本発明は、かかる課題の少なくとも一部を取り扱うためになされ、画質および印刷速度を極端に損なうことなく、振動その他の弊害を軽減した印刷装置およびかかる印刷装置に関連する技術を提供することを目的とする。
本発明の一実施態様としての印刷装置は、
ドットを形成するためのドット形成要素を各色ごとに複数備えたヘッドにより、画像データに応じたドットを印刷媒体上に形成して、多色の画像を印刷する印刷装置であって、
前記ヘッドは、画質への影響が小さい一部の特定色のドット形成要素の数が、その他の色のドット形成要素の数よりも少ないヘッドであることを要旨とする。
かかる印刷装置によれば、一部の特定色についてドット形成要素の数を減らすことにより、ヘッド全体に備えられるドット形成要素の数を減らすことができる。従って、ヘッドを小型化することができ、振動、騒音、製造コストなど、ヘッドの大型化に起因する種々の弊害を解消することができる。
ドット形成要素の数が少ない特定色は、その他の色に比べて形成されるドットの数が少なくなる。この結果、特定色では、その他の色ほどの高い階調表現または解像度での印刷を実現することはできない。しかし、本印刷装置では、画質への影響が小さい一部の特定色につき、ドット形成要素の数を減らしている。従って、ドット形成要素の数を減らすことによって生じる画質への影響は、ほとんど視認されない。この結果、本印刷装置では、印刷された画像の画質を極端に損ねることなく、ヘッドの小型化を図ることができる。
全てのインクについて一定の解像度でドットを形成して画像を印刷する場合、特定色を基準に考えれば、その他の色(以下、一般色という)はドット形成要素を余剰に備えることになる。かかる余剰のドット形成要素については、画質を向上するために種々の使い方をすることができる。例えば、一般色については、各画素ごとにドットを複数回重ねて形成するものとすれば、各画素ごとの階調表現を豊かにすることができる。
また、一般色については、余剰のドット形成要素を用いていわゆるオーバラップ方式で印刷を行うものとしてもよい。オーバラップ方式とは、各ラスタ、即ちドット列を複数個のドット形成要素で形成する記録方式をいう。例えば、2個のドット形成要素でラスタを形成する場合は、第1のドット形成要素で該ラスタの奇数番目のドットを形成し、第2のドット形成要素で偶数番目のドットを形成するのである。このように複数個のドット形成要素を用いてラスタを形成すれば、それぞれのドット形成要素の機械的製造誤差等に起因するドット形成位置のずれを分散させることができ、いわゆるバンディングを軽減する効果がある。
本発明の一実施態様としての印刷装置によれば、一般色の余剰のドット形成要素を有効に活用することにより、印刷速度を低下させることなく、上述の豊かな階調表現やオーバラップ方式の記録を実現することができる。
本発明の一実施態様としての印刷装置では、ドット形成要素の数に応じて各色ごとに異なる解像度で画像を印刷するものとしてもよい。
例えば、本発明の一実施態様としての印刷装置において、
各色ごとのドット形成要素数に基づいて設定された解像度からなる画素について、各色ごとに前記画像データに基づきハーフトーン処理を行う多値化手段と、
該処理結果に応じて前記ドット形成要素を駆動して、各色ごとに設定された解像度でドットを形成するドット形成手段とを備えるものとしてもよい。
かかる印刷装置では、各色ごとにドット形成要素数に基づいて設定された解像度でドットを形成する。つまり、ドット形成要素数が多い一般色については高い解像度でドットを形成し、ドット形成要素数が少ない特定色については低い解像度でドットを形成する。ドット形成要素数が少ない特定色の解像度を低くすることにより、特定色で形成すべきドットの数を減らすことができるから、印刷速度を低下させることなく画像を印刷することができる。
前述のドット形成要素としては、種々の要素を適用することができる。例えば、いわゆる熱転写型のドット形成要素や熱昇華型のドット形成要素を適用するものとしてもよい。また、インパクト型のドット形成要素を適用するものとしてもよい。
また、前記ドット形成要素はインクを吐出してドットを形成するノズルであるものとすることもできる。インクを吐出するノズルは一つ当たりのドット形成要素が比較的大きいため、上記態様の有効性が高い。
この場合において、インクを吐出する方式としてはいかなる方式を適用してもよい。例えば、電圧印加時のピエゾ素子の変形を利用してインクを吐出する方式を適用することができる。また、ヒータに加熱することでインク通路内に生じた気泡の圧力でインクを吐出する方式を適用するものとしてもよい。
インクを吐出するノズルを備える印刷装置においては、
ドット形成要素数に応じた容積比で各色のインクを蓄えるインク蓄積部を備えるものとすることが好ましい。
一般にインクの消費量はドットの形成数に比例し、ドット形成要素数に概ね比例するものと考えられる。従って、上述のインク蓄積部を備えるものとすれば、各色のインクを均等に消費することができ、印刷装置を経済的に使用することができる。
本発明の一実施態様としての印刷装置において、画質への影響が少ない特定色とは、ドット形成要素の数を低下しても顕著な画質の低下を生じない色という意味である。特定色は、ドット形成要素の数を減らす割合に応じて種々の色を選択することが可能である。
一般的には、比較的明度の高いインクが特定色となることが多く、例えば、
前記ヘッドが、少なくともシアン、マゼンタ、イエロの3色のドットを形成可能なヘッドである場合には、
前記特定色はイエロであるものとすることができる。
もちろん、特定色は明度の高い色に限定されるものではない。例えば、ヘッドに備えられた色の内、他の色に比較して使用頻度の低い色を特定色としてもよい。
なお、特定色は単一の色に限定する必要はなく、複数の色を特定色としてもよい。例えば、濃度の異なるインクを備える印刷装置においては、イエロの他、濃度の低いインクをも特定色としてもよい。このように複数の色を特定色とした場合、特定色間でドット形成要素の数を一致させる必要がないことはいうまでもない。
少なくともシアン、マゼンタ、イエロの3色のドットを形成可能なヘッドを備える印刷装置においては、
シアン、マゼンタ、イエロの各色のインクは、ドット形成要素数に応じた割合でドットを形成した際に該領域が黒色として視認し得る濃度比に調整されたインクとすることが望ましい。
かかる濃度比に調整されたインクを用いるものとすれば、特定色たるイエロのドット形成要素数が少なくても、前記3色の混色により適切に黒色を表現することができる。従って、黒色の階調表現を損なうことなく、特定色のドット形成要素数を減らすことができる。
インクを吐出するノズルをドット形成要素として備える印刷装置において、
前記ヘッドは、前記その他の色の少なくとも一部については、所定の単位パターンを各色ごとに複数並べた状態で、ドット形成要素を備えるヘッドであり、
さらに、各色のインクを貯蔵したインクカートリッジを交換可能に搭載するとともに、該カートリッジから前記単位パターンごとにそれぞれのドット形成要素にインクを供給可能な搭載部を備えるものとすることができる。
こうすれば、各ドット形成要素には、単位パターンごとにインクカートリッジからインクが供給されるから、インクカートリッジを交換することにより、使用する色数を変化させることが可能となる。例えば、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4色について、シアン、マゼンタ、ブラックには単位パターンがそれぞれ2つ対応している場合には、インクカートリッジを交換することにより、シアンに対応している2つの単位パターンにそれぞれ濃度の異なるシアンインクを供給することも可能となる。このように使用する色数を変化可能にすることで、使用者の目的に応じて柔軟に対応することが可能となる。
このように単位パターンごとにインクを供給する構成をとっている場合において、
前記単位パターンは、前記特定色についてのドット形成要素の配置であるものとすることが好ましい。
こうすれば、使用する色数を変えた場合でも、特定色のドット形成要素の配置を基準として、画像の記録方法を設定することができ、色数の異なるインクカートリッジの使い分けが容易となる。
具体的な配列方法としては、
前記ヘッドを一方向に往復動する主走査と、該主走査の方向と交差する方向に印刷媒体を前記ヘッドに相対的に駆動する副走査とを行ってドットを形成するヘッド駆動手段を備え、
前記ヘッドは、
前記特定色のドット形成要素を、前記副走査の方向に所定のピッチで複数並べた配置で備えるとともに、
前記その他の色のドット形成要素を、前記特定色のいずれかのドット形成要素と副走査方向の位置を一致させた配置で備えるヘッドであるものとすることができる。
こうすれば、一般色については、各ラスタごとに複数のノズルを使用してドットの記録を行うことができ、画質に優れた印刷を実現することができる。また、特定色とその他の色は副走査方向の位置が一致しているから、副走査の送り量の設定が容易になるという利点もある。具体的に、一般色は、特定色のノズル配置をひとつの単位パターンとして主走査方向に複数列並べた配置とすることができる。また、ある単位パターンを副走査方向に複数個並べることにより、上述の配置を実現するものとしてもよい。
他の配列として、
前記ヘッドを一方向に往復動する主走査と、該主走査の方向と交差する方向に印刷媒体を前記ヘッドに相対的に駆動する副走査とを行ってドットを形成するヘッド駆動手段を備え、
前記ヘッドは、
前記特定色のドット形成要素を、前記副走査の方向に所定のピッチで複数並べた配置で備えるとともに、
前記その他の色については、副走査方向に隣接するドット形成要素の間隔が、前記ピッチのm等分(mは2以上の整数)となる配置でドット形成要素を備えるヘッドであるものとすることができる。
一般色が特定色の2倍のドット形成要素を有している場合には、該その他の色のドット形成要素は、千鳥状に配列されることになる。こうすれば、各ドット形成要素の副走査方向の間隔を非常に小さくすることができるため、ヘッドのさらなる小型化を図ることができる。また、かかるヘッドに対して色数を増やしたインクカートリッジを取り付けた場合、隣接する列上のドット形成要素は副走査方向の位置がずれているから、同じラスタ上に異なる色のインクのドットが非常に短い間隔で形成されることを回避でき、にじみを回避することができる。一般色のドット形成要素が特定色の3倍以上ある場合も同様の効果を得ることができる。
具体的には、一般色のドット形成要素は、特定色についての配置をひとつの単位パターンとし、該単位パターンの副走査方向の位置をずらしつつ、主走査方向に複数列並べた配置とすることができる。また、ある単位パターンを副走査方向に複数個並べることにより、上述の配置を実現するものとしてもよい。
このようにインクカートリッジを交換することにより色数を変えることができる印刷装置においては、
さらに、前記搭載部に搭載されたインクカートリッジに備えられたインク数を検出する検出手段と、
該検出結果に応じて、各画素ごとに各インクによるドットのオン・オフを判定するドット形成判定手段とを備えるものとすることが望ましい。
こうすれば、搭載されたインクカートリッジに応じて、インクを適切に使い分けて画像を印刷することができる。
また、色数の異なるインクカートリッジに交換した直後に、従前の色との混色を避けるための機構を設けるものとしてもよい。かかる機構としては、例えば、色数の異なるインクカートリッジに交換する際にドット形成要素を洗浄する手段、インクカートリッジとドット形成要素を一体として交換可能にする手段などが挙げられる。
本発明は、インクカートリッジを交換可能に搭載できる印刷装置のサブコンビネーションとして、以下に示す種々のインクカートリッジの態様でも成立する。
即ち、本発明の一実施態様としての第1のインクカートリッジは、
複数の前記単位パターンに同一種類のインクを供給可能なインクカートリッジである。
本発明の一実施態様としての第2のインクカートリッジは、
前記単位配置ごとに異なるインクを供給可能なインクカートリッジである。
本発明の一実施態様としての第3のインクカートリッジは、
前記単位パターンごとにインクが供給される色以外のインクの少なくとも一部を、前記単位パターンごとにインクが供給される色のインクとは別体で蓄えるインクカートリッジである。
本発明の一実施態様としての第4のインクカートリッジは、
少なくともシアン、マゼンタ、イエロのインクを蓄え、かつ、インクが供給されるドット形成要素数が少ない色のインクについては、前記3色のドット形成要素数が等しい場合の濃度よりも高い濃度のインクを蓄えるインクカートリッジである。
本発明の一実施態様としての第5のインクカートリッジは、
少なくともシアン、マゼンタ、イエロのインクを蓄え、かつ、該3色のインクは、それぞれのインクが供給されるドット形成要素数の比でドットを形成した際に該領域が黒色として視認し得る濃度比に調整されたインクであるインクカートリッジである。
本発明の一実施態様としての第6のインクカートリッジは、
各インクが供給されるドット形成要素数の比に応じた容積で、それぞれのインクを蓄えるインクカートリッジである。
本発明の一実施態様としての第7のインクカートリッジは、
前記搭載部に搭載されたインクカートリッジに備えられたインク数を検出する検出手段を備える印刷装置に用いられるインクカートリッジであって、
インク数に応じた識別機構を前記検出手段が検出可能な状態で備えるインクカートッジである。
これらのインクカートリッジが、上述の印刷装置に使用されることによって、先に説明した種々の効果を奏する状態で印刷装置を駆動することが可能となる。
本発明はプリンタに供給するデータを生成するためのプログラムを記録した記録媒体の態様でも成立する。
つまり、本発明の一実施態様としての記録媒体は、
ドットを形成するためのドット形成要素を各色ごとに異なる数備えたヘッドにより画像データに応じたドットを印刷媒体上に形成して多色の画像を印刷するプリンタに供給するデータを生成するためのプログラムをコンピュータ読みとり可能に記録した記録媒体であって、
前記画像データを、各色ごとのドット形成要素数に基づいて設定された解像度で入力する機能と、
各色ごとに、該色のドット形成要素数に基づいて設定された解像度で構成された画素について、前記画像データに基づきハーフトーン処理を行う機能と、
前記ハーフトーン処理されたデータを出力する機能とを実現するプログラムを記録した記録媒体である。
かかる記録媒体において、
さらに、前記プリンタに供給されるインクの色数と、各インクごとのドット形成要素数とを入力する機能と、
該入力されたインクの色数およびドット形成要素数に基づいて、各色ごとの解像度を設定する機能とを備えるプログラムを記録したものとしてもよい。
上記の記録媒体に記録されたプログラムがコンピュータに実行されることにより設定されたデータが上述のプリンタに供給されると、先に説明した本発明の一実施態様としての印刷装置を実現することができる。記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。また、通信経路を介して、コンピュータに上記の機能を実現するプログラムを供給するプログラム供給媒体としての態様も含む。
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
(1)装置の構成:
図1は、本発明の一実施例としての印刷装置を適用した印刷システムの構成を示すブロック図である。図示するように、コンピュータ90にスキャナ12とカラープリンタ22とが接続されている。このコンピュータ90に所定のプログラムがロードされ実行されることにより印刷装置として機能する。このコンピュータ90は、プログラムに従って印刷に関わる動作を制御するための各種演算処理を実行するCPU81を中心に、バス80により相互に接続された次の各部を備える。ROM82は、CPU81で各種演算処理を実行するのに必要なプログラムやデータを予め格納しており、RAM83は、同じくCPU81で各種演算処理を実行するのに必要な各種プログラムやデータが一時的に読み書きされるメモリである。入力インターフェイス84は、スキャナ12やキーボード14からの信号の入力を司り、出力インタフェース85は、プリンタ22へのデータの出力を司る。CRTC86は、カラー表示可能なCRT21への信号出力を制御し、ディスクコントローラ(DDC)87は、ハードディスク16やCD−ROMドライブ15あるいは図示しないフレキシブルディスクドライブとの間のデータの授受を制御する。ハードディスク16には、RAM83にロードされて実行される各種プログラムやデバイスドライバの形式で提供される各種プログラムなどが記憶されている。
このほか、バス80には、シリアル入出力インタフェース(SIO)88が接続されている。このSIO88は、モデム18に接続されており、モデム18を介して、公衆電話回線PNTに接続されている。コンピュータ90は、このSIO88およびモデム18を介して、外部のネットワークに接続されており、特定のサーバーSVに接続することにより、画像の印刷に必要なプログラムをハードディスク16にダウンロードすることも可能である。また、必要なプログラムをフレキシブルディスクFDやCD−ROMによりロードし、コンピュータ90に実行させることも可能である。当然、これらのプログラムは、印刷に必要なプログラム全体をまとめてロードする態様を採ることもできるし、例えば本実施例に特徴的な部分のみをモジュールとしてロードする態様を採ることもできる。
図2は本印刷システムのソフトウェアの構成を示すブロック図である。コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれている。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム95は、スキャナ12から画像を読み込み、これに対して所定の処理を行いつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ21に画像を表示している。スキャナ12から供給されるデータORGは、カラー原稿から読みとられた、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分からなる原カラー画像データORGである。
このアプリケーションプログラム95が、印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データをアプリケーションプログラム95から受け取り、これをプリンタ22が処理可能な信号(各インクについての多値化された信号)に変換している。図2に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、色補正モジュール98、色補正テーブルLUT1およびLUT2、解像度変換モジュール97、ハーフトーンモジュール99、ラスタライザ100、およびカートリッジ判定部101が備えられている。
カートリッジ判定部101は、プリンタ22に搭載されるカートリッジの種別を判定する。後述する通り、本実施例には、インクの色数が異なる2種類のカートリッジを選択的に搭載可能である。プリンタ22には、このように搭載されたカートリッジを識別するセンサが設けられている。カートリッジ判定部101は、このセンサからの信号に基づいてプリンタ22に搭載されているインクカートリッジの種別を判定するのである。判定された結果は、解像度変換モジュール97、色補正モジュール98、ラスタライザ100に受け渡される。これらの各モジュールは、以下に示す通り、インクカートリッジの種別に応じて、それぞれの処理を実行する。
色補正モジュール98は色補正テーブルLUT1およびLUT2を参照することによって、各画素のRGBの色成分をプリンタ22が使用する各色のインクのデータに変換する。本実施例では色補正されたデータはそれぞれのインクにつき、256階調の階調値を有している。インクカートリッジが異なれば、使用可能なインクの種類が異なる。従って、本実施例では、インクカートリッジごとに対応した2種類の色補正テーブルLUT1,LUT2を用意している。色補正モジュール98は、インクカートリッジの種別に応じて参照する色補正テーブルを使い分けて色補正を実行する。
解像度変換モジュール97は、カラー画像データの解像度、即ち単位長さ当たりの画素数を印刷用の解像度に変換する。本実施例では、インクカートリッジの種別に応じて異なる解像度で印刷を実行している。解像度変換モジュール97は、カートリッジ判定部101からの情報に基づき、インクカートリッジに応じた印刷解像度を設定し、該解像度のデータを生成する。解像度変換された画像データは、印刷に使用する各インクで表現すべき濃度を256階調で有するデータである。
ハーフトーンモジュール99は、ドットを分散して形成することによりプリンタ22でかかる階調値を表現するためのハーフトーン処理を実行する。こうして処理された画像データは、ラスタライザ100によりプリンタ22に転送すべきデータ順に並べ替えられて、最終的な印刷データFNLとして出力される。印刷解像度によって、データを並べ替える順序は相違する。ラスタライザ100は、カートリッジ判定部101からの情報に基づき、インクカートリッジの種別に応じた解像度で印刷可能なようにデータの配列を変える。本実施例では、プリンタ22は印刷データFNLに従ってドットを形成する役割を果たすのみであり上述した画像処理は行っていないが、もちろんこれらの処理をプリンタ22で行うものとしても差し支えない。
図3に本実施例に適用されているプリンタ22の概略構成を示す。図示するように、このプリンタ22は、紙送りモータ23によって用紙Pを搬送する回路と、キャリッジモータ24によってキャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる回路と、キャリッジ31に搭載された印字ヘッド28を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う回路と、これらの紙送りモータ23,キャリッジモータ24,印字ヘッド28および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とから構成されている。
キャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる回路は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ31を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ31の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
図4は、キャリッジ31の斜視図である。図示する通り、このプリンタ22のキャリッジ31には、黒インク(K)用のインクカートリッジ71と、カラーインク用カートリッジ72Aまたは72Bが搭載可能である。カラーインク用カートリッジは、インクの色数が異なる2種類のカートリッジを選択して搭載することができる。第1のカラーインク用カートリッジ72A(以下、4色カートリッジという)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の3色のインクを収納したカートリッジである。第2のカラーインク用カートリッジ72B(以下、6色カートリッジという)は、シアン(C),ライトシアン(LC)、マゼンタ(M),ライトマゼンタ(LM)、イエロ(Y)の5色のインクを収納したカートリッジである。
図5は4色カートリッジ72Aの斜視図であり、図6は6色カートリッジ72Bの斜視図である。それぞれのインクカートリッジ72A,72Bには、種別を識別するためのICチップ79A,79Bが貼付されている。これらのICチップの情報は、プリンタ22に備えられた非接触の識別センサ29により検出される。この識別センサ29は、図3に示すようにキャリッジ31に備えるものとしてもよいし、プリンタ22の本体に備え、キャリッジ31が待避位置にあるときに検出するものとしてもよい。なお、本実施例では、ICチップを用いてカートリッジの種別を検出しているが、その他の方法を用いてもよい。例えば、インクカートリッジにバーコードを付し、キャリッジ31またはプリンタ22側でバーコードを読みとり可能な構成を採用してもよい。また、インクカートリッジに種別に応じて数の異なる孔を開け、キャリッジ31に孔の数に応じてオンになる数が変化するようにマイクロスイッチを設けてもよい。さらに、かかる孔の数やインクの数を光学的なセンサで検出するものとしてもよい。
キャリッジ31の下部の印字ヘッド28にはインク吐出用ヘッドが形成されている。キャリッジ31の底部には、この各色用ヘッドにインクタンクからのインクを導く導入管73〜78が立設されている。導入管73は黒インク用カートリッジ71からインクを導くための管である。導入管74〜78はカラーインク用カートリッジ72A、72Bからインクを導くための管である。導入管73〜78と各色のインクとの対応を図5および図6に示す。図5は、4色カートリッジ72Aを搭載した場合の対応関係を示す斜視図である。図示する通り、導入管78とイエロ、導入管77,76とマゼンタ、導入管75,74とシアンのインクがそれぞれ対応する。図6は、6色カートリッジ72Bを搭載した場合の対応関係を示す斜視図である。図示する通り、導入管78とイエロ、導入管77とライトマゼンタ、導入管76とマゼンタ、導入管75とライトシアン、導入管74とシアンがそれぞれ対応する。
図7および図8は、印字ヘッド28におけるノズルの配置および各インクとの対応関係を示す説明図である。図7が4色カートリッジ72Aを搭載した場合に対応し、図8が6色カートリッジ72Bを搭載した場合に対応する。4色カートリッジ72Aを搭載した場合、図7に示す通り、ノズルの配置は、各色ごとにインクを吐出する4組のノズルアレイから構成される。ブラック、シアン、マゼンタの各色のノズルは48個のノズルが千鳥状に配列されており、副走査方向に隣接するノズルの間隔はk1である。イエロのノズルは他の色の半分の24個のノズルが一列に配列されており、副走査方向の間隔は、k1の2倍の間隔k2である。シアン、マゼンタ、イエロのカラーインクについては、インクカートリッジ72Aから副走査方向に並んだ列を単位として導入管からインクが供給される。つまり、マゼンタを吐出する2列のノズル列には、導入管76,77からそれぞれインクが供給される。シアンを吐出する2列のノズル列には、導入管74,75からそれぞれインクが供給される。
6色カートリッジ72Bを搭載した場合、図8に示す通り、ノズルの配置は、各色ごとにインクを吐出する6組のノズルアレイから構成される。ブラックについては4色カートリッジ72Aを搭載した場合と相違はない。カラーインクについては、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエロの各色については共に24個のノズルが千鳥状に配列される。副走査方向に隣接するノズルの間隔はそれぞれk1の2倍の間隔k2である。カラーインクについては、インクカートリッジ72Bから副走査方向に並んだ列を単位として各色ごとに導入管からインクが供給される。
プリンタ22は、このように各ノズル列ごとにカラーインクを供給する構成を採ることによって、インクカートリッジの交換により、印字ヘッド28に色数の異なるインクを供給可能としている。これに対し、ブラックは、常に同一種類のインクを使用するため、2列のノズル列を単位としてインクを供給する簡易な構成としている。また、ブラックのインクカートリッジ71をカラーインク用カートリッジ72A,72Bと別体に構成することで、カラーインク用カートリッジ72A,72Bのみを独立して交換可能にし、使用者の利便性の向上を図っている。
本実施例における2種類のインクカートリッジ72A,72Bの構成について説明する。4色カートリッジ72Aを搭載した場合、図7に示すように、イエロのノズル数は他色の半分となる。本実施例では、後述する通り、ノズル数に応じてインクごとに異なる解像度で印刷を実行する。従って、4色カートリッジ72Aを搭載して印刷を行うと、イエロのドット数は他色に比べて少なくなる。各色のドット数は印刷する画像に応じて異なるが、平均すればノズル数に比例すると考えられる。従って、イエロのドット数は他色のドット数の約半分となる。4色カートリッジ72Aは、かかる点を考慮し、イエロのインク容量を他色の約半分としている。これに対し、6色カートリッジ72Bでは、5色に対応するノズルが同じ数である。従って、各色のインク容量をほぼ等しくしている。こうすることにより、各色のインクを均等に使用することができ、印刷時の無駄を抑制することができる。
一方、インク濃度については、その関係が逆転する。図9は、各インクで形成されるドットの記録率と明度との関係を示したグラフである。明度の値は、各インクの濃度に応じて変動する。各インクの濃度はそれぞれ独立にいかなる値にも設定可能であるが、シアン、マゼンタ、イエロの3色を同じ比率で形成した場合に、3色の混食により黒色(以下、コンポジットブラックという)が表現される濃度に調整しておくことが望ましい。こうすれば、ブラックのインクと、コンポジットブラックとを使い分けることで、黒について滑らかな階調表現を実現することができる。
本実施例のインクカートリッジ72A,72Bもそれぞれコンポジットブラックを表現可能な濃度に調整されている。インクカートリッジ72Bについては、既に説明した通り、シアン、マゼンタ、イエロのノズルが同数になるため、ほぼ同じドット数を記録した場合にコンポジットブラックが表現可能な濃度に調整されている。かかる濃度でドットを記録した際の明度が、図9中のC,M,Y2で示されたグラフである。
一方、インクカートリッジ72Aについては、イエロのノズルが少ない。従って、各インクは、イエロのドットをシアン、マゼンタの約半分の記録率で形成した場合にコンポジットブラックが表現可能な濃度に調整されている。つまり、図9に示す通り、4色カートリッジ72Aのイエロを約50%の記録率で記録した場合に、6色カートリッジ72Bのイエロを100%の記録率で記録した場合に表現される明度とほぼ等しくなるように、イエロのインク濃度が設定してある。この結果、4色カートリッジ72Aのイエロのインク濃度は、6色カートリッジ72Bのイエロのインク濃度よりも濃くなっている。但し、ドットを形成した際に表現される明度と、インク中に含まれる染料の濃度とは必ずしも比例しない。従って、4色カートリッジ72Aのイエロの染料濃度が6色カートリッジ72Bのイエロの染料濃度の倍になるとは限らない。
プリンタ22のインクの吐出原理について説明する。図10(a)はインク吐出用ヘッド28の内部の概略構成を示す説明図である。図示の都合上、黒インク(K)、シアン(C),マゼンタ(M)を吐出する部分について示した。インクカートリッジ71,72Aがキャリッジ31に装着されると、各色のインクは図10(a)に示すインク通路68を通じて印字ヘッド28に供給される。
印字ヘッド28には、各ノズル毎にピエゾ素子PEが図10(a)に示すように配置されている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う素子である。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、図10(b)に矢印で示すように、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路68の一側壁を変形させる。この結果、インク通路68の体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルNzの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着された用紙Pに染み込むことにより、印刷が行われる。
次に制御回路40の内部構成を説明する。図11は制御回路40の内部構成を示す説明図である。図示する通り、この制御回路40の内部には、CPU41,PROM42,RAM43の他、コンピュータ90とのデータのやりとりを行うPCインタフェース44と、紙送りモータ23、キャリッジモータ24、識別センサ29および操作パネル32などとの信号をやりとりする周辺入出力部(PIO)45と、計時を行うタイマ46と、印字ヘッド28にドットのオン・オフの信号を出力する駆動用バッファ47などが設けられており、これらの素子および回路はバス48で相互に接続されている。また、制御回路40には、所定周波数で各ノズルのピエゾ素子PEを駆動するための駆動波形を出力する発信器51、および発信器51からの出力を印字ヘッド28に分配する分配出力器55も設けられている。
制御回路40は、コンピュータ90で処理されたドットデータを受け取り、これを一時的にRAM43に蓄え、所定のタイミングで駆動用バッファ47に出力する。駆動用バッファ47からは、各ノズルごとにドットのオン・オフを示すデータが分配出力器55に出力される。この結果、ドットを形成すべきノズルに対してはピエゾ素子PEを駆動するための駆動波形が出力され、ドットが形成される。
以上説明したハードウェア構成を有するプリンタ22は、紙送りモータ23により用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ31をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印字ヘッド28のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行い、ドットを形成して用紙P上に多色の画像を形成する。
なお、本実施例では、上述の通りピエゾ素子PEを用いてインクを吐出するヘッドを備えたプリンタ22を用いているが、他の方法によりインクを吐出するプリンタを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によりインクを吐出するタイプのプリンタに適用するものとしてもよい。また、本実施例では、インクカートリッジのみを交換することにより、印刷に使用する色数を変更可能としたが、インクカートリッジとヘッドとを一体的に構成したインク吐出機構を交換することにより、印刷に使用する色数を変更可能にしてもよい。
(2)ドット発生処理:
次に本実施例におけるドット発生処理について説明する。図12は、ドット形成制御処理ルーチンのフローチャートである。これは、コンピュータ90のCPU81が実行する処理である。この処理が開始されると、CPU81は、画像データおよびカートリッジの種別を入力する(ステップS10)。カートジッシの種別はプリンタ22の識別センサ29で検出され、コンピュータ90側に通信により受け渡される。もちろん、カートリッジの種別を使用者が入力するものとしても構わない。ステップS10で入力される画像データは、図2に示したアプリケーションプログラム95から受け渡されるデータであり、画像を構成する各画素ごとにR,G,Bそれぞれの色について、値0〜255の256段階の階調値を有するデータである。この画像データの解像度は、原画像のデータORGの解像度等に応じて変化する。
CPU81は、入力された画像データの色補正処理を行う(ステップS20)。色補正処理とはR,G,Bの階調値からなる画像データをプリンタ22で使用するの各インクごとの階調値データに変換する処理である。この処理は、R,G,Bのそれぞれの組み合わせからなる色をプリンタ22で表現するための各インクの組み合わせを記憶した色補正テーブルLUT1,LUT2(図2参照)を用いて行われる。本実施例では、インクカートリッジの種別によって印刷に使用するインクの色数が異なるため、2つの色補正テーブルLUT1,LUT2を用意し、インクカートリッジの種別に応じてこれらのテーブルを使い分けて色補正を実行する。色補正テーブルを用いて色補正する処理自体については、公知の種々の技術が適用可能であり、例えば補間演算による処理が適用できる。
CPU81は、こうして色補正された画像データの解像度をプリンタ22が印刷するための解像度に変換する(ステップS30)。画像データORGが印刷解像度よりも低い場合には、線形補間により隣接する原画像データの間に新たなデータを生成することで解像度変換を行う。逆に画像データが印刷解像度よりも高い場合には、一定の割合でデータを間引くことにより解像度変換を行う。画像データの解像度が直接プリンタで印刷可能な解像度である場合には、かかる処理を行わずに印刷を実行するものとしても構わない。
ここで、本実施例では、インクカートリッジの種別に応じて各色ごとに異なる解像度で印刷を実行している。カートリッジの種別と解像度との関係を図13に示した。4色カートリッジ72Aが搭載されている場合には、イエロを主走査方向に720DPI(ドット・パー・インチ)、副走査方向に360DPIの解像度で印刷し、その他の色は両方向にそれぞれ720DPIの解像度で印刷する。4色カートリッジ72Aの場合には、イエロのノズル数が他色の半分になるため、イエロのみ解像度を低くするのである。これに対し、6色カートリッジ72Bが搭載されている場合には、全てのカラーインクにつきノズル数が等しくなるため、主走査方向、副走査方向ともに720DPIの解像度で印刷を実行する。CPU81は、ステップS30では、インクカートリッジの種別に応じて、図13に示す通り解像度を設定し、それぞれの解像度にデータを変換する。
本実施例における画素の様子を図14に示す。図中の実線または破線で示されたマスが画素を意味している。図14(a)に示す通り、画素は印刷用紙Pに主走査方向および副走査方向に2次元的に配列されている。破線を含む小さいマスは、主走査方向に720DPI、副走査方向に720DPIの画素を示しており、実線のみで構成される大きいマスは、主走査方向に720DPI、副走査方向に360DPIの画素を示している。先に説明した通り、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、イエロのインクは360DPIの大きい画素を単位としてドットが形成され、その他の色のインクは小さい画素を単位としてドットが形成される。
ドットの形成の様子を拡大して示したのが図14(b)である。イエロのインクは360DPIの画素を単位として形成されるが、ドットの形成位置は720DPIの画素を基準としている。従って、図14(b)に示す通り、ドットD1,D2がイエロを含む全てのインクによって形成可能なドットとなり、その下に隣接するドットD3,D4はイエロ以外のインクによって形成可能なドットとなる。本実施例では、かかる態様でドットを形成するため、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、全ての画素にドットを形成すると、イエロのドットの記録率がその他の色の記録率の約半分となる。
一方、6色カートリッジ72Bを搭載した場合には、全ての色につき、720DPIの解像度で印刷を行う。従って、図14(b)中のドットD1〜D4は、全てのインクにより形成可能なドットとなる。
色補正および解像度変換が終了すると、CPU81は各インクごとにハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、原画像データの階調値(本実施例では256階調)をドットの分散性に応じて表現するように、各画素ごとにドットのオン・オフを設定することをいう。図15は、ハーフトーン処理のフローチャートである。本実施例では、いわゆる誤差拡散法を適用してハーフトーン処理を行っている。
ハーフトーン処理が開始されるとCPU81は、画像データCDを入力する(ステップS105)。また、画像データCDに拡散誤差を反映した補正データCDXを生成する(ステップS110)。誤差拡散法では、ドットのオン・オフの判定済みの画素で生じた局所的な濃度誤差を所定の割合で周辺の未処理の画素に拡散する。ドットのオン・オフを判定しようとしている着目画素は、処理済みの画素から拡散されてきた誤差を階調データに反映した上で、ドットのオン・オフを判定する。この着目画素でオン・オフを判定した結果生じた濃度誤差はさらに周辺の未処理の画素に拡散される。誤差を拡散する割合を図16に示した。着目画素PPで生じた濃度誤差は、図中に示す割合でキャリッジの走査方向および用紙搬送方向にそれぞれ数画素に亘って拡散される。かかる処理でドットのオン・オフを判定するため、ステップS110では、拡散された誤差を画像データCDに加えて、補正データCDXを得る。
次に、生成された補正データCDXが所定の閾値TH以上であるか否かの判定を行う(ステップS115)。補正データCDXが閾値TH以上である場合には、ドットを形成すべきと判定し、判定結果を記憶する結果値RDに値1を入力する(ステップS125)。補正データCDXが閾値THよりも小さい場合には、ドットを形成すべきでないと判定し、結果値RDに値0を入力する(ステップS120)。所定の閾値THはドットのオン・オフを判定する基準となる値であり、いずれの値に設定してもよい。本実施例では、画像データが取り得る256階調の中間の値、つまり128に閾値を設定した。
ドットのオン・オフを決定すると、CPU81は、結果値RDに基づいて誤差計算および誤差拡散処理を行う(ステップS130)。誤差とは、多値化結果に応じて着目画素PPにドットがオンまたはオフされた場合に表現される濃度と、補正データCDXに基づいて表現されるべき濃度との誤差をいう。着目画素PPにドットが形成された場合に表現される濃度は、それぞれの画素に対して予め設定された濃度評価値RVに基づいて求められる。
誤差ERRは、補正データCDXと濃度評価値RVを用いて、ERR=RV−CDXで求められる。例えば、ドットの濃度評価値が階調データで255相当であるとした場合、補正データCDXが値199であるにも関わらずドットを形成したとすれば、そこには199−255=−56なる濃度誤差が生じていることになる。これは、その画素で表現される濃度が濃すぎることを意味する。
誤差拡散とは、こうして求められた誤差を着目画素PPの周辺の画素に図16で示した所定の重みを付けて拡散する処理をいう。誤差は未処理の画素に拡散される。誤差が「−56」であれば、現在処理している画素PPの隣の画素には、誤差「−56」の1/4に相当する「−14」が拡散される。この誤差は、次に画素P1を処理する際に、ステップS110において反映される。例えば、画素P1の階調データが値214であれば、拡散された誤差「−14」を加えて、補正データCdを値200とする。CPU81は、以上で説明した処理を全画素について実行すると(ステップS135)、ハーフトーン処理ルーチンを終了してドット形成制御処理ルーチンに戻る。
ハーフトーン処理は、上述の誤差拡散法のみならずディザ法など種々の周知の方法を適用できる。また、本実施例では、各インクごとに独立してハーフトーン処理を実行しているが、所定のインク間に相関を持たせたハーフトーン処理を行うものとしてもよい。例えば、6色カートリッジ72Bが搭載されている場合に、シアンインクとライトシアンインクとの間に相関を持たせ、両インクで形成されるドット同士が重ならないような処理を行うものとしてもよい。当然、色相の異なるインク間に相関を持たせることも可能である。
こうしてハ−フトーン処理が終了すると、CPU81は各画素ごとのデータをラスタライズし、プリンタ22にデータを出力する(ステップS200、S210)。ラスタライズとは、ハーフトーン処理された印刷データを、プリンタ22に転送する順序に並べ替える処理をいう。並び替えられた印刷データはシリアルまたはパラレルの転送ケーブルを通じてコンピュータ90からプリンタ22に出力される(ステップS210)。プリンタ22のCPU41は、受け取った印刷データを駆動用バッファ47に蓄え、キャリッジ31の移動にあわせた所定のタイミングで分配出力器55に出力して画像を印刷する。
プリンタ22によるドットの形成の様子を図17および図18に示す。図17は、4色カートリッジ72Aが搭載された場合のドットの形成の様子を示した説明図である。図示の都合上、6つのノズルを備えるヘッドについて示した。図の左側の番号を囲んだ丸または四角のシンボルが、それぞれ1回目から7回目までの主走査におけるノズルの位置を意味している。ここで、丸のシンボルで示した1番ノズル、3番ノズル、5番ノズルは、イエロのノズル位置に対応する。丸および四角の双方のシンボルで示された1番〜6番ノズルはその他の色のノズル位置に対応する。図示する通り、その他の色のノズルのピッチk1は5ドットであり、イエロのノズルのピッチk2は10ドットである。
ノズル数およびノズルのピッチが上述の関係にある場合、6ドット分の一定の送り量で副走査を行うことにより、図中の印刷可能領域の部分に画像を印刷することができる。図の右側には、かかる領域で形成されるドットの様子を示した。各ドットは主走査方向、副走査方向にそれぞれ720DPIの解像度で印刷されているものとする。それぞれドットの形状とノズルのシンボルの形状とが対応している。かかる送り量で副走査を行えば、イエロのノズルで形成されるラスタ(丸印で示したラスタ)が1ラスタおきに現れる。従って、イエロのドットは、副走査方向に360DPIの解像度、つまり図14で説明した解像度で印刷されることになる。
一方、同じヘッドに6色カートリッジ72Bを搭載した場合の様子を図18に示す。6色カートリッジ72Bを搭載した場合には、全てのカラーインクにつきノズルピッチが10ドット相当となる。図18の丸のシンボルで示した1番ノズル、3番ノズル、5番ノズルは、イエロ、シアン、マゼンタのノズル位置に対応する。四角のシンボルで示した2番、4番、6番ノズルがライトシアン、ライトマゼンタのノズル位置に対応する。1番〜6番のノズルがブラックのノズル位置に対応する。
この場合、3ドット分の一定の送り量で副走査を行う。図中の印刷可能領域にでは、各ラスタにつき、丸のシンボルで示されたノズルと、四角のシンボルで示されたノズルの双方が通過するように副走査が実行される。従って、この領域には、全ての色のドットが形成可能となり、画像を印刷することができる。なお、ブラックについては、印刷可能領域で各ラスタごとに2本のノズルが通過することになる。従って、いずれか一方のノズルによってのみドットを形成するものとしてもよい。また、1回目は奇数番目の画素のみにドットを形成し、2回目は偶数番目の画素のみにドットを形成するオーバラップ方式によりドットを記録してもよい。図17および図18では、6個のノズルを備えるヘッドを例にとって説明したが、図7および図8に示したノズルを備えるヘッドについても、それぞれインクカートリッジに応じて送り量を設定することにより、適切に印刷を実行することができる。
以上で説明した本実施例のプリンタ22によれば、イエロのノズル数を減らすことにより、ヘッド28を小型化することができる。このため、印刷を実行する際の振動や騒音、ヘッドを駆動するための電力などを低減することができる。
また、カラーインクカートリッジ72A,72Bを交換することにより、印刷に使用する色数を変化させることができる。従って、使用者の用途に合わせた印刷を実現することができる。例えば、階調表現に優れた高画質な印刷を実現する場合には、6色カートリッジ72Bを搭載して印刷を行えばよい。高速での印刷を実現する場合には、4色カートリッジ72Aを搭載して印刷を行えばよい。
4色カートリッジ72Aを搭載した場合には、イエロのみノズル数が少なくなり、先に説明した通り、イエロのみ粗い解像度で印刷が行われる。しかし、イエロは画質に与える影響が比較的小さいため、イエロの解像度を粗くしても画質の顕著な劣化は生じない。本実施例のプリンタ22は、このように画質に与える影響の小さいインクにつきノズル数を減らすことにより、画質を極端に劣化させることなくヘッド28の小型化を実現している。
本実施例では、4色カートリッジ72Aでは、イエロのインク濃度を濃くしている。この結果、イエロのドット数が少なくても、シアン、マゼンタとともにコンポジットブラックを適切に表現可能となる。従って、4色カートリッジ72Aにおいて、イエロを粗い解像度で印刷しても、黒の階調表現を損ねることがない。
本実施例の4色カートリッジ72Aは、イエロのインク容量を他色の半分としている。こうすることにより、カラーインクを均等に使うことができ、無駄を抑制することができる。また、プリンタ22は、自動的にカートリッジの種別を判定する機能を備えているため、4色カートリッジ72Aが搭載されているにも関わらず誤って6色カートリッジ72Bに対応した処理を行ったり、その逆の事態が生じたりすることを回避でき、印刷ミスによる無駄を回避することができる。
本実施例のプリンタ22は種々の変形例が可能である。上述の実施例では、ノズルを千鳥状に配置したが、図19および図20に示すように副走査方向の位置を一致させた配列としてもよい。図19は4色カートリッジ72Aを搭載した場合の色とノズル列との対応を示しており、図20は6色カートリッジ72Bを搭載した場合の色とノズル列との対応を示している。各ノズル列ごとにインクが供給される構成は、先に説明した実施例と同様である。
かかる配置を採用した場合の印刷解像度の例を図21に示す。4色カートリッジ72Aを搭載した場合には、イエロを主走査方向に360DPI、副走査方向に720DPIの解像度で印刷する。その他の色は双方に720DPIの解像度で印刷する。6色カートリッジ72Bを搭載した場合には、全色につき主走査方向、副走査方向の両方向に720DPIの解像度で印刷を行う。
図22は、画素の様子を示した説明図である。先に説明した実施例では、4色カートリッジ72Aを搭載した場合には、副走査方向に長い画素を単位としてドットが形成されるのに対し、変形例では主走査方向に長い画素を単位としてドットが形成される点で相違する。
図23は、変形例において4色カートリッジ72Aを搭載した場合のドットの形成の様子を示す説明図である。図示の都合上、2ドットピッチで副走査方向に3つのノズルを備える場合を例にとって示した。図23(a)は、シアンインクについてドットの形成の様子を示している。図の左側には、1回目〜3回目の主走査におけるヘッドの副走査方向の位置を示し、右側には、ドットの形成の様子を示した。丸で囲んだ記号はノズル番号を示している。記号の「C]はシアンを意味しており、2桁の数字のうち十の位はノズル列の番号、一の位はノズルの副走査方向の番号を示している。
図の右側に示した丸印には、各ドットを形成するノズルの番号を示した。図示する通り、2列のノズル列により、それぞれ主走査方向に一つおきにドットを形成することにより画像を印刷することができる。マゼンタ、ブラックについても同様である。
図23(b)には、イエロについて、ドットの形成の様子を示した。イエロはノズル列を一つしか備えない。従って、図23(a)に示したシアンインクの場合と同じタイミングでインクを吐出すれば、図の右側に示すように主走査方向に一画素おきにドットが形成される。なお、キャリッジ31の移動速度を低下させれば、イエロで主走査方向の全画素を形成することも可能ではある。但し、この場合には、その他の色につき、主走査方向にノズル列を2列備えたメリットがなくなる。変形例では、イエロを主走査方向に一画素おきに形成することにより、印刷速度の向上を図っている。
図24に6色カートリッジ72Bを搭載した場合のドットの形成の様子を示す。6色カートリッジ72を搭載した場合には、各カラーインクのノズル列は一列ずつになる。従って、図23(a)に示したシアンインクの2列のノズル列は、図24(a)に示す通り、シアンにつきC1〜C3の3つのノズルと、ライトシアンにつきLC1〜LC3の3つのノズルに対応した状態となる。
ドットの形成の様子を右側に示す。各ドット中の番号は、ノズル番号に対応している。6色カートリッジを搭載した場合には、各ヘッドが全ての画素にドットを形成可能な速度でキャリッジ31を移動して印刷を実行する。図24(b)にイエロについてのドットの形成の様子を示した。6色カートリッジ72Bを搭載した場合には、キャリッジ31の移動速度が低いため、全ての画素にドットを形成することができる。従って、図中の印刷可能領域に全画素にイエロのドットを形成することができる。その他のカラーインクについても同様である。なお、ブラックインクについては、先に説明した実施例と同様、余剰のノズルを種々の印刷方法に適用することが可能である。
以上で説明した実施例および変形例では、ブラックのインクカートリッジは交換しないものとして説明した。このため、上述の実施例では、ブラックのインクについては一つの導入管73から2列のノズル列にインクを供給している。これに対し、ブラックについてもノズル列ごとに2本の導入管からインクが供給される構成を採用すれば、濃度の異なるインクカートリッジに交換可能にできる。例えば図25に示すように、濃淡のブラックインクを1列ずつのノズル列に供給可能にすることができる。
インクは必ずしもノズル列単位で供給する必要はない。図26に示すように、印字ヘッドを副走査方向に2つに分割し、C1,C2,M1,M2の単位パターンごとにインクを供給するものとしてもよい。こうすれば、4色カートリッジを搭載した場合には、C1,C2に同じシアンインク、M1,M2に同じマゼンタインクを供給することにより、4色での印刷を行うことができる。また、6色カートリッジを搭載した場合には、C1にシアンインク,C2にライトシアンインク、M1にマゼンタインク、M2にライトマゼンタインクを供給することにより、6色での印刷を行うことができる。かかる配置では、1回の主走査で濃度の異なるインクが同一のラスタに連続して吐出されることがないため、にじみを抑えることができるというメリットがある。
以上で説明した本実施例の印刷装置によれば、各画素ごとにドットのオン・オフを判定する、いわゆる2値化によりハーフトーン処理を行った。これに対し、インク量の異なる複数種類のドットを形成可能とし、各画素ごとに3値以上の多値化を行うものとしてもよい。かかる場合において、全ての色で多値化の階調値を一致させる必要はなく、画質に影響の少ないイエロのみ2値化を行い、その他の色については多値化を行うものとしてもよい。逆に、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、粗い解像度となることを補償するため、イエロのみを多値化するものとしてもよい。
本実施例では、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、イエロについて他色の半分の解像度で印刷を実行した。イエロの解像度はこれに限らず種々の解像度に設定可能である。例えば、主走査方向、副走査方向の双方に他色の半分の解像度で印刷するものとしてもよい。かかる解像度で印刷を実行する場合には、解像度が低くなった分、イエロのインクを更に濃いものにすることが望ましい。
本実施例では、4色カートリッジ72Aを搭載した場合、イエロについて粗い解像度の画像データを用意し、ハーフトーン処理を実行するものとした。他色と異なる解像度で印刷するためには、その他種々の方法を採用可能である。例えば、イエロについても他色と同じ解像度でハーフトーン処理を実行するが、誤差拡散法における濃度評価値を操作して、隣接する画素には、ドットが形成されにくいようにしてもよい。また、一旦他色と同じ解像度でハーフトーン処理した後、隣接する画素間でドットの配置を入れ替えて、粗い解像度のデータを生成するものとしてもよい。
本実施例では、4色カートリッジ72Aと6色カートリッジ72Bとを差し替えた場合に固有の処理を設けてはいない。これに対し、色数の異なるカートリッジが搭載されたことを検出した場合には、従前のインクとの混色を回避するため、ヘッド28を洗浄する機能を付加することもできる。かかる洗浄は、例えば、キャリッジ31が待避位置にあるときに、新たに搭載されたインクをノズルから吐出することによって行うことができる。4色カートリッジ72Aから6色カートリッジ72Bに交換された場合には、交換前は濃度が高いインクが供給されていたノズルに濃度の低いインクが供給されるようになる。従って、この場合には、6色カートリッジ72Bから4色カートリッジ72Aに交換された場合よりも洗浄の時間を長くするものとしてもよい。これらの洗浄には、それぞれのカートリッジのインクとは別に用意された洗浄液を用いるものとしても構わない。また、カートリッジとノズルとを一体的に交換可能な構成を採用してもよい。
以上の実施例では、いずれもインクジェット式のプリンタ22を例にとって説明した。上述の実施例ではピエゾ素子を備えるインクジェットプリンタを例に説明したが、いわゆるノズルに備えたヒータに通電することによりインク内に生じるバブルでインクを吐出するタイプのプリンタを始め種々のプリンタその他の印刷装置に適用可能である。また、本発明は各画素ごとにドットを割り当てて画像を表現する装置であれば、プリンタ以外の印刷装置にも適用可能である。
以上、本発明の種々の実施例について説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の形態による実施が可能である。例えば、上記実施例で説明した種々の制御処理は、その一部または全部をハードウェアにより実現してもよい。