JP4568945B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板や金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみを樹脂封止されたいわゆるエリア実装型半導体装置に適した半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。
エリア実装型半導体装置としてはBGA(ボールグリッドアレイ)或いは更に小型化を追求したCSP(チップスケールパッケージ)等が代表的であるが、これらは従来QFP、SOPに代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、BT樹脂/銅箔回路基板(ビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板)に代表される硬質回路基板、或いはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみがエポキシ樹脂組成物等で成形・封止されている。又、基板の半導体素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行う特徴を有している。更に、半導体素子を搭載する基板としては、上記の有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も開発されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置の構造は、基板の半導体素子搭載面のみをエポキシ樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態をとっている。リードフレーム等の金属基板等では、半田ボール形成面でも数十μm程度の封止樹脂層が存在することもあるが、半導体素子搭載面では数百μmから数mm程度の封止樹脂層が形成されるため、実質的に片面封止となっている。このため、有機基板や金属基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合、或いはエポキシ樹脂組成物の成形硬化時の硬化収縮による影響で、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。
更に、これらの半導体装置を実装する回路基板上に半田接合を行う場合、200℃以上の加熱工程を経るが、この際にも半導体装置の反りが発生し、多数の半田ボールが平坦とならず、半導体装置を実装する回路基板から浮き上がってしまい、電気的接合の信頼性が低下する問題が起こる。
【0004】
基板上の実質的に片面のみをエポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置において、反りを低減するには、基板の熱膨張係数とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数とを近づけること、及びエポキシ樹脂組成物の硬化物の硬化収縮量を小さくすることの二つの方法が重要である。
基板としては、有機基板ではBT樹脂やポリイミド樹脂のような高いガラス転移温度(以下、Tgという)を有する樹脂が広く用いられており、これらはエポキシ樹脂組成物の成形温度である170℃近辺よりも高いTgを有する。従って、成形温度から室温までの冷却過程では有機基板の線膨張係数(以下、α1という)の領域のみで収縮する。従って、エポキシ樹脂組成物の硬化物も、Tgが高く且つα1が有機基板と同じで、更に硬化収縮量がゼロであれば、反りはほぼゼロであると考えられる。このため、多官能型エポキシ樹脂と多官能型フェノール樹脂との組み合わせによりTgを高くし、無機充填材の配合量でα1を合わせる手法が既に提案されている。しかし多官能型エポキシ樹脂と多官能型フェノール樹脂との組み合わせでは流動性が低下し金線変形率が低下するなどの不具合があった。
【0005】
又、赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬等の手段での半田処理による半田接合を行う場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物並びに有機基板からの吸湿により半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で半導体装置にクラックが発生したり、有機基板の半導体素子搭載面とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生することもあり、エポキシ樹脂組成物の低応力化・低吸湿化とともに、有機基板との接着性も求められる。
更に、有機基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張の不整合により、信頼性テストの代表例である温度サイクル試験でも、有機基板/エポキシ樹脂組成物の硬化物の界面の剥離やクラックが発生する。
従来のQFPやSOP等の表面実装型半導体装置では、半田実装時のクラックや各素材界面での剥離の防止のために、ビフェニル型エポキシ樹脂に代表されるような結晶性エポキシ樹脂と、可撓性骨格を有するフェノール樹脂とを組み合わせて用い、且つ無機充填材の配合量を増加することにより、低吸湿化を行う対策がとられてきた。しかし、この手法では、片面封止の半導体装置における反りの問題は解決できないばかりでなく、エポキシ樹脂組成物が高粘度化するために、注入時に金線が流れて金線同士が短絡してしまい、大きな問題になっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、金線流れがなく、成形後や半田処理時の反りが小さく、又、基板との接着性に特に優れるため耐半田性や耐温度サイクル性に優れ、エリア実装型半導体装置に適した半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)一般式(1)、一般式(2)で示される多官能エポキシ樹脂及び/又は一般式(3)〜(7)で示され、且つ融点が50〜150℃の結晶性エポキシ樹脂の群から選択される少なくとも1種以上のエポキシ樹脂、(B)一般式(8)で示されるフェノール樹脂、(C)溶融シリカ、及び(D)テトラ置換ホスホニウム(X)と1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)及び1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基との分子会合体であって、該共役塩基が前記フェノール性水酸基を1分子内に2個以上有する化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物からなる硬化促進剤を含むことを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが前記のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とする半導体装置である。
【化6】
【0008】
【化7】
【0009】
【化8】
【0010】
【化9】
【0011】
【化10】
(式(1)、式(2)、式(7)、式(8)中のRは、ハロゲン原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、互いに同一であっても、異なっていてもよい。nは平均値であり1〜10の正の数、aは0もしくは1〜4の正の整数、bは0もしくは1〜3の正の整数、及びcは0もしくは1〜2の正の整数である。式(3)〜(6)中のRは、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるエポキシ樹脂のうち、通常トリフェノールメタン型エポキシ樹脂と総称される一般式(1)で示されるエポキシ樹脂、又は一般式(2)で示されるエポキシ樹脂は、一般式(8)のフェノール樹脂と組み合わせることにより、得られる硬化物の架橋密度が高く、ガラス転移温度も高くなり、又硬化収縮率が小さいという特徴を有するため、本発明のエポキシ樹脂組成物の用途であるエリア実装型の半導体装置の封止では、反りの低減に効果的である。一般式(1)及び一般式(2)の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化11】
【0013】
【化12】
【0014】
又、一般式(3)〜(7)で示され、且つ融点が50〜150℃の結晶性エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2個有するジエポキシ化合物又はこれらのオリゴマーである。これらのエポキシ樹脂は、いずれも結晶性を示すため、融点未満の温度では固体であるが、融点以上の温度で低粘度の液状物質となる。このためこれらを用いたエポキシ樹脂組成物は、溶融状態で低粘度を示すので、成形時の流動性が高く、薄型の半導体装置の充填性に優れる。従って、溶融シリカの配合量を増量して、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿率を低減し、耐半田性を向上させる手法をとるに際しては、これらの結晶性エポキシ樹脂の使用が好ましい。
これらの結晶性エポキシ樹脂は、1分子中のエポキシ基の数が2個と少なく、一般的には架橋密度が低く、耐熱性の低い硬化物しか得られない。しかし構造として剛直な平面ないし棒状の骨格を有しており、且つ結晶化する性質、即ち分子同士が配向しやすいという特徴を有するため、一般式(8)で示される多官能型フェノール樹脂と組み合わせて用いた場合、硬化物のガラス転移温度等の耐熱性が低下し難い。このため、これらの結晶性エポキシ樹脂と、一般式(8)で示されるフェノール樹脂とを組み合わせたエポキシ樹脂組成物で封止された半導体装置は、反り量を小さくできる。更に、一旦ガラス転移温度を越えた温度領域では、官能基数の少ない化合物の特徴である低弾性率を示すため、半田処理温度での低応力化に効果的である。このため、半田処理でのクラック発生や基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の剥離発生を防止する効果がある。
上記の結晶性エポキシ樹脂は、融点が50℃未満だと、エポキシ樹脂組成物の製造工程において融着を起こしやすく、作業性が著しく低下するので好ましくない。又150℃を越えると、エポキシ樹脂組成物を加熱混練する製造工程で充分に溶融しないため、材料の均一性に劣るといった問題点を有するので好ましくない。融点の測定方法は、示差走査熱量計[セイコー電子(株)・製SSC520、昇温速度5℃/分]を用いて、吸熱ピーク温度から求められる。
以下に、これらの結晶性エポキシ樹脂の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【化13】
【0015】
【化14】
【0016】
【化15】
【0017】
又、成形時の高流動化と半導体装置の反りの低減、及び実装時の耐半田性の両立という観点からは、上記の一般式(1)、一般式(2)で示される多官能エポキシ樹脂を総エポキシ樹脂中に20〜90重量%含み、更に一般式(3)〜(7)で示され、且つ融点50〜150℃の結晶性エポキシ樹脂を総エポキシ樹脂中に10重量%以上含むことが特に好ましい。
本発明のエポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂と適宜併用可能である。併用可能なエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独もしくは混合して用いても差し支えない。
【0018】
本発明で用いられる一般式(8)で示されるフェノール樹脂は、いわゆるトリフェノールメタン型フェノール樹脂と呼ばれるものである。具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化16】
これらのフェノール樹脂を用いると、硬化物の架橋密度が高くなり、ガラス転移温度の高い硬化物が得られるため、半導体装置の反りを低減できる。
本発明の一般式(8)のフェノール樹脂は、他のフェノール樹脂と適宜併用可能である。併用可能なフェノール樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられ、これらは単独もしくは混合して用いても差し支えない。
【0019】
本発明で用いられる溶融シリカは、破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状シリカを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布をより広くとるよう調整することが望ましい。
【0020】
本発明で用いられる硬化促進剤(D)である分子会合体は、テトラ置換ホスホニウム(X)と1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)及び1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基との分子会合体であって、該共役塩基は、前記フェノール性水酸基を1分子内に2個以上有する化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物である。
本発明の分子会合体の構成成分の一つであるテトラ置換ホスホニウム(X)の置換基については、何ら限定されず、置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、置換又は無置換のアリール基やアルキル基を置換基に有するテトラ置換ホスホニウムイオンが、熱や加水分解に対して安定であり好ましい。具体的には、テトラフェニルホスホニウム、テトラトリルホスホニウム、テトラエチルフェニルホスホニウム、テトラメトキシフェニルホスホニウム、テトラナフチルホスホニウム、テトラベンジルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム、トリメチルフェニルホスホニウム、メチルジエチルフェニルホスホニウム、メチルジアリルフェニルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム等を例示できる。
【0021】
本発明の分子会合体の構成成分である、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(通称テトラメチルビスフェノールF)、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)−(4−ヒドロキシフェニル)メタン及びこれらの内ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)−(4−ヒドロキシフェニル)メタンの3種の混合物(例えば、本州化学工業(株)・製、ビスフェノールF−D)等のビスフェノール類、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール等のジヒドロキシベンゼン類、1,2,4−ベンゼントリオール等のトリヒドロキシベンゼン類、1,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類の各種異性体、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール等のビフェノール類の各種異性体等の化合物が挙げられる。
更に、他の構成成分である共役塩基は、上記の化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物である。
【0022】
本発明の分子会合体は、前述のようにホスホニウム−フェノキシド型の塩を構造中に有するが、従来の技術におけるホスホニウム−有機酸アニオン塩型の化合物と異なる点は、本発明の分子会合体では水素結合による高次構造がイオン結合を取り囲んでいる点である。従来の技術における塩では、イオン結合の強さのみにより反応性を制御しているのに対し、本発明の分子会合体では、常温ではアニオンの高次構造による囲い込みが活性点の保護を行う一方、成形の段階においては、この高次構造が崩れることで活性点がむき出しになり、反応性を発現する、いわゆる潜伏性が付与されている。
【0023】
本発明の分子会合体の製造方法としては、何ら限定されないが、代表的な2方法を挙げることができる。
1つ目は、テトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート(Z)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)とを、高温下で反応させた後、更に沸点60℃以上の溶媒中で熱反応させる方法である。
2つ目は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)と、無機塩基又は有機塩基と、テトラ置換ホスホニウムハライドとを反応させる方法である。用いるテトラ置換ホスホニウムハライドの置換基については、何ら限定されることはなく、置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、置換又は無置換のアリール基やアルキル基を置換基に有するテトラ置換ホスホニウムイオンが、熱や加水分解に対して安定であり好ましい。具体的には、テトラフェニルホスホニウム、テトラトリルホスホニウム、テトラエチルフェニルホスホニウム、テトラメトキシフェニルホスホニウム、テトラナフチルホスホニウム、テトラベンジルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム、トリメチルフェニルホスホニウム、メチルジエチルフェニルホスホニウム、メチルジアリルフェニルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム等を例示できる。ハライドとしてはクロライドやブロマイドを例示でき、テトラ置換ホスホニウムハライドの価格や吸湿等の特性、及び入手のし易さから選択すれば良く、いずれを用いても差し支えない。
【0024】
本発明の分子会合体は、従来の硬化促進剤も適宜併用可能である。併用可能な硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平8−295721号公報に開示されている一般式(9)、一般式(10)で示されるホスホニウムボレートからなる潜伏性触媒や、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリブチルアミン等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは混合して用いても差し支えない。
【化17】
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、押出機等の混練機で混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形すればよい。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エリア実装型半導体装置用に適している。
【0026】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
[分子会合体の合成例]
(合成例1)
本州化学工業(株)・製ビスフェノールF−D[ビス(モノヒドロキシフェニル)メタンの異性体混合物の商品名。化合物(Y)に相当する。]300g(1.5モル)と、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(Z)329g(0.5モル)とを3Lセパラブルフラスコに仕込み、200℃で3時間反応させた。この反応でのベンゼン留出量は、理論生成量の97重量%(即ちベンゼン留出率97%)であった。この反応による粗生成物を微粉砕し、セパラブルフラスコに仕込み、2−プロパノールを粗生成物の仕込み重量の3倍量加え、内温82.4℃(2−プロパノールの沸点温度)で1.5時間攪拌した。その後、2−プロパノールの大部分を除去し、更に加熱減圧下で低沸点分を除去した。得られた生成物を化合物D1とした。又、溶媒を重メタノールとして、D1の1H−NMRでの測定を行った。4.8ppm付近及び3.3ppm付近のピークは溶媒のピークで、6.4〜7.1ppm付近のピーク群は、原料であるビスフェノールF[(X)1モルに対するモル数(a)]及びこのビスフェノールFから1個の水素を除いたフェノキシド型の共役塩基[(X)1モルに対するモル数(b)]のフェニルプロトン、7.6〜8.0ppm付近のピーク群は、テトラフェニルホスホニウム基のフェニルプロトンと帰属され、それらの面積比から、モル比が(a+b)/(X)=2.2/1であると計算された。
【0027】
(合成例2)
5Lのセパラブルフラスコに、本州化学工業(株)・製ビスフェノールF−D(化合物(Y)に相当)300g(1.5モル)、北興化学工業(株)・製テトラフェニルホスホニウムブロマイド314g(0.75モル)、メタノール3000gを仕込み、完全に溶解させた。そこに水酸化ナトリウムを30g含有するメタノール/水混合溶液を攪拌しながら滴下した。得られた溶液を多量の水中に滴下する再沈作業を行い、目的物を固形物として得た。濾過して固形物を取り出し、乾燥させて得られた生成物を化合物D2とした。又、溶媒を重メタノールとして、D2の1H−NMRでの測定を行った。4.8ppm付近及び3.3ppm付近のピークは溶媒のピークで、6.4〜7.1ppm付近のピーク群は、原料であるビスフェノールF[(X)1モルに対するモル数(a)]及びこのビスフェノールFから1個の水素を除いたフェノキシド型の共役塩基[(X)1モルに対するモル数(b)]のフェニルプロトン、7.6〜8.0ppm付近のピーク群は、テトラフェニルホスホニウム基のフェニルプロトンと帰属され、それらの面積比から、モル比が(a+b)/(X)=2/1であると計算された。
【0028】
[エポキシ樹脂組成物の製造例]
配合割合は重量部とする。
《実施例1》
・式(11)で示されるエポキシ樹脂[油化シェルエポキシ(株)・製、エピコート1032H、軟化点60℃、エポキシ当量170]
4.6重量部
・式(12)の構造を主成分とするビフェニル型エポキシ樹脂[油化シェルエポキシ(株)・製、YX−4000H、融点105℃、エポキシ当量195]
4.6重量部
・式(13)で示されるフェノール樹脂[明和化成(株)・製、MEH−7500、軟化点107℃、水酸基当量97]
4.8重量部
・球状溶融シリカ 84.8重量部
・化合物D1 0.4重量部
・カルナバワックス 0.5重量部
・カーボンブラック 0.3重量部
をミキサーを用いて混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて30回混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0029】
《評価方法》
・スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
・ガラス転移温度(Tg)及び線膨張係数(α1):金型温度175℃、射出圧力75kg/cm2、2分間でトランスファー成形したテストピースを、更に175℃、8時間で後硬化し、熱機械分析装置(セイコー電子(株)・製TMA−120、昇温速度5℃/分)を用いて測定した。Tgの単位は℃、α1の単位はppm/℃。
・熱時弾性率:240℃での曲げ弾性率を、JIS K 6911に準じて測定した。単位はN/mm2。
・硬化収縮率:金型温度180℃、射出圧力75kg/cm2、2分間でトランスファー成形したテストピースを、更に175℃、8時間で後硬化した。180℃に加熱された状態の金型のキャビティ寸法と、180℃に加熱された成形品の寸法をノギスを用いて測定し、硬化収縮率を(成形品寸法)/(金型キャビティ寸法)の比率で表した。単位は%。
・パッケージ反り量:225ピンBGAパッケージ(基板は0.36mm厚のBT樹脂基板、パッケージサイズは24×24mm、厚み1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚み0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている)を、金型温度180℃、射出圧力75kg/cm2、2分間でトランスファー成形し、更に175℃、8時間で後硬化した。室温に冷却後、パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変異差の最も大きい値を反り量とした。単位はμm。
・金線変形率:パッケージ反り量の評価で成形した225ピンBGAパッケージを軟X線透視装置で観察し、金線の変形率を(流れ量)/(金線長)の比率で表した。単位は%。
・密着性:BT樹脂製の基板上に2×2×2mmのテストピースを、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で成形し、175℃、6時間で後硬化させ、85℃、相対湿度85%の高温高湿槽で168時間吸湿処理し、更に240℃でIRリフロー処理した。テンシロンを用いて硬化物と基板とのせん断密着力を測定した。単位はkg/mm2。
【0030】
《実施例2〜9、比較例1〜3》
表1、表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、表2に示す。
実施例及び比較例で用いた式(11)、式(12)、式(14)〜(18)のエポキシ樹脂、式(13)、式(19)のフェノール樹脂の構造及び性状を以下に示す。
【化18】
【0031】
【化19】
【0032】
【化20】
【0033】
・式(14)の構造を主成分とするエポキシ樹脂:融点144℃、エポキシ当量175、
・式(15)の構造を主成分とするエポキシ樹脂:融点52℃、エポキシ当量225、
・式(16)の構造を主成分とするエポキシ樹脂:融点133℃、エポキシ当量182、
・式(17)の構造を主成分とするエポキシ樹脂:融点82℃、エポキシ当量190、
・式(18)で示されるエポキシ樹脂:軟化点65℃、エポキシ当量210、
・式(19)のフェノール樹脂:軟化点80℃、水酸基当量104
なお、比較例1で用いた硬化促進剤はトリフェニルホスフィン、比較例2で用いた硬化促進剤は、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという)である。
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、金線流れがなく、又これを用いたエリア実装型半導体装置の室温及び半田付け工程での反りが小さく、更に有機基板との密着性に優れるため耐半田性や耐温度サイクル性等の信頼性に優れるものである。
Claims (2)
- (A)一般式(1)、一般式(2)で示される多官能エポキシ樹脂及び/又は一般式(3)〜(7)で示され、且つ融点が50〜150℃の結晶性エポキシ樹脂の群から選択される少なくとも1種以上のエポキシ樹脂、(B)一般式(8)で示されるフェノール樹脂、(C)溶融シリカ、及び(D)テトラ置換ホスホニウム(X)と1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)及び1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基との分子会合体であって、該共役塩基が前記フェノール性水酸基を1分子内に2個以上有する化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物からなる硬化促進剤を含むことを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、テトラ置換ホスホニウム(X)が、テトラフェニルホスホニウム、テトラトリルホスホニウム、テトラエチルフェニルホスホニウム、テトラメトキシフェニルホスホニウム、テトラナフチルホスホニウム、テトラベンジルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム、トリメチルフェニルホスホニウム、メチルジエチルフェニルホスホニウム、メチルジアリルフェニルホスホニウム、又はテトラ−n−ブチルホスホニウムであり、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)が、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、1,2,4−ベンゼントリオール、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、又は4,4’−ビフェノールであるエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが請求項1記載のエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とするエリア実装型半導体装置。
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