JP4549492B2 - スプレー用繊維製品処理剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアイロンがけの際に使用するスプレー用繊維製品処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
衣料等の繊維製品に対し適度に張り性を与え、且つ形を整える(以下、賦形効果という。)ために使用される家庭用の繊維製品処理剤の1つとして、アイロンがけの際に、繊維製品に直接スプレーして使用するスプレー用繊維製品処理剤が知られている。かつてスプレー方法としては、エアゾール式が普及していたが、高圧ガスを使用することによる安全性の問題や、容器が金属製であることによるゴミの問題が懸念され、家庭用として不都合な点があった。
【0003】
これらの問題点に対し、最近では高圧ガスを使用しない手動式のスプレー用の繊維製品処理剤が開発されている。例えば、特開平9−241973号公報には、カルボキシル基を有する水溶性ポリマーをpH3.5〜7.5の範囲で使用することにより、シリコーン系アイロン滑り剤を用いなくとも良好なアイロン滑り性が得られるスプレー用処理剤が開示されている。また特開平7−119042号公報には水溶性ポリマーと無機塩を含有する処理剤が開示されており、水溶性ポリマーの1つとして、アクリル酸及び又はメタクリル酸のホモ又はコポリマーが挙げられている。更に、特開平11−189768号公報には、親水基含有ポリマーと多価アルコールを含有する化学繊維用帯電防止剤組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来のスプレー用繊維製品処理剤は、十分な賦形効果を与えること及び賦形効果が着用時の高湿度下においても維持できること(以下、保形効果という。)の両者を十分に満足させるものではなかった。また、エアゾール式の場合は、高圧ガスを充填するため金属製の容器を用いるものであり、従って充填される処理剤は、耐腐食性のためpHを8以上にしなければならず、その配合が極めて限定され、賦形効果と保形効果の両者を十分に満足させるのは困難であった。上記の特開平9−241973号公報、特開平7−119042号公報、特開平11−189768号公報に記載された発明は、手動式及びエアゾール式の双方に使用できる処理剤が開示されているが、十分な賦形効果と保形効果の双方を得るために必要な配合組成を開示するものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、スプレー用繊維製品処理剤に関し、高湿度下での蒸れた状態でも衣料の風合いを損なうことなく着心地が良好に保たれるよう賦形効果を維持でき、かつ低湿度下では帯電防止性を衣料へ付与することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重量平均分子量が1万〜100万であり、メタクリル酸由来の構成単位が、全構成単位の60モル%以上を占めるメタクリル酸系重合体(I)〔以下、重合体(I)という〕及び、重量平均分子量が1万〜100万であり、スルホン酸基を有する構成単位が、全構成単位の60モル%以上を占めるスルホン酸系重合体(II)〔以下、重合体(II)という〕を含有し、メタクリル酸系重合体(I)とスルホン酸系重合体(II)の合計が0.1〜20重量%、メタクリル酸系重合体(I):スルホン酸系重合体(II)の重量比が1:9〜9:1であるスプレー用繊維製品処理剤に関する。
【0007】
また、本発明は、上記本発明の繊維製品処理剤を、手動式スプレーヤーを備えた容器に充填してなる繊維製品処理剤物品に関する。
【0008】
なお、ここで言う「構成単位」とは、重合体の原料モノマー1モルに相当する構造である。例えば、「メタクリル酸由来の構成単位」は、重合体中のメタクリル酸又はその塩1モルに相当する構造を指す。また「スルホン酸基を有する構成単位」は、スルホン酸基を有するモノマー1モルに相当する構造を指し、後述のようにスルホン酸基含有モノマーに由来するものでも、重合後、スルホン化することにより導入されたものでも何れでも良い。重合体の全構成単位におけるこれらの構成単位のモル比は、通常、原料モノマーの仕込量(モル比)から容易に算出できる。
【0009】
また、以下、場合により「…酸又はその塩」を「…酸(塩)」と表記する。例えば「メタクリル酸(塩)」は「メタクリル酸又はその塩」を指すものとする。
【0010】
【発明の実施の形態】
<重合体(I)>
重合体(I)は、メタクリル酸由来の構成単位を全構成単位中に60モル%以上、賦形効果の耐湿性の点から、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%有するものである。
【0011】
重合体(I)は、メタクリル酸(塩)の単一重合体であるか、又はメタクリル酸(塩)と下記のビニル系モノマーの共重合体であってもよい。
【0012】
メタクリル酸と共重合可能なビニル系モノマーとしては、アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、ブテン−2−カルボン酸等のカルボキシ基含有モノマー及びこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、マレイン酸及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩が好ましい。また、これらカルボキシ基含有モノマー及びメタクリル酸のカルボキシ基に炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基、N,N−ジメチルアミノブチル基、N,N−ジエチルアミノエチル基、N,N−ジエチルアミノプロピル基、N,N−ジエチルアミノブチル基がエステル結合で連結されたもの、或いはこれらの官能基が炭素数2又は3のオキシアルキレン単位からなるオリゴマー鎖或いはポリマー鎖を介して連結されたものが挙げられる。オキシアルキレン鎖はオキシエチレン鎖が好ましく、付加モル数は2〜200モルが好ましく、10〜100モルがさらに好ましい。これらの中でも、アクリル酸やメタクリル酸に炭素数2〜18の直鎖又は分岐鎖アルキル基、ヒドロキシエチル基、N,N−ジメチルアミノメチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基が直接或いはオキシエチレン鎖を介して連結されたものが好ましい。また、アルキル基の炭素数1〜10のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、ジイソブチレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、n−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、n−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、インデン、酢酸ビニル、N−ビニル−2−カプロラクタム等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数1〜10のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニルが好ましい。
【0013】
重合体(I)の重合法は特に限定されず、従来公知の方法で得られる。例えば、公知のラジカル重合或いはリビングラジカル重合によって合成される。この場合の重合開始剤には、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)その他のアゾ系化合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムその他の過硫酸塩、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、過酸化水素等の過酸化物系化合物、或いは亜硫酸水素ナトリウムと酸素との組み合わせによるレドックス反応が用いられ、重合溶媒には水、有機溶剤、或いはそれらの混合物が用いられる。重合手法例としては、モノマーと重合開始剤とを一括して重合溶媒に仕込んで加熱して重合させる方法、モノマーを含む溶液と開始剤を含む溶液とを既に加熱されている重合溶媒に1〜10時間掛けて滴下して仕込み、加熱を続けて重合させる方法等である。この場合、重合終了時に均一溶液を保つ場合と精製ポリマーが析出してくる場合とがあり、いずれでも構わない。これらの重合系には、分子量を適度に低下させるための連鎖移動剤として、炭素数1〜6の飽和脂肪族1価〜多価アルコール、或いはドデカンジオール、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、チオ酢酸等のメルカプタン類を共存させることもできる。
【0014】
なお、マレイン酸、イタコン酸、或いはクロトン酸を共重合する場合には、それらを一部中和して加熱して溶解してある水溶液に、メタクリル酸とその他のモノマーと重合開始剤とを1〜10時間掛けて仕込み、さらに加熱を続けて行う重合方法もある。さらに、ポリメタクリル酸及びその塩とも任意の割合で混合して使用することもできる。メタクリル酸又は塩のいずれを用いて重合しても良いし、重合後に中和によってメタクリル酸塩としても良い。
【0015】
重合体(I)は、重量平均分子量1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜25万のものが使用される。分子量が1万以上であれば十分な賦形効果が得られ、100万以下であればミストの細かさや、液だれ・ボタ落ち等の点で良好なスプレー特性が得られる。なお、重合体(I)の重量平均分子量は、ポリエチレングリコール(以下PEGと記載)を標準物質とした場合の重量平均分子量であり、ゲル浸透式液体クロマトグラフィ(以下GPCと記載)法で測定される。
【0016】
重合体(I)は、異なる重合方法によって得られらた重合体や異なる重量平均分子量の重合体を任意の割合で混合して使用することもできる。また、上記の重合体もしくは共重合体の製造にあたっては、メタクリル酸は酸もしくは塩のいずれを用いて重合しても良いし、重合後に中和によって塩としても良い。重合体(I)の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニア、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン類の塩、テトラエチルアンモニウム、セチルピリジニウム等の4級アンモニウム塩等の化合物を単独又は混合して使用できる。中でもナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩が好ましい。
【0017】
<重合体(II)>
重合体(II)は、スルホン酸基を有する構成単位が、全構成単位の60モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%を占める。重合体(II)のスルホン酸基は塩の形態であってもよい。
【0018】
重合体(II)は、スルホン酸基を有するビニル系モノマーの1種以上からなる単一重合体または共重合体であってもよく、前記モル比を満たす限り、スルホン酸基を有するビニル系モノマーの1種以上のスルホン酸基を有さないビニル系モノマーの1種以上の共重合体であってもよい。具体的には、以下の方法(イ)又は方法(ロ)によって得ることができる。
【0019】
・方法(イ)
スルホン酸基を有するビニル系モノマーをモノマー(A)とし、またモノマー(A)と共重合可能であり且つスルホン酸基を有さないビニル系モノマーをモノマー(B)とするとき、方法(イ)は、モノマー(A)の1種以上を単一又は共重合するか、或いは1種以上のモノマー(A)と1種以上のモノマー(B)とを共重合する方法である。
【0020】
(イ)の方法で用いるモノマー(A)としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、α−メチルスチレンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸、インデンスルホン酸及びこれらの塩等が挙げられる。(イ)の方法で用いるモノマー(B)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、n−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、インデン、ブタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましく、さらに(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びこれらの塩、スチレンが好ましい。(イ)の方法において、1種以上のモノマー(A)のみからなる単一または共重合体としては、ポリスチレンスルホン酸(塩)が好ましく、またモノマー(A)とモノマー(B)とを共重合させて共重合体を得る場合の組み合わせとしては、スチレンスルホン酸とアクリル酸、スチレンスルホン酸とスチレン、アリルスルホン酸とアクリル酸の組み合わせが好ましい。
【0021】
・方法(ロ)
スルホン酸基を有しないが、重合後スルホン化することが可能なビニル系モノマーをモノマー(A’)とし、モノマー(A’)と共重合可能な他のビニル系モノマーをモノマー(C)とするとき、方法(ロ)は、1種以上のモノマー(A’)を単一重合又は共重合した後スルホン化するか、1種以上のモノマー(A’)と1種以上のモノマー(C)とを共重合した後にスルホン化する方法である。
【0022】
(ロ)の方法で用いるモノマー(A’)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、インデン等を挙げることができ、これらの中でもスチレンが好ましい。(ロ)の方法で用いるモノマー(C)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ブテン、n−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、ブタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。(ロ)の方法において、重合体のスルホン化は例えば下記の方法によって行うことができる。まず、モノマー(A’)の単一又は共重合体又はモノマー(A’)とモノマー(C)の共重合体、例えばポリスチレン、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・ジイソブテン共重合体、スチレン・ビニルトルエン共重合体、α−メチルスチレン・インデン共重合体を得る。
これらの中でもポリスチレンが好ましい。次に得られたポリマーを常法により、無水硫酸、クロルスルホン酸、無水硫酸・ルイス塩基錯体等のスルホン化剤を用いてスルホン化することによって、最終的にスルホン酸基が導入された重合体を得ることができる。なお、このような後からスルホン化することによって得られる重合体(II)の場合、前記モル比率は、スルホン化された部位を有するモノマー(A’)を構成単位として求められる。
【0023】
本発明の重合体(II)は、市販の重合体を使用してもよい。例えばスチレンスルホン酸(塩)の構成単位を有する重合体が、東ソー(株)よりPS−1、PS−5、PS−35又はPS−50として、またライオン(株)よりポリティPS−2000として市販されており、本発明ではこれらを用いても優れた効果を得ることができる。
【0024】
重合体(II)は、重量平均分子量1万〜100万、好ましくは2万〜50万、より好ましくは10万〜25万のものが使用される。分子量が1万以上であれば十分な賦形効果が得られ、100万以下であればミストの細かさや、液だれ・ボタ落ち等の点で良好なスプレー特性が得られる。なお、重合体(II)の重量平均分子量は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算の重量平均分子量であり、GPC法で測定される。
【0025】
重合体(II)は、異なる重合方法によって得られらた重合体や異なる重量平均分子量の重合体を任意の割合で混合して使用することもできる。塩については重合体(I)と同様である。
【0026】
<スプレー用繊維製品処理剤>
本発明の処理剤は、重合体(I)と(II)とを、重合体(I)と(II)の合計で0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%の比率で含有する。賦形効果とスプレー特性及びコストを鑑み、配合量はこの範囲で任意に設定することができる。また、本発明の処理剤は、重合体(I)と(II)とを、(I):(II)=1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2の重量比で含有する。重量比がこの範囲であれば、帯電防止性と賦形効果の耐湿性が両立できる。
【0027】
また、本発明のスプレー用繊維製品処理剤の20℃におけるpHは3.0〜7.0であると賦形効果の耐湿性が向上し、さらに3.5〜6.0であると耐湿性が格段に向上するので好ましい。
【0028】
本発明のスプレー用繊維製品処理剤には、アイロン滑り成分を配合することが好ましい。アイロン滑り成分としては、シロキサン結合を分子内に有する化合物や炭化水素系化合物がある。シロキサン結合を有する化合物としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサンやこれらの一部がアミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、長鎖アルキル変性、ポリエーテル変性等の1種類以上の官能基で変性されているものが挙げられる。これらの中でもポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。また、特開昭58−126378号公報に開示されているビニル基含有オルガノポリシロキサンとSi−H基含有オルガノポリシロキサンとビニルモノマーの共重合体や特開平7−243173号公報に開示されているオルガノポリシロキサン鎖を側鎖として有するビニルポリマーも使用できる。これらは適当な界面活性剤により水中で乳化状態にあるものや自己乳化性の物質が好ましく配合される。長期保存安定性を考慮するとこれらの乳化粒子は粒子径0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.1μm、さらに好ましくは0.01〜0.08μmの範囲である。また、炭化水素系化合物としては、分岐炭素鎖を有するアルコールのエトキシレートや2級アルコールのエトキシレートやプルロニック型(旭電化商標)非イオン性界面活性剤が挙げられる。分岐炭素鎖を有するアルコールのエトキシレートとしては、アルコール部分の炭素数が8〜20でオキシエチレン鎖の平均付加モル数が15〜80の範囲のものが好ましい。2級アルコールのエトキシレートとしては、アルコール部分の炭素数が10〜18でオキシエチレン鎖の平均付加モル数が7〜80の範囲のものが好ましい。プルロニック型非イオン性界面活性剤としては、ポリプロピレングリコールを疎水基として、その両側にオキシエチレン鎖を親水基として付加重合させたブロックポリマー型非イオン性界面活性剤であり、HLBが6〜10の範囲のものが好ましい。
【0029】
また、本発明のスプレー用繊維製品処理剤には、保存安定性を向上するために上記以外の界面活性剤を0.01〜5重量%、好ましくは0.02〜2重量%配合することができる。このような界面活性剤としては、平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有し、1〜20モルのオキシエチレン鎖を付加したポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルや、平均炭素数9〜13のアルキル基を有し、1〜20モルのオキシエチレン鎖を付加したポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルや、平均炭素数8〜18のアルキル基を有し、糖重合度が1.1〜3.0のアルキルグリコシド等の非イオン性界面活性剤、平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩、平均炭素数10〜20のアルキル基を有し、1〜8モルのオキシエチレン鎖を付加したアルキルエーテル硫酸塩、平均炭素数10〜20のオレフィンスルホン酸塩、平均炭素数10〜20のアルカンスルホン酸塩、平均炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩等の陰イオン性界面活性剤等が使用できる。
【0030】
さらに必要に応じて特開平8−60549号公報の11頁、右欄13行目から27行目に記載の成分や特開平9−241973号公報の3頁、左欄23行目から右欄8行目に記載の成分を配合することができる。また、安息香酸デナトニウム、8−アセチル化蔗糖、ブルシン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ジチオビスベンザミド、ポリヘキサメチレンビグアニド酸付加塩、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ブロモニトロプロパンジオールから選ばれる1種以上の化合物を配合することもできる。また特開平7−119042号公報で開示されている水溶性無機塩や、特開平8−60549号公報で開示されている非イオン性界面活性剤や、特開平7−216744号公報と特開平10−110386号公報で開示されている多価アルコールや、特開平10−195773号公報で開示されている香料組成物を配合することができる。
【0031】
本発明の処理剤の残部は水又は水と水溶性低分子量有機溶媒の混合液であり、処理剤中に50〜99.9重量%配合されるのが好ましい。水溶性低分子量有機溶媒としては、炭素数1〜3の1価アルコール、炭素数2〜6の多価アルコール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、アルキレンカーボネート等とこれらの混合物が挙げられる。中でも、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。コスト、安全性等の点から、水が最も好ましく、蒸留水、脱イオン水、水道水等のいずれも使用できる。
【0032】
〔スプレー容器〕
本発明のスプレー用繊維製品処理剤は、LPG等の噴射剤を使用しない手動式のスプレー用処理剤として使用することに適している。本発明でいう手動式スプレー装置とは噴射剤を使用せず、且つ手動の加圧によりスプレーすることができるものを指し、トリガー式又はポンプ式と呼ばれるものが挙げられる。本発明ではトリガー式が好ましく、特に実開平4−17855号公報、実開平4−37554号公報、特開平8−84945号公報及び特開平9−122547号公報記載の蓄圧機構を備えたトリガー式のスプレー装置が、液のボタ落ち防止やスプレー特性の点からより好ましい。
【0033】
一回の噴霧量は、好ましくは0.1〜1.2g、より好ましくは0.2〜1.0g、最も好ましくは0.25〜0.8gであり、さらには、繊維製品から15cm離れた場所から噴霧した時、一回の噴霧で繊維製品に該処理剤が付着する面積が好ましくは50〜800cm2、より好ましくは100〜600cm2になるスプレー特性を有するものがよい。
【0034】
【実施例】
(合成例1:a−1の合成)
メタクリル酸300部、エタノール(純度99.5%、無変性)1,250部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.73部をこの順に混合して溶かし、65℃にて4時間攪拌した。得られた溶液を、室温で激しく攪拌しているアセトン20,000部に、1時間かけて滴下した。生成した白色沈殿を濾過によって採取し、10,600〜13,300Pa/60〜65℃で15時間減圧乾燥して白色粉末状ポリメタクリル酸245部を得た。GPCにて測定した重量平均分子量は1.9×105であった。測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー(株)製 TSK GMPWXL 2本
溶離液:リン酸二水素カリウムを0.1mol/Lとリン酸水素二ナトリウムを1mol/Lとを含む水溶液と、アセトニトリルとの9:1の容量比混合物
検出器:示差屈折率計
流速:1.0mL/分
温度:40℃
標準:PEG(重量平均分子量9.20×105、5.10×105、2.50×105、9.50×104、4.60×104、3.90×104)
検体濃度:0.20g/100mL溶離液
検体溶液注入量:0.20mL。
【0035】
(合成例2:a−2の合成)
2−プロパノール810部と水540部とを混合し、窒素雰囲気下で83℃に加熱して撹拌した。ここに、メタクリル酸443.7部の水810部溶液と、過硫酸ナトリウム98.16部の水530部溶液とを2時間掛けて滴下した。滴下中も撹拌液の内温を81〜83℃に保ち、滴下後は81〜83℃で5時間撹拌を続けた。その後大気圧下でさらに加熱して2−プロパノールを留出させ、蒸気温度が上昇しなくなる(101℃付近)まで留出を行ってから室温に戻し、ポリメタクリル酸を33%含む水溶液1,640部を得た。この一部を凍結乾燥して取り出したポリマーを用いて測定した重量平均分子量は2.1×104であった。重量平均分子量の測定方法は合成例1と同じである。
【0036】
(合成例3:a−3の合成)
イオン交換水366部と2−プロパノール548部との混合物を窒素雰囲気下で攪拌しながら81〜84℃に保っているところに、メタクリル酸250部とアクリル酸52.3部とイオン交換水548部とを混合した溶液と、過硫酸ナトリウム34.6部とイオン交換水223部とを混合した溶液とを、別々に同時に2時間掛けて滴下し、滴下終了後81〜84℃で5時間攪拌を続けた。その後、大気圧下のままで温度を上げて2−プロパノールを留出させ、蒸気温度が上昇しなくなるまで(101℃付近)留出を行った後に室温に戻し、メタクリル酸/アクリル酸コポリマー(80/20モル比)を23.4重量%の無色透明水溶液として得た。この一部を凍結乾燥して取り出したポリマーを用いて測定した重量平均分子量は1.7×104であった。重量平均分子量の測定条件は合成例1と同じである。
【0037】
(合成例4:a−4の合成)
メタクリル酸300部、エタノール(純度99.5%、無変性)830部、メタクリル酸エチル20.9部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.80部をこの順に混合して溶かし、65℃にて7時間攪拌し、室温に戻した。得られた溶液をエタノール(純度99.5%、無変性)1,200部で希釈し、室温で激しく攪拌しているアセトン20,000部に、1時間かけて滴下した。生成した白色沈殿を濾過によって採取し、10,600〜13,300Pa/60〜65℃で16時間減圧乾燥して白色粉末状メタクリル酸/メタクリル酸エチルコポリマー(95/5モル比)291部を得た。合成例1と同じ測定条件で求めた重量平均分子量は1.6×105あった。
【0038】
(合成例5:a−5の合成)
メタクリル酸70部、アクリル酸234.4部、エタノール(純度99.5%、無変性)800部、イオン交換水700部及び過硫酸ナトリウム1.94部をこの順に混合して溶かし、75℃にて5時間攪拌した。その後、大気圧のままで温度を上げてエタノールを留出させ、蒸気温度が上昇しなくなるまで(101℃付近)留出を行った後に室温に戻し、メタクリル酸/アクリル酸コポリマー(20/80モル比)を35.2重量%の無色透明水溶液として858部得た。この一部を凍結乾燥して取り出したポリマーを用いて、合成例1と同じ測定条件で求めた重量平均分子量は1.8×105あった。
【0039】
(合成例6:a−6の合成)
メタクリル酸100部、エタノール(純度99.5%、無変性)860部、メタクリル酸エチル198.9部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.44部をこの順に混合して溶かし、65℃にて7時間攪拌し、室温に戻した。得られた溶液をエタノール(純度99.5%、無変性)1200部で希釈し、室温で激しく攪拌している酢酸エチル24,000部に、1時間かけて滴下した。生成した白色沈殿を濾過によって採取し、10,600〜13,300Pa/60〜65℃で16時間減圧乾燥して白色粉末状メタクリル酸/メタクリル酸エチルコポリマー(40/60モル比)277部を得た。合成例1と同じ測定条件で求めた重量平均分子量は1.7×105であった。
【0040】
上記の合成例で得られた(共)重合体a−1〜a−5(重合体(I))を以下にまとめた。
・a−1:ポリメタクリル酸(重量平均分子量190,000)
・a−2:ポリメタクリル酸(重量平均分子量21,000)
・a−3:メタクリル酸/アクリル酸共重合体(モル比80/20、重量平均分子量17,000)
・a−4:メタクリル酸/メタクリル酸エチル共重合体(モル比95/5、重量平均分子量160,000)
・a−5:メタクリル酸/アクリル酸共重合体(モル比20/80、重量平均分子量180,000)
・a−6:メタクリル酸/メタクリル酸エチル共重合体(モル比40/60、重量平均分子量170,000)。
【0041】
また、(共)重合体b−1〜b−3(重合体(II))を以下にまとめた。
・b−1:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PS−5、東ソー(株))
・b−2:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PS−35、東ソー(株))
・b−3:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ポリティPS−2000、ライオン(株))。
【0042】
また、これらを配合する処方例1、2を下記表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
重合体(I)、(II)を表2に示すように処方例の組成物に配合し、それぞれトリガー式スプレー容器(花王(株)製、スムーザーの容器)に充填し、下記の方法で処理布の賦形効果と保形効果(剛軟度)並びに帯電防止性を評価した。その結果を表2に示す。
【0045】
<評価方法>
(試験布の調製)
剛軟度評価用として木綿100%ブロード#60を、帯電防止性評価用としてポリエステル100%タフタ(いずれも染色試材(株)谷頭商店より入手)を、花王(株)製衣料用洗剤「アタック」で、家庭用全自動洗濯機を用いて洗浄12分−ためすすぎ1回−脱水3分の行程を5サイクル繰り返した後、家庭用二槽式洗濯機で15分流水すすぎ−脱水5分を行い自然乾燥させた後、約15cm×25cm(長方向が縦糸と平行方向)に裁断したものを試験布とする。
【0046】
(剛軟度の評価)
木綿試験布にトリガー式スプレーヤーで100%o.w.f.(on the weight of fabrics)になるように均一にスプレーし、家庭用アイロン(松下電器製NI−A55自動アイロン、温度は木綿設定)でアイロンがけ処理を行った。処理布を20℃/65%R.H.の恒温室と30℃/80%R.H.の恒温室にそれぞれ12時間以上放置し、調湿した後、カンチレバー法(JIS L1096)により測定した値から剛軟度を判定した。
【0047】
(判定基準)
◎:剛軟度が120mm超である。
○:剛軟度が90mm以上120mm以下である。
△:剛軟度が60mm以上90mm未満である。
×:剛軟度が60mm未満である。
【0048】
(帯電防止性の評価)
ポリエステル試験布にトリガー式スプレーヤーで50%o.w.f.(on the weight of fabrics)になるように均一にスプレーし、家庭用アイロン(松下電器製NI−A55自動アイロン、温度はポリエステル設定)でアイロンがけ処理を行った。処理布を20℃/65%R.H.の恒温室に12時間以上放置し、調湿した後、表面抵抗値を測定した。測定は、HIGH RESISTANCE METER(横河ヒューレットパッカード社製)により行い、表面抵抗値の常用対数で示した。
【0049】
(判定基準)
×:表面抵抗値の常用対数が12を超える。
○:表面抵抗値の常用対数が10を超え12以下である。
◎:表面抵抗値の常用対数が10以下である。
【0050】
【表2】
Claims (4)
- 重量平均分子量が1万〜100万であり、メタクリル酸由来の構成単位が、全構成単位の60モル%以上を占めるメタクリル酸系重合体(I)及び、重量平均分子量が10万〜100万であり、スルホン酸基を有する構成単位が、全構成単位の60モル%以上を占めるスルホン酸系重合体(II)を含有し、メタクリル酸系重合体(I)とスルホン酸系重合体(II)の合計が0.1〜20重量%、メタクリル酸系重合体(I):スルホン酸系重合体(II)の重量比が1:9〜9:1であるスプレー用繊維製品処理剤。
- 20℃におけるpHが3.0〜7.0である請求項1記載のスプレー用繊維製品処理剤。
- メタクリル酸系重合体(I)とスルホン酸系重合体(II)の合計が6〜20重量%である請求項1又は2記載のスプレー用繊維製品処理剤。
- 請求項1〜3の何れか1項記載の繊維製品処理剤を、手動式スプレーヤーを備えた容器に充填してなる繊維製品処理剤物品。
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