端部45aと、定着ローラ10の離型層4との接触部においては、トナーTが転写紙Pに溶融定着される際に、回転される定着ローラ10の離型層4に対し、分離爪45の先端部45aは絶えず接触されるため、定着ローラ10の離型層4と、分離爪45の先端部45aとの接触部は、離型層4の他の部分と比較すると、摩耗による破損が激しいという問題があった。
【0017】
本発明は、上記問題点を鑑みて、定着ローラの離型層と、分離爪との接触部の平滑性を更に向上させ、より高寿命化された定着ローラおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載された発明は、電子写真式の画像形成装置に使用され芯金上に離型層が形成された定着ローラにおいて、表面粗さの異なる部分が前記離型層上に設けられたことを特徴とする定着ローラである。
この構成では、摩擦抵抗の高い部材が離型層の表面粗さの小さい部分に接するときに、定着ローラが回転接触するときの抵抗は小さいものとなる。従って、摩耗による離型層の破損が低減化されることとなる。これにより定着ローラの長寿命化が可能とされる。
【0019】
請求項2に記載された発明は、前記画像形成装置内の定着ユニットに配設された分離爪と当接され、該分離爪と当接される部分の前記離型層の表面粗さは、該分離爪が非当接とされる部分の該離型層の表面粗さよりも小さい表面粗さとされたことを特徴とする請求項1に記載の定着ローラである。
この構成では、定着ローラと分離爪との摩擦力が低減化されて定着ローラの離型層の破損が防止され、定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0020】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載の定着ローラの製造方法であって、表面形状が湾曲状の硬質ローラを用い、要求される前記離型層の表面粗さ以下に該硬質ローラの表面粗さを設定し、一定圧力で該硬質ローラを該離型層に押付けるバニシング加工により、前記画像形成装置内に設けられた分離爪と当接される部分の該離型層の表面粗さと、該分離爪が非当接とされる部分の該離型層の表面粗さとを小さい表面粗さに加工することを特徴とする定着ローラの製造方法である。
この構成では、湾曲状の硬質ローラの表面形状および表面粗さに対応した面が、定着ローラの離型層に転写されることとなる。従って、硬質ローラの表面形状と、硬質ローラの表面粗さとが、良好な状態に維持管理されることで、定着ローラの安定された加工品質が確保されることとなる。また、定着ローラの消耗度合が低下されるため、定着ローラのランニングコストが低減化されることとなる。
【0021】
請求項4に記載された発明は、前記分離爪と当接される部分の前記定着ローラの位置に第1の硬質ローラを押付け、次に、該定着ローラを回転機構によって回転させて第1のバニシング加工を行い、その後、該第1の硬質ローラと同等の前記表面形状および前記表面粗さとされる第2の硬質ローラを、該定着ローラに押付けながら該定着ローラの胴部の端部から該定着ローラの軸方向に移動させて第2のバニシング加工を行うことを特徴とする請求項3に記載の定着ローラの製造方法である。
この構成では、定着ローラの離型層の表面が平滑化されることとなる。従って、定着ローラの離型層の表面にみられるうねり等の表面状態は、良好な状態に確保されることとなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る定着ローラの一実施形態を示す説明図、図2は、本発明に係る定着ローラの他の実施形態を示す断面図である。
【0023】
図1,図2に定着ローラ10,11の基本的な構成を示す。定着ローラ11,12は、略円筒形のローラ芯金1,2に、トナーのオフセットを防止するための離型層4が形成されたものとして構成されている。
【0024】
芯金1,2は、ステンレス鋼などの金属性材料が用いられて形成されている。芯金1,2の材質として、例えばステンレスが好ましいものとされている。これはステンレスが強磁性体であることから、一番共振しやすいものとされ、例えば誘導加熱装置40(図8)に用いられるものとして、強磁性、耐食性などの優れた特性を備えもつものとされているからである。
【0025】
離型層4は、パーフルオロアルコキシ(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFAとPTFEとの混合体などといったフッ素樹脂などにより形成されている。PFAとして、例えばデュポン社製:テフロン(登録商標)PFA等が挙げられる。また、PTFEとして、例えばデュポン社製:テフロン(登録商標)PTFE等が挙げられる。
【0026】
芯金1,2の表面に離型層4が確実に接着されるために、芯金1,2と、離型層4との間に、プライマーが塗装されて介在された状態のものとされている。また、離型層4にプライマーが含有されたものも使用可能とされる。離型層4の厚さは、10〜30μmとされている。
【0027】
また、離型層4の下に、例えば0.2〜0.5mmの厚さに形成されたシリコーンゴム等の弾性層が設けられてもよい。また、シリコーンゴム等の弾性層の上に、離型層4として、例えばフッ素ゴムが設けられたものも使用可能とされる。また、芯金1,2の表面に、離型層4として、直接、フッ素ゴムのみが用いられたものも使用可能とされる。フッ素ゴムとして、例えば、デュポン社:バイトン(登録商標)等が挙げられる。
【0028】
図2に示す定着ローラ12は、胴部12bの両端部12e,12fに対し、胴部12bの中央部12cがくびれた形状とされている。図2に示す定着ローラ12と同じく、図1に示す定着ローラ11の胴部11bの中央部11cも、定着ローラ11の胴部11bの両端部11e,11fに対し、緩やかで僅かにくびれた形状とされている。
【0029】
このような形状に前記定着ローラ11,12が形成されていれば、中心部が緩やかに膨らまされた形状の耐熱ゴム製加圧ローラ(図示せず)が、前記定着ローラ11,12に押接されつつ回転されて用紙P(図8参照)の定着工程が行われる際に、高温に加熱された定着ローラと、加圧ローラとの間を通された用紙Pに、例えば「しわ」が付いてしまう等ということなく、確実に用紙Pの定着工程が行われることとなる。
【0030】
図1に示す定着ローラ11と同じく、図2に示す定着ローラ12にも、分離爪と当接される部分Bm(図1)と、各分離爪が非当接とされる部分Ar(図1)とが設けられている。また、例えば、耐熱性を有するセラミックスフェルト、岩綿などの断熱性材料が用いられて形成された断熱層が、芯金に設けられた定着ローラ(図示せず)も使用可能とされる。
【0031】
図1に示される定着ローラ11は、複写機などの電子写真式の画像形成装置に使用される。この定着ローラ11は、ステンレス鋼が用いられて円筒状に形成され、ステンレス製の芯金1の外周面上に、合成樹脂製の離型層4が形成されている。この定着ローラ11には、「表面粗さ」の異なる領域とされる各部分Ar,Bmが離型層4の表面に存在する。
【0032】
「表面粗さ」の異なる領域とされる各部分Ar,Bmが離型層4の表面に設けられているので、例えば、定着ユニットU(図8参照)の分離爪45や、コピー用紙Pなどのように、定着ローラ11(図1)の離型層4の表面に対し摩擦抵抗が異なる部材として、摩擦抵抗の高い部材が離型層4の表面粗さの小さい部分Bmに接するときに、定着ローラ11が回転接触するときの抵抗は小さいものとなる。従って、摩耗による離型層4の破損を低減させることができる。これにより定着ローラ11の長寿命化が可能となる。
【0033】
図8に示すように、定着ローラは、画像形成装置内の定着ユニットUに配設された各分離爪45の先端部45aと当接される。分離爪45と当接される部分Bm(図1)の離型層4の「表面粗さ」は、各分離爪45(図8)が非当接とされる部分Ar(図1)の離型層4の表面粗さよりも小さい表面粗さとされている。このようにすることで、定着ローラ11と分離爪45との摩擦力が低減化されて、定着ローラ11の離型層4の破損が防止される。従って、定着ローラ11の長寿命化が可能となる。
【0034】
以下に上記定着ローラ11の製造方法について図面を参照して説明する。
図3は、本発明に係る定着ローラの製造方法が行われる際に用いられる製造装置を示す説明図、図4は、同じく定着ローラの製造方法が行われる前の状態を示す図であり、(A)は製造装置を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【0035】
図5は、同じく定着ローラの製造方法における第1のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図、図6は、同じく定着ローラの製造方法における第2のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図、図7は、バニシング回数と表面粗さとの関係を示す説明図である。
【0036】
バニシングとは、相手加工品の表面に工具を押付けて滑らせ、表面の小さい凸部をつぶし、凹部を埋めて、表面を平滑にする方法のことを意味する。バニシングは、バニシ仕上げとも呼ばれる。
【0037】
図3に基づいて、定着ローラの製造装置の構成および動作を説明する。
【0038】
定着ローラの製造装置は、PFAを静電粉体塗装し、焼成を行って離型層4が形成された定着ローラ11と、その定着ローラ11のジャーナル部分11j,11kがエアシリンダ75によってチャッキング可能とされ、ワーク回転用モータ71のプーリ71pからベルト72を介して主軸73側のプーリ73pおよび主軸73、さらにテール軸74へと回転駆動力が伝達される回転機構70と、バニシング加工を行うためのR形状の押付け面53pを有する金属ローラ53と、その金属ローラ53を定着ローラ11の胴部11bに押付けるためのエアシリンダ55と、分離爪が定着ローラ11の離型層4に接触する部分に相当する位置に固定されており金属ローラ53のガイド部を有するローラ押付けユニット51と、定着ローラ11の胴部11bの一端部11eから他端部11fにかけてバニシング加工を行うためのエアシリンダ65付のローラ押付けユニット61と、そのローラ押付けユニット61を定着ローラ11の軸方向に移動可能な手段たとえば1軸の電動アクチュエータ67とを備えるものとして構成されている。
【0039】
各ローラ押付けユニット51は、定着ローラ11に当接される分離爪と同位置となるようにレイアウトされて基板50に装着されている。また、上記定着ローラ11の胴部11bの離型層4よりも硬度の高い硬質ローラ53,63(図3〜図6)として、ここでは金属ローラ53,63が用いられている。
【0040】
定着ローラの製造装置の動作について説明すると、図3に示すように、定着ローラ11が主軸73およびテール軸74にてチャッキングされ、分離爪の位置に相当する位置に固定され且つ分離爪と同数とされる複数のローラ押付けユニット51が、図5に示すように、定着ローラ11側に向けて前進され、金属ローラ53が定着ローラ11の胴部11bに当接される。
【0041】
その時の押付け力は、エアシリンダ55の空気圧いわゆるエア圧により管理される。その状態で、主軸73、テール軸74をワーク回転用モータ71によって回転させることで、金属ローラ53が連れまわりし、分離爪に接触する胴部11bの位置が定着ローラ11の回転数分ほど押圧されて、第1のバニシング加工が行われる。
【0042】
その後、ローラ押付けユニット51が後退され、定着ローラ11の回転が停止される。
【0043】
定着ローラ11の回転停止後、胴部11bの一端部11eから第2のバニシング加工を開始するローラ押付けユニット61が前進し、金属ローラ63が定着ローラ11の胴部11bに当接される。その時の押付け力は、エアシリンダ65の空気圧により管理される。また、その時の押付け力は、定着ローラ11を構成する芯金1の変形強度により異なる。
【0044】
その状態で、主軸73、テール軸74をワーク回転用モータ71によって回転させることで、金属ローラ63が連れ回りし、定着ローラ11の回転と同時に1軸電動アクチュエータ67にてローラ押付けユニット61を定着ローラ11の軸方向に移動させることで、定着ローラ11の胴部11b全体のバニシング加工を行う(図6)。定着ローラ11の胴部11b全体がバニシング加工された後に、ローラ押付けユニット61を後退させ、図3,図4に示すように原点復帰を行い、バニシング加工が完了される。
【0045】
定着ローラ11の長寿命化方法について説明する。
電子写真装置内の加圧ローラ20(図8参照)と、定着ローラとが圧接されて形成されるニップ部Npにおいて、トナーT付の転写紙Pからの離型性が確保されるために、定着ローラ11(図3,図4)の離型層4にPFAが用いられている。ローラ芯金1の表面上に粉体のPFAを静電粉体塗装した後に、約390℃の雰囲気中にて約40分間焼成する。その後、定着ローラ11が常温に冷却されて離型層4が形成される。
【0046】
その後、表面仕上げがRy(最大高さ)0.2s以下であり、且つ、Ra(中心線平均粗さ)0.05a以下で、押付け面53p(図5(B))がR形状を有した金属ローラ53を離型層4に押付けながら、離型層4の表面をバニシング加工する。
【0047】
前記Ryは、JIS B 0601に定めされる「最大高さ」を意味する。また、前記Raは、同じくJIS B 0601に定めされる「算術平均粗さ」いわゆる「中心線平均粗さ」を意味する。
【0048】
焼成後の定着ローラ11の離型層4をバニシング加工すると、金属ローラ53の表面形状が離型層4に転写され、「表面粗さ」が低減化される。さらにその上から、再度、バニシング加工を行うと、図7に示すように「表面粗さ」に関しては、より低減化される結果となる。但し、その低減率は飽和していく傾向にある。
【0049】
これは、金属ローラ53,63を押付けることで離型層4が圧縮転写され、回数を重ねることによって転写率が向上することによる。この特性を応用して、定着ユニットの分離爪に接触する定着ローラ11(図3〜図5)の位置に、バニシング加工用の第1の金属ローラ53を押付け固定し、ローラ芯金1を回転機構70によってチャック回転させてバニシング加工を行う。
【0050】
図5に示すように、分離爪に接触する定着ローラ11の一部分に「すじ」Bmが残される。詳しく説明すると、定着ローラ11の円周上に、リング状のバニシング加工跡いわゆるリング状の「すじ」Bmが残される。
【0051】
その後、定着ローラ11の胴部11bの端部11eから、前記第1の金属ローラ53と略同形態の「表面形状」及び「表面粗さ」を有するバニシング加工用の第2の金属ローラ63を一定圧にて押付けながら、定着ローラ11の軸方向に移動させて従来の方法でバニシング加工を行う。
【0052】
このようにすることで、分離爪が接触する位置の定着ローラ11の胴部11b表面は、金属ローラ53,63を押付け固定させた状態で定着ローラ11を回転させるため、回転数分、同位置をバニシング加工していることになる。従って、定着ローラの軸方向に移動させたバニシング加工を、1回だけ行うことで形成された定着ローラの表面よりも、表面の光沢度が増し、離型層4への金属ローラ53,63の転写率が向上する。このため、定着ローラ11の離型層4の「表面粗さ」も低減され、このことから、定着ユニットU(図8参照)内の分離爪45との接触回転時の摩擦抵抗も低減化されることとなり、これにより、定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0053】
定着ローラ11の製造方法が精度良く確実に行われるために、予め必要とされるものや、予め設定しておくべきことと共に、定着ローラ11の製造方法について説明すると、図5(B)に示すように、まず、押付け面53pの表面形状が略R形状をした金属ローラ53を予め製作しておく。
【0054】
具体的に説明すると、金属ローラ53の外側に向けて押付け面53pが緩やかに膨らまされて、湾曲状の押付け面53pが設けられた金属ローラ53を予め製作しておく。また、電子写真式の画像形成装置に要求される定着ローラ11の離型層4の表面粗さ以下となるように、金属ローラ53の前記押付け面53pの「表面粗さ」を予め調整しておく。
【0055】
図5(B)に示すように、第1の金属ローラ53は、前述した形態の押付け面53pと、略平面状に形成された両側面53sと、ローラ押付けユニット51(図5(A))に備えられた軸に対応する軸孔53hとを備えるものとして形成されている。前記両側面53sの略中央部に前記軸孔53hが貫設されている。
図3〜図6に示される第2の金属ローラ63も、前記第1の金属ローラ53と略同形態をしたローラとして形成されている。
【0056】
図3〜図6に示すように、エアシリンダ55,65に充填される圧縮空気により、エアシリンダ55,65に一定の圧力が加えられることで、金属ローラ53,63は相手加工品に対し押圧可能な状態とされる。金属ローラ53,63を定着ローラ11の離型層4に押付け、これと共に定着ローラ11を回転させることで、バニシング加工が行われる。
【0057】
このようなバニシング加工が行われることにより、画像形成装置内に設けられた分離爪45(図8)と当接される部分Bm(図1,図6)の離型層4の表面粗さと、分離爪45(図8)が非当接とされる部分Ar(図1,図6)の離型層4の表面粗さとが、略均一な小さい表面粗さに加工されることとなる。
【0058】
このようにして定着ローラ11が製造されると、湾曲状の金属ローラ53,63の押付け面53pの表面形状および表面粗さに対応した面が、定着ローラ11の離型層4に転写されることとなる。従って、金属ローラ53,63の押付け面53pの表面形状と、金属ローラ53,63の「表面粗さ」とが、良好な状態に維持管理されることで、定着ローラ11の安定された加工品質が確保できることとなる。また、定着ローラ11の消耗度合が低下されるため、定着ローラ11のランニングコストを低減化させることができる。
【0059】
画像形成装置内の定着ユニットUの分離爪45(図8)と当接される部分Bm(図1,図3〜図5)の定着ローラ11の位置に、第1の金属ローラ53を押付ける。次に、定着ローラ11をチャックなどにより回転機構70(図3)に固定させ、回転機構70によって定着ローラ11を回転させて第1のバニシング加工を行う(図5)。
【0060】
その後、第1の金属ローラ53と略同等の「表面形状」および「表面粗さ」とされる第2の金属ローラ63(図5)を、定着ローラ11の離型層4に押付ける。定着ローラ11を回転機構70によって回転させながら、1軸の電動アクチュエータ67により、定着ローラ11の胴部11bの一端部11eから他端部11fにかけて、定着ローラ11の軸方向すなわち定着ローラ11の長手方向に第2の金属ローラ63を移動させて第2のバニシング加工を行う(図6)。
【0061】
このような手順によって定着ローラ11が製造されることで、定着ローラ11の離型層4の表面を精度よく効率的に平滑化させることができる。従って、定着ローラ11の離型層4の表面にみられる「うねり」等の表面状態や表面特性を良好な状態に確保することができる。
【0062】
バニシング加工が行われた後の定着ローラ11(図1)は、各分離爪の位置に対応する離型層4の部分Bmが複数回ほどバニシング加工されたものである。金属ローラ53(図5)が定着ローラ11の同位置を複数回転して、定着ローラ11の離型層4に、バニシング加工跡とされる部分Bmが形成されたので、例えば1回のみ定着ローラ11の軸方向にバニシング加工が行われたものの表面状態と比べると、複数回のバニシング加工が行われた部分Bmの表面粗さ(Ra、Rz)は低いものとなる(図7参照)。前記Rzは、JIS B 0601に定めされる「十点平均粗さ」を意味する。
【0063】
図5(A)に示すように、外観上、定着ローラ11の胴部11bに、リング状光沢度が向上された「すじ」Bmが見られる。また、図5(B)に示すように、「すじ」Bmの幅Bwは、押付けた金属ローラ53のR形状をした押付け面53pの幅寸法53wに対応したものとされている。
【0064】
しかし、その後、図6(A),(B)に示すように、ローラ押付けユニット61を定着ローラ11の軸方向に移動させ、最後に定着ローラ11の胴部11b全体をバニシング加工するため、複数回のバニシング加工が行われた「すじ」Bmと、1回のみのバニシング加工が行われた面の部分Arとの境界線すなわち「段差」および「うねり」(最大ろ波うねりWCM)は、3μm以下となり、定着ローラ11の機能上、電子写真式の画像形成装置で作成される画像の品質に関して、全くと言っていいほど影響を与えない安定した品質を得ることが可能となる。
【0065】
「ろ波うねり曲線」とは、「断面曲線」から、所定の波長より短い「表面粗さ」の成分を位相補償形低域フィルタで除去した曲線を意味し、JIS B 0601に基づいて定められたものである。また「断面曲線」とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭を意味し、同じくJIS B 0601に基づいて定められたものである。
【0066】
このようにして製造された定着ローラは、複写機などの電子写真式の画像形成装置に装着される定着ユニットに取付けられる。例えば、図8に示す定着ユニットUの定着ローラ10に代えて、図1に示す定着ローラ11または図2に示す定着ローラ12が、図8に示す電磁誘導加熱方式の定着ユニットに装着されたものも使用可能とされる。電磁誘導加熱方式の定着ユニットは、加熱特性に優れるものとされている。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、電子写真式の画像形成装置に使用され芯金上に離型層が形成された定着ローラにおいて、表面粗さの異なる部分が離型層上に設けられた定着ローラとされているので、摩擦抵抗の高い部材が離型層の表面粗さの小さい部分に接するときに、定着ローラが回転接触するときの抵抗は小さいものとなる。従って、摩耗による離型層の破損を低減させることができる。これにより定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0068】
請求項2に記載の発明によれば、画像形成装置内の定着ユニットに配設された分離爪と当接され、分離爪と当接される部分の離型層の表面粗さは、分離爪が非当接とされる部分の離型層の表面粗さよりも小さい表面粗さとされた定着ローラであるので、定着ローラと分離爪との摩擦力が低減化されて定着ローラの離型層の破損が防止され、定着ローラの長寿命化が可能となる。
【0069】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の定着ローラの製造方法であって、表面形状が湾曲状の硬質ローラを用い、要求される離型層の表面粗さ以下に硬質ローラの表面粗さを設定し、一定圧力で硬質ローラを離型層に押付けるバニシング加工により、画像形成装置内に設けられた分離爪と当接される部分の離型層の表面粗さと、分離爪が非当接とされる部分の離型層の表面粗さとを小さい表面粗さに加工する定着ローラの製造方法とされているので、湾曲状の硬質ローラの表面形状および表面粗さに対応した面が、定着ローラの離型層に転写されることとなる。従って、硬質ローラの表面形状と、硬質ローラの表面粗さとが、良好な状態に維持管理されることで、定着ローラの安定された加工品質が確保できることとなる。また、定着ローラの消耗度合が低下されるため、定着ローラのランニングコストを低減化させることができる。
【0070】
請求項4に記載の発明によれば、分離爪と当接される部分の定着ローラの位置に第1の硬質ローラを押付け、次に、定着ローラを回転機構によって回転させて第1のバニシング加工を行い、その後、第1の硬質ローラと同等の表面形状および表面粗さとされる第2の硬質ローラを、定着ローラに押付けながら定着ローラの胴部の端部から定着ローラの軸方向に移動させて第2のバニシング加工を行う定着ローラの製造方法とされているので、定着ローラの離型層の表面を平滑化させることができる。従って、定着ローラの離型層の表面にみられるうねり等の表面状態を良好な状態に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定着ローラの一実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る定着ローラの他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る定着ローラの製造方法が行われる際に用いられる製造装置を示す説明図である。
【図4】同じく定着ローラの製造方法が行われる前の状態を示す図であり、(A)は製造装置を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【図5】同じく定着ローラの製造方法における第1のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【図6】同じく定着ローラの製造方法における第2のバニシング加工が行われている状態を示す図であり、(A)は製造装置の動作を示す説明図、(B)は定着ローラの表面状態を示す拡大断面図である。
【図7】バニシング回数と表面粗さとの関係を示す説明図である。
【図8】従来の定着装置の一形態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 芯金
4 離型層
11 定着ローラ
11b 胴部
11e 一端部(端部)
45 分離爪
53,63 金属ローラ(硬質ローラ)
70 回転機構
Ar 部分
Bm すじ(部分)
U 定着装置(定着ユニット)
Claims (4)
- 電子写真式の画像形成装置に使用され芯金上に離型層が形成された定着ローラにおいて、表面粗さの異なる部分が前記離型層上に設けられたことを特徴とする定着ローラ。
- 前記画像形成装置内の定着ユニットに配設された分離爪と当接され、該分離爪と当接される部分の前記離型層の表面粗さは、該分離爪が非当接とされる部分の該離型層の表面粗さよりも小さい表面粗さとされたことを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ。
- 請求項1又は2に記載の定着ローラの製造方法であって、表面形状が湾曲状の硬質ローラを用い、要求される前記離型層の表面粗さ以下に該硬質ローラの表面粗さを設定し、一定圧力で該硬質ローラを該離型層に押付けるバニシング加工により、前記画像形成装置内に設けられた分離爪と当接される部分の該離型層の表面粗さと、該分離爪が非当接とされる部分の該離型層の表面粗さとを小さい表面粗さに加工することを特徴とする定着ローラの製造方法。
- 前記分離爪と当接される部分の前記定着ローラの位置に第1の硬質ローラを押付け、次に、該定着ローラを回転機構によって回転させて第1のバニシング加工を行い、その後、該第1の硬質ローラと同等の前記表面形状および前記表面粗さとされる第2の硬質ローラを、該定着ローラに押付けながら該定着ローラの胴部の端部から該定着ローラの軸方向に移動させて第2のバニシング加工を行うことを特徴とする請求項3に記載の定着ローラの製造方法。
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- 2002-09-20 JP JP2002276055A patent/JP2004109929A/ja not_active Withdrawn
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