図1〜図8は、この発明の実施例を示すものである。
図3において、2は空気調和装置(HVAC:Heating Venti1ation and Air−Conditioning)である。この空気調和装置2は、例えば、車両(図示せず)に搭載され、車両用の空調装置として使用され、送風、配風等を行って室内の空気を調温あるいは調湿するものであり、調温、調湿、送風を担う調温装置4を備えている。また、車両には、図示しないが、エンジンが搭載されている。
調温装置4内には、図1に示す如く、第一ブロアファン(処理側ブロアファン)6・第二ブロアファン(再生側ブロアファン)8と、水分の脱着再生可能な吸湿部材(以下、「デシカントロータ」という)10と、熱交換器12と、熱電素子(ペルチェモジュール。以下、「ペルチェ素子」という)14と、ヒータ16のヒータコア18とが設けられているとともに、図3に示す如く、除湿経路20を備えた除湿手段22と加湿経路24を備えた加湿手段26とが設けられている。
第一・第二ブロアファン6・8は、電気駆動可能であり、後述するブロアファンアクチュエータ92(図2参照)によって夫々独立して駆動され、調温装置4の内部に空気を送り込む機能を有している。
デシカントロータ10は、ゼオライトやシリカゲル等の除湿剤を、繊維バインダーと共に円柱状に加工して形成されたものであり、後述するデシカントロータアクチュエータ94(図2参照)によって一定速度で回転駆動される。つまり、このデシカントロータ10は、ゼオライト、シリカゲル、セビオライト、活性アルミナ、活性炭、塩化リチウム等の除湿能力を有する材料を単独、若しくは、組み合わせた除湿剤として有し、この除湿剤を、繊維バインダー等と共に円柱状に加工されたものであり、空気中の水分を吸収し、乾燥空気を作る処理側28と、吸収水分を熱風等によって放出する再生側30とが区分された形状に構成されている。このデシカントロータ10を一定速度で回転することにより、処理側28と再生側30とが連続して入れ替わり、除湿と水分放出とを繰り返すことができる。
熱交換器12は、アルミプレート等をフィン状に加工し、後述する二つの空気流を交差させながら熱を交換することができるものであり、この二つの空気流を交差する際には、各空気流を完全に隔離するような形状に構成されている。
ペルチェ素子14は、N型半導体とP型半導体を組み合わせてペルチェ効果を利用する素子であり、直流電流を流すことにより、一方の表面に吸熱反応が起こる吸熱面32、他方の表面では発熱反応が起こる放熱面34として利用することができる。また、このペルチェ素子14は、電流の向きを逆転させることにより、吸熱面32と放熱面34とを入れ替えることも可能である。このペルチェ素子14は、後述するペルチェモジュール駆動回路96(図2参照)によって電流値を制御することができ、吸熱量、放熱量をコントロールすることができる。
ヒータ16のヒータコア18は、図示しないが、車両用のエンジンの冷却水が導通する熱交換器であり、エンジンの始動後、5分程度で80〜100℃の冷却水が導通され、デシカントロータ10の再生空気を作り出す加熱源として使われるものである。
また、図3に示す如く、空気調和装置2には、配風の役割を担うように、導入側切換手段である導入側四方弁36と、排出側切換手段である排出側四方弁38と、室内吹出口40を構成するようにモード(MODO)ドア42・42とが設けられている。室内吹出口40は、各吹き出しモードとして、デフロスタ(DEF)口部40−1と、換気(VENT)口部40−2と、足元(FOOT)口部40−3とを備えている。このデフロスタ(DEF)口部40−1と換気(VENT)口部40−2と足元(FOOT)口部40−3とは、モード(MODO)ドア42・42によって選択的に開閉される。
導入側四方弁36には、室内の空気を導入する第一導入通路44が連通して設けられるとともに、室外の空気を導入する第二導入通路46が連通して設けられ、また、除湿経路20に連絡する除湿側導入通路48が連通して設けられ、更に、加湿経路24に連絡する加湿側導入通路50が連通して設けられている。
この導入側四方弁36は、第一導入通路44からの車室内の内気と、第二導入通路46からの車外の外気とを、調温装置4に導入する役割を有している。この導入側四方弁36が図3に示す実線の状態では、内気を加湿経路24に導入するとともに、外気を除湿経路20に導入し、且つ、この内気と外気とを混合することなく調温装置4に導入することができる。また、導入側四方弁36を切り換えることにより、図3の実線と破線とを切り換えることができ、調温装置4に導入する空気(内気又は外気)を切り換えることができる。また、この導入側四方弁36は、第一導入通路44と加湿手段26とを連絡し且つ第二導入通路46と除湿手段22とを連絡する第一モードと、第一導入通路44と除湿手段22とを連絡し且つ第二導入通路46と加湿手段26とを連絡する第二モードとを備え、前記第一モードと前記第二モードとのいずれか一方のモードに切り換えられる。
排出側四方弁38には、除湿手段22の除湿経路20と連絡して該除湿手段22により除湿された空気を排出する第一排出通路52が連通して設けられているとともに、加湿手段26の加湿経路24と連絡して該加湿手段26により加湿された空気を排出する第二排出通路54が連通して設けられ、また、室内吹出口40に連絡する室内排出通路56が連通して設けられ、更に、室外排出通路58が連通して設けられている。
この排出側四方弁38は、調温装置4から排出された空気を、車内又は車外に振り分ける役割を有している。この排出側四方弁38が図3に示す実線の状態では、除湿経路20を通ってきた空気を室内排出通路56への調温空気として、一方、加湿経路24を通ってきた空気を室外排出通路58への排気空気として、振り分ける。この排出側四方弁38を切り換えることにより、図3の実線と破線とを切り換えることができ、調温装置4から出てくる空気を切り換えることができる。
導入側四方弁36及び排出側四方弁38は、共に、後述の内外気アクチュエータ90(図2参照)によって夫々を独立して駆動される。
除湿手段22は、図1、図3に示す如く、前記第一導入通路44及び前記第二導入通路46から導入した空気を、第一ブロアファン6の駆動により、デシカントロータ10の処理側28と、熱交換器12と、ペルチェ素子14の吸熱面32との順に通過させることにより除湿する除湿経路20を構成するものである。
加湿手段26は、図1、図3に示す如く、前記第一導入通路44及び前記第二導入通路46から導入した空気を、第二ブロアファン8の駆動により、熱交換器12と、ペルチェ素子14の放熱面34と、ヒータコア18と、デシカントロータ10の再生側30との順に通過させることにより加湿する加湿経路24を構成するものである。
モードドア42・42は、室内排出通路56からの調温空気を車室吹出口40の各口部(40−1、40−2、40−3)に振り分ける装置であり、後述するモード(MODE)アクチュエータ98(図2参照)によって駆動制御される。このモードドア42・42の駆動制御により、室内排出通路56からの調温空気は、車室内のフロントガラスに吹き付けるデフロスタ口部40−1、乗員の上半身に吹き付ける換気口部40−2、乗員の下半身に吹き付ける足元口部40−3の各モード(MODE)に振り分けられる。図3においては、モードドア42・42が、換気口部40−2を開放しており、室内排出通路56からの調温空気は、換気口部40−2から吹き出すことを意味している。
空気調和装置2は、図3に示す如く、制御手段60を備えている。この制御手段60は、エアコン制御部(ECU)62とエアコンパネル64とからなる。エアコン制御部(ECU)62のコントロールユニット66には、少なくとも中央演算装置(CPU)68と、読出専用メモリ(ROM)70と、ランダムアクセスメモリ(RAM)72と、入出カポート(I/O)74等が設けられている。
エアコン制御部62は、外気温度を検出する外気温センサ76と、外気湿度を検出する外湿度センサ78と、室内の内気温度を検出する内気温センサ80と、室内の内気湿度を検出する内湿度センサ82と、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ84と、日射量を検出する日射センサ86とに連絡し、これら各センサからのセンシング情報を入力する。なお、上記の水温センサ84は、ヒータコア18に流入するエンジンの冷却水の液温を測定するための素子である。
また、エアコン制御部62は、HVCAモジュール88において、前記導入側四方弁36と前記排出側四方弁38とを夫々独立して駆動する内外気アクチュエータ90と、前記第一ブロアファン6と前記第二ブロアファン8とを夫々独立して駆動するブロアファンアクチュエータ92と、前記デシカントロータ10を一定速度で回転駆動するデシカントロータアクチュエータ94と、ペルチェ素子14に直流電流を流すペルチェモジュール駆動回路96と、室内吹出口40の各口部を切り換えるモード(MODE)アクチュエータ98とに連絡し、これらを駆動制御する。
即ち、このエアコン制御部62は、エアコンパネル64からの温度、湿度、風量、モード(MODE)、内外気取込口等の設定情報、各センサ(外気温センサ76、外湿度センサ78、内気温センサ80、内湿度センサ82、水温センサ84、日射センサ86)からのセンシング情報を入力し、所定のプログラムに従って制御信号に変換し、各アクチュエータ(内外気アクチュエータ90、ブロアファンアクチュエータ92、モータ等からなるデシカントロータアクチュエータ94、ペルチェモジュール駆動回路96、モードアクチュエータ98)を駆動する。
この制御手段60は、前記第一モードと前記第二モードとのいずれか一方のモードに切り換えるように導入側切換手段である導入側四方弁36を切り換え作動し、また、導入側四方弁36により第一モードを選択した時には、第一排出通路52と室内排出通路56とを連絡し且つ第二排出通路54と室外排出通路58とを連絡し、導入側四方弁36により第二モードを選択した時には、第一排出通路52と室外排出通路58とを連絡し且つ第二排出通路54と室内排出通路56とを連絡するように排出側切換手段である排出側四方弁38を切り換え作動する。
つまり、制御手段60は、第一導入通路44と加湿経路24とを連絡し且つ第二導入通路46と除湿経路20とを連絡する第一モード(図3の除湿冷房運転)と、第一導入通路44と除湿経路20とを連絡し且つ第二導入通路46と加湿経路24とを連絡する第二モード(図5の加湿暖房運転)とに、前記導入側四方弁36及び前記排出側四方弁38を作動制御するものである。具体的には、導入側四方弁36により第一モードを選択すると、図3、図4に示す如く、空気調和装置2を除湿冷房運転とし、一方、導入側四方弁36により第二モードを選択すると、図5、図6に示す如く、空気調和装置2を加湿暖房運転とし、また、導入側四方弁36により第一モードを選択した後に、熱電素子であるペルチェ素子14に流す電流の向きを変えることにより、図7、図8に示す如く、空気調和装置2を除湿暖房運転とする。
なお、空気調和装置2は、図示しないが、12Vの鉛バッテリ等の電源を用いて駆動される。
次に、この実施例の作用を説明する。
空気調和装置2の運転においては、導入側四方弁36の切り換えと、排出側四方弁38の切り換えとにより、除湿冷房運転や加湿暖房運転等を実現することができる。
先ず、空気調和装置2の除湿冷房運転(第一モード)は、乗員からの温度設定要求が現在の内気温センサ80の値より低く、また、湿度設定要求が現在の内湿度センサ82の値より低い時に、使われる。
この除湿冷房運転においては、導入側四方弁36と排出側四方弁38とを図3の実線で示すように切り換えて、つまり、図3に示す如く、導入側四方弁36が、第一導入通路44と加湿側導入通路50とを切り換え連絡するとともに、第二導入通路46と除湿側導入通路48とを切り換え連絡し、一方、排出側四方弁38が、第一排出通路52と室内排出通路56とを切り換え連絡するとともに、第二排出通路54と室外排出通路58とを切り換え連絡し、これにより、除湿経路20には、第二導入通路46からの外気(図4の点A)を取り込むとともに、加湿経路24には、第一導入通路44からの内気(図4の点E)を取り込む。この除湿冷房運転では、図4に示す如く、空気温度と絶対湿度との状態線図で運転される。
そして、この除湿冷房運転において、先ず、点Aの第二導入通路46からの外気は、図1、図3に示す如く、第一ブロアファン6によって調温装置4内に送られ、デシカントロータ10の処理側28を通過し、そして、この処理側28を通過する際に、内部の除湿剤と接触して除湿される。
このとき、図4に示す如く、点Aの空気は、等エンタルピ過程で状態変化を起こし、温度の上昇、絶対湿度の低下を起こして、点Bの状態となる。この点Bの空気は、熱交換器12へと導入され、加湿経路24に送られる点Eの空気と熱交換を行う。この点Eの空気は、第一導入通路44からの内気が第二ブロアファン8によって調温装置4内に導入されたものである。
また、点Bの空気は、点Eの空気に対して放熱を行い、温度が低下して、点Cの状態となる。逆に、点Eの空気は、吸熱して点Fの状態となる。点Cの空気は、ペルチェ素子14の吸熱面32を通過し、熱が吸収されて点Dの状態となり、調温装置4から排出側四方弁38に向かって放出される。
この排出側四方弁38は、図3の実線で示すように、第一排出通路52と室内排出通路56とを切り換え連絡するとともに、第二排出通路54と室外排出通路58とを切り換え連絡し、除湿経路20を通ってきた空気を、室内排出通路56から調温空気として車内に吹出す経路を選択する。
図4に示す如く、点Dの空気は、モードドア42・42に遮られていない換気口部40−2より車内に吹き出される。この点Dの空気は、点Aの空気に比べて、低温且つ低湿の空気となり車室内を除湿冷房できる。
一方、図4に示す如く、加湿経路24の点Fの空気は、ペルチェ素子14の放熱面34を通過し、加熱され点Gの状態となり、さらに、ヒータコア18に導入され、エンジンの冷却水によりさらに加熱されて、点Hの状態となる。この点Hの空気は、デシカントロータ10の再生側30を通過し、処理側28で吸収された水分を奪い取る。つまり、点Hの空気は、再生側30を通過することで、等エンタルピ過程で状態変化を起こし、温度の低下、絶対湿度の上昇を起こして、点Iの状態となり、調温装置4から排出側四方弁38に向かって放出される。
デシカントロータ10の再生側30は、高温の空気が通過したことで、再び、水分吸収能力を回復し、回転移動して、処理側28へと回り、除湿経路20に入ってきた空気を除湿できる。また、加湿経路24を通ってきた点Iの空気は、排出側四方弁38では、図3の実線で示すように、車外排出通路58への排気空気として振り分けられ、最終的に、車外へ排出される。このとき、車内には、点Dの空気が入り、乗員、車室内を冷房した後、第一導入通路44からの内気として、加湿経路24へ回されることになる。
そして、このときの空気を、点D’とする。この点D’の空気は、熱交換器12にて、点Bの空気と熱交換することになる。しかし、最初に熱交換したE点の空気に比べ、D’点の空気は、低温であることから、熱交換効率が上昇し、点Bではたくさん放熱できることとなり、これにより、最終的には、点Dの空気よりもさらに低温の空気を車内に導入することが可能となる。
この方法では、車内には、常に、第二導入通路46からの外気を取り込んだ新鮮な空気を導入することができる。但し、第二導入通路46からの外気が新鮮でない場合は、この限りではない。つまり、この外気の悪臭等の問題により、内気循環で冷房を行いたい場合もある。
この場合には、導入側四方弁36を作動操作し、第一導入通路44からの内気を除湿経路20に導入するように内外気アクチュエータ90を作動操作すればよい。これにより、第一導入通路44からの内気は、除湿経路20内の、デシカントロータ10の処理側28、ペルチェ素子14の吸熱面32等を通ることが可能となり、除湿冷房される。この除湿冷房された空気は、排出側四方弁38を作動操作して、車内排出通路56への調温空気として車内に吹き出す経路を選択することで、内気循環経路を達成することができる。
次に、空気調和装置2の加湿暖房運転(第二モード)は、乗員からの温度設定要求が現在の内気温センサ80の値より高く、また、湿度設定要求が現在の内湿度センサ82の値より高い時に使われる。
この加湿暖房運転においては、導入側四方弁36と排出側四方弁38とを図5の実線で示すように切り換えて、つまり、図5に示す如く、導入側四方弁36が、第一導入通路44と除湿側導入通路48とを切り換え連絡するとともに、第二導入通路46と加湿側導入通路50とを切り換え連絡し、一方、排出側四方弁38が、第一排出通路52と室外側排出通路58とを切り換え連絡するとともに、第二排出通路54と室内側排出通路56とを切り換え連絡し、これにより、除湿経路20には、第一導入通路44からの内気(図6の点J)を取り込むとともに、加湿経路24には、第二導入通路46からの外気(図6の点M)を取り込む。この加湿暖房運転時には、調温装置4のペルチェ素子14は、駆動しない。この除湿冷房運転では、図6に示す如く、空気温度と絶対湿度との状態線図で運転される。
この加湿暖房運転において、先ず、点Jの第一導入通路44からの内気が、第一ブロアファン6によって調温装置4内に送られ、デシカントロータ10の処理側28を通過し、そして、この処理側28を通過する際に、内部の除湿剤と接触し、除湿される。このとき、点Jの空気は、等エンタルピ過程で状態変化を起こし、温度の上昇、絶対湿度の低下を起こして、点Kの状態となる。この点Kの空気は、熱交換器12へと導入され、加湿経路24に送られる点Mの空気と熱交換を行う。この点Mの空気は、第二導入通路46からの外気が第二ブロアファン8によって調温装置4内に導入されたものである。この点Kの空気は、点Mの空気に対して放熱を行い、温度が低下して点Lの状態となる。
逆に、点Mの空気は、吸熱して点Nの状態となる。点Lの空気は、ペルチェ素子14の吸熱面32を通るが、ペルチェ素子14が、加湿暖房時においては駆動しないため、温度変化なく、調温装置4から排出側四方弁38に向かって放出される。
この排出側四方弁38は、図5の実線で示す如く、除湿経路20を通ってきた空気を、車外排出経路58への排出空気として車外へ放出する経路を選択し、点Lの空気は、車外へ放出される。
一方、加湿経路24の点Nの空気は、ペルチェ素子14の放熱面34を通るが、ペルチェ素子14が、加湿暖房時においては駆動しないため、温度変化なくヒータコア18へ導入され、そして、このヒータコア18では、エンジンの冷却水により加熱され、点Oの状態になる。この点Oの空気は、デシカントロータ10の再生側30を通過し、処理側28で吸収された水分を奪い取る。つまり、点Oの空気は、再生側30を通過することで、等エンタルピ過程で、状態変化を起こし、温度の低下、絶対湿度の上昇を起こして、点Pの状態となり、調温装置4から排出側四方弁38に向かって放出される。
デシカントロータ10の再生側30は、高温空気が通過したことで、再び水分吸収能力を回復し、回転移動して、処理側28への回り、除湿経路20に入ってきた空気を除湿できる。そして、加湿経路24から吹き出された点Pの空気は、排出側四方弁38の図5における実線で示す経路を通り、車内排出経路56への調温空気として車内に吹き出される。
点Pの空気は、図5におけるモードドア42・42に遮られていない足元口部40−3から車内に吹き出される。この点Pの空気は、点Mの空気に比べて、高温且つ高湿の空気となり、車室内を加湿暖房することができる。そして、車内には、点Pの空気が入り、乗員、車室内を暖房した後、第一導入通路44からの内気として、除湿経路20へ回されることになる。
このときの空気を、点P’とする。この点P’の空気は、デシカントロータ10の処理側28へと入り、除湿剤によって除湿され点Qの空気となる。この点Qの空気は、熱交換器12にて、点Mの空気と熱交換することになる。最初に熱交換した点Kの空気に比べ、点Qの空気は、高温であることから熱交換効率が上昇し、点Mではたくさん吸熱できることとなり、最終的には、点Pの空気よりもさらに高温の空気を車内に導入することが可能となる。
この方法では、車内には、常に、第二導入通路46からの外気を取り込んだ新鮮な空気として導入できる。但し、第二導入通路46からの外気が新鮮でない場合は、この限りではない。つまり、この第二導入通路46からの外気の悪臭等の問題により、内気循環で暖房を行いたい場合もある。
この場合には、導入側四方弁36を作動操作し、第一導入通路44からの内気を加湿経路24に導入するように内外気アクチュエータ90を作動操作すればよい。これにより、第一導入通路44からの内気は、加湿経路24内の、ヒータコア18、デシカントロータ10の再生側30等を通ることが可能となり、加湿暖房される。この加湿暖房された空気は、排出側四方弁38を操作し、車内排出通路56への調温空気として車内に吹出す経路を選択することで、内気循環経路を達成することができる。
ところで、通常、窓ガラスの曇り防止または曇り除去には、上記の除湿冷房運転を用い、デフロスタ口部40−1から吹出すようにすればよいが、冷房まで行ってしまうと、春季や秋季などでは、乗員に冷温による不快感を与える可能性もある。
そこで、この実施例における空気調和装置2においては、除湿暖房運転を行って、ペルチェ素子14に流す電流を制御して温度調節を行い、上記の不快感を解消する。
この空気調和装置2の除湿暖房運転は、乗員からの温度設定要求が現在の内気温センサ80の値より高く、また、湿度設定要求が現在の内湿度センサ82の値より低い時に使われる。
この除湿暖房運転においては、導入側四方弁36と排出側四方弁38とを図7の実線で示すように切り換えて、つまり、図7に示す如く、導入側四方弁36が、第一導入通路44と加湿側導入通路50とを切り換え連絡するとともに、第二導入通路46と除湿側導入通路48とを切り換え連絡し、一方、排出側四方弁38が、第一排出通路52と室内排出通路56とを切り換え連絡するとともに、第二排出通路54と室外排出通路58とを切り換え連絡し、これにより、除湿経路20には、第二導入通路46からの外気(図8の点A)を取り込むとともに、加湿経路24には、第一導入通路44からの内気を取り込む。図8に示す如く、この除湿冷房運転では、空気温度と絶対湿度との状態線図で運転される(再生側30の空気は、省略した)。
この除湿暖房運転において、第二導入通路46からの外気を導入した点Aの空気は、デシカントロータ10の処理側28にて処理され、点Bの空気になり、そして、熱交換器12にて熱交換されて点Cの空気になる。
ここで、この除湿冷房運転時には、点Cの空気が、ペルチェ素子14の吸熱面32により冷却され、点Dの空気となるが、導入側四方弁36により第一モードに選択された後に、ペルチェ素子14に流す電流の向きを変えることにより、図7に示す如く、吸熱面32と放熱面34との位置を替えることができ、点Cの空気を加熱することもできる。つまり、空気調和装置2は、加熱により点Cの空気を、点Rの空気にすることができ、除湿暖房空気を車内に導入する、除湿暖房運転される。
また、ペルチェ素子14に電流を流さない状態(OFF)にすれば、点Cの空気を、そのまま車内排出通路56への調温空気として車内に導入することも可能である。
従って、この実施例における空気調和装置2においては、室内の空気を導入する第一導入通路44を設け、室外の空気を導入する第二導入通路46を設け、前記第一導入通路44及び前記第二導入通路46から導入された空気を、水分の脱着再生可能な吸湿部材であるデシカントロータ10の処理側28、熱交換器12、熱電素子であるペルチェ素子14の吸熱面32の順に通過させることにより除湿する除湿手段22を構成し、前記第一導入通路44及び前記第二導入通路46から導入された空気を、前記熱交換器12、前記ペルチェ素子14の放熱面34、ヒータコア18、前記デシカントロータ10のの再生側30の順に通過させることにより加湿する加湿手段26を構成し、前記除湿手段22と連絡して該除湿手段22により除湿された空気を排出する第一排出通路52を設け、前記加湿手段26と連絡して該加湿手段26により加湿された空気を排出する第二排出通路54を設け、前記第一導入通路44と前記加湿手段24とを連絡し且つ前記第二導入通路46と前記除湿手段22とを連絡する第一モードと、前記第一導入通路44と前記除湿手段22とを連絡し且つ前記第二導入通路46と前記加湿手段26とを連絡する第二モードとを備え、前記第一モードと前記第二モードとのいずれか一方のモードに切り換えられる導入側切換手段である導入側四方弁36を設け、導入側四方弁36により前記第一モードを選択した時には、第一排出通路52と室内排出通路56とを連絡し且つ第二排出通路54と室外排出通路58とを連絡するとともに、導入側四方弁36により前記第二モードを選択した時には、第一排出通路52と室外排出通路56とを連絡し且つ第二排出通路54と室内排出通路56とを連絡するように切り換えられる排出側切換手段である排出側四方弁38を設けている。
これにより、ペルチェ素子14、水分の脱着再生可能な吸湿部材であるデシカントロータ10、熱交換器12、加熱源であるヒータコア18等を適切に配置し、少ないエネルギで、室内を設定された温度及び湿度に調節することができ、また、除湿冷房、加湿暖房、除湿暖房の三つの運転モードを備えているので、どの季節においても、使用者の要求にこたえることが可能となる。
また、空気調和装置2は、導入側四方弁36により前記第一モードを選択した時には、除湿冷房運転することから、常に、室外(外気)から取り込んだ新鮮な空気により、除湿冷房運転することができる。
更に、空気調和装置2は、導入側四方弁36により前記第二モードを選択した時には、加湿暖房運転することから、常に、室外(外気)から取り込んだ新鮮な空気により、加湿暖房運転することができる。また、車両用においては、従来行えなかった運転モードを実現することが可能である。
更にまた、空気調和装置2は、導入側四方弁36により前記第一モードを選択した後に、ペルチェ素子14に流す電流の向きを変えることにより除湿暖房運転とすることから、ペルチェ素子14に流す電流方向を変更するだけで、除湿冷房から除湿暖房へ切り換えることができる。
また、空気調和装置2を車両に搭載した場合には、低エネルギで空気調和装置2を稼動することができるので、エンジンヘの負荷を低減することが可能である。これにより、エンジンの燃料消費量を低減することが可能である。
即ち、この実施例の空気調和装置2によれば、車内からの内気と車外からの外気とを夫々独立して調温装置4に送り込める電気駆動可能な第一、第二ブロアファン6、8を備え、また、ゼオライト、シリカゲル、セビオライト、活性アルミナ、活性炭、塩化リチウム等の除湿能力を有する材料を単独、若しくは、組み合わせた除湿剤として有し、この除湿剤を、繊維バインダー等と共に円柱状に加工したデシカントロータ10を備え、このデシカントロータ10は、モータ等のデシカントロータアクチュエータ94により回転可能であり、また、このデシカントロータ10は、乾燥空気を作る処理側28と吸収水分を熱風等により放出する再生側30とが区分された形状である。
これにより、ペルチェ素子14を用いた冷暖房部分、水分の脱着再生可能な吸湿部材であるデシカントロータ10、熱交換器12、加熱源であるヒータコア18等を適切に配置することにより、従来使用されている空調装置に比べて、低エネルギで温度、湿度の調節が可能な空調装置を提供することができる。
つまり、この実施例における空気調和装置2は、従来の機械圧縮式ヒートポンプを用いた空調装置に比べ、湿度分を効率よく除去できるため、消費エネルギの少ない除湿冷房運転を行うことが可能である。また、従来の車両用の空調装置では行えなかった加湿暖房運転も行うことが可能である。更に、除湿冷房、加湿暖房、除湿暖房運転といった車両用の空調装置に必要な三つの運転モードを有することができ、オールシーズンで駆動可能な車両用の空調装置を提供することができる。
また、アルミプレート等をフィン状に加工し、二つの空気流を隔離しながら交差させ、互いの空気流の熱を交換できる熱交換器12を備え、また、N型半導体とP型半導体を組み合わせて得られるペルチェ効果を持つペルチェ素子14を備え、直流電流によりペルチェ素子14の両面が吸熱面32と放熱面34とに分けられ、電流を逆流させれば、吸熱面32と放熱面34とが逆転するペルチェ素子14であり、直流電流量、電流の逆転等を制御できるペルチェモジュール駆動回路96を備え、更に、車両用のエンジン冷却水が流通し、空気の加熱源として利用できるヒータコア18を備え、第一、第二ブロアファン6、8によって送風された調温装置4内の二つの空気流のうち、一つはデシカントロータ10の処理側28、熱交換器12、ペルチェ素子14の吸熱面32を通る除湿経路20、もう一つは、熱交換器12、ペルチェ素子14の放熱面34、ヒータコア18、デシカントロータ10の再生側30を通る加湿経路24であり、車内からの内気と車外からの外気を分離して、調温装置4に振り分けられる導入側四方弁36を備え、調温装置4から排出された空気を車内か車外かに振り分けられる排出側四方弁38を備え、上記の二つの四方弁36、38は、モータ等の内外気アクチュエータ90により、夫々独立で電気駆動可能であり、調温装置4によって調温された空気を車内に導入する際に、各吹き出しモードに分離できるモードドア42・42を備え、このモードドア42・42は、モータ等のモードアクチュエータ98により電気制御可能であり、各吹き出しモードは、車室内のフロントガラスに吹き付けるデフロスタ口部40−1、乗員の上半身に吹き付ける換気口部40−2、乗員の下半身に吹き付ける足元口部40−3の三種類を有し、上記の各アクチュエータ類、駆動回路等を一意的に制御できるエアコン制御部62を備え、このエアコン制御部62には、乗員からの設定情報を受け取ることができるようなエアコンパネル64が備えられ、現在の温度や湿度情報、エンジン冷却水温などの情報をセンシングし、エアコン制御部62にその情報を電子信号で知らせることができるセンサを備えている。
これにより、この実施例において、除湿、冷却、加熱、熱交換、除湿剤再生等をより効率的に行え、且つ、車両用に適した空調装置を提案することを目的としている。具体的には、ペルチェ素子14による空気の冷却を行う前に、デシカントロータ10の除湿剤による空気の除湿を行えば、結露の心配なく、冷房を行える。また、車両にはエンジンの冷却水があるので、その冷却水を加温するヒータコア18を設け、デシカントロータ10の除湿剤の再生温度を高温にし、吸着能力の再生に当てることができる。
また、冷暖房源であるペルチェ素子14は、ON・OFFや強弱が自由に制御することができ、また、電流の向き等により、冷暖房の逆転等も制御することができる。また、除湿・加湿源であるデシカントロータ10も、ON・OFFにより自由に制御できる。以上により、細かい温度制御、湿度制御が可能となる空気調和装置2を提供することができる。
なお、この発明は、上述の実施例に限定されず、種々応用改変が可能であることは、勿論である。
例えば、加湿暖房時には、加湿量によっては車室内の窓ガラスが曇ってしまうおそれがある。こういった場合は、図9のような構成にして、除湿経路20を通ってきた空気の一部をデフロスタ口部40−1から吹き出すようにすればよい。つまり、加湿暖房運転中は、図6の点Pの空気が足元口部40Cより吹き出ているが、湿度の低い点Lの空気の一部をデフロスタ口部40Aから吹き出すことにより、窓ガラスの曇りを防止できるとするものである。
この場合、図9に示す如く、空気調和装置2は、第一排出通路52から排出される排出空気の一部を車室内デフロスタ通路から排出できるような分岐通路を備えている。具体的には、除湿経路20の出口にデフロスタ口部40Aにつながる分岐通路としてのバイパスライン102を設け、バイパスラインドア104によって風量を制御すればよい。バイパスライン102を使用しないときは、バイパスラインドア104を図9の点線位置まで動かすことで、バイパスライン102に風を流し込まず、通常の加湿暖房運転が可能となる。
この加湿暖房運転の制御に入るには、内湿度センサ82から得られる車内の湿度(湿気)が、外気温センサ76から得られる外気温によって結露するかどうかによって判断する。
また、乗員にデフロスタ口部40−1と足元口部40−3とから同時に風を吹き込ませるデフロスタ(DEF)・足元(FOOT)モードを選択させるようにすることも可能である。また、バイパスラインドア104を、通常用いているモード(MODE)ドア42の一部として加工することも可能である。
これにより、この加湿暖房時において、フロントウィンドウ及びサイドウィンドウのみの曇りを防止することができるので、運転に支障なく加湿暖房をすることが可能となる。
また、空気調和装置2は、車両用に限定した空調装置であるが、一般の住宅用、オフィスや工場等の空調に用いることも可能である。この場合、ヒータコア18に代わる熱源としては、電気ヒータ等を用いればよい。また、エンジン、マイクロガスタービン、燃料電池等の排熱を得られる機器の排熱を導入できる形をとることも可能である。
更に、ペルチェ素子14の駆動電流の供給源は、必要電力に応じて別の電源から供給することも可能である。具体的に、電源は、ハイブリッド車に用いているハイブリッドバッテリ、電気自動車のバッテリ、燃料電池自動車の燃料電池等である。
また、車両ではなく、一般住宅、オフィス、工場などの空調に用いる場合は、室内の電気を導入する等して電力を供給することも可能である。
更にまた、第一、第二ブロアファン6、8は、二つにする必要はなく、ブロアファンを一つで除湿経路20、加湿経路24の二つの経路に独立して送風できる形状にすることも可能である。
温度センサと湿度センサとを統一して、温湿度センサモジュールとして配置することも可能である。
悪臭やタバコの煙等の汚染空気を清浄化するために、内気、外気の取り込み口近傍に、空気清浄用フィルタを設けることも可能である。
また、デシカントロータ10に空気清浄機能を持たせて、フィルタの代わりをさせることも可能である。
更に、エアコンパネル64にオートモードを設定できるボタンなどを追加することも可能である。この場合、センサの読み込み値から、自動でアクチュエータを駆動できるマップ等をエアコン制御部62内に記憶させ、除湿冷房、加湿暖房、除湿暖房の各モードを自動で運転できるようにしてもよい。
また、ヒータコア18に流すエンジン冷却水の流量を制御して、加湿暖房時の温度制御をより細かく制御することも可能である。具体的には、ヒータコア18とエンジンの間の配管に、電気制御できる弁を取り付け、エアコン制御部62等により、弁の開放度合いを制御し、エンジン冷却水の流量を制御すればよい。
日射センサ86からの情報により、冷房を強くする制御を加えることも可能である。具体的には、日射が車内に侵入すると、乗員の上半身に直射する状態になり、腕や顔が熱くなり、不快感を与える。これを防ぐために、日射センサ86により日射強度を測定し、ペルチェ素子14の吸熱面32の能力を制御することで、腕や顔の熱を取り除き、快適性を向上させることができる。
水温センサ84からの情報により、車内に吹き込む風量を制御することも可能である。
つまり、除湿冷房時には、エンジンの冷却水の液温度が低い場合、デシカントロータ10の再生側30に吹き込む風の温度が低くなり、十分な除湿剤の再生が望めなくなる。この場合には、風量を弱くして、液温が上がるにつれて風量を強くしていき、除湿剤の再生温度を上げる制御を行うとよい。
また、この加湿暖房時においては、エンジンの冷却水の液温度が低いと、車内に冷風が吹き出るようになり、不快感を与える。この場合も、風量を弱くして、液温が上がるにつれて風量を強くしていき、不快感を与えない制御を加えるとよい。
調温空気の車内排気通路56に調温空気温度センサや調温空気湿度センサ等を付けて、エアコン制御部62に信号として伝達する手段を持たせることも可能である。この場合、車内に吹き出す空気の温度、湿度がわかり、設定温度、設定湿度になるまでのタイムラグも計算できるようになり、調温装置2の制御がより細かく設定できるようになる。
また、吸湿部材の処理側の手前に、この処理側の空気導入面域全体に空気を分散可能な空気分散部材を設けることにより、導入空気を処理側の空気導入面域全体に分散させて除湿性能を向上することが可能となる。