JP4562536B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents

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本発明は、熱や太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどのストレスから皮膚を防御することにより、表皮状態を改善し、皮膚の水分代謝を調節する効果を有するとともに、細胞代謝を活性化し、肌の状態を正常化し、皮膚の老化症状を防止し得る皮膚外用剤に関する。
皮膚は、人体の最外層に位置する組織であり、常に熱や太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどのストレスの影響を直接受けている。かかるストレスの影響を人体の内部に及ばないよう防御しているのが、角質層であるが、顔の皮膚は、他の部分の皮膚より角質層が薄く約10層しかなく、種々のストレスの影響を受けやすいことが知られている。
細胞は、熱や太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどの強いストレスにさらされると、それに対抗するために熱ショックたん白質を産生し、ストレスによるダメージから組織を防御するシステムを有している。熱ショックたん白質は、細胞および生体が熱刺激のみならず、太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどのストレスに応答して産生する特殊なタンパク質である。熱ショックたん白質の合成が増加すると、皮膚において、熱や太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどのストレスに対する抵抗性が向上することが知られている。しかし、加齢とともに熱ショックたん白質の合成能力は減少する。そこで、熱ショックたん白質を皮膚外用剤に配合することにより、皮膚の老化を防止する試みがなされている(特許文献1,2)。
特開2004−331602号公報 特表2004−520338号公報
しかしながら、熱ショックたん白質を皮膚外用剤に配合しても、その効果は対症療法的なものでしかなく、根本的に皮膚組織をストレスから防御できるシステムを確立する必要があった。
そこで本発明においては、熱や太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどのストレスから皮膚を防御することにより、表皮状態を改善し、皮膚の水分代謝を調節する効果を有するとともに、細胞代謝を活性化し、肌の状態を正常化し、皮膚の老化症状を防止しうる皮膚外用剤を提供することを課題とした。
かかる実情において、鋭意研究を重ねた結果、熱ショックたん白質と、熱ショックたん白質産生促進剤を併用して皮膚外用剤に用いることにより、熱や太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどのストレスから皮膚を防御し、またかかる防御システムを細胞から発揮させることにより、表皮状態を改善し、皮膚の水分代謝を調節する効果を有するとともに、細胞代謝を活性化し、肌の状態を正常化し、皮膚の老化症状を有効に防止しうることを見いだし、本発明を完成した。
本発明においては、熱ショックたん白質と、熱ショックたん白質産生促進剤を併用して皮膚外用剤に用いることにより、熱や太陽光線,化学物質,重金属,タバコの煙,排気ガスなどのストレスから皮膚を防御し、またかかる防御システムを細胞から発揮させることにより、表皮状態を改善し、皮膚の水分代謝を調節する効果を有するとともに、細胞代謝を活性化し、肌の状態を正常化し、皮膚の老化症状を有効に防止する。
本発明に用いる熱ショックたん白質としては、特にその由来に制限はないが、酵母が産生する熱ショックたん白質を用いることが好ましい。かかる酵母としては、サッカロミセス属酵母、特にサッカロミセスセレビシエ若しくはサッカロミセスボウラルディーを用いることが好ましい。
酵母は、熱ショックたん白質の産生を促進させるため、10℃以下の低温ストレス、80〜100℃程度の高温ストレスや、浸透圧ストレス下で5〜30分間培養したものを用いることが好ましい。培養した酵母は、必要に応じて、細胞を破砕後細胞片を除去して抽出したものを用いる。
本願発明において、熱ショックたん白質の皮膚外用剤への配合量は、概ね0.0001〜5重量%,好ましくは0.001〜3重量%が適当である。熱ショックたん白質産生促進剤と併用して用いるため、通常熱ショックたん白質を単独で配合する場合と比較して、少ない量で効果を発揮することができる。
以下に熱ショックたん白質を高濃度で含有する酵母エキスの製造例を示す。
製造例1
凍結乾燥したサッカロミセスセレビシエを4℃で酢酸アンモニウム緩衝液に懸濁し低温ストレスを与える。pH7.5,温度4〜10℃の条件下で超音波処理装置を用いて細胞を破砕したのち、4℃で遠心分離を行うことにより細胞片を除去する。上清溶液を80℃でインキュベートした後再度遠心分離し、得られた上清を噴霧乾燥させることにより、熱ショックたん白質を高濃度で含有する酵母エキス1を得る。
製造例2
10g/Lの細菌用ペプトン、20g/Lのグルコース、5g/Lの酵母エキスおよび0.8Mのマンにトールを含む培地を加熱滅菌し、凍結乾燥したサッカロミセスセレビシエを加え、浸透圧ストレス下30℃、好気条件下で24時間振とう培養する。細胞を収集、洗浄した後、pH7.5,温度4〜10℃の条件下で超音波処理装置を用いて細胞を破砕したのち、4℃で遠心分離を行うことにより細胞片を除去する。上清溶液を80℃でインキュベートした後再度遠心分離し、得られた上清を噴霧乾燥させることにより、熱ショックたん白質を高濃度で含有する酵母エキス2を得る。
製造例3
生パン酵母(サッカロミセスセレビシエ)を生理食塩水に懸濁し、pHを7.5に調節した後100℃で15分加熱することにより、高温ストレス下で培養した後、冷却する。不連続高圧ホモジナイザー中、800バールで細胞を破砕する。pHを4に調節した後100℃で15分加熱し、ついで冷却後遠心分離を行い得られた上清を乾燥させることにより、熱ショックたん白質を高濃度で含有する酵母エキス3を得る。
熱ショックたん白質産生促進剤は、細胞における熱ショックたん白質の産生がさかんに行われているときには、これ以上の産生を促進せず、必要に応じて熱ショックたんぱく質の産生を促進する効果を発揮するものを用いる。かかる熱ショックタンパク質産生促進剤として例えば、ビタミンEおよびその誘導体、プロシアニドールオリゴマー、カフェー酸エステル、エストロゲンおよびエストロゲン様化合物、イソフラボン、プロシアニドリックオリゴマー、アントシアン、アミノ酸、オリゴペプチド、フィチン酸等のカルシウムキレート剤、並びにそれらを含有する植物抽出物を用いることができる。特に穀物の発芽種子は、種子本来が有している多糖類やタンパク質が加水分解された水溶性のオリゴ糖類,ペプチド、アミノ酸を多く含有しており、好適に用いられる。かかる穀物の発芽種子の中でも、ライムギの発芽種子抽出物を用いることが、その効果の点から好ましい。
本願発明において、熱ショックたん白質産生促進剤の皮膚外用剤への配合量は、概ね0.0001〜5重量%,好ましくは0.001〜3重量%が適当である。
本発明に係る皮膚外用剤は、ローション剤,乳剤,ゲル剤,クリーム剤,軟膏剤,粉末剤,顆粒剤等、種々の剤型で提供することができる。また、化粧水,乳液,クリーム,美容液,パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション,メイクアップベースクリーム等の下地化粧料、乳液状,油性,固形状等の各剤型のファンデーション,アイカラー,チークカラー等のメイクアップ化粧料、ハンドクリーム,レッグクリーム,ネッククリーム,ボディローション等の身体用化粧料等として提供することができる。
なお本発明に係る皮膚外用剤には、熱ショックたん白質及び熱ショックたん白質産生促進剤のほかに、油性成分,界面活性剤,保湿剤,顔料,紫外線吸収剤,抗炎症剤,香料,防菌防黴剤等の一般的な医薬品及び化粧料用原料、皮膚細胞賦活剤,美白剤等の生理活性成分を含有させることができる。
更に、実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。
[実施例1〜3、比較例1〜4] 水中油型クリーム剤
(1)ミツロウ 6.00(重量%)
(2)セタノール 5.00
(3)還元ラノリン 8.00
(4)スクワラン 27.50
(5)グリセリル脂肪酸エステル 4.00
(6)親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.00
(7)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン
モノラウリン酸エステル 5.00
(8)プロピレングリコール 5.00
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(10)精製水 全量を100とする量
(11)熱ショックたん白質 表1に示す量
(12)熱ショックたん白質産生促進剤 表1に示す量
製法:(1)〜(7)の油相成分を混合,溶解して75℃とする。一方、(8)〜(10)の水相成分を混合,溶解し、75℃に加熱する。次いで、この水相成分に前記油相成分を添加して予備乳化した後ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却後40℃にて(11)と(12)を添加,混合する。
Figure 0004562536
前記実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例4を用いて、紫外線によるしわの発生に対する防止効果を評価した。しわ発生防止効果の評価は、ヘアレスマウス5匹を1群とし、各群について実施例及び比較例をそれぞれ1日1回背部に塗布し、1J/cm2/週の長波長紫外線(UVA)を50週間照射し、ヘアレスマウスにおけるしわの発生状況を観察し、表2に示す判定基準にしたがって点数化しておこなった。結果は各群の平均値を算出し、UVA照射日数との関係により表3に示した。
Figure 0004562536
Figure 0004562536
表3から明らかなように、熱ショックたん白質又は熱ショックたん白質産生促進剤を単独で含有する比較例1〜比較例4塗布群では、20週後に軽微〜中程度のなしわの形成が認められていた。これに対し、実施例塗布群においては、20週経過後においても、微小〜軽微なしわの形成が認められる程度で、熱ショックたん白質及び熱ショックたん白質産生促進剤の配合量が少ないにもかかわらず対応する比較例と比べて有意にしわの形成が抑制されていた。
つづいて、本発明の実施例1〜実施例3及び比較例1〜4について使用試験を行い、皮膚の老化症状の改善効果を評価した。
皮膚の老化症状の改善効果は、小じわ形成及び皮膚弾性の低下が顕著に認められる40才代〜60才代の女性パネラー20名を1群とし、各群に実施例及び比較例のそれぞれをブラインドにて1日2回、2カ月間連続して使用させて評価した。小じわの程度については肉眼観察及び写真撮影により評価し、皮膚弾性についてはキュートメーターにより測定して、それぞれ使用試験開始前及び終了後の状態を比較し、「改善」,「やや改善」,「変化なし」の3段階で評価した。結果は、各評価を得たパネラー数にて小じわについては表4に、皮膚弾性については表5に示した。
Figure 0004562536
Figure 0004562536
表4,表5から明らかなように、熱ショックたん白質又は熱ショックたん白質産生促進剤を単独で含有する比較例1〜比較例4塗布群においては、若干のしわ及び皮膚弾性改善効果が認められていたが、その程度は熱ショックたん白質と熱ショックたん白質産生促進剤を併用して配合した実施例1〜実施例3よりは低いものであった。
また、本発明の実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例4について、肌荒れ症状の改善効果を評価した。肌荒れ症状の改善効果は、顕著な肌荒れ症状を呈する20才代〜60才代の女性パネラー20名を1群とし、各群に実施例及び比較例のそれぞれをブラインドにて1日2回、2カ月間連続して使用させて評価した。使用試験開始前及び終了後の皮膚の状態を、表6に示す評価基準にしたがって評価,点数化し、20名の平均値を算出して表7に示した。
Figure 0004562536
Figure 0004562536
表7から明らかなように、本発明の実施例使用群ではいずれにおいても顕著な肌荒れの改善が認められ、使用試験終了後において、皮膚の状態はほぼ良好〜良好な状態にまで改善されていた。これに対し比較例使用群においても、良好な肌荒れの改善が認められていたが、その程度はそれぞれ対応する実施例使用群に比べて小さいものであった。
[実施例4] 乳剤
(1)セタノール 1.0(重量%)
(2)ミツロウ 0.5
(3)ワセリン 2.0
(4)スクワラン 6.0
(5)ジメチルポリシロキサン 2.0
(6)d−δ−トコフェロール 0.2
(7)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン
モノステアリン酸エステル 1.0
(8)グリセリルモノステアリン酸エステル 1.0
(9)グリセリン 4.0
(10)1,3-ブチレングリコール 4.0
(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(12)酵母エキス3 0.3
(13)精製水 61.9
(14)カルボキシビニルポリマー(1.0重量%水溶液) 10.0
(15)水酸化カリウム(10.0重量%水溶液) 1.0
(16)エタノール 5.0
製法:(1)〜(8)の油相成分を混合し、加熱溶解して75℃とする。一方、(9)〜(13)の水相成分を混合,溶解して75℃とする。これに前記油相成分を加え、予備乳化した後、(14)を添加してホモミキサーにて均一に乳化する。次いで、(15)を添加して増粘させた後冷却し、40℃で(16)を添加,混合する。
[実施例5] ゲル剤
(1)ジプロピレングリコール 10.0(重量%)
(2)カルボキシビニルポリマー 0.5
(3)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(4)ライムギ発芽種子エキス 0.2
(5)酵母エキス3 0.3
(6)精製水 87.9
(7)水酸化カリウム(10.0重量%水溶液) 1.0
製法:(6)に(1)〜(5)を均一に溶解した後、(7)を加え、増粘させる。
[実施例6] ツーウェイファンデーション
(1)シリコーン処理タルク 40.0(重量%)
(2)シリコーン処理セリサイト 10.0
(3)シリコーン処理マイカ 8.0
(4)シリコーン処理酸化チタン 6.0
(5)シリコーン処理微粒子酸化チタン 10.0
(6)ステアリン酸アルミニウム 2.0
(7)ポチメチルメタクリレート 4.0
(8)シリコーン処理黄酸化鉄 6.2
(9)シリコーン処理ベンガラ 0.15
(10)シリコーン処理黒酸化鉄 0.25
(11)ライムギ発芽種子エキス 0.2
(12)パラメトキシ桂皮酸オクチル 2.5
(13)d−δ−トコフェロール 0.2
(14)ジメチルポリシロキサン 10.0
(15)トリメチルシロキシケイ酸 0.3
(16)チンピエキス 0.1
(17)酵母エキス3 0.1
製法:(1)〜(11)の成分をブレンダーにて均一に混合した後、予め混合した(12)〜(17)を添加して混練後アトマイザーで粉砕する。篩過した後金皿に圧縮成型する。
[実施例7] 日焼け止め乳液
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 25.0(重量%)
(2)ジメチコノール 1.5
(3)メチルフェニルポリシロキサン 2.0
(4)PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.0
(5)トリメチルシロキシケイ酸 0.2
(6)酸化亜鉛 20.0
(7)メトキシ桂皮酸オクチル 10.0
(8)ポリメタクリル酸メチル 1.0
(9)(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)
クロスポリマー 2.0
(10)フェノキシエタノール 0.3
(11)1,3−ブチレングリコール 5.0
(12)チンピエキス 0.1
(13)ライムギ発芽種子エキス 0.1
(14)酵母エキス3 0.1
(15)精製水 31.7
製法:(1)〜(9)の油相成分をホモミキサーで混合,均質化した後、予め混合溶解した(10)〜(15)の水相成分を添加して乳化する。
[実施例8] 日焼け止め乳液
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 25.0(重量%)
(2)(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.3
(3)有機変性ベントナイト 0.5
(4)メチルフェニルポリシロキサン 1.0
(5)ポリジメチルシロキサン 3.0
(6)PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3.0
(7)メトキシ桂皮酸オクチル 7.5
(8)酸化亜鉛 10.0
(9)ポリメタクリル酸メチル 3.6
(10)(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)
クロスポリマー 0.7
(11)精製水 22.0
(12)塩化ナトリウム 0.8
(13)フェノキシエタノール 0.3
(14)1,3−ブチレングリコール 8.0
(15)グリセリン 14.0
(16)チンピエキス 0.1
(17)ライムギ発芽種子エキス 0.1
(18)酵母エキス3 0.1
製法:(1)〜(10)の油相成分をホモミキサーで混合,均質化した後、予め混合溶解した(11)〜(18)の水相成分を添加して乳化する。
なお実施例1〜実施例8については、25℃で6カ月間保存した場合において状態の変化は全く認められず、男性パネラー30名による48時間の背部閉塞貼付試験においても、問題となる皮膚刺激性反応は認められなかった。

Claims (1)

  1. 酵母由来の熱ショックたん白質と、熱ショックたん白質産生促進剤としてライムギ発芽種子エキスを含有する皮膚外用剤。
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