JP4553432B2 - 新規脂環式エポキシ化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な脂環式エポキシ化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、塗料、電気部品、接着剤、複合材料等の架橋構造形成剤として好適に使用できる、新規な脂環式エポキシ化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電気絶縁材、各種注型成型材、塗料等に用いられる架橋構造形成剤として、熱や光で架橋反応を起こす反応性官能基を有する化合物が広く用いられており、近年、その種類及び用途はさらに拡大の傾向にある。例えば、塗料分野においては、高い耐候性を有する硬化物を形成する架橋構造形成剤が強く望まれており、また、電気絶縁材分野においては高い熱変形温度と低い吸水率を有する硬化物を形成する架橋構造形成剤が用いられている。
【0003】
一般に、これら架橋構造形成剤と反応する硬化剤等との架橋反応時に副成物がでない付加反応を行うものが好ましく、且つその使用前においては一定の保存安定性を有する架橋構造形成剤が必要とされている。これら架橋構造形成剤としては、例えば、アリル基やグリシジル基を架橋に関わる反応性官能基として有している化合物が好ましく、実際にこれらの反応性官能基を有する化合物が広く利用されている。
【0004】
例えば、グリシジル基を有する化合物としては、ビスフェノールAから誘導されるジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂が広く用いられている。しかしながら、ビスフェノールA等のフェノール系化合物から誘導されるエポキシ樹脂は、紫外線により変色する等、耐候性に関して低いレベルにあり、屋外での使用には制限がある。
【0005】
また、高い耐候性を有する硬化物を形成するグリシジル基を有する架橋構造形成剤として、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、テレフタル酸ジグリシジルエステル、さらにはトリメリット酸トリグリシジルエステル等、フェノール系以外の化合物から誘導されるグリシジル化合物が提案されている。これらは、硬化物の耐候性が高く、塗料分野において広く用いられている。しかしながら、例えば耐水性に十分ではなく、電気絶縁分野においては吸水性の点で十分ではない。また、これらグリシジルエステル化合物は、一般的にはトリメリット酸等のカルボン酸とエピクロルヒドリンにより製造されており、イオン性塩素、有機結合性塩素、さらにはクロルヒドリン構造となった加水分解性塩素を含有しており、例えば電気絶縁材分野等に用いる場合は制限がある。
【0006】
本発明者らは、高い耐候性及び低い吸水性を有する、塗料及び電気絶縁材に用いることができる架橋構造形成剤に関する検討を行った。本発明者らは、3官能以上の反応性置換基が結合する化合物に着目し、特に高い耐候性を硬化物に付与するトリメリット酸トリグリシジルエステルのその硬化物の有する耐候性、及び耐熱性を保持させ、吸水性を低下させるべく、鋭意検討を行った。
【0007】
その結果、トリメリット酸トリグリシジルエステル等の3官能以上のグリシジルエステル化合物の該グリシジル基を一部又はすべて下記一般式(4)で表される特定の構造を有する脂環式エポキシ基に置換した化合物は、その硬化物が、高い耐候性、耐熱性、及び低吸水性を有することを見出し、塗料や電気絶縁材料等に有用に用いられることを見出した。
【0008】
【化6】
(式中、mは1及び2から選ばれる整数。)
【0009】
しかしながら、例えばトリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物はトリメリット酸又は無水トリメリット酸に対し、例えばアルカリの存在下でエピクロルヒドリンを反応させることにより、収率よく得られることができることは周知であるが、上記特定の構造を有する脂環式エポキシ基をエステル結合を介して有するエポキシ化合物の製造方法は知られていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
【化7】
【0011】
本発明らは、上記に示した特定構造の脂環式エポキシ基をエステル結合を介して含有する新規な脂環式エポキシ化合物の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記脂環式エポキシ基を有するエステル化合物の製造方法に関し鋭意検討した。その結果、上記グリシジル基等のエポキシ基を有しておらず、且つ炭素−炭素不飽和2重結合を有する不飽和脂環基結合させた脂環式エステル化合物に対して、酸化剤を用いて該2重結合をエポキシ化することにより、上記耐候性、耐熱性、及び低吸水性を有する硬化物を形成することができる化合物が得られることを見出し本発明に至った。さらに、2,3−エポキシシクロヘキサノール等のあらかじめエポキシ基を有したアルコール化合物をトリメリット酸トリアルキルエステル等に反応させる方法においても、上記脂環式エポキシ化合物が得られることを見出し本発明に至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の通りである。
1.下記一般式(1)で表される脂環式エステル化合物を酸化剤を用いてエポキシ化反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表される脂環式エポキシ化合物の製造方法。
【0014】
【化8】
【0015】
(式中、nは0または1である。X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数12以下のアルキル基、アリル基、または下記一般式(2)で表される不飽和脂環基であり、X1、X2、X3、及びX4のうち、いずれか1つ以上が該不飽和脂環基であり、且つ該不飽和脂環基とアリル基の数の和が2以上4以下である。)
【0016】
【化9】
(式中、mは1及び2から選ばれる整数を表す。)
【0017】
【化10】
【0018】
(式中、nは0または1である。Y1、Y2、Y3、及びY4はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数12以下のアルキル基、アリル基、グリシジル基、上記一般式(2)で表される不飽和脂環基、または下記一般式(4)で表される脂環式エポキシ基、Y1、Y2、Y3、及びY4のうち、いずれか1つ以上が該脂環式エポキシ基であり、且つ該脂環式エポキシ基とグリシジル基の数の和が2以上4以下である。)
【0019】
【化11】
(式中、mは1又は2から選ばれる整数を表す。)
【0020】
2.酸化剤が過酸化水素であることを特徴とする前記1.記載の脂環式エポキシ化合物の製造方法。
【0021】
3.酸化剤が過カルボン酸であることを特徴とする前記1.記載の脂環式エポキシ化合物の製造方法。
【0022】
4.下記一般式(5)で表されるアルキルエステル化合物と、2,3−エポキシシクロペンタノール及び2,3−エポキシシクロヘキサノールから選ばれる少なくとも1種の脂環式エピノール化合物を反応させるか、又は下記一般式(5)で表されるアルキルエステル化合物と、該脂環式エピノール化合物と2,3−エポキシプロパノールを反応させることを特徴とする請求項1記載の脂環式エポキシ化合物の製造方法。
【化12】
(式中、nは0または1である。また、R 1 、R 2 、R 3 、及びR 4 は、それぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数12以下のアルキル基を表す。)
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる脂環式エステル化合物は、一般式(1)で表され、該式中中のX1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数12以下のアルキル基、アリル基、又は上記一般式(2)で表される不飽和脂環基である。また、該式中のnは0または1である。
【0026】
本発明においては、上記一般式(2)で表される不飽和脂環基が1つ以上含まれることが必須である。特に該不飽和脂環基が2以上が好ましく、例えば上記一般式(1)においてnが0の場合は、X1、X2、及びX3が該不飽和脂環基であることが好ましい。不飽和脂環基の数が増加するに従い、誘導されるエポキシ化合物を硬化してなる硬化物の耐熱性や耐水性及び機械的特性が向上する傾向にある。また、上記一般式(2)中のmは1の場合が、耐熱性や耐水性が向上する点で望ましい。
【0027】
また、本発明においては、上記一般式(1)で表されるX1、X2、X3、及びX4のうち、不飽和脂環基とアリル基の和が2以上4以下である。アリル基は、本発明の製造方法において、通常グリシジル基に変化し、該エポキシ化合物を硬化する際には架橋反応基として作用する。しかしながら、上記に示したように、不飽和脂環基の数が多い方が好ましく、従ってアリル基は、上記一般式(1)中のnが0の場合は2以下であり、好ましくは0が好ましい。また、nが1の場合はアリル基の数は3以下であり、好ましくは1以下が好ましく、特に0が好ましい。
【0028】
本発明においては、上記アルキル基の含まれる個数は、上記一般式(1)において、nが0の場合には0又は1であり、nが1の場合は0〜2である。上記一般式(1)において、例えばnが0の場合に該アルキル基が1を越える場合には、本発明の製造方法により得られる脂環式エポキシ化合物の反応基数が1以下となり、得られる硬化物の機械的強度が低くなる傾向にある。また、該アルキル基の炭素数が12を越える場合には最終的に得られるエポキシ化合物の成型時の粘度が高くなったり、また、得られる硬化物の耐熱性が低下する傾向にある。
【0029】
該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。また、該アルキル基には、エポキシ化合物へ誘導する場合に阻害効果を示したり、最終的に得られるエポキシ化合物からなる硬化物の耐候性や耐水性に影響を及ぼさない範囲で置換基を有してもよい。これら置換基としては、例えばハロゲン基、ニトロ位、ニトリル基、アルコキシル基、等が挙げられる。
【0030】
本発明においては、上記説明した脂環式エステル化合物に対して、酸化剤を用いてエポキシ化反応させることにより、脂環式エポキシ化合物を製造すること特徴とする。本発明で、用いられる酸化剤としては、該脂環式エステル化合物に含有される不飽和脂環基中の炭素−炭素不飽和2重結合をエポキシ化できるものであれば特に制限はない。これら酸化剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキセンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過蟻酸、過酢酸、過プロピオン酸、トリフルオロ過酢酸、m−クロロ過安息香酸等の過カルボン酸類、過酸化水素及び分子状酸素等が挙げられる。
中でも、反応性、選択性、精製が容易等の点で、酸化剤は過酸化水素、又は過カルボン酸類であることが好ましい。
【0031】
炭素−炭素不飽和2重結合をエポキシ化する他の方法として、例えば、該2重結合部にクロロヒドリンを付加させたハロヒドリン化合物を一旦生成させ、ついでアルカリで脱塩酸することによりエポキシ化合物を得るハロヒドリン法が一般的に知られている。しかしながら、該ハロヒドリン法の場合、例えば後段の脱塩酸工程後に未反応のハロヒドリン構造が得られるエポキシ化合物中に残留し、加水分解性ハロゲンが生成物中に残留する傾向にある。特に、本発明で得られる脂環式エポキシ化合物は沸点が高く、通常の蒸留操作が困難であり、上記ハロヒドリン構造が不純物として含有される場合には精製が困難となる。
【0032】
以下、該酸化剤が過酸化水素の場合の説明をする。
酸化剤が過酸化水素の場合は、通常、各種エポキシ化触媒が併用して用いられる。該エポキシ化触媒としては、上記2重結合に対するエポキシ化が過酸化水素の存在下で十分に進行するものであれば、本発明では公知のものが使用でき、特に制限はない。例えばチタノシリカライト等のチタン系化合物(例えば、当業者であれば周知である、チタンをシリカに担持させた市販触媒TS−1)、タングステン酸やその塩、燐タングステン酸やその塩等のタングステン含有化合物、モリブデン酸やその塩、燐モリブデン酸やその塩等のモリブデン含有化合物、ヘテロポリ酸、バナジウム含有化合物、レニウム含有化合物、コバルト含有化合物、砒素系化合物、硼素系化合物、アンチモン系化合物、遷移金属ポルフィリン錯体等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよく、また、タングステン酸やモリブデン酸又はそれらの塩をエポキシ化触媒として用いる場合は、燐酸等の酸類を併用して用いても良い。
【0033】
これら触媒の使用量は、通常、本発明の脂環基含有化合物100重量部に対し、0.001〜30重量部、望ましくは0.01〜20重量部の範囲とすることが適当である。
【0034】
本発明においては過酸化水素と上記触媒とを用いたエポキシ化を行う場合は、溶媒を用いることが、反応速度が速く、且つ反応液の取り扱いが容易である点で望ましい。この際、用いる溶媒は、該前駆体や得られるエポキシ化物に対し、通常約0.1重量%以上の溶解度があり、副成物を発生させないものであれば特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類が使用できる。これら溶媒の使用量は特に制限はないが、通常、本発明の脂環基含有化合物1gあたり、0.1〜200mlの範囲である。
【0035】
また、用いる過酸化水素は、濃度が0.01〜100%の状態のものが好適に用いられるが、通常、5〜80%、望ましくは25〜70%の水溶液の状態のものが、工業的に容易に入手でき、また特殊な設備等を必要としない点で最も好適に使用できる。該過酸化水素の使用量は、原料として用いる脂環式エステル化合物中の炭素−炭素2重結合に対し、理論的には1当量であるが、通常1.01〜1:10、望ましくは1:1.01〜1:2の範囲で使用される。
【0036】
上記触媒、溶媒、及び過酸化水素の水溶液を用いてエポキシ化反応を行うことにより本発明の脂環基含有化合物を得る上記反応は、通常、油相−水相からなる2相系の反応であるため、攪拌効率がエポキシ化反応速度に大きく影響する。本発明では、攪拌速度を速めたり、バッフル付き反応器を用いる等により攪拌効率を高めエポキシ化反応速度を速めることが有用である。
【0037】
また、上記触媒として、燐タングステン酸、タングステン酸ナトリウム等のタングステン含有化合物や、モリブデン含有化合物を用いた場合には、エポキシ化の反応速度を速める目的でオニウム塩等の相間移動触媒を併用することが望ましい。該オニウム塩としては、例えば一般式R1R2R3R4M+Q-(R1〜R4は炭素数1〜50の水酸基を有していても良いアルキル基であり、それぞれ同一又は異なっていてもよい。Mは窒素又は燐を表し、Q-はハロゲンイオン又は無機アニオンを示す。)で表される4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩が挙げられる。該オニウム塩中のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また該ハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン等を、さらに該無機イオンとしては水酸イオン、亜硫酸イオン等が挙げられる。該4級アンモニウム塩の具体例としては、セチルピリジニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、アルキルピコリニウムアンモニウム塩、アルキルイミダゾリン塩等が挙げられる。また、4級ホスホニウム塩の具体例としては、テトラブチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、トリオクチルメチルホスホニウム塩、トリオクチルエチルホスホニウム塩、テトラヘキシルホスホニウム塩等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いられる。これらオニウム塩は、用いる脂環基含有化合物に対し、通常0.001〜30重量%、望ましくは0.01〜15重量%で用いられる。
【0038】
また、上記タングステン酸ナトリウムや燐タングステン酸等のエポキシ化触媒と上記相関移動触媒とを混合することによりタングステン酸オニウム塩等を調整しておき、ついで、反応系に添加する方法を用いてもよい。
【0039】
上記、油相−水相からなる2相系においてエポキシ化反応を行う場合、過酸化水素が含まれる水相側は、pHが0.3〜6、さらには0.5〜5、特に1.0〜4の範囲であることが望ましい。pHが6以上の場合はエポキシ化反応速度が遅く、また、pHが0.3以下の場合は、生成したエポキシ基が反応系内で開裂する傾向にあるため望ましくない。上記水相のpHは、例えば燐酸や塩酸により調整することができる。
【0040】
上記過酸化水素を用いる反応は、過酸化水素の自己分解速度が低く抑えられる温度範囲であれば特に制限はないが、例えば、5〜80℃、特に10〜75℃、さらには15〜70℃の範囲が望ましい。また、該反応は常圧で行ってもよいし、例えばオートクレーブ中で加圧下で行ってもよい。反応時間は、用いる本発明の脂環式化合物や触媒量、過酸化水素濃度及び温度等の反応条件によっても左右されるが、通常、0.5〜500時間、望ましくは0.5〜100時間の範囲が適当である。
【0041】
以上説明した合成法により得られる反応生成物は、濾過、溶媒抽出法、水洗浄、アルカリ水による洗浄法、シリカゲル等を用いたカラム分離法、イオン交換樹脂による精製法、冷却沈降法等の一般に周知の手段を組み合わせることにより容易に精製できる。
【0042】
また、本発明においては、上記一般式(5)で表されるアルキルエステル化合物と、下式で表される脂環式エピノール化合物である、2,3−エポキシシクロペンタノール及び2,3−エポキシシクロヘキサノールから選ばれる少なくとも1種の脂環式エピノール化合物、又は該脂環式エピノール化合物と下式(6)で表される2,3−エポキシプロパノール等のエピノール化合物を用いてエステル交換反応させることにより、上記一般式(1)で表される脂環式エポキシ化合物を得る方法を提供できる。
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
上記一般式(5)中、R1、R2、R3、及びR4は、炭素数12以下の該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。これらR1、R2、R3、及びR4で表されるアルキル基は、同一であってもよく、各々独立に異なっていても良い。
【0046】
上記エステル交換反応においては、該アルキル基は反応後にアルコール化合物として脱離する。一般的にエステル交換反応は平衡反応であり、平衡を生成物側に有利にするために、原料として用いるエピノール化合物の量を当量と比較し比較的多く用いたり、生成する該アルキル基由来のアルコール化合物を反応系外に除去した場合に、反応速度やエステル化合物の収率が増加する。従って、本発明においては、反応の結果生成する該アルキル基由来のアルコール化合物が、例えば減圧法等で反応系外へ除去できるものが望ましく、そのようなアルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が望まく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が望ましい。
【0047】
また、該アルキル基には、エステル交換反応に際し反応の阻害効果を示さない範囲で置換基を有していてもかまわない。これら置換基の例としては、例えばハロゲン基、ニトロ位、ニトリル基、アルコキシル基、等が挙げられる。
【0048】
本発明の脂環式エポキシ化合物の製造方法において、用いられる上記原料となるアルコール化合物の使用量は、量論的には原料エステル化合物に対し3倍モルであるが、エステル交換反応の平衡を生成系に有利にするため、通常3倍モル以上100倍モル以下が好ましく、さらには3.3倍モル以上60倍モル以下、特に6倍モル以上24倍モル以下が好ましい。しかしながら、例えば、グリシジル基と脂環式エポキシ基を同時に含有するような本発明の脂環式エポキシ化合物を製造する場合には、2,3−エポキシプロパノール及び脂環式エピノールを所望の比率となるように同時に仕込んでもよいし、一方の原料のみでエステル交換反応をしておき、後工程としてもう一方の原料エピノール化合物を用いてエステル交換をして製造してもよく、このように2段で反応させる場合には、所望の構造の脂環式エポキシ化合物が得られれば、上記エピノール化合物の使用量に限定されるものではない。
【0049】
また、本発明の製造方法で用いられる上記一般式(3)で表される化合物は、酸価が0.1当量/100g以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.005当量/100g以下、特に好ましくは0.001当量/100g以下である。本発明では該酸価が0である場合が最も好ましいが、上記一般式(3)で表される化合物は、通常、未反応の残留カルボン酸基や加水分解して生成したカルボン酸基を含有する化合物が不純物として含有されており、該カルボン酸に由来する酸価を有している場合が殆どである。該酸価が0.1当量/100gを越えるような高い値の場合には、原料に用いるエピノール化合物のエポキシ環が、開裂、さらには重合し、分離困難な高沸物が生成する傾向にある。
【0050】
上記本発明でいう酸価とは、化合物100g中に含有される含有酸当量であり、「官能基別有機化合物定量法の実際」(ヴァイス著、江島昭訳、廣川書店発行、初版)第1部第5章記載の方法で定量される。具体的には、本発明で用いられる酸価は、フェノールフタレインエタノール溶液を指示薬として用い、試料Wgを2−プロパノール25mlに溶解し、氷水で冷却しながら、予め規定度を求めたN規定の水酸化ナトリウムアルコール性溶液(2−プロパノールの体積:水の体積=1:1)により滴定を行い、終点における該水酸化ナトリウムアルコール性溶液の滴定量Amlから、下式により求める。
酸価(当量/100g)=(A×N)/(10×W))
【0051】
本発明の上記エステル交換による製造方法においては、一般に使用される公知のエステル交換触媒が好適に使用できる。
【0052】
そのような触媒としては、例えばアルカリ金属類の水素化物類、酸化物類、水酸化物類、アルコレート類、アミド類又は塩類が挙げられる。該アルカリ金属類としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムが挙げられ、特にリチウム、ナトリウム、及びカリウムが好適に使用できる。本発明においては、用いるエピノール化合物によるアルコレート類を用いてもよい。また、アルカリ金属類の塩類としては有機酸類又は無機酸類のものであり、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、ステアリン酸塩、炭酸塩類、炭酸水素塩類、リン酸塩、硼酸塩、C1〜C4の第一錫酸塩類又はアンチモン酸塩類、第二錫酸塩等が挙げられる。本発明においては、これらの中で、アルカリ金属類の水酸化物類、酸化物類、アルコレート類、炭酸塩類、炭酸水素塩類が特に好適に使用でき、アルコレート類、水酸化物類、がさらに好適に使用できる。これら触媒は、本発明においては、反応させる反応混合物に対し、通常、0.0001〜20重量%、好適には0.001〜10重量%、特に好適には0.005〜5重量%の量で使用される。
【0053】
また、クラウンエーテル類やポリエチレングリコール類等のアルカリ金属化合物を錯体にさせる物質を加えて用いてもよい。このような錯体形成剤はアルカリ金属化合物に対し、0.1〜200モル%の範囲で使用できる。
【0054】
また、本発明の製造方法でにおいて、チタン、錫またはジルコニウムの塩類又は錯体類を触媒として好適に使用することもできる。このような触媒系の例としては、チタンアルコキシド類、酢酸チタン、アセチルアセトン酸チタン、ブチル錫酸、錫アルコキシド類、ジメチル錫、酸化ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫、水素化トリブチル錫、塩化トリブチル錫、ジルコニウムアルコキシド類、ジルコニウム(IV)ハライド類、硝酸ジルコニウム類、アセチルアセトン酸ジルコニウム、等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、又は一種以上の混合物で用いても構わない。上記各アルコキシド類としては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等が挙げられる。本発明においては、チタンアルコキシド類、、錫アルコキシド類、酸化ジブチル錫、ジルコニウムアルコキシド、が特に好適に使用でき、チタンアルコキシド類、酸化ジブチル錫がさらに好適に使用できる。本発明においては、これら触媒の使用量は反応混合物に対し、0.01〜20重量%、好適には0.1〜10重量%の範囲である。
【0055】
また、本発明の製造方法で使用できる触媒として、米国特許第4062884号に記載されているような、窒素含有塩類を使用しても良よい。これらの例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、メチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等である。これらは、本発明においては、反応混合物に対し0.0001〜10重量%の範囲で使用できる。
【0056】
さらに、本発明の製造方法において使用できる触媒として、タリウム化合物、例えば、酸化物類、水酸化物類、炭酸塩類、臭化物類、塩化物類、フッ化物類、シアン酸塩類、ホスホン酸塩類、酢酸塩類、硝酸塩類、タリウムメチレート、タリウムエチレート、等が使用できる。これらの使用量は、一般的に反応混合物に対し0.0001〜10重量%である。
【0057】
さらに、本発明で使用できる触媒として、第3級アミン類や第4級アンモニウム基を官能基として有するイオン交換樹脂や、酸化アンチモン等のアンチモン系化合物類、酢酸マンガン等のマンガン系化合物類、トリブチルホスフィンやトリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリメチルアルシン、トリブチルアルシン、トリフェニルアルシン等のアルシン類、トリフェニルスチビン等のスチビン類、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物類、ジフェニルセレニド等のセレン化合物類、トリフェニルホスホニウムハライド(塩素又は臭素)、テトラフェニルホスホニウムハライド(塩素、臭素、又は沃素)、テトラフェニルアルソニウムハライド(塩素、臭素、及び沃素)等のオニウム塩が挙げられる。
【0058】
本発明のエステル交換による製造方法、反応温度は、通常、50〜200℃の範囲である。好適な温度範囲は70〜170℃、特に好適には80〜150℃の範囲である。温度が200℃を越える場合には、エピノール化合物のエポキシ環が開裂する等の副反応が起こる傾向にあり収率が低下する。また、50℃以下では反応速度が遅く、工業的生産性が低い。該反応温度は、一定で行っても構わないし、段階的又は連続的に温度を変化させる方法で温度制御を行ってもよい。
【0059】
また、本発明の反応系は加圧系、常圧系、又は減圧系である。特に本発明の望ましい方法は常圧又は減圧系であり、例えば常圧から徐々に減圧状態にすることにより、エステル交換により生成するアルキルアルコール類を反応系から除去することにより平衡反応を生成系に有利にする方法が望ましい。
【0060】
また、常圧系で反応を行う際には、反応雰囲気下や反応液中に窒素等の不活性ガスをバブリングしたり、反応雰囲気下に対する液面積を増加させる等、公知の方法により反応液中からエステル交換により生成するアルキルアルコール類を除去することが、反応生成速度及び収率を向上させる点で望ましい。また、本発明においては、原料に用いる上記一般式(5)で表されるエステル化合物の転化率が30%以上、さらには50%以上、特に70%以上まで常圧で反応させ、ついで減圧にすることにより転化率を向上させる方法を行ってもよい。
【0061】
また、減圧で反応を実施する際は、原料として用いるエピノール化合物が、反応の結果生じるアルキルアルコール類と同時に反応系から除去される傾向となる場合には、反応系内に原料エピノール化合物が不足しないように注意する必要がある。
【0062】
減圧時の真空度は、該エステル交換により生成するアルキルアルコールの蒸気圧や原料として用いるエピノール化合物、さらには反応温度にも左右されるが、通常、0.01torr〜常圧、の範囲であり、特に1torr以上が好適である。
【0063】
また、本発明においては、上記減圧法を実施した場合には、特に反応後期もしくは反応終了後に最も高真空にすることにより、反応系に残留する原料に用いた過剰のアルコール化合物の余剰分やエステル交換の結果生じたアルキルアルコール類を反応系から除去してもよい。
【0064】
さらに、本発明においては上記エステル交換反応時に、反応を阻害したり、生成物に影響を及ぼさない範囲で、溶媒を用いても構わない。このような溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素類やこれらのハロゲン化物等である。
【0065】
本発明においては、上記エステル交換反応において得られる本発明の化合物がその用途において悪影響を及ぼさない範囲で、原料エピノール化合物やエステル交換で生じるアルキルアルコール類、及び触媒が残留していても構わない。また、触媒は水等の各種溶剤での洗浄、液−液抽出法、不均一触媒の場合は濾過法、イオン交換樹脂法、シリカゲル等による吸着法等の公知の方法により除去することができる。また、これら触媒の除去を行う際には、反応生成物を溶媒で希釈して実施してもよい。該溶媒は、生成物を変性させないものであれば特に制限はなく、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類や、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、塩化メチレンやクロロホルム等のハロゲン化炭化水素等が好適に使用できる。
【0066】
以上説明した方法により、新規な構造を有する脂環式エポキシ化合物を高収率で得ることができる。
以下、本発明を実施例により説明する。
【0067】
【実施例】
1.核磁気共鳴スペクトル
反応生成物の核磁気共鳴スペクトルは、テトラメチルシランを基準物質とし、重クロロホルムを溶媒として用いて、日本電子製JNM−α400(400MHz)で1H−NMRスペクトルのデータを得た。
【0068】
2.赤外吸収スペクトルの測定(IR)
反応生成物を臭化カリウム板に塗布し、Nicolet Instrument Corporation社製FT−IRスペクトロメーター、Impact400Dで測定した。
【0069】
3.液体クロマトグラフィーの測定
試料をメタノールに溶解した溶液を、下記条件で展開・検出することにより分析を行った。
検出器 :島津製作所社製SPD−6A
検出波長 :254nm
展開液 :メタノール/水=8/2(体積比)
展開液流速:1ml/分
カラム :日本分光社製Finepak SIL C18S
カラム温度:40℃
【0070】
4.エポキシ当量の測定
化合物0.5000g、n−プロピルアルコールを50ml、ベンジルアルコール3ml、及びヨウ化カリウム0.2gを蒸留水に溶解した溶液をを混合し、加熱することにより還流させ、ついで、指示薬としてBTB溶液を添加し、0.1Nの塩酸を用いて、滴定を行うことで当量点を求める、指示薬滴定法によりエポキシ当量を測定した。
【0071】
実施例1
<原料脂環式エステル化合物の合成>
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管、及び蒸留用冷却管付きト字管を付した500mlの4つ口フラスコに、酸価0.00004当量/100gであるトリメリット酸トリメチルを126g(0.50モル)、3−ヒドロキシシクロヘキセンを294g(3.0モル)、水酸化リチウムを0.6g(0.025モル)を仕込んだ。ついで、上記窒素導入管の先端を反応液内に入るように設定し、窒素ガスを流すことにより液をバブリングした。
【0072】
攪拌しながら、反応液温度が95℃になるようにフラスコを加熱し、95℃において6時間、105℃で3時間、115℃で3時間反応させた。この間、蒸留用冷却管を通じ、3−ヒドロキシシクロヘキセンを含有するメタノールが留出した。ついで、窒素のバブリングを停止し、蒸留用冷却管の先端からトラップを介し、減圧ラインを設置し、温度を115℃に保持したまま、10torrまで約4時間かけて真空度を低下させ、10torrにおいて2時間保持した。
【0073】
反応終了後、フラスコ温度を室温に冷却し、ヘキサン200mlを添加し、生成物を溶解後、1リットルの分液ロートへ移し、さらにヘキサン150mlを添加した。そして、蒸留水300mlで加えヘキサン層を洗浄する操作を5回行った。得られたヘキサン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレートすることによりヘキサンを除去した結果、淡黄色の粘性液体を224g得た。
【0074】
液体クロマトグラフィーの測定の結果、原料のトリメリット酸トリメチルは全く観測されず、転化率は100%であった。さらに、検出されたピーク全体の面積に対する主生成物ピークの面積比は96%であった。
【0075】
上記得られた化合物のIR測定結果を図1に示した。さらに、各磁気共鳴スペクトルの測定を行い、下記に示す結果を得た。また、得られたスペクトルを図2に示した。参考に、原料に用いたトリメリット酸トリメチルの核磁気共鳴スペクトルを図3に示した。
【0076】
<1H−NMRスペクトル>
δ(ppm):7.70〜8.60(3H、芳香環中の炭素原子上にあるプロトン)
δ(ppm):5.80〜6.15(6H、脂環基中の炭素−炭素不飽和2重結合を形成する炭素上のプロトン)
δ(ppm):5.45〜5.60(3H、脂環基中のエステル酸素原子に結合する炭素上のプロトン)
δ(ppm):0.80〜2.25(18H、脂環基中の炭素−炭素不飽和2重結合を形成しておらず且つエステル酸素原子に結合していない炭素原子上のプロトン)
δ(ppm):7.25〜7.30(測定時に用いた溶媒クロロホルムに由来するプロトン)
以上の結果から、上記反応で得られた粘性液体は下式(7)で得られる脂環式エステル化合物である。
【0077】
【化15】
【0078】
<過カルボン酸による脂環式エポキシ化合物の合成>
上記得られた化合物4.50gを100mlのクロロホルムに溶解し、該溶液を水で冷却しながら、乾燥m−クロロ過安息香酸1.90gを添加し、室温中で、12時間攪拌した。
【0079】
反応終了後、上記反応液に1.1gの水酸化カルシウムを添加し、1時間攪拌後、該溶液を濾過処理し、ついでクロロホルムを減圧除去することにより、無色透明な高粘性液体4.92gを得た。
【0080】
該化合物のエポキシ当量を測定したところ、171g/当量であり、エポキシ化合物が生成していた。
【0081】
また、得られた化合物のIR測定結果を図4に示した。さらに核磁気共鳴スペクトルの測定を行い、以下の結果を得た。また、得られたスペクトルを図5に示した。
【0082】
<1H−NMRスペクトル>
δ(ppm):7.70〜8.60(3H、芳香環中の炭素原子上にあるプロトン)
δ(ppm):5.25〜5.50(3H、脂環基中のエステル酸素原子に結合する炭素上のプロトン)
δ(ppm):3.20〜3.55(6H、脂環基中のエポキシ酸素に結合する炭素上のプロトン)
δ(ppm):0.90〜2.20(18H、脂環基中のエポキシ酸素に結合しておらず且つエステル酸素原子に結合していない炭素原子上のプロトン)
δ(ppm):7.25〜7.30(測定時に用いた溶媒クロロホルムに由来するプロトン)
以上の結果から、上記反応で得られた粘性液体は下式(8)で得られる脂環式エステル化合物である。
【0083】
【化16】
【0084】
実施例2
<過酸化水素による脂環式エポキシ化合物の合成>
攪拌装置、温度計を付した500mlの三口フラスコに、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を1.649g(5ミリモル)、30%過酸化水素水51.0gを入れ、黄色溶液を作成した。ついで、85%リン酸水溶液を添加し、該水溶液のpHを1.8に調整した。
【0085】
一方、トルエン400ml、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl(アルドリッチ社製、Aliquat336)1.617g(4ミリモル)、及び実施例1で得られた脂環式エステル化合物45.0g(0.1モル)からなる均一溶液を調整した。これを上記水溶液に滴下ロートを用いて、約30分かけて滴下した。滴下終了後、42℃の高温槽中で攪拌し、約36時間かけて反応を終了させた。
【0086】
反応終了後、分液ロートを用いてトルエン層を分離し、1Nのチオ硫酸ナトリウム水溶液100ml、蒸留水300ml、1Nの炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、蒸留水400mlの順で該トルエン溶液を洗浄した。
【0087】
この用にして得られたトルエン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過により無水硫酸マグネシウムを除去し、該溶液に200mlのトルエンを加えて希釈し、さらに乾燥シリカゲルを400g加えた。1時間攪拌後、濾過により該シリカゲルを除去し、濾液として得られたトルエン溶液をエバポレートすることによりトルエンを除去し、ほぼ無色に近い透明な高粘性液状の化合物を48.8g得た。液体クロマトグラフィーの分析の結果、主生成物の純度は95.1%であった。また、エポキシ当量の測定の結果、172g/当量であった。
【0088】
また、得られた液体のIRスペクトルの測定、及び核磁気共鳴スペクトルの測定結果、実施例1で得られたエポキシ化合物と同じスペクトルを示した。
【0089】
実施例3
<脂環式エピノールによるエポキシ化合物の合成>
攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管、及び蒸留用冷却管付きト字管を付した500mlの4つ口フラスコに、酸価0.00002当量/100gであるトリメリット酸トリメチルを126g(0.50モル)、2,3−エポキシシクロヘキサノールを342g(3.0モル)、水酸化リチウムを1.2g(0.05モル)を仕込んだ。ついで、上記窒素導入管の先端を反応液内に入るように設定し、窒素ガスを流すことにより液をバブリングした。
【0090】
攪拌しながら、反応液温度が90℃になるようにフラスコを加熱し、90℃において2時間、100℃で1時間、110℃で2時間反応させた。
【0091】
ついで、窒素のバブリングを停止し、蒸留用冷却管の先端からトラップを介し、減圧ラインを設置し、温度を110℃に保持したまま、10torrまで約1時間かけて真空度を低下させ、10torrにおいて30時間保持した。
【0092】
反応終了後、フラスコ温度を室温に冷却し、ヘキサ300mlを添加し、生成物を溶解後、1リットルの分液ロートへ移し、さらにヘキサン150mlを添加した。そして、蒸留水300mlで加えヘキサン層を洗浄する操作を5回行った。得られたヘキサン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレートすることによりヘキサンを除去した結果、淡黄色の粘性液体を247g得た。
【0093】
液体クロマトグラフィーの測定の結果、原料のトリメリット酸トリメチルは全く観測されず、転化率は100%であった。さらに、検出されたピーク全体の面積に対する主生成物ピークの面積比は97%であった。
また、エポキシ当量の測定の結果、176g/当量であった。
また、得られた液体のIRスペクトルの測定、及び核磁気共鳴スペクトルの測定結果、実施例1で得られたエポキシ化合物と同じスペクトルを示した。
【0094】
【発明の効果】
本発明により、特定構造を有する新規な脂環式エポキシ化合物の製造方法を提供することができる。得られる脂環式エポキシ化合物は、その硬化物に優れた耐候性、耐熱性、及び耐水性を付与することができ、例えば電気部品、接着剤、塗料、複合材料等の架橋構造形成剤として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた脂環式エステル化合物の赤外吸収スペクトル図である。
【図2】実施例1で得られた脂環式エステル化合物の核磁気共鳴スペクトル図である。
【図3】実施例1で原料として用いたトリメリット酸トリメチルの核磁気共鳴スペクトル図である。
【図4】実施例1で得られた脂環式エポキシ化合物の赤外吸収スペクトル図である。
【図5】実施例1で得られた脂環式エポキシ化合物の核磁気共鳴スペクトル図である。
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表される脂環式エステル化合物を酸化剤を用いてエポキシ化反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表される脂環式エポキシ化合物の製造方法。
- 酸化剤が過酸化水素であることを特徴とする請求項1記載の脂環式エポキシ化合物の製造方法。
- 酸化剤が過カルボン酸であることを特徴とする請求項1記載の脂環式エポキシ化合物の製造方法。
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