JP4553244B2 - 硫黄含有資材成形体の製造法 - Google Patents
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このような硫黄含有資材の成形体を製造するには、硫黄含有資材の溶融温度が通常120℃以上であるため、120〜160℃程度に保持した溶融硫黄含有資材を、所定の型枠に流し込み成形固化させる方法等が採用される。
この際、得られる成形体の強度を向上させるために、例えば、特許文献1及び2には、溶融硫黄含有資材中の硫黄量と鉱物質粉末や骨材量とを所定割合とし、型枠内の溶融硫黄含有資材に振動を加えながら成形する方法が開示されている。
前記特許文献1及び2において、前記振動を加える方法としては、偏心重錘回転式の振動モーターを利用したテーブル振動機等を利用して、型枠に振動を加えて溶融硫黄含有資材に振動を加える方法が記載されるのみである。要するに、特許文献1及び2には、溶融硫黄含有資材へ型枠を介して間接的に振動を加える方法が記載されているにすぎない。
しかし、このような方法では、溶融硫黄含有資材中の硫黄量と鉱物質粉末や骨材量との割合制御が煩雑になり易く、しかも型枠がある程度大きくなる場合や型枠の形態が複雑である場合等には、型枠へ流し込む際の溶融硫黄含有資材へ侵入した気泡の除去が十分でなく、必ずしも所望の強度が得られるとは限らず、更には、得られる成形体における強度のばらつきが生じる恐れがある。
本発明の製造法は、所定形態の型枠内に流し込んだ溶融硫黄含有資材に、振動装置を用いて振動を加えた後、成形固化するにあたり、前記振動を、棒状の振動部を備える振動装置を用いて、該振動部の外表面温度を120〜160℃に保持した状態で該振動部を型枠に流し込む溶融硫黄含有資材中の少なくとも1箇所に挿入して行うことを特徴とする。
前記型枠の大きさや形態は特に限定されず、製造する硫黄含有資材成形体の用途、例えば、パネル、タイル、床材、魚礁、各種ブロック、土留用壁、擁壁、L型用壁、矢板等の土木、建設用成形体の大きさや形態に合わせて作製することができる。型枠の材質は、溶融硫黄含有資材により侵食等されない材料であれば特に限定されない。
前記改質硫黄は、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄等を硫黄変性剤により重合したものであって、硫黄と硫黄変性剤との反応物であることが好ましい。
前記DCPDとしては、DCPDの単体の他に、シクロペンタジエンの2〜5量体を主体に構成される混合物を用いることもできる。該混合物としては、DCPDの含有量が70質量%以上、好ましくは85質量%以上のものが挙げられ、また、いわゆるジシクロペンタジエンと称する市販品の多くを使用することができる。
前記THIとしては、THIの単体の他に、THIと、DCPDの単体、シクロペンタジエンとブタンジエンとの重合物、及びシクロペンタジエンの2〜5量体からなる群より選択される1種又は2種以上を主体に構成されるものとの混合物を用いることもできる。該混合物中のTHIの含有量は、通常50質量%以上、好ましくは65質量%以上である。該混合物としては、いわゆるテトラハイドロインデンと称する市販品やエチルノルボルネンの製造プラントから排出される副生成油の多くが使用できる。
前記溶融混合は、例えば、インターナルミキサー、ロールミル、ドラムミキサー、ポニーミキサー、リボンミキサー、ホモミキサー、スタティックミキサー等を用いて行うことができる。
ミキサー内で生じる硫黄と硫黄変性剤との初期反応は、硫黄と硫黄変性剤とが反応することで変性硫黄前駆体が生成する発熱反応である。このためミキサー内では急激な発熱が生じないことを確認しながら連続撹拌しミキサー内で130〜160℃まで次第に温度上昇させることが好ましい。
ミキサー内で硫黄と硫黄変性剤とを反応させる際は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量が150〜500の改質硫黄前駆体を生成させ、反応系中において前記改質硫黄前駆体を0.1〜45質量%、特に1〜40質量%生成させることが好ましい。
前記分子量の測定は、硫黄変性剤を加えた硫黄を二硫化炭素やトルエン等に溶かし、GPCにより行うことができる。その測定は、例えば、クロロホルム溶媒を使用し室温において、1ml/分の流速で、二硫化炭素1質量/vol%濃度試料溶液を、UV254Nm検出器を用い、ポリスチレンで測定した検量線により行うことができる。
硫黄改質のための反応終了時期は、溶融物の粘度により決定できる。例えば、140℃における粘度が0.05〜3.0Pa・sの範囲が好ましいが、得られる硫黄固化体基材の強度や製造工程の作業性の観点から、140℃における粘度が0.05〜2.0Pa・sの範囲が総合的に最適である。
また、微粉末として産業廃棄物を使用した場合でも、前述の硫黄材料により無害化することが可能である。
前記溶融硫黄含有資材には、前記改質硫黄や細骨材の他に、例えば、軽石、ビニロン繊維、パーライト等の軽量骨材、各種粗骨材、繊維質充填材、繊維状粒子、薄片状粒子等を含有させることができる。
繊維質充填材としては、例えば、カーボンファイバー、グラスファイバー、鋼繊維、アモルファス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物等が挙げられる。
繊維質充填材の繊維径は、材質により異なるが通常5μm〜1mmが好ましい。繊維形態は、短繊維、連続繊維のいずれでも良いが、短繊維の場合の繊維長は2〜30mmの均一分散が容易な長さが好ましい。連続繊維としては、骨材が通過できるような隙間を空けた格子状であれば良く、織構造又は不織布構造のいずれでも良い。
繊維状粒子としては、平均長さ1mm以下のウォラスナイト、ボーキサイト、ムライト等が挙げられる。
薄片状粒子としては、平均粒度1mm以下のマイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
前記溶融硫黄含有資材には、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、上記以外にも必要に応じて他の成分が配合されていても良い。
前記混合は、含有される溶融状態の改質硫黄の140℃における粘度を0.05〜3.0Pa・sの範囲内に維持しながら行うことが好ましい。前記改質硫黄の粘度は、硫黄の重合進行により時間と共に上昇するので、取り扱いが容易な最適粘度範囲とすることが好ましい。該粘度が0.05Pa・s未満では、得られる硫黄固化体基材の強度が低下し、改質硫黄による改質効果が不十分となるので好ましくない。一方、粘度が高くなるに従い、強度改善効果も高くなるが、3.0Pa・sを超えると溶融混合における撹拌が困難となり、作業性が著しく悪化するので好ましくない。
前記混合に用いる混合機は、混合が十分に行えるものであれば特に限定されず、好ましくは固液撹拌用が挙げられる。例えば、パドルミキサー、インターナルミキサー、ロールミル、ボールミル、ドラムミキサー、スクリュー押出し機、パグミル、ポニーミキサー、リボンミキサー、ニーダー等が使用できる。
前記振動を加える時間は、溶融硫黄含有資材の量等に応じて、気泡を十分除去しうる程度に適宜決定することができる。また、本発明に用いる振動装置が投込み式であるので、例えば、型枠の大きさや形態に応じて、振動を加える箇所は必ずしも1箇所に限定されず、適宜複数箇所で実施することもできる。
実施例1
乾燥後140℃に加熱した製鋼スラグ73.6質量部、乾燥後140℃に加熱した石炭灰8.8質量部及び硫黄変性剤により改質した140℃の溶融改質硫黄17.6質量部を混練し、1000mm×1000mm×450mmの方形型枠に以下の方法で該混練物を流し込み、固化を行った。
型枠の中に前記混練物を流し込みながら、表面にヒーターを具備した棒状振動部を有する投げ込み式振動棒を該混練物中に挿入し、振動を加えながら5分間かけて流し込みを終了し、その後、室温に放置して徐冷・固化した。前記振動棒の外表面温度は、混練物中に挿入している間、140℃程度に制御した。
上記方法で3検体の成形体を調製した。その結果、いずれの場合も型枠への打設中、振動棒への混練物の付着は見られず、終始作業性良く打設が可能であった。また、打設物表面に荒れも少なかった。得られた成形体から100mmΦ×200mmHのコアを抜いて観察したところ、3検体ともに気泡混入による空隙がほとんど見られなかった。また、得られた検体の圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
表1より、本実施例で調製した各検体は、圧縮強度のばらつきが少なく、平均圧縮強度も80.5MN/m2と高かった。
実施例1と同様に混練物を調製し、振動台上にセットした実施例1と同様の型枠に流し込みながら、該振動台により振幅0.30mmの上下振動(30Hz)を型枠に5分間加えて混練物から内部の気泡を除去した。続いて、室温に放置して徐冷・固化した。
上記方法で3検体の成形体を調製し、実施例1と同様にコアを抜き取って観察した。その結果、混練物からの気泡除去は良好に行われたように見えたが、前記各コアには、ところどころに気泡による空隙が存在していた。また、得られた3検体の圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
表1より、各検体の圧縮強度には多少のばらつきが見られた。更に、平均圧縮強度も78.2MN/m2と実施例1より低い値であった。
振動棒を混練物中に挿入している間、該振動棒表面を加熱しなかった以外は実施例1と同様に各検体を調製した。
その結果、型枠への打設中、振動棒により溶融改質硫黄が冷えてくると、混練物が棒に付着し、作業性が低下した。また、得られた打設物の表面に荒れが発生していた。更に、実施例1と同様に成形体からコアを抜き取ったところいずれの検体にも気泡による空隙が多く見られた。更にまた3検体の圧縮強度にはばらつきが見られ、平均圧縮強度も74.7MN/m2と比較例1のものより低かった。
乾燥後140℃に加熱した3号珪砂35.8質量部、乾燥後140℃に加熱した7号珪砂35.7質量部、乾燥後140℃に加熱した石炭灰9.5質量部及び硫黄変性剤により改質した140℃の溶融改質硫黄19.0質量部を混練し、1000mm×1000mm×450mmの方形型枠に以下の方法で該混練物を流し込み、固化を行った。
型枠の中に前記混練物を流し込みながら、棒状の振動部を予め140℃以上に加熱した投げ込み式振動棒を該混練物中に挿入し、振動を加えながら5分間かけて流し込みを終了し、その後、室温に放置して徐冷・固化した。前記振動棒の外表面温度は、混練物中に挿入している間、140℃程度を保持していた。
上記方法で3検体の成形体を調製した。その結果、いずれの場合も型枠への打設中、振動棒への混練物の付着は見られず、終始作業性良く打設が可能であった。また、打設物表面に荒れも少なかった。得られた成形体から100mmΦ×200mmHのコアを抜いて観察したところ、3検体ともに気泡混入による空隙がほとんど見られなかった。また、得られた検体の圧縮強度を測定した。結果を表2に示す。
表2より、本実施例で調製した各検体は、圧縮強度のばらつきが少なく、平均圧縮強度も58.0MN/m2と高かった。
実施例2と同様に混練物を調製し、振動台上にセットした実施例2と同様の型枠に流し込みながら、該振動台により振幅0.30mmの上下振動(30Hz)を型枠に5分間加えて混練物から内部の気泡を除去した。続いて、室温に放置して徐冷・固化した。
上記方法で3検体の成形体を調製し、実施例2と同様にコアを抜き取って観察した。その結果、混練物からの気泡除去は良好に行われたように見えたが、前記各コアには、ところどころに気泡による空隙が存在していた。また、得られた3検体の圧縮強度を測定した。結果を表2に示す。
表2より、各検体の圧縮強度には多少のばらつきが見られた。更に、平均圧縮強度も54.9MN/m2と実施例2より低い値であった。
振動棒の外表面を予め加熱しなかった以外は実施例2と同様に各検体を調製した。
その結果、型枠への打設中、振動棒により溶融改質硫黄が冷えてくると、混練物が棒に付着し、作業性が低下した。また、得られた打設物の表面に荒れが発生していた。更に、実施例2と同様に成形体からコアを抜き取ったところいずれの検体にも気泡による空隙が多く見られた。更にまた3検体の圧縮強度にはばらつきが見られ、平均圧縮強度も51.2MN/m2と比較例3のものより低かった。
Claims (2)
- 所定形態の型枠内に流し込んだ溶融硫黄含有資材に、振動装置を用いて振動を加えた後、成形固化する硫黄含有資材成形体の製造法であって、
前記振動を、棒状の振動部が、表面温度を120℃以上に保持・制御しうる加熱手段を備える振動装置を用いて、該振動部の外表面温度を120〜160℃に保持した状態で該振動部を型枠に流し込む溶融硫黄含有資材中の少なくとも1箇所に挿入して行うことを特徴とする硫黄含有資材成形体の製造法。 - 前記棒状の振動部を溶融硫黄含有資材中の少なくとも1箇所に挿入して振動を加えるにあたり、該振動部の外表面温度を、予め120℃以上に加熱しておくことを特徴とする請求項1記載の製造法。
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