JP4556318B2 - 耐熱性布帛およびそれからなるフィルター - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴミ焼却炉、石炭ボイラー、金属溶解炉などから排出される高温の排ガス中のダストを捕集するためのフィルターに用いられる耐熱性布帛、および、それからなるフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴミ焼却炉、石炭ボイラー、金属溶解炉などから排出されるダストを捕集するためのフィルターとして、バグフィルターがよく知られている。このバグフィルターに用いられる濾布は、排ガスの温度が約130℃ないし約250℃の高温である場合、耐熱性が要求される。更に、このような高温雰囲気において濾過効率を高めるために、限られた空間内において濾過面積ができるだけ大きいことが要求される。
【0003】
従来、このような高温下で使用されるバグフィルター用濾布としては、基布とウェブとを積層し、ニードルパンチあるいは噴射水流などによって、ウェブと基布とを絡合させることによって得られるフェルトが用いられてきた。
【0004】
しかしながら、この従来のバグフィルター用濾布よりなるバグフィルターは、濾布を円筒形に縫製してなるものであり、濾布面積は小さく、すなわち、濾過面積が小さいため、濾過効率を高くしようとした場合に、バグハウス自体が大きくなる問題があった。この問題を解決するために、濾布をプリーツ状に加工し、小さいバグハウス内でできるだけ大きな濾過面積を取ることができるプリーツ型フィルターが近年多く用いられるようになった。
【0005】
このため、特開平11−158776号公報では、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布に合成樹脂を含浸し、濾布の剛性を高め、これによりプリーツ型フィルターを形成することが提案されている。しかし、このフィルターは、常温での濾布の剛性は高いものの、高温下で使用した際には、ポリフェニレンサルファイド繊維が軟化することにより濾布そのものが軟化し、プリーツの形態が崩れ、更には、排ガスを濾過するときに作用する圧力によって、隣り合うプリーツ同士が密着し、有効な濾過面積が減少し、フィルターの圧力損失が急上昇する問題があった。
【0006】
特許第2052116号公報、特許第2594844号公報、特許第2602116号公報、特開平1−274813号公報、特開平2−47389号公報、特開平3−137259号公報、特開平3−137260号公報、特開平6−248546号公報、および、特表平10−506963号公報において、ポリフェニレンサルファイド繊維を含む種々の繊維を混綿した不織布が提案されているが、この不織布は、高温下での繊維の耐久性は十分有しているものの、繊維同士の結着が少なく、繊維同士が拘束されていないため、常温および高温での剛性が低く、プリーツの形態を保持させることができなかった。
【0007】
特許第2594726号公報においては、耐熱性繊維を熱可塑性樹脂により接合し、かつ、下層から上層にかけて厚さ方向に繊維の密度に勾配を付与した不織布が提案されている。しかし、この不織布は、一方の面から他方の面に向かってのみ繊維の密度勾配を有するものであるため、不織布に十分な剛性を付与することができなかった。
【0008】
特許第2559872号公報においては、耐熱性繊維とポリフェニレンサルファイド繊維からなり、ポリフェニレンサルファイド繊維の溶融塊が繊維間を接合している形態の不織布が提案されている。これは、繊維間の接合がポリフェニレンサルファイドであることから、130℃以上の高温下で使用した際に、不織布の剛性が低くなり、プリーツが変形する問題を有していた。
【0009】
以上において検討した従来の濾布は、これを用いてプリーツ型フィルターを形成し、このフィルターを高温下で使用した際に、濾布が軟化し、プリーツの形態が崩れ、フィルターの圧力損失が急上昇する欠点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の欠点を解消することを目的とし、高温下で使用されるフィルター用の濾布として用いても、高温下での形態保持性に優れた耐熱性布帛、特に、高温下で使用されるプリーツ型フィルター用の濾布として用いても、高温下でのプリーツの形態保持性に優れた耐熱性布帛を提供する。更に、本発明は、この耐熱性布帛を濾材としたフィルターを提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、
(1)ポリフェニレンサルファイド繊維と、ガラス繊維、炭素繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、およびポリイミド繊維の群から選ばれた少なくとも1種の繊維とから形成された不織布からなり、該不織布構成繊維の交点が合成樹脂により拘束されてなり、該合成樹脂を加工するときの該合成樹脂含有媒体の粘度が50〜700mPa・sであって、プリーツ状に折り曲げ加工されていることを特徴とする耐熱性布帛、
(2)前記合成樹脂の前記不織布の重量に対する付着率が、5〜70重量%である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(3)前記合成樹脂のガラス転移点温度が、100℃以上である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(4)前記合成樹脂が、熱硬化性樹脂である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(5)前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、および、不飽和ポリエステル樹脂の群から選ばれた少なくとも1種の樹脂である前記(4)に記載の耐熱性布帛、
(6)前記混合繊維の前記不織布における配合率が、5〜90重量%である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(7)前記配合率が、10〜60重量%である前記(6)に記載の耐熱性布帛、
(8)垂れ下がり長さが、20mm以下である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(9)剛軟度が、49.0mN(5000mgf)以上である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(10)厚さ方向に3等分したときの中間層の密度が、表面層の密度に比べ低い前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(11)前記ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度が、0.11〜16.7デシテックス(0.1〜15デニール)である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(12)前記混合繊維の単繊維繊度が、0.33〜33デシテックス(0.3〜30デニール)である前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(13)前記ポリフェニレンサルファイド繊維の繊維長が、2〜100mmである前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(14)ダストが堆積する側の面に、微多孔膜が存在する前記(1)に記載の耐熱性布帛、
(15)濾材が、前記(1)〜(14)のいずれかに記載の耐熱性布帛で形成されたフィルター、が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る耐熱性布帛は、ガラス転移点温度が100℃以上もしくはガラス転移点を有しない繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、および、合成樹脂をその基本構成とする。
【0013】
本発明においては、ガラス転移点温度が100℃以上もしくはガラス転移点を有しない繊維(混合繊維)が、ポリフェニレンサルファイド繊維に混綿された不織布であることが重要である。この混合繊維が不織布中に存在することにより、この不織布でプリーツ状の濾材を形成したとき、130℃以上の高温下でのプリーツの形態保持性が高められる。
【0014】
この混合繊維としては、無機繊維、全芳香族ポリアミド繊維、フッ素繊維、あるいは、全芳香族ポリエステル繊維、ポリイミド繊維が好ましい。これらの中でも、耐熱性、耐薬品性に優れたガラス繊維、炭素繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、あるいは、ポリテトラフルオロエチレン繊維が好ましい。更に、これらの中でも、ガラス繊維、あるいは、パラ系アラミド繊維が特に好ましい。
【0015】
本発明に係る耐熱性布帛において、前記不織布の繊維同士の交点を拘束するために用いられている合成樹脂は、不織布に、例えば、含浸せしめられる。含浸後、不織布は、乾燥され、含浸により付着した溶媒分は除去される。また、必要により熱処理を行うことができる。これにより、得られた不織布に、高い剛性が付与される。
【0016】
合成樹脂の乾燥後の付着量は、不織布の全重量に対して、5〜70重量%の範囲にあることが好ましい。付着量が5重量%未満であると、耐熱性布帛の剛性が低くなり、フィルターとして使用した際のプリーツの形態保持が困難となる場合がある。付着量が、70重量%を超えると、耐熱性布帛の空隙が小さくなり、フィルターとして使用した場合の圧力損失が高くなる場合がある。
【0017】
合成樹脂は融液、溶液または溶媒分散体の形(以下合成樹脂含有媒体という)で加工することができるが、加工時の合成樹脂含有媒体の粘度は、B型粘度計を用い、JIS K−7117の規定に準じて測定された粘度として、50〜700mPa・sであることが好ましい。合成樹脂の粘度が50mPa・s未満の場合、不織布に付着する合成樹脂の量が少なくなり、耐熱性布帛の剛性が十分でない場合がある。合成樹脂の粘度が700mPa・sを超えると、不織布に付着する合成樹脂の量が多くなり、耐熱性布帛の空隙が小さくなり、フィルターとして使用した場合の圧力損失が高くなる。合成樹脂の粘度を50〜700mPa・sとすることにより、不織布を乾燥、キュアする際に、合成樹脂の混合溶液が、主として不織布の繊維同士の交点に良好にマイグレーションされる。これにより、繊維同士がより効果的に拘束され、不織布の剛性が高められ、かつ、圧力損失の小さい耐熱性布帛とすることができる。
【0018】
本発明で用いられるポリフェニレンサルファイド繊維とは、その構成単位の90%以上が、−(C64−S)−で構成されるフェニレンサルファイド構造単位を含有する重合体からなる繊維である。
【0019】
ポリフェニレンサルファイド繊維を用いる意義について述べる。
ポリフェニレンサルファイド繊維は、耐熱性、耐蒸熱性、耐薬品性に優れ、強度などの物理的特性に優れた繊維として知られている。しかし、ポリフェニレンサルファイド繊維は、ガラス転移点温度が91℃と100℃以下であり、130℃以上の高温下でのプリーツの形態保持性に不満があった。
【0020】
このようなポリフェニレンサルファイド繊維とガラス転移点温度が100℃以上の繊維もしくはガラス転移点を有しない繊維(混合繊維)とを混綿し、合成樹脂を含浸することにより、プリーツ型フィルターとして使用した際に、耐蒸熱性、耐薬品性に優れ、フィルターとしての寿命が長く、かつ、高温下での剛性が高い耐熱性布帛を得ることが可能となることが本発明者により見出された。
【0021】
本発明で用いられる混合繊維、すなわち、ガラス転移点温度が100℃以上もしくはガラス転移点を有しない繊維の含有量は、好ましくは5〜90重量%、更に好ましくは10〜60重量%である。混合繊維の含有量が5重量%未満である場合、布帛の高温下での剛性が低く、また、混合繊維の含有量が90重量%を超えると、布帛の高温下での剛性は高いものの強力が低く、耐薬品性、耐蒸熱性が低くなり、好ましくない。
【0022】
本発明で用いられる合成樹脂は、そのガラス転移点温度が100℃以上であるものが好ましい。あるいは、合成樹脂は、熱硬化性樹脂であることが、高温下での優れた剛性を得るために好ましく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、および、不飽和ポリエステル樹脂の群から選ばれた1種以上の熱硬化性樹脂であることが、布帛に130℃以上の高温下での優れた剛性を付与するために好ましい。
【0023】
本発明の耐熱性布帛の高温下での剛性を示す指標となる170℃での垂れ下がり長さは、20mm以下であることが好ましい。垂れ下がり長さが20mmより長い場合、高温下での剛性が低く、高温下でのプリーツの形態保持性が劣る。垂れ下がり長さの測定は、次の通りである。
【0024】
垂れ下がり長さを測定しようとする耐熱性布帛から、長さ200mm、幅20mmの測定片を切り取る。作成された測定片1は、図1に示すように、測定片1の一端2から100mmの部分を直方体の測定片載置ブロック3の上面に、機械的手段、あるいは、接着剤により固定する。このとき、測定片1の他端4は、ブロック3から突き出た状態となる。
【0025】
測定片1がセットされたブロック3は、170℃の雰囲気中に1時間放置される。この間に、測定片1のブロック3から突き出た部分5が軟化し垂れ下がる。
この状態における測定片1の端部4の位置とブロック3の上面を含む平面6(図1において点線で描かれる)との間の鉛直方向の長さLが測定される。測定された長さLが、垂れ下がり長さとされる。この垂れ下がり長さの大小により、布帛の高温下での剛性、すなわち、高温下でのプリーツの形態保持性を評価することができる。
【0026】
垂れ下がり長さは、耐熱性布帛がプリーツ加工される場合に、特に重要な意味を有する。プリーツ加工された耐熱性布帛において、プリーツの折り曲げ線に直交する方向を垂れ下がり長さの測定片の長さ方向として耐熱性布帛から切り出された上記ディメンションを有する測定片にて垂れ下がり長さが測定され、その値が20mm以下であることが好ましい。
【0027】
高温下での高い剛性を得るために必要な標準状態(温度:20℃、圧力:大気圧)での耐熱性布帛の剛性は、JIS−L1096に規定される規定ガーレ法に基づく剛軟度により評価できることが本発明者により見出された。
【0028】
耐熱性布帛の剛軟度は、49mN(5,000mgf)以上であることが好ましい。剛軟度が49mN(5,000mgf)より低い場合、高温下でのプリーツの形態保持性が劣る。
【0029】
本発明で用いられるポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度は、0.11〜16.7デシテックス(0.1〜15デニール)であることが好ましい。単繊維繊度が0.11デシテックス(0.1デニール)未満である場合、繊維のカーディング時やニードルパンチ時において繊維が糸切れを起こし、耐熱性布帛の強力が低くなる。単繊維繊度が16.7デシテックス(15デニール)を超えると、繊維の表面積が小さくなり、ダストの集塵性能が低下する。
【0030】
前記ガラス転移点温度が100℃以上もしくはガラス転移点を有しない繊維、すなわち、混合繊維の単繊維繊度は、0.33〜33デシテックス(0.3〜30デニール)の範囲であることが好ましい。単繊維繊度が0.33デシテックス(0.3デニール)未満である場合、繊維1本当たりの剛性が低くなり、これにより耐熱性布帛の剛性が低くなる。単繊維繊度が33デシテックス(30デニール)を超えると、カードの工程通過性が悪くなったり、ニードルパンチ時の絡合性が悪くなり、これにより耐熱性布帛の強力が低くなる。
【0031】
本発明で用いられるポリフェニレンサルファイド繊維の繊維長は、2〜100mmであることが好ましい。繊維長が2mm未満である場合、繊維同士の絡合が不足し、耐熱性布帛の強力が低下する。繊維長が100mmを超えると、繊維のカーディング時において繊維同士が絡みつき、毛玉などを発生させる場合がある。
【0032】
本発明の耐熱性布帛を構成する不織布は、公知の不織布、例えば、ニードルパンチ不織布、湿式不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、レジンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、トウ開繊式不織布、エアレイド不織布の製造方法、装置により製造される。
プリーツ型フィルター用濾材として用いるに当たっては、これらの中でも、濾材の剛性および引張強力等の点から、ニードルパンチ不織布、あるいは、スパンレース不織布の製造方法が好ましい。
【0033】
本発明の耐熱性布帛をプリーツ型フィルター用濾材として用いる際には、耐熱性布帛の目付は、150〜600g/m2であることが好ましい。目付が150g/m2未満の場合、耐熱性布帛の剛性が低くなる。目付が600g/m2を超えると、厚みが大きくなり、プリーツ状に折り曲げ加工した際に、隣り合うプリーツ同士が接着し、排ガス濾過時の圧力損失が高くなる。
【0034】
本発明の耐熱性布帛の厚みは、2mm以下であることが好ましい。厚みが2mmを超えると、排ガス濾過時の圧力損失が高くなる。
【0035】
本発明の耐熱性布帛の引張破断強力は、49N/50mm(5kgf/50mm)以上であることが好ましい。引張破断強力が49N/50mm(5kgf/50mm)未満である場合、排ガス濾過時の圧力や、パルスジェットなどの逆洗時の圧力により、濾材に破損が生じる場合がある。
【0036】
本発明の耐熱性布帛の好ましい製造方法について述べる。
【0037】
本発明の耐熱性布帛は、ポリフェニレンサルファイドの短繊維と、ガラス転移点温度が100℃以上もしくはガラス転移点を有しない繊維(混合繊維)の短繊維とを配合し、通常のカーディングマシンを用いて開繊後、得られたフリースを積層し、ニードルパンチにより繊維同士を絡合させる。この絡合により、不織布が得られる。ここにおいて、混合繊維の配合率は、5〜90重量%であることが好ましい。この配合率は、10〜60重量%であることが更に好ましい。
【0038】
得られた不織布は、熱プレス機、ヒートロールカレンダーなどを用い、100℃〜280℃の温度、98〜6860N/cm(10〜700kgf/cm)の線圧、0〜1mmのクリアランスで熱プレス処理される。この熱プレス処理により、不織布の厚みが調整される。この熱プレス処理により、不織布の表面層に配置された繊維が緻密化される。
【0039】
不織布の厚さ方向の密度の変化は、不織布の表面と平行な面で、不織布を厚さ方向に3等分にスライスした時に得られる、2枚の表面層の密度Aと1枚の中間層の密度Bとの比率が、1.1〜2.5の範囲内であることが好ましい。すなわち、次式を満足する厚さ方向の密度変化があることが好ましい。
A/B=1.1〜2.5
【0040】
これにより、例えば、ダンボールのような剛性の高い構造を有する耐熱性布帛を得ることができる。これにより、ダストの払い落とし性にも優れる耐熱性布帛を得ることができる。この熱プレス処理については、その手段を特に限定されるものではなく、不織布の表面を熱プレス処理できるものであればよい。不織布と接触するロールなどの表面は、フラットであっても凹凸を有するものであってもよい。
【0041】
次に、得られた不織布に、ディップマングルを用いて、好ましく粘度が50〜700mPa・sの合成樹脂含有媒体が含浸される。合成樹脂が含浸された不織布は、テンターにより、120℃〜300℃で処理され、含浸された合成樹脂は、乾燥、キュアされる。ここに、目標とする耐熱性布帛が製造される。
【0042】
合成樹脂の含浸工程において、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂乾燥後の合成樹脂の付着率は、10〜60重量%であることが、高い剛性と低圧力損失を同時に満足する耐熱性布帛を得るために好ましい。
【0043】
このようにして得られた耐熱性布帛は、プリーツ状に折り曲げ加工することにより、エアフィルターとして好適に用いることができる。特に、高温の排ガスなどを集塵する際において、高温下での剛性が高い点から、より好ましく使用される。
【0044】
上記した以外の用途の主な例として、プリーツ加工せず、通常の筒状に縫製して排ガスなどを濾過するフィルターとして使用することも可能であり、また、液体などを濾過する液体フィルターとしても用いることができる。
【0045】
耐熱性布帛の表面に微多孔膜を貼り付けることにより、フィルターとして使用した際のダストの集塵性能をより高めた耐熱性布帛とすることができ、かつ、パルスジェットによるダストの払い落としの際のダストの払い落とし性に優れた耐熱性布帛とすることができる。使用される微多孔膜については、特に限定されるものではないが、公知のフッ素系微多孔膜などを用いることができる。なお、上記した耐熱性布帛の表面とは、フィルターとして使用した際のダストが堆積する側の面のことを言う。
【0046】
【実施例】
実施例で用いた合成樹脂含有媒体の粘度、ならびに、実施例および比較例で作成した耐熱性布帛の垂れ下がり長さ、剛軟度、引張破断強力、および、高温時プリーツの形態保持性のそれぞれは、次に説明する方法で測定したものである。
A.合成樹脂含有媒体の粘度:
株式会社東京計器社製B型粘度計を用い、JIS−K7117「液体の樹脂の回転粘度計による粘度試験方法」に準じて測定した。
B.耐熱性布帛の垂れ下がり長さ:
前記説明の通り。
C.耐熱性布帛の剛軟度:
耐熱性布帛から長さ50.8mm、幅25.4mmの測定片を切り出し、この測定片を用いて、JIS−L1096に規定されたガーレ法にて測定した。
D.耐熱性布帛の引張破断強力:
耐熱性布帛から長さ200mm、幅50mmの測定片を切り出し、測定片を作成する。耐熱性布帛における繊維の配列が、比較的一定方向に向いている場合は、測定片の長さ方向は、繊維の配列方向とする。この測定片を用いて、テンシロン引張試験機を用い、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/minで測定した。
E.耐熱性布帛の高温時のプリーツ形態保持性:
耐熱性布帛を、ピッチ3cm、山高さ5cmで、プリーツ加工する。耐熱性布帛における繊維の配列が、比較的一定方向に向いている場合は、繊維の配列方向とプリーツの折り曲げ線が直行するようする。プリーツ加工された耐熱性布帛を鉄製の枠に固定し、170℃の温風を3m/minで通過させた。濾過風速は、温風の流量(m3/s)を濾過面積(プリーツをのばしたときの耐熱性布帛の全面積)(m2)で割ったものである。
高温時のプリーツの形態保持性は、上記通風時におけるプリーツ型濾布の状態を目で観察し、次のの評価基準によって判断した。
E:プリーツ断面の三角形状に変形はなく良好である。
G:プリーツ断面の三角形状にやや変形が見られる。
B:プリーツ断面の三角形状に大きな変形が認められる。
F.総合評価
上記した測定の結果を総合して総合評価とした。なお、評価の基準は以下のとおりである。
○:高温時のプリーツ形態保持性が良好で、さらに引張破断強力が高く、極めて好適に実用に供することができる。
△:高温時のプリーツ形態保持性において、プリーツ断面の形状にやや変形が見られるか、もしくはプリーツの形態保持性は良好なものの引張破断強力が低く、実用には問題は無いが、上記○より劣る。
×:高温時のプリーツ形態保持性において、プリーツの断面形状に大きな変形が見られ、実用に供しがたい。
【0047】
実施例1
単繊維繊度2.0デニール、繊維長51mmのポリフェニレンサルファイドの短繊維(東レ(株)製「トルコン」)と、繊維径5μm(0.5デシテックス)、繊維長75mmのガラス繊維(ユニチカグラスファイバー(株)製Eガラス)を、重量比85:15で混合し、カーディング法によりウェブを形成し、次いで積層後、ニードルパンチ処理を行い不織布を得た。得られた不織布を、カレンダーロールで、温度190℃、線圧2,940N(300kgf/cm)、クリアランス0mmで熱処理を行ない、厚み1.2mmの不織布を作成した。アクリル樹脂(大日本インキ社製「ボンコートEXPM1119」粘度:320mPa・s)と、メラミン樹脂(大日本インキ社製「ベッカミンAPM」粘度:6240mPa・s)と、水道水(粘度:1.0mPa・s)とを25:25:50で配合し、得られた合成樹脂含有媒体(粘度:224mPa・s)を、作成された不織布に含浸した。合成樹脂を含浸した不織布を、含浸前の不織布の重量の120%となるように、マングルで絞った後、220℃で3分間テンターにより乾燥し、目付が381g/m2、厚みが1.51mm、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂の付着率(乾燥後)が32%の耐熱性布帛を得た。
【0048】
実施例2
単繊維繊度2.0デニール、繊維長51mmのポリフェニレンサルファイドの短繊維(東レ(株)製「トルコン」)と、繊維経5μm、繊維長75mmのガラス繊維(ユニチカグラスファイバー(株)製Eガラス)の配合率を、重量比50:50に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件により、目付が376g/m2、厚みが1.48mm、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂の付着率(乾燥後)が29%の耐熱性布帛を得た。
【0049】
実施例3
混綿する繊維を単繊維繊度2.0デニール、繊維長51mmのポリフェニレンサルファイドの短繊維(東レ(株)製「トルコン」)と、単繊維繊度1.5デニール、繊維長51mmのパラ系アラミド繊維(東レデユポン(株)製「ケブラー」)とを重量比85:15に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件により、目付が370g/m2、厚みが1.44mm、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂の付着率(乾燥後)が30%の耐熱性布帛を得た。
【0050】
実施例4
合成樹脂をフェノール樹脂(大日本インキ社製「フェノライトTD−4304」粘度:870mPa・sとし、水道水(粘度:1.0mPa・s)と50:50で配合した合成樹脂含有媒体(粘度:362mPa・s)に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件により、目付が380g/m2、厚みが1.41mm、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂の付着率(乾燥後)が27%の耐熱性布帛を得た。
【0051】
実施例5
単繊維繊度2.0デニール、繊維長51mmのポリフェニレンサルファイドの短繊維(東レ(株)製「トルコン」)と、繊維経5μm、繊維長75mmのガラス繊維(ユニチカグラスファイバー(株)製Eガラス)の配合率を、重量比96:4に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件により、目付が383g/m2、厚みが1.56mm、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂の付着率(乾燥後)が33%の耐熱性布帛を得た。
【0052】
実施例6
単繊維繊度2.0デニール、繊維長51mmのポリフェニレンサルファイドの短繊維(東レ(株)製「トルコン」)と、繊維経5μm、繊維長75mmのガラス繊維(ユニチカグラスファイバー(株)製Eガラス)の配合率を、重量比8:92に変更した他は、実施例1と同一方法、同一条件により、目付が380g/m2、厚みが1.52mm、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂の付着率(乾燥後)が32%の耐熱性布帛を得た。
【0053】
比較例1
単繊維繊度2.0デニール、繊維長51mmのポリフェニレンサルファイドの短繊維(東レ(株)製「トルコン」)を、カーディング法によりウェブを形成し、次いで積層後、ニードルパンチ処理を行い不織布を得た。得られた不織布をカレンダーロールで温度190℃、線圧2940N(300kgf/cm)、クリアランス0mmで熱処理を行ない、厚み1.2mmの不織布を作成した。アクリル樹脂(大日本インキ社製「ボンコートEXPM1119」粘度:320mPa・s)と、メラミン樹脂(大日本インキ社製「ベッカミンAPM」粘度:6240mPa・s)と、水道水(粘度1.0mPa・s)とを25:25:50で配合し、得られた合成樹脂含有媒体(粘度224:mPa・s)を、作成された不織布に含浸した。合成樹脂を含浸した不織布を、含浸前の不織布の重量の120%となるように、マングルで絞った後、220℃で3分間テンターにより乾燥し、目付が384g/m2、厚みが1.50mm、合成樹脂含浸前の不織布に対する合成樹脂の付着率(乾燥後)が34%の耐熱性布帛を得た。
【0054】
【表1】
Figure 0004556318
【0055】
上記実施例1〜6、および、比較例1において得られた耐熱性布帛の特性値のそれぞれは、表1に示される。表1中、「PPS」は、ポリフェニレンサルファイドを、「ケブラー」は、パラ系アラミド繊維(東レデユポン(株)製「ケブラー」)を、それぞれ意味する。
【0056】
表1に記載のデータから分かるように、実施例1〜6の耐熱性布帛は、比較例の布帛に比べ170℃での垂れ下がり長さが短く、170℃でのプリーツの形態保持性が良好であった。
【0057】
実施例1〜6の耐熱性布帛を、石炭ボイラーの排ガスを集塵するための集塵機のプリーツ型フィルターとして用いたところ、高温下でのプリーツの形態保持性に優れるものであった。
【0058】
【発明の効果】
この本発明に係る耐熱性布帛は、ポリフェニレンサルファイド繊維のみからなる不織布に合成樹脂を含浸して形成された布帛に比較して、大幅に向上された高温下での形態保持性を有する。
本発明にかかる耐熱性布帛は、高温下での形態保持性に優れることから、特にプリーツ型フィルターとして好適に用いられる。
【0059】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る耐熱性布帛の垂れ下がり長さを測定する手段を説明する斜視図である。
【符号の説明】
1:測定片
2:測定片の一端
3:測定片の載置ブロック
4:測定片の一端
5:ブロックから突き出た測定片部
6:ブロック3の上面を含む仮想平面

Claims (1)

  1. ポリフェニレンサルファイド繊維と、ガラス繊維、炭素繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、およびポリイミド繊維の群から選ばれた少なくとも1種の繊維とから形成された不織布からなり、該不織布構成繊維の交点が合成樹脂により拘束されてなり、該合成樹脂を加工するときの該合成樹脂含有媒体の粘度が50〜700mPa・sであって、プリーツ状に折り曲げ加工されていることを特徴とする耐熱性布帛。
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