JP4351100B2 - 不織布用短繊維及び短繊維不織布 - Google Patents

不織布用短繊維及び短繊維不織布 Download PDF

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Description

本発明は、主として乾式不織布や湿式不織布等の不織布のバインダー繊維として用いられる短繊維であって、不織布の製造工程における、空気流、カード機等による短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程等のウェブ形成工程において繊維塊が生成しない適度な捲縮形態を付与した不織布用短繊維及びこの不織布用短繊維を含有してなる短繊維不織布に関するものである。
衛生材料分野をはじめとして、様々な分野において、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂からなる短繊維を用い、均一に分散させて、バインダー樹脂による接着や熱風による接着、熱ロールによる圧着、高圧水流や金属針による交絡等により得られる乾式、湿式不織布が使用されている。
このような短繊維を用いて乾式不織布を得る場合、特にエアレイド法では、繊維を解繊して空気の流れにのせて搬送し、金網又は細孔を有するスクリーンを通過させた後、ワイヤーメッシュ上に落下堆積させる方法を採用するが、短繊維の解繊、搬送、分散、積層工程において、繊維−繊維間及び繊維−金属間の摩擦が大きく、静電気が発生しやすく、このため繊維塊が生成されるという問題が生じやすい。
繊維塊が生じると、各工程での通過性が悪化し、操業性が低下することはもちろん、得られる不織布においても堆積した繊維が不均一となり、斑の生じた不織布となり製品品位が著しく低下する。
今日では製品の高級化及び高機能化等の差別化のために、機能性を有する熱可塑性樹脂が多く用いられ、中には低温加工を必要とするもの、高粘着性を有する熱可塑性樹脂等、従来の繊維に比べてさらに繊維−繊維間の摩擦及び繊維−金属間の摩擦が大きくなる繊維が使用されている。また、製造加工効率を向上させるために加工速度の高速化がはかられている。これらの要因により、エアレイド法による製造工程における静電気の発生量は多くなり、繊維塊の発生も多くなっている。
このような問題を解決するためには、制電性や平滑性を有する仕上げ油剤等の繊維処理剤を繊維表面に付与することが有効である。平滑性及び制電性を有する仕上げ油剤としては、ワックス又は脂肪酸を中心とする脂肪類、長鎖アルキル基を含有する第4級アンモニウム塩が広く使用されている。しかしながら、これらの脂肪類は制電性をある程度付与できるが、十分な平滑性は付与できなかった。
一方、優れた平滑性を付与する繊維仕上げ油剤としてシリコーン系仕上げ油剤が知られており、例えばジメチルシロキサン乳化重合物、アミン変成シリコーン等が付与された繊維及び繊維コードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、上記ジメチルシロキサン乳化重合物、アミン変性シリコーン共に制電性付与が十分でなく、さらには親水性を阻害すると共に繊維及び得られた製品に黄変が発生するという問題があった。また、これらは短繊維ではなく長繊維(繊維コード)に関するものであり、不織布の製造工程における静電気の発生による問題点を解決できるものではなかった。
また、平滑性と制電性及び親水性の付与された繊維として、アルキルホスフェート塩とアミド基含有ポリオキシアルキレン変性シリコーン組成物の混合物で処理した高平滑性繊維が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この繊維においても特別な処理剤を用いることにより平滑性や制電性を付与するものであって、操業性やコスト的にも不利になるという問題があった。また、得られる不織布に対するニーズは様々であり、不織布に高機能性を持たせる目的で様々な処理を施すため、繊維に付与された処理剤により、得られた不織布に変色や着色が生じる等の問題もあり、品質面でも不十分であった。
特公昭48−1480号公報 特開平9−67772号公報
本発明は、上記のような問題点を解決し、特別な処理剤を繊維表面に付与することなく、特に乾式不織布の製造工程において、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができ、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性も十分な不織布を得ることができる不織布用短繊維及びこの短繊維を含有してなる短繊維不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、次の(ア)、(イ)を要旨とするものである。
(ア)融点又は流動開始温度が200℃以下の共重合ポリエステルからなる繊維であって、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtex、かつ捲縮が付与されている短繊維であって、単糸の捲縮形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足し、捲縮数と捲縮率が下記(2)及び(3)式を同時に満足することを特徴とする不織布用短繊維。
(1)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25
(2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3
(3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9
ただし、捲縮数は繊維長25mm当たりの数 Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
(イ)(ア)記載の不織布用短繊維を10〜60質量%含有してなることを特徴とする短繊維不織布。
本発明の不織布用短繊維は、特定の捲縮形状を満足しているため、特別な処理剤を繊維表面に付与することなく、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができ、さらに、繊維間での静電気の保持(ため)、繊維の絡みを防ぐことができるので、乾式不織布及び湿式不織布用のバインダー繊維として好適である。
本発明の短繊維不織布は本発明の不織布用短繊維を含有してなるものであるため、乾式不織布及び湿式不織布ともに、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性、柔軟性も十分な不織布となり、様々な用途に使用することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
乾式不織布を得る場合、特にエアレイド法で製造する場合には、静電気の発生が多くなる。このエアレイド法に用いられる装置としては、例えば特開平5−9813号公報に開示されているような、複数の回転シリンダーをハウジング内に収納し、これらシリンダーを高速回転させることによってシリンダーの周縁に積極的に空気流を発生させ、この空気流によって繊維成分を所定方向に吹き飛ばし得る装置が挙げられる。そして、このエアレイド法によるウエブ形成(短繊維の解繊、搬送、分散、積層工程の全て)においては、空気流を積極的に発生させているために、繊維同士が摺擦され、また繊維と装置(金属製部材)との摩擦によっても静電気の発生が多くなる。
本発明の短繊維は繊維形状を特定のものとすることで、ウエブ形成の各工程(解繊、搬送、分散、積層工程)において、繊維同士、繊維と金属間での摩擦によって静電気を発生しにくく、かつ発生した静電気をためにくいものとなり、短繊維同士が集合して繊維塊を生じることが格段に減少される。
上記のような静電気の問題を考慮する場合、捲縮が多く、大きく付与されているほど形状的に電気をためやすいものとなる。つまり、繊維に捲縮が付与されていると、3次元的な立体形状を呈するため、その立体的な空間部分が多くなるほど静電気がたまりやすくなる。一方、捲縮がないフラットな状態となるほど、平面的な形状となり、静電気をためにくくなるが、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が増え、摩擦による静電気の発生が多くなる。
嵩高性を考慮する場合、捲縮がないフラットな状態とするほど得られる不織布の嵩高性は低下する。一方、捲縮が付与されているほど、得られる不織布の嵩高性は向上するが、繊維の嵩高性も高くなるため、ウエブ形成の工程中において、繊維同士が絡み合い、繊維塊を生じやすくなり、均一性に劣った不織布となりやすい。
また、静電気や繊維の絡み合いの問題、得られる不織布の風合い(嵩高性や柔軟性)は、単糸繊度によっても影響を受けるものである。つまり、静電気の問題においては、繊維同士あるいは繊維と金属との接触により静電気は発生するものなので、接触点や接触面の大きさを左右する単糸繊度の要因は大きいものとなる。また、捲縮により3次元的な立体形状を形成するので、単糸繊度はその空間部分の大きさを左右する要因となり、静電気をためる程度や繊維の絡みあいの程度を左右する要因となる。
そこで、本発明者等は、これらの要因を考えあわせて検討し、単糸繊度を考慮した特定の捲縮が付与された立体形状のものとすることにより、特に上記の効果(静電気、繊維絡みの防止と不織布風合いの向上)が向上されることを見出した。
まず、本発明の不織布用短繊維は、図1に示すように、単糸の捲縮形態において、捲縮部の最大山部における山部の頂点Pと、隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、この三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足するものである。特に乾式不織布をエアレイド法で得る際には、H/Lを(4)式とすることが好ましい。
ここで、最大山部とは、本発明の短繊維の繊維長において複数の山部がある場合、山部の高さ(H)が最大のものをいう。
(1)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25
(4)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.2
捲縮の度合いを表すためには、一般的に捲縮率が用いられるが、捲縮率の測定方法は、荷重をかけたときと無荷重状態での長さの差から求めるものである。しかし、本発明においては、後述する捲縮率を規定した(3)式を満足していたとしても、繊維中の一部の捲縮部に立体形状の空間部分が大きくなるような、捲縮が大きくかかった部分があると、静電気をためやすく、繊維同士の絡み合いが生じやすくなる。そこで(1)式に規定するように、捲縮形態として最大山部における形態を特定のものとすることで、捲縮による空間部分の大きさを特定のものとし、これにより静電気や繊維の絡みによる繊維塊の発生を防ぐことが可能となる。
H/Lが大きすぎると、繊維の立体形状において、空間部分が大きくなり、静電気をためやすく、繊維の絡みが生じやすくなる。一方、H/Lが小さすぎると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気が発生しやすく、繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなりやすい。
なお、H/Lの測定は次のとおりである。まず、短繊維1gを採取し、ここから任意に20本の単繊維を取り出す。そして、取り出した単繊維について拡大写真(約10倍)を撮り、その写真から上記したように、最大山部における、山部の頂点Pと隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、三角形の高さ(H)と底辺(L)の長さを測定し、その比(H/L)を算出するものである。このようにして20本分の単繊維の測定を行い、その平均値をとる。
次に、本発明の短繊維は、(2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3 〔Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数〕を満足する。この捲縮数とは、JISL1015 8.12.1に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮数の測定において繊維長が短い場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮数が(2)式より高くなると、3次元的な立体形状による空間部分となる捲縮部が多くなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が絡みやすくなるため玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(2)式より低くなると、捲縮部が少なくなることから繊維の形態がフラットに近くなり、繊維同士あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、糸状の繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなる。
さらに、本発明の不織布用短繊維は、(3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9〔Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数〕を満足する。この捲縮率とは、JISL1015 8.12.2に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮率の測定において繊維長が短くて測定が困難となる場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮率が(3)式より高くなると、3次元的な立体形状による空間部分が多く又は大きくなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が交絡しやすくなるため、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(3)式より低くなると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。また、得られる不織布は嵩高性に乏しいものとなる。
捲縮数と捲縮率においても、特に乾式不織布をエアレイド法で得る際には、捲縮数について(5)式、捲縮率について(6)式を満足するものとすることが好ましい。
(5)式:0.1T+4.8≦捲縮数≦0.2T+6.6
(6)式:0.8T+1.2≦捲縮率≦1.0T+2.8
そして、本発明の短繊維は、繊維長が1.0〜30mmであり、さらに好ましい繊維長は、2〜25mm、より好ましくは5〜15mmである。また、単糸繊度は0.3〜40dtexが好ましく、中でも0.5〜33dtexが好ましく、より好ましくは1.0〜25dtexである。なお、繊維長はJIS L1015 8.4.1A法に基づき測定したものであり、単糸繊度はJIS L1015 8.5.1B法に基づき測定したものである。
そして、本発明の短繊維は、融点又は流動開始温度が200℃以下の共重合ポリエステルからなるものである。このように、本発明の短繊維は融点又は流動開始温度が低いポリマーからなるものであるので、熱処理により溶融する性能を有しており、熱接着性繊維(バインダー繊維)として用いることが好ましい。特に、本発明の短繊維は熱処理によりほぼ全てが溶融する全融タイプのバインダー繊維とすることが好ましく、不織布とする際には、不織布を構成する主体繊維とともに用いることが好ましい。
本発明の短繊維を構成する共重合ポリエステルは、融点又は流動開始温度が200℃以下の共重合ポリエステルからなるものであるが、これは、結晶性のものの場合は融点を、非晶性のものの場合は流動開始温度を200℃以下とするものであり、中でも150〜185℃とすることが好ましい。共重合ポリエステルの融点又は流動開始温度が200℃を超えると、バインダー繊維として用いる場合に、溶融させるための熱処理温度を高くする必要があり、加工性、経済性に劣るばかりか、主体繊維の熱劣化を招き、主体繊維の風合いを悪化させる傾向がある。一方、融点又は流動開始温度が130℃未満であると、耐熱性に劣るものとなり、使用できる範囲が限られ、汎用性に劣るものとなりやすい。
中でも、融点又は流動開始温度が200℃以下の共重合ポリエステルのうち、結晶性のものが好ましく、結晶開始温度(Tc)80〜140℃、融点(Tm)130〜200℃である結晶性ポリエステル(ポリエステルA)が好ましい。結晶性のポリエステルとすることにより、低融点のポリマーを用いていながら、通常の紡糸、延伸が可能となり、延伸工程においては繊維への熱処理が可能となるので、耐熱性に優れた繊維とすることができる。
結晶開始温度は、中でも85〜120℃とすることが好ましい。結晶開始温度が80℃未満であると、好適な結晶性を得ることが困難となりやすい。一方、140℃を超えると、融点が200℃を超えることとなりやすく好ましくない。
また、この結晶性ポリエステルは、ガラス転移点(Tg)が20〜80℃であることが好ましく、中でも好ましくは30〜70℃である。Tgが20℃未満であると、溶融紡糸時に単糸間の密着が発生し、製糸性が悪くなりやすく、一方、Tgが80℃を超えると、製糸工程において高温で延伸することが必要となり、延伸による塑性変形と同時に部分的な結晶化が始まり、糸切れが発生するなど延伸性が低下しやすくなる。
本発明の熱接着性繊維は、上記のような結晶性ポリエステル(ポリエステルA)のみからなるものとしてもよいが、ポリエステルAと他のポリエステルBとの複合繊維としてもよい。
ポリエステルBは、融点又は流動開始温度が80〜200℃の共重合ポリエステルであり、中でも融点又は流動開始温度が130〜180℃のものが好ましい。つまり、ポリエステルBも結晶性のものでも非晶性のものでもよく、結晶性のものの場合は融点を、非晶性のものの場合は流動開始温度を上記の温度範囲のものとする。そして、ポリエステルAとの融点又は流動開始温度の差を50℃以下とし、中でも30℃以下とすることが好ましい。この温度差はポリエステルAより高温であっても低温であってもよい。この差が50℃を超えると、ポリエステルA又はBのどちらか一方が溶融した後も他方の成分を溶融させるために熱処理を行う間、先に溶融したポリエステル成分は高温下に曝されることになり、経済的に好ましくないばかりか、熱処理により先に溶融したポリエステル成分の分解が起こりやすくなり好ましくない。
なお、本発明における融点、結晶開始温度、ガラス転移点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定し、融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とした。また、流動開始温度は、フロテスター(島津製作所CFT−500型)を用い、荷重100kgf/cm2、ノズル径0.5mmの条件で、初期温度50℃より10℃/分の割合で昇温していき、ポリマーがダイから流出し始める温度として求めた。
複合繊維とする場合の複合形態としては、芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型等が挙げられるが、中でも芯鞘型とし、結晶性のポリエステルAを鞘部にすることが好ましい。これによりポリエステルBに非晶性のポリエステルを用いたとしても、通常の紡糸、延伸工程で複合繊維を得ることが可能となり、特に、延伸工程においては繊維への熱処理が可能となるので、耐熱性に優れた繊維とすることができる。
本発明の繊維において、結晶性ポリエステル(ポリエステルA)としては、柔軟性に優れることから、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合した共重合ポリエステルとすることが好ましい。
まず、脂肪族ラクトン成分を共重合する場合、その共重合量は全酸成分に対して20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とするのがより好ましい。脂肪族ラクトン成分の割合が少ないと結晶性はよくなるが、Tmが高くなり、200℃以下とすることが困難になることがある。一方、20モル%より多いと結晶性が低下し、Tgが低くなりやすく、紡糸時に単糸密着が発生して製糸性が悪くなり、好ましくない。
脂肪族ラクトン成分としては、炭素数4〜11のラクトンが好ましく、特に好ましいラクトンとしては、ε−カプロラクトン(ε−CL)が挙げられる。
次に、1,4−ブタンジオール成分を共重合する場合、全グリコール成分に対して40〜70モル%、中でも50〜60モル%となるようにすることが好ましい。共重合量が40モル%未満であったり、70モル%を超えると、Tm、Tcが上がる傾向となりやすい。
アジピン酸成分を共重合する場合、その共重合量は全酸成分に対して、20モル%以下とすることが好ましく、10〜20モル%とするのがより好ましい。アジピン酸成分の共重合量が10モル%未満であると、結晶性はよくなるが、Tmが高くなり、200℃以下とすることが困難になることがある。一方、20モル%より多いと結晶性が低下し、Tgが低くなりやすく、紡糸時に単糸密着が発生して製糸性が悪くなり、好ましくない。
そして、本発明において複合繊維とする場合に用いるポリエステルBとしては、ポリエステルAと同様のテレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合した共重合ポリエステルとしてもよいが、中でも、製糸性やコストの点からイソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。イソフタル酸共重合PETは一般に非晶性であり、イソフタル酸の共重合量は20〜40モル%とすることが好ましい。
さらに、上記したポリエステルAやポリエステルB中には、その効果を損なわない範囲で、酸化チタン等の艶消し剤、ヒンダートフェノール系化合物等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、導電性付与剤、親水剤、吸水剤等が配合されていてもよい。
また、本発明の繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸型のみならず扁平型、トリローバル型、ヘキサローバル型、W型、H型等の異形断面や四角形や三角形等の多角形状、中空形状のものでもよい。
そして、本発明の不織布用短繊維は、乾式不織布、湿式不織布のいずれに用いてもよく、乾式不織布においては、特にエアレイド法により製造する際に好適である。エアレイド法によると、熱風による接着のみで容易に不織布を得ることが可能で、一般的に行われているバインダー樹脂による接着あるいは熱ロールによる圧着工程の省略が可能でコスト的に優位である。
さらに、本発明の不織布用短繊維は、湿式不織布の製造にも好適に用いることができる。上述したように、本発明の短繊維は特に乾式不織布の製造工程において、繊維−繊維間や繊維−機械間の摩擦による静電気の発生により繊維塊が発生することを防ぐことができるものであるが、湿式不織布においても単繊維のばらけがよく、単繊維同士の接触点(面)が少ないために繊維の集束が生じ難いので、均一性に優れ、かつ嵩高性も十分な湿式不織布を得ることができる。
次に、本発明の短繊維不織布について説明する。本発明の短繊維不織布は、上記のような本発明の不織布用短繊維を10〜60質量%含有するものである。そして、本発明の短繊維を全融タイプのバインダー繊維として用いることが好ましい。これにより、均一性、嵩高性及び柔軟性に優れた独特の風合いを有する不織布を得ることができる。
つまり、本発明の不織布用短繊維は、上記したような捲縮形状を有することで、不織布の製造工程において、繊維同士の絡みを防ぎ、均一かつ嵩高なウエブとすることができる。そして、全融バインダー繊維の場合、熱処理により繊維のほぼ全てが溶融するが、ウエブの段階で主体繊維と本発明の短繊維とにより均一かつ嵩高なものとなっているため、本発明の短繊維が溶融したとしても、主体繊維のみからなる不織布は均一性と嵩高性を満足するものとなる。そして、本発明の短繊維が溶融する際には、全てが溶融するので残存部分がなく、ウエブの嵩高性や均一性を保ったまま、溶融した成分による主体繊維同士の点接着が可能となり、柔軟性も向上することとなる。従来からある芯鞘型のバインダー繊維(例えば、芯にPET、鞘に低融点の共重合ポリエステルを配した繊維)を用いた場合では、バインダー繊維を溶融させる熱接着処理を施した後の不織布中には溶融しない芯部が残存することとなる。このような残存部分があると、主体繊維同士の点接着はできず、また残存成分の存在により柔軟性が阻害されていた。
特に、短繊維を構成する共重合ポリエステルが、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合した低融点の結晶性ポリエステルである場合、ポリエステル自体が柔軟性に優れたものであるため、得られる不織布の柔軟性も優れたものとなり、好ましい。
本発明の不織布において、本発明の短繊維の割合が60質量%を超えると、主体繊維の割合が少なくなり、嵩高性が乏しくなるとともに、本発明の短繊維が溶融する成分の量が多くなりすぎることから柔軟性にも乏しい不織布となりやすい。一方、本発明の短繊維の割合が10質量%未満であると、短繊維が溶融する成分の量が少なくなりすぎることから、接着成分が少なくなり、主体繊維の接着点が少なくなり、不織布とすることが困難となりやすい。たとえ得られたとしても機械的特性に乏しい不織布となる。
そして、本発明の短繊維不織布は、乾式不織布、湿式不織布のいずれでもよい。また、本発明の短繊維を10〜60質量%含有していれば、目付け等も限定するものではない。
本発明の短繊維不織布が乾式不織布である場合、特にエアレイド法で得られる場合は、静電気や繊維の絡みによる繊維塊の発生を防ぐことができるので、均一性に優れた品位の高い乾式不織布となる。
本発明の短繊維不織布が湿式不織布である場合、単繊維のばらけがよく、単繊維同士の接触点(面)が少ないので、繊維の集束が生じることがなく、均一性に優れた品位の高い湿式不織布となる。
また、本発明の短繊維不織布に用いる主体繊維としては、得られる不織布の均一性、嵩高性、柔軟性等の風合いを考慮すると、単糸の捲縮形態が本発明の短繊維と同様のものであり、本発明における(1)〜(3)式の形状、捲縮数、捲縮率を満足する短繊維とすることが好ましい。
このような主体繊維しては、アルキレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであって、ポリエステルの融点が220〜280℃のものが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられ、中でもPETが好ましい。また、これらのポリエステルは、必要に応じて以下に示す共重合成分を1種類又は複数種類共重合した共重合ポリエステルであってもよい。
共重合成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ビスフェノールS、ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
次に、本発明の不織布用短繊維の製造方法について、一例を用いて説明する。ポリエステルを通常用いられる紡糸装置を用いて溶融紡糸し、延伸することなく、一旦巻き取る。得られた未延伸糸を集束して1〜100ktex程度のトウとし、延伸倍率2〜6倍、温度20〜90℃程度で熱延伸を施す。そして、押し込み式クリンパーで捲縮を付与した後、必要に応じて仕上げ油剤を付与し、所望の繊維長にカットして本発明の短繊維を得る。
本発明で規定する捲縮形態を満足するものとするには、延伸条件(倍率、温度)及び押込み式クリンパー等の捲縮付与装置での捲縮付与条件(ニップ圧力、スタフィン圧力)を適宜変更することにより行うことができる。
次に、本発明の短繊維不織布の製造方法について、乾式不織布、湿式不織布のそれぞれについて一例を用いて説明する。
まず、乾式不織布の場合、図3に示す簡易エアレイド試験機を用い、試料投入ブロア13より、本発明の短繊維(バインダー繊維)と主体繊維として他の短繊維を投入し、解繊翼回転モータ15により解繊翼回転用スプロケット16を介して回転する、それぞれ5枚1組の第1解繊翼11と第2解繊翼12で解繊し、飛散落下させる。落下する短繊維を、下部にあるサクションボックス14で吸引しつつ、矢印方向に移動する集綿コンベア17の上に堆積させウェブを作成し、下流にある熱処理機18にて熱処理〔熱処理温度:バインダー繊維の(融点又は流動開始温度)+10℃程度〕を施し、乾式不織布を得る。不織布の目付調整は、集綿コンベア17の移動速度を変化させることで行う。
また、湿式不織布の場合、本発明の短繊維(バインダー繊維)と主体繊維として他の短繊維をパルプ離解機に投入し攪拌する。その後、得られた試料を抄紙機に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙をし、湿式不織布ウェブとする。この抄紙した湿式不織布ウェブを熱風乾燥機で熱処理〔熱処理温度:バインダー繊維の(融点又は流動開始温度)+10℃程度〕を行い、湿式不織布を得る。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお実施例における各特性値の測定方法は以下の通りである。
(1)融点、結晶開始温度、ガラス転移点
前記の方法で測定した。
(2)流動開始温度
前記の方法で測定した。
(3)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
(4)繊度、繊維長、捲縮部のH/L、捲縮数、捲縮率
前記の方法で測定、算出した。
(5)繊維塊の生成
得られた短繊維を図2の簡易空気流撹拌試験機を用い繊維塊の生成を評価した。100gの短繊維を解綿機で予備解繊した後、サンプル送り込み用ブロア3から空気流にて撹拌タンク1に投入し、撹拌用ブロア2から20m/秒の空気流を吹き込み、攪拌タンク1内で1分間撹拌する。攪拌後の繊維をサンプリング口5より0.1g採取し、黒色紙の上に広げ、独立した繊維塊の有無を目視にて評価した。
○:繊維塊が生成していない
△:繊維塊が少量生成している
×:繊維塊が大量に生成している
(6)不織布の均一性、嵩高性、柔軟性
〈乾式不織布〉
−均一性−
得られた乾式不織布の均一性の状態を目視にて観察し、以下のように3段階評価とした。
○:十分に解繊されて均一である
△:部分的に未解繊な部分がある
×:解繊が不十分で不均一である
−嵩高性−
得られた乾式不織布を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、そのサンプル10枚を重ねた上に25cm×25cm×5mmのアクリル板(370g)を載せ、その上に1kgの錘を載せてアクリル板の下面の4辺のそれぞれの辺の中央の高さを測定し、4点の平均値により以下のように3段階評価とした。
○:高さが9.0mm以上である
△:高さが8.0mm以上9.0mm未満である
×:高さが8.0mm未満である
−柔軟性−
得られた乾式不織布を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、パネラーによる触感で柔軟性を以下のように2段階評価とした。
○:柔軟性良好
×:柔軟性不良
〈湿式不織布〉
−均一性−
得られた湿式不織布の均一性の状態を目視にて観察し以下のように3段階評価とした。
○:十分に分散しており均一である
△:部分的に分散の悪い部分がある
×:分散が不十分で不均一である
−嵩高性−
得られた湿式不織布を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、そのサンプルを10枚重ねた上に25cm×25cm×5mmのアクリル板(370g)を載せ、その上に1kgの錘を載せてアクリル板の下面の4辺のそれぞれの辺の中央の高さを測定し、4点の平均値により以下のように3段階評価とした。
○:高さが8.0mm以上である
△:高さが7.0mm以上8.0mm未満である
×:高さが7.0mm未満である
−柔軟性−
得られた湿式不織布を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、パネラーによる触感で柔軟性を以下のように2段階評価とした。
○:柔軟性良好
×:柔軟性不良
実施例1
ポリエステルとして、1,4−ブタンジオールを50モル%共重合したPETであって、極限粘度0.78、結晶開始温度(Tc)98℃、融点(Tm)181℃、ガラス転移点(Tg)48℃の結晶性ポリエステルを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度270℃、吐出量400g/min、紡糸速度900m/minの条件で、ホール数518の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.5ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.90倍、延伸温度65℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.33MPa、スタフィン圧0.09MPaとして、捲縮数6.2個/25mm、捲縮率5.0%の捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
得られた短繊維をバインダー繊維とし、主体繊維としては参考例1に示すものを用い、主体繊維とバインダー繊維を質量比(主体繊維/バインダー繊維)70/30として、図3に示す簡易エアレイド試験機を用い、以下のようにして目付50g/m2の乾式不織布を得た。
まず、試料投入ブロア13より投入された主体繊維及びバインダー繊維は、解繊翼回転モータ15により解繊翼回転用スプロケット16を介して回転する、それぞれ5枚1組の第1解繊翼11と第2解繊翼12で解繊され飛散落下させた。落下する短繊維を、下部にあるサクションボックス14で吸引しつつ、矢印方向に移動する集綿コンベア17の上に堆積させウェブを作成し、下流にある熱処理機18にて熱処理を施し(熱処理温度:190℃)、乾式不織布を得た。不織布の目付調整は、集綿コンベア17の移動速度を変化させることで行った。
実施例2〜、比較例1〜4
押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮部の形状、捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例1と同様に行って短繊維を得、さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例8
ポリエステルAとして、1,4−ブタンジオールを50モル%共重合したPETであって、極限粘度0.78、結晶開始温度(Tc)98℃、融点(Tm)181℃、ガラス転移点(Tg)48℃の結晶性ポリエステルを用い、ポリエステルBとして、イソフタル酸を33.0mol%共重合したPETであって、極限粘度0.68、流動開始温度135℃のポリエステルを用いた。ポリエステルAを鞘成分に、ポリエステルBを芯成分とし、両ポリエステルの複合体積比(芯/鞘)50/50とし、紡糸温度270℃、吐出量462g/min、紡糸速度1000m/minの条件で、ホール数560の丸型断面の複合紡糸ノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.75倍、延伸温度65℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.33MPa、スタフィン圧0.10MPaとして、捲縮数6.2個/25mm、捲縮率5.0%の捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
得られた短繊維を用いて実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例9〜12
ポリエステルAとポリエステルBのPET中の共重合成分の種類と共重合量を表1に示すものに変更し、押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件を表1に示すように種々変更して表1に示す捲縮部の形状、捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例8と同様に行い短繊維を得、さらに、実施例8と同様にして乾式不織布を得た。
ただし、不織布作成時の熱処理温度は、ポリエステルAとポリエステルBの融点又は流動開始温度のうち高い方の温度+10℃とした。
実施例13
ポリエステルとして、1,4−ブタンジオールを50モル%共重合したPETであって、極限粘度0.78、結晶開始温度(T?)98℃、融点(Tm)181℃、ガラス転移点(Tg)48℃の結晶性ポリエステルを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度270℃、吐出量333g/min、紡糸速度600m/minの条件で、ホール数120の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を13.2ktexのトウに集束した後、延伸倍率4.20倍、延伸温度70℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.35MPa、スタフィン圧0.30MPaとして、捲縮数10.5個/25mm、捲縮率15.8%の捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度11.0dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
得られた短繊維をバインダー繊維とし、主体繊維に参考例2の繊維を用いた以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例14〜16、比較例5〜8
押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮部の形状、捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例13と同様に行い短繊維を得、さらに、実施例13と同様にして乾式不織布を得た。
実施例19
ポリエステルとして、1,4−ブタンジオールを50モル%共重合したPETであって、極限粘度0.78、結晶開始温度(T?)98℃、融点(Tm)181℃、ガラス転移点(Tg)48℃の結晶性ポリエステルを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度270℃、吐出量317g/min、紡糸速度900m/minの条件で、ホール数40の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を13.2ktexのトウに集束した後、延伸倍率4.00倍、延伸温度75℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.46MPa、スタフィン圧0.34MPaとして、捲縮数13.6個/25mm、捲縮率26.6%の捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度22.0dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
得られた短繊維をバインダー繊維とし、主体繊維に参考例3の繊維を用いた以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
実施例20〜22、比較例9〜12
押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件を表1に示すように種々変更し、表1に示す捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例19と同様に行い短繊維を得、さらに、実施例19と同様にして乾式不織布を得た。
実施例25〜26、比較例13〜14
切断時の繊維長を変更し、表1に示す繊維長とした以外は、実施例1と同様に行って短繊維を得、さらに実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
参考例1
ポリエステルとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量344g/min、紡糸速度950m/minの条件で、ホール数518の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.18倍、延伸温度70℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.32MPa、スタフィン圧0.09MPaとして、捲縮数6.1個/25mm、捲縮率4.8%の捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
参考例2
ポリエステルとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量328g/min、紡糸速度600m/minの条件で、ホール数120の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.2ktexのトウに集束した後、延伸倍率4.14倍、延伸温度75℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.35MPa、スタフィン圧0.30MPaとして、捲縮数10.4個/25mm、捲縮率15.7%の捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられ紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度11dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
参考例3
ポリエステルとして、融点が256℃、極限粘度0.61のPETを用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度285℃、吐出量283g/min、紡糸速度900m/minの条件で、ホール数40の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を14.0ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.57倍、延伸温度80℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.45MPa、スタフィン圧0.35MPaとして、捲縮数13.6個/25mm、捲縮率26.7%の捲縮を付与した。その後、仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする通常用いられる紡績用油剤を0.2質量%の付着量となるように付与した後、切断して単糸繊度22dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
実施例1〜26、比較例1〜14、参考例1〜3で得られた短繊維の測定値及び評価結果を表1に示す。また、これらの短繊維を含有する乾式不織布の均一性、嵩高性、柔軟性の評価結果を表1、2に示す。
表1、2から明らかなように実施例1〜5、8〜16、19〜22、25〜26の短繊維は、(1)〜(3)式を満足するものであったため、静電気の発生や静電気をためることがなく、繊維塊の発生がないものであった。このため、これらの短繊維を含有する乾式不織布は均一性、嵩高性、柔軟性に優れたものであった。
一方、比較例1、3、5、7、9、11の短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より大きいため、いずれも静電気をためやすく、ウエブを作成する際に繊維の絡みも生じ、玉状の繊維塊が生じた。したがって、これらの短繊維を含有する乾式不織布は不均一で品位の劣るものであり、柔軟性も乏しいものとなった。
また、比較例2、4、6、8、10、12の短繊維は、H/L比が(1)式の範囲より小さいため、いずれも繊維同士の及び繊維と機械間の接触点(面)が多くなり、静電気の発生が多くなり、ウエブとしたときに糸状の繊維塊が生成した。このため、これらの短繊維を含有する乾式不織布は不均一で品位に劣るものであり、柔軟性も乏しいものとなった。また、比較例13の短繊維は、繊維長が短すぎたため、繊維切断時の摩擦熱で繊維の密着が発生し、不織布を得ることができなかった。比較例14の短繊維は、繊維長が長すぎたため静電気をためやすく、また、繊維の絡みも生じ、玉状の繊維塊が生じたため、この短繊維を含有する乾式不織布は不均一で品位の劣るものであり、柔軟性にも乏しいものであった。
実施例27〜31、比較例15〜18
それぞれ実施例1〜5、比較例1〜4の短繊維をバインダー繊維とし、主体繊維としては参考例1〜3に示すもの(それぞれバインダー繊維と同繊度のもの)を用い、以下のようにして湿式不織布を作成した。
主体繊維とバインダー繊維を質量比(主体繊維/バインダー繊維)70/30とし、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間攪拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)に移し、アルキルホスフェート金属塩を主成分とする分散油剤を添加した後、付帯の撹拌羽根にて撹拌を行い抄紙をし、湿式不織布ウェブとした。抄紙した25×25cmの湿式不織布ウェブを、温度190℃、時間10分の熱処理を箱型熱風乾燥機で行い、目付50g/mの湿式不織布を得た。
得られた湿式不織布の均一性、嵩高性、柔軟性の評価結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例27〜31の短繊維は、(1)〜(3)式を満足するものであったため、水中分散性がよく繊維の集束がないものであった。このため、得られた湿式不織布は均一性に優れ、かつ嵩高性、柔軟性も十分なものであった。
一方、比較例15は、H/L比が(1)式の範囲より大きかったため、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より大きいため、比較例17はH/L比が(1)式の範囲より大きいため、さらに捲縮率が(3)式の範囲より大きいため、いずれも水中分散性が悪く大きな繊維の集束が発生した。したがって、得られた湿式不織布は不均一で品位にも劣るものであり、柔軟性も乏しかった。また、比較例16はH/L比が(1)式の範囲より小さいため、さらに捲縮数、捲縮率が(2)、(3)式の範囲より小さいため、比較例18はH/L比が(1)式の範囲より小さいため、さらに捲縮率が(3)式の範囲より小さいため、いずれも水中分散性が悪く、得られた湿式不織布ウエブは均一性、嵩高性が不十分であったため、得られた不織布も均一性、嵩高性に劣るものであり、柔軟性にも乏しかった。
実施例32〜35、比較例19〜20
バインダー繊維として実施例1の短繊維を用い、主体繊維として参考例1の短繊維を用い、主体繊維とバインダー繊維の質量比(主体繊維/バインダー繊維)を表4に示すように種々変更した以外は実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
得られた乾式不織布の均一性、嵩高性、柔軟性の評価結果を表4に示す。
表4から明らかなように、実施例32〜39の短繊維不織布は、本発明の短繊維を10〜60質量%含有してなるものであったため、均一性、嵩高性、柔軟性ともに優れたものであった。
一方、比較例19の短繊維不織布は、本発明の短繊維を10質量%以上含有していなかったため、主体繊維同士が接着せず、不織布とすることができなかった。また、比較例20の短繊維不織布は、本発明の短繊維の含有量が60質量%を超えていたため、接着成分が多くなりすぎ、主体繊維同士が点接着したものとならなかったため、得られた不織布は嵩高性、柔軟性に劣ったものとなった。
本発明の不織布用短繊維の捲縮形態を示す拡大説明図である。 実施例における繊維塊の生成を評価するための簡易空気流撹拌試験機を示す説明図である。 実施例において乾式不織布を製造した簡易エアレイド試験機を示す説明図である。

Claims (5)

  1. 融点又は流動開始温度が200℃以下の共重合ポリエステルからなる繊維であって、繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜40dtex、かつ捲縮が付与されている短繊維であって、単糸の捲縮形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺(L)の比(H/L)が下記(1)式を満足し、捲縮数と捲縮率が下記(2)及び(3)式を同時に満足することを特徴とする不織布用短繊維。
    (1)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25
    (2)式:0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3
    (3)式:0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9
    ただし、捲縮数は繊維長25mm当たりの数 Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
  2. 融点又は流動開始温度が200℃以下の共重合ポリエステルが、結晶開始温度80〜140℃、融点130〜200℃の結晶性ポリエステル(ポリエステルA)である請求項記載の不織布用短繊維。
  3. 融点又は流動開始温度が200℃以下の共重合ポリエステルからなる繊維が、ポリエステルAとポリエステルBとからなる複合繊維であって、ポリエステルAは結晶開始温度80〜140℃、融点130〜200℃の結晶性ポリエステルであり、ポリエステルBは融点又は流動開始温度が80〜200℃であり、かつポリエステルAとの融点又は流動開始温度の差が50℃以下のポリエステルである、請求項記載の不織布用短繊維。
  4. 結晶性ポリエステル(ポリエステルA)がテレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を共重合した共重合ポリエステルである請求項2又は3記載の不織布用短繊維。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の不織布用短繊維を10〜60質量%含有してなることを特徴とする短繊維不織布。
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