JP4541532B2 - シールチェーン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピンとブシュからなる軸受部分にグリース等の潤滑剤を封入してシールするシールチェーンに係り、特に穀類、石炭、鉄鉱石、石灰、塩等のバラ物を搬送するバケットコンベヤ等のアンローダ用シールチェーンに用いて好適であり、詳しくはシールチェーンのシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンベヤ用などのチェーンの延命化が市場で望まれている。特に、バケット付きチェーン等の連続アンローダ用チェーンは、チェーンの軸受部分であるピン・ブシュ間の摩耗が激しく、チェーンが延びてしまうなどの理由で、交換を余儀なくされていることが多い。この問題を解決するために様々なシールチェーンが使用されている。
【0003】
図7は公知のシールチェーンの一例を示した断面図である。従来、この種のシールチェーンとして、特開平8−200452号公報のものが提案されている。例えば図7に示すように、ピン5が嵌挿したブシュ7を囲むように、かつ外リンクプレート4と内リンクプレート6との間に、シール手段34が介在されている。該シール手段34は、鋼製の内シールリング35と、該内シールリング35の外径側に配置される同じく鋼製の外シールリング36と、これら両シールリング35,36の対向する面に形成されたテーパ面35a,36aの間に縮設されるOリング37と、を有し、該Oリング37の押圧力により、外シールリング36が外リンクプレート4に内リンクプレート6との間の隙間変動を吸収しつつ密接し、また前記内シールリング35における半径方向の異なる位置に弾性体からなるVリング38が2列に配置されて構成される。
【0004】
該シールチェーンは、最外径側に位置しかつ鋼製からなる外シールリング36が外リンクプレート4との間で剛体シール部材として機能し、比較的大きな粒子の侵入を阻止し、かつ内径側に位置する2列のVリング38,38がそのリップ部38aを外リンクプレート4に接触して弾性シール部材として機能し、微細な粒子の侵入を阻止する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、鋼製の内シールリング35及び外シールリング36が、Oリング37の押圧力により、リンクプレート6に密着して一体に回動する。従って、チェーンの屈曲に際し、ゴム製のVリング38と外リンクプレート4との間に相対的な移動を生じ、該相対的な移動は、摩擦係数の高いゴムと金属との接触によるため、大きな摺動抵抗を生じて、チェーンの滑らかな屈曲の支障となり、エネルギロスを生じる。また、上述したようなシールチェーンでは、Vリング38(ゴム)と外リンクプレート4、外シールリング36(金属)と外リンクプレート4が摺動によって摩耗するためシール性が低下する。更に、ピン・ブシュ間に途中給油する際には、ピン・ブシュ間に残っている古い潤滑剤を外部に抜くための油道が無いので、この給油には時間がかかっていた。
【0006】
そこで本発明は上記事情に鑑み、シール手段における摩耗を少なくして、チェーンの屈曲性を良好に保持すると共に、シール性を低下させず、かつ途中給油を簡単かつ短時間で行えるシールチェーンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明のうち請求項1は(例えば図1及び図4を参照)、1対のピン(5)及び該ピン(5)により結合される1対の外リンクプレート(4)を有する外リンク(2)と、1対のブシュ(7)及び該ブシュ(7)により結合される1対の内リンクプレート(6)を有する内リンク(3)とを、前記ピン(5)を前記ブシュ(7)に嵌挿することにより交互に連結し、かつ前記外リンクプレート(4)と内リンクプレート(6)との間に、前記ピン(5)とブシュ(7)との間に封入される潤滑剤を該ブシュ(7)の周囲においてシールするシール手段(16)を介在してなるシールチェーン(1)において、前記シール手段(16)は、前記外リンクプレート(4)と内リンクプレート(6)との対向方向に交差する当接面(PL)により互いに摺動自在に面接触する第1及び第2のリング部材(20,25)と、前記第1のリング部材(20)に沿って設けられ、該第1のリング部材(20)のうち前記当接面(PL)とは背向する側で前記外リンクプレート(4)に当接する第1の弾性シール部材(22)と、前記第2のリング部材(25)に沿って設けられ、該第2のリング部材(25)のうち前記当接面(PL)とは背向する側で前記内リンクプレート(6)に当接する第2の弾性シール部材(28)と、を備えてなる、ことを特徴とするシールチェーンにある。
【0008】
また本発明のうち請求項2は(例えば図2乃至図4を参照)、前記第1及び第2のリング部材(20,25)のうち少なくとも一方のリング部材に、前記当接面(PL)において開口させた油溜り用溝(26)を形成し、前記第1及び第2のリング部材(20,25)のうち少なくとも一方のリング部材に、前記ピン(5)とブシュ(7)との間からの潤滑剤を前記油溜り用溝(26)に導く油流通経路(23,24)を設けた、ことを特徴とする請求項1記載のシールチェーンにある。
【0009】
また本発明のうち請求項3は(例えば図3及び図4を参照)、前記油流通経路は、前記当接面(PL)に沿って形成された筋状の溝(23)である、ことを特徴とする請求項2記載のシールチェーンにある。
【0010】
また本発明のうち請求項4は(例えば図4を参照)、前記油溜り用溝(26)が形成された前記リング部材に、該油溜り用溝(26)内部とシール外側とを連通する油排出経路(27)を形成した、ことを特徴とする請求項2又は3記載のシールチェーンにある。
【0011】
[作用]
上記構成により、シールチェーン(1)の駆動時には、第1の弾性シール部材(22)を介して当接した外リンクプレート(4)と第1のリング部材(20)が一緒に回動し、第2の弾性シール部材(28)を介して当接した内リンクプレート(6)と第2のリング部材(25)が一緒に回動する。つまりチェーン駆動時には第1及び第2のリング部材(20,25)が当接面(PL)を介して面接触での摺動をなす。この摺動は剛体どうしの摺動である。
【0012】
なお、上記括弧内の符号は図面と対照するためのものであり、本発明の構成を何等限定するものではない。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のうち請求項1によれば、チェーン駆動時には、第1及び第2のリング部材は、第1及び第2の弾性シール部材によりそれぞれ外リンクプレート及び内リンクプレートに一体に回転し、従ってこれら第1及び第2のリング部材が当接面を介して面接触での摺動をなし、この摺動は剛体どうしの摺動である。即ち、従来のようにゴム等による摺動やリンクプレートにおける摺動は行われないので、チェーンの屈曲に際して大きな摺動抵抗がなく、チェーンの屈曲性を向上すると共に、摩耗が少なくシール性が低下しにくい。また、ピン・ブシュ間からの潤滑剤は前記当接面にも供給されるので、第1及び第2のリング部材どうしの摩耗は更に低減されており、更なるシール性の低下防止がなされている。
【0014】
また、当接面での接触は剛体どうしの接触であるので、ピン・ブシュ間から該当接面に供給された潤滑剤は、少し圧力を加えてやると該当接面を通って容易にシール外側に抜け出る。これにより途中給油の場合は、該当接面を通って古い潤滑剤が容易に外部に排出されるので、途中給油を簡単かつ短時間で行える。
【0015】
また本発明のうち請求項2によれば、油溜り用溝に潤滑剤を溜めておくことにより、前記当接面にはより多量の潤滑剤を供給できるので、第1及び第2のリング部材どうしの摩耗は更に低減され、更なるシール性の低下防止が実現する。
【0016】
また本発明のうち請求項3によれば、油流通経路が当接面に沿って形成されているので、当接面に対する潤滑剤の供給は該油流通経路を介することでスムーズに行える。これにより当接面にはより多量の潤滑剤を供給できるので、第1及び第2のリング部材どうしの摩耗は更に低減され、更なるシール性の低下防止が実現する。
【0017】
また本発明のうち請求項4によれば、シール内側の潤滑剤は、油溜り用溝と油排出経路を介してスムーズにシール外側に排出できる。これにより、途中給油の場合には古い潤滑剤が容易に外部に排出されるので、途中給油をより一層簡単かつ短時間で行える。
【0018】
【発明の実施の形態】
▲1▼第1の実施形態
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明を適用した第1の実施形態によるシールチェーンを示す図である。コンベヤチェーンであるシールチェーン1は、図1に示すように外リンク2及び内リンク3を有している。図示は省略するが、上記外リンク2及び内リンク3はともに複数あって、これらが交互に連結して無端状のシールチェーン1が構成されている。
【0019】
外リンク2は1対の外リンクプレート4,4と、その左右部分(図1では左部分のみ図示)にて両リンクプレート4,4を連結する1対のピン5,5(図1では一方のピン5のみ図示)とからなり、また内リンク3は、1対の内リンクプレート6,6と、その左右部分(図1では右部分のみ図示)にて両リンクプレート6,6を連結する1対のブシュ7,7(図1では一方のブシュ7のみ図示)と、該ブシュ7の外周に回転自在に遊嵌しているローラ9とからなり、ピン5がブシュ7に嵌挿することにより両リンク2,3は連結されている。図1の符号17はピン5の抜け止めピンである。
【0020】
本実施形態のシールチェーン1はバケット等を取付けて使用する連続アンローダ用のコンベヤチェーンであるので、図には示されていない他のピン5の一端にはバケット取付け用のボルトが設けられている。なお、上記シールチェーン1は、バケットエレベータ、パンコンベヤ等のバラ物(穀類、鉄鉱石、石炭等)用アンローダとして用いて好適であるが、これに限らず、スラットコンベヤ、スラブコンベヤや、水処理用、レイキ用、沈砂・沈澱池用、ダスコン用等の他のコンベヤチェーンに適用可能であり、更に場合によっては動力伝達用チェーンにも適用可能である。
【0021】
ピン5にはその中心に一端から軸方向に油孔10が穿設されており、更に該油孔10から横方向に延びる孔11を介してピン5の外周面とブシュ7の内周面で構成される軸受部12に連通している(図4参照)。また、油孔10の一端にはニップル13が結合されている。従って、上記ニップル13からグリース等の潤滑剤が供給され、該潤滑剤は油孔10,11を介して軸受部12となるピン5とブシュ7との間に導かれる。
【0022】
外リンクプレート4と内リンクプレート6との間には、上記軸受部12に封入される潤滑剤をブシュ7の周囲においてシールするためのシール手段16が介在されている。シール手段16は、アウターリング20及びインナーリング25を有しており、これらリング20,25はいずれも円環状に形成されている。ブシュ7の両端側は、両側の各内リンクプレート6よりも外側に圧入・突出しており、該ブシュ7のうち内リンクプレート6よりも外側に突出した部分が上記リング20,25の環中央に嵌挿した状態となっている。
【0023】
一例として、これらリング20,25は、クロムモリブデン鋼(例えばSCM435又はSCM440)等の鋼材に、表面硬化及び防錆等の目的で軟窒化処理(タフトライト処理)が施されている。但し、リング20,25は、上記材料に限らず、更にフッ素コーティングしてもよく、また合成樹脂、焼結含油合金、青銅、リン青銅、青鉛鋼等の自己潤滑性材料でもよい。上記鋼材にタフトライト処理をしたものを含め、低摩擦材料からなることが好ましい。
【0024】
アウターリング20は、外リンクプレート4に対向する外側面20aの側に環状の溝21が形成されており、該溝21にはゴム等からなる弾性シール部材であるOリング22が装着されている。アウターリング20は該Oリング22を介して外リンクプレート4に当接しており、外側面20aと外リンクプレート4との間には図1に示されないクリアランスが形成されている。
【0025】
アウターリング20のうち内リンクプレート6に対向する側には、該アウターリング20の外周位置から径方向内周側に向かって順に、前記内リンクプレート6の外側面に略平行な内側面20b、該内側面20bに対して外リンクプレート4側に一段シフトした形態で前記内リンクプレート6の外側面に略平行な摺動面20d、が形成されている。なお、内側面20bと内リンクプレート6との間には図1に示されないクリアランスが形成されている。
【0026】
インナーリング25は、その環内周面である内周端面25uが上記ブシュ7の外周面7aに略接しており、ブシュ7を中心とした位置が不用意にズレないようになっている。なお、インナーリング25の環外周側はアウターリング20の環内周側に当接しており、これによりブシュ7を中心としたアウターリング20の位置も不用意にズレないようになっている。
【0027】
インナーリング25には、該インナーリング25の内周位置から径方向外周側に向かって順に、外リンクプレート4の内側面に略平行な外側面25a、該外側面25aに対して内リンクプレート6側に一段シフトした形態で前記外リンクプレート4の内側面に略平行な摺動面25c、が形成されている。なお、外側面25aと外リンクプレート4との間には図1に示されないクリアランスが形成されている。この摺動面25cはアウターリング20の摺動面20dと摺動自在に面接触している。これら摺動面20d,25cが面接触する平面は当接面PLとなっており、本実施形態での当接面PLはアウターリング20とインナーリング25との対向方向(ピン5の軸方向)に対して直交する平面である。
【0028】
また、インナーリング25のうち内リンクプレート6に対向する内側面25bの側に環状の溝29が形成されており、該溝29にはゴム等からなる弾性シール部材であるOリング28が装着されている。インナーリング25は該Oリング28を介して内リンクプレート6に当接しており、内側面25bと内リンクプレート6との間には図1に示されないクリアランスが形成されている。
【0029】
このようにインナーリング20とアウターリング25は、リンクプレート4,6間でOリング22,28を介して、これらリンクプレート4,6の対向方向に互いに押圧当接しているので、その当接面PLにおいてはシール状態が形成されている。
【0030】
シールチェーン1は以上のように構成されているので、油孔10,11を介して給油された潤滑剤は軸受部12に充填されると共に、ブシュ7の端部と外リンクプレート4との隙間15を介して外リンクプレート4とインナーリング25との間に流入する。ここから更に、外リンクプレート4とアウターリング20との間にクリアランスを介して潤滑剤が流入するが、該アウターリング20側のOリング22が外リンクプレート4とアウターリング20との間をシールしているため、潤滑剤は該Oリング22を越えてシール外側に流出することは無い。同様に、ブシュ7の外周面7aとインナーリング25の内周端面25uとの間を通ってインナーリング20の内側面25bの側に流入した潤滑剤も、Oリング28によりシールされてシール外側に流出することは無い。
【0031】
また、外リンクプレート4とインナーリング25との間に流入した潤滑剤は、アウターリング20とインナーリング25との当接部に沿って、互いに面接触する摺動面20d,25cの位置、即ち当接面PLまで流入する。なお、ある一定の圧力を越えて給油が行われた場合、潤滑剤は当接面PLを更に越えて流動し、アウターリング20の内周面20bと内リンクプレート6との間のクリアランスを通ってシール外側に排出される。これにより特に途中給油がスムーズになり、古い潤滑剤を排出して新しい潤滑剤に入れ替えることが容易にできるのでチェーンの性能を長期間維持でき寿命が長くなる。
【0032】
シールチェーン1が駆動される際には、Oリング22を介して当接した外リンクプレート4とアウターリング20が一緒に回動し、Oリング28を介して当接した内リンクプレート6とインナーリング25が一緒に回動する。つまりチェーン駆動時にはアウターリング20の摺動面20dとインナーリング25の摺動面25cとが当接面PLにおいて面接触での摺動を行う。このように金属面どうし(剛体どうし)の摺動がなされるため、従来のようにゴム等による摺動やリンクプレートにおける摺動は行われないので、チェーンの屈曲に際して大きな摺動抵抗がなく、チェーンの屈曲性を向上すると共に、摩耗が少なくシール性が低下しにくい。
【0033】
特にコンベヤチェーンの場合には、摩耗を促進させる粉塵(例えば、鉄鉱石、石炭、コークスの粉末など)が多い環境で使用することがある。このような場合でも本実施形態のシールチェーン1では、2つのゴム(Oリング22,28)及び2つのシールリング(リング20,25)からなるシール構造であるのでシール性が高く、上記粉塵がピン・ブシュ間に極めて入りにくい。更にこのシール構造は、Oリング22により外リンクプレート4側からシールし、Oリング28により内リンクプレート6側からシールする、といった両方からシールする構造になっているので、従来のように一方からのシールに比べて信頼性が高い。
【0034】
勿論、上述した高いシール性能により、外部からの粉塵の進入防止を実現するだけでなく、内部の潤滑剤が不用意に外部に流出することも防止している。
【0035】
▲2▼第2の実施形態
図2は第2の実施形態に係るシール手段の一部を拡大した図である。なお第1の実施形態と同一の部材は図1と同一の符号を使用する。第2の実施形態では、図2に示すように、アウターリング20は、外リンクプレート4に対向する外側面20aの側に環状の溝21が形成されており、該溝21にはOリング22(図2では非圧縮状態を示す)が装着されている。アウターリング20は該Oリング22を介して外リンクプレート4に当接するようになっており、外側面20aと外リンクプレート4との間にはクリアランスCL1が形成される。
【0036】
アウターリング20のうち内リンクプレート6に対向する側には、該アウターリング20の外周位置から径方向内周側に向かって順に、前記内リンクプレート6の外側面に略平行な内側面20b、該アウターリング20の外側面20aに向かって傾斜するテーパ面20c、前記内リンクプレート6の外側面に略平行な摺動面20d、が形成されている。なお、内側面20bと内リンクプレート6との間にはクリアランスCL2が形成される。
【0037】
インナーリング25は、その環内周面である内周端面25uが上記ブシュ7の外周面7aに略接するようになっており、インナーリング25の環外周側には角状になった外周縁端25tが形成されており、該外周縁端25tはアウターリング20のテーパ面20cに当接している。これによりブシュ7を中心としたアウターリング20の位置も不用意にズレないようになっている。また、外周縁端25tはテーパ面20cで当接するので、線接触であるため、該当接による摩擦抵抗は最小限に抑えられる。
【0038】
インナーリング25には、外リンクプレート4に対向する外側面25aの側に環状溝としての油溜り26(油溜り用溝)が形成されており、該油溜り26内とインナーリング25の環外周側(シール外側)とを、アウターリング20とインナーリング25との対向方向(図2の矢印Q方向)に連通する油排出経路である連通孔27が形成されている。また外側面25aの一部はアウターリング20の摺動面20dと摺動自在に面接触している。上記アウターリング20の摺動面20dとインナーリング25の外側面25aとが面接触する平面は当接面PLとなっており、本実施形態での当接面PLはアウターリング20とインナーリング25との対向方向(図2の矢印Q方向)に対して直交する平面である。
【0039】
また、インナーリング25のうち内リンクプレート6に対向する内側面25bの側に環状の溝29が形成されており、該溝29にはOリング28(図2では非圧縮状態を示す)が装着されている。インナーリング25は該Oリング28を介して内リンクプレート6に当接するようになっており、内側面25bと内リンクプレート6との間にはクリアランスCL3が形成される。
【0040】
この第2の実施形態のシールチェーンでは、外リンクプレート4とインナーリング25との間に流入した潤滑剤は、互いに面接触する摺動面20dと外側面25aとの間、即ち当接面PLに沿って油溜り26に流入する。従って、該シールチェーンが駆動される際には、油溜り26から潤滑剤が摺動面20dと外側面25aとの間に適宜供給されるので、これら摺動面20dと外側面25aとの間の摩耗は一層抑制される。
【0041】
なお、ある一定の圧力を越えて給油が行われた場合、油溜り26に流入した潤滑剤は連通孔27を介してシール外側にスムーズに排出される。これにより途中給油は一層スムーズになり、古い潤滑剤を排出して新しい潤滑剤に入れ替えることが容易にできるのでチェーンの性能を長期間維持でき寿命が長くなる。
【0042】
▲3▼第3の実施形態
図3は第3の実施形態に係るシール手段の一部を拡大した図である。なお第2の実施形態と同一の部材は図1と同一の符号を使用する。第3の実施形態では、大部分の構成が図2に示す第2の実施形態の構成と同じであるが、第3の実施形態ではインナーリング25に連通孔27を設けていない(但し連通孔27が形成されていてもよい)。また第3の実施形態では、外リンクプレート4とインナーリング25との間から油溜り26に潤滑剤を流通させる経路として、アウターリング20の外側面20aと摺動面20dとの間を貫通する貫通孔24を形成している。外リンクプレート4とインナーリング25との間の潤滑剤は該貫通孔24を介して油溜り26にスムーズに流入できる。
【0043】
▲4▼第4の実施形態
図4は第4の実施形態に係るシール手段付近を拡大した図、図5はシール手段のうちアウターリングを示す断面図、図6は図5におけるI矢視図である。なお第1及び第2の実施形態と同一の部材は図1と同一の符号を使用する。第4の実施形態では、大部分の構成が図2に示す第2の実施形態の構成と同じであるが、図4及び図5に示すように、第4の実施形態ではインナーリング25に形成されている連通孔27が、油溜り26内とインナーリング25の環外周側(シール外側)とを径方向に連通して形成されている。また、図4及び図6に示すように、アウターリング20の摺動面20dの部位には、該アウターリング20の環中央に開口する筋状の油溝23(油流通経路)が放射状に複数形成されている。
【0044】
従って第4の実施形態では、給油時に、外リンクプレート4とインナーリング25との間に流入した潤滑剤は、当接面PLに沿って形成された複数の油溝23を介して油溜り26に流入し、ここに溜まる。このとき潤滑剤はリング20,25の当接面PLに供給される。また、ある一定の圧力を越えて給油が行われた場合、油溜り26に流入した潤滑剤は連通孔27を介してインナーリング25の環外周部とアウターリング20のテーパ面20cとの隙間(シール外側)に排出される。これにより第2の実施形態と同様に、特に途中給油がスムーズになり、古い潤滑剤を排出して新しい潤滑剤に入れ替えることが容易にできるのでチェーンの性能を長期間維持でき寿命が長くなる。
【0045】
シールチェーンが駆動される際には、油溜り26や油溝23等から潤滑剤が摺動面20dと外側面25aとの間に適宜供給されるので、これら摺動面20dと外側面25aとの間の摩耗は一層抑制される。なお、外リンクプレート4とインナーリング25との間から油溜り26に潤滑剤を流通させる経路として、上記油溝23と第3の実施形態で説明した貫通孔24とを併用することも可能である。
【0046】
▲5▼その他の実施形態
上述した各実施形態では、アウターリング20側に油溝23や貫通孔24等の油流通経路が形成されていたが、ピンとブシュとの間からの潤滑剤を油溜り用溝である油溜り26に導くための油流通経路は、インナーリング25側に形成してもよいし、或いはアウターリング20側とインナーリング25側の両側に形成してもよいし、或いは油流通経路を全く形成せず摺動面20dと外周面25aの間に沿って潤滑剤が油溜り26まで流入する構成(第1の実施形態の構成に油溜り26を追加した構成、或いは第3の実施形態の構成)にしてもよい。
【0047】
また、油溜り26等の油溜り用溝はアウターリング20側に設けてもよいし、或いはアウターリング20側とインナーリング25側との両側に設けてもよいし、或いは油溜り用溝を全く設けない構成(第1の実施形態の構成)にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態によるシールチェーンを示す図。
【図2】第2の実施形態に係るシール手段の一部を拡大した図。
【図3】第3の実施形態に係るシール手段の一部を拡大した図。
【図4】第4の実施形態に係るシール手段付近を拡大した図。
【図5】シール手段のうちアウターリングを示す断面図。
【図6】図5におけるI矢視図。
【図7】公知のシールチェーンの一例を示した断面図。
【符号の説明】
1 シールチェーン
2 外リンクプレート
3 内リンク
4 外リンクプレート
5 ピン
6 内リンクプレート
7 ブシュ
16 シール手段
20 第1のリング部材(アウターリング)
22 第1の弾性シール部材(Oリング)
23 油流通経路(油溝)
24 油流通経路(貫通孔)
25 第2のリング部材(インナーリング)
26 油溜り用溝(油溜り)
27 油排出経路(連通孔)
28 第2の弾性シール部材(Oリング)
PL 当接面
Claims (4)
- 1対のピン及び該ピンにより結合される1対の外リンクプレートを有する外リンクと、1対のブシュ及び該ブシュにより結合される1対の内リンクプレートを有する内リンクとを、前記ピンを前記ブシュに嵌挿することにより交互に連結し、かつ前記外リンクプレートと内リンクプレートとの間に、前記ピンとブシュとの間に封入される潤滑剤を該ブシュの周囲においてシールするシール手段を介在してなるシールチェーンにおいて、
前記シール手段は、
前記外リンクプレートと内リンクプレートとの対向方向に交差する当接面により互いに摺動自在に面接触する第1及び第2のリング部材と、
前記第1のリング部材に沿って設けられ、該第1のリング部材のうち前記当接面とは背向する側で前記外リンクプレートに当接する第1の弾性シール部材と、
前記第2のリング部材に沿って設けられ、該第2のリング部材のうち前記当接面とは背向する側で前記内リンクプレートに当接する第2の弾性シール部材と、
を備えてなる、
ことを特徴とするシールチェーン。 - 前記第1及び第2のリング部材のうち少なくとも一方のリング部材に、前記当接面において開口させた油溜り用溝を形成し、
前記第1及び第2のリング部材のうち少なくとも一方のリング部材に、前記ピンとブシュとの間からの潤滑剤を前記油溜り用溝に導く油流通経路を設けた、
ことを特徴とする請求項1記載のシールチェーン。 - 前記油流通経路は、前記当接面に沿って形成された筋状の溝である、
ことを特徴とする請求項2記載のシールチェーン。 - 前記油溜り用溝が形成された前記リング部材に、該油溜り用溝内部とシール外側とを連通する油排出経路を形成した、
ことを特徴とする請求項2又は3記載のシールチェーン。
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