JP4537701B2 - 不織布用短繊維及び短繊維不織布 - Google Patents

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Description

本発明は、乾式不織布や湿式不織布等の不織布に用いられる短繊維であって、不織布の製造工程における、空気流、カード機等による短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程等のウェブ形成工程において繊維塊が生成しない適度な捲縮形態を有し、かつ熱処理により捲縮を発現する潜在捲縮性能を有する不織布用短繊維及びこの不織布用短繊維を含有してなる短繊維不織布に関するものである。
衛生材料分野をはじめとして、様々な分野において、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂からなる短繊維を用い、均一に分散させて、バインダー樹脂による接着や熱風による接着、熱ロールによる圧着、高圧水流や金属針による交絡等により得られる乾式、湿式不織布が使用されている。
このような短繊維を用いて乾式不織布を得る場合、特にエアレイド法では、繊維を解繊して空気の流れにのせて搬送し、金網又は細孔を有するスクリーンを通過させた後、ワイヤーメッシュ上に落下堆積させる方法を採用するが、短繊維の解繊、搬送、分散、積層工程において、繊維−繊維間及び繊維−金属間の摩擦が大きく、静電気が発生しやすく、このため繊維塊が生成されるという問題が生じやすい。
繊維塊が生じると、各工程での通過性が悪化し、操業性が低下することはもちろん、得られる不織布においても堆積した繊維が不均一となり、斑の生じた不織布となり製品品位が著しく低下する。
今日では製品の高級化及び高機能化等の差別化のために、機能性を有する熱可塑性樹脂が多く用いられ、中には低温加工を必要とするもの、高粘着性を有する熱可塑性樹脂等、従来の繊維に比べてさらに繊維−繊維間の摩擦及び繊維−金属間の摩擦が大きくなる繊維が使用されている。また、製造加工効率を向上させるために加工速度の高速化がはかられている。これらの要因により、エアレイド法による製造工程における静電気の発生量は多くなり、繊維塊の発生も多くなっている。
このような問題を解決するためには、制電性や平滑性を付与する仕上げ油剤等の繊維処理剤を繊維表面に付着させることが有効である。平滑性や制電性を付与する仕上げ油剤としては、ワックスまたは脂肪酸を中心とする脂肪類、長鎖アルキル基を含有する第4級アンモニウム塩が広く使用されている。しかしながら、これらの脂肪類は制電性はある程度付与できるが、十分な平滑性は付与できなかった。
一方、優れた平滑性を付与する繊維仕上げ油剤としてシリコーン系仕上げ油剤が知られており、例えばジメチルシロキサン乳化重合物、アミン変成シリコーン等が付与された繊維及び繊維コードが提案されている(例えば、特許文献1参照。)
しかしながら、上記ジメチルシロキサン乳化重合物、アミン変性シリコーン共に制電性付与が十分でなく、さらには親水性を阻害すると共に繊維及び得られた製品に黄変が発生するという問題があった。また、これらは短繊維ではなく長繊維(繊維コード)に関するものであり、不織布の製造工程における静電気の発生による問題点を解決できるものではなかった。
また、平滑性と制電性及び親水性の付与された繊維として、アルキルホスフェート塩とアミド基含有ポリオキシアルキレン変性シリコーン組成物の混合物で処理した高平滑性繊維が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
しかしながら、この繊維においても特別な処理剤を用いることにより平滑性や制電性を付与するものであって、操業性やコスト的にも不利になるという問題があった。また、得られる不織布に対するニーズは様々であり、不織布に高機能性を持たせる目的で様々な処理を施すため、繊維に付与された処理剤により、得られた不織布に変色や着色が生じる等の問題もあり、品質面でも不十分であった。
特公昭48−1480号公報 特開平9−67772号公報
本発明は、上記のような問題点を解決し、特別な処理剤を繊維表面に付与することなく、特に乾式不織布の製造工程において、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができ、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性も十分な不織布を得ることができる不織布用短繊維及びこの短繊維を含有してなる短繊維不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、次の(ア)、(イ)を要旨とするものである。
(ア)極限粘度の異なる2種類以上のポリエステルからなる複合繊維であって、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtex、かつ機械捲縮が付与されている短繊維であって、単糸の機械捲縮の形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足し、捲縮数と捲縮率が下記(2)及び(3)式を同時に満足することを特徴とする不織布用短繊維。
(1)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25
(2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3
(3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9
ただし、捲縮数は繊維長25mm当たりの数 Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
(イ)(ア)記載の不織布用短繊維を30質量%以上含有することを特徴とする短繊維不織布。
本発明の不織布用短繊維は、特定の捲縮形態を満足しているため、特別な処理剤を繊維表面に付与することなく、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができ、さらに、繊維間での静電気の保持(ため)、繊維の絡みを防ぐことができるので、乾式不織布及び湿式不織布用の短繊維として好適である。そして、本発明の不織布用短繊維は、潜在捲縮性能を有しているため、不織布にした後の熱処理により捲縮を発現させることで、嵩高性に優れた不織布とすることが可能となる。
さらに、本発明の短繊維不織布は本発明の不織布用短繊維を含有してなるものであるため、乾式不織布及び湿式不織布ともに、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性も十分な不織布であり、様々な用途に使用することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
乾式不織布を得る場合、特にエアレイド法で製造する場合には、静電気の発生が多くなる。このエアレイド法に用いられる装置としては、例えば特開平5−9813号公報に開示されているような、複数の回転シリンダーをハウジング内に収納し、これらシリンダーを高速回転させることによってシリンダーの周縁に積極的に空気流を発生させ、この空気流によって繊維成分を所定方向に吹き飛ばし得る装置が挙げられる。そして、このエアレイド法によるウエブ形成(短繊維の解繊、搬送、分散、積層工程の全て)においては、空気流を積極的に発生させているために、繊維同士が摩擦され、また繊維と装置(金属製部材)との摩擦によっても静電気の発生が多くなる。
本発明の短繊維は繊維形状を特定のものとすることで、ウエブ形成の各工程(解繊、搬送、分散、積層工程)において、繊維同士、繊維と金属間での摩擦による静電気を発生しにくく、かつ発生した静電気をためにくいものとなり、短繊維同士が集合して繊維塊を生じることが格段に減少される。
上記のような静電気の問題を考慮する場合、捲縮数が多く、捲縮が大きく又は強く付与されているほど形状的に電気をためやすいものとなる。つまり、繊維に捲縮が付与されていると、3次元的な立体形状を呈するため、その立体的な空間部分が多くなるほど静電気がたまりやすくなる。一方、捲縮がないフラットな状態となるほど、平面的な形状となり、静電気をためにくくなるが、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が増え、摩擦による静電気の発生が多くなる。
嵩高性を考慮する場合、捲縮がないフラットな状態とするほど得られる不織布の嵩高性は低下する。一方、捲縮が付与されているほど、得られる不織布の嵩高性は向上するが、繊維の嵩高性も高くなるため、ウエブ形成の工程中において、繊維同士が絡み合い、繊維塊を生じやすくなり、均一性に劣った不織布となりやすい。
また、静電気や繊維の絡み合いの問題、得られる不織布の風合い(嵩高性や柔軟性)は、単糸繊度によっても影響を受けるものである。つまり、静電気の問題においては、繊維同士あるいは繊維と金属との接触により静電気は発生するものなので、接触点や接触面の大きさを左右する単糸繊度の要因は大きいものとなる。また、捲縮により3次元的な立体形状を形成するので、単糸繊度はその空間部分の大きさを左右する要因となり、静電気をためる程度や繊維の絡みあいの程度を左右する要因となる。
そこで、本発明者等は、これらの要因を考えあわせて検討し、単糸繊度を考慮した特定の機械捲縮が付与された立体形状のものとすることにより、特に上記の効果(静電気、繊維絡みの防止と不織布風合いの向上)が向上されることを見出した。
まず、本発明の不織布用短繊維は、図1に示すように、単糸の機械捲縮の形態において、捲縮部の最大山部における山部の頂点Pと、隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、この三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足するものである。特に乾式不織布をエアレイド法で得る際には、三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)を(6)式とすることが好ましい。
ここで、最大山部とは、本発明の短繊維の繊維長において複数の山部がある場合、山部の高さ(H)が最大のものをいう。
(1)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25
(6)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.2
捲縮の度合いを表すためには、一般的に捲縮率が用いられるが、捲縮率の測定方法は、荷重をかけたときと無荷重状態での長さの差から求めるものである。しかし、本発明においては、後述する捲縮率を規定した(3)式を満足していたとしても、繊維中の一部の捲縮部に立体形状の空間部分が大きくなるような、捲縮が大きくかかった部分があると、静電気をためやすく、繊維同士の絡み合いが生じやすくなる。そこで(1)式に規定するように、捲縮形態として最大山部における形態を特定のものとすることで、捲縮による空間部分の大きさを特定のものとし、これにより静電気や繊維の絡みによる繊維塊の発生を防ぐことが可能となる。
H/Lが大きすぎると、繊維の立体形状において、空間部分が大きくなり、静電気をためやすく、繊維の絡みが生じやすくなる。一方、H/Lが小さすぎると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気が発生しやすく、繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなりやすい。
なお、H/Lの測定は次のとおりである。まず、短繊維1gを採取し、ここから任意に20本の単繊維を取り出す。そして、取り出した単繊維について拡大写真(約10倍)を撮り、その写真から上記したように、最大山部における、山部の頂点Pと隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、三角形の高さ(H)と底辺(L)の長さを測定し、その比(H/L)を算出するものである。このようにして20本分の単繊維の測定を行い、その平均値をとる。
次に、本発明の短繊維は、(2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3 〔Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数〕を満足する。この捲縮数とは、JISL1015 8.12.1に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮数の測定において繊維長が短い場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮数が(2)式より高くなると、3次元的な立体形状による空間部分となる捲縮部が多くなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が絡みやすくなるため玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(2)式より低くなると、捲縮部が少なくなることから繊維の形態がフラットに近くなり、繊維同士あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、糸状の繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなる。
さらに、本発明の不織布用短繊維は、(3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9〔Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数〕を満足する。この捲縮率とは、JISL1015 8.12.2に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮率の測定において繊維長が短くて測定が困難となる場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮率が(3)式より高くなると、3次元的な立体形状による空間部分が多く又は大きくなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が交絡しやすくなるため、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(3)式より低くなると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなる。
捲縮数と捲縮率においても、特に乾式不織布をエアレイド法で得る際には、捲縮数について(7)式、捲縮率について(8)式を満足するものとすることが好ましい。
(7)式:0.1T+4.8≦捲縮数≦0.3T+6.6
(8)式:0.8T+1.2≦捲縮率≦1.0T+2.8
そして、本発明の短繊維は、繊維長が1.0〜30mmであり、さらに好ましい繊維長は、2〜25mm、より好ましくは5〜15mmである。また、単糸繊度は0.3〜40dtexが好ましく、中でも0.5〜33dtexが好ましく、より好ましくは1.0〜25dtexである。なお、繊維長はJIS L1015 8.4.1A法に基づき測定したものであり、単糸繊度はJIS L1015 8.5.1B法に基づき測定したものである。
そして、本発明の短繊維は、極限粘度の異なる2種類以上のポリエステルからなる複合繊維であって、それぞれのポリエステルの極限粘度差は熱収縮特性差となり、熱処理することで微細な捲縮が発現する潜在捲縮性能を有するものとなる。
本発明の複合繊維を構成するそれぞれのポリエステルは、アルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなるものとすることが好ましく、アルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルとしては具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、中でもPETが好ましい。
また、これらのポリエステルは、必要に応じて以下に示す共重合成分を1種類又は複数種類共重合した共重合ポリエステルとしてもよく、共重合成分の種類、共重合量により極限粘度を調整することができる。
共重合成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ビスフェノールS、ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
また、共重合成分として、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)やイタコン酸(IA)を用いることが好ましく、HCAとIAのいずれか一方、もしくは両方を共重合したポリエステルとすることで、本発明の複合繊維に難燃性を付与することができる。
さらに、ポリエステル中には、その効果を損なわない範囲で、酸化チタン等の艶消し剤、ヒンダートフェノール系化合物等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、導電性付与剤、親水剤、吸水剤等が配合されていてもよい。
本発明の複合繊維においては、極限粘度の異なる2種類以上のポリエステルを用いることにより潜在捲縮性能を有するものとするが、ポリエステルの種類は2種類以上であれば特に限定されるものではなく、複合形態も同心円芯鞘形状、偏心芯鞘形状、サイドバイサイド形状や多層形状等の貼り合わせ形状のもの、海島形状等種々の形態が挙げられる。
そして、2種以上のポリエステルの複合比は、潜在捲縮性能を付与できるものであれば特に限定するものではなく、2種類のポリエステルを使用する場合は、質量比で20/80〜80/20とすることが好ましい。
本発明の複合繊維は、中でも極限粘度の異なる2種類のポリエステルAとポリエステルBが繊維の横断面形状において貼り合わせられた形状の複合繊維とすることが好ましく、中でも質量比30/70〜70/30でサイドバイサイド型に貼り合わされた形状のものが好ましい。さらに、ポリエステルAとポリエステルBの極限粘度差は0.05〜0.25程度とすることが好ましい。
このような2種類のポリエステルAとポリエステルBの例として、好ましい組合せのものを以下に2例示す。
まず、ポリエステルAとしてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルBとしてイソフタル酸(IPA)を3〜6モル%共重合したPETを用いることが好ましい。イソフタル酸としては中でも5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SIP)が好ましい。イソフタル酸の共重合量が3mol%未満であると、ポリエステルAとの極限粘度差が大きくならず、潜在捲縮性能が不十分となりやすい。一方、6mol%を超えると、ポリエステルの融点が低下し、複合繊維を得るのが困難になりやすい。
次に、ポリエステルAとしてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルBとしては、IPAを1〜9モル%とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体(BAEO)を2〜5モル%共重合したPETが好ましい。IPAの共重合量が1モル%未満であったり、BAEOの共重合量が2モル%未満であると、ポリエステルAとの極限粘度差が大きくならず、潜在捲縮性能が不十分となりやすい。一方、IPAが9モル%を超えたり、BAEOの共重合量が5モル%を超えると、ポリエステルの融点が低下し、複合繊維を得るのが困難になったり、得られる複合繊維の強度が低下する。
また、BAEOは、ビスフェノールA1モルに対して、エチレンオキサイドを2〜10モル付加したものが好ましく、中でも2〜5モル付加したものが好ましい。
本発明の短繊維の潜在捲縮性能は、170℃自由収縮乾熱処理により捲縮を発現させた際に、捲縮発現後の捲縮数と捲縮率が下記(4)及び(5)式を同時に満足するものとなることが好ましい。なお、これらの捲縮数、捲縮率は上記の(2)及び(3)式と同様に測定するものである。
(4)式:-0.5T+35≦捲縮数≦-2.4T+130
(5)式:-0.3T+40≦捲縮率≦-0.8T+80
ただし、(繊維長25mm当たりの捲縮数) Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
本発明の短繊維は、上記のような潜在捲縮を発現するものであり、この潜在捲縮は、繊維を製造する工程では発現するものではなく、また不織布ウエブを製造する工程においても潜在捲縮が発現することがないので工程通過性を悪化させることがない。そして、得られた不織布ウエブに熱処理を施すことによって、優れた嵩高性、独特の風合いを有する不織布とすることが可能となる。
ウエブにしてバインダー成分を溶融させるための熱処理を施す際等の熱処理の際に多少の潜在捲縮は発現するが、乾式不織布、湿式不織布の場合ともに、不織布を得た後に、温度160〜180℃、時間5〜15分程度の乾燥熱処理を施すことによって、十分に潜在捲縮が発現する。
そして、捲縮数が(4)式より多くなったり、捲縮率が(5)式より高くなると、不織布を得た後の熱処理により潜在捲縮の発現が過大となり、不織布の収縮が大きくなったり、均一性が悪くなるなどして好ましくない。一方、捲縮数が(4)式より少なくなったり、捲縮率が(5)式より低くなると、不織布にした後の熱処理による潜在捲縮の発現が不十分となり、嵩高性の付与が不十分となりやすい。
また、本発明の複合繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸型のみならず扁平型、トリローバル型、ヘキサローバル型、W型、H型等の異形断面や四角形や三角形等の多角形状、中空形状のものでもよい。
本発明の不織布用短繊維は、不織布とする際に主体繊維、バインダー繊維のいずれに用いてもよいが、主体繊維として用いることが好ましい。
そして、主体繊維として用いる場合、本発明の短繊維を形成するポリエステルの融点を220℃以上とすることが好ましい。ポリエステルの融点が220℃未満であると、バインダー繊維を溶融させる際の熱処理工程において、主体繊維の溶融や熱劣化が生じることがある。一方、融点の上限としては、特に限定するものではないが、上記のようなポリエステルとする場合には、220〜280℃とすることが好ましい。
そして、本発明の不織布用短繊維は、乾式不織布、湿式不織布のいずれに用いてもよく、乾式不織布においては、特にエアレイド法により製造する際に好適である。エアレイド法によると、熱風による接着のみで容易に不織布を得ることが可能で、一般的に行われているバインダー樹脂による接着あるいは熱ロールによる圧着工程の省略が可能でコスト的に優位である。
さらに、本発明の不織布用短繊維は、湿式不織布の製造にも好適に用いることができる。上述したように、本発明の短繊維は特に乾式不織布の製造工程において、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができるものであるが、湿式不織布においても単繊維のばらけがよく、単繊維同士の接触点(面)が少ないために繊維の集束が生じ難いので、均一性に優れ、かつ嵩高性も十分な湿式不織布を得ることができる。
次に、本発明の短繊維不織布について説明する。本発明の短繊維不織布は、上記のような本発明の不織布用短繊維を30質量%以上含有するものである。本発明の短繊維を30質量%以上含有することにより、嵩高性に優れた独特の風合いを有するものとなる。本発明の短繊維が30質量%未満であると、不織布の風合いは嵩高性に乏しいものとなる。
本発明の不織布においては、本発明の短繊維が主体繊維、バインダー繊維のいずれであってもよく、また、主体繊維とバインダー繊維ともに本発明の短繊維であってもよいが、中でも主体繊維として本発明の短繊維を30質量%以上含有することが好ましい。さらには、本発明の短繊維を主体繊維として45質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
なお、バインダー繊維としては、主体繊維よりも融点又は流動開始温度が30℃以上低いポリエステルからなる繊維を用いることが好ましい。
そして、本発明の短繊維不織布は、乾式不織布、湿式不織布のいずれでもよい。また、本発明の短繊維を30質量%以上含有していれば、目付け等も限定するものではない。
本発明の短繊維不織布が乾式不織布である場合、特にエアレイド法で得られる場合は、静電気や繊維の絡みによる繊維塊の発生を防ぐことができるので、均一性、嵩高性に優れた乾式不織布となる。
本発明の短繊維不織布が湿式不織布である場合、単繊維のばらけがよく、単繊維同士の接触点(面)が少ないので、繊維の集束が生じることがなく、均一性、嵩高性も十分な湿式不織布となる。
次に、本発明の不織布用短繊維の製造方法について、一例を用いて説明する。極限粘度の異なる2種類のポリエステルを通常用いられる複合紡糸装置を用いて複合紡糸し、延伸することなく、一旦巻き取る。得られた未延伸糸を集束して1〜100ktex程度のトウとし、延伸倍率2〜6倍、温度20〜90℃程度で熱延伸を施す。そして、押し込み式クリンパーで捲縮を付与した後、必要に応じて仕上げ油剤を付与し、所望の繊維長にカットして本発明の短繊維を得る。
本発明で規定する捲縮形態を満足するものとするには、延伸条件(倍率、温度)及び押込み式クリンパー等の捲縮付与装置での捲縮付与条件(ニップ圧力、スタフィン圧力)を適宜変更することにより行うことができる。
次に、本発明の短繊維不織布の製造方法について、乾式不織布、湿式不織布のそれぞれについて一例を用いて説明する。
まず、乾式不織布の場合、図3に示す簡易エアレイド試験機を用い、試料投入ブロア13より、主体繊維として本発明の短繊維を、バインダー繊維として他の繊維をそれぞれ投入し、解繊翼回転モータ15により解繊翼回転用スプロケット16を介して回転する、それぞれ5枚1組の第1解繊翼11と第2解繊翼12で解繊し、飛散落下させる。落下する短繊維を、下部にあるサクションボックス14で吸引しつつ、矢印方向に移動する集綿コンベア17の上に堆積させウェブを作成し、下流にある熱処理機18にて熱処理〔熱処理温度:バインダー繊維の(融点又は流動開始温度)+10℃程度〕を施し、乾式不織布を得る。不織布の目付調整は、集綿コンベア17の移動速度を変化させることで行う。
なお、本発明の繊維においては、得られた不織布に160〜180℃、時間5〜15分程度の熱処理を箱型乾燥機で行うことによって大部分の潜在捲縮が発現する。
また、湿式不織布の場合、主体繊維として本発明の短繊維を、バインダー繊維として他の繊維をそれぞれパルプ離解機に投入し攪拌する。その後、得られた試料を抄紙機に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙をし、湿式不織布ウェブとする。この抄紙した湿式不織布ウェブを熱風乾燥機で熱処理〔熱処理温度:バインダー繊維の(融点又は流動開始温度)+10℃程度〕を行い、湿式不織布を得る。
なお、本発明の繊維においては、得られた不織布に160〜180℃、時間5〜15分程度の熱処理を箱型乾燥機で行うことによって大部分の潜在捲縮が発現する。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお実施例における各特性値の測定方法は以下の通りである。
(1)流動開始温度
フロテスター(島津製作所CFT−500型)を用い、荷重100kgf/cm2、ノズル径0.5mmの条件で、初期温度50℃より10℃/分の割合で昇温していき、ポリマーがダイから流出し始める温度として求めた。
(2)融点
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とした。
(3)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
(4)繊度、繊維長、捲縮部のH/L、捲縮数、捲縮率
前記の方法で測定、算出した。
(5)繊維塊の生成
得られた短繊維を図2の簡易空気流撹拌試験機を用い繊維塊の生成を評価した。100gの短繊維を解綿機で予備解繊した後、サンプル送り込み用ブロア3から空気流にて撹拌タンク1に投入し、撹拌用ブロア2から20m/秒の空気流を吹き込み、攪拌タンク1内で1分間撹拌する。攪拌後の繊維をサンプリング口5より0.1g採取し、黒色紙の上に広げ、独立した繊維塊の有無を目視にて評価した。
○:繊維塊が発生していない
△:繊維塊が少量発生している
×:繊維塊が大量発生している
(6)不織布の均一性、嵩高性
〈乾式不織布〉
−均一性−
得られた乾式不織布(潜在捲縮を発現後)の均一性の状態を目視にて観察し、以下のように3段階評価とした。
○:十分に解繊されて均一である
△:部分的に未解繊な部分がある
×:解繊が不十分で不均一である
−嵩高性−
得られた乾式不織布(潜在捲縮を発現後)を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、そのサンプル10枚を重ねた上に25cm×25cm×5mmのアクリル板(370g)を載せ、その上に1kgの錘を載せてアクリル板の下面の4辺のそれぞれの辺の中央の高さを測定し、4点の平均値により以下のように3段階評価とした。
○:高さが25.0mm以上である
△:高さが15.0mm以上25.0mm未満である
×:高さが15.0mm未満である
〈湿式不織布〉
−均一性−
得られた湿式不織布(潜在捲縮を発現後)の均一性の状態を目視にて観察し以下のように3段階評価とした。
○:十分に分散しており均一である
△:部分的に分散の悪い部分がある
×:分散が不十分で不均一である
−嵩高性−
得られた湿式不織布(潜在捲縮を発現後)を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、そのサンプルを10枚重ねた上に25cm×25cm×5mmのアクリル板(370g)を載せ、その上に1kgの錘を載せてアクリル板の下面の4辺のそれぞれの辺の中央の高さを測定し、4点の平均値により以下のように3段階評価とした。
○:高さが20.0mm以上である
△:高さが12.0mm以上20.0mm未満である
×:高さが12.0mm未満である
実施例1
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.64のPETを用い、ポリエステルBとしてSIPを4.5モル%共重合した融点243℃、極限粘度0.47の共重合PETを用い、通常の複合溶融紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量903g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、ホール数1390の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。ポリエステルAとポリエステルBは質量比率1/1のサイドバイサイド型の貼り合わせ形状の複合繊維とした。
得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率2.52倍、延伸温度65℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.33MPa、スタフィン圧0.10MPaとして、機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は、捲縮数6.2個/25mm、捲縮率5.0%であった。
得られた短繊維を図3に示す簡易エアレイド試験機を用い、以下のようにして目付50g/m2の乾式不織布を得た。主体繊維として得られた短繊維を用い、バインダー繊維としては参考例1に示すものを用い、主体繊維とバインダー繊維を質量比(主体繊維/バインダー繊維)60/40とした。
まず、試料投入ブロア13より投入された主体繊維及びバインダー繊維は、解繊翼回転モータ15により解繊翼回転用スプロケット16を介して回転する、それぞれ5枚1組の第1解繊翼11と第2解繊翼12で解繊され飛散落下させた。落下する短繊維を、下部にあるサクションボックス14で吸引しつつ、矢印方向に移動する集綿コンベア17の上に堆積させウェブを作成し、下流にある熱処理機18にて熱処理を施し(熱処理温度:145℃)、乾式不織布を得た。このとき、不織布の目付調整は、集綿コンベア17の移動速度を変化させることで行った。
その後、得られた乾式不織布を、温度170℃、時間10分の熱処理を箱型乾燥機で行い、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
実施例2〜、比較例1〜4
押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与する条件を表1、2に示すように種々変更し、表1、2に示す捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例1と同様に行って短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得、その後、得られた乾式不織布を実施例1と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
実施例8
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.68のPETを用い、ポリエステルBとしてIPAを4.0モル%、BAEOを4.0モル%共重合した融点240℃、極限粘度0.70の共重合ポリエステルを用い、通常の複合溶融紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量1116g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、ホール数1390の丸型断面のノズルで紡出した以外は実施例1と同様にして未延伸糸を得た。
得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.12倍、延伸温度65℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.32MPa、スタフィン圧0.12MPaとして、機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%の付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は捲縮数6.0個/25mm、捲縮率4.9%であった。
得られた短繊維を用いて実施例1と同様にして乾式不織布を得、その後、得られた乾式不織布を、温度170℃、時間10分の熱処理を箱型乾燥機で行い、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
実施例9
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.64のPETを用い、ポリエステルBとしてSIPを4.5モル%共重合した融点243℃、極限粘度0.47の共重合ポリエステルを用い、通常の複合溶融紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量1395g/min、紡糸速度900m/minの条件で、ホール数366の丸型断面のノズルで紡出した以外は実施例1と同様にして未延伸糸を得た。
得られた未延伸糸を14.2ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.85倍、延伸温度75℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.35MPa、スタフィン圧0.28MPaとして、機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%の付与した後、切断して単糸繊度11dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は、捲縮数10.6個/25mm、捲縮率15.6%であった。
得られた短繊維を主体繊維とし、バインダー繊維に参考例2の繊維を用いた以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得、その後、得られた乾式不織布を実施例1と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
実施例10〜12、比較例5〜8
押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与する条件を表1、2に示すように種々変更し、表1、2に示す捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例9と同様に行い短繊維を得た。さらに、実施例9と同様にして乾式不織布を得、実施例9と同様の熱処理を行い、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
実施例15
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.64のPETを用い、ポリエステルBとしてSIPを4.5モル%共重合した融点243℃、極限粘度0.47の共重合ポリエステルを用い、通常の複合溶融紡糸装置を用い、紡糸温度290℃、吐出量1283g/min、紡糸速度800m/minの条件で、ホール数180の丸型断面のノズルで紡出した以外は実施例1と同様にして未延伸糸を得た。
得られた未延伸糸を14.2ktexのトウに集束した後、延伸倍率4.50倍、延伸温度75℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.45MPa、スタフィン圧0.35MPaとして、機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%の付与した後、切断して単糸繊度22dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は、捲縮数13.7個/25mm、捲縮率26.8%であった。
得られた短繊維を主体繊維とし、バインダー繊維に参考例3の繊維を用いた以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得、その後、得られた乾式不織布を実施例1と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
実施例16〜18、比較例9〜12
押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与する条件を表1、2に示すように種々変更し、表1、2に示す捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例15と同様に行い短繊維を得た。さらに、実施例15と同様にして乾式不織布を得、実施例15と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
実施例21〜22、比較例13〜14
切断時の繊維長を変更し、表1、2に示す繊維長とした以外は、実施例1と同様に行って短繊維を得た。さらに実施例1と同様にして乾式不織布を得、実施例1と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
比較例15
ポリエステルとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量344g/min、紡糸速度950m/minの条件で、ホール数518の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.18倍、延伸温度70℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.32MPa、スタフィン圧0.09MPaとして機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%の付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は捲縮数6.1個/25mm、捲縮率4.8%であった。
さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得、実施例1と同様の熱処理を行って、乾式不織布を得た。
参考例1
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、ポリマーBとして、流動開始温度130℃、極限粘度0.57のイソフタル酸(IPA)を33mol%共重合したポリエステルを用いた。複合紡糸装置を用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量446g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、ホール数560の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.09倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.39MPa、スタフィン圧0.07MPaとして、機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%の付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は、捲縮数6.0個/25mm、捲縮率4.6%であった。
参考例2
ポリエステルA、ポリマーBに参考例1と同じものを用い、複合紡糸装置を用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量268g/min、紡糸速度1100m/minの条件で、ホール数65の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.41倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.47MPa、スタフィン圧0.15MPaとして機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%付与した後、切断して単糸繊度11dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は捲縮数10.5個/25mm、捲縮率15.8%であった。
参考例3
ポリエステルA、ポリマーBに参考例1と同じものを用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分として複合紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量428g/min、紡糸速度750m/minの条件で、ホール数65の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.99倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.53MPa、スタフィン圧0.20MPaとして機械捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2%付与した後、切断して単糸繊度22dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。得られた短繊維は捲縮数13.7個/25mm、捲縮率26.8%であった。
参考例4、5
押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与する条件を表2に示すように変更し、表2に示す捲縮数、捲縮率のものとした以外は、参考例1と同様に行い短繊維を得た。
実施例1〜22、比較例1〜15、参考例1〜5で得られた短繊維の測定値及び評価結果を表1、2に示す。また、これらの短繊維を含有する乾式不織布(潜在捲縮を発現後)の均一性、嵩高性の評価結果を表1、2に示す。
表1、2から明らかなように、実施例1〜5、8〜12、15〜18、21〜22の短繊維は、(1)〜(3)式を満足するものであったため、静電気の発生や静電気をためることがなく、繊維塊の発生がないものであり、潜在捲縮性能にも優れていた。このため、これらの短繊維を含有する乾式不織布は均一性、嵩高性に優れたものであった。
一方、比較例1、3、5、7、9、11の短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より大きいため、いずれも静電気をためやすく、また、繊維の絡みも生じ、玉状の繊維塊が生じた。したがって、これらの短繊維を含有する乾式不織布は不均一で品位の劣るものであった。
また、比較例2、4、6、8、10、12の短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より小さいため、いずれも繊維同士の及び繊維と機械間の接触点(面)が多くなり、静電気の発生が多くなり玉状の繊維塊が生成した。このため、これらの短繊維を含有する乾式不織布は不均一で品位に劣り、嵩高性も不十分なものであった。
また、比較例13の短繊維は、繊維長が短すぎたため、繊維切断時の摩擦熱で繊維の密着が発生し、不織布を得ることができなかった。比較例14の短繊維は、繊維長が長すぎたため静電気をためやすく、また、繊維の絡みも生じ、玉状の繊維塊が生じたため、この短繊維を含有する乾式不織布は不均一で品位の劣るものであった。
比較例15の短繊維は1種類のポリエステルからなる単一型の繊維であったため、潜在捲縮性能がなく、不織布を得た後、熱処理を施しても捲縮が発現せず、得られた不織布は嵩高性に乏しいものとなった。
実施例23〜27、比較例16〜20
それぞれ、実施例1〜5、比較例1〜4、比較例15の短繊維を主体繊維とし、バインダー繊維としては参考例1〜3に示すもの(それぞれ主体繊維と同繊度のもの)を用い、以下のようにして湿式不織布を作成した。
主体繊維とバインダー繊維を質量比(主体繊維/バインダー繊維)60/40とし、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間攪拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙をし、湿式不織布ウェブとした。抄紙した25×25cmの湿式不織布ウェブを、温度140℃、時間10分の熱処理を箱型熱風乾燥機で行い、目付50g/mmの湿式不織布を得た。
その後、得られた湿式不織布を、温度170℃、時間10分の熱処理を箱型乾燥機で行い、短繊維の潜在捲縮を発現させた湿式不織布を得た。
得られた湿式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例23〜27で用いた主体繊維(短繊維)は、(1)〜(3)式を満足するものであったため、水中分散性がよく繊維の集束がないものであった。このため、得られた湿式不織布は均一性に優れ、かつ嵩高性も十分なものであった。
一方、比較例16で用いた短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より大きかったため、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より大きいため、比較例18で用いた短繊維はH/L比が(1)式の範囲より大きいため、さらに捲縮率が(3)式の範囲より大きいため、いずれも水中分散性が悪く大きな繊維の集束が発生した。したがって、得られた湿式不織布は不均一で品位にも劣るものであった。また、比較例17で用いた短繊維はH/L比が(1)式の範囲より小さいため、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より小さいため、比較例19で用いた短繊維はH/L比が(1)式の範囲より小さいため、さらに捲縮率が(3)式の範囲より小さいため、得られた湿式不織布は潜在捲縮発現前、発現後ともに嵩高性が不十分であった。比較例20で用いた短繊維は単一型の繊維であり潜在捲縮性能がなかったため、得られた湿式不織布は嵩高性に劣るものであった。
実施例28〜31、比較例22〜23
主体繊維として実施例1の短繊維を用い、バインダー繊維として参考例1の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表3に示すように種々変更した以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。その後、この乾式不織布に実施例1と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
得られた乾式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表4に示す。
実施例32〜33、比較例24〜25
主体繊維として実施例1の短繊維を用い、バインダー繊維として参考例4の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表3に示すように種々変更した以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。その後、この乾式不織布に実施例1と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。
得られた乾式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表4に示す。
実施例34〜35、比較例26〜27
主体繊維として実施例1の短繊維を用い、バインダー繊維として参考例5の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表3に示すように種々変更した以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。その後、この乾式不織布を実施例1と同様の熱処理を行って、短繊維の潜在捲縮を発現させた乾式不織布を得た。 得られた乾式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表4に示す。
表4から明らかなように、実施例28〜35の短繊維不織布は、本発明の短繊維を30質量%以上含有してなるものであったため、均一性、嵩高性ともに優れたものであった。
一方、比較例21〜27の短繊維不織布は、本発明の短繊維を30質量%以上含有していなかったため、均一性、嵩高性に乏しいものであった。
本発明の不織布用短繊維の捲縮形態を示す拡大説明図である。 実施例における繊維塊の生成を評価するための簡易空気流撹拌試験機を示す説明図である。 実施例において乾式不織布を製造した簡易エアレイド試験機を示す説明図である。

Claims (3)

  1. 極限粘度の異なる2種類以上のポリエステルからなる複合繊維であって、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtex、かつ機械捲縮が付与されている短繊維であって、単糸の機械捲縮の形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足し、捲縮数と捲縮率が下記(2)及び(3)式を同時に満足することを特徴とする不織布用短繊維。
    (1)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25
    (2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3
    (3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9
    ただし、捲縮数は繊維長25mm当たりの数 Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
  2. 極限粘度の異なる2種類のポリエステルAとポリエステルBが繊維の横断面形状において貼り合わせられた形状の複合繊維である請求項1に記載の不織布用短繊維。
  3. 請求項1〜いずれかに記載の不織布用短繊維を30質量%以上含有することを特徴とする短繊維不織布。
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