以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
(第1実施形態)
開示する発明に含まれる加湿装置は、車室内の内装部材に装着される装置であり、車室内を加湿対象空間とする装置である。以下の各実施形態では、加湿装置の一例として、自動車に適用した場合を説明する。したがって、車両に搭載される加湿装置1は、車室内Rを加湿対象空間とする。さらに、加湿装置1を備える車両は、車室内Rの温度調整を行う車両用空調装置を備える。
図1に示すように、加湿装置1は、車室内Rの天井に配置される。図1に記載した上下前後の各矢印は、加湿装置1を車両に搭載した状態における各方向を示している。したがって、上側、下側、前側、後側は、それぞれ、車両上方、車両下方、車両前方、車両後方である。加湿装置1は、その外殻を形成するケーシング6の内部に、送風機2、吸着材モジュール4、温調装置3等を収容して構成されている。
加湿装置1は、吸着材から脱離させた水分によって加湿した加湿空気を吹き出す加湿運転と、吸着材に吸湿した除湿空気を吹き出す除湿運転と、を実施可能な装置である。図1に示すように、加湿装置1においては、加湿運転時、すなわち吸着素子から水分が脱離する脱離時に空気が流れる方向A2に、送風機2、吸着材モジュール4の順に並ぶように設置されている。吸着材モジュール4には、吸着材モジュール4の温度を調整可能な温調装置3が一体に設けられている。したがって、脱離時に、第1開口部60から導入された車室内空気は、温調装置3によって温度調整された吸着材モジュール4を通過することで水分が加えられ後、第2開口部61から車室内へ吹き出される。この脱離時の空気の流れは、図2において実線の矢印で示されている。
加湿装置1には、除湿運転時、すなわち吸着素子に水分が吸着される吸着時に空気が流れる方向A1に、吸着材モジュール4、送風機2の順に並ぶように設置されている。したがって、吸着時に、第2開口部61から導入された車室内空気は、温調装置3によって温度調整された吸着材モジュール4を通過することで水分を放出した後、第1開口部60から車室内へ吹き出される。この吸着時の空気の流れは、図2において破線の矢印で示されている。
送風機2は、図2に示す例では、他の装置よりも第1開口部60に近い位置に設置されているが、送風機2の設置位置は、この位置に限定されない。したがって、送風機2は、第1開口部60と第2開口部61との間に形成される天井裏の空気通路62において、任意の位置に設置することができる。
送風機2は、例えば、軸流のファン20を電動モータにて回転駆動する電動送風機である。送風機2は、制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち回転数や送風空気量が制御される送風手段である。さらに、送風機2は、制御装置50によって電動モータの回転方向が切り替えられることによって、送風空気の流れ方向を相反する向きに切り替えることができるように構成されている。送風機2は、単一の空気通路62において加湿運転時と除湿運転時とで、互いに逆向きの空気の流れ方向を発生させる。
制御装置50が電動モータを正転させると(加湿運転時)、送風空気は、図2の実線矢印に示すように流れる。車室内の空気は、第1開口部60からケーシング6の空気通路62へ吸い込まれて吸着材モジュール4を流れ、加湿空気となって第2開口部61から、例えば車室内Rの前席に着座している乗員の上半身側へ吹き出される。このとき、温調装置3は、制御装置50に制御されて、吸着材モジュール4を例えば加熱して、水分の脱離を促進できる温度になるように制御する。
一方、制御装置50が電動モータを反転させると(除湿運転時)、送風空気は、図2の破線矢印に示すように流れる。車室内Rの空気は、第2開口部61からケーシング6の空気通路62へ吸い込まれて吸着材モジュール4を流れ、除湿空気となって第1開口部60から、例えば車両のフロントウィンド10へ吹き出される。このとき、温調装置3は、制御装置50に制御されて、吸着材モジュール4を例えば冷却して、水分の吸着を促進できる温度になるように制御する。
ケーシング6は、樹脂または金属によって箱状に形成され、内部に送風機2から送風された送風空気を流通させる単一の空気通路62を形成している。単一の空気通路62には、加湿運転時、除湿運転時の両方において空気が流通する。ケーシング6は、上下方向の厚み寸法が車両天板11の車室内側に取り付けられた内装部材12と車両天板11との距離と同程度であるとともに、車両天板11に沿って広がる薄形の直方体状に形成されている。
ケーシング6の下面、すなわち車室内側の面には、車室内Rと空気通路62との間で送風空気を流入出させる少なくとも2つの開口部が形成されている。これらの開口部のうち、車両後方側に配置された第2開口部61は、車両前席に着座している乗員の上半身に向かって開口している。第2開口部61よりも車両前方側に配置された第1開口部60は、フロントウィンド10に向かって開口している。例えば、第1開口部60、第2開口部61には、通風抵抗の比較的小さい網状のフィルタが配置され、ケーシング6内の空気通路62に異物が流入してしまうことを抑制することができる。
吸着材モジュール4は、吸着材を担持させた複数の金属製の板状部材40を間隔をあけて積層配置し、板状部材40の間に送風空気を通過させる通路を備える吸着素子を備えている。吸着材は、空気中の水分を吸収する吸湿材でもある。この実施形態の吸着材モジュール4では、このように吸着材を担持させた複数の板状部材40を積層配置することで、送風空気と吸着材との接触面積を増加させることができる。吸着材モジュール4では、吸着材として、シリカゲル等の高分子吸着材、天然物または人工物であり、例えばゼラチン質の軟泥が乾燥して多面体を作ったものであるゼロライト等の吸湿材料を備えている。
温調装置3は、吸着材モジュール4自体を加熱及び冷却可能な温調手段である。温調装置3は、吸着材モジュール4の温度を制御可能な構成であれば、その温度調節方法として各種の方法を採用できる。温調装置3には、例えば通電の方向によって吸熱したり放熱したりするペルチェ素子を有するペルチェモジュールを用いることができる。
ペルチェモジュールは、ペルチェ素子と、吸着材モジュール4に接触するようにペルチェ素子の一方の面に設けられる内側板部と、空気通路62の外部に位置するようにペルチェ素子の他方の面に設けられる外側板部と、を備える。制御装置50は、ペルチェ素子に流れる電流の大きさ及び向きを制御することで、温調装置3による温度調節機能を制御することができる。
ペルチェ素子は、2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するペルチェ効果を利用した素子である。ペルチェ素子は、例えば、2種の金属板の間にP型半導体とN型半導体とを複数配置するとともに、一方の金属板によってN−P接合を構成し、かつ他方の金属板によってP−N接合を構成した素子である。ペルチェ素子では、PN接合部分に電流を流すことにより、N→P接合部分に相当する金属板で吸熱現象が生じ、P→N接合部分に相当する金属板で放熱現象が生じる。したがって、内側板部、外側板部は、N型半導体からP型半導体へ電流が流れるように橋渡しする場合には吸熱する吸熱部となり、P型半導体からN型半導体へ電流が流れるように橋渡しする場合には発熱する放熱部となる。内側板部、外側板部は、アルミニウムなど、熱伝導率の良い金属で形成される。
制御装置50による電流制御により、N型半導体、内側板部、P型半導体の順に電流が流れる場合には、内側板部が吸熱部となり、外側板部が放熱部となる。この場合、吸着材モジュール4は内側板部で吸熱されるため、温度が低下する。このとき、温調装置3は、吸着材モジュール4を冷却して、水分の吸着を促進できる温度になるように制御できる。さらに、内側板部で吸熱された熱は、ペルチェ素子から外側板部へ伝わり、外側板部の放熱作用によって空気通路62の外部に排出される。
また、制御装置50による電流制御により、P型半導体、内側板部、N型半導体の順に電流が流れる場合には、内側板部が放熱部となり、外側板部が吸熱部となる。この場合、吸着材モジュール4は内側板部で加熱されるため、温度が上昇する。このとき、温調装置3は、吸着材モジュール4を加熱して、水分の脱離を促進できる温度になるように制御できる。
制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されており、その出力側に接続された送風機2の作動及び温調装置3の温度調整作用を制御する。制御装置50の入力側には、車室内Rの空気温度を検出する内気温検出手段としての内気センサ、車室外温度(外気温)を検出する外気温検出手段としての外気センサ等が接続されており、これらのセンサの検出信号が入力される。さらに、制御装置50の入力側には、加湿装置1を少なくとも運転、停止させるための各種スイッチからなる操作部51が接続されており、各スイッチの操作信号が入力される。
また、この制御装置50は、例えば、車両用空調装置の各構成機器の作動を制御する空調用制御装置等と一体的に構成されるものでもよい。また、この制御装置50は、空調用制御装置と別体で、制御対象とする装置の制御状態に関する情報を互いに通信するものであってもよい。
次に、上記構成における加湿装置1の作動について説明する。加湿装置1は、例えば、乗員による操作部51の操作によって運転スイッチがONされると制御装置50に運転指令信号が入力されて運転を開始する。加湿装置1は、操作部51からの入力信号に伴い、自動運転、強制運転のいずれかのモードで作動する。すなわち、自動運転モードで作動する場合には、車室内が加湿空気の供給条件を満たしたときに加湿運転が行われる。例えば、加湿運転は、冬季のように比較的外気温が低く、車室内Rが乾燥しやすい所定の条件を満たしたときに行われる。また、強制運転モードで作動する場合には、車室内が加湿空気の供給条件を満たしたか否かにかかわらず、操作部51からの入力信号が強制運転モードの運転指令であるときに加湿運転が行われる。
加湿装置1に係る運転について図4のフローチャートを参照して説明する。図4のフローチャートは、例えば、制御装置50に電源が投入されている状態で開始され、各処理は制御装置50によって実行される。このフローチャートが開始されると、制御装置50は、ステップ10で運転開始命令が入力されているか否かを判定する。運転開始指令は、自動運転モードにおいて加湿空気の供給条件を満たしたとき、例えば車室内が所定の湿度未満になったときや、強制運転モードが設定されたときに、入力されていると判定される。
ステップ10で運転開始指令が入力されていると判定すると、ステップ20に進む。ステップ10の判定は、運転開始指令が入力されていると判定されるまで繰り返し行われる。ステップ20に進む場合は、前回の加湿運転または除湿運転の終了後に、所定の放置時間(例えば数時間)が経過しているときに相当しうる。この場合、運転停止状態で吸着材モジュール4等に付着した臭気成分が空気通路62に脱離されることで高濃度の臭気が蓄積し、次の運転開始時に臭気を含んだ加湿風が吹き出される可能性がある。
次のステップ20では、小風量の送風風量となるように送風機2を制御する。この小風量は、通常の加湿運転時に設定される送風風量に対して小さい風量であり、第2開口部61から送風空気が吹き出されたとしても乗員が臭気を感じない程度の弱い風量に設定される。この小風量は、人がもつ普通の嗅覚能力に基づいて設定することができる。また、この小風量は、車室内Rが無風状態である場合や、車両用空調装置の空調風が吹き出している場合のいずれかを考慮して、乗員が臭気を感じない程度の風量に設定されてもよい。通常の加湿運転とは、前回の加湿運転または除湿運転の終了後に所定の放置時間が経過していない場合に行われる加湿運転のことである。例えば、この小風量は、通常の加湿運転時の送風風量に対して半分以下の風量に設定することができる。
次のステップ30では、温調装置3等の作動を制御して、前述の加湿運転を実施する。これにより、車室内Rの空気は、第1開口部60から単一の空気通路62へ吸い込まれて吸着材モジュール4を流れ、加湿空気となって第2開口部61から小風量で乗員の上半身側へ吹き出される。このように、前回の運転終了から数時間以上経過した後の最初の運転時には、乗員に臭気が届かない程度の小風量で加湿空気が供給される。
このように運転開始時の加湿運転は、所定時間(例えば30秒)行うため、ステップ40で当該所定時間が経過したと判定するまで継続される。つまり、ステップ40での判定処理は、加湿運転を終了するためのタイマ機能である。ステップ40で当該所定時間が経過したと判定すると、次のステップ50で、送風機2の作動、温調装置3の作動等を制御して、吸湿運転、すなわち前述の除湿運転を実施する。このときの除湿運転では、除湿運転について予め設定された送風風量で送風機2の回転数が制御される。
この吸湿運転は、所定時間(例えば90秒)行うため、当該所定時間が経過するとステップ60で運転終了指令が入力されたか否かを判定する。この運転終了指令は、自動運転モードや強制運転モードの停止が設定されたときに、入力されていると判定される。
ステップ60で運転終了指令が入力されていないと判定すると、ステップ30に戻り、今度は、通常の加湿運転時に設定される送風風量で加湿運転を実施する。ステップ60で運転終了指令が入力されていると判定すると、本フローチャートを終了する。
また、ステップ20、ステップ30に示す運転開始時の加湿運転が終了した後は、運転終了指令が入力されるまで、除湿運転と加湿運転とが所定時間毎に切り換わって実施されることになる。これにより、加湿装置1によれば、給水するこなく、継続的に加湿運転、除湿運転を実施することができる。
次に、第1実施形態の加湿装置1がもたらす作用効果について説明する。加湿装置1は、吸着材から脱離させた水分によって加湿した加湿空気を吹き出す加湿運転と、吸着材に吸湿した除湿空気を吹き出す除湿運転と、を実施可能な車両用の装置である。加湿装置1は、吸着材モジュール4と、吸着材モジュール4の温度を調整する温調装置3と、加湿運転及び除湿運転のそれぞれにおいて空気を送風する送風機2と、少なくとも送風機2の作動を制御する制御装置50と、を備える。制御装置50は、加湿運転または除湿運転の終了後、次回の運転開始時には、通常の加湿運転の送風風量よりも小風量となるように送風機2の作動を制御して、小風量の加湿運転を実施する。
これによれば、加湿運転または除湿運転の終了後、次回の運転開始時には、通常の加湿運転よりも小風量の加湿運転を実施する。このため、運転開始時に臭気を含んだ空気が車室内に送風されたとしても、乗員に届かないところに拡散させることができる。したがって、次回の運転開始時に、乗員が臭気を感じにくい状況を提供できる。以上より、運転開始時に乗員に対する臭気の影響を軽減できる加湿装置を提供できる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態の他の形態である加湿装置1の制御について図5を参照して説明する。第2実施形態では、加湿装置1の制御のみが第1実施形態と異なる。第2実施形態において、前述の実施形態において同一符号を付した構成部品、処理及び特に説明しない構成は、前述の実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。以下、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
制御装置50は、図5のフローチャートにしたがった制御を実行する。図5のフローチャートも、例えば、制御装置50に電源が投入されている状態で開始され、各処理は制御装置50によって実行される。このフローチャートが開始されると、制御装置50は、ステップ100で運転開始命令が入力されているか否かを判定する。このステップ100では、前述した第1実施形態のステップ10と同様の処理が行われ、同様の作用効果が得られる。
ステップ100で運転開始指令が入力されていると判定すると、ステップ110に進む。次のステップ110では、送風機2の作動、温調装置3の作動等を制御して、吸湿運転、すなわち前述の除湿運転を実施する。このときの除湿運転では、除湿運転について予め設定された送風風量で送風機2の回転数が制御される。ステップ100の吸湿運転は、前述した第1実施形態のステップ50と同様の処理が行われ、同様の作用効果が得られる。ステップ100の吸湿運転によって、第1開口部60から送風空気が吹き出されたとしても乗員の上半身に向けて送風されないので、乗員は送風空気に含まれる臭気を感じにくい。
このように運転開始時の吸湿運転(除湿運転)は、所定時間(例えば30秒)行うため、ステップ120で当該所定時間が経過したと判定するまで継続される。つまり、ステップ120での判定処理は、除湿運転を終了するためのタイマ機能である。ステップ120で当該所定時間が経過したと判定すると、次のステップ130で、送風機2の作動、温調装置3の作動等を制御して、前述の加湿運転を実施する。このときの加湿運転では、加湿運転について予め設定された、送風方向の向きで送風機2の回転方向が制御され、送風風量で送風機2の回転数が制御される。
この加湿運転は、所定時間(例えば90秒)行うため、当該所定時間が経過するとステップ140で運転終了指令が入力されたか否かを判定する。この運転終了指令は、自動運転モードや強制運転モードの停止が設定されたときに、入力されていると判定される。
ステップ140で運転終了指令が入力されていないと判定すると、ステップ110に戻り、除湿運転を実施する。ステップ140で運転終了指令が入力されていると判定すると、本フローチャートを終了する。
次に、第2実施形態がもたらす作用効果について説明する。加湿装置1は、吸着材から脱離させた水分によって加湿した加湿空気を乗員に向けて吹き出す加湿運転と、吸着材に吸湿した除湿空気を乗員以外の場所に吹き出す除湿運転と、を実施可能な車両用の装置である。この加湿装置1は、加湿運転及び除湿運転の両方において空気が流通するように設けられた単一の空気通路62を備える。加湿装置1は、加湿運転において単一の空気通路62に空気を送風し、除湿運転において単一の空気通路62に加湿運転とは逆向きに空気を送風する送風機2を備える。制御装置50は、加湿運転または除湿運転の終了後、次回の運転開始時には、除湿運転を実施するように送風機2の作動を制御する。
これによれば、加湿運転または除湿運転の終了後、次回の運転開始時には、除湿運転を実施する。このため、運転開始時に臭気を含んだ空気が乗員以外の場所に吹き出される。これにより、車室内に送風されたとしても、乗員に届かないところに拡散させることができる。したがって、次回の運転開始時に、乗員が臭気を感じにくい状況を提供できる。また、加湿装置1は、加湿運転及び除湿運転の両方において空気が流通するように設けられた単一の空気通路62を備えるため、通路構成が複雑でない簡素な構成の装置が得られる。以上より、運転開始時に乗員に対する臭気の影響を軽減し、かつ空気通路構成の簡素化が図れる加湿装置1を提供できる。
(第3実施形態)
第3実施形態について図6を参照して説明する。第3実施形態において、前述の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品及び説明しない構成は、前述の実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏するものである。第3実施形態では、前述の実施形態と異なる部分のみ説明する。
第3実施形態の加湿装置101は、温調装置3が冷却装置5と加熱装置7とを有して構成される点が第1実施形態で説明した装置構成と相違する。このように温調手段は、吸着材モジュール4に対して直接、加熱や冷却を行う吸着材モジュール4と一体の温調装置3でなく、吸着材モジュール4とは別体である冷却装置5と加熱装置7とによって構成される。
第3実施形態の加湿装置101によれば、空気通路62において、脱離時(加湿運転時)に空気が流れる方向A2に、第1開口部60側から、送風機2、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5の順に並んで設けられる。つまり、吸着材モジュール4は、空気通路62において加熱装置7と冷却装置5との間に位置する。
図6に示すように、加湿装置101は、その外殻を形成するケーシング6の内部に、送風機2、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5等を収容して構成されている。加湿装置101においては、吸着素子から水分が脱離する脱離時に空気が流れる方向A2に、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5の順に並ぶように設置されている。したがって、脱離時に、第1開口部60から導入された車室内空気は、加熱装置7で加熱されてから、吸着材モジュール4を通過して水分が加えられ、さらに冷却装置5で冷却された後、第2開口部61から車室内Rへ吹き出される。この脱離時の空気の流れは、図6において実線の矢印で示されている。
加湿装置101には、吸着素子に水分が吸着される吸着時(除湿運転時)に空気が流れる方向A1に、冷却装置5、吸着材モジュール4、加熱装置7の順に並ぶように設置されている。したがって、吸着時に、第2開口部61から導入された車室内空気は、冷却装置5で冷却されてから、吸着材モジュール4を通過して水分を放出し、さらに加熱装置7で加熱された後、第1開口部60から車室内Rへ吹き出される。この吸着時の空気の流れは、図6において破線の矢印で示されている。
制御装置50が電動モータを正転させると、車室内Rの空気は、第1開口部60からケーシング6の空気通路62へ吸い込まれる。そして、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5の順に流れ、加湿空気となって第2開口部61から、例えば車室内Rの前席に着座している乗員の上半身側へ吹き出される。
一方、制御装置50が電動モータを反転させると、車室内Rの空気は、第2開口部61からケーシング6の空気通路62へ吸い込まれる。そして、冷却装置5、吸着材モジュール4、加熱装置7の順に流れ、除湿空気となって第1開口部60から、例えば車両のフロントウィンド10へ向かって吹き出される。
加熱装置7は、ケーシング6内の空気通路62を流通する空気を加熱可能な加熱手段であり温調手段でもある。加熱装置7は、空気を加熱可能な構成であれば、その加熱方法として各種の方法を採用できる。加熱装置7には、通電によって発熱する発熱体を有する装置、室内の空気よりも高温の媒体と空気とを熱交換することによって室内空気を加熱する装置を用いることができる。加熱装置7は、例えば、ニクロム線ヒータ、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを有する装置、熱交換器等である。熱交換器に用いる空気よりも高温の媒体には、温水、冷媒、エンジン冷却水、車両において発熱する電子部品等の発熱体を採用することができる。
冷却装置5は、ケーシング6内の空気通路62を流通する空気を冷却可能な冷却手段であり温調手段でもある。冷却装置5は、空気を冷却可能な構成であれば、その冷却方法として各種の方法を採用できる。冷却装置5には、通電によって吸熱するペルチェ素子を有する装置、室内の空気よりも低温の媒体と空気とを熱交換することによって室内空気を冷却する装置を用いることができる。冷却装置5は、例えば、ペルチェ素子を有するサーモモジュール、熱交換器等である。熱交換器に用いる空気よりも低温の媒体には、外気、空調空気、空調装置に用いられる冷凍サイクルを流れる冷媒等を採用することができる。
低温の媒体として外気を用いる熱交換器には、ヒートシンクがある。ヒートシンクは、伝熱性に優れる金属、例えば、アルミニウム、銅で形成された複数のフィンを有する伝熱部材である。ヒートシンクは、例えば、車両天板11に取り付けられる。ヒートシンクは、車室外の外気の温度をケーシング6内の空気通路62に伝熱する機能を果たす。ヒートシンクは、車室外の外気とケーシング6内の空気通路62を流通する送風空気とを熱交換させることができる。このヒートシンクは、外気が有する冷熱を車室内の送風空気に放冷することによって送風空気を冷却する冷却装置5、または、送風空気の有する熱を外気に放熱させることによって送風空気を冷却する冷却装置5を構成する。
制御装置50は、送風機2による送風風量を制御して、加熱装置7や冷却装置5による加熱作用や冷却作用を制御するものである。制御装置50は、冷却水、冷媒等の流量を制御して加熱装置7による加熱能力や冷却装置5による冷却能力を制御したり、通電電力量を制御して加熱装置7による加熱能力や冷却装置5による冷却能力を制御したりできる。
次に、上記構成における加湿装置101の作動について説明する。加湿装置101では、作動スイッチが投入されると、制御装置50が送風機2の電動モータを正転させる状態と反転させる状態とを、例えば所定時間毎に交互に切り替える。これにより、送風空気が図6の実線矢印に示すように流れる通風経路と、図6の破線矢印に示すように流れる通風経路とが所定時間毎に切り替えられることになる。
制御装置50が送風機2の電動モータを正転させると、25℃に温度調整されている車室内Rの空気が、第1開口部60を介して、加湿装置1の空気通路62へ吸い込まれる。空気通路62に吸い込まれた送風空気は、まず加熱装置7を通過するときに加熱される。
この際、加熱装置7を通過後の送風空気の温度が車室内Rの空気温度よりも所定温度(例えば、5℃)分高くなるように、制御装置50が加熱装置7を一定出力で作動させる、もしくは空気の温度変化に応じて加熱装置7の出力を制御する。例えば、加熱装置7を通過後の送風空気の温度が30℃程度に上昇する。
加熱装置7を通過後の送風空気は、吸着材モジュール4に流入する。この際、加熱装置7を通過後の温度上昇した送風空気の相対湿度は、車室内Rの空気の相対湿度よりも低下している。したがって、加熱装置7を通過後の、相対湿度が下がった送風空気を吸着材モジュール4の吸着材に接触させることで、吸着材に吸着している水分が空気に脱離しやすい状況となる。つまり、加熱装置7によって相対湿度が下げられた空気は、吸着材が保持している水分を含みやすく、吸着材モジュール4を流出後の空気は、十分に加湿された加湿空気となる。
この加湿空気は、さらに冷却装置5によって冷却されるため、加熱装置7によって温度上昇された加湿空気の温度が低下することになる。これにより、加湿空気を涼風にした状態で、第2開口部61から乗員に向けて提供できる。したがって、加湿装置101によれば、脱離時に、加熱装置7による加熱によって十分に加湿された空気を、冷却装置5によって涼風にすることで、乗員の快適性を向上する加湿風を提供することができる。
この脱離時には、吸着材モジュール4に供給する前の空気を加熱装置7で加熱するため、当該空気を迅速に温度上昇させることができる。さらに、空気温度が迅速に上昇したことにより、空気の相対湿度を迅速に下げることができるため、吸着材モジュール4での水分脱離が活発に行われ、吸着材モジュール4を流出後の空気の相対湿度を迅速に高めることができる。これに対して、吸着材モジュールを直接加熱する方式の場合には、吸着材モジュールは徐々に温度上昇するようになる。このため、吸着材モジュールでの水分脱離が活発に行われないので、吸着材モジュールを流出後の空気の相対湿度は徐々にしか上昇しない。
次に、制御装置50が送風機2の電動モータを反転させると、例えば25℃に温度調整されている車室内Rの空気が、第2開口部61を介して、加湿装置101の空気通路62に吸い込まれる。空気通路62に吸い込まれた送風空気は、まず冷却装置5を通過するときに冷却される。
冷却装置5を通過後の送風空気は、吸着材モジュール4に流入する。この際、冷却装置5を通過後の温度低下した送風空気の相対湿度は、車室内Rの空気の相対湿度よりも上昇している。これにより、車室内Rの空気に対して相対湿度が高まった送風空気を吸着材に接触させることができるので、空気の水分が吸着材に吸着しやすい状況となる。つまり、冷却装置5によって相対湿度が上げられた空気は、吸着材に水分を吸着させやすく、吸着材モジュール4を流出後の空気は、十分に除湿された除湿空気となる。
さらに、吸着材モジュール4を流出した送風空気は、加熱装置7を通過する際に加熱され、第1開口部60を介して、乗員の上半身を向いていない、フロントウィンド10、後部座席側、車室内の下方等に吹き出される。
この吸着時には、吸着材モジュール4に供給する前の空気を冷却装置5で冷却するため、当該空気を迅速に温度低下させることができる。さらに、空気温度が迅速に低下したことにより、空気の相対湿度を迅速に高めることができるため、吸着材モジュール4での水分吸着が活発に行われ、吸着材モジュール4を流出後の空気の相対湿度を迅速に低下させることができる。これに対して、吸着時にヒータを停止して吸着材モジュール4の加熱を止める方式の場合には、吸着材モジュールは成り行きで徐々にしか温度低下しないので、吸着材モジュールにおいて活発な吸着は行われない。したがって、吸着材モジュールを流出後の空気の相対湿度は徐々にしか低下しない。
次に、第3実施形態の加湿装置101がもたらす作用効果について説明する。加湿装置101は、吸着材に供給される空気を加熱する加熱装置7と、加熱装置7によって加熱された空気に対して吸着材に吸着されている水分を脱離する吸着材モジュール4と、吸着材モジュール4によって加湿された空気を冷却する冷却装置5とを備える。加湿運転においては、加熱装置7によって加熱された空気に対して吸着材から水分を脱離させた後、さらに当該空気を冷却装置5によって冷却してから加湿空気として車室内Rに供給する。除湿運転においては、冷却装置5によって空気を冷却してから、吸着材で水分を吸着させる。
この構成によれば、加湿運転時に、吸着材モジュール4に供給する前の空気を加熱装置7で加熱するため、当該空気を迅速に温度上昇させることができる。さらに、空気温度が迅速に上昇することにより、空気の相対湿度を迅速に下げることができる。これにより、吸着材モジュール4での水分脱離が活発に行われ、吸着材モジュール4を流出後の空気の相対湿度を迅速に高めることができる。
一方、除湿運転時には、吸着材モジュール4に供給する前の空気を冷却装置5で冷却するため、当該空気の迅速な温度低下が得られる。さらに、空気温度が迅速に低下することにより、空気の相対湿度を迅速に高めることができる。これにより、吸着材モジュール4での水分吸着が活発に行われ、吸着材モジュール4を流出後の空気の相対湿度を迅速に低下させることができる。以上のように、加湿装置101によれば、加湿運転時及び除湿運転時の両方において、吸着材モジュール4を流出後の空気の温度応答性及び湿度応答性を著しく改善することができる。この加湿装置101は、乗員の快適性を損なわずに、効果的な加湿及び除湿を実現することができる。
また、加湿装置101によれば、吸着材モジュール4を流出後の空気について、加湿運転時の迅速な温湿度の上昇と除湿運転時の迅速な温湿度の低下とを両立できる装置を、簡素な構成で提供することができる。
また、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5は、加湿運転時、除湿運転時の両方において空気が流通する単一の空気通路62に設けられる。送風機2は、単一の空気通路62において加湿運転時と除湿運転時とで、互いに逆向きの空気の流れ方向を発生させる。加熱装置7、吸着材モジュール4及び冷却装置5は、単一の空気通路62において、加湿運転時に空気が流れる方向に、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5の順に並んで設けられる。
この構成によれば、送風機2による送風方向の向きを変更することにより、加湿運転時、除湿運転時を容易に切り替えることが可能な加湿装置101を提供できる。また、加湿装置101には、通風経路を切り替える通風経路切替手段を設ける必要がないため、装置全体として、より一層、小型化及び製造コストの低減を図ることができる。
また、加熱装置7は、除湿運転時に、吸着材で水分が吸着された後の空気を加熱し、当該加熱後の空気は、乗員の上半身へ送風されないように車室内Rに供給される。例えば、除湿運転時の空気が車室内Rに向けて吹き出される第1開口部60をフロントウィンド10や車室内の後部座席側に向けたり、車室内Rの下部、例えば床面付近に向けたりすることができる。この構成によれば、加湿運転時だけでなく、除湿運転時にも加熱装置7による加熱を行うため、例えば、加熱装置7を常に運転させておくことができる。これにより、加熱装置7による加熱や冷却装置5による冷却のタイミングを制御する必要が無いため、制御用の回路や、運転タイミングを切り替えるための制御装置を備える必要がなく、加湿装置101のコスト低減が図れる。
冷却装置5は、空気通路62を流通する空気と外気とを熱交換することにより、当該空気を冷却する熱交換器である。これによれば、冬季の低温である外気を冷却用の媒体として利用できるため、冷却のための動力が不要であり、省エネルギで低コストの冷却装置を構成できる。
(第4実施形態)
第4実施形態について図7を参照して説明する。第4実施形態において、前述の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品及び説明しない構成は、前述の実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏するものである。第4実施形態では、前述の実施形態と異なる部分のみ説明する。
第4実施形態の加湿装置201は、温調装置3が加熱装置7を有さず冷却装置5だけを有して構成される点が第3実施形態で説明した装置構成と相違する。このように温調手段は、冷却装置5によって構成される。
図7に示すように、加湿装置201は、その外殻を形成するケーシング6の内部に、送風機2、吸着材モジュール4、冷却装置5等を収容して構成されている。加湿装置201においては、吸着素子から水分が脱離する脱離時(加湿運転時)に空気が流れる方向A2に、送風機2、吸着材モジュール4、冷却装置5の順に並ぶように設置されている。したがって、脱離時に、送風機2の吸引力によって第1開口部60から導入された車室内空気は、吸着材モジュール4を通過して水分が加えられ、さらに冷却装置5で冷却された後、第2開口部61から車室内へ吹き出される。この脱離時の空気の流れは、図7において実線の矢印で示されている。
加湿装置1には、吸着素子に水分が吸着される吸着時(除湿運転時)に空気が流れる方向A1に、冷却装置5、吸着材モジュール4、送風機2の順に並ぶように設置されている。したがって、吸着時に、送風機2の吸引力によって第2開口部61から導入された車室内空気は、冷却装置5で冷却されてから、吸着材モジュール4を通過して水分を放出した後、第1開口部60から車室内へ吹き出される。この吸着時の空気の流れは、図7において破線の矢印で示されている。
(第5実施形態)
第5実施形態について図8を参照して説明する。第5実施形態において、前述の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品及び説明しない構成は、前述の実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏するものである。第5実施形態では、前述の実施形態と異なる部分のみ説明する。
第5実施形態の加湿装置301は、温調装置3が冷却装置5を有さず加熱装置7だけを有して構成される点が第3実施形態で説明した装置構成と相違する。このように温調手段は、加熱装置7によって構成される。
図8に示すように、加湿装置301は、その外殻を形成するケーシング6の内部に、送風機2、加熱装置7、吸着材モジュール4等を収容して構成されている。加湿装置301においては、吸着素子から水分が脱離する脱離時(加湿運転時)に空気が流れる方向A2に、送風機2、加熱装置7、吸着材モジュール4の順に並ぶように設置されている。したがって、脱離時に、送風機2の吸引力によって第1開口部60から導入された車室内空気は、加熱装置7で加熱されてから吸着材モジュール4を通過して水分が加えられた後、第2開口部61から車室内へ吹き出される。この脱離時の空気の流れは、図8において実線の矢印で示されている。
加湿装置1には、吸着素子に水分が吸着される吸着時(除湿運転時)に空気が流れる方向A1に、吸着材モジュール4、加熱装置7、送風機2の順に並ぶように設置されている。したがって、吸着時に、送風機2の吸引力によって第2開口部61から導入された車室内空気は、吸着材モジュール4を通過して水分を放出した後、加熱装置7で加熱された後、第1開口部60から車室内へ吹き出される。この吸着時の空気の流れは、図8において破線の矢印で示されている。
(第6実施形態)
第6実施形態について図9〜図14を参照して説明する。第6実施形態では、ファンの回転方向を変更することなく、ガイド部の機能によって風向を逆向きに変更可能な送風機102について説明する。
第6実施形態の送風機102は、ケーシング6と、ファン120と、第1ガイド部121と、第2ガイド部122と、を備える送風手段である。送風機102は、送風機能と、ガイドの機能によって風向を逆向きに変更可能な風向変更機能と、を有する。すなわち、送風機102は、風向変更装置を備える。ケーシング6、ファン120、第1ガイド部121及び第2ガイド部122は合成樹脂製である。
ケーシング6は、空気流路を形成するとともに、ファン120、第1ガイド部121及び第2ガイド部122を内部に収容する。ケーシング6は、屈曲した曲がり部6aを有し、曲がり部6aの内周壁6b近傍にファン120を収容する。
ファン120は、貫流式、すなわちクロスフロータイプのものである。ファン120は、図11に示すように、ファン回転軸120aを中心に回転する羽根車で構成される。羽根車は、回転軸線の周りに配置された多数枚の翼120bを有する。羽根車の回転により、空気が羽根車内に流入し、羽根車内を貫流して、羽根車から流出する。ファン120は、ファン回転軸120a方向の幅が長く、径方向の幅が短い形状である。ファン120は、ケーシング6に設けられた電動モータによって回転駆動される。
第1ガイド部121、第2ガイド部122は、ファン120の周囲に配置されている。以下、第1ガイド部121、第2ガイド部122のそれぞれに共通する説明については、各ガイド部121、122と表現することがある。各ガイド部121、122は、羽根車の回転により、空気が羽根車内に流入し、羽根車内を貫流して、羽根車から流出させるためのものである。換言すると、各ガイド部121、122は、ファン120の送風方向を定めるのに必要なガイド部である。
第1ガイド部121は、一般的にスタビライザーと呼ばれる部分であり、図9、図10に示されるように、ファン120の内部に循環流B1及び循環流B2を安定的に形成するためのものである。第1ガイド部121は、ファン120に近接している。ここでは、第1ガイド部121は断面V字形状であり、その先端部121aがファン120に近接している。
第2ガイド部122は、ファン120から流出する空気をスムーズに送り出すためのものである。第2ガイド部122は、ファン120の外周に沿って湾曲した形状であって、大部分がファン120の径方向での幅が均一な形状である。第2ガイド部122は、ファン120から無駄なく空気を送り出すように、ファン120の回転方向に向かってファン120との間隔が徐々に大きくなるように設けられる。第2ガイド部122は、ファン120を挟んだ第1ガイド部121の反対側に配置されている。また、第2ガイド部122は、その大部分が第1ガイド部121の反対側に位置していればよい。
各ガイド部121、122は、回転可能に構成されており、図9の停止位置と図10の停止位置との間を回転移動する。図11に示すように、第1ガイド部121と第2ガイド部122は、回転軸方向端部に位置する円板形状の第1連結部125と、回転軸方向中央に位置するリング状の第2連結部126とによって連結された一体構造である。
図11、図12に示すように、第1連結部125には、ファン回転軸120aを支持するファン軸受け部124が設けられている。ファン軸受け部124は開口部を有し、この開口部にファン回転軸120aが挿入されている。第1連結部125には、ファン回転軸120aと同軸状に配置された円筒状のガイド回転軸123が設けられている。ケーシング6には、ガイド回転軸123を支持するガイド軸受け部63が設けられている。ガイド軸受け部63は開口部を有し、この開口部にガイド回転軸123が挿入されている。
このように、ガイド回転軸123が、ケーシング6のガイド軸受け部63に回転可能に支持されることにより、各ガイド部121、122が回転可能となっている。さらに、ファン回転軸120aがファン軸受け部124に回転可能に支持されることで、ファン120が回転する際に発生する回転トルクが各ガイド部121、122に伝達される構造となっている。
図13、図14に示すように、ガイド回転軸123にはストッパピン80が設けられ、ケーシング6にはストッパ8が設けられている。ストッパピン80及びストッパ8は、各ガイド部121、122の回転を停止させるとともに、各ガイド部121、122の停止位置を切り替える機構をなす。
ストッパピン80は、図11に示されるように、円筒状のガイド回転軸123の一部が軸方向に突出した突出部である。ストッパ8は、ストッパピン80に当接して各ガイド部121、122の回転を停止させる第1当接部81、第2当接部82を有している。ストッパ8はC字形状であり、C字形状の2つの先端部が第1当接部81、第2当接部82を構成している。
また、ストッパ8は、図13、図14中の上下方向に移動可能となっている。例えば、金属製のストッパ8が用いられるとともに、ストッパ8の駆動源として、2つの電磁石84、85と、電源86と、2つの電磁石84、85の一方と電源86との接続を切り替えるスイッチ87とが用いられる。スイッチ87によって、2つの電磁石84、85の一方と電源86との接続を切り替えることで、ストッパ8の一部83が、図中下側の電磁石84に引き寄せられたり、図中上側の電磁石85に引き寄せられたりする。
図13に示すように、ストッパ8が下側位置のとき、第1当接部81がストッパピン80に当接することで、各ガイド部121、122が図9の停止位置となる。一方、図14に示すように、ストッパ8が上側位置のとき、第2当接部82がストッパピン80に当接することで、各ガイド部121、122が図10の停止位置となる。このように、各ガイド部121、122の停止位置が図9、図10の停止位置のいずれかに切り替え可能に構成されている。
次に、このように構成した送風機102の作動について説明する。まず、図9の矢印の方向A1に示すように、ファン120の送風方向を左下方向、すなわち、吸着時の送風方向とする場合、各ガイド部121、122の停止位置を図9の停止位置とする。これは、ストッパ8を図13の下側位置として、ファン120を回転させることで実現される。すなわち、ストッパピン80が第1当接部81に当接する図13の位置になければ、ファン120の回転トルクによって、各ガイド部121、122が回転する。そして、ストッパピン80が第1当接部81に当接することによって、各2ガイド部121、122の回転が停止する。これにより、各ガイド部121、122が図9の停止位置となる。この結果、ファン120の右側から空気が流入し、ファン120の左下側へ空気が送り出される。すなわち、第2開口部61から吸い込まれた室内の空気は、第1開口部60から室内に吹き出される吸着時の送風流れを形成する。
一方、図10の矢印の方向A2に示すように、ファン120の送風方向を右方向とする場合、各ガイド部121、122の停止位置を図10の停止位置とする。これは、ストッパ8を図14の上側位置として、ファン120を回転させることで実現される。すなわち、ストッパピン80が第2当接部82に当接する図14の位置になければ、ファン120の回転トルクによって、各ガイド部121、122が回転する。そして、ストッパピン80が第2当接部82に当接して、各ガイド部121、122の回転が停止する。これにより、各ガイド部121、122が図10の停止位置となる。この結果、ファン120の左下側から空気が流入し、ファンの右側へ空気が送り出される。すなわち、第1開口部60から吸い込まれた室内の空気は、第2開口部61から室内に吹き出される脱離時の送風流れを形成する。
第6実施形態の送風機102は、送風方向の切り替えに必要なガイド部として、ファン120の周囲に回転可能な第1ガイド部121及び第2ガイド部122を採用している。一対の第1ガイド部121、第2ガイド部122は、ケーシング6の空気流路を構成する壁から離れて設けられる。このため、固定リアガイドのような第1ガイド部121、第2ガイド部122に連続するガイド部をケーシング6に設置する必要がない。この理由は、第1ガイド部121、第2ガイド部122に連続するガイド部を設けなくても、ファン120の送風方向を定めることが可能だからである。
従来技術の一つは、ファンの送風方向を正逆の2方向に変更するガイドとして、ファンに対称に配置された一対のスタビライザーと、各スタビライザーから開口部を隔てて配置された一対の固定リアガイドと、それらの開口部に対応する回転リアガイドとを備える。これによれば、回転リアガイドを一対の固定リアガイドの一方に回転させ、一方の固定リアガイドと回転リアガイド分とが連続した状態となり、他方の固定リアガイドに開口部が生じることにより、送風方向を変更することができる。
第6実施形態では、一対のガイド部121、122をケーシング6に設置している。このように、従来のように、スタビライザーと固定リアガイドとを、ファンの送風方向と同じ数設置する必要がないので、従来技術よりもケーシング6の小型化が可能である。特に、2つの固定リアガイドをケーシングに設ける必要がないことによるケーシング6の小型化の効果が大きい。
各ガイド部121、122は、ファン120に対して同軸状に配置され、ファン回転軸120aの位置を中心として回転可能に構成されている。そして、ファン120の径方向におけるファン120の回転中心から各ガイド部121、122の最外周部までの距離が、ファン120の半径の2倍以下となるように、各ガイド部121、122がファン120の周囲に配置されている。このように、ファン120の回転中心から各ガイド部121、122の最外周部までの距離が短くなるように、各ガイド部121、122の形状及び配置を設計することによりケーシング6の小型化が図れる。
従来技術では、ファンに近接する2つのスタビライザーが、回転リアガイドに連続するように配置されているため、回転リアガイドの回転移動を妨害する位置にある。このため、これを回避するための機構、例えば、スタビライザーを回転移動させる機構が必要であった。これに対して、第6実施形態では、各ガイド部121、122は、空気流路を構成するケーシング6の壁から離れて配置されており、各ガイド部121、122の回転移動を妨害する部材が存在しないので、これを回避するための機構を設ける必要がない。
また、従来技術では、ファンの送風方向の切り替えの手順として、スタビライザーを回転移動させる工程と、回転リアガイドを回転移動させる工程と、スタビライザーを元の位置に戻す工程とが必要であった。
これに対して、第6実施形態では、各ガイド部121、122を回転移動させる運転を実施することで、ファン120の回転方向が一定方向のままでも、送風方向の切り替えが可能である。また、各ガイド部121、122の回転移動の前後に、各ガイド部121、122の回転移動を妨害する他の部材を移動させる運転が不要である。このため、送風方向の切り替えを従来技術よりも容易に行うことができる。
第6実施形態では、各ガイド部121、122の第1連結部125にファン軸受け部124を設け、ケーシング6にガイド軸受け部63を設けている。このため、ファン120が回転する際に発生する回転トルクが各ガイド部121、122に伝達されることで、第1ガイド部121及び第2ガイド部122が回転する。
さらに、第6実施形態では、ファン120の送風の際では、ストッパピン80をストッパ8に当てることにより、各ガイド部121、122の回転を停止させることができる。ファン120の送風方向の切り替えの際では、ストッパ8の位置を上側位置と下側位置とに切り換えることで、各ガイド部121、122の停止位置を切り換え可能としている。
これらにより、第6実施形態によれば、各ガイド部121、122の位置を切り換えるために、各ガイド部121、122を回転駆動させる専用の駆動装置が不要となる。また、第6実施形態では、ストッパ8の駆動源が必要となるが、これは、各ガイド部121、122を回転駆動させる専用の駆動装置と比較して、必要な駆動力が小さく、体格を小さく抑えることができる。よって、第6実施形態によれば、専用の駆動装置を用いる場合と比較して、送風機全体の小型化が図れる。
(他の実施形態)
以上、開示された発明の好ましい実施形態について説明したが、開示された発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、開示された発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。開示された発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
前述の第1実施形態において、温調装置3は、吸着材モジュール4と一体に構成されているが、温調装置3を吸着材モジュール4のどの箇所に一体に設けるかの形態は前述した形態に限定されない。例えば、温調装置3は、吸着材モジュール4の内部に埋め込まれるようにして一体に構成されてもよい。
前述の実施形態において送風機2は、空気通路62において第1開口部60寄りの位置に設けられている。しかしながら、送風機2の位置は、空気通路62の任意の場所に設けることができる。送風機2と加熱装置7、吸着材モジュール4及び冷却装置5等との位置関係は、前述の実施形態に記載する関係に限定されない。
前述の実施形態における冷却装置5や加熱装置7は、吸着材モジュール4とは別体の構成であるが、吸着材モジュール4と一体に構成するものであってもよい。
前述の第3実施形態では、送風機2、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5等は、間隔をあけて配置されている。しかしながら、第3実施形態の加湿装置101は、送風機2、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5のうち少なくとも2つの装置を一体にした複数機能を有する装置を備える構成でもよい。この場合でも、加湿装置101においては、脱離時に空気が流れる方向に、加熱装置7、吸着材モジュール4、冷却装置5の順に並ぶように設置されている。
前述の実施形態では、吸着材モジュール4として、吸着材を担持させた複数の金属製の板状部材40を間隔を開けて積層配置することによって構成されたものを採用した例を説明したが、吸着材モジュール4は、これに限定されない。例えば、波状に折り曲げられたコルゲート板に吸着材を担持させて、このコルゲート板を間隔を開けて積層配置して構成したものを採用してもよいし、断面六角形に形成された通路を有するハニカム部材に吸着材を担持させたものを採用してもよい。
前述の第1実施形態では、制御装置50が送風機2の電動モータを正転あるいは逆転させることによって、通風経路を切り替える構成について説明したが、通風経路の切り替えはこれに限定されない。
また、前述の実施形態では、加湿装置1は、車室内Rの天井材の裏側に設置されているが、この設置場所に限定されない。例えば、加湿装置1は、例えば、インストルメントパネル、ドアトリム、ステアリングコラム、トランクルームと連通する内装部材等の裏側に搭載することができる。
前述の実施形態における温調装置3、冷却装置5、加熱装置7等は、前述の実施形態で説明した個数に限定されない。
また、前述の実施形態では、吸着時に加湿装置に導入される空気として車室内Rの空気を採用した例を説明したが、車室外の空気、例えば、外気を導入するようにしてもよい。
また、前述の実施形態では、加湿空気が車両の前席側に供給されるように第2開口部61が位置し、除湿空気が車両のフロントウィンド10に向けて送風されるように第1開口部60が位置しているが、この位置関係に限定するものではない。
また、前述の実施形態において第1開口部60を後部座席側に向かって開口させるように配置したり、車室内Rの下部、例えば床面付近に向かって開口させるように配置したりしてもよい。
また、前述の第3実施形態では、吸着時に吸着材モジュール4から流出した除湿された空気を、加熱装置7にて加熱する例を説明している。しかしながら、吸着時に吸着材モジュール4から流出した送風空気を、加熱装置7にて加熱することなく吹き出すようにしてもよい。