JP4530652B2 - 耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムとその製造方法 - Google Patents

耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムとその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4530652B2
JP4530652B2 JP2003404106A JP2003404106A JP4530652B2 JP 4530652 B2 JP4530652 B2 JP 4530652B2 JP 2003404106 A JP2003404106 A JP 2003404106A JP 2003404106 A JP2003404106 A JP 2003404106A JP 4530652 B2 JP4530652 B2 JP 4530652B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
porous film
film
heat treatment
polyamideimide
chemical resistance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2003404106A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005162885A (ja
Inventor
美智男 露本
洋 大和
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daicel Corp
Original Assignee
Daicel Chemical Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daicel Chemical Industries Ltd filed Critical Daicel Chemical Industries Ltd
Priority to JP2003404106A priority Critical patent/JP4530652B2/ja
Publication of JP2005162885A publication Critical patent/JP2005162885A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4530652B2 publication Critical patent/JP4530652B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、耐薬品性に優れ、連続微小孔が多数形成された多孔性フィルムとその製造方法に関する。この多孔性フィルムは、精密濾過、分離濃縮等の膜分離技術や、その空孔特性をそのまま利用したり、または空孔を機能性材料で充填することにより、電池用セパレーター、電解コンデンサー、回路用基板等、広範囲な基板材料としての利用が可能である。
従来、耐熱性に優れた多孔性フィルムとして、ポリアミドイミド系樹脂等を素材とする多孔性フィルムが知られているが、十分な開孔率と透過性を有する多孔性フィルムは存在しなかった。本発明者らは、特願2002−118780号(特開2003−313356号公報)において、フィルム表面の開孔率が高く、且つフィルムの表面から内部にかけて均質な微小孔を有する多孔性フィルムおよびその多孔性フィルムを簡便に製造する方法を提案した。この新規な多孔性フィルムの発明により、これまでに無い新たな利用が考えられる。具体的には、精密濾過、分離濃縮等の膜分離技術のように、その空孔特性をそのまま利用したり、または空孔を機能性材料で充填することにより、電池用セパレーター、電解コンデンサー、回路用基板等、広範囲な基板材料としての利用が考えられる。ところが、広範な用途を考えた場合、用途によっては、多孔性フィルムが一時的または長期にわたり、強い極性溶媒、アルカリ、酸等の薬品にさらされることがある。このような場合、多孔性フィルムが強い極性溶媒、アルカリ、酸等に溶解してしまったり、膨潤して変形するという問題があった。また、たとえ一般に耐薬品性に問題がないとされるポリアミドイミド系素材であっても、多孔性フィルムとすることにより、薬品に接触することで膨潤や収縮、変形をする等の不具合を生じることがあった。これは非孔性の緻密膜と比較すると、多孔構造では、その機械的強度が低下することや、薬品と接触する総面積が増大することに起因すると推測される。
特開2003−313356号公報
本発明の目的は、耐薬品性に優れ、かつ均質な微小孔を有する多孔性フィルムと、その簡易な製造法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ポリアミドイミド系多孔性フィルムを特定の条件で熱処理することにより、多孔性フィルムの特性を生かしながら、耐薬品性に優れ、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムが得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであり、ガーレー値が0.2〜29秒/100cc、純水透過速度が3.3×10 -9 〜1.1×10 -7 m・sec -1 ・Pa -1 であるポリアミドイミド系素材を主体とする多孔性フィルムを、熱処理温度150〜300℃、熱処理時間0.1〜5時間の条件で熱処理して、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔性フィルムであって、該熱処理後においてテトラヒドロフランへ浸漬した場合の最大寸法変化率d b (%)が±10%以内となるポリアミドイミド系多孔性フィルムを得ることを特徴とする耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムの製造方法を提供する。
この製造方法においては、多孔性フィルムの熱処理前の最大寸法変化率da(%)と熱処理後の最大寸法変化率db(%)とが、|db|≦|da|×1/3 の関係を満たすのが好ましい。
熱処理後のポリアミドイミド系多孔性フィルムにおいて、厚みは、例えば5〜200μmであり、空孔率は、例えば30〜85%である。
なお、本明細書では、上記の発明のほか、ポリアミドイミド系樹脂を主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔性フィルムであって、該多孔性フィルムをテトラヒドロフランへ浸漬した場合の最大寸法変化率d b (%)が±10%以内であることを特徴とする耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムについても説明する。
本発明のポリアミドイミド系多孔性フィルムによれば、耐薬品性が極めて高く、且つ均質な微小孔を有する。このため、精密濾過、分離濃縮等の膜分離技術に利用できるほか、その空孔を機能性材料で充填することにより、電池用セパレーター、電解コンデンサー、回路用基板等、広範な基板材料としての利用が可能である。
本発明の製造法によれば、このように高い耐薬品性と優れた空孔特性を併せ持つ多孔性フィルムを簡易な操作で得ることができる。
本発明の多孔性フィルムはポリアミドイミド系樹脂(アミドイミド系ポリマー)を主体とした素材からなる。素材としてのポリアミドイミド系樹脂は、耐熱性があり、熱成形が可能で、機械的強度、耐薬品性、電気特性に優れていることから、これまで各種成形材料や耐熱性絶縁塗料等に応用されている。素材としてのポリアミドイミド系樹脂としては特に限定されず、これら公知のものを使用できる。ポリアミドイミド系樹脂は、通常、(i)無水トリメリット酸などの1分子中にカルボキシル基と酸無水物基とを有する酸とジイソシアネートとを反応させる方法、(ii)無水トリメリット酸クロライドなどの前記酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化する方法などにより製造することができる。従って、ポリアミドイミド系樹脂は、酸成分に対応するモノマー単位とジイソシアネート又はジアミンに対応するモノマー単位とで構成されている。
前記酸又はその反応性誘導体としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハライドのほか、無水トリメリット酸エステルなどが挙げられる。一方、前記ジイソシアネート及びジアミンとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2′−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ジアミノピリジン系化合物、及びこれらに対応するジイソシアネート化合物等が例示されるが、これらに限定されるものではない。ポリアミドイミド系樹脂の原料モノマーとして、特開昭63−283705号公報や特開平2−198619号公報に一般式として記載されている化合物を使用することもできる。また、前記(ii)の方法におけるイミド化は熱イミド化及び化学イミド化の何れであってもよい。化学イミド化としては、特許第3192762号の明細書に記載の方法を採用できる。
本発明の多孔性フィルムは、連通性を有する微小孔(連続微小孔)が多数存在し、該微小孔の平均孔径(=フィルム表面の平均孔径)は、0.01〜10μmである。微小孔の平均孔径は、好ましくは0.05〜5μmである。サイズが小さすぎる場合には透過性能が劣り、大きすぎる場合は分離濃縮の効率が落ちるなどの不具合がある。また多孔部に機能性材料を充填する場合にはサブミクロン〜ミクロン単位の分解能で充填できることが好ましいことから、上述の平均孔径が好ましく、小さすぎると機能性材料を充填できないなどの不具合が生じたり、一方、大きすぎるとサブミクロン〜ミクロン単位の制御が困難となる。また、フィルム表面の最大孔径は15μm以下が好ましい。
多孔性フィルムの厚みは、例えば5〜200μm、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜80μmである。厚みが薄くなりすぎるとフィルムの機械強度が充分でなくなり、一方厚すぎる場合には孔径分布を均一に制御することが困難になる。多孔性フィルムの内部の平均開孔率(空孔率)は、例えば30〜85%、好ましくは40〜85%、さらに好ましくは45〜85%である。空孔率が低すぎると、透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充填しても機能が発揮できないことがある。一方、空孔率が高すぎると、機械的強度に劣る可能性がある。また、多孔性フィルムの表面の開孔率(表面開孔率)としては、例えば48%以上(例えば48〜85%)であり、好ましくは60〜85%程度である。表面開孔率が低すぎると透過性能が充分でない場合が生じる他、空孔に機能性材料を充填してもその機能が十分に発揮できないことがあり、高すぎると機械的強度が低下しやすくなる。
フィルムに存在する微小孔の連通性は、透気度を表すガーレー値、及び純水透過速度などを指標とすることができる。多孔性フィルムのガーレー値は、例えば0.2〜2000秒/100cc、好ましくは1〜1000秒/100cc、さらに好ましくは1〜500秒/100ccである。数値が大きすぎると、実用上の透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充分に充填できないためにその機能が発揮できないことがある。一方、数値が小さすぎると、機械的強度に劣る可能性がある。
また、多孔性フィルムの純水透過速度は、3.3×10-9〜1.1×10-7m・sec-1・Pa-1[=20〜700リットル/(m2・min・atm)]であることが好ましく、さらに好ましくは4.9×10-9〜8.2×10-8m・sec-1・Pa-1[=30〜500リットル/(m2・min・atm)]である。純水透過速度が低すぎると、実用上の透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充分に充填できないためにその機能が発揮できないことがある。一方、数値が大きすぎると、機械的強度に劣る可能性がある。
好ましい多孔性フィルムには、連通性を有する微小孔が多数存在し、該多孔性フィルムの厚みが5〜200μm、微小孔の平均孔径が0.01〜10μm、空孔率が30〜85%、微小孔の連通性を示す透気度がガーレー値で0.2〜29秒/100cc(好ましくは1〜25秒/100cc、さらに好ましくは1〜18秒/100cc)である多孔性フィルムが含まれる。
本発明のポリアミドイミド系多孔性フィルムの重要な特徴は、当該多孔性フィルムをテトラヒドロフラン(THF)へ浸漬した場合の最大寸法変化率db(%)が±10%以内である点にある。通常、ポリアミドイミド系素材はTHFで溶解することはなく、また緻密膜の状態ではTHFによる寸法変化も微小である。しかしながら多孔性フィルムに成形した場合には、表面積の増加と多孔化による機械的強度の低下などに起因して、THF浸漬時には膨潤、乾燥時には収縮が発生しやすくなる。従来、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmのポリアミドイミド系多孔性フィルムであって、前記最大寸法変化率dbが±10%以内にあるものは知られていない。
前記最大寸法変化率db(%)は次のようにして求める。すなわち、多孔性フィルム上に各辺の長さが8〜30mmの範囲である直角三角形の頂点を構成する3点を定め、該多孔性フィルムを室温(例えば20℃)にてTHFに2分間浸漬し、その前後における3点間の距離の変化率(%)のうち絶対値の最も大きいもの(浸漬時最大寸法変化率)を求めるとともに、上記のように多孔性フィルムをTHFに2分間浸漬した後、取り出して、室温(例えば20℃)にて10分間自然乾燥したときのTHF浸漬前と乾燥後における前記3点間の距離の変化率(%)のうち絶対値の最も大きいもの(乾燥後最大寸法変化率)を求め、前記浸漬時最大寸法変化率と乾燥後最大寸法変化率とを比較して、絶対値の大きい方を最大寸法変化率db(%)とする。本発明では、この最大寸法変化率dbが±10%以内であり、好ましくは±7%以内、より好ましくは±4%以内(特に±2%以内)である。
このような特性を有するポリアミドイミド系多孔性フィルムは、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであるポリアミドイミド系素材を主体とする多孔性フィルムを、熱処理温度100〜370℃、熱処理時間0.05〜10時間の条件で熱処理することにより得ることができる。
熱処理に供する多孔性フィルム(以下、「被処理多孔性フィルム」と称することがある)としては、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μm(好ましくは0.05〜5μm)であるポリアミドイミド系素材を主体とする多孔性フィルムであれば特に限定されないが、例えば、前記特開2003−313356号公報に記載されている多孔性フィルムや、本発明者らが提案している特願2003−283862号の明細書に記載されている多孔性フィルムなどを使用できる。以下、被処理多孔性フィルムについてさらに詳細に説明する。
本発明における被処理多孔性フィルムは、上記の特性のほかに、多孔性フィルムに求められる諸特性を保持していることが好ましい。具体的には、好ましい被処理多孔性フィルムは、ポリアミドイミド系素材を主体とする材料からなり、フィルム表面の最大孔径が15μm以下、内部の平均開孔率(空孔率)が、例えば30〜85%(好ましくは40〜85%)、フィルム表面の開孔率(表面開孔率)が、例えば48%以上(例えば48〜85%、好ましくは60〜85%)程度である。これらすべての特性を同時に満たす必要はないが、上記のうち少なくともいずれか1つの特性を満たしているのが好ましい。被処理多孔性フィルムの厚みは、例えば5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。
このような被処理多孔性フィルムは、例えば、該多孔性フィルムを構成する材料となるポリマーを含むポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延した後、凝固させることを基本とする相転換法により製造できる。なお、被処理多孔性フィルムを構成する材料となるポリマーの代わりに、該ポリマーの単量体成分(原料)や、そのオリゴマー、イミド化前の前駆体等を用いてもよい。流延に付すポリマー溶液への水溶性ポリマーや水の添加は、膜構造をスポンジ状に多孔化するために効果的である。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、多糖類等やその誘導体、及びこれらの混合物などが挙げられる。水溶性ポリマーの分子量は1000以上が良く、好ましくは5000以上、特に好ましくは1万以上(例えば、1万〜20万程度)である。アミドイミド系ポリマーの良溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、NMP/キシレン系混合溶媒等が挙げられ、使用するポリマーの化学骨格に応じて溶解性を有するものを使用することができる。
さらに流延に付すポリマー溶液としては、例えば、多孔性フィルムを構成する素材となる高分子成分8〜25重量%、水溶性ポリマー10〜50重量%、水0〜10重量%、水溶性極性溶媒30〜82重量%からなる混合溶液などが好ましい。水溶性ポリマーや良溶媒等は、上記好ましい多孔性フィルム基材の製造に用いたものが挙げられる。
前記ポリマー溶液は、基材の主成分となるポリマー(高分子成分)の濃度が低すぎるとフィルムの強度が弱くなり、また高すぎると空孔率が小さくなる。該ポリマー溶液を構成する水溶性ポリマーは、フィルム内部を均質なスポンジ状の多孔構造にするために添加するが、この際に濃度が低すぎるとフィルム内部に10μmを超えるような巨大ボイドが発生し均質性が低下し、濃度が高すぎると溶解性が悪くなる。水の添加量はボイド径の調整に用いることができ、添加量を増やすことで径を大きくすることが可能となる。
ポリマー溶液を流延する基板としては、例えば、ガラス板;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、その他の樹脂からなるプラスチックシート;ステンレス板、アルミニウム板等の金属板などが挙げられる。なお、表面素材と内部素材とを違うもので組み合わせた複合板でもよい。
前記ポリマー溶液をフィルム状に流延する際の好ましい条件としては、相対湿度90〜100%、温度30〜80℃であり、特に好ましい条件は、相対湿度約100%(例えば、95〜100%)、温度40〜70℃である。空気中の水分量がこれよりも少ない場合は、表面の開孔率が充分でなくなる不具合がある。
ポリマー溶液をフィルム状に流延する際に、該フィルムを相対湿度70〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2〜15分間保持した後、高分子成分の非溶剤からなる凝固液に導くのが望ましい。流延後のフィルムを上記条件におくことにより、特に、該フィルムの基板側表面の反対の表面(「フィルムの空気側表面」と称する場合がある)の開孔率を向上させることができる。開孔率が向上する理由としては、加湿下に置くことにより水分がフィルム表面から内部へと侵入し、ポリマー溶液の相分離を効率的に促進するためと考えられる。
相転換法に用いる凝固液としては、高分子成分を凝固させる溶剤であればよく、高分子成分として使用するポリマーの種類によって適宜選択されるが、例えば、アミドイミド系ポリマーを凝固させる溶剤であればよく、例えば、水;メタノール、エタノール等の1価アルコール、グリセリン等の多価アルコールなどのアルコール;ポリエチレングリコール等の水溶性高分子;これらの混合物などの水溶性凝固液などが使用できる。
好ましい態様としては、例えば、アミドイミド系ポリマー8〜25重量%、分子量1000以上の水溶性ポリマー10〜40重量%、水0〜10重量%、アミドイミド系ポリマーの良溶媒30〜82重量%からなるポリマー溶液をフィルム状に流延する際に、該フィルムを相対湿度70〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2〜15分間保持した後、アミドイミド系ポリマーの非溶剤を含む水溶性凝固液に導く(あるいは接触させる)ことが挙げられる。
上記方法によれば、例えば、連通性を有する微小孔が多数存在するアミドイミド系ポリマーで構成された多孔性フィルムであって、該多孔性フィルムの微小孔の平均孔径が0.01〜10μm、空孔率が30〜85%、透気度がガーレー値で0.2〜29秒/100cc、該多孔性フィルムの厚みが5〜200μmである多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム)を製造できる。
前記ガーレー値は、0.2〜29秒/100cc、好ましくは1〜25秒/100cc、さらに好ましくは1〜18秒/100ccである。これよりも数値が大きいと、実用上の透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充分に充填できないためにその機能が発揮できないことがある。一方、数値がこれよりも小さいと、機械的強度に劣る可能性がある。また、純水透過速度は、3.3×10-9〜1.1×10-7m・sec-1・Pa-1[=20〜700リットル/(m2・min・atm)]であることが好ましく、さらに好ましくは4.9×10-9〜8.2×10-8m・sec-1・Pa-1[=30〜500リットル/(m2・min・atm)]である。これよりも純水透過速度が低いと、実用上の透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充分に充填できないためにその機能が発揮できないことがある。一方、数値がこれよりも大きいと、機械的強度に劣る可能性がある。
他の好ましい態様としては、多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム)を構成する高分子の表面張力Sa[mN/m(=dyn/cm)]と基板の表面張力Sb[mN/m(=dyn/cm)]との差(Sa−Sb)が−10以上となる高分子及び基板を用いて、ポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延し、相転換法によりフィルムを得る。上記方法によれば、高分子成分を含むポリマー溶液が基板上で良好な相分離構造をとるため、基板側表面の開孔率が向上し、均質な微小孔が形成された多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム)を簡便に得ることができる。
上記方法では、(Sa−Sb)が−10以上となる高分子と基板とを組み合わせて用いる。前記(Sa−Sb)が−10未満の場合には、高分子と基板の界面に高分子が凝集して緻密相が形成されるため、表面開孔率が低く実用に耐えないフィルムとなる。前記(Sa−Sb)が−10以上となる高分子と基板とを用いるため、流延時には該高分子を含むポリマー溶液が該基板上で海−島構造を有する相分離を生じ、これがフィルムの微小孔の発生源となって、特に、フィルムの基板と接触している側の表面(「フィルムの基板側表面」と称する場合がある)の開孔率が高い多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム)を得ることができる。特に、前記(Sa−Sb)が0を超える場合には、相転換法により凝集した高分子が基板の表面を濡らすことができずはじかれるため、より効果的に開孔することができる点で好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは7以上であり、13以上が最も好適である。(Sa−Sb)の値の上限は特に制限されず、例えば100程度であってもよい。
上記方法によれば、例えば、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該多孔性フィルムの両表面について、表面の平均孔径が0.01〜10μm、表面の平均孔径Aと内部の平均孔径Bとの比率A/Bが0.3〜3、且つ表面の平均開孔率Cと内部の平均開孔率Dとの比率C/Dが0.7〜1.5であり、多孔性フィルム基材の厚みが5〜200μmである多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム)を製造できる。このような均質で優れた空孔特性を有するため、本発明の被処理多孔性フィルムとして好ましい。
前記比率A/B及びC/Dは、好ましくはA/Bが0.5〜2であってC/Dが0.75〜1.4、より好ましくはA/Bが0.6〜1.5であってC/Dが0.8〜1.3である。これらの比率が小さすぎる場合は、透過性能が劣ったり、機能性材料を十分に充填できない場合がある。また、大きすぎる場合には、分離特性に劣ったり、機能性材料の充填が不均一になるなどの不都合が発生する可能性がある。
また、上記方法によれば、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該フィルムの両面の平均孔径A1,A2が何れも0.01〜10μm、多孔性フィルムの両面の平均開孔率C1,C2が何れも48%以上であり、且つ一方の表面の平均孔径A1と他方の表面の平均孔径A2との比率A1/A2が0.3〜3、一方の表面の平均開孔率C1と他方の表面の平均開孔率C2との比率C1/C2が0.7〜1.5であり、多孔性フィルムの厚みが5〜200μmである多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム)を製造することもできる。
前記比率A1/A2及びC1/C2は、好ましくはA1/A2が0.5〜2であってC1/C2が0.75〜1.4、より好ましくはA1/A2が0.6〜1.5であってC1/C2が0.8〜1.3である。これらの比率が小さすぎる場合は、透過性能が劣ったり、機能性材料を十分に充填できない場合がある。また、大きすぎる場合には、分離特性に劣ったり、機能性材料の充填が不均一になるなどの不都合が発生する可能性がある。
本発明における被処理多孔性フィルムの微小孔の径、空孔率、透気度、開孔率は、上記のように、用いる基板、ポリマー溶液の構成成分の種類や量、水の使用量、流延時の湿度、温度及び時間などを適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
本発明の製造方法では、このようにして準備された被処理多孔性フィルムを、熱処理温度100〜370℃、熱処理時間0.05〜10時間の条件で熱処理する。熱処理温度は、好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは180〜270℃である。熱処理温度が100℃よりも低くなると十分な効果が得られない場合があったり、処理時間が長くなりすぎるために、プロセス上、現実性に乏しい。一方、熱処理温度が370℃よりも高くなると処理時間が短くなり、時間の制御が困難となる。もし制御できずに処理時間が適切な時間を超えた場合には、多孔性フィルムが脆くなったり異常に着色するなどの不具合が発生する。熱処理時間は、好ましくは0.1〜5時間、さらに好ましくは0.1〜2時間である。
上記熱処理により、連通性を有する微小孔が多数存在し、微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔性フィルムでありながら、テトラヒドロフランへ浸漬した場合の最大寸法変化率db(%)が±10%以内に改善される。このような多孔性フィルムは、耐薬品性に著しく優れる。前記最大寸法変化率の改善の程度を定量的に述べると、多孔性フィルムの熱処理前の最大寸法変化率をda(%)、熱処理後の最大寸法変化率をdb(%)とした時、一般に|db|≦|da|×1/3 の関係を満たすように改善される。好ましくは|db|≦|da|×1/5であり、さらに好ましくは|db|≦|da|×1/8である。なお、熱処理前の最大寸法変化率da(%)は、熱処理後の最大寸法変化率db(%)と同様にして求められる。
熱処理の方法は特に制限されず、熱風処理、熱ロール処理、あるいは、恒温槽やオーブン等に投入する方法でもよく、多孔性フィルムを所定の温度にコントロールできるものであればよい。またフィルムの形態としては枚葉でもロール状でもよく、その用途先の形状に応じて用いることができる。形態が枚葉であれば1枚毎に処理条件を設定できることが容易であり、ロール状であれば連続処理により均質なものを得ることが容易になる。
熱処理時の雰囲気は空気でも窒素や不活性ガスでもよい。空気を使用する場合が最も安価であるが、酸化反応を伴う可能性がある。これを避ける場合は、窒素や不活性ガスを使用するのがよく、コスト面からは窒素が好適である。
熱処理時に生じる化学反応は全てが明確になっているわけではないが、架橋反応が伴っていると推定される。その反応には、イミド基が一旦開裂した後、別のサイトに結合することが含まれていると考えられる。また架橋反応の面からは、ポリアミドイミドに官能基が存在することもよい。官能基としては、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、グリシジルエーテル基等が挙げられ、これらの官能基を積極的にポリマーに導入しておいてもよい。またこれら官能基のうち、カルボキシル基はポリアミドイミドを合成する際に、反応機構から推定すると、未イミド化部分や重合末端に残っている可能性があり、これらのサイトを有効に架橋反応に用いることが考えられる。
架橋反応等を誘起させる手段としては、紫外線、電子線やガンマ線等の放射線類も考えられるが、簡便さとコスト、及び耐薬品性の改善の面で、本発明の加熱による方法が最も優れている。また、耐薬品性を向上させる他の手段としては、微小孔表面に耐薬品性の優れた高分子化合物を塗布する方法があり(特願2003−334108の明細書参照)、本発明の方法とこの技術とを組合せることも可能である。
本発明のポリアミドイミド系多孔性フィルムは耐薬品性に優れる。該耐薬品性における「薬品」とは、樹脂を溶解、膨潤、収縮、分解等して樹脂の性能や機能を低下させてしまうものであり、例えば、強い極性溶媒、アルカリ、酸等が例示される。該「薬品」は樹脂の種類によって変化し、一概に指し示すことはできないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン、シクロヘキサノン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン、テトラヒドロフラン(THF)等の強い極性溶媒;アルカリ性水溶液;酸性水溶液;アルカリ性有機溶剤;酸性有機溶剤;及びこれらの混合物などが挙げられる。
水溶液や有機溶剤をアルカリ性にする物質として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の弱酸塩;トリエチルアミン等のアミン類;アンモニア等を挙げることができる。水溶液や有機溶剤を酸性にする物質としては、例えば、塩化水素、硫酸、硝酸等の無機酸;酢酸、フタル酸等のカルボン酸、スルホン酸などの有機酸を挙げることができる。
本発明による多孔性フィルムへの耐薬品性の付加は、強い極性溶媒、アルカリ、酸等の薬品にさらされた時に、多孔性フィルムがこれらの薬品に溶解したり、膨潤して変形したりして使用できなかった用途への新たな展開が図れるという意味で非常に重要である。多孔性フィルムが溶媒、アルカリ、酸等の薬品に完全な耐性を持ち、全く膨潤しなくなるのが最も好ましいが、用途によっては必ずしもそこまでの耐薬品性を要求されないので、使用用途において問題ないレベルまで耐薬品性が改善されることが重要である。特に、薬品にさらされる時間が短い用途に用いられる場合であれば、その時間内で問題ないレベルの耐薬品性を有していればよい。
多孔性フィルムの実際の使用に当たっては、最終的に、耐薬品性に優れていること以外にも、耐熱性、柔軟性、硬度、色、製造容易性、孔径、空孔率、多孔構造、価格、強度、化学的性質(親水性、親有機溶剤性)等、多様な要求があり、それら全てをバランスよく満足するものでなければならない。本発明における熱処理では、通常、処理時間と共に柔軟性が低下し、着色度が強くなる傾向にあるが、孔に関する物性、特性は熱処理前後においてほとんど変化しない。すなわち、被処理多孔性フィルムが有する空孔率、孔径、ガーレー値、純粋透過速度等の物性値と、本発明の多孔性フィルムが有するこれらの物性値とは、ほぼ同程度の値を示す。
また、本発明の方法によれば、まず製造の容易な多孔性フィルムを製造しておき、これを熱処理するだけで耐薬品性を付与できることから、耐薬品性を備えた多孔性フィルムを直接製造する方法と比較して、コスト的に有利である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお評価は次のようにして行った。
[表面張力]
POLYMER HANDBOOK (THIRD EDITION, JOHN WILEY&SONS)、化学工学便覧(改訂五版、丸善株式会社)に掲載されている値を使用した。この本に記載されていない物質については、ポリマー単体(又はポリマーブレンド)の均一フィルムを作成し、JIS K6768に準じて測定した。実施例中、後者の方法により測定した表面張力を示す場合には「:測定値」と付記した。
[透気度]
YOSHIMITSU社製のGurley's Densometerを用い、JIS P8117に準じて測定した。但し、測定面積が標準の1/10の装置を使用したので、JIS P8117の付属書1に準じて標準のガーレー値に換算して求めた。
[純水透過速度]
Amicon社製のSTIRRED ULTRAFILTRATION CELLS MODELS 8200の平膜用濾過器を用いて評価した。透過面積は28.7cm2であった。なお、評価の際に、透過側には濾紙をスペーサー代わりに配置し、透過側の抵抗をできるだけ排除した。圧力は0.5kg/cm2(49kPa)で測定し換算した。測定温度は25℃である。
[表面の平均孔径]
電子顕微鏡写真から、フィルム表面の任意の30点以上の孔についてその面積を測定しまずその平均値を平均孔面積Saveとした。次に、次式からその孔が真円であると仮定した時の孔径に換算し、その値を平均孔径とした。ここでπは円周率を表す。
表面の平均孔径=2×(Save/π)1/2
[内部の平均孔径]
まず、フィルムを液体窒素温度で破断してフィルム断面を露出させた。該方法によりフィルムが破断できない場合には、あらかじめフィルムを水により湿潤にした状態で液体窒素温度で破断させてフィルム断面を露出させた。得られたフィルム断面を電子顕微鏡用サンプルとして、上述の表面の平均孔径の求め方と同様の方法を用いて平均孔径を求めた。
[表面の最大孔径]
フィルム表面の電子顕微鏡写真から、任意の20×20μmの面積を5箇所選び、その中に存在する孔を真円であると仮定したときの孔径に換算し、その中で最も大きくなるものを最大孔径とした。なお、換算には次式を使用した。ここでSmaxは観察された孔のうちで最大面積を有するものの値である。πは円周率を表す。
孔径=2×(Smax/π)1/2
[内部の最大孔径]
まず、フィルムを液体窒素温度で破断してフィルム断面を露出させた。該方法によりフィルムが破断できない場合には、あらかじめフィルムを水により湿潤にした状態で液体窒素温度で破断させてフィルム断面を露出させた。得られたフィルム断面を電子顕微鏡用サンプルとして、上述の表面の最大孔径の求め方と同様の方法を用いて最大孔径を求めた。
[表面の平均開孔率]
表面の平均開孔率は、フィルム表面の電子顕微鏡写真から、任意の20×20μmの面積を選び、その中に存在する孔の合計面積が全体に占める比率を算出した。この操作を任意の5箇所について実施し平均値を求めた。
[内部の平均開孔率(=空孔率)]
フィルムの内部の平均開孔率は次式より求めた。ここでVはフィルムの体積、Wはフィルムの重量、ρはフィルム素材の密度であり、ポリアミドイミドの密度は1.45(g/cm3)とした。
内部の平均開孔率(%)=100−100×W/(ρ・V)
なお、上記評価方法における平均孔径、最大孔径、及び平均開孔率は、電子顕微鏡写真の最も手前に見えている微小孔のみを対象として求められており、写真奥に見えている微小孔は対象外とした。
[最大寸法変化率]
多孔性フィルムをカットし、図1のようなサンプル(30mm×20mm)を作製した。サンプルに、各辺の長さが8〜30mmの範囲である直角三角形の頂点を形成するように、3点の小さな穴を開け、3点間の距離x、y、wを測定した。これをx1、y1、w1とする。次に、径が約100mmのシャーレにTHFを約50cc入れ、その中に前記サンプルを投入した。浸漬して2分後にサンプルを取り出し、乾燥しないようにスライドガラスではさんだ後に、再び距離x、y、wを測定した。これをx2、y2、w2とする。サンプルをスライドガラスから取り出し、自然乾燥させ、室温下で放置して10分後に再び距離x、y、wを測定した。これをx3、y3、w3とする。そして、下記式を用いて、距離xの変化率を計算する。
浸漬時のxの変化率(%)={(x2−x1)/x1}×100
乾燥後のxの変化率(%)={(x3−x1)/x1}×100
変化率の値が+であれば多孔性フィルムが膨張したことを示し、変化率が−であれば収縮したことを示す。サンプル1個に付き、xの他にyおよびwについても同様の方法で変化率を計算し、これら3方向の変化率の絶対値で最も大きなものを寸法変化率とした。また、この寸法変化率をTHFへの浸漬時と、乾燥後とで比較し、絶対値が大きな方を、このサンプルの最大寸法変化率とした。
さらにこの測定は、個々の多孔性フィルムに対して、熱処理を施した後と、施していない状態(被処理多孔性フィルム)とで、それぞれ測定を実施した。
調製例1
被処理多孔性フィルム1の製造
東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR11NN」(アミドイミド系ポリマー、ポリマー単体の表面張力42mN/m(=dyn/cm):測定値、固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度20dPa・s/25℃)を使用し、この溶液100重量部に対し、ポリビニルピロリドン(分子量5万)を30重量部を加えて製膜用の原液とした。この原液を25℃とし、フィルムアプリケーターを使用して帝人デュポン社製PETシート(Sタイプ、表面張力39mN/m(=dyn/cm):測定値)製の基板上にキャストした。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させ、次いで乾燥する相転換法によって多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム1)を得た。この操作ではキャスト時のフィルムアプリケーターとPETシート基板とのギャップは127μmとし、得られたフィルムの厚みは約50μmとなった。
得られたフィルムの膜構造を観察したところ、キャスト時に基板と接触していたフィルム表面(フィルムの基板側表面)に存在する孔の平均孔径は約0.9μm、最大孔径は2.5μmで平均開孔率は約65%、キャスト時に基板と接触していなかったフィルム表面(フィルムの空気側表面)に存在する孔の平均孔径は約1.1μm、最大孔径は2.7μmで平均開孔率は約70%、フィルム内部はほぼ均質で、全域に亘って平均孔径約1.0μm、最大孔径1.8μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、フィルムの内部の平均開孔率は70%であった。透過性能を測定したところ、ガーレー透気度で9.5秒、純水透過速度で9.8×10-9m・sec-1・Pa-1[=60リットル/(m2・min・atm at 25℃)]という優れた性能を示した。
調製例2
被処理多孔性フィルム2の製造
東洋紡績社製の商品名「バイロマックスHR16NN」(アミドイミド系ポリマー、固形分濃度15重量%、溶剤NMP、溶液粘度500dPa・s/25℃)を使用し、この溶液100重量部に対し、ポリビニルピロリドン(分子量5万)を30重量部加えて中間液とした。さらにこの中間液100重量部に対してNMPを30重量部加えて製膜用の原液とした。この原液を25℃とし、フィルムアプリケーターを使用して帝人デュポン社製PETシート(Sタイプ)製の基板上にキャストした。キャスト後速やかに湿度約100%、温度50℃の容器中に4分間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させ、次いで乾燥することによって多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム2)を得た。この操作ではキャスト時のフィルムアプリケーターとPETシート基板とのギャップは127μmとし、得られたフィルムの厚みは約50μmとなった。
得られたフィルムの膜構造を観察したところ、キャスト時に基板と接触していたフィルム表面(フィルムの基板側表面)に存在する孔の平均孔径は約0.9μm、最大孔径は2.6μmで平均開孔率は約65%、キャスト時に基板と接触していなかったフィルム表面(フィルムの空気側表面)に存在する孔の平均孔径は約1.4μm、最大孔径は2.7μmで平均開孔率は約70%、フィルム内部はほぼ均質で、全域に亘って平均孔径約0.7μm、最大孔径1.6μmの連通性を持つ微小孔が存在していた。また、フィルムの内部の平均開孔率は78%であった。透過性能を測定したところ、ガーレー透気度で4.3秒、純水透過速度で2.5×10-8m・sec-1・Pa-1[=150リットル/(m2・min・atm at 25℃)]という優れた性能を示した。
実施例1
調製例1と調製例2で作製したポリアミドイミド系多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム1、被処理多孔性フィルム2)に対し、表1に示される条件で、熱処理を施した。多孔性フィルムを[最大寸法変化率]の手順に従い評価した。表1にその結果を示した。ここで、変化率の値が+であれば多孔性フィルムが膨張(膨潤)したことを示し、変化率が−であれば収縮したことを示す。表中、「−」は熱処理を施していないことを示す。また「*」は、フィルムの変形が激しいため距離が測定できず、変化率が算出できなかったことを示す。
Figure 0004530652
また、熱処理前及び熱処理後の多孔性フィルムの表面と断面を日本電子データム株式会社製電子顕微鏡JSM−820により比較観察した。サンプルを5000倍に拡大して観察したところ、熱処理の前後において、その多孔構造には本質的な違いが見られなかった。この事実により、多孔性フィルムは熱処理を施しても多孔構造が維持されていることが確認された。
比較例1
熱処理条件のみ変化させて、実施例1と同様の実験を行った。表2にその結果を示した。
Figure 0004530652
比較例2
調製例1で作製したポリアミドイミド系多孔性フィルム(被処理多孔性フィルム1)に対し、放射線(ガンマ線)を、30〜150kGyで照射した。多孔性フィルムを[最大寸法変化率]の手順に従い評価した。表3にその結果を示した。表中、「−」は放射線処理を施していないことを示す。また「*」は、フィルムの変形が激しいため距離が測定できず、変化率が算出できなかったことを示す。
Figure 0004530652
最大寸法変化率の測定法の説明図である。
符号の説明
x,y,w サンプル上に形成した直角三角形の頂点間の距離

Claims (4)

  1. 連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであり、ガーレー値が0.2〜29秒/100cc、純水透過速度が3.3×10 -9 〜1.1×10 -7 m・sec -1 ・Pa -1 であるポリアミドイミド系素材を主体とする多孔性フィルムを、熱処理温度150〜300℃、熱処理時間0.1〜5時間の条件で熱処理して、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔性フィルムであって、該熱処理後においてテトラヒドロフランへ浸漬した場合の最大寸法変化率d b (%)が±10%以内となるポリアミドイミド系多孔性フィルムを得ることを特徴とする耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムの製造方法。
  2. 多孔性フィルムの熱処理前の最大寸法変化率d a (%)と熱処理後の最大寸法変化率d b (%)とが、|d b |≦|d a |×1/3 の関係を満たす請求項1記載の耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムの製造方法。
  3. 熱処理後の多孔性フィルムの厚みが5〜200μmである請求項1又は2記載の耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムの製造方法。
  4. 熱処理後の多孔性フィルムの空孔率が30〜85%である請求項1〜3の何れかの項に記載の耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムの製造方法。
JP2003404106A 2003-12-03 2003-12-03 耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムとその製造方法 Expired - Lifetime JP4530652B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003404106A JP4530652B2 (ja) 2003-12-03 2003-12-03 耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムとその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003404106A JP4530652B2 (ja) 2003-12-03 2003-12-03 耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムとその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005162885A JP2005162885A (ja) 2005-06-23
JP4530652B2 true JP4530652B2 (ja) 2010-08-25

Family

ID=34727175

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003404106A Expired - Lifetime JP4530652B2 (ja) 2003-12-03 2003-12-03 耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムとその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4530652B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2007097249A1 (ja) * 2006-02-20 2009-07-09 ダイセル化学工業株式会社 多孔性フィルム及び多孔性フィルムを用いた積層体
US20110081527A1 (en) * 2008-06-10 2011-04-07 Yo Yamato Layered product having porous layer and functional layered product made with the same
JP5461973B2 (ja) * 2009-12-14 2014-04-02 株式会社ダイセル 多孔質膜及びその製造方法
US8815384B2 (en) * 2010-01-25 2014-08-26 Toray Industries, Inc. Aromatic polyamide porous film and separator for capacitor or battery using the same

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01123607A (ja) * 1987-11-05 1989-05-16 Mitsubishi Kasei Corp 複合分離膜の製造方法
JPH1094721A (ja) * 1996-07-31 1998-04-14 Nok Corp ポリアミドイミド分離膜の製造法
JP2003313356A (ja) * 2002-04-22 2003-11-06 Daicel Chem Ind Ltd 多孔性フィルム及びその製造方法
JP2004315660A (ja) * 2003-04-16 2004-11-11 Toyobo Co Ltd 多孔質ポリアミドイミドフイルムおよびその製造法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01123607A (ja) * 1987-11-05 1989-05-16 Mitsubishi Kasei Corp 複合分離膜の製造方法
JPH1094721A (ja) * 1996-07-31 1998-04-14 Nok Corp ポリアミドイミド分離膜の製造法
JP2003313356A (ja) * 2002-04-22 2003-11-06 Daicel Chem Ind Ltd 多孔性フィルム及びその製造方法
JP2004315660A (ja) * 2003-04-16 2004-11-11 Toyobo Co Ltd 多孔質ポリアミドイミドフイルムおよびその製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005162885A (ja) 2005-06-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4761966B2 (ja) 耐薬品性を有する多孔性フィルム
JP5944613B1 (ja) 多孔質ポリイミドフィルムおよびその製造方法
US7820281B2 (en) Process for producing porous film and porous film
JPWO2010038873A1 (ja) 多孔質ポリイミド膜及びその製造方法
JP3963765B2 (ja) 多孔性フィルム及びその製造方法
JP3994241B2 (ja) ポリイミド多孔膜及び製造方法
JP4530652B2 (ja) 耐薬品性に優れたポリアミドイミド系多孔性フィルムとその製造方法
JP2012111790A (ja) 乾式ポリイミド系多孔性フィルム及びその製造方法
JP2003335895A (ja) ポリイミド多孔質膜複合材料及びプロトン伝導膜
JPH0685858B2 (ja) 分離膜の製造方法
JP2014231570A (ja) ポリマー多孔質膜の製造方法及びポリマー多孔質膜
JP6757072B2 (ja) 多孔質膜、水処理膜及び多孔質膜の製造方法
JP2006073235A (ja) 積層電解質膜およびその製造方法
JP2004315660A (ja) 多孔質ポリアミドイミドフイルムおよびその製造法
JP2017186506A (ja) 多孔質ポリイミドフィルム形成用ポリイミド溶液、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法および多孔質ポリイミドフィルム
JPH05184887A (ja) 高機能性非対称膜の製造方法
JP2003026849A (ja) ポリイミド多孔質膜
JP4969192B2 (ja) 多孔性フィルム及びその製造方法
JPH0685860B2 (ja) 分離膜の製法
JP2007169661A (ja) ポリイミド多孔膜
JP2007246876A (ja) 多孔性フィルム及びその製造方法
JP6937502B2 (ja) 多孔質複合フィルムおよび多孔質複合フィルムの製造方法
JP4069725B2 (ja) 多孔性芳香族ポリアミド系フィルムおよびその製造方法
JP2018003010A (ja) 多孔質ポリイミドフィルム形成用ポリイミド溶液、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法および多孔質ポリイミドフィルム
JP2010056051A (ja) 高分子電解質膜の製造方法、高分子電解質膜、膜−電極接合体及び燃料電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060912

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090224

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090303

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090430

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100608

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100608

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4530652

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130618

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130618

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130618

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

EXPY Cancellation because of completion of term