以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
本発明のプリント配線板の製造方法について説明する前に、プリント配線板の製造方法において使用され得る「樹脂シート」について説明する。
[樹脂シート]
樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む。
<樹脂組成物層>
樹脂シートにおける樹脂組成物層に用いられる樹脂組成物は特に限定されず、その硬化物が十分な硬度と絶縁性とを有するものであればよい。樹脂組成物としては、例えば、硬化性樹脂とその硬化剤を含む組成物が挙げられる。硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。したがって一実施形態において、樹脂組成物は、(A)硬化性樹脂、(B)無機充填材、及び(C)硬化促進剤を含む。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、(D)熱可塑性樹脂、(E)難燃剤及び(F)任意の添加剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
<<(A)硬化性樹脂>>
樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。硬化性樹脂としては、熱及び/又は光により硬化する樹脂が挙げられる。
このような樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、活性エステル系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド樹脂、分子内にエチレン性二重結合を有する化合物等が挙げられる。分子内にエチレン性二重結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;等が挙げられる。「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸及びアクリル酸を指し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを指す。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、樹脂組成物は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ともいう。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)を組み合わせて含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系液状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系固体状エポキシ樹脂がより好ましい。本発明において、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「EXA4032SS」、「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:20の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)~iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3~1:15の範囲がより好ましく、1:0.5~1:10の範囲がさらに好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、さらにより好ましくは110~1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系樹脂、又はノボラック構造を有するナフトール系樹脂が好ましい。また、配線層との密着性の観点から、含窒素フェノール系樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び配線層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。
フェノール系樹脂及びナフトール系樹脂の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」、群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」等が挙げられる。
活性エステル系樹脂としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
活性エステル系樹脂の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系樹脂の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性樹脂としては、通常、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用されるエポキシ樹脂が好ましい。また、硬化性樹脂としては、分子内にエチレン性二重結合を有する化合物も好ましい。この化合物を含む樹脂組成物は、一般に硬化時の収縮が大きいが、後述する基板ラックを用いて熱硬化を行うことでうねりを抑制することができる。
(A)成分としてエポキシ樹脂を用いる場合、樹脂組成物中に、さらにフェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、活性エステル系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、及びカルボジイミド系樹脂から選択される1種以上の樹脂を含有させることが好ましい。これにより、エポキシ樹脂を効果的に硬化させることができる。以下、フェノール系樹脂、ナフトール系樹脂、活性エステル系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、シアネートエステル系樹脂、及びカルボジイミド系樹脂から選択される1種以上の樹脂をまとめて「硬化剤」ということがある。この場合、硬化剤としては、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、フェノール系硬化剤、及び活性エステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤から選択される1種以上であることがより好ましい。
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01~1:2の範囲が好ましく、1:0.03~1:3がより好ましく、1:0.05~1:1.5がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは11質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<<(B)無機充填材>>
樹脂組成物は、(B)無機充填材を含有する。(B)無機充填材の材料は無機化合物であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
通常、(B)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(B)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、(B)無機充填材の平均粒径が前記の範囲にあることにより、通常は、樹脂組成物層の回路埋め込み性を向上させたり、絶縁層の表面粗さを小さくしたりできる。
(B)無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(B)無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、(B)無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。表面処理剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤による表面処理の程度は、(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(B)無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(B)無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された(B)無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
(B)無機充填材の含有量は、熱膨張率を低くする観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。上限は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
<<(C)硬化促進剤>>
樹脂組成物は、(C)硬化促進剤を含有する。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
樹脂組成物が(C)硬化促進剤を含有する場合、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
<<(D)熱可塑性樹脂>>
一実施形態において、樹脂組成物は、(D)熱可塑性樹脂を含有し得る。(D)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは38000以上、より好ましくは40000以上、さらに好ましくは42000以上である。上限は、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下である。(D)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、(D)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
中でも、(D)熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好ましく、重量平均分子量が40,000以上のフェノキシ樹脂が特に好ましい。
樹脂組成物が(D)熱可塑性樹脂を含有する場合、(D)熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
<<(E)難燃剤>>
一実施形態において、樹脂組成物は、(E)難燃剤を含有し得る。(E)難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられ、ホスファゼン化合物が好ましい。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
ホスファゼン化合物は、窒素とリンを構成元素とする環状化合物であれば特に限定されないが、ホスファゼン化合物は、フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物であることが好ましい。
ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」「SPE-100」、伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」等が挙げられ、大塚化学社製の「SPH-100」が好ましい。
ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA-HQ」、大八化学工業社製の「PX-200」等が挙げられる。難燃剤としては加水分解しにくいものが好ましく、例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド等が好ましい。
樹脂組成物が(E)難燃剤を含有する場合、(E)難燃剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
<<(F)任意の添加剤>>
一実施形態において、樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機充填材、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。(A)硬化性樹脂として分子内にエチレン性二重結合を有する化合物を用いる場合、(F)成分として、ラジカルを発生するラジカル重合開始剤等の重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、通常の重合に用いられる重合開始剤と同様のものを用いることができる。
有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本社製の「EXL2655」、アイカ工業社製の「AC3401N」、「AC3816N」等が挙げられる。
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは100μm未満、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下、又は50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されず、例えば、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である。
樹脂組成物層の硬化収縮率(例えば170℃で30分間樹脂組成物層を熱硬化)としては、プリント配線板のうねりをより抑制する観点から、好ましくは-1.0%以上、より好ましくは-0.5%以上、さらに好ましくは-0.3%以上である。上限は特に限定されないが10%以下等とし得る。樹脂組成物層の硬化収縮率は、例えば画像測定機(ミツトヨ製Quick Vision QVH1X606-PROIII BHU2G)等によって樹脂の硬化前後の寸法変化によって測定することができる。
<支持体>
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電抑制処理等の処理が施されていてもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤としてのリンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚みとしては、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制できる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートが使用可能となる。樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
[プリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板の製造方法は、
(1)厚みが0.3mm以下のコア材の少なくとも一方の面に樹脂組成物層を設けた積層体を準備する工程、及び
(2)積層体の厚み方向が鉛直方向と垂直になるように、積層体を基板ラックに格納し、樹脂組成物層を熱硬化させる工程、を含み、
基板ラックが、基板ラックの対向する側部に設けられ積層体を挿入可能な溝部を有する1対以上のガイドレールと、積層体の鉛直方向の少なくとも一方(即ち、下方及び上方の少なくとも一方)に設けられ積層体を挿入可能な溝部を有する1以上の支持レールとを備え、基板ラック内に格納された積層体は、2つのガイドレールと少なくとも1つの支持レールとで支えられる。このような基板ラックを用いて樹脂組成物層を熱硬化させることにより、厚みが薄いコア材を用いた場合に生じるプリント配線板のうねりを抑制することが可能となる。
工程(1)を行うにあたって、支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物で形成された樹脂組成物層とを含む樹脂シートを準備する工程を含んでいてもよい。支持体及び樹脂組成物層は、上記[樹脂シート]において説明したとおりである。
樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより、製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように行う。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
なお、乾燥は、後述する工程(2)で用いる基板ラックを使用し、樹脂組成物層を形成してもよい。
<工程(1)>
工程(1)において、厚みが0.3mm以下のコア材の少なくとも一方の面に樹脂組成物層を設けた積層体を準備する。積層体は、通常、コア材の少なくとも一方の面に樹脂シートの樹脂組成物層を積層させることで得られる。
コア材とは、通常、矩形の平面形状を有する部材であり、いわゆる内層基板のことをいう。コア材は、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、コア材は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。コア材の片面または両面に導体層(回路)が形成されたものは「内層回路基板」をいうことがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「コア材」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵したコア材を使用し得る。
コア材の厚みとしては、プリント配線板の薄型化の観点から、0.3mm以下であり、好ましくは0.25mm以下、より好ましくは0.2mm以下である。下限は特に限定されないが、0.015mm以上等とし得る。
樹脂シートとコア材との積層は、例えば、支持体側から、樹脂シートをコア材に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートをコア材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(ステンレス(SUS)鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接的に接触させてプレスするのではなく、コア材の表面の凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材からなるシート等を介してプレスするのが好ましい。
加熱圧着する際の温度は、好ましくは80℃~160℃、より好ましくは90℃~140℃、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲であり、加熱圧着する際の圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着する際の時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。樹脂シートとコア材との接合は、圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施することが好ましい。
樹脂シートとコア材との接合は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアプリケーター等が挙げられる。
樹脂シートとコア材との接合の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(1)と工程(2)の間に除去してもよく、工程(2)の後に除去してもよい。支持体を工程(2)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(2)と後述する工程(3)との間、工程(3)と後述する工程(4)の間、又は工程(4)と後述する工程(5)との間に実施してよい。
なお、樹脂組成物層は、通常、コア材の縁部を除いた中央部に設けられる。よって、工程(2)では、樹脂組成物層が設けられていないコア材の縁部がガイドレール及び支持レールの溝部に挿入されることが通常である。
<工程(2)>
工程(2)において、積層体の厚み方向が鉛直方向に垂直となるように積層体を基板ラックに格納し、樹脂組成物層を熱硬化させる。積層体を基板ラックに格納してから樹脂組成物層を熱硬化させることにより、コア材が薄くてもプリント配線板のうねりを抑制することが可能となる。具体的には、樹脂組成物層を熱硬化させる際に、積層体の3辺以上を基板ラックのレールで支え、樹脂組成物層を熱硬化させることでプリント配線板のうねりが抑制される。
以下、積層体を熱硬化させる際に用いる基板ラックについて図面を参照して詳細に説明する。
<<基板ラック>>
図1及び図2に一例を示すように、本発明の一実施形態に係る基板ラック100は、基板ラック100に格納される積層体1の鉛直方向の最下方に位置する、底部としての底部フレーム20、及び底部フレーム以外の側部フレーム10とを備える。基板ラック100に格納される積層体1の鉛直方向の上方に相当する上面側では、積層体1を格納するために、基板ラック100は開口している。
基板ラック100は、その内部に、対向する側部フレーム10に設けられた1対以上の第1のガイドレール11A、第2のガイドレール11Bを備える。第1及び第2のガイドレール11A、11Bは、それぞれ、積層体1を挿入可能に鉛直方向に延伸して形成された第1及び第2の溝部12A、12Bを有しており、第1及び第2の溝部12A、12Bは、基板ラック100の内部に対向する位置に設けられている。1対の第1及び第2のガイドレール11A、11Bは、第1及び第2の溝部12A、12Bに積層体1を挿入可能となるように、格納された積層体1の厚み方向での位置が同じになるように設けられている。
また、基材ラック100は、その内部に、積層体1の鉛直方向の下方の支持レールとして、底部フレーム20に設けられ、1つ以上の支持レール21を備える。支持レール21は、積層体1の主面に平行な水平方向に延在して設けられている。よって、支持レール21は、第1及び第2のガイドレール11A、11Bの延在方向に対して垂直に延在している。支持レール21は、側部フレーム10に設けられている第1及び第2のガイドレール11A、11Bと同様に、積層体1を挿入可能な第3の溝部22を、基板ラック100の開口側に有する。第3の溝部22は、積層体1の主面に平行な水平方向に延在して形成されている。また、支持レール21は、基材ラック100に格納される積層体1の広い範囲を第3の溝部22に挿入できるように、十分に長く設けられている。
さらに、格納された積層体1の厚み方向での第3の溝部22の位置は、1枚の積層体1を1対の第1及び第2のガイドレール11A、11B及び支持レール22で支えられるように、即ち2つのガイドレールと1つの支持レールの合計3つのレールで支えられるように、第1及び第2の溝部12A、12Bの位置と同じになるように調整されている。さらに、通常積層体1は矩形であるので、第1及び第2のガイドレール11A、11Bの第1及び第2の溝部12A、12Bと底部フレーム20に設けられている支持レール21の第3の溝部22とは垂直となるように設けられている。
本実施形態では、第1及び第2のガイドレール11A、11B及び支持レール22が複数組設けられた例を示す。また、両端の第1及び第2のガイドレール11A、11B及び支持レール22の第1から第3の溝部12A、12B及び22には、外部からの風の進入を妨げるように、風よけ板30が挿入されている。さらに、図1及び図2では、基板ラック100に1つの積層体1が格納されている様子を示している。
積層体1は、底部フレーム20に設けられている支持レール21の第3の溝部22に挿入されるまで、側部フレーム10に設けられた2つの第1及び第2のガイドレール11A、11Bの第1及び第2の溝部12A、12Bに沿って挿入され、基板ラック100内に格納される。図3に一例を示すように、底部フレーム20に設けられた支持レール21の第3の溝部22(図3では図示せず)に積層体1が挿入されるので、積層体1は、その側方の2辺だけでなく、3辺を第1及び第2のガイドレール11A、11B並びに支持レール21によって支えられている。これにより、熱硬化時の積層体1のうねりを抑制できる。
図4に一例を示すように、側部フレーム10には1以上の第1のガイドレール11Aが設けられている。なお、説明の便宜上、図4は第1のガイドレール11Aのみを示している。第1のガイドレール11A間の間隔Tは、積層体1の厚みによって適宜変更することができるが、好ましくは5mm以上、より好ましくは7.5mm以上、さらに好ましくは10mm以上であり、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下、さらに好ましくは30mm以下である。第1のガイドレール11Aの間隔Tを斯かる範囲内にすることにより、複数のプリント配線板のうねりを一度に抑制することが可能となる。第2のガイドレール11Bの間隔、及び底部フレーム20に設けられた支持レール21の間隔も、第1のガイドレール11Aと同様の間隔Tであることが好ましい。
また、第1のガイドレール11Aの第1の溝部12Aの幅Hは、積層体1やコア材の厚みによって適宜変更することができるが、好ましくは3mm未満、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下であり、好ましくは0.3mmを超え、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。第1の溝部12Aの幅Hを斯かる範囲内にすることにより、プリント配線板のうねりを抑制することが可能となる。第2のガイドレール11Bの第2の溝部12Bの幅、及び底部フレーム20に設けられた支持レール21の第3の溝部22の幅も、第1のガイドレール11Aの第1の溝部12Aと同様の幅Hであることが好ましい。
第1及び第2のガイドレール11A、11Bの第1及び第2の溝部12A、12Bの幅H(mm)は、コア材の厚みをt(mm)としたとき、下記式(1)を満たすことが好ましく、下記式(2)を満たすことがより好ましく、下記式(3)を満たすことがさらに好ましい。幅Hを3mm未満とすることで、樹脂組成物層を熱硬化させる際に樹脂組成物層が撓んでなびいてしまうことを抑制することができ、その結果プリント配線板のうねりが抑制される。一方、幅Hをコア材の厚みより大きくすることにより、第1及び第2のガイドレール11A、11Bの第1及び第2の溝部12A、12Aと積層体1との間に間隙が生じる。樹脂組成物層を熱硬化させる際に樹脂組成物層が撓んでなびいても、間隙があることで樹脂組成物層のたわみが応力により抑制され、その結果プリント配線板のうねりが抑制される。支持レール21の第3の溝部22に関しても、下記式(1)を満たすことが好ましく、下記式(2)を満たすことがより好ましく、下記式(3)を満たすことがさらに好ましい。
t<H<3(mm) (1)
t<H<2(mm) (2)
t<H<1.5(mm)(3)
第1及び第2のガイドレール11A、11B、及び支持レール21を、第1及び第2のガイドレール及び支持レールの延在方向に直交する方向で切断した場合の断面形状(以下、単に「断面形状」ということがある。)は、C字型;V字型;及びU字型のいずれかであることが好ましく、C字型であることがより好ましい。
第1及び第2のガイドレール11A、11B、及び支持レール21の第1から第3の溝部12A、12B、22の断面形状におけるC字型とは、図5に一例を示すようにいわゆるコの字型である。断面形状をC字型とすることで、積層体1に対してガイドレール11A、11B及び支持レール21は、面接触して支持することが可能となり、熱硬化時の積層体1のうねりをより抑制できる。第1及び第2のガイドレール並びに支持レールの突出部13の長さAは、積層体1を挿入可能するとともに樹脂組成物層を効率的に熱硬化させることができれば特に限定されないが、例えば、積層体1の長さをB(mm)とし、突出部13の長さをA(mm)としたとき、A<0.1Bの関係を満たすことが好ましく、A<0.05Bの関係を満たすことがより好ましく、A<0.03Bの関係を満たすことがさらに好ましい。
第1及び第2のガイドレール11A、11B、及び支持レール21の第1から第3の溝部12A、12B、22の断面形状におけるV字型とは、いわゆる図6に一例を示すような形状である。断面形状がV字型の場合、幅Hは、図6に示したように、第1のガイドレールの積層体1と接触した点Cから、当該点Cから積層体1の厚み方向へ引いた延長線が第1のガイドレールと交差した点Dまでの距離を表す。第2のガイドレール及び支持レールの断面形状がV字型の場合の幅Hも第1のガイドレールと同様にして求めることができる。断面形状をV字型とすることで、積層体1の角でガイドレール11A、11B及び支持レール21が点接触して支持することが可能となり、熱硬化時の積層体1のうねりをより抑制できる。
V字型の溝部の開口角度θは、積層体1のたわみを抑制する観点から、好ましくは10°以上、より好ましくは20°以上、さらに好ましくは30°以上であり、好ましくは120°以下、より好ましくは90°以下、さらに好ましくは75°以下である。
第1及び第2のガイドレール11A、11B、及び支持レール21の第1から第3の溝部12A、12B、22の断面形状がV字型である場合の第1及び第2のガイドレール並びに支持レールの突出部13の長さA(mm)と積層体の長さB(mm)との関係は、溝部の断面形状が矩形状である場合と同様である。
第1及び第2のガイドレール11A、11B、及び支持レール21の第1から第3の溝部12A、12B、22の断面形状におけるU字型とは、いわゆる図7に一例を示すように、2つの開口内面が曲面である形状である。曲面は、第1及び第2の溝部12A、12Bに挿入される積層体1に向けて凸であることが好ましい。この場合、幅Hは、図7に示したように、積層体1と一方の弧状の部材14Bとが接触した点Eから、当該点Eから積層体1の厚み方向へ引いた延長線が他方の弧状の部材14Aと交差した点Fまでの距離を表す。断面形状を図7に示した形状とすることで、積層体1に対してガイドレール11A、11B及び支持レール21は小さい面積で面接触して支持させることが可能となり、熱硬化時の積層体1のうねりをより抑制できる。
第1から第3の溝部12A、12B、22の断面形状が図7に一例を示すような形状である場合、積層体1のたわみを抑制する観点から、例えば、積層体1の長さをB(mm)とし、弧状の部材14A、14Bの最長長さ(図7ではG)をG(mm)としたとき、G<0.1Bの関係を満たすことが好ましく、G<0.05Bの関係を満たすことがより好ましく、G<0.03Bの関係を満たすことがさらに好ましい。
積層体1は、第1及び第2のガイドレールと少なくとも1つの支持レールとの合計3つのレールで支えられるが、その際、第1及び第2のガイドレールの断面形状、及び支持レールの断面形状は、同一であってもよくそれぞれが異なっていてもよい。
基板ラック100は、その上面側、即ち底部としての底部フレームの対向する位置に図示しない蓋部としての蓋部フレームを備えていてもよい。蓋部フレームには、積層体を挿入可能な溝部を有する支持レールが1以上設けられていることが好ましい。蓋部に設けられた支持レールは、基板ラックに格納される積層体の鉛直方向の上方に設けられた支持レールに相当する。積層体を基板ラックに格納後、蓋部フレームにより基板ラック内部が閉じられることにより、積層体は、対向する側部のガイドレール、並びに底部、及び蓋部の2つの支持レール、即ち4つのレールで積層体の4辺が支えられる。これにより、より効果的にプリント配線板のうねりを抑制することが可能となる。蓋部に設けられた支持レールは、底部フレームに設けられた支持レールと対向する位置に配置されている。また、蓋部に設けられた支持レールは、底部フレームに設けられた支持レールと同様のものを使用することが好ましい。
以上、基板ラック100の底部フレームに支持レールが設けられている態様について説明したが、基板ラック100の底部フレームに支持レールを設けず蓋部に支持レールを設けて、側部フレームのガイドレールと蓋部の支持レールによって積層体の3辺を支える態様であってもよい。この態様でも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
<<樹脂組成物層の熱硬化>>
樹脂組成物層の熱硬化は、積層体を基板ラックに格納した状態で行う。重力で樹脂組成物層が撓んでなびくことを抑制する観点から、積層板の面が地面に対して垂直方向となるように、即ち積層板を直立させた状態で樹脂組成物層を熱硬化させることが好ましい。
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~200℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~90分間とすることができる。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
<その他の工程>
プリント配線板を製造するに際しては、(3)絶縁層に穴あけする工程、(4)絶縁層を粗化処理する工程、(5)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(3)乃至工程(5)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。また、必要に応じて、工程(1)~工程(5)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
工程(3)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(3)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(4)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
工程(5)は、導体層を形成する工程である。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の製造方法により得られたプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明の製造方法により得られたプリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
<樹脂ワニスAの調製>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学社製「エピコート828EL」)25部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量269、日本化薬社製「NC3000」)25部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「YL6954BH30」)15部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製「BX-5Z」固形分15%のエタノールとトルエンの1:1溶液)15部とをMEK40部、シクロヘキサノン40部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、DIC社製「LA-7054」、窒素含有量約12質量%の固形分60質量%のMEK溶液)16部、ナフトール系樹脂(水酸基当量215、東都化成社製「SN-485」)の固形分60質量%のMEK溶液16部、ナフトール系樹脂(水酸基当量107、東都化成社製「SN-395」)の固形分50質量%のMEK溶液6部、難燃剤(水酸基当量162、三光社製「HCA-HQ」、リン含有量9.5%)1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SO-C2」、アミノシラン処理付き)70部、硬化促進剤1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(四国化成(株)製「1B2PZ」)10質量%MEK溶液3部を高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスAを作製した。
<樹脂ワニスBの調製>
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC社製「EXA4032SS」)6質量部と、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱化学社製「YX4000HK」)12質量部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約290、日本化薬社製「NC3000」)9質量部をMEK4質量部、ソルベントナフサ25質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温(25℃)にまで冷却後、そこへ、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St(数平均分子量1200)」の不揮発分50質量%)の15部、さらに活性エステル系樹脂(DIC社製「HPC8000-65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)45量部、硬化促進剤として4-ジメチルアミノピリジンの5質量%のMEK溶液5質量部、及びフェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマテックス社製「SOC2」、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m2)160質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスBを作製した。
<樹脂シートの作製>
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、前記の樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。該樹脂組成物層を、熱風乾燥炉を用いて室温から140℃まで昇温速度3℃/秒で昇温することで溶剤を除去することで、厚みが38μmの支持体及び厚みが40μmの樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
<硬化収縮率の測定>
得られた樹脂ワニスをポリイミドフィルム(宇部興産社製UPILEX50S)に樹脂層の厚さが40μmになるように均一に塗布し、熱風乾燥炉を用いて室温から140℃まで昇温速度3℃/秒で昇温することで溶剤を除去しシートを得た。得られたシートに7mm径の穴を2点形成し、画像測定機(ミツトヨ社製Quick Vision QVH1X606-PROIII BHU2G)にて2点間距離(L1)を測定した。その後、樹脂層を窒素雰囲気下200℃で90分間硬化させ、得られた硬化物をポリイミドフィルムから剥離し、再度2点間の距離(L2)を測定した。(L1-L2)/L1×100の計算式により数値を算出した。これを5回行い、その平均値を硬化収縮率とした。
[実施例1]
<プリント配線板の作製>
(1)コア材(内層回路基板)の作製
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚み0.1mm(100μm)、松下電工社製R1515A)の銅箔を除去し、コア材を作製した。
(2)樹脂シートのラミネート
樹脂シートAを、上記(1)で作製した内層回路基板の両面に、樹脂組成物層の厚みが40μmとなるように、ニチゴー・モートン社製ラミネーター(2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いてラミネートした。ラミネート条件は、積層時の真空度0.099967kPa、加圧7kgf/cm2、温度120℃の条件で30秒ラミネートして積層し、500mm四方の正方形状の積層体を得た。
(3)基板ラックの作製
基板ラックの内部の対向する側部フレーム、底部フレーム及び底部フレームの対向する位置の蓋部に溝部の幅が1000μm、断面形状が図5に示すようなC字型のガイドレール及び支持レールを設け、基板ラックを作製した。ガイドレール及び支持レールの突出部の長さは5mmであった。
(4)積層体の格納
積層体を、上記(3)で作製した基板ラックの側部フレームに設けられたガイドレールの溝部に挿入し、底部フレームに設けられた支持レールに挿入されるまでスライドさせ、基板ラック内に積層体を格納した。格納後、蓋部に設けられた支持レールに積層体が挿入するように蓋部を基板ラック上面に載置した。
(5)樹脂組成物層の硬化
積層体が格納された基板ラックを加熱オーブン内に投入した。このとき、積層体における樹脂組成物層の面が地面に対して略垂直方向となるように加熱オーブン内に投入した。加熱オーブン内へ基板ラックを投入後、大気圧で170℃、30分間樹脂組成物層を熱硬化することでプリント配線板を作製した。
<プリント配線板のうねりの評価>
樹脂組成物層を硬化させた後のプリント配線板サンプルを主面が水平となるように置き、最大高さを測定し、以下の基準で評価した。
○:最大高さが4μm未満
△:最大高さが4μm以上6μm未満
×:最大高さが6μm以上
[実施例2]
実施例1において、基板ラックに蓋部を設けなかった。即ち、基板ラックの内部の対向する側部フレーム、及び底部フレームに溝部の幅が1000μmのガイドレール及び支持レールを設け、基板ラックを作製した。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作製した。
[実施例3]
実施例1において、溝部の幅が1000μmのガイドレール及び支持レールを、溝部の幅が1500μmのガイドレール及び支持レールに変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作製した。
[実施例4]
実施例1において、樹脂組成物層の厚みを40μmから90μmに変え、ガイドレール及び支持レールの断面形状を図5に示すようなC字型から図7に示すようなU字型に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作製した。
[実施例5]
実施例1において、ガイドレール及び支持レールの断面形状を図5に示すようなC字型から図7に示すようなU字型に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作製した。
[実施例6]
実施例1において、ガイドレール及び支持レールの断面形状を図5に示すようなC字型から図6に示すようなV字型に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作製した。
[実施例7]
実施例1において、樹脂ワニスAを樹脂ワニスBに変更し、窒素雰囲気化で硬化させた。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作製した。
[比較例1]
実施例1において、上記(3)~(4)を行わず、基板ラックを用いずに積層体の上辺を加熱オーブン内に固定し、積層体が吊り上げられた状態で大気圧下170℃で30分間樹脂組成物層を熱硬化させた。以上の事項以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作製した。
[比較例2]
実施例2において、基板ラックの底部内面に支持レールを設けなかった。即ち、基板ラックの内部の対向する側部フレームのみに溝部の幅が1000μmのガイドレールを設け、基板ラックを作製した。以上の事項以外は実施例2と同様にしてプリント配線板を作製した。
表中の「上」とは、蓋部に設けられた支持レールを表し、「左右」とは側部フレームに設けられたガイドレールを表し、「下」とは、底部フレームに設けられた支持レールを表す。