JP4517433B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板や金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみを樹脂封止されたいわゆるエリア実装型半導体装置に適した半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高機能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、又、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の装置から移行し始めている。
エリア実装型半導体装置としては、ボールグリッドアレイ(以下、BGAという)、あるいは更に小型化を追求したチップサイズパッケージ(以下、CSPという)等が代表的であるが、これらは従来のQFP、SOP等に代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。構造としては、ビスマレイミド・トリアジン(以下、BTという)樹脂/銅箔回路基板に代表される硬質回路基板、あるいはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみがエポキシ樹脂組成物等で成形・封止されている。又、基板の半導体素子搭載面の反対面には、半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行うという特徴を有している。更に、半導体素子を搭載する基板としては、上記有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も開発されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置の構造は、基板の半導体素子搭載面のみをエポキシ樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態をとっている。ごく希に、リードフレーム等の金属基板等では、半田ボール形成面でも数十μm程度の封止樹脂層が存在することもあるが、半導体素子搭載面では数百μmから数mm程度の封止樹脂層が形成されるため、実質的に片面封止となっている。このため、有機基板や金属基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合、あるいはエポキシ樹脂組成物の成形・硬化時の硬化収縮による影響で、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。
又、これらの半導体装置を実装する回路基板上に半田接合を行う場合、200℃以上の加熱工程を経るが、この際にも半導体装置の反りが発生し、多数の半田ボールが平坦とならず、半導体装置を実装する回路基板から浮き上がってしまい、電気的接合の信頼性が低下する問題が起こる。
基板上の実質的に片面のみをエポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置において、反りを低減するには、基板の線膨張係数とエポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数を近づけること、及びエポキシ樹脂組成物の成形・硬化時の硬化収縮量を小さくすることの二つの方法が重要である。
基板としては、有機基板では、BT樹脂やポリイミド樹脂のような高いガラス転移温度(以下、Tgという)を有する樹脂が広く用いられており、これらはエポキシ樹脂組成物の成形温度である170℃近辺よりも高いTgを有する。従って、成形温度から室温までの冷却過程では有機基板の線膨張係数α1(以下、α1という)の領域のみで収縮するので、エポキシ樹脂組成物の硬化物もTgが高く、且つα1が有機基板と同じであり、更に硬化収縮量がゼロであれば反りはほぼゼロであると考えられる。このため、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂との組合せによりTgを高くし、無機充填材の配合量でα1を合わせる手法が既に提案されている。
【0004】
又、赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬等の手段での半田処理による半田接合を行う場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物並びに有機基板からの吸湿により半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で半導体装置にクラックが発生したり、有機基板の半導体素子搭載面とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生することもあり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の高強度化、低応力化、低吸湿化とともに、有機基板との高密着性も求められる。
従来のBGAやCSP等のエリア実装型半導体装置には、反りの低減のためにトリフェノールメタン型エポキシ樹脂とトリフェノールメタン型フェノール樹脂を樹脂成分とするエポキシ樹脂組成物が用いられてきた。このエポキシ樹脂組成物は、Tgが高く、硬化性、熱時曲げ強度に優れた特性を有しているが、硬化物の吸湿率が高く、又、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が比較的高く、無機充填材の高充填化には限界があり、低吸湿化が不十分で、耐半田クラック性には問題があった。
一方、従来のQFPやSOP等の表面実装型半導体装置では、半田実装時のクラックや各素材界面での剥離の防止のために、ビフェニル型エポキシ樹脂に代表されるような結晶性エポキシ樹脂を使用しているが、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物と比較して熱時曲げ強度が低く、且つ硬化が遅いのが問題であった。
そこで、反りが小さく、硬化性、熱時曲げ強度に優れ、且つ低吸湿性、耐半田クラック性に優れるエポキシ樹脂組成物を得るため、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の特徴を生かすべく、エポキシ樹脂組成物の製造時に両方のエポキシ樹脂を適正量併用したり、予め両方のエポキシ樹脂を溶融混合したものを用いても、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂を用いた時の反りが小さく、硬化性、熱時曲げ強度に優れるという特徴と、結晶性エポキシ樹脂を用いた時の低吸湿性、耐半田クラック性に優れるという特徴を両立することはできておらず、不十分であった。
【0005】
又、電子・電気材料、特にIC封止材料は近年、生産効率の向上を目的とした速硬化性と、物流・保管時の取り扱い性向上のための保存性の向上とが求められるようになってきている。従来、電子・電気分野向けエポキシ樹脂には、硬化促進剤としてホスフィン類、アミン類、イミダゾール系化合物、ジアザビシクロウンデセン等の含窒素複素環式化合物、第四級アンモニウム、ホスホニウム或いはアルソニウム化合物等の種々の化合物が使用されている。
これらの一般に使用される硬化促進剤は、常温等の比較的低温においても硬化促進作用を示す場合が多い。このことは、エポキシ樹脂組成物の製造時及び得られたエポキシ樹脂組成物の保存時の粘度上昇や、流動性の低下、硬化性のバラツキ等、製品としての品質を低下させる原因となっている。この問題を解決すべく、最近では低温での粘度、流動性の経時変化を抑え、賦形、成形時の加熱によってのみ硬化反応を起こすような、いわゆる潜伏性硬化促進剤の研究が盛んになされている。その手段として、硬化促進剤の活性点をイオン対により保護することで、潜伏性を発現する研究がなされており、特開平8−41290号公報では、種々の有機酸とホスホニウムイオンとの塩構造を有する潜伏性硬化促進剤が開示されている。しかし、このホスホニウム塩は特定の高次の分子構造を有さず、イオン対が比較的容易に外部環境の影響を受けるため、最近の低分子エポキシ樹脂やフェノールアラルキル樹脂を用いる半導体封止材料においては、保存性が低下する問題が生じている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形後や半田処理時の反りが小さく、且つ速硬化性、保存性に優れるエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1](A)一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合しグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂硬化剤、(C)テトラ置換ホスホニウム(X)と1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)及び1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基との分子会合体であって、該共役塩基が前記フェノール性水酸基を1分子内に2個以上有する化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物からなる硬化促進剤、及び(D)無機充填材を必須成分とし、(a)と(b)との重量比(a/b)が1〜19であり、エポキシ樹脂(A)の融点が70〜120℃であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、分子会合体(C)の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であり、無機充填材の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり250〜1400重量部であることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【化6】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4、n=0〜3、kは平均値で、1〜10の正数)
【0008】
【化7】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4)
【0009】
[2]1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基が、ジヒドロキシベンゼン類、トリヒドロキシベンゼン類、ビスフェノール類、ビフェノール類、ジヒドロキシナフタレン類、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂の中から選択される1種以上である第[1]項記載のエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3]一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(A)において、融解熱量が3〜40mJ/mgである第[1]、又は[2]項記載のエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[4]結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、一般式(3)、一般式(4)、又は一般式(5)から選ばれる一種以上である第[1]〜[3]のいずれか1項記載のエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【化8】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4)
【0010】
【化9】
【0011】
【化10】
(ただし、式中のRは炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。m=0〜4、R2 は水素、炭素数1〜5の炭化水素、ハロゲンの中から選択される基又は原子であり、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。 )
[5]結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、又は、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、の8種から選ばれる1種以上と4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベンの6種から選ばれる1種以上との混合物である第[1]〜[4]のいずれか1項記載のエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[6]基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが第[1]〜[5]のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物によって封止されていることを特徴とする半導体装置、
である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)との重量比(a/b)を1〜19とした混合物(以下、混合多価フェノールという)をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(A)は、結晶性エポキシ樹脂に由来する低粘度化が図られており、これにより無機充填材の高充填化、ひいてはエポキシ樹脂組成物の硬化物の低吸湿化が可能となり、エポキシ樹脂組成物の硬化物のTgが殆ど低下せず、又、多官能エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時曲げ強度と較べても遜色なく、且つ低弾性率で、硬化性も同等の特性を有している。この方法で得られたエポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂がより均一化されることにより、結晶性エポキシ樹脂を使用する場合の問題点である硬化反応性も向上するものと考えられる。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置は、実装時の半田処理下でも高い信頼性を得ることができる。
【0013】
一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂としては、例えば式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)等が挙げられるが、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から式(6)、式(9)の多官能フェノール樹脂が好ましい。
【化11】
【0014】
【化12】
【0015】
【化13】
【0016】
【化14】
【0017】
【化15】
本発明に用いる結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)としては、例えば一般式(3)のビフェニル型、一般式(4)のビスフェノール型、一般式(5)のスチルベン型等が挙げられる。
【0018】
一般式(3)のビフェニル型フェノール類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルビフェニル等(置換位置の異なる異性体を含む)が挙げられる。
一般式(4)のビスフェノール型フェノール類としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−ターシャリブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等が挙げられる。
【0019】
一般式(5)のスチルベン型フェノール類としては、例えば、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,3’−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,6−ジメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルスチルベン等(置換位置の異なる異性体を含む)が挙げられる。
【0020】
これらの内では、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(以上7種のフェノール類を、以下a群という)、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン(以上3種のフェノール類を、以下b群という)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、又は4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン(以上6種のフェノール類を、以下c群という)から選択される1種以上が好ましい。
【0021】
a群の内、ビフェニル型フェノール類では、低粘度化効果が大きく、且つ反応性に富む4,4’−ジヒドロキシビフェニルが含まれているものが特に好ましい。その他のa群では、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドが特に好ましい。
又、スチルベン型フェノール類では、b群から選ばれる1種以上と、c群から選ばれる1種以上との混合物が、軟化点が低くなるため好ましい。これらの混合比、混合方法等は特に限定しない。
【0022】
本発明の多官能フェノール樹脂(a)と結晶性エポキシ樹脂の前駆体のフェノール類(b)の重量比(a/b)としては、1〜19が好ましく、特に、1.5〜9が好ましい。1未満だと、グリシジルエーテル化したときに生成した多官能エポキシ樹脂に由来する高いTg、熱時曲げ強度を十分に発現できないので好ましくない。又、19を越えると、グリシジルエーテル化したときに生成した結晶性エポキシ樹脂に由来する低粘度化の効果が薄まり、無機充填材の高充填化ができないので好ましくない。
本発明のエポキシ樹脂(A)の合成方法については特に限定しないが、例えば、混合多価フェノールを過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で50〜150℃、好ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより得ることができる。生成したエポキシ樹脂の塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
本発明のエポキシ樹脂の結晶性エポキシ樹脂に由来する融点としては、70〜150℃の範囲にあることが好ましく、特に、90〜120℃が好ましい。70℃未満だと、常温でブロッキング性が低くなり、作業性やこれを用いたエポキシ樹脂組成物の常温保存性の低下が見られるため好ましくない。150℃を越えると、加熱混練の際、エポキシ樹脂が十分に溶融できず、不均一なエポキシ樹脂組成物となり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の物性にバラツキが見られる可能性があるため好ましくない。
本発明での融点とは、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)・製)を用い、エポキシ樹脂10mg前後を精秤し、昇温速度5℃/分で測定した吸熱ピークの温度を言う。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂(A)の結晶性エポキシ樹脂に由来する融解熱量が3〜40mJ/mgであるものが好ましく、特に、5〜35mJ/mgが好ましい。3mJ/mg未満だと、エポキシ樹脂はビスフェノールF型樹脂のような挙動を示し、作業性が著しく低下するので好ましくない。40mJ/mgを越えると、加熱混練の際にエポキシ樹脂が十分に溶融できずに不均一なエポキシ樹脂組成物となり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の物性にバラツキが見られる可能性があるため、好ましくない。
本発明での融解熱量とは、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)・製)を用い、エポキシ樹脂10mg前後を精秤し、昇温速度5℃/分で測定した吸熱ピークの熱量を言う。
又、本発明のエポキシ樹脂(A)の特性を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用できる。併用できるエポキシ樹脂としては、例えば、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。
【0024】
本発明で用いる一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂硬化剤としては、具体的には前記した式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)等が挙げられるが、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から式(6)、式(9)の多官能フェノール樹脂硬化剤が好ましい。
又、本発明の一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂硬化剤の特性を損なわない範囲で、他のフェノール樹脂硬化剤を併用できる。併用できるフェノール樹脂硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。更に、半導体装置の長期信頼性の点から、不純物として含有される塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比は、0.5〜2.0が好ましく、この範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のTgの低下等のおそれがあるので好ましくない。
【0025】
本発明に用いる硬化促進剤である分子会合体(C)は、テトラ置換ホスホニウム(X)と1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)及び1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基との分子会合体であって、該共役塩基が前記フェノール性水酸基を1分子内に2個以上有する化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物である。
その構成成分の一つであるテトラ置換ホスホニウム(X)の置換基については何ら限定されず、置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、置換又は無置換のアリール基やアルキル基を置換基に有するテトラ置換ホスホニウムイオンが、熱や加水分解に対して安定であり好ましい。具体的には、テトラフェニルホスホニウム、テトラトリルホスホニウム、テトラエチルフェニルホスホニウム、テトラメトキシフェニルホスホニウム、テトラナフチルホスホニウム、テトラベンジルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム、トリメチルフェニルホスホニウム、メチルジエチルフェニルホスホニウム、メチルジアリルフェニルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム等を例示できる。
【0026】
本発明の分子会合体(C)の構成成分である、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(通称テトラメチルビスフェノールF)、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン及びこれらの内ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタンの3種の混合物(例えば、本州化学工業(株)・製、ビスフェノールF−D)等のビスフェノール類、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール等のジヒドロキシベンゼン類、1,2,4−ベンゼントリオール等のトリヒドロキシベンゼン類、1,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類の各種異性体、2,2’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール等のビフェノール類の各種異性体等の化合物が挙げられる。
更に、他の構成成分である共役塩基は、上記の化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物である。
【0027】
本発明の分子会合体(C)は、前述のようにホスホニウム−フェノキシド型の塩を構造中に有するが、従来の技術におけるホスホニウム−有機酸アニオン塩型の化合物と異なる点は、本発明の分子会合体(C)では水素結合による高次構造がイオン結合を取り囲んでいる点である。従来の技術における塩では、イオン結合の強さのみにより反応性を制御しているのに対し、本発明の分子会合体(C)では、常温ではアニオンの高次構造による囲い込みが活性点の保護を行う一方、成形の段階においては、この高次構造が崩れることで活性点がむき出しになり、反応性を発現する、いわゆる潜伏性が付与されている。
【0028】
本発明の分子会合体(C)の製造方法は何ら限定されないが、代表的な2方法を挙げることができる。
1つ目は、テトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート(Z)と、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)とを、高温下で反応させた後、更に沸点60℃以上の溶媒中で熱反応させる方法である。
2つ目は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)と、無機塩基又は有機塩基と、テトラ置換ホスホニウムハライドとを反応させる方法である。テトラ置換ホスホニウムハライドの置換基については何ら限定されることはなく、置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、置換又は無置換のアリール基やアルキル基を置換基に有するテトラ置換ホスホニウムイオンが、熱や加水分解に対して安定であり好ましい。具体的には、テトラフェニルホスホニウム、テトラトリルホスホニウム、テトラエチルフェニルホスホニウム、テトラメトキシフェニルホスホニウム、テトラナフチルホスホニウム、テトラベンジルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム、トリメチルフェニルホスホニウム、メチルジエチルフェニルホスホニウム、メチルジアリルフェニルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム等を例示できる。ハライドとしてはクロライドやブロマイドを例示でき、テトラ置換ホスホニウムハライドの価格や吸湿等の特性、及び入手のし易さから選択すれば良く、いずれを用いても差し支えない。
【0029】
又、本発明の分子会合体(C)の特性を損なわない範囲で、他の硬化促進剤を併用してもよい。併用できる硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン系化合物、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いても差し支えない。
本発明の分子会合体(C)の含有量としては、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤との合計量100重量部当たり0.4〜20重量部が好ましい。配合量が0.4重量部未満だと、加熱成形時に十分な硬化性が得られないおそれがあり、一方、20重量部を越えると、硬化が速すぎて成形時に流動性の低下による充填不良等を生じるおそれがある。
【0030】
本発明で用いる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、特に溶融球状シリカが好ましい。球状シリカの形状としては、流動性改善のために限りなく真球状であり、且つ粒度分布がブロードであることが好ましい。
この無機充填材の含有量としては、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂との合計量100重量部当たり250〜1400重量部が好ましい。250重量部未満だと、低熱膨張化、低吸湿性が得られず、耐半田クラック性が不十分となり、1400重量部を越えると、流動性が低下し、成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内の金線変形等の不都合が生じるおそれがあるので好ましくない。
本発明で用いる無機充填材は、予め十分に混合しておくことが好ましい。又、必要に応じて無機充填材をカップリング剤やエポキシ樹脂、或いはフェノール樹脂硬化剤等で予め処理して用いても良く、処理の方法としては、例えば、溶剤を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や、直接無機充填材に添加し、混合機を用いて処理する方法等がある。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合しても差し支えない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形すればよい。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エリア実装型半導体装置用に適している。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[エポキシ樹脂の合成例]
実施例及び比較例のエポキシ樹脂A〜Fの合成に使用したフェノール樹脂は、前記した式(9)(水酸基当量142g/eq)と、式(11)(水酸基当量91g/eq)である。式(11)の構造を以下に示す。
【化16】
【0033】
又、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類として、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベンを用いた。
エポキシ樹脂A〜Fは、表1の配合割合で、常法によりグリシジルエーテル化して得た。配合割合は重量部とする。得られたエポキシ樹脂A〜Fの特性を表1に示す。融点、融解熱量は、前述した方法で測定した。
【表1】
【0034】
[分子会合体(C)の合成例]
1Lのセパラブルフラスコに、本州化学工業(株)・製のビスフェノールF−D(化合物(Y)に相当)120g(0.6モル)、北興化学工業(株)・製のテトラフェニルホスホニウムブロマイド126g(0.3モル)、メタノール246gを仕込み、加熱下完全に溶解させた。そこに水酸化ナトリウム12g含有するメタノール/水混合溶液を攪拌しながら、内温65℃の状態で滴下した。得られた溶液に、更に水を滴下し、滴下終了後冷却することで、目的物を固形物として得た。濾過して固形物を取り出し、更に水中で洗浄し、乾燥させて得られた生成物を化合物C1とした。測定溶媒に重メタノールを用い、1H−NMRデータを測定して化合物C1の構造を同定した。4.8ppm付近及び3.3ppm付近のピークは溶媒のピークである。6.4〜7.1ppm付近のピーク群は、原料であるビスフェノールF[(X)1モルに対するモル数(p)]及びこのビスフェノールFから1個の水素を除いたフェノキシド型の共役塩基[(X)1モルに対するモル数(q)]のフェニルプロトン、7.6〜8.0ppm付近のピーク群は、テトラフェニルホスホニウム基のフェニルプロトンと帰属され、それらの面積比から、モル比が(p+q)/(X)=2/1であると計算された。
【0035】
を、常温でミキサーを用いて混合し、70〜120℃で2軸ロールを用いて混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0036】
・スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
・硬化トルク:キュラストメータ((株)オリエンテック・製、JSRキュラストメータIVPS型)を用い、金型温度175℃、加熱開始90秒後のトルクを求めた。キュラストメータにおけるトルクは硬化性のパラメータであり、数値の大きい方が硬化性が良好である。単位はkgf・cm。
・吸湿率:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、175℃、8時間で後硬化し、更に85℃、相対湿度60%の環境下で168時間放置し、重量変化を測定して吸湿率を求めた。単位は重量%。
・熱時強度:熱時曲げ強度をJIS K 6911に準じて(240℃で)測定した。単位はN/mm2。
・パッケージ反り量:トランスファー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で225pBGA(基板は厚さ0.36mm、ビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、パッケージサイズは24×24mm、厚さ1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚さ0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている。)を成形し、175℃、8時間で後硬化した。室温に冷却後、パッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。単位はμm。
・耐半田クラック性:トランスファー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分で225pBGA(基板は厚さ0.36mm、ビスマレイミド・トリアジン/ガラスクロス基板、パッケージサイズは24×24mm、厚さ1.17mm、シリコンチップはサイズ9×9mm、厚さ0.35mm、チップと回路基板のボンディングパッドとを25μm径の金線でボンディングしている。)を成形し、175℃、8時間で後硬化した。得られたパッケージ8個を、85℃、相対湿度60%の環境下で168時間放置した後、IRリフロー処理(240℃)を行った。処理後の内部の剥離、及びクラックの有無を超音波探傷機で観察し、不良パッケージの個数を数えた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/8と表示する。
・常温保存性:30℃で1週間保存した後、スパイラルフローを測定し、調製直後のスパイラルフローに対する百分率として表した。数値の大きい方が常温保存性が良好である。単位は%。
【0037】
(実施例2〜5、比較例1〜11)
表2、表3の配合(配合割合は重量部とする)に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表2、表3に示す。
実施例2、5では前記した式(9)のフェノール樹脂硬化剤(水酸基当量142g/eq)を用いた。
比較例4、5では式(12)のエポキシ樹脂(エポキシ当量154g/eq)を用いた。
比較例5、6では4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂G(融点105℃、エポキシ当量195g/eq)を用いた。
比較例1、2、4、5、6、7、9、10では前記した式(6)のフェノール樹脂硬化剤(水酸基当量98g/eq)を用いた。
比較例7〜11では硬化促進剤として、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという)を用いた。
【化17】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】
本発明に従うと、成形性、速硬化性、保存性に優れ、エリア実装型半導体装置に適した半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られ、これを用いた半導体装置は、成形後や半田処理時の反りが小さく、基板への実装性に優れている。
Claims (4)
- (A)一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合しグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)一般式(1)、又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂硬化剤、(C)テトラ置換ホスホニウム(X)と1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)及び1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基との分子会合体であって、該共役塩基が前記フェノール性水酸基を1分子内に2個以上有する化合物(Y)から1個の水素を除いたフェノキシド型化合物からなる硬化促進剤、及び(D)無機充填材を必須成分とし、(a)と(b)との重量比(a/b)が1〜19であり、エポキシ樹脂(A)の融点が70〜150℃であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂硬化剤のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、分子会合体(C)の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であり、無機充填材の含有量が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計量100重量部当たり250〜1400重量部であることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物であり、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)が、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、又は、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、の8種から選ばれる1種以上と4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベンの6種から選ばれる1種以上との混合物であるエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物(Y)の共役塩基が、ジヒドロキシベンゼン類、トリヒドロキシベンゼン類、ビスフェノール類、ビフェノール類、ジヒドロキシナフタレン類、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂の中から選択される1種以上である請求項1記載のエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される多官能フェノール樹脂(a)と、結晶性エポキシ樹脂の前駆体であるフェノール類(b)とを混合し、
グリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(A)において、融解熱量が3〜40mJ/mgである請求項1、又は2記載のエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。 - 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが請求項1〜3のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物によって封止されていることを特徴とする半導体装置。
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