JP4537592B2 - アシストグリップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アシストグリップのうち、特にフック機能を持つアシストグリップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6はフック機能付きアシストグリップの従来例(特開平7−266957号)を示している。このアシストグリップは、グリップ本体50が取付ベース51に対し枢軸52又は53を介し回動可能に組み付けられて、車室取付壁に沿う不使用位置と、車室内に突出される使用位置とに回動切り換えられる。符号54は、グリップ本体50を不使用位置側へ付勢している付勢ばねである。符号55は、取付ベース51を車室取付壁に固定する取付部材である。そして、図7(a)のフック部材56は、グリップ本体50の内側部にあって、枢軸52の対応端側の延長部52aに取り付けられている。図6(b)のフック部材57は、グリップ本体50の両側のうち、片側下部にあって、枢軸53の両端延長部53a,53aに取り付けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したアシストグリップは、本来のグリップ機能に加えフック機能を有し、乗員が衣服やコート等を必要に応じフック部材56又は57に吊り下げ可能にしているものの次のような不具合がある。即ち、従来構造では、フック部材56又は57がグリップ本体50の端側に連設されているため、アシストグリップ自体の見栄えを損ねるだけではなく、グリップ本体50の使用時に違和感を与えたり、フック部材56又は57の略U形フック部56a又は57aが不使用時も常に車室内に突出して安全性を損ない易い。
【0004】
本発明は上記したような課題を一掃することを目的としている。具体的には、フック部材が不使用時に取付ベース内に極力格納されるようにして、外観特性及び安全性を向上すると共に、取付ベースへの組込性、フック使用態様への切換操作性等に優れたアシストグリップを実現することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、図面に例示される如く、取付ベース2及び該取付ベース2に枢軸3を介し回動可能に連結されたグリップ本体1を備え、該グリップ本体1が車室取付壁7に沿う不使用位置と、車室内に突出される使用位置とに回動切換可能なアシストグリップにおいて、前記取付ベース2は、下開口20aした収容部20を形成しており、該収容部20に摺動可能に組み付けられて、前記アシストグリップの外面と略面一な格納状態から前記下開口20aを通し所定寸法だけ引き出される突出状態に切り換えられるフック部材10を有していることを特徴としている。
【0006】
以上の構造では、フック部材10が取付ベース2の収容部20にほぼ収まった格納状態から、収容部20の下開口20aから所定寸法だけ引き出された突出状態(フック使用態様)に切り換えられるため、従来品に対しフック機能を必要としないときの外観低下要因、グリップ本体1の把持時における違和感を解消できる。加えて、この構造では、フック部材10が取付ベース2の収容部20から下向きに引き出されることから、図4の例の如く、突出状態において下端側の略U形フック部12だけを露出して室内へ突出する部分を最小限に抑えて外観特性及び安全性を図り易いこと、格納状態において収容部20の下開口20aを前記フック部12で塞いで見栄え処理も簡易である等の利点がある。
【0007】
以上の本発明は請求項2〜5の如く具体化されることがより好ましい。
第1に、前記フック部材10は、前記取付ベース2を車室取付壁7に固定する取付部材8を利用して前記収容部20に離脱不能に組み付ける構成である。これは、フック部材専用の取付部材を不要にし、同時にフック部材10の不用意な外れを確実に防ぐ。
第2に、前記フック部材10は、前記取付ベース2を車室取付壁7に固定する取付部材8を逃げる逃溝13を有し、下方への摺動が前記取付部材8に対する前記逃溝13の上端面により規制される構成である。これは、フック部材10の上下摺動範囲を簡易に規制可能にするだけではなく、フック部材10に加わる使用時の過大な荷重を剛性及び固定力の最も強い取付部材8で受けることに意義がある。即ち、この構造は、図6の従来例の如くフック部材に加わる過大な荷重を枢軸で受けるとグリップ本体の回動特性を損なう要因となるが、そのような不安定要因を部材数を増やすことなく解決できようにする。
第3に、前記取付ベース2は、前記グリップ本体1の対応端部分2Aの背面側の窪み部1a内にほぼ収まっており、前記フック部材10は、前記格納状態で略U形のフック部12が前記窪み部1aの下開口外面に略面一に露出配置され、該露出したフック部を利用して下向きに押圧操作可能になっている構成である。これは、フック部材10がフック部12だけを露出して外観を維持し、同時にフック部材10を引き出す形態として、下側のフック部12を上から下へ押すという押圧操作を可能にする。即ち、フック部材10の引出操作としては、例えば、下部を摘んで引き出すことも可能であるが、この構成の如く下向きの押圧操作による方が簡単かつ操作性に優れたものとなる。
第4に、前記フック部材10の摺動を案内するガイド手段26等と、前記フック部材10を格納状態で保持する保持手段14,28等を有している構成である。これはフック部材10の作動特性を確保する構成である。ガイド手段26等はフック部材10の摺動特性を良好にする。保持手段14,28等はフック部材10の格納状態を維持する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は取付ベースとフック部材の関係を示す要部構成図であり、図2は前記取付ベース及びフック部材とグリップ本体の関係を示す要部構成図である。図3はグリップ本体の両側のうちフック部材を持たない方を示す構成図である。図4は本発明のアシストグリップの作動を示す要部縦断面図、図5はアシストグリップの概略外観図である。
【0009】
(全体の概要)形態例のアシストグリップは、主部材が手で把持するグリップ本体1、グリップ本体1を回動可能に支持する取付ベース2A,2B(2)、ダンパー手段5、付勢ばね6、フック部材10からなる。グリップ本体1は、図5の如く全体が両側を折り曲げた略コ形状をなし、両端部分1A,1Bが対応する取付ベース2A,2Bに対し枢軸であるシャフト3,4を介し回動可能に連結される。また、グリップ本体1は、取付ベース2A,2Bを介し車室取付壁7に取付部材8により取り付けられて、該車室取付壁7に沿う不使用位置(図4の実線位置)と、車室内に突出される使用位置(図4の想像線位置)とに回動切り換えられる。以上のグリップ機能自体は公知のものと類似している。この形態では、取付ベース2Aが上下摺動式のフック部材10を有し、フック部材10及びそれと関連する箇所が工夫されている。以下、その主要部を詳述する。なお、グリップ本体1と取付ベース2及びフック部材10は共に樹脂成形品であるが、他の材質であってもよい。車室取付壁7としては、自動車の室内側壁を想定しているが、例えば、座席の背面壁でも差し支えない。
【0010】
(グリップ本体)クリップ本体1は、略コ形の中間部分が把持部、コ形の両端部分1A,1Bが取付ベース2A,2Bへの連結部となる。両端部分1A,1Bは、背面側が対応する取付ベース2A,2Bを収容可能な窪み部1a,1bに形成されている点、幅方向両側に設けられた取付孔1c,1dを有している点で同じ。端部分1Aは、窪み部1aの下開口が端部分1B側よりも大きく開口されている点、該下開口縁部に小さな凹状部1eを有している点で異なっている。即ち、両端部分1A,1Bの形状は、取付ベース2A,2B及びそれに組み込まれるフック部材10の有無等に応じて設計される。
【0011】
(取付ベース)取付ベース2A,2Bは、グリップ本体1の両端部分1A,1Bをシャフト3,4を介し回動可能に支持する点、グリップ本体1を車室取付壁7に対し取り付ける介在物となる点で共通している。取付ベース2Aにはフック部材10及びダンパー手段5が組み付けられる。取付ベース2Bには付勢ばね6が組み付けられる。なお、形態例の取付ベース2A,2Bは、便宜的に同じものを使用しているが、取付ベース2Bの方はより簡略することも可能である。ここでは取付ベース2A側で細部構成を述べる。
【0012】
取付ベース2Aは、図1に一部破断した如く側面視で略逆Lをなし、上面及び前面を形成している表面壁3a、両側壁3b、背面壁3cにより区画され、下開口20aした収容部20を有している。このうち、表面壁3aの前下側には、両側壁3b,3bの間を大きく開口した下切欠部21aと、下切欠部21aの中間から上に細長く開口した上切欠部21bとが設けられている。各側壁3bの前下側には、同軸線上に設けられた軸孔22と、各軸孔22の外側に突設した筒形ボス部23とが設けられている。その内面側には、前から後方向へ延びる係合溝24等が設けられている。背面壁3cには、取付孔25が上切欠部21bと対向した箇所に設けられている。収容部20には、両側壁3bの内側にあって上下に延びるガイド溝26が左右対向して設けられている。各ガイド溝26は、対のレール部27で区画形成され、フック部材10の摺動を案内する。ガイド溝26には、後述する突起14と係脱する係止溝28が上側に設けられている。
【0013】
(フック部材)フック部材10は、垂直板部11の先端(下端)にフック部12を形成したものである。垂直板部11は、ガイド溝20cに対応した板幅をなし、ガイド溝20cに対し摺動自在に嵌合されると共に、中間上下方向に設けられた逃溝13と、両側11aの外面に設けられた突起14とを有している。フック部12は略U形をなし、自由端側の端面に凹状部12aを形成している。なお、このような、フック部材10は、取付ベース2Aに組み込まれる関係で比較的小さく、かつフック部12に吊り下げる物品に応じた荷重を受ける。このため、材質的には金属材料が用いられることもある。その際は、例えば、該金属材料を心材として樹脂成形体にインサート成形したり、U形フック部の外面部分だけを樹脂にて被覆処理される。
【0014】
(組立)次に、上記各部材の組立例を概説する。取付ベース2Aにはフック部材10及びダンパー手段5が組み付けられる。フック部材10は、図1の如く垂直板部11を下開口20aから両ガイド溝26cに嵌合しつつ押し上げると、突起14が係止溝28と係合して、収容部20に垂直板部11の全体が収容された状態に組み付けられる。これに対し、ダンパー手段5は、本体である外筒5aが一端側の肉厚内に作動油を入れる空洞部を形成しており、該空洞部に一部を嵌合した状態で外筒5aの一端側に組み付けられる内筒5bと、内筒5bの外端面に突設された凸部5cとを有し、両筒5a,5bが前記空洞部に充填される作動油の抵抗を受けつつ相対的に回動される構成である。そして、このダンパー手段5は、取付ベース2Aに対し凸部5cを係合溝24に嵌合しながら下切欠部21a内に押し込むと、図2の如くセットされる。
【0015】
また、取付ベース2Aは、グリップ本体1の対応する端部分1Aにシャフト3を介し連結される。この要領は、例えば、取付ベース2Aを図4の如く配置した状態から、シャフト3が図1及び図2の如く端部分1Aの一方取付孔1c、前記一方軸孔22、前記内筒5bの内径及び外筒5aの内径、前記他方軸孔22、他方取付孔1dに挿入操作される。組立状態において、取付ベース2Aの両側は端部分1Aの対応する内側面にボス部23を介し当接される。シャフト3は、内筒5b内径に遊嵌状態、外筒5b内径に圧入固定状態で、先端3aがグリップ本体1の取付孔1dに圧入固定される。
【0016】
取付ベース2Bは、図3の如くグリップ本体1の端部分1Bにシャフト4を介し連結される。この場合は、取付ベース2Bを端部分1Bに配置し、シャフト4が端部分1Bの一方取付孔1c、前記一方軸孔22、付勢ばね6、他方軸孔22、他方取付孔1dに挿入操作される。付勢ばね6は、シャフト4の軸回りに保持され、一端6a側が端部分1Bの窪み部1a内面に係止され、他端6bが付勢圧を発現しつつ取付ベース2B側の適位置に係止される。この組立状態では、グリップ本体1が付勢ばね6の付勢力により取付ベース2A,2Bに対し起立される方向(非使用位置)に回動されている。従って、グリップ本体1は、付勢ばね6の付勢力に抗して非使用位置から使用位置に回動操作され、使用位置で手を離すとダンパー手段5により制動された速度で非使用位置に自動的に戻される。
【0017】
以上のアシストグリップは、車室取付壁7に取付ベース2A、2Bを介し位置決め配置され、取付部材8A,8Bにより所定強度で固定される。なお、取付部材8Aは、取付部材8Bよりフック部材10の板厚分だけ長く、かつ頭部に接近する軸部分に筒体用の装着軸部8aを有している。この取付要領は、図4の如くグリップ本体1を前記使用位置にして、上切欠部21bを露出させた状態にする。そして、取付ベース2Aは、取付部材8Aが上切欠部21bから、フック部材10の逃溝13、背面3cの取付孔25を通って車室取付壁7に固定される。取付ベース2Bは、取付部材8Bが上切欠部21bから背面3cの取付孔25を通って車室取付壁7に固定される。なお、この形態では、取付部材8A,8Bが止めねじ構造のものであるが、ボルトやクリップ等の他の取付手段であってもよい。また、取付部材8Aの方は、図1の如く弾性筒体9が軸装され、前記逃溝13に対し弾性的に当接されるようにしている。この弾性筒体9は、必要に応じて用いられる。作用的には、取付部材8Aと逃溝13との遊びを吸収する作用と、フック部材10の格納状態での保持力、つまり上記係止溝28と突起14との係合力を補強する保持作用とを兼ねている。
【0018】
(要部作動)図4はフック部材10の格納状態における断面である。この格納状態において、端部分1Aの前面には図5の拡大部の如く、フック部12の先端外面だけが面一状態に露出し、フック部12側の凹状部12aと端部分1A側の凹状部1eとで差込用の小孔が形成されている。フック機能を必要とする場合は、該小孔に指を引っかけてフック部材10を上から下向きに押す。すると、フック部材10は、上記係止溝28と突起14との係合を解除した後、逃溝13の上端が取付部材8の軸部分(筒体9)に当接するまで下降される。即ち、フック部材10は、図4の想像線の位置まで下降され、フック部12が端部分1Aの下端から突出される。従って、乗員は、該フック部12に各種の物品の取付部を直に又はハンガー等を介して吊すことができる。フックを要しないときは、フック部12を下から上向きに押してフック部材10をガイド溝26に沿って上昇移動する。フック部材10は、逃溝13の下端が取付部材8の軸部分(筒体9)に当たる直前で、突起14が係止溝28に係合して格納状態に保持される。
【0019】
以上の構造では、フック部材10が最大まで下降された突出状態、つまりフック使用位置において、端部分1Aの下端開口からフック部12の外面だけが露出(端部分1Aの対応外面と面一状態に露出)され、該フック部12が端部分1Aの厚さ内にほぼ収まっている。このため、アシストグリップとしては、フック部材10の格納状態は勿論、フック部材10の突出状態でも、違和感がなく、車室内への突出寸法を最小限に抑え安全性に優れたものとなっている。また、フック部材10は、使用状態における荷重が取付部材8Aで受けられるため、過大な荷重にも充分に耐えるという利点等も具備している。
【0020】
なお、本発明は、請求項1で特定される要件を備えていればよく、以上の形態例に何ら制約されるものではない。その一例は、フック部材10の保持手段として、公知のプッシュ・プッシュ係止機構を採用することである。この場合は、フック部材10を上側へ押圧操作すことで収容部20内に係止され、該係止が更なる押し操作により解除されてフック部材10を突出状態に切り換えることになる。構造的には、部品数が増えるが、フック部材10の回動切換操作性に優れ、フック部材10の格納状態で端部分1Aの下開口に露出する部分をより抑えることができる。また、上記形態では取付ベース2A側にだけフック部材10を組み込んだが、取付ベース2B側にも同様にフック部材10を組み込むようにしてもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のアシストグリップは、フック部材がアシストグリップ外面と略面一な格納状態から、所定寸法だけ引き出された突出状態に切り換えられるため、従来品に対し外観的に優れ、室内へ突出する部分を極力抑えて違和感をなくし、かつ安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明形態の取付ベース及びフック部材を示す構成図である。
【図2】図1の取付ベース等とグリップ本体の関係を示す構成図である。
【図3】上記グリップ本体と他方取付ベースの関係を示す構成図である。
【図4】本発明形態のアシストグリップの作動を示す模式断面図である。
【図5】形態例のアシストグリップ全体を示す概略外観図である。
【図6】アシストグリップの従来例を示す構成図である。
【符号の説明】
1…グリップ本体
1A,1B…グリップ本体の両端部分
2,2A,2B…取付ベース
3,4…シャフト(枢軸)
7…車室取付壁
8,8A,8B…取付部材
10…フック部材
11…垂直板部
12…フック部
13…逃溝
14…突起(保持手段)
20…収容部
20a…収容部の下開口
21a…下切欠部
21b…上切欠部
26…ガイド溝(ガイド手段)
28…係止溝(保持手段)
Claims (5)
- 取付ベース及び該取付ベースに枢軸を介し回動可能に連結されたグリップ本体を備え、該グリップ本体が車室取付壁に沿う不使用位置と、車室内に突出される使用位置とに回動切換可能なアシストグリップにおいて、
前記取付ベースは、下開口した収容部を形成しており、該収容部に摺動可能に組み付けられて、前記アシストグリップの外面と略面一な格納状態から前記下開口を通し所定寸法だけ引き出される突出状態に切り換えられるフック部材を有している、ことを特徴とするアシストグリップ。 - 前記フック部材は、前記取付ベースを車室取付壁に固定する取付部材を利用して前記収容部に離脱不能に組み付けられる請求項1に記載のアシストグリップ。
- 前記フック部材は、前記取付ベースを車室取付壁に固定する取付部材を逃げる逃溝を有し、下方への摺動が前記取付部材に対する前記逃溝の上端面により規制される請求項1又は2に記載のアシストグリップ。
- 前記取付ベースは、前記グリップ本体の対応端部分の背面側の窪み部内にほぼ収まっており、前記フック部材は、前記格納状態で略U形のフック部が前記窪み部の下開口外面に略面一に露出配置され、該露出したフック部を利用して下向きに押圧操作可能になっている請求項1から3の何れかに記載のアシストグリップ。
- 前記フック部材の摺動を案内するガイド手段と、前記フック部材を前記格納状態で保持する保持手段とを有している請求項1から4の何れかに記載のアシストグリップ。
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