JP4969192B2 - 多孔性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続微小孔が多数形成され、且つ強度を備えた多孔性フィルム及びその製造方法に関する。
多孔性フィルムは、その空孔特性を利用して、精密濾過、分離濃縮等の膜分離技術などに適用されている。このような多孔性フィルムとしては、表面に実質的にスキン層をもたず、高空隙率のフィルムが好ましく用いられるが、薄膜では膜強度が弱く、膜単体での取扱いが非常に困難であった。このため、従来の多孔性フィルムは、補強材で裏打ちした状態で取り扱ったり、フィルムを中空糸状に加工して利用するなどの工夫がなされていた。
例えば、特開2002−240178号公報には、剥離性に優れた基材の表面に多孔膜を形成し、得られた多孔膜上に接着剤層を設けた後、基材から剥離して多孔膜を形成する方法が記載されている。また、特許第3422657号明細書、及び特許第3385937号明細書には、ポリイミド系樹脂からなる中空糸膜を製造する方法が記載されている。しかし、いずれの文献にも、フィルム状の多孔質体を取扱う方法について記載はなく、厚みが5〜200μm程度の薄層の多孔性フィルムを単体で取扱うことは困難であった。
特開2002−240178号公報 特許第3422657号明細書 特許第3385937号明細書
本発明の目的は、均質な微小孔を有し、優れた膜強度を有する多孔性フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記多孔性フィルムを簡便に製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ポリエーテルイミド系樹脂を主体とするポリマー溶液を用いて特定の条件下で相転換することにより、連通性を有する微小孔が多数形成され、しかも膜強度に優れた多孔性フィルムが得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであって、該多孔性フィルムの一方の面側の微小孔の平均孔径φAと他の面側の微小孔の平均孔径φBとが、0.1≦φA/φB≦10 の関係を満たし、且つ空孔率が30〜80%である多孔性フィルムを提供する。
(式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なって、芳香族炭化水素環を含む2価の有機基を示す)
本発明の多孔性フィルムは、引張弾性率が50MPa以上1000MPa未満程度であり、厚みが5〜200μm程度であることが好ましい。
本発明は、また、
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該多孔質フィルム表面に粘度0.00001〜1Pa・sの溶液1μlを滴下した後、1000sec以内の接触角が60°以下である多孔性フィルムを提供する。
(式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なって、芳香族炭化水素環を含む2価の有機基を示す)
さらに、本発明は、
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該多孔質フィルム表面に粘度0.00001〜1Pa・sの溶液1μlを滴下し、100sec後の接触角θ100と、1000sec後の接触角θ1000としたときに、θ1000/θ100<0.9である多孔性フィルムを提供する。
(式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なって、芳香族炭化水素環を含む2価の有機基を示す)
前記θ1000は60°以下であってもよい。
また、本発明は、ポリエーテルイミド系樹脂を7〜26重量%、及び水溶性ポリマーを13〜33重量%溶解したポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延し、相転換法により上記本発明の多孔性フィルムを得る多孔性フィルムの製造方法を提供する。
本発明は、また、ポリエーテルイミド系樹脂を7〜26重量%、及び水溶性ポリマーを17〜33重量%溶解したポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延し、相転換法により上記本発明の多孔性フィルムを得る多孔性フィルムの製造方法を提供する。前記ポリマー溶液に含まれるポリエーテルイミド系樹脂(a)と水溶性ポリマー(b)の重量比は、例えば0.8≦(b)/(a)≦5.0 の関係を満たしている。
さらに、本発明は、ポリエーテルイミド系樹脂及び水溶性ポリマーからなるポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延し、加湿下で相分離を行った後、凝固液に導くことにより、上記本発明の多孔性フィルムを得る多孔性フィルムの製造方法を提供する。本発明の方法において、さらに、凝固液に導いたフィルムを基材から支持体上へ転写して乾燥に付してもよい。前記支持体は、凝固液耐性を有する材質からなり、フィルムと接触する側の表面に微小孔が多数存在していることが好ましい。
なお、本明細書では、上記発明のほか、
ポリエーテルイミド系樹脂を主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであって、該多孔性フィルムの一方の面側の微小孔の平均孔径φAと他の面側の微小孔の平均孔径φBとが、0.1≦φA/φB≦10 の関係を満たし、且つ空孔率が30〜80%である多孔性フィルム、についても説明する。
また、本明細書では、上記発明のほか、
ポリエーテルイミド系樹脂を主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該多孔質フィルム表面に粘度0.00001〜1Pa・sの溶液1μlを滴下した後、1000μsec以内の接触角が60°以下である多孔性フィルム、についても説明する。
さらに、本明細書では、上記発明のほか、
ポリエーテルイミド系樹脂を主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該多孔質フィルム表面に粘度0.00001〜1Pa・sの溶液1μlを滴下し、100μsec後の接触角θ 100 と、1000μsec後の接触角θ 1000 としたときに、θ 1000 /θ 100 <0.9である多孔性フィルム、についても説明する。
本発明の多孔性フィルムは、微小孔の平均孔径、空孔率等が特定の範囲内にあり、表面に実質的にスキン層がなく、均質で優れた空孔特性を有し、しかも十分な膜強度を有するため、例えば、フィルター濾紙などとして、精密濾過、分離濃縮等の膜分離技術に利用できるほか、その空孔を機能性材料で充填することにより、燃料電池用セパレーター、燃料電池用電解質膜(支持体)、回路用基板等、広範囲な基板材料としての利用が可能である。本発明の多孔性フィルムは、また、インクジェットプリンターをはじめとする各種印刷機器により文字等の印刷が施される印刷基材として利用することができ、さらに、導電インクを印刷することにより回路形成に利用することもできる。本発明の方法によれば、このように高い空隙率と優れた膜強度を併せ持つ多孔性フィルムを容易に得ることができる。
本発明の多孔性フィルムは、ポリエーテルイミド系樹脂(ポリエーテルイミド系ポリマー)を主体とした素材からなる。素材としてのポリエーテルイミド系樹脂は、耐熱性があり、熱成形が可能で、機械的強度、耐水性、耐候性、耐薬品性、電気的特性に優れていることから、これまで各種成形材料に広く利用されている。このような素材からなる多孔性フィルムは、特に、連通性を有する微小孔が多数形成され、高い空隙率を有する場合であっても十分な機械的強度を発揮することができ、フィルム単体の取扱性を著しく向上することができる。このため、別途補強材を設けたり、中空糸を形成することなく、フィルム単体で利用することができるため用途を拡大でき、作業性が改善される点で有利である。本発明におけるポリエーテルイミド系樹脂は、特に限定されず、公知のものを使用できる。ポリエーテルイミド系樹脂は、例えば、ベンゼン環に脱離基を有するフタルイミド系化合物と求核剤とを反応させる方法などにより製造することができる。なかでも、求核剤として芳香族性環を含有するエーテル化合物を用いて得られる化合物が好ましい。
本発明におけるポリエーテルイミド系樹脂としては、前記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを用いることができる。このようなポリエーテルイミド系樹脂は、分子内に複数の芳香族性環を含むため、フィルム強度を著しく向上でき好ましい。
前記式(1)中、R及びRにおける2価の有機基に含まれる芳香族炭化水素環には、単環または多環の芳香族炭素環及び芳香族複素環が含まれる。単環の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭化水素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環、スチルベン環などの2つ以上の芳香環が単結合等の連結基を介して結合した構造のものなどが挙げられる。これらの環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてよい。
芳香族炭化水素環を含む2価の有機基の具体例としては、下記式

(式中、nは1〜10の整数を示す)
で表される2価の有機基が挙げられる。前記有機基に含まれるベンゼン環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてよい。
好ましいRには、例えば、下記式

で表される2価の有機基が含まれる。特に好ましくは、下記式

で表される2価の有機基が用いられる。
好ましいRには、例えば、下記式

で表される2価の有機基が含まれる。
本発明におけるポリエーテルイミド系樹脂として、特に好ましくは、下記式(A)

で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを用いることができる。
本発明の多孔性フィルムは、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径(=フィルム表面の平均孔径)が0.01〜10μmである。微小孔の平均孔径は、好ましくは0.05〜5μmである。サイズが小さすぎる場合には透過性能が劣り、大きすぎる場合は分離濃縮の効率が落ちるなどの不具合がある。また多孔部に機能性材料を充填する場合にはサブミクロン〜ミクロン単位の分解能で充填できることが好ましいことから、上述の平均孔径が好ましく、小さすぎると機能性材料を充填できないなどの不具合が生じたり、一方、大きすぎるとサブミクロン〜ミクロン単位の制御が困難となる。また、フィルム表面の最大孔径は15μm以下が好ましい。
本発明の多孔性フィルムは、一方の面側の微小孔の平均孔径φAと他の面側の微小孔の平均孔径φBとが、0.1≦φA/φB≦10 の関係を満たしている。φA/φBが0.1未満又は10を超える場合は、フィルム両面に設けられている微小孔のバランスが悪く、透過性能や分離濃縮効率が著しく低下してしまう。
本発明の多孔性フィルムは、通常、多孔性フィルムを構成するポリエーテルイミド系樹脂を熔解したポリマー溶液を基材上へフィルム状に流延した後、凝固させることを基本とする相転換法により製造される。こうして得られる多孔性フィルムは、基板と接触していない側の表面(空気側表面)と、基板と接触している側の表面(基材側表面)において、微小孔形成環境が異なるため、それぞれ異なる空孔特性を有している場合が多い。多孔性フィルム表面の微小孔について、前記φAが多孔性フィルムの空気側表面の平均孔径を示し、φBが基材側表面の平均孔径を示す場合には、例えば0.15≦φA/φB≦8、好ましくは0.2≦φA/φB≦5の範囲である。なお、前記φA/φBの値は、多孔性フィルムの製造条件を適宜設定することにより調整できる。具体的には、例えば、多孔性フィルムを構成する素材を含むポリマー溶液を流延する基材の種類、該基材の表面特性、微小孔形成時の雰囲気(温度、湿度等)等を適宜設定することにより制御することができる。
多孔性フィルムの内部の平均開孔率(空孔率)は、例えば30〜80%、好ましくは40〜80%、さらに好ましくは45〜80%である。空孔率が低すぎると、透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充填しても機能が発揮できないことがある。一方、空孔率が高すぎると、機械的強度に劣る可能性がある。また、多孔性フィルムの表面の開孔率(表面開孔率)としては、例えば48%以上(例えば48〜80%)であり、好ましくは60〜80%程度である。表面開孔率が低すぎると透過性能が充分でない場合が生じる他、空孔に機能性材料を充填してもその機能が十分に発揮できないことがあり、高すぎると機械的強度が低下しやすくなる。
多孔性フィルムの厚みは、例えば5〜200μm、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜80μmである。厚みが薄くなりすぎるとフィルムの機械強度が充分でなくなり、一方厚すぎる場合には孔径分布を均一に制御することが困難になる。
本発明の多孔性フィルムは、ポリエーテルイミド系樹脂を主体とする素材で構成されているため、上記のような空孔特性を有する場合にも十分な機械的強度を備えている。このため、フィルム単体の取扱性が改善されるため、多様な用途に利用することができる。多孔性フィルムの引張弾性率は、例えば50MPa以上1000MPa未満、好ましくは80MPa以上800MPa、特に好ましくは100MPa以上500MPa未満程度である。引張弾性率が50MPa未満では、剛性が低く取扱いが困難となりやすく、1000MPa以上では空隙率が低くなりすぎたりして好ましくない。なお、引張弾性率は、幅10mmの試験片を用いて、チャック間距離100mm、引張速度:50mm/分の条件下、JIS K 7127に準拠して得た値である。
フィルムに存在する微小孔の連通性は、透気度を表すガーレー値、及び純水透過速度などを指標とすることができる。多孔性フィルムのガーレー値は、例えば0.2〜2000秒/100cc、好ましくは1〜1000秒/100cc、さらに好ましくは1〜500秒/100ccである。数値が大きすぎると、実用上の透過性能が充分でなかったり、機能性材料を充分に充填できないためにその機能が発揮できないことがある。一方、数値が小さすぎると、機械的強度に劣る可能性がある。
好ましい多孔性フィルムには、連通性を有する微小孔が多数存在し、該多孔性フィルムの厚みが5〜200μm、微小孔の平均孔径が0.01〜10μm、、該多孔性フィルムの一方の面側の微小孔の平均孔径φAと他の面側の微小孔の平均孔径φBとが、0.1≦φA/φB≦10 の関係を満たし、空孔率が30〜80%、引張弾性率が50MPa以上1000MPa未満である多孔性フィルムが含まれる。
本発明の多孔性フィルムは、均質な微小孔を有し、しかも膜強度に優れるため、精密濾過、分離濃縮等の膜分離技術や、その空孔特性をそのまま利用したり、または空孔を機能性材料で充填することにより、電池用セパレーター、電解コンデンサー、回路用基板等の用途、さらにはフィルム単体を取り扱う用途として広い分野で利用することができる。
このような多孔性フィルムは、例えば、該多孔性フィルムを構成する材料となるポリマーを含むポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延した後、凝固させることを基本とする相転換法により製造できる。なお、多孔性フィルムを構成する材料となるポリマーの代わりに、該ポリマーの単量体成分(原料)や、そのオリゴマー、イミド化前の前駆体等を用いてもよい。流延に付すポリマー溶液への水溶性ポリマーや水の添加は、膜構造をスポンジ状に多孔化するために効果的である。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、多糖類等やその誘導体、及びこれらの混合物などが挙げられる。なかでもポリビニルピロリドンは、フィルム内部におけるボイドの形成を抑制し、フィルムの機械的強度を向上しうる点で好ましい。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。多孔化の観点から、水溶性ポリマーの分子量は1000以上が良く、好ましくは5000以上、特に好ましくは1万以上(例えば、1万〜20万程度)である。なかでも分子量1000以上であることが好ましい。本発明においては、水溶性ポリマーとして、分子量1000以上のポリビニルピロリドンが特に好ましく用いられる。水の添加によりボイド径を調整でき、例えばポリマー溶液への水の添加量を増やすとボイド径を大きくすることが可能となる。ポリエーテルイミド系ポリマーの良溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、NMP/キシレン系混合溶媒、NMP/キシレン/メチルエチルケトン系混合溶媒、エチルアルコール/トルエン系混合溶媒等が挙げられ、使用するポリマーの化学骨格に応じて溶解性を有するものを使用することができる。
流延に付すポリマー溶液としては、多孔性フィルムを構成する素材となる高分子成分を7〜26重量%、水溶性ポリマーを13〜33重量%(特に17〜33重量%)溶解した混合溶液などが好ましい。上記組成のポリマー溶液によれば、機械的強度がより向上され、フィルム単体の取扱性が著しく改善された多孔性フィルムを形成することができる。
前記ポリマー溶液は、基材の主成分となるポリマー(高分子成分)の濃度が低すぎるとフィルムの強度が弱くなり、また高すぎると空孔率が小さくなる。該ポリマー溶液を構成する水溶性ポリマーは、フィルム内部を均質なスポンジ状の多孔構造にするために添加するが、この際に濃度が低すぎるとフィルム内部に10μmを超えるような巨大ボイドが発生し均質性が低下し、濃度が高すぎると溶解性が悪くなる。また、所望の空孔率を有する均質な微小孔を所望の空孔率で形成する観点で、ポリエーテルイミド(a)と水溶性ポリマー(b)との使用比率は重要である。ポリマー溶液に含まれるポリエーテルイミド(a)と水溶性ポリマー(b)との重量比は、例えば0.8≦(b)/(a)≦5.0、好ましくは1.0≦(b)/(a)≦4.0、より好ましくは1.1≦(b)/(a)≦3.0 の関係を満たしている。
ポリマー溶液を流延する基板としては、例えば、ガラス板;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、その他の樹脂からなるプラスチックシート;ステンレス板、アルミニウム板等の金属板などが挙げられる。なお、表面素材と内部素材とを違うもので組み合わせた複合板でもよい。
前記ポリマー溶液をフィルム状に流延する際の好ましい条件としては、相対湿度70〜100%、温度30〜80℃であり、特に好ましい条件は、相対湿度約100%(例えば、95〜100%)、温度40〜70℃である。空気中の水分量がこれよりも少ない場合は、表面の開孔率が充分でなくなる不具合がある。
ポリマー溶液をフィルム状に流延する際に、該フィルムを相対湿度70〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2〜15分間保持した後、高分子成分の非溶剤からなる凝固液に導くのが望ましい。流延後のフィルムを上記条件におくことにより、特に、該フィルムの空気側表面の開孔率を向上させることができる。開孔率が向上する理由としては、加湿下に置くことにより水分がフィルム表面から内部へと侵入し、ポリマー溶液の相分離を効率的に促進するためと考えられる。
相転換法に用いる凝固液としては、高分子成分を凝固させる溶剤であればよく、高分子成分として使用するポリマーの種類によって適宜選択されるが、例えば、ポリエーテルイミド系ポリマーを凝固させる溶剤であればよく、例えば、水;メタノール、エタノール等の1価アルコール、グリセリン等の多価アルコールなどのアルコール;ポリエチレングリコール等の水溶性高分子;これらの混合物などの水溶性凝固液などが使用できる。
好ましい態様としては、例えば、ポリエーテルイミド系ポリマー7〜26重量%、水溶性ポリマー10〜50重量%、及び残部がポリエーテルイミド系ポリマーの良溶媒からなるポリマー溶液をフィルム状に流延する際に、該フィルムを相対湿度70〜100%、温度15〜90℃からなる雰囲気下に0.2〜15分間保持した後、ポリエーテルイミド系ポリマーの非溶剤を含む水溶性凝固液に導く(あるいは接触させる)ことが挙げられる。
凝固液に導かれて析出したフィルムは、基材上でそのまま乾燥に付すことも可能であるが、本発明では、凝固液に導いたフィルムを基材から支持体上へ転写して乾燥に付すことが好ましい。このような工程によれば、基材上で乾燥して得たフィルム場合と比較して乾燥速度が早いため、効率よく多孔性フィルムを得ることができ好ましい。前記支持体としては、凝固液耐性を有する材質からなり、フィルムと接触する側の表面に微小孔が多数存在しているもの、特に凝固溶媒を適切な速度で透過することができる程度の透過性を有するものが好ましい。このような支持体は、例えば、透気度が1000秒/100cc未満(好ましくは100秒/100cc未満)、膜厚が5〜1000μm(好ましくは50〜500μm)、フィルム断面方向に貫通した0.01〜10μm(好ましくは0.03〜1μm)の孔が十分な密度で分散している。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロース、テフロン(登録商標)などを材料とした不織布或いは多孔膜などが利用できる。
上記方法によれば、例えば、連通性を有する微小孔が多数存在するポリエーテルイミド系ポリマーで構成された多孔性フィルムであって、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであって、該多孔性フィルムの一方の面側の微小孔の平均孔径φAと他の面側の微小孔の平均孔径φBとが、0.1≦φA/φB≦10 の関係を満たし、且つ空孔率が30〜80%である多孔性フィルムを製造できる。
また、本発明の多孔性フィルムは、吸液性に優れるという特徴も有している。一般に、吸液性に優れる多孔性フィルムの表面は、非常に低い接触角を有していることが知られている。本発明の多孔性フィルムは、例えば、該フィルム表面に、粘度0.00001〜1Pa・sの溶液1μlを滴下して接触角の変化を測定した場合に、1000sec以内の接触角が60°以下、好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下である。
また、上記と同様の方法に従い、本発明の多孔性フィルムの接触角の変化を測定した場合、100sec経過時の接触角θ100と、1000sec後の接触角θ1000としたときに、θ1000/θ100<0.9であることが好ましい。より好ましくは、θ1000/θ100 0.85、特に0.7以下である。さらに、本発明の多孔性フィルムは、θ1000/θ100が0.9未満であって、なおかつ、θ1000が60°以下であることが好ましい。θ1000は、好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下である。
本発明の多孔性フィルムは、上記のような吸液特性を有しているため、該表面に導体配線を印刷法により形成した場合にインク等が吸収されやすい。そのため、配線との密着性に優れ、またインク等が表面で拡散して線がにじみにくく、微細配線を形成しやすい点で有利である。
本発明における被処理多孔性フィルムの微小孔の径、空孔率、透気度、開孔率は、上記のように、用いる基板、ポリマー溶液の構成成分の種類や量、水の使用量、流延時の湿度、温度及び時間などを適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
こうして得られた多孔性フィルムには、所望の特性を付与するため、必要に応じて熱処理や被膜形成処理を施してもよい。
多孔性フィルムの実際の使用に当たっては、最終的に、機械的強度に優れていること以外にも、耐熱性、耐薬品性、柔軟性、硬度、色、製造容易性、孔径、空孔率、多孔構造、価格、強度、化学的性質(親水性、親有機溶剤性)等、多様な要求があり、それら全てをバランスよく満足するものでなければならない。本発明の多孔性フィルムは上記観点から広範な用途に好適である。特に、フィルム単体で取り扱うことができるため、作業性、生産性を向上することも可能である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。これらの結果を表1に示す。
[透気度]
YOSHIMITSU社製のGurley's Densometerを用い、JIS P8117に準じて測定した。但し、測定面積が標準の1/10の装置を使用したので、JIS P8117の付属書1に準じて標準のガーレー値に換算して求めた。
[表面の平均孔径]
電子顕微鏡写真から、フィルム表面の任意の30点以上の孔についてその面積を測定しまずその平均値を平均孔面積Saveとした。次に、次式からその孔が真円であると仮定した時の孔径に換算し、その値を平均孔径とした。ここでπは円周率を表す。
表面の平均孔径=2×(Save/π)1/2
[表面の平均開孔率]
表面の平均開孔率は、フィルム表面の電子顕微鏡写真から、任意の20×20μmの面積を選び、その中に存在する孔の合計面積が全体に占める比率を算出した。この操作を任意の5箇所について実施し平均値を求めた。
[内部の平均開孔率(=空孔率)]
フィルムの内部の平均開孔率は次式より求めた。ここでVはフィルムの体積、Wはフィルムの重量、ρはフィルム素材の密度であり、ポリエーテルイミドの密度は1.3(g/cm)とした。
内部の平均開孔率(%)=100−100×W/(ρ・V)
なお、上記評価方法における平均孔径、最大孔径、及び平均開孔率は、電子顕微鏡写真の最も手前に見えている微小孔のみを対象として求められており、写真奥に見えている微小孔は対象外とした。
[接触角の測定]
接触角の測定には協和界面科学(株)製の接触角測定装置「Drop Master700」を使用した。1μlの試験液をフィルム表面に滴下し、液滴の接触角と液滴半径を測定した(図2参照)。実施例1で得られたPEI多孔性フィルム(空気側表面)に、(i)蒸留水(表面張力73dyne/cm)、(ii)トルエン(表面張力28.4dyne/cm)、(iii)ブチルカルビトールアセテート(表面張力29.9dyne/cm/20℃)、(iv)高粘度水溶液A[蒸留水に0.5重量%のアーネストガム(ダイセル化学工業(株)製のカルボキシメチルセルロース樹脂)が添加された水溶液]、(v)高粘度水溶液B[蒸留水に2.0重量%のアーネストガム(ダイセル化学工業(株)製のカルボキシメチルセルロース樹脂)が添加された水溶液]をそれぞれ滴下した場合の、滴下後の経過時間と接触角θとの関係を図3に示す。さらに、前記(i)〜(v)の液体の物性と、滴下後100sec及び1000sec経過時点の接触角を表2に示す。
実施例1
ポリエーテルイミド系樹脂として、前記式(A)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマー[日本GEプラスチックス(株)製の商品名「ULTEM 1000」]を17重量%、ポリビニルピロリドン(分子量5.5万:水溶性ポリマー)を17重量%になるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約30μmとなるようにギャップを調整して、ポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム基材上に塗布(キャスト)した。
キャストしたフィルムを25℃、100%RHの雰囲気中下、10秒間保持した後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、ポリプロピレン(PP)製不織布(支持体:透気度1秒/100cc未満、膜厚260μm)を用い、この支持体上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は250MPaであった。膜構造を観察したところ、空気側表面の微小孔の平均孔径φAは3.2μm、基材側表面の平均孔径φBは3.5μm、φA/φB=0.91であり、表裏均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。さらにフィルムの表面及び断面を電子顕微鏡写真(SEM)を観察したところ、図1に示すように、フィルムの空気側表面(イ)及び基材側表面(ロ)は共に均一な孔径を有する微小孔が分散して形成されており、内部(ハ)はほぼ均質で、全域に亘って連通性を持つ微小孔が存在していた。フィルムの空孔率は60%であった。このように、強度が高く、均質な孔を有する多孔質膜が得られた。
実施例2
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例1と同様)を15重量%、ポリビニルピロリドン(実施例1と同様)を23重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整して、PETフィルム基材上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で10秒間保持した後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は120MPaであった。膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径φAは0.8μm、裏面(基材側)平均孔径φBは0.8μmであり、φA/φB=1であり、表裏均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は80%であった。このように、強度が高く、均質な孔を有する多孔質膜が得られた。
実施例3
ポリエーテルイミド系樹脂としてポリエーテル系ポリマー[日本GEプラスチックス(株)製の商品名「ULTEM XH6050」]を15重量%、ポリビニルピロリドン(実施例1と同様)を23重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、80%RH雰囲気下で40秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は160MPaであり、膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径φAは0.7μm、裏面(基材側)平均孔径φBは0.9μmであり、φA/φB=0.78であり、表裏均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は72%であった。このように、強度が高く、均質な孔を有する多孔質膜が得られた。
実施例4
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例3と同様)を13重量%、ポリビニルピロリドン(分子量1万)を33重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約70μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、80%RH雰囲気下で30秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は250MPaであり、膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径φAは0.5μm、裏面(基材側)平均孔径φBは0.4μmであり、φA/φB=1.25であり、表裏均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は70%であった。このように、強度が高く、均質な孔を有する多孔質膜が得られた。
実施例5
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例3と同様)を21重量%、ポリビニルピロリドン(分子量5.5万)を17重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で30秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は500MPaであった。膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径φAは1.2μm、裏面(基材側)平均孔径φBは1.3μmであり、φA/φB=0.92であり、表裏均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は64%であった。このように、強度が高く、均質な孔を有する多孔質膜が得られた。
実施例6
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例3と同様)を13重量%、ポリビニルピロリドン(分子量13万)を13重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で30秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は170MPaであった。膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径φAは5.5μm、裏面(基材側)平均孔径φBは7.1μmであり、φA/φB=0.77であり、表裏均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は66%であった。このように、強度が高く、均質な孔を有する多孔質膜が得られた。
実施例7
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例1と同様)を13重量%、ポリビニルピロリドン(分子量5.5万)を13重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で30秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は470MPaであった。膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径はφA=0.8μm、裏面(基材側)平均孔径φB=2.1μmであり、φA/φB=0.38であり、表裏均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は66%であった。このように、強度が高く、均質な孔を有する多孔質膜が得られた。
比較例1
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例1と同様)を20重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を、フィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で10秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は720MPaであった。膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径はみられず、裏面(基材側)平均孔径φBは0.5μmであり、表裏不均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は50%であった。強度は高いものの、均質な孔を有する膜は得られなかった。
比較例2
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例1と同様)を13重量%、ポリビニルピロリドン(分子量5.5万)を9重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液をフィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で10秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させた。次いで、PP製不織布(実施例1と同様)上にフィルムを転写、支持体ごと乾燥することによって多孔性フィルムを得た。
得られたフィルムの引張弾性率は540MPaであり、膜構造を観察したところ、表面に存在する孔の平均孔径はみられず、裏面(基材側)平均孔径φBは3.2μmであり、表裏不均一な孔径を有するフィルムであることが確認された。フィルムの空孔率は54%であった。強度は高いものの、均質な孔を有する膜は得られなかった。
比較例3
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例1と同様)を27重量%、ポリビニルピロリドン(分子量5.5万)を23重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液をフィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で10秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させたが溶解し、フィルムが得られなかった。
比較例4
ポリエーテルイミド系樹脂(実施例1と同様)を4重量%、ポリビニルピロリドン(分子量5.5万)を23重量%になるようにNMPに溶解してポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液をフィルムアプリケーターを使用して乾燥後の厚みが約50μmとなるようにギャップを調整し、基材のPETフィルム上にキャストした。
キャストしたフィルムを50℃、100%RH雰囲気下で10秒間保持した。その後、水中に浸漬して凝固させたが溶解し、フィルムが得られなかった。
(イ)は実施例1で得た多孔性フィルムの空気側表面、(ロ)は基材側表面、(ハ)は断面の電子顕微鏡写真(SEM)である。 接触角及び液滴半径の説明図である。 実施例1で得られたPEI多孔性フィルム表面(空気側表面)に、各種液体を滴下した場合の、滴下後の経過時間と接触角との関係を示すグラフである。

Claims (12)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmであって、該多孔性フィルムの一方の面側の微小孔の平均孔径φAと他の面側の微小孔の平均孔径φBとが、0.1≦φA/φB≦10 の関係を満たし、且つ空孔率が30〜80%である多孔性フィルム。
    (式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なって、芳香族炭化水素環を含む2価の有機基を示す)
  2. 多孔性フィルムの引張弾性率が50MPa以上1000MPa未満である請求項1記載の多孔性フィルム。
  3. 多孔性フィルムの厚みが5〜200μmである請求項1又は2記載の多孔性フィルム。
  4. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該多孔質フィルム表面に粘度0.00001〜1Pa・sの溶液1μlを滴下した後、1000sec以内の接触角が60°以下である多孔性フィルム。
    (式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なって、芳香族炭化水素環を含む2価の有機基を示す)
  5. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエーテルイミド系ポリマーを主体とした素材からなり、連通性を有する微小孔が多数存在する多孔性フィルムであって、該多孔質フィルム表面に粘度0.00001〜1Pa・sの溶液1μlを滴下し、100sec後の接触角θ100と、1000sec後の接触角θ1000としたときに、θ1000/θ100<0.9である多孔性フィルム。
    (式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なって、芳香族炭化水素環を含む2価の有機基を示す)
  6. θ1000が60°以下である請求項記載の多孔性フィルム。
  7. ポリエーテルイミド系樹脂を7〜26重量%、及び水溶性ポリマーを13〜33重量%溶解したポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延し、相転換法により請求項1〜の何れかの項に記載の多孔性フィルムを得る多孔性フィルムの製造方法。
  8. ポリエーテルイミド系樹脂を7〜26重量%、及び水溶性ポリマーを17〜33重量%溶解したポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延し、相転換法により請求項1〜の何れかの項に記載の多孔性フィルムを得る多孔性フィルムの製造方法。
  9. ポリマー溶液に含まれるポリエーテルイミド系樹脂(a)と水溶性ポリマー(b)の重量比が、0.8≦(b)/(a)≦5.0 の関係を満たす請求項記載の多孔性フィルムの製造方法。
  10. ポリエーテルイミド系樹脂及び水溶性ポリマーからなるポリマー溶液を基板上へフィルム状に流延し、加湿下で相分離を行った後、凝固液に導くことにより、請求項1〜の何れかの項に記載の多孔性フィルムを得る多孔性フィルムの製造方法。
  11. さらに、凝固液に導いたフィルムを基材から支持体上へ転写して乾燥に付す請求項1記載の多孔性フィルムの製造方法。
  12. 支持体が、凝固液耐性を有する材質からなり、フィルムと接触する側の表面に微小孔が多数存在している請求項1記載の多孔性フィルムの製造方法。
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