JP2005042289A - 不織布用短繊維及び短繊維不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】 特別な処理剤を繊維表面に付与することなく、特に乾式不織布の製造工程において、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができ、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性も十分な不織布を得ることができる不織布用短繊維を提供する。
【解決手段】 アルキレンテレフタレート単位を主体とする融点220℃以上のポリエステルAと流動開始温度又は融点がポリエステルAより30℃以上低いポリマーBからなる複合繊維において、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtex、かつ捲縮が付与されている短繊維であって、単糸の捲縮形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足することを特徴とする不織布用短繊維。
(1)式:0.01T+0.1≦H/L≦0.02T+0.25
【選択図】 図1

Description

本発明は、乾式不織布や湿式不織布等の不織布に用いられる短繊維であって、不織布の製造工程における、空気流、カード機等による短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程等のウェブ形成工程において繊維塊が生成しない適度な捲縮形態を付与した不織布用短繊維及びこの短繊維を含有してなる短繊維不織布に関するものである。
衛生材料分野をはじめとして、様々な分野において、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂からなる短繊維を用い、均一に分散させて、バインダー樹脂による接着や熱風による接着、熱ロールによる圧着、高圧水流や金属針による交絡等により得られる乾式、湿式不織布が使用されている。
このような短繊維を用いて乾式不織布を得る場合、特にエアレイド法では、繊維を解繊して空気の流れにのせて搬送し、金網又は細孔を有するスクリーンを通過させた後、ワイヤーメッシュ上に落下堆積させる方法を採用するが、短繊維の解繊、搬送、分散、積層工程において、繊維−繊維間及び繊維−金属間の摩擦が大きく、静電気が発生しやすく、このため繊維塊が生成されるという問題が生じやすい。
繊維塊が生じると、各工程での通過性が悪化し、操業性が低下することはもちろん、得られる不織布においても堆積した繊維が不均一となり、斑の生じた不織布となり製品品位が著しく低下する。
今日では製品の差別化、高級化及び高機能化等のために、機能性を有する熱可塑性樹脂が多く用いられ、中には低温加工を必要とするもの、高粘着性を有する熱可塑性樹脂等、従来の繊維に比べてさらに繊維−繊維間の摩擦及び繊維−金属間の摩擦が大きくなる繊維が使用されている。また、製造加工効率を向上させるために加工速度の高速化がはかられている。
これらの要因により、エアレイド法による製造工程における静電気の発生量は多くなり、繊維塊の発生も多くなっている。
このような問題を解決するためには、制電性や平滑性を有する繊維処理剤を繊維表面に付与することが有効である。平滑性及び制電性を付与する仕上げ油剤としては、ワックスまたは脂肪酸を中心とする脂肪類、長鎖アルキル基を含有する第4級アンモニウム塩が広く使用されている。しかしながら、これらの脂肪類は制電性はある程度付与できるが、十分な平滑性は付与できなかった。
一方、優れた平滑性を有する繊維仕上げ油剤としてシリコーン系仕上げ油剤が知られており、例えばジメチルシロキサン乳化重合物、アミン変成シリコーン等が付与された繊維及び繊維コードが提案されている(例えば、特許文献1参照。)
しかしながら、上記ジメチルシロキサン乳化重合物、アミン変性シリコーン共に制電性が十分でなく、さらには親水性を阻害すると共に繊維及び得られた製品に黄変が発生するという問題があった。また、これらは短繊維ではなく長繊維(繊維コード)に関するものであり、不織布の製造工程における静電気の発生による問題点を解決できるものではなかった。
また、平滑性と制電性及び親水性の付与された繊維として、アルキルホスフェート塩とアミド基含有ポリオキシアルキレン変性シリコーン組成物の混合物を付与した高平滑性繊維が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
しかしながら、この繊維においても特別な処理剤を付与することにより平滑性や制電性を有するものとするため、操業性やコスト的にも不利になるという問題があった。また、得られる不織布に対するニーズは様々であり、不織布に高機能性を持たせる目的で様々な処理を施すため、繊維に付与された処理剤により、得られた不織布に変色や着色が生じる等の問題もあり、品質面でも不十分であった。
特公昭48−1480号公報 特開平9−67772号公報
本発明は、上記のような問題点を解決し、特別な処理剤を繊維表面に付与することなく、特に乾式不織布の製造工程において、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができ、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性も十分な不織布を得ることができる不織布用短繊維及びこの短繊維を含有してなる短繊維不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、次の(ア)、(イ)を要旨とするものである。
(ア)アルキレンテレフタレート単位を主体とする融点220℃以上のポリエステルAと流動開始温度又は融点がポリエステルAより30℃以上低いポリマーBからなる複合繊維において、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtex、かつ捲縮が付与されている短繊維であって、単糸の捲縮形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足することを特徴とする不織布用短繊維。
(1)式:0.01T+0.1≦H/L≦0.02T+0.25
Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
(イ)(ア)記載の不織布用短繊維を含有してなることを特徴とする短繊維不織布。
本発明の不織布用短繊維は、特定の捲縮形態を満足しているため、特別な処理剤を繊維表面に付与することなく、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができ、さらに、繊維間での静電気の保持(ため)、繊維の絡みを防ぐことができるので、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性も十分な不織布(乾式不織布及び湿式不織布)を得ることが可能となる。
また、本発明の短繊維不織布は、本発明の不織布用短繊維を含有してなるものであるため、乾式不織布及び湿式不織布ともに、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性も十分な不織布であり、様々な用途に使用することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
乾式不織布を得る場合、特にエアレイド法で製造する場合には、静電気の発生が多くなる。このエアレイド法に用いられる装置としては、例えば特開平5−9813号公報に開示されているような、複数の回転シリンダーをハウジング内に収納し、これらシリンダーを高速回転させることによってシリンダーの周縁に積極的に空気流を発生させ、この空気流によって繊維成分を所定方向に吹き飛ばし得る装置が挙げられる。そして、このエアレイド法によるウエブ形成(短繊維の解繊、搬送、分散、積層工程の全て)においては、空気流を積極的に発生させているために、繊維同士が摺擦され、また繊維と装置(金属)との摩擦によっても静電気の発生が多くなる。
本発明の短繊維は繊維構造を特定のものとすることで、ウエブ形成の全ての工程(解繊、搬送、分散、積層工程)において、繊維同士、繊維と金属間での摩擦によって静電気を発生しにくく、かつ発生した静電気をためにくいものとなり、短繊維同士が集合して繊維塊を生じることが格段に減少される。
上記のような静電気の問題を考慮する場合、捲縮が多く、大きく付与されているほど電気をためやすいものとなる。つまり、繊維に捲縮が付与されていると、3次元的な立体構造を呈するため、その立体的な空間部分が多くなるほど静電気がたまりやすくなる。一方、捲縮がないフラットな状態となるほど、平面的な構造となり、静電気をためにくくなるが、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が増え、摩擦による静電気の発生が多くなる。
嵩高性を考慮する場合、捲縮がないフラットな状態とするほど得られる不織布の嵩高性は低下する。一方、捲縮が付与されているほど、得られる不織布の嵩高性は向上するが、繊維の嵩高性も高くなるため、ウエブ形成の工程中において、繊維同士が絡み合い、繊維塊を生じやすくなり、均一性に劣った不織布となりやすい。
また、静電気や繊維の絡み合いの問題、得られる不織布の風合い(嵩高性や柔軟性)は、単糸繊度によっても影響を受けるものである。つまり、静電気の問題においては、繊維同士あるいは繊維と金属との接触により静電気は発生するものなので、接触点や接触面の大きさを左右する単糸繊度の要因は大きいものとなる。また、捲縮により3次元的な立体構造を形成するので、単糸繊度はその空間部分の大きさを左右する要因となり、静電気をためる程度や繊維の絡みあいの程度を左右する要因となる。
そこで、本発明者等は、これらの要因を考えあわせて検討し、単糸繊度を考慮した特定の捲縮が付与された立体形状のものとすることにより、特に上記の効果(静電気、繊維絡みの防止と不織布風合いの向上)が向上されることを見出した。
まず、本発明の不織布用短繊維は、図1に示すように、単糸の捲縮形態において、捲縮部の最大山部における山部の頂点Pと、隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、この三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足するものである。特に乾式不織布をエアレイド法で得る際には、H/Lを(4)式とすることが好ましい。
ここで、最大山部とは、本発明の短繊維の繊維長において複数の山部がある場合、山部の高さ(H)が最大のものをいう。
(1)式:0.01T+0.1≦H/L≦0.02T+0.25
(4)式:0.01T+0.1≦H/L≦0.02T+0.2
捲縮の度合いを表すためには、一般的に捲縮率が用いられるが、捲縮率の測定方法は、荷重をかけたときと無荷重状態での長さの差から求めるものであり、本発明においては、後述する捲縮率を規定した(3)式を満足していたとしても、繊維中の一部の捲縮部に捲縮が大きくかかった部分があると、立体構造の空間部分が大きくなり、静電気をためやすく、繊維同士の絡み合いが生じやすくなる。そこで(1)式に規定するように、捲縮形態として最大山部における形態を特定のものとすることで、より静電気や繊維の絡みによる繊維塊の発生を防ぐことが可能となる。
H/Lが大きすぎると、立体構造の空間部分が大きくなり、静電気をためやすく、繊維の絡みが生じやすくなる。一方、H/Lが小さすぎると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気が発生しやすく、繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなりやすい。
なお、H/Lの測定は、短繊維1gを採取し、ここから任意に20本の単繊維を取り出す。そして、取り出した単繊維について拡大写真(約10倍)を撮り、その写真から上記したように、最大山部における、山部の頂点Pと隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、三角形の高さ(H)と底辺(L)の長さを測定し、その比(H/L)を算出するものである。このようにして20本分の単繊維の測定を行い、その平均値をとる。
次に、本発明の短繊維は、(2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3 〔Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数〕を満足することが好ましい。この捲縮数とは、JIS L1015 8.12.1に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮数の測定において繊維長が短くて測定が困難となる場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮数が(2)式より高くなると、3次元的な立体構造による空間部分となる捲縮部が多くなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が絡みやすくなるため玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(2)式より低くなると、捲縮部が少なくなることから繊維の形態がフラットに近くなり、繊維同士あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、糸状の繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなりやすい。
さらに、本発明の不織布用短繊維は、(3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9〔Tは単糸繊度(dtex)〕を満足することが好ましい。この捲縮率とは、JIS L1015 8.12.2に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮数の測定において繊維長が短くて測定が困難となる場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮率が(3)式より高くなると、3次元的な立体構造による空間部分が大きくなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が交絡しやすくなるため、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(3)式より低くなると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなりやすい。
捲縮数と捲縮率においても、特に乾式不織布をエアレイド法で得る際には、捲縮数を(5)式、捲縮率を(6)式を満足するものとすることが好ましい。
(5)式:0.1T+4.8≦捲縮数≦0.2T+6.6
(6)式:0.8T+1.2≦捲縮率≦1.0T+2.8
そして、本発明の短繊維は、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtexであり、さらに好ましい繊維長は、2〜25mm、より好ましくは5〜15mmである。また、単糸繊度は、中でも0.5〜33dtexが好ましく、より好ましくは1.0〜25dtexである。なお、繊維長はJIS L1015 8.4.1A法に基づき測定したものであり、繊度はJIS L1015 8.5.1B法に基づき測定したものである。
そして、本発明の短繊維は、融点220℃以上のアルキレンテレフタレート単位主体のポリエステルAと流動開始温度又は融点がポリエステルAより30℃以上低いポリマーBからなる複合繊維であって、ポリマーBのみが加熱により溶融するバインダー繊維とすることが好ましい。このように、本発明の短繊維をバインダー繊維として用いて不織布とする際には、ポリマーBは融着して接着成分となるが、ポリエステルAは溶融せずに不織布を構成する繊維部分となる。そして、本発明の短繊維を用いて得られる不織布は、本発明の短繊維のみからなるものでも、主体繊維となる他の繊維とともに用いたものでもよい。
本発明の短繊維におけるポリエステルAは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、中でもPETが好ましい。そして、 本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて共重合成分を含有した共重合ポリエステルとしてもよい。例えば、共重合成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ビスフェノ−ルS、ビスフェノ−ルA、シクロヘキサンジメタノ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル等が挙げられ、また、難燃成分として9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)やイタコン酸(IA)等を共重合することもでき、これによりポリエステルAを難燃性とすることができる。
そして、ポリエステルAの融点が220℃未満であると、複合繊維を安定して製糸することが困難であるとともに、熱接着処理時に熱劣化しやすくなるため好ましくない。
一方、ポリマーBは、流動開始温度又は融点がポリエステルAより30℃以上低いものであって、ポリオレフィン、あるいはアルキレンテレフタレート単位主体のポリエステルとして、PETやPBTに共重合成分を含有させた共重合ポリエステル等が挙げられる。
ポリマーBの流動開始温度又は融点と、ポリエステルAの融点との差が30℃未満では、ポリマーBを融着させるためには熱処理温度を高くする必要があり、経済的に好ましくないばかりか、熱処理によりポリエステルAやポリマーBの分解が起こりやすくなる。なお、ポリマーBの流動開始温度又は融点と、ポリエステルAの融点との差は、好ましくは30℃〜180℃である。180℃を超えると、紡糸時に溶融粘度が低くなりすぎて繊維形成が困難となりやすい。
ポリマーBは、ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリブチレン等を用いることができる。共重合ポリエステルとしては、PETやPBTに各種の共重合成分を含有させたものを用いることが好ましく、中でもイソフタル酸を共重合させた共重合PETは、流動開始温度又は融点を低くすることができ、好ましい。
このとき、イソフタル酸の共重合量は全酸成分に対して10〜50モル%とすることが好ましい。共重合量が10モル%未満であると、融点を低くすることが困難となりやすい。50モル%を超えると、ポリマーが非晶性となり、紡糸時に単糸密着が発生して製糸性が悪くなりやすい。
さらには、ポリマーBとして、PETに1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含有する共重合ポリエステルは、融点を低くすることができ、かつ結晶性を有するため好ましい。つまり、結晶性を有することで、繊維の耐熱性が向上し、繊維の製造工程において熱処理を施すことが可能となり、繊維の物性値を用途に応じたものに調整することが容易となる。
なお、脂肪族ラクトン成分としては、炭素数4〜11のラクトンが好ましく、特に好ましいラクトンとしては、ε−カプロラクトン(ε−CL)が挙げられる。
まず、脂肪族ラクトン成分を含有する場合、その共重合量は全酸成分に対して20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とするのがより好ましい。脂肪族ラクトン成分の割合が少ないと結晶性はよくなるが、融点を低くすることが困難となりやすい。一方、20モル%より多いと結晶性が低下し、紡糸時に単糸密着が発生して製糸性が悪くなり、好ましくない。
次に、1,4−ブタンジオール成分を共重合する場合、全グリコール成分に対して40〜60モル%となるようにすることが好ましい。共重合量が40モル%未満であったり、60モル%を超えると、融点を低くすることが困難となりやすい。
アジピン酸成分を共重合する場合、その共重合量は全酸成分に対して、20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とするのがより好ましい。アジピン酸成分の共重合量が10モル%未満であると、結晶性はよくなるが、融点が高くなりやすい。一方、20モル%より多いと結晶性が低下し、紡糸時に単糸密着が発生して製糸性が悪くなり、好ましくない。
また、ポリマーBとしては、上記のような共重合ポリエステルに、難燃成分として9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)やイタコン酸(IA)のいずれか一方、もしくは両方を共重合したものでもよく、これにより、接着成分となるポリマーBに難燃性を付与することが可能となる。
そして、本発明の短繊維に難燃性を付与することを考慮すると、ポリエステルAにも上記の難燃成分を共重合することが好ましく、ポリエステルAとポリマーBのいずれか一方を上記したような難燃成分を共重合したものとすることが好ましく、さらにはポリエステルAとポリマーBの両者を上記したような難燃成分を共重合したものとすることが好ましい。
共重合量としては、いずれかの成分を単独で用いるとき、両者を併用するときともに、共重合量は5〜20モル%とすることが好ましい。5モル%未満であると、難燃性を付与することが困難となりやすい。一方、20モル%を超えると、紡糸操業性が悪化しやすくなる。
また、ポリエステルA、ポリマーB中には、その効果を損なわない範囲で、酸化チタン等の艶消し剤、ヒンダートフェノール系化合物等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、導電性付与剤、親水剤、吸水剤等が配合されていてもよい。
また、本発明の短繊維の複合繊維の形態としては、ポリエステルAを芯部にポリマーBを鞘部に配した芯鞘型や、ポリエステルAとポリマーBを貼り合わせたサイドバイサイド型、ポリエステルAを島部にポリマーBを海部とした海島型とすることが好ましい。これにより、繊維表面に低融点のポリマーBが占める割合が多くなり、熱処理により融着しやすいものとすることができる。中でも製糸性の点から芯鞘型とすることが好ましく、得られる不織布の風合いや紡糸操業性を考慮すると、芯鞘比率としては、芯/鞘(質量比)を1/4〜4/1とすることが好ましい。
そして、本発明の短繊維は必要に応じて中空部を有していたり、一方の成分が偏心しているものでもよい。
本発明の不織布用短繊維は、乾式不織布、湿式不織布用の短繊維として好適なものであり、乾式不織布としては、特にエアレイド法により製造する不織布用の短繊維として好適なものである。エアレイド法によると、熱風による接着のみで容易に不織布を得ることが可能で、一般的に行われているバインダー樹脂による接着あるいは熱ロールによる圧着工程の省略が可能でコスト的に優位である。
さらに、本発明の不織布用短繊維は、湿式不織布の製造にも好適に用いることができる。上述したように、本発明の短繊維は特に乾式不織布の製造工程において、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができるものであるが、湿式不織布においても単繊維のばらけがよく、単繊維同士の接触点(面)が少ないので、繊維の集束が生じ難いので、均一性に優れ、かつ嵩高性も十分な湿式不織布を得ることができる。
なお、本発明の短繊維を上述したような本発明で規定する捲縮形態を満足するものとするには、後述するような製造工程における延伸条件(倍率、温度)及び押込み式クリンパー等の捲縮付与装置での捲縮付与条件(ニップ圧力、スタフィング圧力)を適切な値に調整することにより行うことができる。
次に、本発明の短繊維不織布について説明する。本発明の短繊維不織布は、上記のような本発明の不織布用短繊維を含有してなるものである。本発明の短繊維を含有することにより、嵩高性に優れた独特の風合いを有する不織布となるものである。中でも本発明の短繊維が30質量%以上含有されていることが好ましく、30質量%未満であると、不織布の風合いは嵩高性に乏しいものとなりやすい。
本発明の不織布においては、本発明の短繊維をバインダー繊維として用いることが好ましく、この場合、鞘部が接着成分となり、芯部は残存成分となり不織布を構成する繊維となる。また、本発明の不織布においては、本発明の短繊維のみからなるもの(100質量%使用)としてもよい。この場合、本発明の短繊維はバインダー繊維と主体繊維の両方の役割を果たすものとなる。
また、本発明の不織布において、本発明の短繊維をバインダー繊維として用い、他の繊維を主体繊維として用いる場合は、本発明の短繊維を30質量%以上含有することが好ましい。このとき、中でも本発明の短繊維を45〜70質量%含有することが好ましい。
本発明の不織布用短繊維は、上記したような捲縮形状を有することで、不織布の製造工程において、繊維同士の絡みを防ぎ、均一かつ嵩高なウエブとすることができる。そして、本発明の短繊維をバインダー繊維に用いた場合は、本発明の短繊維の鞘部が溶融して接着成分となるものであるが、ウエブの段階で主体繊維と本発明の短繊維とにより均一かつ嵩高なものとなっているため、本発明の短繊維の鞘部が溶融したとしても、主体繊維と本発明の短繊維の芯部からなる不織布もしくは本発明の短繊維の芯部のみからなる不織布は均一性と嵩高性に優れたものとなる。
なお、本発明の不織布に用いる主体繊維としては、得られる不織布の均一性、嵩高性等の風合いを考慮すると、単糸の形状が本発明の短繊維と同様のものであり、本発明における(1)〜(3)式の形状、捲縮数、捲縮率を満足する短繊維とすることが好ましい。
このような主体繊維しては、ポリエステルやポリアミド等からなる熱可塑性樹脂からなる合成繊維等を用いることができるが、中でもアルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであって、ポリエステルの融点が220〜280℃のものが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、中でもPETが好ましい。また、これらのポリエステルは、必要に応じて以下に示す共重合成分を1種類又は複数種類共重合した共重合ポリエステルであってもよい。
共重合成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ビスフェノールS、ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
そして、本発明の短繊維不織布は、前記したように乾式不織布、湿式不織布のいずれでもよい。また、目付け等も特に限定するものではない。
次に、本発明の不織布用短繊維の製造方法について、一例を用いて説明する。ポリエステルAとポリマーBを通常用いられる複合紡糸装置を用いて溶融紡糸し、延伸することなく、一旦巻き取る。得られた未延伸糸を集束して1〜100ktex程度のトウとし、延伸倍率2〜6倍、温度20〜90℃程度で熱延伸を施す。そして、押し込み式クリンパーで捲縮を付与した後、必要に応じて仕上げ油剤を付与し、所望の繊維長にカットして本発明の短繊維を得る。
このとき、本発明で規定する捲縮形態を満足するものとするため、延伸条件(倍率、温度)及び押込み式クリンパー等の捲縮付与装置での捲縮付与条件(ニップ圧力、スタフィング圧力)を適切に調整して行う。
次に、本発明の短繊維不織布の製造方法について、乾式不織布、湿式不織布のそれぞれについて一例を用いて説明する。なお、乾式不織布、湿式不織布ともに本発明の短繊維のみ(100%使用)使用した例について説明する。
まず、乾式不織布(エアレイド法)の場合、図3に示す簡易エアレイド試験機を用い、試料投入ブロア13より、本発明の短繊維を投入し、解繊翼回転モータ15により解繊翼回転用スプロケット16を介して回転する、それぞれ5枚1組の第1解繊翼11と第2解繊翼12で解繊し、飛散落下させる。落下する短繊維を、下部にあるサクションボックス14で吸引しつつ、矢印方向に移動する集綿コンベア17の上に堆積させウェブを作成し、下流にある熱処理機18にて熱処理を施し(ポリマーBを溶融させて)、乾式不織布を得る。不織布の目付調整は、集綿コンベア17の移動速度を変化させることで行う。
また、湿式不織布の場合、本発明の短繊維をパルプ離解機に投入し攪拌する。その後、得られた試料を抄紙機に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙し、湿式不織布ウェブとする。この抄紙した湿式不織布ウェブに熱風乾燥機で熱処理を行い(ポリマーBを溶融させて)、湿式不織布を得る。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお実施例における各特性値の測定方法は以下の通りである。
(1)流動開始温度
フロテスター(島津製作所CFT−500型)を用い、荷重100Kgf/cm
、ノズル径0.5mmの条件で、初期温度50℃より10℃/分の割合で昇温していき、ポリマーがダイから流出し始める温度として求めた。
(2)融点
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とした。
(3)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
(4)繊度、繊維長、捲縮部のH/L、捲縮数、捲縮率
前記の方法で測定、算出した。
(5)繊維塊の生成
得られた短繊維を図2の簡易空気流撹拌試験機を用い繊維塊の生成を評価した。100gの短繊維を解綿機で予備解繊した後、サンプル送り込み用ブロア3から空気流にて撹拌タンク1に投入し、撹拌用ブロア2から20m/秒の空気流を吹き込み、攪拌タンク1内で1分間撹拌する。攪拌後の繊維をサンプリング口4より0.1g採取し、黒色紙の上に広げ、独立した繊維塊の有無を目視にて評価した。
○:繊維塊が発生していない
△:繊維塊が少量発生している
×:繊維塊が大量発生している
(6)不織布の均一性、嵩高性
〈乾式不織布〉
−均一性−
得られた乾式不織布の均一性の状態を目視にて観察し、以下のように3段階評価とした。
○:十分に解繊されて均一である
△:部分的に未解繊な部分がある
×:解繊が不十分で不均一である
−嵩高性−
得られた乾式不織布を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、そのサンプル10枚を重ねた上に25cm×25cm×5mmのアクリル板(370g)を載せ、その上に1Kgの錘を載せてアクリル板の下面の4辺のそれぞれの辺の中央の高さを測定し、4点の平均値により以下のように3段階評価とした。
(1)得られた短繊維のみを用いて乾式不織布とした場合(実施例1〜39、比較例1〜14)
○:高さが8.5mm以上である
△:高さが7.5mm以上8.5mm未満である
×:高さが7.5mm未満である
(2)得られた短繊維と他の繊維を用いて乾式不織布とした場合(実施例63〜77、比較例27〜29)
○:高さが5.5mm以上である
△:高さが4.5mm以上5.5mm未満である
×:高さが4.5mm未満である
〈湿式不織布〉
−均一性−
得られた湿式不織布の均一性の状態を目視にて観察し以下のように3段階評価とした。
○:十分に分散しており均一である
△:部分的に分散の悪い部分がある
×:分散が不十分で不均一である
−嵩高性−
得られた湿式不織布を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、そのサンプルを10枚重ねた上に25cm×25cm×5mmのアクリル板(370g)を載せ、その上に1kgの錘を載せてアクリル板の下面の4辺のそれぞれの辺の中央の高さを測定し、4点の平均値により以下のように3段階評価とした。
(1)得られた短繊維のみを用いて湿式不織布とした場合(実施例40〜62、比較例15〜26)
○:高さが7.5mm以上である
△:高さが6.5mm以上7.5mm未満である
×:高さが6.5mm未満である
(2)得られた短繊維と他の繊維を用いて湿式不織布とした場合(実施例78〜92、比較例30〜32)
○:高さが5.0mm以上である
△:高さが4.0mm以上5.0mm未満である
×:高さが4.0mm未満である
実施例1
ポリエステルAとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、ポリマーBとして、流動開始温度130℃、極限粘度0.57のイソフタル酸を33mol%共重合したポリエステルを用いた。複合紡糸装置を用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量446g/min、紡糸速度1170m/minの条件で、ホール数560の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.09倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.39MPa、スタフィング圧0.07MPaとして捲縮を付与した。捲縮形態、捲縮数、捲縮率は表1に示すものであった。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
得られた短繊維のみを用いて、図3に示す簡易エアレイド試験機を用い、以下のようにして目付50g/m2の乾式不織布を得た。まず、試料投入ブロア13より投入された短繊維は、解繊翼回転モータ15より解繊翼回転用スプロケット16を介して回転する、それぞれ5枚1組の第1解繊翼11と第2解繊翼12で解繊され飛散落下させた。落下する短繊維を、下部にあるサクションボックス14で吸引しつつ、矢印方向に移動する集綿コンベア17の上に堆積させウェブを作成し、下流にある熱処理機18にて熱処理を施し(ポリマーBを融着させて)、乾式不織布を得た。このとき、不織布の目付調整は、集綿コンベア17の移動速度を変化させることで行った。
実施例2〜9、比較例1〜4
押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1、2に示すように種々変更し、表1、2に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例1と同様に行って短繊維を得、さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例10
ポリマーBとして、イソフタル酸を20mol%共重合したポリエステル(融点206℃、極限粘度0.63)を用い、延伸倍率、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は実施例1と同様に行い、短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例11
ポリマーBとして、イソフタル酸を40mol%共重合したポリエステル(流動開始温度95℃、極限粘度0.56)を用い、延伸倍率、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は実施例1と同様に行い、短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例12〜13
ポリマーBとして、ε−CLを15mol%、1,4−ブタンジオール55mol%共重合したポリエステル(融点158℃、極限粘度0.73)を用い、延伸倍率、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は実施例1と同様に行い、短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例14〜15
ポリマーBとして、融点132℃のポリエチレンを用い、延伸倍率、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は実施例1と同様に行い、短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例16〜17
ポリマーBとして、イソフタル酸を29mol%、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA)を4.25mol%、イタコン酸を4.25mol%共重合したポリエステル(流動開始温度132℃、極限粘度0.61)を用い、延伸倍率、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は実施例1と同様に行い、短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例18〜19
ポリエステルAとして、HCAを4.25mol%、イタコン酸を4.25mol%共重合したポリエステル(融点230℃、極限粘度0.63)を用い、ポリマーBとして実施例10と同じ共重合ポリエステルを用い、延伸倍率、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は実施例1と同様に行い、短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例20〜21
ポリエステルAとして実施例18と同じ共重合ポリエステル、ポリマーBとして実施例16と同じ共重合ポリエステルを用い、延伸倍率、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は実施例1と同様に行い、短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例22
ポリエステルA、ポリマーBに実施例1と同じものを用い、複合紡糸装置を用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分とし、芯鞘質量比率が1/1となるようにして、紡糸温度280℃、吐出量268g/min、紡糸速度1100m/minの条件で、ホール数65の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.41倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.44MPa、スタフィング圧0.14MPaとして、捲縮を付与した。捲縮形態、捲縮数、捲縮率は表1に示すものであった。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度11dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例23〜29、比較例5〜8
押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1、2に示すように種々変更し、表1、2に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例22と同様に行い、短繊維を得た。得られた短繊維のみを用いて実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例30
ポリエステルA、ポリマーBに実施例1と同じものを用い、ポリエステルAを芯、ポリマーBを鞘成分として複合紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、吐出量428g/min、紡糸速度750m/minの条件で、ホール数65の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.99倍、延伸温度60℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.51MPa、スタフィング圧0.19MPaとして、捲縮を付与した。捲縮形態、捲縮数、捲縮率は表1に示すものであった。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度22dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例31〜37 比較例9〜12
押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィング圧)を表1、2に示すように種々変更し、表1、2に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例30と同様に行い、短繊維を得た。得られた短繊維のみを用いて実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例38〜39、比較例13〜14
切断時の繊維長を変更し、表1、2に示す繊維長とした以外は、実施例1と同様に行い、短繊維を得た。得られた短繊維のみを用いて実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例1〜39、比較例1〜14で得られた短繊維の測定値及び評価結果を表1、2に示す。また、これらの短繊維を用いて乾式不織布を作成した際の均一性、嵩高性の評価結果を表1、2に示す。
表1、2から明らかなように、実施例1〜39の短繊維は、(1)式を満足するものであったため、特に、実施例1〜7、10〜27、30〜35、38〜39の短繊維は、(1)〜(3)式を満足するものであったため、静電気の発生や静電気をためることがなく、繊維塊の発生がないものであった。このため、得られた乾式不織布は均一性、嵩高性に優れたものであった。
一方、比較例1、3、5、7、9、11の短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より大きいため、いずれも静電気をためやすく、また、繊維の絡みも生じ、玉状の繊維塊が生じた。したがって、得られた乾式不織布は不均一で品位の劣るものであった。
また、比較例2、4、6、8、10、12の短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より小さいため、いずれも繊維同士の及び繊維と機械間の接触点(面)が多くなり、静電気の発生が多くなり玉状の繊維塊が生成した。このため、得られた乾式不織布は不均一で品位にも劣り、嵩高性にも劣るものであった。また、比較例13の短繊維は、繊維長が短すぎたため、繊維切断時の摩擦熱で繊維の密着が発生し、不織布を得ることができなかった。比較例14の短繊維は、繊維長が長すぎたため静電気をためやすく、また、繊維の絡みも生じ、玉状の繊維塊が生じたため、得られた乾式不織布は不均一で品位の劣るものであった。
実施例40〜46、比較例15〜18
それぞれ実施例1〜7、比較例1〜4の短繊維のみを用いて、以下のようにして湿式不織布を作成した。
得られた短繊維をパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間攪拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙をし、湿式不織布ウェブとした。抄紙した25×25cmの湿式不織布ウェブを、温度140℃、時間10分の熱処理を箱型熱風乾燥機で行い、目付50g/mの湿式不織布を得た。
得られた湿式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表3に示す。
実施例47〜62、比較例19〜26
表3に示すように、それぞれ実施例、比較例で得られた短繊維のみを用いて、実施例40と同様にして湿式不織布を作成した。
得られた湿式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例40〜62の不織布を構成する短繊維は、(1)〜(3)式を満足するものであったため、水中分散性がよく繊維の集束がないものであった。このため、得られた湿式不織布は均一性に優れ、かつ嵩高性も十分なものであった。
一方、比較例15、19、23の不織布を構成する短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より大きかったため、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より大きいため、比較例17、21、25の不織布を構成する短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より大きいため、さらに捲縮率が(3)式の範囲より大きいため、いずれも水中分散性が悪く大きな繊維の集束が発生した。したがって、得られた湿式不織布は不均一で品位にも劣るものであった。また、比較例16、20、24の不織布を構成する短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より小さいため、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より小さいため、また、比較例18、22、26の不織布を構成する短繊維はH/L比が(1)式の範囲より小さいため、さらに捲縮率が(3)式の範囲より小さいため、いずれも得られた湿式不織布は嵩高性が十分でなかった。
実施例63〜67
バインダー繊維として実施例1の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例1の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表4に示すように種々変更した以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
比較例27
バインダー繊維として比較例1の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例1の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を50/50とした以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例68〜72
バインダー繊維として実施例22の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例2の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表4に示すように種々変更した以外は実施例22と同様にして乾式不織布を得た。
比較例28
バインダー繊維として比較例5の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例2の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を50/50とした以外は実施例22と同様にして乾式不織布を得た。
実施例73〜77
バインダー繊維として実施例30の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例3の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表4に示すように種々変更した以外は実施例30と同様にして乾式不織布を得た。
比較例29
バインダー繊維として比較例9の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例3の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を50/50とした以外は実施例30と同様にして乾式不織布を得た。
参考例1
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量344g/min、紡糸速度950m/minの条件で、ホール数518の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.18倍、延伸温度70℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与することなく、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
参考例2
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量328g/min、紡糸速度600/minの条件で、ホール数120の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.2ktexのトウに集束した後、延伸倍率4.14倍、延伸温度75℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与することなく、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度11dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
参考例3
融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量283g/min、紡糸速度900m/minの条件で、ホール数40の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.0ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.57倍、延伸温度80℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与することなく、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度22dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
実施例63〜77、比較例27〜29で得られた乾式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表4に示す。
表4から明らかなように、実施例63〜77の乾式不織布は、本発明の短繊維を含有しているため、均一性に優れ、かつ嵩高性も十分なものであった。中でも、本発明の短繊維を30質量%以上含有してなる不織布(実施例63〜66、68〜71、73〜76)は、均一性、嵩高性ともに優れたものであった。
一方、比較例27、28、29では、不織布を構成する短繊維が本発明の短繊維ではなく、H/L比が(1)式の範囲より大きく、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より大きいため、得られた乾式不織布は均一性が十分でなかった。
実施例78〜82
バインダー繊維として実施例1の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例1の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表5に示すように種々変更した以外は実施例40と同様にして湿式不織布を得た。
比較例30
バインダー繊維として比較例1の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例1の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を50/50とした以外は実施例40と同様にして湿式不織布を得た。
実施例83〜87
バインダー繊維として実施例22の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例2の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表5に示すように種々変更した以外は実施例47と同様にして湿式不織布を得た。
比較例31
バインダー繊維として比較例5の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例2の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を50/50とした以外は実施例47と同様にして湿式不織布を得た。
実施例88〜92
バインダー繊維として実施例30の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例3の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表5に示すように種々変更した以外は実施例53と同様にして湿式不織布を得た。
比較例32
バインダー繊維として比較例9の短繊維を用い、主体繊維(他の繊維)として参考例3の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を50/50とした以外は実施例53と同様にして湿式不織布を得た。
実施例78〜92、比較例30〜32で得られた湿式不織布の均一性、嵩高性の評価結果を表5に示す。
表5から明らかなように、実施例78〜92の湿式不織布は、本発明の短繊維を含有しているため、均一性に優れ、かつ嵩高性も十分なものであった。中でも、本発明の短繊維を30質量%以上含有してなる不織布(実施例78〜81、83〜86、88〜91)は、均一性、嵩高性ともに優れたものであった。
一方、比較例30、31、32では、不織布を構成する短繊維が本発明の短繊維ではなく、H/L比が(1)式の範囲より大きく、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より大きいため、得られた乾式不織布は均一性が十分でなかった。
本発明の不織布用短繊維の捲縮形態を示す拡大説明図である。 実施例における繊維塊の生成を評価するための簡易空気流撹拌試験機を示す説明図である。 実施例において乾式不織布を製造した簡易エアレイド試験機を示す説明図である。

Claims (8)

  1. アルキレンテレフタレート単位を主体とする融点220℃以上のポリエステルAと流動開始温度又は融点がポリエステルAより30℃以上低いポリマーBからなる複合繊維において、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtex、かつ捲縮が付与されている短繊維であって、単糸の捲縮形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足することを特徴とする不織布用短繊維。
    (1)式:0.01T+0.1≦H/L≦0.02T+0.25
    Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
  2. 捲縮数と捲縮率が下記(2)及び(3)式を同時に満足する請求項1記載の不織布用短繊維。
    (2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3
    (3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9
    ただし、捲縮数は繊維長25mm当たりの数 Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
  3. ポリエステルAを芯部に、ポリマーBを鞘部に配した芯鞘型複合繊維である請求項1又は2記載の不織布用短繊維。
  4. ポリマーBがイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートである請求項1〜3いずれかに記載の不織布用短繊維。
  5. ポリマーBが結晶性を有するポリエステルであって、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含有する共重合ポリエステルである請求項1〜3いずれかに記載の不織布用短繊維。
  6. 9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド及び/又はイタコン酸をポリエステルAとポリマーBの少なくとも一方に共重合させた請求項1〜5いずれかに記載の不織布用短繊維。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の不織布用短繊維を含有してなることを特徴とする短繊維不織布。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の不織布用短繊維を30質量%以上含有してなる請求項7記載の短繊維不織布。
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