JP4395923B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エリア実装型半導体装置での成形後や半田処理時の反りが小さく、耐半田クラック性に優れ、且つ成形性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高機能化の市場動向において、半導体の高集積化が年々進み、又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。
エリア実装型半導体装置としては、ボールグリッドアレイ(以下、BGAという)、あるいは更に小型化を追求したチップサイズパッケージ(以下、CSPという)が代表的であるが、これらは従来QFP、SOPに代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、ビスマレイミド・トリアジン(以下、BTという)樹脂/銅箔回路基板に代表される硬質回路基板、あるいはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その素子搭載面、即ち基板の片面のみが樹脂組成物などで成形・封止されている。又、基板の素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行う特徴を有している。更に、素子を搭載する基板としては、上記有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も考案されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置の構造は、基板の素子搭載面のみを樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態をとっている。ごく希に、リードフレーム等の金属基板などでは、半田ボール形成面でも数十μm程度の封止樹脂層が存在することもあるが、素子搭載面では数百μmから数mm程度の封止樹脂層が形成されるため、実質的に片面封止となっている。このため、有機基板や金属基板と樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合、あるいは樹脂組成物の成形・硬化時の硬化収縮による影響により、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。又、これらの半導体装置を実装する回路基板上に半田接合を行う場合、200℃以上の加熱工程を経るが、この際に半導体装置の反りが発生し、多数の半田ボールが平坦とならず、半導体装置を実装する回路基板から浮き上がってしまい、電気的接合信頼性が低下する問題も起こる。
基板上の実質的に片面のみを樹脂組成物で封止した半導体装置において、反りを低減するには、基板の線膨張係数と樹脂組成物の硬化物の線膨張係数を近づけること、及び樹脂組成物の硬化収縮を小さくすることの二つの方法が重要である。
基板としては有機基板では、BT樹脂やポリイミド樹脂のような高いガラス転移温度(以下、Tgという)の樹脂が広く用いられており、これらは樹脂組成物の成形温度である170℃近辺よりも高いTgを有する。従って、成形温度から室温までの冷却過程では有機基板のα1の領域のみで収縮する。従って、樹脂組成物もTgが高く、且つα1が回路基板と同じであり、更に硬化収縮がゼロであれば反りはほぼゼロであると考えられる。このため、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂との組合せによりTgを高くし、無機充填材の配合量でα1を合わせる手法が既に提案されている。
【0004】
又、赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬などの手段での半田処理による半田接合を行う場合、樹脂組成物の硬化物並びに有機基板からの吸湿により半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で半導体装置にクラックが発生したり、基板の素子搭載面と樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生することもあり、硬化物の高強度化、低応力化、低吸湿化とともに、基板との高密着性も求められる。
従来のBGAやCSPなどのエリア実装型半導体装置には、反りの低減のためにトリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物が用いられてきた。この樹脂組成物は、Tgが高く、硬化性、熱時曲げ強度に優れた特性を有しているが、硬化物の吸湿率が高く、又、樹脂組成物の溶融粘度が比較的高く、無機充填材の高充填化には限界があり、低吸湿化が不十分で、耐半田クラック性には問題があった。
一方、従来のQFPやSOPなどの表面実装型半導体装置では、半田実装時のクラックや各素材界面での剥離防止のために、ビフェニル型エポキシ樹脂に代表されるような結晶性エポキシ樹脂を使用しているが、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂を用いた樹脂組成物の硬化物と比較して熱時曲げ強度が低く、且つ硬化が遅いのが問題であった。
そこで、反りが小さく、硬化性、熱時曲げ強度に優れ、且つ低吸湿性、耐半田クラック性に優れる樹脂組成物を得るため、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の特徴を生かすべく、樹脂組成物の製造時に両方のエポキシ樹脂を適正量併用したり、予め両方のエポキシ樹脂を溶融混合したものを用いても、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂を用いた時の反りが小さく、硬化性、熱時曲げ強度に優れるという特徴と、結晶性エポキシ樹脂を用いた時の低吸湿、耐半田クラック性に優れるという特徴を両立することはできておらず、不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エリア実装型半導体装置での成形後や半田処理時の反りが小さく、耐半田クラック性に優れ、且つ成形性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び半導体装置を提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1](A)一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合しグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)硬化促進剤を必須成分とし、(a)と(b)との重量比(a/b)が1〜19であり、エポキシ樹脂(A)の軟化点が70〜120℃であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、無機充填材の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり250〜1400重量部であり、硬化促進剤の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であり、前記結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、一般式(3)、一般式(4)、又は一般式(5)から選ばれる一種以上であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【化6】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4、n=0〜3、kは平均値で、1〜10の正数)
【0007】
【化7】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4)
【化8】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4)
【化9】
【化10】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4、R 2 は水素、炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[2]一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(A)において、融解熱量が5〜35mJ/mgである第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【0010】
[3]結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、3−ターシャリブチル−2,4'−ジヒドロキシ−3',5',6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4'−ジヒドロキシ−3',5',6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4'−ジヒドロキシ−3',5,5'−トリメチルスチルベン、の3種から選ばれる1種以上と4,4'−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルスチルベン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−6,6'−ジメチルスチルベン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−6,6'−ジメチルスチルベン、2,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−6,6'−ジメチルスチルベン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルスチルベン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−5,5'−ジメチルスチルベンの6種から選ばれる1種以上との混合物、又は、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3',5'−ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドである第[1]、又は[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
[4]基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが第[1]、[2]、又は[3]項記載のエポキシ樹脂組成物によって封止しされていることを特徴とする半導体装置。を提供するものであり、エリア実装型半導体装置での成形後や半田処理時の反りが小さく、耐半田クラック性に優れ、且つ成形性に優れる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)との重量比(a/b)を1〜19とした混合物(以下、混合多価フェノールという)をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂は、結晶性エポキシ樹脂に由来する低粘度化が図られており、これにより無機充填材の高充填化、ひいては樹脂組成物の硬化物の低吸湿化が可能となり、樹脂組成物の硬化物のTgが殆ど低下せず、又、多官能エポキシ樹脂を用いた樹脂組成物の硬化物の熱時曲げ強度と較べても遜色なく、且つ低弾性率で、硬化性も同等の特性を有している。この方法で得られたエポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂がより均一化されることにより、結晶性エポキシ樹脂を使用する場合の問題点である硬化反応性も向上するものと考えられる。従って、本発明の樹脂組成物を用いた半導体装置は、実装時の半田処理下でも高い信頼性を得ることができる。
【0012】
一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂としては、例えば式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)等が挙げられるが、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から式(6)、式(9)の多官能フェノール樹脂が好ましい。
【化11】
【0013】
【化12】
【0014】
【化13】
【0015】
【化14】
【0016】
【化15】
本発明に用いる結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)としては、例えば一般式(3)のビフェニル型、一般式(4)のビスフェノール型、一般式(5)のスチルベン型等が挙げられる。
【0017】
一般式(3)のビフェニル型フェノール類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルビフェニル等(置換位置の異なる異性体を含む)が挙げられる。
一般式(4)のビスフェノール型フェノール類としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−ターシャリブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等が挙げられる。
【0018】
一般式(5)のスチルベン型フェノール類としては、例えば、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,3’−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,6−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルスチルベン等(置換位置の異なる異性体を含む)が挙げられる。
【0019】
これらの内では、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(以上7種のフェノール類を、以下a群という)、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン(以上3種のフェノール類を、以下b群という)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、又は4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン(以上6種のフェノール類を、以下c群という)から選択される1種以上が好ましい。
【0020】
a群の内、ビフェニル型フェノール類では、低粘度化効果が大きく、且つ反応性に富む4,4’−ジヒドロキシビフェニルが含まれているものが特に好ましい。その他のa群では、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドが特に好ましい。
又、スチルベン型フェノール類では、b群から選ばれる1種以上と、c群から選ばれる1種以上との混合物が、軟化点が低くなるため好ましい。これらの混合比、混合方法等は特に限定しない。
【0021】
本発明の多官能フェノール樹脂(a)と結晶性エポキシ樹脂の前駆体のフェノール類(b)の重量比(a/b)としては、1〜19が好ましく、特に、1.5〜9が好ましい。重量比が1未満だと、グリシジルエーテル化したときに生成した多官能エポキシ樹脂に由来する高いTg、熱時曲げ強度を十分に発現できないので好ましくない。又、重量比が19を越えると、グリシジルエーテル化したときに生成した結晶性エポキシ樹脂に由来する低粘度化の効果が薄まり、無機充填材の高充填化ができないので好ましくない。
本発明のエポキシ樹脂の合成方法については特に限定しないが、例えば、混合多価フェノールを過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で50〜150℃、好ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより得ることができる。生成したエポキシ樹脂の塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
本発明のエポキシ樹脂の軟化点としては、70〜120℃の範囲にあることが好ましく、特に、80〜110℃が好ましい。70℃未満だと、常温で液状又は半固形状であり、グリシジルエーテル化処理後の作業性の問題や、これを用いた樹脂組成物の常温保存性の低下、あるいはその硬化物のTg及び熱時曲げ強度の低下のおそれがあるので好ましくない。120℃を越えると、グリシジルエーテル化したときに生成した多官能エポキシ樹脂自体の粘度が高くなり、同時に生成した結晶性エポキシ樹脂成分の低粘度化の効果が薄くなるので好ましくない。エポキシ樹脂の軟化点の測定方法は、JIS K 7234の環球法に準じた。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂としては、特に融解熱量が5〜35mJ/mgであるものが好ましい。この融解熱量は、使用するフェノール類(b)のグリシジルエーテル化により生成する結晶性エポキシ樹脂に由来している。5mJ/mg未満だと、エポキシ樹脂は低軟化点で作業性が著しく低下するので好ましくない。35mJ/mgを越えると、結晶性エポキシ樹脂のような挙動を示し、多官能エポキシ樹脂に由来する高いTgや硬化反応性を維持することができなくなるため好ましくない。エポキシ樹脂の融解熱量は、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)・製)を用いて、常温から昇温速度5℃/分で昇温したときの吸熱ピークの熱量を示す。
又、本発明のエポキシ樹脂の特性を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用できる。併用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。
本発明で用いる一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂硬化剤としては、具体的には前記した式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)等が挙げられるが、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から式(6)、式(9)の多官能フェノール樹脂硬化剤が好ましい。
【0023】
又、本発明のフェノール樹脂の特性を損なわない範囲で、他のフェノール樹脂硬化剤を併用できる。併用できるフェノール樹脂硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。更に、半導体装置の長期信頼性の点から、不純物として含有される塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
全エポキシ樹脂のエポキシ基と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基との当量比は、0.5〜2.0が好ましく、この範囲を外れると、樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のTgの低下等のおそれがあるので好ましくない。
【0024】
本発明で用いる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融破砕シリカ粉末、溶融球状シリカ粉末、結晶シリカ粉末、2次凝集シリカ粉末、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、特に溶融球状シリカが好ましい。球状シリカの形状としては、流動性改善のために限りなく真球状であり、且つ粒度分布がブロードであることが好ましい。
この無機充填材の配合量としては、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂との合計量100重量部当たり250〜1400重量部が好ましい。250重量部未満だと、低熱膨張化、低吸湿性が得られず、耐半田クラック性が不十分となり、1400重量部を越えると、流動性が低下し、成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内の金線変形等の不都合が生じるおそれがあるので好ましくない。
本発明で用いる無機充填材は、予め十分に混合しておくことが好ましい。又、必要に応じて無機充填材をカップリング剤やエポキシ樹脂あるいはフェノール樹脂で予め処理して用いても良く、処理の方法としては、溶剤を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や直接無機充填材に添加し、混合機を用いて処理する方法等がある。
【0025】
本発明で用いる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応を促進するものであれば良く、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いても差し支えない。
配合量としては、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂との合計量100重量部当たり0.4〜20重量部が好ましい。配合量が0.4重量部未満だと、加熱成形時に十分な硬化性が得られないおそれがあり、一方、20重量部を越えると、硬化が速すぎて成形時に流動性の低下による充填不良等を生じるおそれがあるので好ましくない。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合しても差し支えない。
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明の樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形すればよい。
【0027】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例及び比較例のエポキシ樹脂A〜Fの合成に使用した樹脂は、前記した式(9)と、式(11)(水酸基当量91g/eq)である。式(11)の構造を以下に示す。
【化16】
【0028】
又、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類として4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベンを用いた。
実施例及び比較例で使用したエポキシ樹脂A〜Fについて、その特性を表1に示す。エポキシ樹脂A〜Fは、表1の配合割合で、常法に従いグリシジルエーテル化して得た。配合割合は重量部とする。軟化点、融解熱量は、前述した方法で測定した。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例1
を、常温においてミキサーで混合し、70〜120℃で2軸ロールにより混練し、冷却後粉砕して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0031】
・スパイラルフロー:EMMI−I−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
・硬化トルク:キュラストメータ((株)オリエンテック・製、JSRキュラストメータIVPS型)を用い、金型温度175℃、加熱開始90秒後のトルクを求めた。キュラストメータにおけるトルクは硬化性のパラメータであり、数値の大きい方が硬化性が良好である。単位はkgf・cm。
・吸湿率:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で直径50mm、厚さ3mmの成形品を成形し、175℃、8時間で後硬化し、得られた成形品を85℃、相対湿度60%の環境下で168時間放置し、重量変化を測定して吸湿率を求めた。単位は重量%。
・熱時強度:熱時曲げ強度をJIS K 6911に準じて(240℃で)測定した。単位はいずれもN/mm2。
・パッケージ反り量:トランスファー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で225pBGA(基板は厚さ0.36mm、ビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、パッケージサイズは24×24mm、厚さ1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚さ0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている。)を成形した。更にポストキュアとして175℃で8時間処理した。室温に冷却後パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。単位はμm。
・耐半田クラック性:トランスファー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で225pBGA(基板は厚さ0.36mm、ビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、パッケージサイズは24×24mm、厚さ1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚さ0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている。)を成形した。ポストキュアとして175℃で8時間処理したパッケージ8個を、85℃、相対湿度60%で168時間処理した後、IRリフロー処理(240℃)を行った。処理後の内部の剥離、及びクラックの有無を超音波傷機で観察し、不良パッケージの個数を数えた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/8と表示する。
【0032】
実施例2〜5、比較例1〜6
実施例1と同様にして、表2、表3の組成に従って配合して得られた樹脂組成物について評価した。評価結果を表2、表3に示す。
実施例2、5、比較例3では式(9)のフェノール樹脂硬化剤を用いた。
比較例4、5では式(12)のエポキシ樹脂(エポキシ当量154g/eq)を用いた。
比較例5、6では4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂(融点105℃、エポキシ当量195g/eq)を用いた。
【0033】
【化17】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【発明の効果】
本発明に従うと、成形性に優れるエポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は成形後や半田処理時の反りが小さく、耐半田クラック性に優れている。
Claims (4)
- (A)一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合しグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)硬化促進剤を必須成分とし、(a)と(b)との重量比(a/b)が1〜19であり、エポキシ樹脂(A)の軟化点が70〜120℃であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、無機充填材の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり250〜1400重量部であり、硬化促進剤の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であり、前記結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、一般式(3)、一般式(4)、又は一般式(5)から選ばれる一種以上であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(A)において、融解熱量が5〜35mJ/mgである請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、3−ターシャリブチル−2,4'−ジヒドロキシ−3',5',6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4'−ジヒドロキシ−3',5',6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4'−ジヒドロキシ−3',5,5'−トリメチルスチルベン、の3種から選ばれる1種以上と4,4'−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルスチルベン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−6,6'−ジメチルスチルベン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−6,6'−ジメチルスチルベン、2,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−6,6'−ジメチルスチルベン、2,2'−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルスチルベン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジターシャリブチル−5,5'−ジメチルスチルベンの6種から選ばれる1種以上との混合物、又は、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3',5,5'−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3',5'−ジメチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドである請求項1、又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが請求項1、2、又は3記載のエポキシ樹脂組成物によって封止されていることを特徴とする半導体装置。
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