JP4563522B2 - アレルギー疾患治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対して有効なナフトキノン誘導体を含有することを特徴とするアレルギー疾患治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生活環境や生活習慣の変化に伴い、人間は様々な外的物質にさらされるようになった。例えば、工場の煙、自動車の排気ガス、ハウスダスト、家ダニ、各種食品添加物あるいは化学物質を含んだ洗剤などは、生活水準の向上と共に発生してきた現代社会の産物といえる。一方、これらの外的物質から体を守ろうとして、ヒトの生体内では抗原抗体反応が頻繁に起こるようになり、それが様々なアレルギー疾患を起こす大きな要因になっている。アレルギーは、ヒトが外的物質から生体を守ろうとする抗原抗体反応の中で、結果的に病的症状を伴うものであり、あまりにも増大した外的物質に対応しきれなくなったために引き起こされた現代病といえる。
【0003】
アレルギーが原因の疾患は多岐にわたり、例えば、アレルギー性鼻炎・気管支喘息・皮膚炎、花粉症、湿疹、接触性皮膚炎あるいはアトピー性皮膚炎などが挙げられる。中でも、アトピー性皮膚炎は、発赤、湿疹から重篤なかゆみを伴う疾病であり、これらの症状は長年にわたる慢性的なもので、一度回復しても何らかの原因でまた再発を繰り返すという厄介な病気である。更に、アトピー性皮膚炎は近年増加傾向にあり、現在日本では、成人の20人に1人、子供の5人に1人がアトピー患者といわれ、乳幼児から成人まで幅広く分布する現代病として大きな社会問題となっている。
【0004】
アトピー性皮膚炎によるかゆみは持続的で、人によっては全身に及び、睡眠等の日常生活をも妨げるほどその症状は重篤なものである。従って、かゆみに伴う掻行動(掻く、ひっかく)による症状の悪化を防ぐためにも、アトピー性皮膚炎患者にとっては、いち早いかゆみの軽減が必要となる。
【0005】
現在、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の治療剤としては、アレルギー反応により生体内の肥満細胞から放出(脱顆粒)されるケミカルメディエーター(化学伝達物質)の1つで、各種アレルギー症状の原因物質とされるヒスタミンの拮抗薬である抗ヒスタミン剤、あるいは、ヒスタミンを含むケミカルメディエーターの遊離抑制剤である抗アレルギー剤などが一般的に使用されている。
【0006】
抗ヒスタミン剤としては、第1世代としてジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどが、また、第2世代としてメキタジン、テルフェナジンなどが用いられる。また、抗アレルギー剤としては、フマル酸ケトチフェン、オキサトミド、クロモグリク酸ナトリウムなどが使用される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記抗ヒスタミン剤は、その中枢鎮静作用による眠気、ふらつきや抗コリン作用による口渇、胃障害などの副作用が強く問題が多い。また、上記抗アレルギー剤にあっても、抗ヒスタミン剤同様、眠気、胃障害等の副作用に注意しなければならない。更に、これら抗ヒスタミン剤あるいは抗アレルギー剤においては、必ずしも満足できる効果とはいえないのが現状である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点に鑑み、本発明者らは、副作用の少ない天然素材を種々検索し、四国地方において古くからかゆみ止めの民間薬として使用されてきたホウセンカ(Impatiens Balsamina L.)に着目した。ホウセンカ抽出物及びその成分については、本発明者らの研究により種々の薬理効果が確認されている。すなわち、ホウセンカ白色花弁の抽出物及びその単離成分には、抗アナフィラキシー作用があることが[Phytotherapy Res., 11, 48-50(1997).]、また、全草の抽出物及びその単離成分には、テストステロン5α−リダクターゼ阻害作用があることが[特開平11−21245号]確認されている。
【0009】
更に、本発明者らは、ホウセンカ成分の抗アレルギー作用を指標として、その薬理効果につき様々な研究を進めた結果、ホウセンカ抽出物から新たに3種類のナフトキノン誘導体を単離し、その抗アレルギー作用を確認して本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(I)、(II)又は(III)で表されるナフトキノン誘導体を有効成分として含有することを特徴とするアレルギー疾患治療剤を提供するものである。
【0011】
【化4】
【0012】
【化5】
【0013】
【化6】
【0014】
また、本発明は、前記式(I)、(II)又は(III)で表されるナフトキノン誘導体を有効成分として含有することを特徴とするアトピー性皮膚炎治療剤を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のナフトキノン誘導体(以下「本発明物質」という)は、ホウセンカから抽出、単離することができる。ホウセンカの起源は、わが国を含むアジア各国に自生するツリフネソウ科の一年草で、インパティエンスバルサミナ(ImpatiensBalsamina L.)の学名を持つ植物である。本発明物質は、該ホウセンカを溶剤により抽出した抽出物から、通常用いられる分離、精製手段によって単離することができる。
【0016】
ホウセンカ抽出物は、例えば、ホウセンカの全草、あるいは、葉、茎、果皮、花弁のうち何れか1ヶ所以上(以下、「原体」という)を乾燥又は乾燥せずに裁断した後、常温もしくは加温下で溶剤により抽出することにより得られる。
【0017】
ここで用いられる溶剤としては、水、有機溶媒及びこれらの混合物が挙げられる。これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコール類、または、これら低級アルコール類と水の混合液(低級アルコール類濃度10〜90V/V%、好ましくは20〜70V/V%)、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、または、これらケトン類と水との混合液(ケトン類濃度10〜90V/V%、好ましくは20〜70V/V%)、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、石油エーテル等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0018】
原体からの好ましい抽出方法の具体例としては、原体を裁断した後、適当な有機溶媒(好ましくは、低級アルコール類、含水低級アルコール類、ケトン類、含水ケトン類、炭化水素類、または、エステル類)で抽出し、溶媒を留去する方法、あるいは、原体を裁断した後、無水あるいは含水低級アルコール等の溶媒で抽出し、次いで抽出物を酢酸エチル、ブタノール等の水と混和しない溶媒と水を用いる液-液抽出に付し、更に有機層または水層から溶媒を留去する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。尚、本発明物質の効率的抽出には、原体としてホウセンカの全草又は果皮を用い、原体と溶剤の抽出比率が1〜80W/V%、好ましくは10〜60W/V%であるのが好適である。
【0019】
本発明物質は、前記抽出方法で得られるホウセンカ抽出物から通常用いられる分離、精製手段、例えばカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーあるいは再結晶などを繰り返し行うことにより、単離することができる。
【0020】
また、本発明物質は、有機合成によって得ることもできる。すなわち、前記式(I)で表される2,2'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)は、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(ローソンと呼称されるときもある)とホルムアルデヒドとを適当な有機溶媒、好ましくは低級アルコール、ジメチルホルムアミド又はアセトニトリルなどの溶媒中で、周囲温度あるいは加温下、好ましくは50〜80℃で縮合することにより製造される。同様に、前記式(II)で表される2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)は、ローソンとアセトアルデヒド又はアセタールとを縮合することにより製造される。また、前記式(III)で表される2-(1-ヒドロキシエチル)-3-メトキシ-1,4-ナフトキノンは、2-クロロ-1,4-ナフトキノンから3行程を経て製造される。すなわち、2-クロロ-1,4-ナフトキノンとマロン酸モノエチルエステルカリウム塩とを適当な溶媒中、好ましくは含水アセトニトリル中、硝酸銀及び過硫酸アルカリ塩、好ましくは過硫酸アンモニウム存在下縮合して2-クロロ-3-エトキシカルボニルメチル-1,4-ナフトキノンとし、次いで、エーテル系有機溶媒中、好ましくはテトラヒドロフラン中、金属水素化物、好ましくはリチウム水素化アルミニウムで還元して得られる2-クロロ-3-(1-ヒドロキシエチル)-1,4-ナフトキノンを水酸化アルカリのメタノール溶液、好ましくは水酸化カリウムのメタノール溶液にてクロル基をメトキシ化して合成される。以上の合成方法で得られる各本発明物質の粗生成物は、通常用いられる分離精製手段、例えば抽出、濃縮、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、再結晶などにより単離、精製される。
【0021】
尚、本発明物質である式(I)で表されるナフトキノン誘導体は、合成品としてその抗腫瘍作用についての報告がなされている[Cancer Letters, 113, 47(1997).]。また、式(II)で表されるナフトキノン誘導体については、やはり本発明者らによりホウセンカ成分として単離されている[特開平11−21245号]。更に、式(III)で表されるナフトキノン誘導体に関しては、合成品としては既知物質であるが[Synlett,(6), 355(1990).]、天然物から単離されたのは今回が初めてであり、その薬理作用についての報告もない。
【0022】
以上、本発明物質の抗アレルギー作用については今まで全く報告されておらず、これは本発明者らによって初めて見出された有用な薬理作用である。
【0023】
かくして得られる前記式(I)、(II)又は(III)で表されるナフトキノン誘導体は、いずれも副作用の少ない優れた抗アレルギー作用を有しており、その応用としては、各種アレルギーに起因する疾患、例えば、アレルギー性鼻炎・気管支喘息・皮膚炎、花粉症、湿疹、接触性皮膚炎あるいはアトピー性皮膚炎などに対する医薬品、医薬部外品、化粧品あるいは健康食品の経口剤、注射剤あるいは外用剤として投与することにより、その予防または治療に用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明の式(I)、(II)又は(III)で表されるナフトキノン誘導体は、通常成人一人当たり1日量として、外用剤の場合であれば、0.1mg〜500mg、好ましくは1mg〜50mg、内服剤の場合であれば0.01〜100mg、好ましくは0.1mg〜50mg配合することができる。但し、投与量は年令、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分の場合もあるし、また範囲を越えて投与する必要のある場合もある。
【0025】
本発明のアレルギー疾患治療剤の剤形は、特に限定されるものではなく、例えば、外用であれば軟膏、ローション、クリーム、ジェル、乳液等の通常皮膚用として用いられるものが挙げられる。また、内服用であれば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤等の通常医薬品の経口剤又は健康食品として用いられるものなどが挙げられる。
【0026】
本発明のアレルギー疾患治療剤には、上記必須成分である式(I)、(II)又は(III)で表されるナフトキノン誘導体の他に、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、外用剤の場合であれば、通常適用される炭化水素類、ロウ類、油脂類、高級脂肪酸、低級あるいは高級アルコール、界面活性剤、香料、色素、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、pH調節剤、また、経口用製剤であれば、適当な賦形剤、例えば、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤等を添加することができる。
【0027】
【実施例】
以下に実施例として本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
抽出例1
一昼夜日陰干しした後裁断したホウセンカの全草(地上部)(15kg)を35V/V%エタノール(30リットル)に漬け込み、1ヶ月間浸出した。次いで、全草をろ別し、更に2週間熟成した。析出する不溶物をろ別して得られた抽出液(26リットル)を約2リットルまで減圧濃縮した後、酢酸エチル(1リットル)で2回液−液抽出した。次いで、酢酸エチル抽出液を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後減圧下溶媒留去して、酢酸エチル抽出物(8.6g)を得た。
【0029】
<2,2'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(I)の製造方法>
製造例1
抽出例1の方法で得られたホウセンカの酢酸エチル抽出物(1.53g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)にて分離精製し、得られた残渣にクロロホルムを加え不溶物をろ取した。次いで、ろ取した不溶結晶をジメチルホルムアミド/エタノール混液にて再結晶して、黄色プリズム晶の2,2'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(18mg)を得た。
IR(KBr)cm-1:3360, 1680, 1611, 1574, 1352, 1213, 772, 735.
1H-NMR(DMSO-d6)δ:3.75(2H, s, -CH2-), 7.75-8.04(8H, m, 5,6,7,8-H of naphthoquinone).
13C-NMR(DMSO-d6)δ:18.0(-CH2-), 122.0(2,2'), 125.6(5,5'), 125.9(8,8'), 129.9(4a,4'a), 132.0(8a,8'a), 133.1(6,6'), 134.5(7,7'), 155.0(3,3'), 180.7(4,4'), 183.6(1,1').
EI-MS:m/z 360 [M+]
m.p. 245℃(decomp.)。
【0030】
製造例2
ローソン(30.0g)、37%ホルマリン(30.0mL)及びトリエチルアミン(34.8g)のエタノール(500mL)溶液を70℃で16時間攪拌した。冷後、反応液に6N-塩酸を加え酸性とした。析出した結晶をろ取し熱エタノールにて洗浄した後、ジメチルホルムアミド/エタノール混液にて再結晶して、黄色プリズム晶の2,2'-メチレンビス
(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(8.87g)を得た。本製造例で得られた化合物の物性データ(IR, 1H-NMR, 13C-NMR, マススペクトル, m.p.)は、ホウセンカから抽出、単離した製造例1で得られたものと一致した。
<2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(II)の製造方法>
製造例3
抽出例1の方法で得られたホウセンカの酢酸エチル抽出物(10.0g)にクロロホルムを加え、不溶物をろ別した。次いで、ろ液を減圧濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で2回分離精製した後、酢酸エチルで再結晶して黄色プリズム晶の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(1.03g)を得た。
IR(KBr)cm-1:3296, 1664, 1637, 1359, 1344, 1278, 729.
1H-NMR(CDCl3):1.73(3H, d, J=7.5Hz, =CHCH 3 ), 4.83(1H, q, J=7.5Hz, =CHCH3), 7.54-7.83(4H, m, 6,7-H of naphthoquinone), 7.96-8.14(4H, m, 5,8-H of naphthoquinone).ここで、「=C」はアルキリデンの1位の炭素原子を意味する。
13C-NMR(CDCl3)δ:16.6(=CHCH3), 28.5(=CHCH3), 125.0(2,2'), 126.1(5,5'), 127.0(8,8'), 129.4(4a,4'a), 132.9(6,6',8a,8'a), 134.9(7,7'), 153.8(3,3'), 181.7(4,4'), 184.7(1,1').ここで、「=C」はアルキリデンの1位の炭素原子を意味する。
EI-MS:m/z 374 [M+]
m.p. 196-198℃。
【0031】
製造例4
アルゴン置換下、ローソン(10.0g)及びアセタール(14.28g)のジメチルホルムアミド(50mL)溶液を80℃で4.5時間撹拌した。冷後、反応液に酢酸エチルを加え、希塩酸及び飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣を酢酸エチルで結晶化し、更に、酢酸エチルで再結晶して、黄色プリズム晶の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)(9.10g)を得た。本製造例で得られた化合物の物性データ(IR, 1H-NMR, 13C-NMR, マススペクトル, m.p.)は、ホウセンカから抽出、単離した製造例3で得られたものと一致した。
抽出例2
ホウセンカの未乾燥果皮(果皮中の種子は除く)(75g)を50%エタノール(400mL)に漬け込み3日間浸出した後、果皮をろ別して得られる50%エタノール抽出液を約30mLまで減圧下濃縮した。次いで、析出した不溶物をろ別したろ液を減圧下溶媒留去して、50%エタノール抽出物(2.9g)を得た。
【0032】
<2-(1-ヒドロキシエチル)-3-メトキシ-1,4-ナフトキノン(III)の製造方法>
製造例5
抽出例2で得られた50%エタノール抽出物(2.9g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=30:1)、続いて薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=10:1)の順に分離精製した後、n-ヘキサン/酢酸エチル混液にて再結晶して、淡橙色針状晶の2-(1-ヒドロキシエチル)-3-メトキシ-1,4-ナフトキノン(6.0mg)を得た。
IR(KBr)cm-1:3329, 2949, 1674, 1655, 1615, 1341, 1217, 1080, 1042, 990, 727.
1H-NMR(CDCl3):2.91(2H, t, J=6.2Hz, CH 2 CH2OH), 3.82(2H, t, J=6.2Hz, CH2CH 2 OH), 4.17(3H, s, OCH 3 ), 7.65-7.75(2H, m, 6,7-H of naphthoquinone), 8.01-8.13(2H, m, 5,8-H of naphthoquinone).
13C-NMR(CDCl3)δ:27.3(CH2CH2OH), 61.4(OCH3), 61.6(CH2 CH2OH), 126.1(5,8), 131.5(2), 131.8(4a,8a), 133.3(6), 133.8(7), 158.6(3), 181.3(4), 186.0(1).
EI-MS:m/z 274 [M+]
m.p. 107-108℃。
【0033】
製造例6
<2-クロロ-3-エトキシカルボニルメチル-1,4-ナフトキノン>
2-クロロ-1,4-ナフトキノン(27.17g)、マロン酸モノエチルエステルカリウム塩(36.02g)及び硝酸銀(7.19g)のアセトニトリル(270mL)混合液を70℃に加温し、次いで、過硫酸アンモニウム(48.29g)の水溶液(270mL)を30分間かけて滴下した後、同温度で1.5時間攪拌した。冷後、反応液にクロロホルムを加え不溶物をろ別した。ろ液の有機層を分取した後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ベンゼン)にて分離精製して、淡橙色結晶の2-クロロ-3-エトキシカルボニルメチル-1,4-ナフトキノン(8.52g)を得た。
IR(KBr)cm-1:2986, 1723, 1682, 1665, 1613, 1589, 1406, 1373, 1339, 1281,1202, 1157.
1H-NMR(CDCl3):1.27(3H, t, J=7.2Hz, CO2CH2CH 3 ), 3.88(2H, s, CH 2 CO2Et), 4.20(2H, q, J=7.2Hz, CO2CH 2 CH3), 7.72-7.88(2H, m, 6,7-H of naphthoquinone), 8.09-8.24(2H, m, 5,8-H of naphthoquinone).。
【0034】
<2-クロロ-3-(1-ヒドロキシエチル)-1,4-ナフトキノン>
リチウム水素化アルミニウム(222mg)のテトラヒドロフラン(20mL)懸濁液に、氷冷下2-クロロ-3-エトキシカルボニルメチル-1,4-ナフトキノン(1.08g)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加え、アルゴン置換下室温で3時間攪拌した。次いで、リチウム水素化アルミニウム(50mg)を追加し、更に室温で1.5時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、希塩酸、飽和食塩水の順に洗浄し無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=40:1)にて分離精製して、淡橙色結晶の2-クロロ-3-(1-ヒドロキシエチル)-1,4-ナフトキノン(511mg)を得た。
IR(KBr)cm-1:3355, 1665, 1593, 1281, 1047, 716.
1H-NMR(CDCl3):3.14(2H, t, J=6.2Hz, CH 2 CH2OH), 3.86(2H, t, J=6.2Hz, CH2CH 2 OH), 7.71-7.86(2H, m, 6,7-H of naphthoquinone), 8.08-8.22(2H, m, 5,8-Hof naphthoquinone).。
【0035】
<2-(1-ヒドロキシエチル)-3-メトキシ-1,4-ナフトキノン>
2-クロロ-3-(1-ヒドロキシエチル)-1,4-ナフトキノン(725mg)のテトラヒドロフラン(15mL)溶液に2.5%水酸化カリウムのメタノール溶液(3.6mL)を加え、室温で30分間攪拌した。次いで、2.5%水酸化カリウムのメタノール溶液(3.6mL)を追加し、更に室温で30分間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、飽和食塩水で洗浄し無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下溶媒留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ベンゼン:酢酸エチル=20:1)にて分離精製後、n-ヘキサン/酢酸エチル混液にて再結晶して淡橙色プリズム晶の2-(1-ヒドロキシエチル)-3-メトキシ-1,4-ナフトキノン(320mg)を得た。本製造例で得られた化合物の物性データ(IR, 1H-NMR, 13C-NMR, マススペクトル, m.p.)は、ホウセンカから抽出、単離した製造例5で得られたものと一致した。
【0036】
実験例1(急性毒性試験)
5匹ずつ2群のICRマウス(雄性、5週齢、体重20〜25g)に、製造例1の2,2'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)を1000mg/kg及び2000mg/kgの用量で経口投与した。その結果、投与後14日経過時において、1000mg/kgでは死亡例が認められず、2000mg/kgでは5匹中1匹の死亡例が認められた。従って、製造例1の本発明物質のLD50値は2000mg/kg以上であった。
【0037】
1群5匹ずつのICRマウス(雄性、5週齢、体重20〜25g)に、製造例3の2,2'-エチリデンビス(3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)を250mg/kgから1000mg/kgの間の用量で経口投与した。その結果、製造例3の本発明物質のLD50値は514mg/kgであった。
【0038】
1群5匹ずつのICRマウス(雄性、5週齢、体重20〜25g)に、製造例5の2-(1-ヒドロキシエチル)-3-メトキシ-1,4-ナフトキノンを280mg/kgから480mg/kgの間の用量で経口投与した。その結果、製造例5の本発明物質のLD50値は374mg/kgであった。
【0039】
実験例2(抗かゆみ試験)
実験動物としてSPF(Specific pathogen free=特定病原菌不在)ddy系雄性マウス(7週齢)を用いて、下記の方法に従い製造例1、3及び5で得られた本発明物質の抗かゆみ試験を行った。
【0040】
7匹ずつ3群のマウスに、水に懸濁させた各本発明物質をそれぞれ10mg/kg経口投与し、投与後24時間後に脱顆粒惹起物質であるcompound 48/80をそれぞれ3mg/kg皮下注射した。同様に、各物質を投与しない1群7匹のマウスをコントロール群とし、compound 48/80投与後20分間のマウスの全身への掻動作回数をそれぞれ測定した。また、ノーマル(正常)群として、各物質及びcompound 48/80のいずれも投与しない1群7匹のマウスの掻動作回数を同様に測定した。
【0041】
その結果を図1に示した。尚、図1中、各値は、各群7匹のマウスの平均値±標準誤差で表した。また、*印は、Studentのt-検定によるコントロール群に対する有意差を表す(*P<0.05, **P<0.02, ***P<0.0001)。
【0042】
図1より、アレルギー反応に起因する脱顆粒によるマウスの掻動作回数の増加に対し、本発明物質はいずれも抑制作用を示し、特に、製造例1及び3の本発明物質はその掻動作を有意に抑制した。従って、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー反応に起因する各種かゆみの軽減に有用であることが示唆された。
【0043】
実験例3(血小板活性化因子PAF(=Platelet-activating factor)による血流低下に対する抑制試験)
実験動物としてSPF(Specific pathogen free=特定病原菌不在)ddy系雄性マウス(5週齢)を用いて、下記の方法に従い製造例1、3及び5で得られた本発明物質のPAFによる血流低下に対する抑制試験を行った。
【0044】
7匹ずつ3群のマウスに、水に懸濁させた製造例1、3及び5の本発明物質をそれぞれ10mg/kg経口投与し、投与後24時間後にPAFをそれぞれ10μg/kg静脈内注射した。同様に、本物質を投与しない1群7匹のマウスをコントロール群とし、PAF投与後30分間のマウス尾の微小血管の血流量を2分間隔でレーザー血流計(FLO-N1型、(株)ニューロサイエンス社製)を用いてそれぞれ測定した。その結果を図2ないし4に示した。また、陽性対照として、市販の抗PAF剤であるCV-3988を用いて同様に試験した。尚、CV-3988は経口投与では吸収されないため、本試験では10mg/kgの用量で静脈内注射により投与し、投与後45分後にPAFを静脈内注射して血流量を測定した。その結果を図5に示した。
【0045】
図2ないし5中、各値は、各群7匹のマウスの平均値±標準誤差で表した。また、*印は、Studentのt-検定によるコントロール群に対する有意差を表す(*P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001)。
【0046】
血小板活性化因子PAFは、血小板活性化作用、降圧作用、血管透過性亢進作用、腸管運動亢進作用などの多彩な作用を有する生体内オータコイドであると共に、免疫グロブリンIgEで感作された好塩基球や好中球が流血中で産生する物質で、非常に強いショック誘発物質として知られている。PAFは、ヒスタミンの1/1000以下の濃度で皮膚、気道などの微小血管の透過性亢進を引き起こすもので、アレルギーとの関連についても研究が進んでいる。最近の報告では、即時型(I型)アレルギー反応の一種であるアナフィラキシーショックの起因物質として、一般に知られているヒスタミンやプロスタグランジンなどのいわゆるケミカルメディエーターの他に、このPAFが関与していることが明らかになっている[血小板活性化因子−生化学・生理・病理−, (株)東京化学同人発行, 190頁(1989).参照]。また、本発明者らにより、PAFアンタゴニストであるCV-3988がアナフィラキシーショックによるマウスの血圧低下を抑制することが確認されている[Phytotherapy Research, 8, 301(1994).]。
【0047】
図2ないし5より、本発明物質は、経口投与によりマウスのPAFによるアナフィラキシーに起因する血流量の低下をいずれも有意に抑制し、その作用は静脈内投与によるCV-3988以上であった。従って、本発明物質は、いずれもアレルギー反応の1つであるアナフィラキシーを強く抑制しているものと考えられ、アレルギー反応に起因する各種疾患の治療剤として有用であることが示唆された。
【0048】
実験例4(脱顆粒惹起物質による血流低下に対する抑制試験)
実験動物としてSPF(Specific pathogen free=特定病原菌不在)ddy系雄性マウス(5週齢)を用いて、下記の方法に従い製造例1及び5で得られた本発明物質の脱顆粒惹起物質による血流低下に対する抑制試験を行った。
【0049】
7匹ずつ2群のマウスに、水に懸濁させた製造例1及び5の本発明物質をそれぞれ10mg/kg経口投与し、投与後24時間後にcompound 48/80をそれぞれ1mg/kg静脈内注射した。同様に、本発明物質を投与しない1群7匹のマウスをコントロール群とし、compound 48/80投与後30分間のマウス尾の微小血管の血流量を2分間隔でレーザー血流計(FLO-N1型、(株)ニューロサイエンス社製)を用いてそれぞれ測定した。その結果を図6及び7に示した。
【0050】
図6及び7中、各値は、各群7匹のマウスの平均値±標準誤差で表した。また、*印は、Studentのt-検定によるコントロール群に対する有意差を表す(*P<0.05)。
【0051】
図6及び7より、製造例1及び5の本発明物質は、経口投与によりマウスのアレルギー反応に起因する脱顆粒による血流量の低下をいずれも抑制したことから、アレルギーによる脱顆粒、すなわち、ヒスタミン等のケミカルメディエーターの遊離を抑えることにより、抗アレルギー作用を示すことが示唆された。
【0052】
実験例5(アトピー性皮膚炎モデルNC/JicJcl マウスを用いた薬理評価試験)
<皮膚炎の惹起>
実験動物として7匹ずつ4群のSPF(Specific pathogen free =特定病原菌不在)NC/JicJcl 雄性マウス(5週齢)を用い、松田らの方法[第96回日本皮膚化学総会・学術大会,ランチョンセミナー記録集,5〜15頁(1997).参照]を一部変更して慢性皮膚炎を惹起した。すなわち、剃毛したマウス腹部に5%塩化ピクリルのアセトン:オリーブ油=1:1溶液(100 μL )を塗布した後、ドライヤーにてアセトンを蒸発させ感作した。5日後、ネンブタール注射液麻酔下、マウス耳介に1%塩化ピクリルのアセトン:オリーブ油=1:10溶液(20μL )を塗布し、更に、この操作をアトピー性皮膚炎様皮膚炎が慢性化するまで1週間毎に7回繰り返した。
【0053】
<ラット背部皮膚を用いたheterologous PCA反応によるIgE 抗体量の測定>
これら皮膚炎を発症したマウスの血清を用いて、以下の方法により製造例1及び3で得られた本発明物質のアトピー性皮膚炎発症に伴うIgE 抗体量の増加に対する抑制効果試験を行った。尚、各本発明物質は、いずれも各群それぞれ10mg/kg の用量で感作の4日前から採血するまで週4回経口投与した。また、市販の抗アレルギー剤である塩酸エピナスチンをそれぞれ5mg/kg の用量で同様に経口投与し、これら薬物を投与しない群をコントロール群とした。
【0054】
アトピー性皮膚炎惹起操作7回終了時の各群マウスの眼下静脈嚢より採血し、遠心分離(3000rpm ,10分間)した上清(血清)を生理食塩水により5倍希釈して試料とした。これら希釈血清(50μL )を剃毛したWistar系ラット(10週齢)の背部に皮内注射し、24時間後、抗マウスIgE 抗体を含む 0.5%エバンスブルーの生理食塩水溶液(0.5mL) をラットの尾静脈に注射した。30分後ラットを致死させ、背部皮膚裏側の色素漏出による青斑の直径をノギスを用いて測定し、これをIgE 抗体量とした。その結果を図8に示した。
【0055】
図8中、各値は、各群7匹のマウス血清を用いて得られたラット背部皮膚裏側の各青斑直径の平均値±標準誤差で表した。また、*印は、Student のt-検定によるコントロール群に対する有意差を表す(*P <0.05)。
【0056】
図8より、製造例1及び3の本発明物質は、経口投与によりアトピー性皮膚炎を発症したマウスのIgE 抗体産生増加に対しいずれも有意に抑制したことから、アレルギー疾患の中でも、特にアトピー性皮膚炎に対する治療剤として有用なことが示唆された。
【0057】
上記処方に従い、Aの成分を均一に溶解した後、Bの成分溶液に徐々に加え均一に混合溶解してスキンローションとした。
【0058】
上記処方に従い、Aの成分を均一に溶解した後、Bの成分溶液に徐々に加え均一に混合溶解してスキンローションとした。
【0059】
上記処方に従い、Aの成分を均一に溶解した後、Bの成分溶液に徐々に加え均一に混合溶解してスキンローションとした。
【0060】
上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却してスキンクリームとした。
【0061】
上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却してスキンクリームとした。
【0062】
上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却してスキンクリームとした。
【0063】
上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却して乳液とした。
【0064】
上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却して乳液とした。
【0065】
上記処方に従い、A、B各成分をそれぞれ約80℃に加温し、撹拌下BにAを徐々に加え均一に混合した後、冷却して乳液とした。
【0066】
上記処方に従い、A成分をBに均一に分散させた後、Cを加え混合して軟膏とした。
【0067】
上記処方に従い、A成分をBに均一に分散させた後、Cを加え混合して軟膏とした。
【0068】
上記処方に従い、A成分をBに均一に分散させた後、Cを加え混合して軟膏とした。
【0069】
実施例13(錠剤1)
製造例1の化合物 5 mg
乳糖 73 mg
トウモロコシデンプン 20 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 1 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
合計 100 mg
1錠が上記割合になるように各成分を均一に混合した後、打錠して錠剤とした。
【0070】
実施例14(錠剤2)
製造例3の化合物 5 mg
乳糖 73 mg
トウモロコシデンプン 20 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 1 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
合計 100 mg
1錠が上記割合になるように各成分を均一に混合した後、打錠して錠剤とした。
【0071】
実施例15(錠剤3)
製造例5の化合物 5 mg
乳糖 73 mg
トウモロコシデンプン 20 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 1 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
合計 100 mg
1錠が上記割合になるように各成分を均一に混合した後、打錠して錠剤とした。
【0072】
実施例16(カプセル1)
製造例1の化合物 10 mg
乳糖 188 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
合計 200 mg
1カプセルが上記割合になるように各成分を均一に混合した後、カプセルに充填した。
【0073】
実施例17(カプセル2)
製造例3の化合物 10 mg
乳糖 188 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
合計 200 mg
1カプセルが上記割合になるように各成分を均一に混合した後、カプセルに充填した。
【0074】
実施例18(カプセル3)
製造例5の化合物 10 mg
乳糖 188 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
合計 200 mg
1カプセルが上記割合になるように各成分を均一に混合した後、カプセルに充填した。
【0075】
【発明の効果】
本発明物質である一般式(I)、(II)及び(III)で表されるナフトキノン誘導体は、安全性が高く優れた抗アレルギー作用を有していることから、当該物質を有効成分として配合することにより、アトピー性皮膚炎を始めとするアレルギーに起因する各種疾病の予防、治療に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例2の抗かゆみ試験の結果を示すグラフ
【図2】実験例3における製造例1の化合物の試験結果を示すグラフ
【図3】実験例3における製造例3の化合物の試験結果を示すグラフ
【図4】実験例3における製造例5の化合物の試験結果を示すグラフ
【図5】実験例3における陽性対照化合物(CV-3988)の試験結果を示すグラフ
【図6】実験例4における製造例1の化合物の試験結果を示すグラフ
【図7】実験例4における製造例5の化合物の試験結果を示すグラフ
【図8】実験例5の試験結果を示すグラフ
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