以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの概略平面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、4つのインクジェットヘッド2を備えたカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構11が、図1中右方に排紙部12が、それぞれ構成されている。また、本発明に係るメンテナンス機構が、図1中のインクジェットヘッド2に隠れる形で紙面裏側に配設されている。
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙機構11から排紙部12に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構11には、用紙トレイ21内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ22が設けられている。ピックアップローラ22がモータ132(図9参照)によって駆動されると、用紙は図1中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ6,7と、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とが配置されている。このうち、ベルトローラ6には、搬送モータ133(図9参照)から駆動力が与えられて、図1中時計回り(矢印A方向)に回転される。これら2つのベルトローラ6,7及び搬送ベルト8によって用紙を搬送する搬送手段が構成されている。搬送ベルト8の外周面、すなわち搬送面8aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構11のすぐ下流側には、搬送ベルト8と対向する位置に押さえローラ5が配置されており、給紙機構11から送り出された用紙を搬送ベルト8の搬送面8aに押さえ付けている。これにより、搬送面8aに押さえ付けられて搬送面8aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって用紙が搬送される。
用紙搬送経路に沿って搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離部材13が設けられている。剥離部材13は、搬送ベルト8の搬送面8aに保持されている用紙を搬送面8aから剥離して、右方の排紙部12へ向けて送るように構成されている。
搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置、つまり上側にある搬送ベルト8の下面と接触することによって内周側からこれを支持するほぼ直方体形状のプラテン9が配置されている。
4つのインクジェットヘッド2は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応して、用紙搬送方向(図2中下方から上方に向かう方向)Bに沿って4つ並べて設けられている。つまり、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。インクジェットヘッド2は、図2に示すように、長手方向が用紙搬送方向Bに直交した方向に配置され、細長い長方形形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、図1及び図3に示すように、ヘッド本体(圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体)3を有している。ヘッド本体3の上面には、インクを一時的に貯溜するリザーバユニット10が固定されており、その内部にはインク溜まりが形成されている。インク溜まりには、チューブジョイント10aから供給されたインクが貯溜される。このリザーバユニット10は、ヘッド本体3よりも長く、その長手方向(用紙搬送方向Bと直交方向)両側に飛び出て形成されている。飛び出た部分は、後述のフレーム4への固定しろとなっている。一方、ヘッド本体3の底面は、搬送面8aと対向するインク吐出面3aとなっており、微小径のノズル(インク吐出口)が多数並べて形成されている。
なお、チューブジョイント10aは、ポンプ134(図9参照)を介してインクタンク(不図示)とチューブで接続されている。通常の画像形成時には、この経路を辿ってインクタンクからインクがヘッド本体3に供給される。このとき、ポンプ134は、その内部をインクが流通可能となっており、このインク流路の一部を構成している。インクジェットヘッド2へのインク初期導入及びパージを行うときには、ポンプ134が駆動される。これにより、インクがインクジェットヘッド2側に強制的に送られる。
ヘッド本体3は、インク吐出面3aと搬送ベルト8の搬送面8aとが平行となり、且つこれらの面の間に少量の隙間が形成されるように配置されている。この隙間部分が用紙搬送経路の一部として構成されている。この構成で、搬送ベルト8上を搬送される用紙が4つのヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズル3bから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像を形成できるようになっている。つまり、搬送面8aと4つのインク吐出面3aが対向する領域が、用紙に画像が形成される画像形成領域となっている。
また、4つのインクジェットヘッド2は、図2及び図3に示すように、用紙搬送方向Bに沿って互いに隣接配置された状態で、枠状のフレーム4に固定されている。フレーム4は、図3に示すように、リザーバユニット10を支持する支持部4aを有している。支持部4aは、リザーバユニット10がフレーム4に固定されるとき、リザーバユニット10の長手方向両端部と対向する位置まで内側に向かって突出している。そして、支持部4aとリザーバユニット10の両端部とがネジ50で固定されている。また、インク吐出面3aが、図3に示すように、フレーム4(支持部4a)の底面とほぼ同じ高さでフレーム4の開口から露出される。
また、フレーム4は、プリンタ1に設けられたフレーム移動機構51により、上下に移動可能に支持されている。フレーム移動機構51は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド2の並びの前後に配設されている。各フレーム移動機構51は、フレーム4を上下動する駆動源としての駆動モータ52と、各駆動モータ52の軸に固定されたピニオンギヤ53と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにフレーム4に立設されたラックギヤ54と、ピニオンギヤ53とでラックギヤ54を挟む位置に配置されたガイド56とを含んでいる。2つの駆動モータ52は、インクジェットプリンタ1の本体フレーム1aにそれぞれ固定されている。本体フレーム1aは、用紙搬送方向に関して互いに対向して配置され、フレーム4が前後から挟まれている。2つのラックギヤ54は、上下方向に延在しており、下端部がフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。また、ラックギヤ54のピニオンギヤ53とは反対側の側面は、ガイド56と摺動可能に接している。ガイド56は、本体フレーム1aに固定されている。この構成において、2つの駆動モータ52を同調させて各ピニオンギヤ53を正及び逆方向に回転させると、ラックギヤ54が上下方向に移動する。このラックギヤ54の上下動に伴ってフレーム4及び4つのインクジェットヘッド2が上下方向に移動する。
また、ガイド部が、インクジェットヘッド2の長手方向の両側に配設されている。各ガイド部は、棒状部材58とこれを挟む一対のガイド57とから構成されている。このうち、一対のガイド57は、図3に示すように上下方向に延在し、用紙搬送方向Bと直交する方向に関して、互いに対向する本体フレーム1bにそれぞれ固定されている。一方、棒状部材58は、ガイド57と同様に上下方向に延在し、本体フレーム1bと平行に対向配置されたフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。棒状部材58は、一対のガイド57間にそれぞれ摺動可能に配置されている。このガイド部により、フレーム移動機構51がフレーム4を上下方向に移動したときに、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが搬送面8aに対して傾くのを防ぐことができる。つまり、フレーム移動機構51でフレーム4及びインクジェットヘッド2を上下方向に移動させても、インク吐出面3aは対向する搬送面8aと常に平行となる。その結果、印刷時において、用紙に対するインクの着弾精度が向上する。
通常、フレーム4は、4つのインクジェットヘッド2が用紙に対してインクを吐出し印刷する印刷位置(図3に示す位置)に配置されており、インクジェットヘッド2のメンテナンス時(本実施形態ではインクを強制的に吐出してパージをするとき、インク吐出面3aに付着したインクを拭き取るとき及びインク吐出面3aをキャップで覆うとき)にだけ、フレーム移動機構51によって4つのインクジェットヘッド2が移動されて、印刷位置よりも上方(ヘッドメンテナンス位置)に配置される。
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70について説明する。図4は、図2に示すメンテナンスユニット70の断面図である。インクジェットプリンタ1には、図2及び図3に示すように、通常の印字中には、メンテナンスユニット70がヘッド本体3(インクジェットヘッド2)の左側に配置されている。メンテナンスユニット70は、図3及び図4に示すように、水平移動可能な2つのフレーム71,75を有している。このうち、フレーム71は、図2及び図3に示すように、上方に開口したほぼ方形の箱形形状を有し、フレーム75を内包可能に構成されている。フレーム71とフレーム75とは、後述の係合手段(係合部)によって着脱可能に結合されている。両者は、メンテナンス処理の内容に応じて着脱される。フレーム71は、インクジェットヘッド2とは反対側の側面が開放されており、例えばパージ動作時のように両者の係合が解かれているとき、内包するフレーム75を残して、フレーム71のみが移動可能となる。また、係合部の係合状態に係わらず、メンテナンスユニット70が後述のように水平移動する際には、予めフレーム4が上方(図3中矢印C方向)のメンテナンス位置まで移動され、4つのインク吐出面3aと搬送面8aとの間にメンテナンスユニット70用のスペースが確保される。この後、メンテナンスユニット70が、図3中矢印D方向に水平移動されることになる。また、メンテナンスユニット70のすぐ下方には、廃インク受け部材77が配置されている。この廃インク受け部材77は、平面視でフレーム71を内包するサイズを有し、フレーム71が図2において右端まで移動したときでも、フレーム71のインクジェットヘッド2と反対側の辺縁部が重なる形状を有している。廃インク受け部材77のインクジェットヘッド2側の端部には、上下方向に貫通したインク排出孔77aが形成されている。インク排出孔77aは、廃インク受け部材77上に流れ込んだインクを図示しない廃インク溜めに流通させる。
フレーム71内には、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72、インク受け取り部材73及びフレーム75が配置されている。いずれも、用紙搬送方向と平行に配設されている。フレーム75内には、図2に示すように、各インクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対応して、矩形平面形状を有した4つのキャップ76が並べて設けられている。各キャップ76は、その長手方向をインクジェットヘッド2の長手方向に平行とされ、用紙搬送方向にインクジェットヘッド2と同じピッチで配置されている。キャップ76は、図4に示すように、その底部76bから上方に突出した環状突起76aを有している。つまり、キャップ76は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、密閉空間を形成する凹部として形成されている。このようにキャップ76は、インク吐出面3aを覆うことが可能となっており、ノズル内のインクの乾燥を防止することができる。また、キャップ76は、ゴムなどの弾性材料で構成されている。そのため、インク吐出面3aと環状突起76aとが密着しやすくなり、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときにキャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内の気密性が向上する。
また、各キャップ76は、2つのバネ88によってフレーム75の支持面75b(底面)支持されている。2つのバネ88は、キャップ76の底部76bと支持面75bとの間に挟まれて、キャップ76をフレーム75から離れる方向に常に付勢している。逆に、キャップ76が2つのバネ78によって支持されていることで、キャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、バネ78がその衝撃力を緩和する。したがって、環状突起76aによってインク吐出面3aに傷が付きにくくなる。さらに、インク吐出面3aに対するキャップ76の平行度に多少誤差が生じていても、インク吐出面3aに対する傾きにキャップ76が追従することが可能となる。そのため、キャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内を密閉空間とすることができる。
フレーム71のインクジェットヘッド2側には、図2に示すように、ワイパー72及びインク受け取り部材73が保持された保持部材74が固定されている。保持部材74は、平面形状がコ型形状となっており、図4に示すように、保持部材74の用紙搬送方向Bに沿う部分にワイパー72及びインク受け取り部材73が保持されている。一方、保持部材74の用紙搬送方向Bと直交する方向に延在した部分の端部には、係合部を構成する凹部74aが形成されている。
インク受け取り部材73は、図2及び図4に示すように、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅よりも若干長い複数の薄板73aを備えている。各薄板73aは、インクに対する毛管力に合わせた間隔で互いに平行に配置されている。各薄板73aは、ステンレス製である。ワイパー72は、薄板73aと同様に、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅より若干長く、その長手方向が用紙搬送方向Bに平行となるように配置されている。ワイパー72は、ゴムなどの弾性材料からなる。
フレーム71とフレーム75とは、上述したように係合部によって着脱可能に係合されている。図2に示すように、係合部は、フレーム71,75の図中上下の各辺近傍にそれぞれ設置され、主には、フレーム71の保持部材74に設けられた凹部74aと、フレーム75に回動可能に支持された引っ掛け部材83とから構成されている。凹部74aは、フレーム71のインクジェット2側の端部付近(保持部材74のインクジェットヘッド2と反対側端部付近)に位置している。引っ掛け部材83は、用紙搬送方向Bと直交する方向に延在しており、その中央部において支持面75aに設けられた2つのフランジによって回動可能に支持されている。また、引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2側の端部には、凹部74aに係合する引っ掛け部83aが形成されている。メンテナンスユニット70の上方には、各引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2と最も離れた端部83bに当接可能な当接部材84がそれぞれ回動可能に支持されている。
当接部材84のインクジェットヘッド2と最も離れた端部84aは、伸縮可能なシリンダ85(図9参照)と連結されており、図3に示す状態からシリンダ85が縮むと当接部材84が時計回りに回動し、当接部材84のインクジェットヘッド2に最も近い端部84bが引っ掛け部材83の端部83bに当接する。これによって、引っ掛け部材83が反時計回りに回動し、引っ掛け部83aと凹部74aとの係合が解除される。一方、シリンダ85が伸びると当接部材84が反時計回りに回動し、引っ掛け部材83の端部83bから当接部材84が離隔する。すると、引っ掛け部83が時計回りに回動し、引っ掛け部83aが凹部74aと係合し、図3に示す状態に戻る。
メンテナンスユニット70は、後述のメンテナンスが行われないとき、図3に示すように、インクジェットヘッド2から離れた「退避位置」(図2において、インクジェットヘッド2と対向しない左側位置)にて静止している。そして、メンテナンスが行われるときに、この退避位置からメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対向した「メンテナンス位置」へ水平移動される。このとき、インクジェットヘッド2はヘッドメンテナンス位置に配置されているので、ワイパー72や環状突起76aの先端が、インク吐出面3aに接触しない。さらに、インク受け取り部材73は、ワイパー72がインク吐出面3aに当接した状態において、インク吐出面3aとの間に僅かな隙間(例えば、0.5mm)が常に形成されるようになっている。
なお、メンテナンスでもパージ動作時には、フレーム75は残してフレーム71だけが待機位置から移動され、インク吐出面3aをキャップ76で覆うときには、フレーム71とフレーム75が係合されて、メンテナンス位置に移動されることになる。各フレーム71,75は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交する方向に延びた一対のガイド軸96a,96bに移動可能に支持されている。フレーム71には、2つの軸受け部材97a,97bが設けられており、保持部材74の上下両側面から突出している。フレーム75には、2つの軸受け部材98a,98bが設けられており、フレーム75の上下両側面から突出している。ガイド軸96a,96bは、フレーム71の上下両側縁部に対向して配置されており、このうちガイド軸96aには軸受け部材97a,98aが、ガイド軸96bには軸受け部材97b,98bがそれぞれ支持されている。また、一対のガイド軸96a,96bは、それぞれの両端が本体フレーム1b,1dに固定されており、両フレーム1b,1d間に互いに平行に配置されている。ここでは、それぞれネジで固定されている。このような構成で、各フレーム71,75がこのガイド軸96a,96bに沿って図中左右方向に移動される。
ここで、フレーム71,75を水平移動させる水平移動機構(第1移動機構)91について説明する。水平移動機構91は、図2に示すように、モータ92、モータプーリ93、アイドルプーリ94、タイミングベルト95、及び、ガイド軸96a,96b等を有する。モータ92は、用紙搬送方向Bに平行に延びる本体フレーム1bの端部に取り付けられている。図2中右側の本体フレーム1b端部には、インクジェットヘッド2の長手方向に平行に延びる取り付け部1cが設けられており、モータ92がネジなどで固定されている。モータプーリ93は、モータ92に接続されており、モータ92の駆動に伴って回転する。アイドルプーリ94は、図2中最も左側の本体フレーム1dに回転可能に支持されている。タイミングベルト95は、ガイド軸96aと平行に配設され、モータプーリ93とこれと対になったアイドルプーリ94との間に架け渡されるように巻回されている。また、タイミングベルト95は、保持部材74に設けられた軸受け部材97aが接続されている。
この構成において、モータ92を駆動すると、モータプーリ93が正又は逆方向に回転するに伴ってタイミングベルト95が走行する。このタイミングベルト95の走行により、タイミングベルト95に軸受け部97aを介して接続されたフレーム71が、図2左又は右方向に、即ち退避位置又はメンテナンス位置に向かう方向に移動する。なお、保持部材74の凹部74aと引っ掛け部83aとが係合しているときは、フレーム71内のワイパー72及びインク受け取り部材73と、フレーム75内のキャップ76とが一緒にメンテナンス位置又は退避位置に移動する。一方、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔しているときは、フレーム71内のワイパー72及びインク受け取り部材74がメンテナンス位置又は退避位置に移動する。
次に、メンテナンスユニット70を覆うカバー60について以下に説明する。図5は、図2に示すカバー60及びその近傍の拡大平面図である。図6は、図5に示すVI−VI線に沿った断面図である。図7及び図8は、図5に示すカバー60内に気流を発生させる気流発生機構の模式図である。このうち、図7は、カバー60内に矢印E方向の気流を発生させるときの切替弁の状況図である。図8は、カバー60内に矢印F方向の気流を発生させるときの切替弁の状況図である。カバー60は、図2及び図3に示すように、退避位置にあってメンテナンスユニット70の上方に設けられている。カバー60は、平面形状が長方形の天井部60aと、この天井部60aから下方に延びた外周側壁部60b〜60eとを有し、全体として、メンテナンスユニット70に向かって開口する箱状に形成されている。カバー60は、図3、図5及び図6に示すように、矢印D方向に長手方向を持つ。また、カバー60の外周側壁60d,60eの保持部材74と対向する部分には、図6に示すように、凹部69が形成されており、カバー60がキャップ76、ワイパー72及びインク受け取り部材73を覆ったときに、保持部材74と外周側壁60d,60eが接触しないようになっている。
カバー60内には、図6に示すように、複数の可撓性針状材61,62を有するブラシ63が設けられている。ブラシ63は、矢印D方向に延在した基部64を有している。ブラシ63は、平面視で細長形状を有し、外周側面60b,60c間に亘って延在している。また、ブラシ63は、3つの領域に区画されており、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72と対向する領域、インク受け取り部材73と対向する領域及び4つのキャップ76と対向する領域から構成されている。ワイパー72と対向する領域とインク受け取り部材73と対向する領域との間には、後述の突出部65が配設されている。基部64において、4つのキャップ76と対向する領域には、複数の可撓性針状材61が、基部64の下面から下方に向かって延びている。各可撓性針状材61は、矢印D方向に沿って配列されている。さらに、各可撓性針状材61は、図3に示すように、カバー60でキャップ76を覆ったときに、キャップ76の環状突起76aと当接するような長さに形成されている。なお、ブラシ63が、図5中矢印E方向(環状突起76aの突出方向及び矢印D方向と直交する方向:一方向)に移動すると、複数の可撓性針状材61が4つのキャップ76のいずれかと部分的に対向することになる。
また、基部64において、ワイパー72と対向する領域には、一対の突出部65が、基部64の下面から下方に向かって延びている。突出部65の先端部には、図6に示すように、別の複数の可撓性針状材62が、互いに対向する面から図中左右方向に延びている。各可撓性針状材62は、それぞれの先端部がほとんど接触するように配置されている。なお、複数の可撓性針状材62は、図3に示すように、カバー60でキャップ76を覆ったときに、ワイパー72を挟み込むことになる。本実施形態では、基部64において、インク受け取り部材73を覆う領域は空間となっており、カバー60でキャップ76を覆ったときには、インク受け取り部材73がこの空間内に収容されることになる。
次に、ブラシ63を、図5中矢印E方向に平行移動させるブラシ移動機構(第2移動機構)40について説明する。ブラシ移動機構40は、カバー60に設けられた移動機構である。ブラシ移動機構40は、モータ41と、モータプーリ42と、2つのアイドルプーリ43a,43bと、タイミングベルト44とを有し、ブラシ63を支持する一対のガイド66を含んでいる。モータ41は、天井部60aのインクジェットヘッド2とは最も離れた端部中央に固定されている。モータプーリ42は、モータ41に接続されている。2つのアイドルプーリ43a,43bは、外周側壁60d,60eのインクジェットヘッド2とは最も離れた端部上端にそれぞれ回転可能に固定されている。タイミングベルト44は、2つのアイドルプーリ43a,43b間に架け渡され、それらの中間においてモータプーリ42に架け渡されるように巻回されている。また、タイミングベルト44は、外周側壁60d,60eの端部上端近傍にそれぞれ形成された貫通孔68を通っている。つまり、タイミングベルト44は、半分がカバー60内を通過し残りの半分がカバー60の天井部60aの上方を通過している。また、基部64の矢印D方向両端部には、一対のガイド66が配設されている。このガイド66は、図5に示すように、外周側壁60d,60e間に図中矢印E方向に架け渡されている。基部64の両端部は、このガイド66に摺動可能に支持されており、さらに、基部64のインクジェットヘッド2と反対側の端部がタイミングベルト44に接続されている。
この構成において、モータ41を駆動すると、モータプーリ42が正又は逆方向に回転するに伴ってタイミングベルト44が走行する。このタイミングベルト44の走行により、タイミングベルト44に接続されたブラシ63が、図5中矢印E方向又はE方向と反対となるF方向に移動する。本実施形態においては、モータプーリ42が正方向に回転すると、ブラシ63がE方向に移動し、モータプーリ42が逆方向に回転すると、ブラシ63がF方向に移動する。つまり、ブラシ63は往復移動可能となっている。
なお、ブラシ63は、図5に示すように、ブラシ63が外周側壁60dに最も近づいたときに、基部64の外周側壁60e側の端部が外周側壁60dに最も近い環状突起76aと部分的に対向し、ブラシ63が外周側壁60eに最も近づいたときに、基部64の外周側壁60d側の端部が外周側壁60eに最も近い環状突起76aと部分的に対向する。また、ブラシ63は、カバー60がカバー退避位置にあるときに(後述する)、外周側壁60dに最も近づいた位置に配置されており、カバー60がカバー退避位置からカバー位置に移動したときに(後述する)、ブラシ63の可撓性針状材61が外周側壁60dに最も近い環状突起76aと部分的に当接する。また、ブラシ63の可撓性針状材62は、カバー60がカバー位置にあるときは、常にワイパー72と部分的に当接している。
次に、カバー60を上下移動するカバー移動機構(第3移動機構)80について説明する。カバー移動機構80は、図2、図3及び図5に示すように、用紙搬送方向に関して互いに対向する本体フレーム1eにそれぞれ設けられ、カバー60が両側のカバー移動機構80によって上下に移動可能に支持されている。カバー移動機構80は、本体フレーム1eに固定された駆動モータ86と、各駆動モータ86の軸に固定されたピニオンギヤ87と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにカバー60の外周側壁60d,60eにそれぞれ固定されたラックギヤ88と、ピニオンギヤ87とでラックギヤ88を挟む位置に配置されたガイド89とを含んでいる。ガイド89は、本体フレーム1eに固定されている。2つのラックギヤ88は、上下方向に延在している。また、ラックギヤ88のピニオンギヤ87とは反対側の側面は、ガイド89と摺動可能に接している。この構成において、2つの駆動モータ86を同調させて各ピニオンギヤ87を正又は逆方向に回転させると、ラックギヤ88が上下方向に移動する。このラックギヤ88の上下動に伴ってカバー60が上下方向に移動する。
通常、カバー60は、メンテナンスを行わないでメンテナンスユニット70が退避位置に静止しているときは、メンテナンスユニット70を覆う「カバー位置」(図3に示す位置)に配置されるように位置し、メンテナンスを行うときは、カバー移動機構80によって図3に示す位置よりも上方(カバー退避位置)に配置される。
本実施形態では、プリンタ1に気流発生機構30が設けられており、カバー60内に気流を発生する。気流発生機構30は、図7に示すように、気流発生手段としての送風機33、送風機33のエア出口に取り付けられたフィルタ34及び空気流路を切り替える2つの切替弁35,36を有し、送風機33(フィルタ34)と空気の流出口とを接続する複数の配管31a〜31d、32a〜32dを含んでいる。このうち、配管31a,32aは、それぞれカバー60の外周側壁60d,60eに固定され、それぞれ4つの流出口が形成されている。これらの流出口に対応して、外周側壁60d,60eには、図5及び図6に示すように、それぞれ4つの貫通孔47,48が形成されている。このうち、1対の貫通孔47,48が、ブラシ63のワイパー72と対向する領域に対応して形成され、他の貫通孔47,48とともに互いにほぼ等間隔に配置されている。一方の貫通孔が空気の流入口であり、他方の貫通孔が流出口である。
4つの貫通孔47と4つの貫通孔48とは、互いに対向して配置され、配管31aと配管32aとがそれぞれに接続されている。なお、配管31a,32aには、一端を切替弁35,36に接続した配管31b,32bがそれぞれ接続され、切替弁35,36には、一端をフィルタ34(送風機33)に接続した配管31c,32cがそれぞれ接続されている。このようにして、2つの空気流路が形成されている。1つの空気流路は、送風機33から配管31c、切替弁35、配管31b及び配管31aを順に介して4つの貫通孔47に至る。他の空気流路は、送風機33から配管32c、切替弁36、配管32b及び配管32aを順に介して4つの貫通孔48に至る。さらに、切替弁35は、バイパス用の配管32dによって配管32cに接続され、切替弁36は、バイパス用の配管31dによって配管31cに接続されている。このような構成において、切替弁35,36によって空気流路を切り替えることで、一方の貫通孔が空気の流入口となり、他方の貫通孔が流出口となる。
本実施形態において、送風機33は図7中矢印G方向にのみ空気を送ることが可能なものであるが、矢印G方向と反対方向に空気を送る送風機であってもよい。この場合、切替弁35,36及び配管31d,32dを設けなくてもよい。そのため、気流発生機構の構成が容易になる。加えて、カバー60内に空気を送ることで生じる気流方向が一方向のみの場合は、本実施形態の送風機33を採用してもよい。
この構成において、カバー60内に図7中矢印E方向に気流を発生させる場合は、図7に示すように、切替弁35を切り替えて、送風機33(エア出口)と貫通孔47とを連通する。同様に、切替弁36を切り替えて、貫通孔48と送風機(エア入口)とを連通する。これにより、送風機33とカバー60との間を一方向に流れる空気の循環路が形成される。このとき、切替弁35は配管32dを空気流路から遮断し、切替弁36は配管31dを空気流路から遮断している。そして、送風機33を駆動することで、フィルタ34を介した送風機33からの空気が配管31c、切替弁35、配管31b、配管31aを通って4つの貫通孔47からカバー60内供給されるとともに、送風機33のエア入口が配管32c、切替弁36、配管32b及び配管32aを介して貫通孔48と連通しているので、カバー60内の空気が貫通孔48から吸い出される。こうして、カバー60内に貫通孔47から貫通孔48に向かう、すなわち矢印E方向の気流がカバー60に形成される。
一方、カバー60内に図8中矢印F方向に気流を発生させる場合は、図8に示すように、切替弁35を切り替えて、配管31bを配管31cから切り離し、代わりに配管32dと連通させる。同様に、切替弁36を切り替えて、配管32bを配管32cから切り離し、代わりに配管31dと連通させる。これにより、送風機33とカバー60との間を他方向に流れる空気の循環路が形成される。このとき、切替弁35は配管31cを空気流路から遮断し、切替弁36は配管32cを空気流路から遮断している。そして、送風機33を駆動することで、フィルタ34を介した送風機33からの空気が配管31c、配管31d、切替弁36、配管32b、配管32aを通って4つの貫通孔48からカバー60内供給されるとともに、送風機33のエア入口が配管32c、配管32d、切替弁35、配管31b及び配管31aを介して貫通孔47と連通しているので、カバー60内の空気が貫通孔47から吸い出される。こうして、カバー60内に貫通孔48から貫通孔47に向かう、すなわち矢印F方向の気流がカバー60に形成される。
次に、インクジェットプリンタ1の制御系について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの制御構成を示す概略ブロック図である。インクジェットプリンタ1には、プリンタの各動作を制御する制御部101が設けられている。制御部101は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラム及び制御プログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)とで構成されており、図8に示すように、ヘッド制御部111と、搬送制御部112と、パージ制御部113と、カバー制御部114とを含んでいる。
ヘッド制御部111は、制御部101がPC(パーソナルコンピューター)100からの印刷データを受信したときに、ヘッド駆動回路121を制御して対応するインクジェットヘッド2からインクを吐出させる。
搬送制御部112は、制御部101がPC100からの印刷データを受信したときに、ピックアップローラ22を回転させ搬送ベルト8上に用紙を搬送するようにモータ132をモータドライバ122で制御するとともに、搬送モータ133を駆動して搬送ベルト8上の用紙を搬送するようにモータドライバ123を制御する。
パージ制御部113は、ポンプ制御部116と、ヘッド移動制御部117と、メンテナンスユニット移動制御部118とを有している。ポンプ制御部116は、制御部101がPC100からのパージ信号を受信したとき及びインクジェットヘッド2へのインク初期導入時に、ポンプ134を駆動して強制的にインクをインクジェットヘッド2へ送るようにポンプドライバ124を制御する。ヘッド移動制御部117は、制御部101がPC100からのパージ信号を受信したとき、インクジェットヘッド2へのインク初期導入時及びプリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、駆動モータ52を駆動して4つのインクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動するようにモータドライバ125を制御する。また、ヘッド移動制御部117は、インクジェットヘッド2に対するメンテナンス動作が終了したときに、駆動モータ52を駆動して4つのインクジェットヘッド2がヘッドメンテナンス位置から印刷位置に移動するようにモータドライバ125を制御する。
メンテナンスユニット移動制御部118は、制御部101がPC100からのパージ信号を受信したとき及びインクジェットヘッド2へのインク初期導入時に、シリンダ85を縮めて引っ掛け部83aの凹部74aに対する係合を解除するようにシリンダドライバ126を制御するとともに、モータ92を駆動してフレーム71がメンテナンス位置に移動するようにモータドライバ127を制御する。また、メンテナンスユニット移動制御部118は、インクジェットヘッド2からのパージ及びインク初期導入が終了すると、モータ92を駆動してフレーム71が退避位置に移動するようにモータドライバ127を制御するとともに、シリンダ85を伸ばして引っ掛け部83aを凹部74aに係合させるようにシリンダドライバ126を制御する。さらに、メンテナンスユニット移動制御部118は、プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、モータ92を駆動してフレーム71及びフレーム75がメンテナンス位置に移動するようにモータドライバ127を制御する。また、メンテナンスユニット移動制御部118は、制御部101がPC101からの印刷データを受信したときに、モータ92を駆動してフレーム71及びフレーム75が退避位置に移動するようにモータドライバ127を制御する。
カバー制御部114は、カバー移動制御部115と、気流制御部119と、ブラシ移動制御部120とを有している。カバー移動制御部115は、メンテナンスユニット70が退避位置で静止しているときに、駆動モータ86を駆動してカバー60をカバー位置に移動するようにモータドライバ128を制御する。また、カバー移動制御部115は、インクジェットヘッド2に対してメンテナンス動作が行われるときに、駆動モータ86を駆動してカバー60をカバー退避位置に移動するようにモータドライバ128を制御する。このように制御部101がカバー制御部114を含んでいることで、キャップ76及びワイパー72を覆うタイミングを容易に制御することができる。
ブラシ移動制御部120は、カバー60がカバー退避位置からカバー位置に移動した直後、及び、カバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動する直前に、モータ41を駆動してブラシ63を矢印E方向及び矢印F方向に移動させるようにモータドライバ130を制御する。気流制御部119は、ブラシ63が矢印E方向に移動するときに、切替弁35,36を図7に示すような状態に切り替えるように切替弁ドライバ135,136を制御するとともに、送風機33を駆動してフィルタ34によって濾過された空気が貫通孔47からカバー60内に供給されるように且つ貫通孔48からカバー60内の空気を吸引するように、送風機ドライバ129を制御する。また、気流制御部119は、ブラシ63が矢印F方向に移動するときに、切替弁35,36を図8に示すような状態に切り替えるように切替弁ドライバ135,136を制御するとともに、送風機33を駆動してフィルタ34によって濾過された空気が貫通孔48からカバー60内に供給されるように且つ貫通孔47からカバー60内の空気を吸引するように、送風機ドライバ129を制御する。
次に、メンテナンスユニット70のメンテナンス動作、カバー60の動作及びブラシ動作について図10〜図13を参照しつつ以下に説明する。図10は、インクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動したとき、及び、カバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動したときの状況図である。図11(a)はメンテナンスユニット70のフレーム71がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図11(b)はインク受け取り部材73及びワイパー72によりインク吐出面3aに付着したインクを払拭しているときの状況図である。図12(a)はメンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図12(b)はキャップ76がインク吐出面3aを覆っているときの状況図である。図13(a)はカバー60がカバー位置にあるときの状況図であり、図13(b)はカバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動したときの状況図である。
インクジェットヘッド2へのインク初期導入及び吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作を行うときは、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッド2を上方に移動させる。そして、インクジェットヘッド2が、図10に示すように、ヘッドメンテナンス位置に到達したときに、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を停止させる。このとき、インク吐出面3aと搬送ベルト8との間にはメンテナンスユニット70が配置可能なスペースが形成される。なお、ヘッドメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド2のインク吐出面3a及びフレーム4の底面は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動してきても、ワイパー72や環状突起76aのメンテナンス部材と接触しない位置となっている(図12(a)参照)。
次に、メンテナンスユニット移動制御部118が、シリンダドライバ126を介してシリンダを縮める。すると、当接部材84が回動して、図10に示すように、引っ掛け部材83の端部83bに当接するとともに、端部83bを下方に押し下げる。この動作によって引っ掛け部材83は反時計回りに回動し、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔し凹部74aと引っ掛け部83aとの係合が解除される。つまり、フレーム71とフレーム75との連結が解除された状態となる。次に、メンテナンスユニット移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を駆動し、矢印D方向(退避位置からメンテナンス位置へ移動する方向)に移動させる。そして、フレーム71が、図11(a)に示すように、メンテナンス位置に到達したときに、メンテナンス移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を停止させる。このとき、フレーム71の図中左端部は、平面視で退避位置に配置されている廃インク受け部材77の右端部と重なっている。
次に、ポンプ制御部116が、ポンプドライバ124を介してポンプ134を駆動し、インクをインクジェットヘッド2に強制的に供給し、インクジェットヘッド2のノズルからフレーム71内にインクを吐出させる(パージ動作)。このパージ動作によって、吐出不良に陥っていたノズルの詰まりやノズル内のインクの増粘が解消され、吐出特性が回復される。なお、インクジェットヘッド2内へのインク初期導入時の動作もパージ動作とほぼ同様な動作で行われる。なお、フレーム71内に吐出されたインクはフレーム71の底面に沿って図11(a)中左側に移動し、廃インク受け部材77に流れ込む。そして、廃インク受け部材77のインク排出孔77aからインクが排出される。
次に、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッド2を下方に移動させる。そして、インクジェットヘッド2が、インク吐出面3aとインク受け取り部材73(薄板73a)の上端との間に、例えば、0.5mmの隙間を残す位置まで下降したところで、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を停止させる。
次に、メンテナンスユニット移動制御部118がモータドライバ127を介してモータ92を駆動し、図11(b)に示すように、フレーム71を左側に移動させ(すなわち、フレーム71をメンテナンス位置から退避位置に移動させる)ワイプ動作を行う。インク受け取り部材73に並設されたワイパー72は、その先端が薄板73aの上端より上方に突出して配置されているので、フレーム71が退避位置に向けて移動することで、インク吐出面3aに当接する。このとき、ワイパー72の先端部は、移動方向と反対側に撓んでいる。さらに、フレーム71の退避位置への移動に伴って、インク受け取り部材71がインク吐出面3aに付着しているインクを毛管力によって吸い取り、ワイパー72がさらに残留しているインクを払拭する。こうして、インク初期導入時の動作及びパージ動作に係るメンテナンスユニット70のメンテナンス動作が終了する。
なお、メンテナンス動作が終了すると、ヘッド移動制御部117が、モータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッドを下方に移動させる。そして、インクジェットヘッド2が印刷位置に到達したときに、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータを停止させる。一方、フレーム71が退避位置に到達したときに、メンテナンスユニット移動制御部118がシリンダドライバ126を介してシリンダ85を伸ばす。これにより、引っ掛け部83aと凹部74aとが係合しフレーム71とフレーム75とが連結状態とされる。
次に、インク吐出面3aをキャップ76で覆うキャップ動作について説明する。プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、ヘッド移動制御部117が上述と同様にインクジェットヘッド2をヘッドメンテナンス位置に移動させる。次に、メンテナンスユニット移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を駆動し、矢印D方向(退避位置からメンテナンス位置へ移動する方向)にフレーム71及びフレーム75を移動させる。そして、フレーム71,75が、図12(a)に示すように、メンテナンス位置に到達したときに、メンテナンス移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を停止させる。
次に、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッド2を下方に移動させる。そして、図12(b)に示すように、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aとキャップ76の環状突起76aの先端とが当接したときに、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を停止させる。こうして、インク吐出面3aとキャップ76との間が密閉空間となってノズル内のインクの乾燥を防止する。なお、制御部101がPC100からの印刷データを受信したときなどに、メンテナンスユニット70を退避位置に戻す動作は上述した逆の手順となる。こうして、キャップ動作に係るメンテナンスユニット70のメンテナンス動作が終了する。
メンテナンスユニット70によるメンテナンス動作が行われる前及び後には、カバー60及びブラシ63の移動が行われる。カバー60は、図13(a)に示すように、メンテナンスユニット70が退避位置で静止しているときに、メンテナンスユニット70を上方から覆っている。そして、インクジェットヘッド2へのインク初期導入時やパージ信号を受信したとき及びプリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時には、ブラシ63によるキャップ76の環状突起76a及びワイパー72のクリーニング動作が行われる。例えば、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動する直前に、ブラシ移動制御部120がモータドライバ130を介してモータ41を駆動しモータプーリ42が正方向に回転される。これに伴い、ブラシ63が、外周側壁60d近傍付近から外周側壁60eに向かって、図5中の矢印E方向に移動される。このとき、複数の可撓性針状材61がキャップ76の環状突起76aの表面を、また複数の可撓性針状材62がワイパー72の先端部表面を、それぞれ当接しながら払拭していく。一方、ブラシ63が外周側壁60e近傍に到達すると、ブラシ移動制御部120によってモータ41が駆動され、モータプーリ42が逆方向に回転される。これによって、ブラシ63が、図5中の矢印F方向に移動され、外周側壁60d近傍付近に戻される。このとき、複数の可撓性針状材61,62によって、環状突起76aの表面及びワイパー72の先端部表面が再び払拭される。
このように、ブラシ63が矢印E及び矢印F方向に往復移動することで、環状突起76aの矢印D方向に延在する部分の先端部の内及び外側の両面がブラシ63によって払われる。加えて、環状突起76aの矢印E方向に延在した部分及びワイパー72は、ブラシ63によって繰り返し払われることになる。そして、ブラシ63がカバー60の外周側壁60d近傍に到達すると、ブラシ移動制御部120がモータドライバ130を介してモータ41の駆動を停止する。こうして、カバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動する直前のブラシ63の動作が終了する。
また、本実施形態では、上述のブラシ63による払拭動作は、ブラシ63の周囲に気流が存在する状態で行われる。ブラシ63の移動に合わせて、送風機33が駆動され、切替弁35,36により空気流路が切り替えられる。ブラシ63が、矢印E方向に移動されるときには、気流制御部119が切替弁ドライバ135,136を介して切替弁35,36を図7に示すような状態に切り替える。さらに、送風機ドライバ129を介して送風機33を駆動して空気を貫通孔47からカバー60内に供給しつつ、一方で貫通孔48からカバー60内の空気を吸引する。これにより、カバー60内には、ブラシ63の移動方向(矢印E方向)に気流が発生される。また、ブラシ63が矢印F方向に移動されるときは、気流制御部119によって切替弁35,36を図8に示すような状態に切り替える。さらに、送風機ドライバ129を介して送風機33を駆動して空気を貫通孔48からカバー60内に供給しつつ、一方で貫通孔47からカバー60内の空気を吸引する。これにより、カバー60内には、ブラシ63の移動方向(矢印F方向)気流が発生される。そして、ブラシ63の動作が終了すると、気流制御部119が送風機ドライバ129を介して送風機33の駆動を停止する。
このように、切替弁35,36を切り替えることで、ブラシ移動方向と気流方向とを同じにすることができる。これにより、複数の可撓性針状材61,62により払拭された表面には、異物が再び付着しにくくなる。さらに、異物は、カバー60内の気流にのって移動し、ブラシ63の移動方向前方の貫通孔47あるいは貫通孔48から排出される。なお、送風機33のエア入口及びエア出口は常に同じ位置であってフィルタ34がエア出口に存在しているので、カバー60内から空気と共に吸い出した異物はフィルタ34で捕獲される。また、送風機33はカバー60内から吸引した空気をフィルタ34で濾過してカバー60内に供給しているので、その空気供給量と空気吸引量とがほぼ等しくなる。そのため、カバー60内が負圧にならないので、外部の異物をカバー60内に引き込むこともない。
次に、ブラシ63の動作が終了したときに、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を同調させて駆動し、カバー60を上方に移動させる。そして、カバー60が、図13(b)に示すように、カバー退避位置に到達したときに、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を停止させる。なお、カバー退避位置は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動したときに、カバー60の下端がワイパー72及びキャップ76の環状突起76aの先端と接触しない位置となっている。こうして、メンテナンスユニット70がカバー60によって覆われていないときに、メンテナンスユニット70はメンテナンス位置に移動し上述したメンテナンス動作を行う。
以上、主にメンテナンス動作の開始時のメンテナンスユニット70、インクジェットヘッド2、カバー60等の振る舞いについて説明した。以下では、メンテナンス動作が終了したときのメンテナンスユニット70やカバー60の振る舞いについて説明する。なお、このときは、インクジェットヘッド2は、搬送ベルト8の搬送面8aと所定の間隔を介して対向配置されている。メンテナンスユニット70が、メンテナンス動作を終え退避位置で静止すると、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を同調させて駆動し、カバー60を下方に移動させる。そして、カバー60がカバー位置に到達したときに、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を停止する。このとき、ブラシ63の可撓性針状材61,62が外周側壁60dに最も近い環状突起76a及びワイパー72と部分的に当接する。こうして、カバー60でキャップ76及びワイパー72が覆われることで、環状突起76a及びワイパー72の先端近傍に外部からの異物が付着しにくくなる。
次に、カバー60がカバー位置に移動した直後でも、上述のメンテナンス動作開始時と同様に、カバー60内でメンテナンス部材(環状突起76aとワイパー72)に対するクリーニング動作が行われる。つまり、ブラシ移動制御部120によるモータ41の正転逆転の駆動、これに連動したブラシ63の往復移動が行われる。このクリーニング動作は、ブラシ63がもとの外周側壁60d近傍に戻ったところで終了する。この間、複数の可撓性針状材61,62によって、メンテナンス動作直後の環状突起76a及びワイパー72の表面が往復で払拭される。可撓性針状材61,62によって、環状突起76aの図5中の矢印D方向に延在する部分が、その先端部の表裏で清浄化される。また、可撓性針状材62によって、往復移動方向に延在するワイパー72の先端部両面も清浄化されることになる。
なお、このカバー退避位置からカバー位置にカバー60が移動した直後のブラシ63の動作時においても、上述と同様に、気流制御部119によって切替弁35,36を切り替える。さらに、送風機ドライバ129を介して送風機33を駆動して空気をいずれか一方の貫通孔47,48からカバー60内に供給しつつ、他方の貫通孔48,47からカバー60内の空気を吸引する。これにより、上述と同様な効果を得ることができる。
以上のような第1実施形態によるインクジェットプリンタ1によると、メンテナンスユニット70が退避位置に静止しているときに、カバー60がカバー退避位置からカバー位置に移動するとブラシ63の可撓性針状材61,62が環状突起76a及びワイパー72と部分的に当接するので、環状突起76a及びワイパー72の可撓性針状材61,62と当接した箇所の異物を除去することができる。そのため、インク吐出口3a内のインクの乾燥を防止するために、環状突起76aをインク吐出面3aに当接するときに、インク吐出面3aに異物が付着しにくくなる。また、ワイパー72も可撓性針状材62と当接するので、ワイパー72に付着した異物を除去することができる。そのため、ワイパー72でインク吐出面3aに付着したインクを払拭するときに、インク吐出面3aに異物が付着しにくくなる。また、インク吐出面3aに異物が付着しにくくなることで、インク吐出面3aに付着した異物を核とするインク溜まりが生じにくくなる。さらに、ノズルに異物が侵入しにくくなり、不必要なパージ動作を減少させることができる。そのため、消費インクが低減する。これにより、ワイパーも可撓性針状材と当接するので、ワイパーに付着した異物を除去することができる。そのため、ワイパーでインク吐出面に付着したインクを払拭するときに、インク吐出面に異物が付着しにくくなる。
また、ブラシ63が矢印D方向(すなわち、メンテナンスユニット70が移動する方向)に長尺であるため、同方向に長いキャップ76に付着した異物をより除去することができる。また、カバー60を上下方向に移動させるカバー移動機構80が設けられていることで、メンテナンスユニット70が退避位置に静止しているときに、ブラシ63の可撓性針状材61,62を環状突起76a及びワイパー72から離隔した状態から当接する状態に移動させることができる。この移動に伴って外周側壁60dに最も近い環状突起76a及びワイパー72が部分的に可撓性針状材61,62によってブラッシングされる。そのため、キャップに付着した異物をより除去することができる。また、ブラシ63を矢印E及び矢印F方向に移動させるブラシ移動機構40が設けられているので、4つの環状突起76a及びワイパー72の先端近傍部分全体をブラッシングさせることができる。そのため、キャップ76及びワイパー72に付着した異物をより除去することができる。また、ブラシ移動機構40によってブラシ63が往復移動するので、環状突起76aの先端近傍において、矢印E方向に平行な方向に関する両面がブラッシングされる。そのため、環状突起76aに付着した異物をより一層除去することができる。加えて、ワイパー72が繰り返しブラッシングされるので、ワイパー72に付着した異物をより一層除去することができる。
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタについて、図14〜図16を参照しつつ以下に説明する。図14は、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタのカバー260及びその近傍の拡大平面図である。図15は、図14に示すXV−XV線に沿った断面図である。図16(a)はカバー260がカバー位置にあるときの状況図であり、図16(b)はカバー260がカバー位置からカバー退避位置に移動したときの状況図である。なお、第1実施形態と同様なものについては同符号で示し説明を省略する。
本実施形態によるインクジェットプリンタは、図14及び図15に示すように、第1実施形態におけるブラシ63及びブラシ63を移動させるブラシ移動機構40と構成が異なるブラシ263とブラシ263を移動させるブラシ移動機構240とが設けられたカバー260を有しているだけで、それ以外は第1実施形態とほぼ同様なものである。また、本実施形態によるインクジェットプリンタには、第1実施形態における気流発生機構30が設けられていないが、第1実施形態と同様に設けられていてもよい。
カバー260は、図14に示すように、カバー60と同様に天井部60a及び4つの外周側壁60b〜60eを有し、箱状に形成されている。外周側壁60b,60cには、図14及び図15に示すように、後述するブラシ263の軸264が通される矢印E方向に平行に延在した長孔268a,268bがそれぞれ形成されている。長孔268a,268bは互いに対向して形成されている。天井部60aには、後述する支持部245が通される矢印E方向に平行に延在した長孔269が形成されている。長孔269は、天井部60aのインクジェットヘッド2とは最も離れた端部近傍に形成されている。
カバー260には、複数の可撓性針状材261,262を有するブラシ263が設けられている。ブラシ263は、矢印D方向に延在した円筒状の軸264を有している。そして、複数の可撓性針状材261が、軸264のキャップ76と重なる領域に、矢印D方向及び軸264の周方向に沿って配列されている。複数の可撓性針状材261は、軸264の径方向に延在しており、図16(a)に示すように、少なくともキャップ76の環状突起76aの先端部に当接するような長さに形成されている。複数の可撓性針状材262は、軸264のワイパー72と重なる領域に、矢印D方向及び軸264の周方向に沿って配列されている。複数の可撓性針状材262も、軸264の径方向に延在しており、図16(a)に示すように、少なくともワイパー72の先端部に当接するような長さに形成されている。
カバー260には、ブラシ263を回転させながら矢印E及び矢印F方向に移動させるブラシ移動機構240が設けられている。ブラシ移動機構240は、図14及び図15に示すように、モータ(駆動手段)241と、モータギヤ242と、軸264の両端部に固定されたピニオンギヤ243a,243bと、各ピニオンギヤ243a,243bと噛合されるように外周側壁60b,60cに固定されたラックギヤ244a,244bと、モータ241に固定され軸264を回転可能に支持する支持部245と、モータ241をスライド可能に支持するガイド246とを含んでいる。
ラックギヤ244a,244bは、矢印E方向に平行に延在している。ガイド246も矢印E方向に平行に延在しており、天井部60のインクジェットヘッド2とは最も離れた端部に固定されている。2つのピニオンギヤ243a,243bのうち、ピニオンギヤ243aが、軸264のモータ241側の端部に固定され、モータギヤ242と噛合している。また、ピニオンギヤ243bが、軸264の他端部に固定されている。この他端部には、外れ止め247が軸264と回転可能に支持されている。外れ止め247の断面は、図15に示すように、L字形状を有している。L字形状下端部の矢印D方向(軸264の長手方向)に延びた部分が、ラックギヤ244bの下面と摺動可能に接している。また、L字形状の下方に延びて下端部に接続する部分には、軸264の他端部が接している。これによって、ピニオンギヤ243bがラックギヤ244bから外れるのが防止されている。
この構成において、モータ241を駆動すると、モータギヤ242が正又は逆方向に回転しピニオンギヤ243aにその回転力が伝達する。そして、ピニオンギヤ243aが回転すると、軸264及びピニオンギヤ243bも回転し、ピニオンギヤ243a,243bがラックギヤ244a,244b上を矢印E又は矢印F方向に移動する。本実施形態においては、モータギヤ242が正方向に回転したときに、ピニオンギヤ243a,243bが矢印E方向に移動し、モータギヤ242が逆方向に回転したときに、ピニオンギヤ243a,243bが矢印F方向に移動する。これらピニオンギヤ243a,243bの移動に伴って軸264も回転しながら同方向(矢印E又はF方向)に移動し、支持部245も同方向に移動する。支持部245は、モータ241に固定されているので、モータ241もガイド246上において支持部245と同方向に移動することになる。
次に、カバー260の移動及びブラシ動作について以下に説明する。なお、メンテナンスユニット70のメンテナンス動作は第1実施形態と同様なため、説明を省略する。
カバー260は、図16(a)に示すように、メンテナンスユニット70がメンテナンス動作を行わずに退避位置で静止しているときに、メンテナンスユニット70を上方から覆っている。そして、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動する直前において、モータ241が駆動されモータギヤ242が正方向にする。このモータギヤ242の回転に伴って、ブラシ263が回転しながら矢印E方向に移動する。このとき、複数の可撓性針状材261,262も回転しながら矢印E方向に移動するため、環状突起76a及びワイパー72の先端近傍部分が複数の可撓性針状材261,262によって払われる。
次に、ブラシ263がカバー260の外周側壁60d近傍から外周側壁60e近傍に到達すると、すなわち、ブラシ263で4つのキャップ76の環状突起76aの先端近傍をすべて払うと、モータギヤ242が逆方向に回転し、ブラシ263も逆回転しながら矢印F方向に移動する。そして、ブラシ263が外周側壁60e近傍に到達すると、モータ241の駆動が停止する。こうして、カバー260がカバー位置からカバー退避位置に移動する直前のブラシ263の動作が終了し、カバー260がモータ86の駆動によってカバー退避位置に移動する。
これにより、4つのキャップ76の環状突起76a及びワイパー72の先端近傍が再度払われる。具体的には、第1実施形態と同様に、ブラシ263が矢印E及び矢印F方向に往復移動することで、環状突起76aの矢印D方向に延在する部分の先端部の内及び外側の両方がブラシ263によって払われる。加えて、環状突起76aの矢印E方向に延在した部分及びワイパー72も、ブラシ263によって繰り返し払われることになる。また、ブラシ263が回転しているので、環状突起76a及びワイパー72の先端近傍に付着した異物をより確実に除去することができる。
次に、メンテナンス動作を終え退避位置でメンテナンスユニット70が静止していると、カバー260がモータ86の駆動によってカバー退避位置からカバー位置に移動し、キャップ76及びワイパー72を覆う。次に、上述と同様に、ブラシ263を回転させながら矢印E及びF方向に移動させて、環状突起76a及びワイパー72の先端近傍を払う。こうして、カバー260がカバー退避位置からカバー位置に移動した直後のブラシ263の動作が終了する。
このとき、ブラシ263の可撓性針状材261,262が外周側壁60dに最も近い環状突起76a及びワイパー72と部分的に当接するので、これら環状突起76a及びワイパー72の可撓性針状材261,262と当接する箇所の異物が払われる。こうして、カバー260でキャップ76及びワイパー72が覆われることで、環状突起76a及びワイパー72の先端近傍に外部からの異物が付着しにくくなる。
以上のような第2実施形態によるインクジェットプリンタによると、ブラシ移動機構240は、ブラシ263を回転させながら矢印E及び矢印F方向に移動させるので、環状突起76a及びワイパー72の先端近傍に付着した異物をより確実に除去することができる。また、ブラシ移動機構240は、ブラシ263を矢印E及び矢印F方向に移動させるとともに、ブラシ263を回転させる機構であるため、1つのモータ241をこれら異なる動作の駆動源とすることができる。なお、本実施形態のプリンタは、第1実施形態と同様な構成における効果を同様に得ることができる。
続いて、本発明の参考実施形態によるインクジェットプリンタについて、図17〜図19を参照しつつ以下に説明する。図17は、本発明の参考実施形態によるインクジェットプリンタのカバー360及びその近傍の拡大平面図である。図18は、図17に示すXVIII−XVIII線に沿った断面図である。図19(a)はカバー360がカバー位置にあるときの状況図であり、図19(b)はカバー360がカバー位置からカバー退避位置に移動したときの状況図である。なお、第1実施形態と同様なものについては同符号で示し説明を省略する。
本実施形態によるインクジェットプリンタは、図17及び図18に示すように、第1実施形態のブラシ63のようにカバー内で移動するブラシが設けられておらず、複数の可撓性針状材365,366が内部に固定されたカバー360を有している。なお、可撓性針状材365,366はそれぞれ複数あることでブラシとなる。また、カバー360の内部は、3つの領域に区画されており、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72を覆う領域、インク受け取り部材73を覆う領域及び4つのキャップを覆う領域から構成されている。各領域間には、仕切り壁361,362がそれぞれ形成されており、ともに外周側壁60b,60cと平行に配置されている。本実施形態では、各領域に対応した3つのカバーが一体に成形されている。そのため、カバー360は、4つのキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72のそれぞれを同時に個別に覆うことが可能となっている。
外周側壁60bと仕切り壁361との間には、天井部60aから下方に向かって延在した複数の可撓性針状材365が設けられている。これら可撓性針状材365は、キャップ76の環状突起76aと対向する環状領域に配列されている。また、複数の可撓性針状材365は、図19(a)に示すように、カバー360でキャップ76を覆ったときに、各キャップ76の環状突起76aとそれぞれ当接するような長さに形成されている。また、外周側壁60c及び仕切り壁362の下端部には、外周側壁60cから仕切り壁362に向かって、同様に仕切り壁362から外周側壁60cに向かって水平に延在した複数の可撓性針状材366が設けられている。これら可撓性針状材366は、カバー360でワイパー62を覆ったときに、ワイパー72を挟み込むように配列されている。
また、カバー60の天井部60aには、図17及び図18に示すように、複数の洗浄液供給孔367a,367b及びエア供給孔368a〜368cが形成されている。洗浄液供給孔367aは、キャップ76の環状突起76aと対向する領域にそれぞれ4つずつ形成されている。洗浄液供給孔367bは、ワイパー72と対向する領域に3つずつ形成されている。また、エア供給孔368aは、キャップ76の中央と対向する領域にそれぞれ1つずつ形成されている。エア供給孔368bは、インク受け取り部材73と対向する領域に4つずつ形成されている。エア供給孔368cは、ワイパー72と対向する領域に3つずつ形成されている。
また、カバー60の天井部60a上には、複数の洗浄液供給孔367a,367bと接続された配管341と、複数のエア供給孔368a〜368cと接続された配管342とが設けられている。配管341は、図17中上方側の本体フレーム1eに固定されたポンプ343と接続されている。そして、ポンプ343を駆動することによって、図示しないタンクに貯溜された洗浄液(例えば、純水)を配管341及び洗浄液供給孔367a,367bを介してキャップ76の環状突起76a及びワイパー72にかけることが可能となる。一方、配管342は、図17中下方側の本体フレーム1eに固定された送風機345とフィルタ346を介して接続されている。そして、送風機345を駆動することによって、送風機345から送られ且つフィルタ346によって濾過された気流を配管342及びエア供給孔368a〜368cを介してキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に向かって送り込むことが可能となる。
次に、カバー360の動作について以下に説明する。なお、メンテナンスユニット70のメンテナンス動作は第1実施形態と同様なため、説明を省略する。カバー360は、図19(a)に示すように、メンテナンスユニット70がメンテナンス動作を行わずに退避位置で静止しているときに、メンテナンスユニット70を上方から覆っている。そして、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動する直前において、2つの駆動モータ86を同調させて駆動し、カバー360を上方に移動させる。このとき、キャップ76の環状突起76a及びワイパー72に当接していた複数の可撓性針状材365,366も上方に移動するため、その移動に伴って環状突起76a及びワイパー72の先端近傍部分が複数の可撓性針状材365,366によって払われる。カバー360が、図19(b)に示すように、カバー退避位置に到達したときに、2つの駆動モータ86を停止させる。なお、カバー退避位置は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動したときに、カバー360の下端がワイパー72及びキャップ76の環状突起76aの先端と接触しない位置となっている。こうして、メンテナンスユニット70がカバー360によって覆われていないときに、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動しメンテナンス動作を行う。
また、カバー360を上方に移動させるときに、送風機345を駆動し、エア供給孔368a〜368cからカバー360内に空気を供給する。そして、カバー360がカバー退避位置に到達したときに、送風機345の駆動を停止する。これにより、カバー360とメンテナンスユニット70との間からその供給された空気が排出されるため、移動中でもカバー360内に外部からの異物が侵入しにくくなる。さらに、複数の可撓性針状材365,366によって環状突起76a及びワイパー72の先端から払われた異物をカバー360から外部に排出することも可能となる。また、エア供給孔368a〜368cから供給された空気がキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に向かって送られるので、キャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に異物が付着しにくくなる。
また、同様なタイミング(すなわち、空気と洗浄液とが同時に供給されるとともに同時に供給の停止も行われるタイミング)で、ポンプ343を駆動し、洗浄液供給孔367a,367bからカバー360内に洗浄液を供給する。このとき、洗浄液供給孔367a,367bは、環状突起76a及びワイパー72のそれぞれに対向して形成されているので、洗浄液が環状突起76a及びワイパー72にかけられる。これにより、環状突起76a及びワイパー72に付着して増粘したインク及び異物を洗い流すことができる。また、洗浄液が複数の可撓性針状材365,366が移動するときに供給されるので、増粘インク及び異物がより複数の可撓性針状材365,366の移動によって掻き落とすことができる。そのため、環状突起76a及びワイパー72の先端にほとんど増粘インク及び異物が付着していない状態となって、環状突起76a及びワイパー72の先端から増粘インク及び異物がインク吐出面3aに付着するのを防ぐことができる。
次に、メンテナンスユニット70がメンテナンス動作を終え退避位置で静止しているときに、2つの駆動モータ86を同調させて駆動し、カバー360を下方に移動させる。そして、カバー360がカバー位置に到達したときに、2つの駆動モータ86を停止する。このとき、その移動に伴って環状突起76a及びワイパー72の先端近傍部分が複数の可撓性針状材365,366によって払われる。具体的には、複数の可撓性針状材365が環状突起76aと対向する位置に形成されており且つ天井部60aから環状突起76aに向かって延在しているので、カバー360のカバー位置への移動に伴って複数の可撓性針状材365の先端と環状突起76aの先端とが接触した後、環状突起76aの先端近傍の内外面とも接触する。つまり、環状突起76aの先端に異物が付着していても、その異物が可撓性針状材365によって払い飛ばされるか、環状突起76aの先端近傍部分から離れるように移動させられる。また、複数の可撓性針状材366が、カバー360がカバー位置に到達したときにちょうどワイパー72を挟み込むように形成されているので、カバー360のカバー位置への移動に伴って、ワイパー72の仕切り壁62及び外周側壁60cと対向する側面の先端近傍部分とも接触する。つまり、ワイパー72の先端に異物が付着していても、その異物が可撓性針状材366によって払い飛ばされるか、ワイパー72の先端近傍部分から離れるように移動させられる。
また、カバー360を下方に移動させるときに、送風機345を駆動し、エア供給孔368a〜368cからカバー360内に空気を供給する。そして、カバー360がカバー位置に到達したときに、送風機345の駆動を停止する。これにより、上述と同様に、カバー360とメンテナンスユニット70との間からその供給された空気が排出されるため、移動中でもカバー360内に外部からの異物が侵入しにくくなる。さらに、複数の可撓性針状材365,366によって環状突起76a及びワイパー72の先端から払われた異物をカバー360から外部に排出することも可能となる。また、エア供給孔68a〜68cから供給された空気がキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に向かって送られるので、キャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に異物が付着しにくくなる。
また、同様なタイミングで、ポンプ343を駆動し、洗浄液供給孔367a,367bからカバー360内に洗浄液を供給する。このとき、洗浄液供給孔367a,367bは、環状突起76a及びワイパー72のそれぞれに対向して形成されているので、洗浄液が環状突起76a及びワイパー72にかけられる。これにより、上述と同様に、環状突起76a及びワイパー72に付着して増粘したインク及び異物を洗い流すことができる。また、洗浄液が複数の可撓性針状材365,366が移動するときに供給されるので、増粘インク及び異物を複数の可撓性針状材365,366の移動によってより掻き落とすことができる。さらに、メンテナンス動作が終了してから比較的すぐに洗浄液が供給されるので、環状突起76a及びワイパー72に付着したインクを増粘が初期段階のうちに洗い流すことができる。そのため、環状突起76a及びワイパー72の先端にほとんど増粘インクが付着していない状態となる。したがって、環状突起76a及びワイパー72の先端から増粘インク及び異物がインク吐出面3aに付着するのを防ぐことができる。
以上のような本実施の形態によるインクジェットプリンタによると、メンテナンスユニット70が退避位置に静止しているときに、4つのキャップ76及びワイパー72をカバー360で覆うだけで、可撓性針状材365,366が環状突起76a及びワイパー72の先端近傍と当接する。そのため、状突起76a及びワイパー72の先端近傍から付着した異物を除去することができる。したがって、上述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第1〜第2実施形態においては、いずれもカバー60,260が設けられているが、外周側壁60cが設けられていないカバーであってもよい。この場合、カバーを常にカバー位置に固定することで、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置から退避位置に戻ることで、可撓性針状材61,62,261,262と環状突起76a及びワイパー72の先端近傍とが当接する。これにより、環状突起76a及びワイパー72の先端近傍から付着していた異物を除去することができる。つまり、プリンタにカバー移動機構80を設けなくてもよい。また、第1及び第2実施形態において、ブラシ移動機構40,240は、ブラシ63,263を往復移動させなくてもよい。また、各実施形態において、複数の可撓性針状材61,261のみ設けられていてもよい。つまり、少なくともキャップ76の環状突起76aの先端近傍から異物を除去することができればよい。また、各実施形態において、送風機33,345が設けられていなくてもよい。つまり、カバー60,260内に空気を供給する手段が設けられていなくてもよい。また、上述した各実施形態におけるインクジェットヘッドは、ラインタイプのインクジェットヘッドであるが、シリアルタイプのインクジェットヘッドでも適用可能である。すなわち、シリアルタイプのインクジェットプリンタであっても、上述のような効果を有することが可能である。