JP2004160760A - インクジェット記録ヘッド用回復装置及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】回復動作のシーケンスが複雑で回復動作に時間がかかる。
【解決手段】インクを吐出する複数の吐出口からなる吐出口列2A〜2Dを有するインクジェット記録ヘッド1の各吐出口列2A〜2Dから排出されるインクを除去し、吐出口列2A〜2Dを清掃するための各吐出口列2A〜2Dに対応して設けたインク除去払拭部材7A〜7Dと、インク除去払拭部材7A〜7Dの外側の領域において記録ヘッド1の吐出口面3を密閉する回復桶5に設けたキャップ手段6とを備えた。
【選択図】 図1
【解決手段】インクを吐出する複数の吐出口からなる吐出口列2A〜2Dを有するインクジェット記録ヘッド1の各吐出口列2A〜2Dから排出されるインクを除去し、吐出口列2A〜2Dを清掃するための各吐出口列2A〜2Dに対応して設けたインク除去払拭部材7A〜7Dと、インク除去払拭部材7A〜7Dの外側の領域において記録ヘッド1の吐出口面3を密閉する回復桶5に設けたキャップ手段6とを備えた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はインクジェット記録ヘッド用回復装置及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平7−246711号公報
【特許文献2】特開平11−105303号公報
【0003】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の機能を有する記録装置、コンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、画像情報(記録情報)に基づいて紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の被記録材(被記録媒体)に文字や記号等を含む画像を記録するものである。
【0004】
このような記録装置には種々の方式があるが、そのうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録ヘッドから被記録媒体にインクを吐出して記録を行うものであり、ヘッドのコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、普通紙に特別の処理を必要とせずに記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少なく、しかも、多種類のインク(例えばカラーインク)を使用してカラー画像を形成するのが容易であるなどの利点を有している。
【0005】
特に、被記録媒体の搬送方向幅にわたって一度に記録できる、いわゆるフルライン型の長い記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置はシリアル型のインクジェット記録装置に比べ格段の記録の高速化が可能である。
【0006】
ところで、インクジェット記録装置においては、微細な吐出口からインク滴を吐出させることから、乾燥によるインクの増粘や固着、あるいはインク中に生じる気泡などに起因して、吐出口に目詰まりが発生し、吐出不良になることがある。そこで、このような吐出不良を防止するために、インク吐出機能を正常な状態に維持回復するための回復装置が設けられている。
【0007】
このような回復装置による回復方法としては、例えば、記録中に吐出口内に発生した気泡などで吐出不良になると、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法、吐出口内でのインクの自然蒸発によるインクの増粘固着に備えて予備吐出を行う保守回復方法、吐出口面に付着したインク滴やほこりなどを拭き取りワイピングする保守回復方法などの一つ又は二つ以上を適宜組み合わせたものが用いられている。
【0008】
そこで、まず、
【特許文献1】に開示されている予備吐出とワイピングによる回復方法について、フルライン型インクジェット記録装置に好適に用いられる記録紙搬送系とともに図13を参照して説明する。
【0009】
上下方向に移動可能なヘッドホルダ100には4個の記録ヘッド102A〜102Dが個々に位置決め固定されている。ここで、記録ヘッド102A〜102Dはブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを吐出する記録ヘッドであり、図11に示す待機時には、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面は、回復桶ホルダ103に設けられた4個のゴム状弾性体のキャップ104A〜104Dにより個別にキャッピングされている。
【0010】
回復桶ホルダ103は、記録ヘッド102A〜102Dのインク吐出口の周囲を囲むようにゴム状弾性体で形成された前記キャップ104A〜104Dと、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面に付着したインクを拭き取りワイピングするために各記録ヘッド102A〜102Dに対応して配設されたゴム状弾性体のブレード105A〜105Dから成る清掃手段とを備えている。
【0011】
ヘッドホルダ100は、図示しないヘッド昇降駆動源により上下方向(矢印A方向)に移動可能に構成されている。また、回復桶ホルダ103は、図示しない回復桶移動駆動源により、同図中の左右方向(矢印B方向)に移動可能に構成されている。
【0012】
一方、帯電ベルト109は、絶縁層を有し、メインローラ110と従動ローラ111とに掛け渡されており、矢印C方向に周回するように構成されている。帯電ベルト109の内側には、フルラインヘッドである記録ヘッド102A〜102Dに対応する位置に、記録紙106の平面性を保持するためのプラテン112が配置されている。
【0013】
帯電ベルト109に接して帯電ローラ113が設けられており、帯電ローラ113は帯電ベルト109に対して従動する構成としてある。帯電ローラ113は導電ゴムを主体としており高圧回路114によって高圧が印加され帯電ベルト109を帯電させる。制御回路115は高圧回路114の出力をプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すようにコントロールする。その結果、帯電ベルト109上の帯電パターンは、記録紙106の周回方向である副走査方向にプラスとマイナスが所定の幅の帯状に交互に帯電されたものとなる。
【0014】
そして、プラス、マイナス交互に帯電した帯電ベルト109上に記録紙106が給紙ローラ107A、107Bにより給紙されると、記録紙106内で帯電パターンと反対の電荷に分極するので、平行接続されたコンデンサが形成されたこととなり、記録紙106が吸着搬送される。また、記録紙106が帯電ベルト109より分離した後には、安定した帯電を行うことを目的として除電ブラシ116が設けられている。
【0015】
次に、予備吐出とワイピングによる保守回復方法を図14ないし図16を参照して説明する。
記録開始の指令が発せられると、図13に示す記録ヘッド102A〜102D及び回復桶ホルダ103の待機状態スタンバイ状態で、記録ヘッド102A〜102Dを正常なインク吐出状態に回復するため、該記録ヘッド102A〜102Dの予備吐出を行う。この予備吐出は、各記録ヘッド102A〜102Dの駆動により、各キャップ104A〜104D内にインクを吐出させることにより行う。
【0016】
その後、図14(a)に示すように、ヘッドホルダ100を一定量だけ矢印D方向に上昇させることにより、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面を各キャップ104A〜104Dから離隔させる。そして、回復桶ユニットを矢印E方向に所定量だけ移動させることにより、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面に対応するブレード105A〜105Dを摺擦させ、各吐出口面を個別に拭き取り清掃する。図14(b)は各ブレード105A〜105Dによる各記録ヘッド102A〜102Dの拭き取りワイピングを完了した時の状態を示す。
【0017】
次いで、図15(a)示すように、ヘッドホルダ100を矢印F方向に所定量だけ移動させることにより、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面が各ブレード105A〜105Dの先端とオーバーラップしない位置まで上昇させる。その後、回復桶ホルダ103を矢印G方向に移動させ、ヘッドホルダ100を矢印H方向に下降させることにより、図15(b)に示すように元の待機位置に復帰させ、この待機状態で各記録ヘッド102A〜102Dを駆動して少量の予備吐出、つまり補助的予備吐出を行う。
【0018】
この補助的予備吐出を終了した後、図16(a)に示すように、ヘッドホルダ100を矢印I方向に上昇させ、次いで回復桶ホルダ103を矢印J方向に移動させる。それに続いて、図16(b)に示すように、各記録ヘッド102A〜102Dが搬送ベルト109上の記録紙に記録可能な状態になる記録位置までヘッドホルダ100を矢印K方向に下降させる。そして、記録紙の搬送に同期して各記録ヘッド102A〜102Dを記録データに基づいて駆動することにより、記録紙に対する記録を行う。
【0019】
次に、
【特許文献2】に開示されている加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法と、インク加圧循環方法について図17を用いて説明する。
加圧循環方法でのインク系は、インクを吐出して記録を行う記録手段としての記録ヘッド117と、多量のインクを貯留するインクカートリッジ等のようなインクタンク118と、インクを一時的に貯留し、かつ大気連通口121と電極インク残量検知センサ122を有するサブタンク119と、記録ヘッド117から吐出されたインクを受けて回復処理するための回復桶120と、記録ヘッド117にインクを供給するための第1ポンプ123と、インクタンク118からサブタンク119にインクを供給する第2ポンプ124と、回復桶120からインクを回収する吸引ポンプ等のような第3ポンプ125とから構成される。
【0020】
インクカートリッジ等のようなインクタンク118内に貯留されているインクが、第2ポンプ124等の手段によってサブタンク119の所定の液位までインクが供給されて貯留され、記録ヘッド117にインクが供給可能な状態となる。
【0021】
記録ヘッド117の吐出回復時(図14(a)の状態)では、第1ポンプ123によってインク加圧循環が行われて、記録ヘッド117の回復処理が行われる。このとき、記録ヘッド117の吐出口から空気と共に吐出されたインクは、回復桶120によって受けられ、第3ポンプ125の吸引によってサブタンク119に回収される。この後、前述の方法(図14ないし図16)で、ワイピングを行い、再び記録可能な状態にする。
【0022】
印字時、すなわち記録時(図16(b)の状態)では、記録ヘッド117からインクが記録紙に対して吐出されて記録が行われ、サブタンク119内のインクが消費される。記録時にサブタンク119のンクが消費され、電極インク残量検知センサ122が液面低下を検知すると、液面を所定の液位まで戻す。これらの動作を繰り返し、やがてインクカートリッジ118のインクが無くなるとインクカートリッジ118を交換する。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上説明した予備吐出とワイピングによる保守回復方法では、ヘッドホルダーの昇降動作と回復桶ユニットの移動動作とをそれぞれ複数回にわたって行う必要があり、回復動作のシーケンスが複雑になり、回復動作に時間がかかるという課題がある。この場合、回復動作のシーケンスを簡単にするために、吐出口面を拭き取り清掃した後の予備吐出インクを受けるインク収容手段を拭き取り清掃手段の上流側に配置する方法もあるが、この場合においても、拭き取り清掃のためのシーケンスは大幅に簡素化されるに至っていない。
【0024】
また、上述した加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法では、回復動作中に吐出口全面がインクで汚されるために多量のインクを一度のワイピングで除去することができないこと、ブレードの跳ね返りによるインク飛散が記録紙上の画像劣化を引き起こす等の課題がある。
【0025】
この場合、インク除去部材をキャップ内に設け、吐出口全面がインクで汚されることを防止する方法(特開平11−309871号公報、特開平11−342632号公報)、また、ブレードによるインク飛散を防止するため、ブロック部材をブレードの周辺に設ける方法(特開平11−334092号公報)などもあるが、これらの方法においても、気泡がインク吐出口内に引きこまれた状態でインクを加圧すると、インクと気泡が混在した形で吐出口から流出するため、吐出口全面のインクによる汚れは避けられない。このため、ワイピングを複数回行うことが必要となり、この複数回のワイピングによる回復動作には上述の説明で明らかなように非常に多くの時間を必要とするという課題は解決されない。
【0026】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、回復動作を簡単なシーケンスで、且つ短時間で保守回復を行うことができ、長期信頼性にも優れたインクジェット記録ヘッド用回復装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置は、複数の吐出口からなる複数列の吐出口列が同一の吐出口面に形成されたインクジェット記録ヘッドの吐出口列の吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口面を清掃するための複数の吐出口列に対応するインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口面を密閉するキャップ手段とを有する構成とした。
【0028】
ここで、インク除去払拭手段は、一方が閉じられ、他方に排出口を有する中空状で、その一部に排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に設けられ、吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とを有し、軸部材の排出開口は弾性部材のスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、ヘッドの吐出口列から排出されるインクは軸部材の排出口より排出されることが好ましい。
【0029】
この場合、ヘッドによる記録時に、キャップ手段と、インク除去払拭手段のスリット開口を密閉する密閉手段を備えていることが好ましく、この密閉手段は、ヘッドと一体的に設けられ、ヘッドの昇降動作に合わせて昇降可能に設けられていることが好ましい。
【0030】
本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置は、ヘッドの吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口を形成した吐出口面を清掃するためのインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口を密閉するキャップ手段とを有する構成とした。
【0031】
ここで、場合インク除去払拭手段は、キャップ手段の排出口に連通するインク排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に配設され、吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とからなり、軸部材の排出開口はスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、ヘッドの吐出口から排出されるインクはキャップ手段の排出口より排出されることが好ましい。
【0032】
あるいは、インク除去払拭手段は、一方が閉じられ、他方に排出口を有する中空状で、その一部に排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に設けられ、吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とを有し、軸部材の排出開口は弾性部材のスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、ヘッドの吐出口から排出されるインクは軸部材の排出口より排出されることが好ましい。
【0033】
これらの場合、インク除去払拭手段は、ヘッドの吐出口面の全体を覆うように圧接され、キャップ手段はヘッドの側面に配設されたキャップ受け部材の下面に圧接されるこが好ましい。
【0034】
また、本発明に係るインクジェット記録用回復装置において、インク除去払拭手段は回転可能に配設され、このインク除去払拭手段の回転により吐出口面を清掃することが好ましい。
【0035】
本発明に係るインクジェット記録装置は、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置を備えているものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。本発明に係る回復装置を含む本発明に係るインクジェット記録装置の第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の要部模式的構成図、図2は同記録装置の回復装置の要部構成図、図3は同回復装置の平面説明図である。
【0037】
このインクジェット記録装置は、フルライン型インクジェット記録装置であり、被記録媒体(以下「用紙」又は「記録紙」というが、紙に限定するものではない。)に対してインク滴を吐出して画像を形成するためのフルライン型のインクジェット記録ヘッド1を備えている。
【0038】
この記録ヘッド1は、複数の色に対応する、複数の吐出口からなる複数の吐出口列2A〜2Dが同一の吐出口面3に形成されたヘッドである。各吐出口列2A〜2Dは、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各インクに対応しており、用紙4の記録幅を略覆う長さを有している。
【0039】
この記録ヘッド1としては、例えば、サーマル方式のヘッドを用いることができ、用紙の記録面に対向してインク吐出口が記録面全域に亘って複数個形成されるインク吐出部を有しており、各インク吐出口は、図1の紙面垂直方向に所定の間隔で形成されている。この間隔は、画像品質の点から600dpi以上の記録密度に相当する間隔であることが好ましい。また、各インク吐出口は各インク流路に連通し、各インク流路内には、インクを加熱し膜沸騰現象によりインク吐出口を通じて液滴として吐出させる電気熱変換体(発熱体素子)としてのヒータが保護層を介して形成されている。この場合、各吐出口列2A〜2Dの各吐出口に対応する電気熱変換体は一枚の基板上に形成されている。
【0040】
なお、記録ヘッド1は、サーマル型に限らず、振動板を圧電素子などの電気機械変換素子で変形させてインクを吐出させるヘッド、振動板を静電力で変形させて液滴を吐出させるヘッドなど、各種のヘッドを用いることができる。
【0041】
また、記録ヘッド1の下方側には、記録ヘッド1に対応して回復桶5を配置している。この回復桶5の上部には、ゴム等の弾性体からなるキャップ手段6を設けている。このキャップ手段6は待機時には記録ヘッド1の吐出口面3に圧接されることにより、複数の吐出口列2A〜2Dの外側の領域で吐出口面3の周辺を密閉する。
【0042】
回復桶5の内部には吐出口列2A〜2Dに対応してインク除去払拭部材7A〜7Dを配置している。このインク除去払拭部材7a〜7は待機状態で吐出口列2A〜2Dを密閉し、キャップ手段6と併せて吐出口でのインク粘度増加を防止する。
【0043】
一方、用紙4を搬送する搬送装置としては静電吸着方式の搬送手段を用いている。すなわち、帯電ベルト8は、絶縁層を有し、メインローラ9と従動ローラ10とに掛け渡されており、矢印A方向に周回するように構成されている。帯電ベルト8の内側には、フルラインヘッドである記録ヘッド1に対応する位置に、用紙4の平面性を保持するためのプラテン11を配置している。
【0044】
また、帯電ベルト8に接して帯電ローラ12を設け、この帯電ローラ12は帯電ベルト8に対して従動する構成としている。帯電ローラ12は導電ゴムを主体としており高圧回路13によって高圧が印加されて帯電ベルト8を帯電させる。制御回路14は高圧回路13の出力をプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すようにコントロールする。これにより、帯電ベルト8上の帯電パターンは、帯電ベルト8の周回方向である副走査方向にプラスとマイナスが所定の幅の帯状に交互に帯電されたパターンとなる。
【0045】
用紙4が給紙ローラ15a、15bにより給紙されると、用紙4が帯電ベルト8上に吸着されて搬送され、記録ヘッド1の直下で、吐出口列2A〜2Dよりインクが吐出され記録が行われる。
【0046】
ここで、回復桶5とインク除去払拭部材7A〜7Dの構成について図2及び図3を参照して説明する。
インク除去払拭部材7A〜7Dは、図2に示すように、いずれも、軸部材17と、この軸部材17の周囲に設けられた弾性部材18とから構成している。軸部材17は、一端が閉じられ、他端が開放された内部に中空部17aを有する有底のパイプ状に形成している。
【0047】
そして、図3に示すように、軸部材17の中空部17aの開放側は、回復桶5の一方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部はインクを排出する排出口19A〜19Dとなっている。この排出口19A〜19Dはチューブ等により、インク加圧循環系の吸引ポンプ20A〜20Dに接続している。また、他方の閉塞側は回復桶5の他方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部には歯車21A〜21Dを取り付けている。さらに、軸部材17には記録ヘッド1の複数の各吐出口列2A〜2Dを幅方向に全て覆う領域にインク排出開口22を形成している。
【0048】
一方、弾性部材18は、ゴムや樹脂等の弾性体からなり、その周囲方向に複数のスリット開口23を形成している。この複数のスリット開口23の内の1つのスリット開口だけが軸部材17のインク排出開口22に対応している。
【0049】
次に、このように構成した回復装置によって加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を保守回復させる方法、及び吐出口のワイピング方法について説明する。
【0050】
まず、記録ヘッド内にインクを充填させて吐出口を回復させる保守回復装置として前述したインク加圧循環系を用いる。加圧ポンプによりヘッド1の吐出口列2A〜2Dから空気と共にインクを排出し、このインクをサブタンクに回収し、このインクを再利用する。
【0051】
ここでは、吐出口列2A〜2Dはインク除去払拭部材7A〜7Dの弾性部材18によりその周囲を密閉されている。このため、吐出口列2A〜2Dから吐出されたインクは、吐出口面3の全面を覆うことがなく、各インクはインク除去払拭部材7A〜7Dのインク排出開口22を通じて軸部材17の中空部17aに排出される。この軸部材17の中空部17aに排出されたインクは、吸引ポンプ20A〜20Dにより排出口19A〜19Dに導かれ、サブタンクに回収され、再利用される。
【0052】
このとき、インク除去払拭部材7A〜7Dの軸部材17の中空部17aの容積が小さいため、吸引ポンプ20A〜20Dの容量を大きくすることなく、かつ効率良くインクを吸引することができる。
【0053】
このようにして吐出口列2A〜2Dの吐出口からの回復動作を終了後にワイピングを行う。このワイピングは、歯車21A〜21Dをモータなどの図示しない駆動源に係合してインク除去払拭部材7A〜7Dの軸部材17が回転するように駆動制御して行う。
【0054】
この場合、インク除去払拭部材7A〜7Dの弾性部材18の回転時のモータへの負荷が少なくなるように、弾性部材18の材質、圧縮量及びスリット開口22の数と幅は決定している。その結果、弾性部材18がワイピングブレードとしての機能を有することとなり、各吐出口列2A〜2D周辺の吐出口面はワイピングにより清掃される。
【0055】
また、このワイピング時の回転制御方法としては、時計方向、反時計方向、及びその両方向に回転制御可能であるが、排出口19A〜19Dがチューブ等によりインク加圧循環系の吸引ポンプ20A〜20Dに接続されていることから、例えば時計方向と反時計方向に1/2回転を複数回繰り返す制御方法を採用することが好ましい。
【0056】
このように、複数色のインクに対応する複数の吐出口からなる複数の吐出口列が同一の吐出口面に形成された記録紙ヘッドに本発明に係る回復装置を適用した場合、各吐出口列がそれらに対応した独立のインク除去払拭部材に圧接されるため、吐出口面が複数のインクで混色されることはない。また、インク除去払拭部材の容積の小さい軸部材の中空部からインクを吸引するため、インクの吸引を効率良く行うことができる。さらに、キャップ手段と弾性部材の両方で吐出口を密閉するため、2重密閉構造となり、待機時や放置時のインク乾燥に伴う粘度増加を確実に防止することができ、インク増粘に対する長期信頼性が著しく向上する。
【0057】
次に、予備吐出による保守回復、回復動作のシーケンスについて図4を参照して説明する。
記録開始の指令が発せられると、図4(a)に示す待機状態で、記録ヘッド1を正常なインク吐出状態に回復するため、吐出口列2A〜2Dの吐出口から予備吐出を行う。この予備吐出は、各記録ヘッド1を駆動することにより、各インク除去払拭部材7A〜7Dに向けてインクを吐出させることにより行う。その後、前述の方法で吐出口面3はワイピングにより清掃する。
【0058】
次に、図4(b)に示すように、記録ヘッド1を一定量だけ矢印D方向に上昇させることにより、各記録ヘッド1の吐出口面3をインク除去払拭部材7A〜7D及びキャップ手段6から離隔させる。そして、回復桶5を矢印E方向に所定量だけ移動させ、記録ヘッド1の吐出口面3が用紙4に直接対向するようにする。
【0059】
続いて、図4(c)に示すように、記録ヘッド1を、帯電ベルト8上の用紙4に記録可能な状態になる記録位置まで、矢印F方向に下降させる。そして、用紙4の搬送に同期して記録ヘッド1を記録データに基づいて駆動することにより、用紙4に対する記録を行う。記録終了時には、記録ヘッド1を上昇させ、回復桶5を水平方向に記録ヘッド1の下に移動させ、記録ヘッド1を下降させることにより、図4(a)の待機状態に復帰する。
【0060】
このように、本回復装置における回復動作のシーケンスでは、インク除去払拭部材の回転によりワイピングが可能となるため、回復動作のシーケンスが簡素化され、回復動作に要する時間が短くなる。
【0061】
さらに続いて、密閉部材24の作用について上述した図4(a)〜(c)を参照して説明する。
密閉部材24は記録ヘッド1に一体的に設けられていて、記録ヘッド1の昇降動作と同期して昇降することが好ましい。また、密閉部材24は回復桶5のキャップ手段6を覆う大きさに形成している。
【0062】
前述した図4(c)に示すように、記録ヘッド1を用紙4に記録可能な状態になる記録位置まで下降させた場合、密閉部材24はキャップ手段6に圧接して密閉すると共に、インク除去払拭部材7A〜7Dの弾性部材18と圧接してスリット開口23を密閉するように設定される。このため、図4(c)の記録時においても、インク加圧循環系の吸引ポンプ20A〜20Dの動作により、インク除去払拭部材7A〜7Dの軸部材17の排出口19A〜19Dからインクをサブタンクに回収することができる。
【0063】
このように、密閉部材を記録ヘッドと一体的に設け、記録ヘッドの昇降動作に併せて記録時にキャップ手段及びインク除去払拭部材の弾性部材を密閉できるようにすることで、回復動作時間を短縮することができる。それとともに、記録時にもキャップ内に残ったインクを効率良く排出することができるため、インク系全体のインク粘度増加を防止することができる。
【0064】
次に、本発明に係る回復装置を含む本発明に係るインクジェット記録装置の第2実施形態について図5ないし図7を参照して説明する。なお、図5は同記録装置の要部模式的構成図、図6は同記録装置の回復装置の要部拡大説明図、図6は同回復装置の平面説明図である。
【0065】
ヘッドホルダ30は上下方向に移動可能な構成となっており、4個の記録ヘッド31A〜31Dが記録紙34の搬送方向に個々に所定間隔で位置決め固定されている。ここで、記録ヘッド31A〜31Dは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを吐出する記録ヘッドであり、記録紙34の記録幅を略覆う長さを有するフルライン型ヘッドである。
【0066】
この記録ヘッド31A〜31Dとしては、例えば、サーマル方式のヘッドであり、用紙の記録面に対向してインク吐出口が記録面全域に亘って複数個形成されるインク吐出部を有しており、各インク吐出口は、図5の紙面垂直方向に所定の間隔で形成されている。この間隔は、画像品質の点から600dpi以上の記録密度に相当する間隔であることが好ましい。また、各インク吐出口は各インク流路に連通し、各インク流路内には、インクを加熱し膜沸騰現象によりインク吐出口を通じて液滴として吐出させる電気熱変換体(発熱体素子)としてのヒータが保護層を介して形成されている。
【0067】
なお、記録ヘッド31A〜31Dは、サーマル型に限らず、振動板を圧電素子などの電気機械変換素子で変形させてインクを吐出させるヘッド、振動板を静電力で変形させて液滴を吐出させるヘッドなど、各種のヘッドを用いることができるが、吐出口の高密度化、長尺化の容易性等の点からサーマル方式の記録ヘッドを使用することが有利である。
【0068】
回復桶ホルダ35は、金属や樹脂で形成され、記録ヘッド31A〜31Dに対して左右方向に移動可能な構成となっており、その溝部に記録ヘッド31A〜31Dに対応する回復桶36A〜36Dが配置される。さらに、回復桶ホルダ35には記録ヘッド31A〜31Dが記録時に記録紙34に近接するために通過する開口37A〜37Dが設けられている。
【0069】
回復桶36A〜36D(以下「回復桶36」とも総称する。)は、、いずれも記録ヘッド31A〜31D(以下「記録ヘッド31」とも総称する。)の吐出面33を覆うキャップ部材38が、回復桶ホルダ35の溝底部に、ガイド枠39に保持されて配置される。
【0070】
このキャップ部材38はゴム等の弾性体で一体的に形成されており、その一方の底部にはキャップ部材38内に排出されたインクを各吸引ポンプ40A〜40Dでサブタンクに排出するための排出口41A〜41Dを形成している。また、キャップ部材38の先端は吐出口列32を形成する吐出口面33に圧接されて吐出口面33を密閉するようにしている。
【0071】
そして、各キャップ部材38の内部には、インク除去払拭部材44A〜44Dが配置される。このインク除去払拭部材44A〜44D(以下「インク除去払拭部材44」とも総称する。)は、いずれも、軸部材45と、この軸部材45の周囲に設けられた弾性部材46とから構成される。
【0072】
軸部材45としては耐インク性に優れるSUSや樹脂などを使用することができる。この軸部材45の一方は回復桶ホルダ35の一方の側面まで延びて回転可能に保持され、他方は回復桶ホルダ35の他方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部には歯車48A〜48Dが取り付けられている。この歯車48A〜48Dはモーターなどの図示しない駆動源によって駆動制御されることにより、時計方向、反時計方向、及びその両方向に回転可能となっている。
【0073】
また、軸部材45にはインク排出開口49が形成されている。このインク排出開口49の幅は、記録ヘッド31A〜31Dの吐出口から排出されるインクの抵抗が大きくならない所望の幅に設定される。また、このインク排出開口49の長さは、記録ヘッド31A〜31Dの吐出口列32(紙面に垂直方向に入れる)を全て覆う長さで形成される。
【0074】
弾性部材46はゴムや樹脂等の弾性体からなり、その周囲方向に複数のスリット開口50が形成されている。このスリット開口50の幅と長さはインク排出開口49の幅と長さに略一致して設定される。この複数のスリット開口50の一部はインク排出開口49に対応し、吐出口列32の吐出口から排出されたインクは、スリット開口50及びインク排出開口49を経て、キャップ部材38の底部に排出される。
【0075】
次に、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法及び吐出口をワイピングする方法について説明する。
記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法には前述したインク加圧循環系を用いる。
【0076】
加圧ポンプにより記録ヘッド31A〜31Dの吐出口列32の吐出口より空気と共にインクを排出し、回復桶36A〜36Dのインクを吸引ポンプ40A〜40Dでサブタンクに回収し、このインクを再利用する。加圧ポンプにより吐出口列32より空気と共にインクを排出する時、吐出口面33はキャップ部材38によりその周囲で密閉され、更に吐出口列32周辺の領域はインク除去払拭部材44A〜44Dの弾性部材46でシールされている。
【0077】
したがって、インク排出時には弾性部材46でシールされた内側領域部分のみがインクで覆われ、吐出口面33全体がインクで覆われることはない。吐出口列32の吐出口より排出されたインクは、インク排出開口49からキャップ部材38の底部に導かれる。このキャップ部材38の底部のインクは、吸引ポンプ40A〜40Dにより排出口41A〜41Dを経てサブタンクに回収され再利用される。
【0078】
この後、インク除去払拭部材44A〜44Dの弾性部材46は、歯車48A〜48Dがモーターなどの図示しない駆動源により駆動されて回転される。このとき、インク除去払拭部材44A〜44Dの弾性部材46の回転によるモーターへの負荷が少なくなるように、弾性部材46の材質、圧縮量、及びスリット開口50の数と幅が決定される。この結果、弾性部材46がブレードとしての機能を有することとなり、吐出口面33はワイピングにより清掃される。
【0079】
続いて、記録ヘッド31A〜31Dと回復桶36A〜36Dの保守回復時の動作と予備吐出による保守回復について図8を参照して説明する。
記録開始の指令が発せられると、図8(a)に示す記録ヘッド31A〜31D及び回復桶ホルダ35の待機状態で、記録ヘッド31A〜31Dを正常なインク吐出状態に回復するため、記録ヘッド31A〜31Dの予備吐出を行う。この予備吐出は、各記録ヘッド31A〜31Dを駆動することにより、各回復桶36A〜36Dのキャップ部材38内にインクを吐出させることにより行う。
【0080】
その後、図8(b)に示すように、ヘッドホルダ30を一定量だけ矢印G方向に上昇させることにより、各記録ヘッド31A〜31Dの吐出口面33を各キャップ部材38から離隔させる。そして、回復桶ホルダ35を矢印H方向に所定量だけ移動させ、各記録ヘッド31A〜31Dを回復桶ホルダ35に設けられた開口37A〜37Dに対向させる。
【0081】
次いで、図8(c)に示すように、各記録ヘッド31A〜31Dを図示しない帯電ベルト(第1実施形態の用紙搬送装置と同様な構成)上の記録紙34に記録可能な状態になる記録位置までヘッドホルダ30を下降させて記録ヘッド31A〜31Dを開口37A〜37Dを通して矢印I方向に下降させる。
【0082】
そして、記録紙34の搬送に同期して各記録ヘッド31A〜31Dを記録データに基づいて駆動することにより、該記録紙34に対する記録を行う。記録終了時には、記録ヘッド31A〜31Dを上昇させ、回復桶ホルダ35を水平方向に移動させ、記録ヘッド31A〜31Dを上昇させることにより、図8(a)の待機状態に復帰させることができる。
【0083】
このように、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復動作中に吐出口全面がインクで汚されることを防ぐことができる。このため、従来ワイピング時に生じていたブレードの跳ね返りによるインク飛散を防止することができる。また、予備吐出とワイピングによる保守回復時の回復動作のシーケンスが簡素化され、回復動作を短時間で行うことができる。さらに、キャップ手段と弾性部材の両方で吐出口を密閉するため、2重密閉構造となり、待機時や放置時のインク乾燥に伴う粘度増加を確実に防止することができ、インク増粘に対する長期信頼性が著しく向上する。
【0084】
次に、本発明の第3実施形態について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は1つの記録ヘッド及び回復桶の拡大説明図、図10は図9の回復桶部分の平面説明図である。
この実施形態が第2実施形態と異なるところは、インク除去払拭部材54の構成である。インク除去払拭部材54は、軸部材55と、この軸部材55の周囲に設けられた弾性部材56とから構成される。ここで、軸部材55は一端が閉塞され、他端が開放された中空部55aを有する有底パイプ状となっている。
【0085】
軸部材55の開放側は回復桶ホルダの一方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部はインクを排出する排出口61が形成されている。また、他方の閉塞側は回復桶ホルダの他方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部には歯車48が取り付けられている。また、軸部材54には記録ヘッド31の複数の吐出口からなる吐出口列32を全て覆う長さでインク排出開口59が形成されている。
【0086】
弾性部材56は、ゴムや樹脂等の弾性体からなり、その周囲方向に複数のスリット開口60が形成されている。この複数のスリット開口60の内の1つのスリット開口だけが軸部材55のインク排出開口59に対応している。キャップ部材38の排出口41と軸部材55端部の排出口の両者は切換え弁62を介して吸引ポンプ40に接続されている。
【0087】
次に、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を保守回復させる方法について説明する。
記録ヘッド31の吐出口面33はキャップ部材38によりその周囲で密閉され、更に吐出口列32の吐出口周辺の領域は弾性部材56で密閉されている。このため、インクは、吐出口面33の全面を覆うことがなく、インク排出開口59から軸部材55の中空部55aに排出される。このとき、切換え弁62は排出口61と吸引ポンプ40間を開状態に、排出口41と吸引ポンプ40間を閉状態になるように制御される。
【0088】
その結果、吐出口列32の吐出口から排出されたインクは、インク排出開口59から軸部材55の中空部55aを通って排出口61に導かれ、サブタンクに回収、再利用される。このとき、インク除去払拭部材44A〜44Dの軸部材44の中空部分容積が小さいため、効率良くインクを吸引することができる。この後、歯車48A〜48Dを図示しないをモーターなどで駆動制御することにより吐出口面33をインク除去払拭部材54A〜54Dの弾性部材56でワイピングする。
【0089】
以上の保守回復方法ではキャップ部材38内にインクが流出しないため、通常はキャップ部材38の排出口41からのインク吸引を必要としない。何らかの原因でインクがキャップ部材38内に流出した場合には、切換え弁62を、排出口61と吸引ポンプ40との間を閉状態に、排出口41と吸引ポンプ40間を開状態になるように切り換換制御することにより、キャップ部材38内のインクを吸引回収することができる。
【0090】
なお、記録ヘッド31と回復桶36の保守回復時の動作と予備吐出による保守回復については第2実施形態と同じである。
【0091】
このように、本実施形態では、第2実施形態の効果に加えて、第1実施形態よ同様に、容積の小さい軸部材55の中空部のインクを吸引するため、インクの吸引を効率良く行うことができる。また、キャップ部材38と弾性部材56の両方で記録ヘッドの吐出口面を密閉するため、待機時や放置時の吐出口でのインク乾燥に伴う粘度増加を確実に防止することができる。
【0092】
次に、本発明の第4実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は1つの記録ヘッド及び回復桶の拡大説明図、図12は図11の回復桶部分の平面説明図である。
この実施形態では、記録ヘッド71の外周部に、記録ヘッド71の吐出口列72を有する吐出口面73に対して後退した位置にキャップ受け面74が配置されるキャップ受け部材75を設けている。また、キャップ部材38の内部には第1実施形態のインク除去払拭部材7A〜7Dと同様な構成のインク除去払拭部材7を配置している。
【0093】
したがって、待機状態では、キャップ部材38はキャップ受け面74を、インク除去払拭部材7の弾性部材18は記録ヘッド71の吐出口面72を密閉している。
【0094】
そして、加圧手段によるインク排出と吸引回収方法は第3実施形態と同じであり、記録ヘッド71の吐出口からのインクは排出口61を介して吸引ポンプ40でサブタンクに回収される。この後、歯車48をモーターなどの駆動源で駆動することにより記録ヘッド71の吐出口面72を弾性部材18でワイピングする。
【0095】
このとき、インク除去払拭部材7の弾性部材18のスリット開口23の幅を、吐出口面72の幅より大きく設定することにより、吐出口面72の全面をワイピングすることができる。
【0096】
このように、本実施形態では、第3実施形態の効果に加えて、吐出口面の全面をワイピングすることができるため、吐出口面に付着した記録時の跳ね返りミストや異物に起因するインク吐出不良を確実に防止することができる。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置によれば、記録ヘッドの吐出口列の吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口面を清掃するための複数の吐出口列に対応するインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口面を密閉するキャップ手段とを有する構成としたので、簡単なシーケンスで且つ短時間で保守回復を行うことができるようになるとともに、増粘に対する長期信頼性にも優れ、更に混色を防止することができる。
【0098】
また、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置によれば、ヘッドの吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口を形成した吐出口面を清掃するためのインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口を密閉するキャップ手段とを有する構成としたので、簡単なシーケンスで且つ短時間で保守回復を行うことができるようになるとともに、増粘に対する長期信頼性にも優れる。
【0099】
本発明に係るインクジェット記録装置は、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置を備えているので、保守回復動作に要する時間が短くなり、また長期信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第1実施形態の要部模式的構成図
【図2】同記録装置の回復装置の要部構成図
【図3】同回復装置の平面説明図
【図4】同回復装置による予備吐出による保守回復、回復動作のシーケンスの説明に供する説明図
【図5】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第2実施形態の要部模式的構成図
【図6】同記録装置の回復装置の要部拡大説明図
【図7】同回復装置の平面説明図
【図8】同回復装置の保守回復時の動作と予備吐出による保守回復の説明に供する説明図
【図9】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第3実施形態の要部拡大説明図
【図10】同記録装置の回復装置の平面説明図
【図11】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第4実施形態の要部拡大説明図
【図12】同記録装置の回復装置の平面説明図
【図13】従来の回復装置の説明に供する要部模式的構成図
【図14】同回復装置による保守回復シーケンスの説明に供する説明図
【図15】図14に続くシーケンスの説明に供する説明図
【図16】図15に続くシーケンスの説明に供する説明図
【図17】従来のインク加圧循環による保守回復装置の説明に供する説明図
【符号の説明】
1…インクジェット記録ヘッド、2A〜2D…吐出口列、3…吐出口面、5…回復桶、6…キャップ手段、7A〜7D…インク除去払拭部材、17…軸部材、18…弾性部材、19…排出口、22…インク排出開口、23…スリット開口、30…ヘッドホルダ、31A〜31D…インクジェット記録ヘッド、35…回復桶ホルダ、36A〜36D…回復桶、44A〜44D…インク除去払拭部材、45…軸部材、46…弾性部材、49…インク排出開口、50…スリット開口。
【産業上の利用分野】
本発明はインクジェット記録ヘッド用回復装置及びインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平7−246711号公報
【特許文献2】特開平11−105303号公報
【0003】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の機能を有する記録装置、コンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、画像情報(記録情報)に基づいて紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の被記録材(被記録媒体)に文字や記号等を含む画像を記録するものである。
【0004】
このような記録装置には種々の方式があるが、そのうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録ヘッドから被記録媒体にインクを吐出して記録を行うものであり、ヘッドのコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、普通紙に特別の処理を必要とせずに記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少なく、しかも、多種類のインク(例えばカラーインク)を使用してカラー画像を形成するのが容易であるなどの利点を有している。
【0005】
特に、被記録媒体の搬送方向幅にわたって一度に記録できる、いわゆるフルライン型の長い記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置はシリアル型のインクジェット記録装置に比べ格段の記録の高速化が可能である。
【0006】
ところで、インクジェット記録装置においては、微細な吐出口からインク滴を吐出させることから、乾燥によるインクの増粘や固着、あるいはインク中に生じる気泡などに起因して、吐出口に目詰まりが発生し、吐出不良になることがある。そこで、このような吐出不良を防止するために、インク吐出機能を正常な状態に維持回復するための回復装置が設けられている。
【0007】
このような回復装置による回復方法としては、例えば、記録中に吐出口内に発生した気泡などで吐出不良になると、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法、吐出口内でのインクの自然蒸発によるインクの増粘固着に備えて予備吐出を行う保守回復方法、吐出口面に付着したインク滴やほこりなどを拭き取りワイピングする保守回復方法などの一つ又は二つ以上を適宜組み合わせたものが用いられている。
【0008】
そこで、まず、
【特許文献1】に開示されている予備吐出とワイピングによる回復方法について、フルライン型インクジェット記録装置に好適に用いられる記録紙搬送系とともに図13を参照して説明する。
【0009】
上下方向に移動可能なヘッドホルダ100には4個の記録ヘッド102A〜102Dが個々に位置決め固定されている。ここで、記録ヘッド102A〜102Dはブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを吐出する記録ヘッドであり、図11に示す待機時には、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面は、回復桶ホルダ103に設けられた4個のゴム状弾性体のキャップ104A〜104Dにより個別にキャッピングされている。
【0010】
回復桶ホルダ103は、記録ヘッド102A〜102Dのインク吐出口の周囲を囲むようにゴム状弾性体で形成された前記キャップ104A〜104Dと、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面に付着したインクを拭き取りワイピングするために各記録ヘッド102A〜102Dに対応して配設されたゴム状弾性体のブレード105A〜105Dから成る清掃手段とを備えている。
【0011】
ヘッドホルダ100は、図示しないヘッド昇降駆動源により上下方向(矢印A方向)に移動可能に構成されている。また、回復桶ホルダ103は、図示しない回復桶移動駆動源により、同図中の左右方向(矢印B方向)に移動可能に構成されている。
【0012】
一方、帯電ベルト109は、絶縁層を有し、メインローラ110と従動ローラ111とに掛け渡されており、矢印C方向に周回するように構成されている。帯電ベルト109の内側には、フルラインヘッドである記録ヘッド102A〜102Dに対応する位置に、記録紙106の平面性を保持するためのプラテン112が配置されている。
【0013】
帯電ベルト109に接して帯電ローラ113が設けられており、帯電ローラ113は帯電ベルト109に対して従動する構成としてある。帯電ローラ113は導電ゴムを主体としており高圧回路114によって高圧が印加され帯電ベルト109を帯電させる。制御回路115は高圧回路114の出力をプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すようにコントロールする。その結果、帯電ベルト109上の帯電パターンは、記録紙106の周回方向である副走査方向にプラスとマイナスが所定の幅の帯状に交互に帯電されたものとなる。
【0014】
そして、プラス、マイナス交互に帯電した帯電ベルト109上に記録紙106が給紙ローラ107A、107Bにより給紙されると、記録紙106内で帯電パターンと反対の電荷に分極するので、平行接続されたコンデンサが形成されたこととなり、記録紙106が吸着搬送される。また、記録紙106が帯電ベルト109より分離した後には、安定した帯電を行うことを目的として除電ブラシ116が設けられている。
【0015】
次に、予備吐出とワイピングによる保守回復方法を図14ないし図16を参照して説明する。
記録開始の指令が発せられると、図13に示す記録ヘッド102A〜102D及び回復桶ホルダ103の待機状態スタンバイ状態で、記録ヘッド102A〜102Dを正常なインク吐出状態に回復するため、該記録ヘッド102A〜102Dの予備吐出を行う。この予備吐出は、各記録ヘッド102A〜102Dの駆動により、各キャップ104A〜104D内にインクを吐出させることにより行う。
【0016】
その後、図14(a)に示すように、ヘッドホルダ100を一定量だけ矢印D方向に上昇させることにより、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面を各キャップ104A〜104Dから離隔させる。そして、回復桶ユニットを矢印E方向に所定量だけ移動させることにより、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面に対応するブレード105A〜105Dを摺擦させ、各吐出口面を個別に拭き取り清掃する。図14(b)は各ブレード105A〜105Dによる各記録ヘッド102A〜102Dの拭き取りワイピングを完了した時の状態を示す。
【0017】
次いで、図15(a)示すように、ヘッドホルダ100を矢印F方向に所定量だけ移動させることにより、各記録ヘッド102A〜102Dの吐出口面が各ブレード105A〜105Dの先端とオーバーラップしない位置まで上昇させる。その後、回復桶ホルダ103を矢印G方向に移動させ、ヘッドホルダ100を矢印H方向に下降させることにより、図15(b)に示すように元の待機位置に復帰させ、この待機状態で各記録ヘッド102A〜102Dを駆動して少量の予備吐出、つまり補助的予備吐出を行う。
【0018】
この補助的予備吐出を終了した後、図16(a)に示すように、ヘッドホルダ100を矢印I方向に上昇させ、次いで回復桶ホルダ103を矢印J方向に移動させる。それに続いて、図16(b)に示すように、各記録ヘッド102A〜102Dが搬送ベルト109上の記録紙に記録可能な状態になる記録位置までヘッドホルダ100を矢印K方向に下降させる。そして、記録紙の搬送に同期して各記録ヘッド102A〜102Dを記録データに基づいて駆動することにより、記録紙に対する記録を行う。
【0019】
次に、
【特許文献2】に開示されている加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法と、インク加圧循環方法について図17を用いて説明する。
加圧循環方法でのインク系は、インクを吐出して記録を行う記録手段としての記録ヘッド117と、多量のインクを貯留するインクカートリッジ等のようなインクタンク118と、インクを一時的に貯留し、かつ大気連通口121と電極インク残量検知センサ122を有するサブタンク119と、記録ヘッド117から吐出されたインクを受けて回復処理するための回復桶120と、記録ヘッド117にインクを供給するための第1ポンプ123と、インクタンク118からサブタンク119にインクを供給する第2ポンプ124と、回復桶120からインクを回収する吸引ポンプ等のような第3ポンプ125とから構成される。
【0020】
インクカートリッジ等のようなインクタンク118内に貯留されているインクが、第2ポンプ124等の手段によってサブタンク119の所定の液位までインクが供給されて貯留され、記録ヘッド117にインクが供給可能な状態となる。
【0021】
記録ヘッド117の吐出回復時(図14(a)の状態)では、第1ポンプ123によってインク加圧循環が行われて、記録ヘッド117の回復処理が行われる。このとき、記録ヘッド117の吐出口から空気と共に吐出されたインクは、回復桶120によって受けられ、第3ポンプ125の吸引によってサブタンク119に回収される。この後、前述の方法(図14ないし図16)で、ワイピングを行い、再び記録可能な状態にする。
【0022】
印字時、すなわち記録時(図16(b)の状態)では、記録ヘッド117からインクが記録紙に対して吐出されて記録が行われ、サブタンク119内のインクが消費される。記録時にサブタンク119のンクが消費され、電極インク残量検知センサ122が液面低下を検知すると、液面を所定の液位まで戻す。これらの動作を繰り返し、やがてインクカートリッジ118のインクが無くなるとインクカートリッジ118を交換する。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上説明した予備吐出とワイピングによる保守回復方法では、ヘッドホルダーの昇降動作と回復桶ユニットの移動動作とをそれぞれ複数回にわたって行う必要があり、回復動作のシーケンスが複雑になり、回復動作に時間がかかるという課題がある。この場合、回復動作のシーケンスを簡単にするために、吐出口面を拭き取り清掃した後の予備吐出インクを受けるインク収容手段を拭き取り清掃手段の上流側に配置する方法もあるが、この場合においても、拭き取り清掃のためのシーケンスは大幅に簡素化されるに至っていない。
【0024】
また、上述した加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法では、回復動作中に吐出口全面がインクで汚されるために多量のインクを一度のワイピングで除去することができないこと、ブレードの跳ね返りによるインク飛散が記録紙上の画像劣化を引き起こす等の課題がある。
【0025】
この場合、インク除去部材をキャップ内に設け、吐出口全面がインクで汚されることを防止する方法(特開平11−309871号公報、特開平11−342632号公報)、また、ブレードによるインク飛散を防止するため、ブロック部材をブレードの周辺に設ける方法(特開平11−334092号公報)などもあるが、これらの方法においても、気泡がインク吐出口内に引きこまれた状態でインクを加圧すると、インクと気泡が混在した形で吐出口から流出するため、吐出口全面のインクによる汚れは避けられない。このため、ワイピングを複数回行うことが必要となり、この複数回のワイピングによる回復動作には上述の説明で明らかなように非常に多くの時間を必要とするという課題は解決されない。
【0026】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、回復動作を簡単なシーケンスで、且つ短時間で保守回復を行うことができ、長期信頼性にも優れたインクジェット記録ヘッド用回復装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置は、複数の吐出口からなる複数列の吐出口列が同一の吐出口面に形成されたインクジェット記録ヘッドの吐出口列の吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口面を清掃するための複数の吐出口列に対応するインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口面を密閉するキャップ手段とを有する構成とした。
【0028】
ここで、インク除去払拭手段は、一方が閉じられ、他方に排出口を有する中空状で、その一部に排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に設けられ、吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とを有し、軸部材の排出開口は弾性部材のスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、ヘッドの吐出口列から排出されるインクは軸部材の排出口より排出されることが好ましい。
【0029】
この場合、ヘッドによる記録時に、キャップ手段と、インク除去払拭手段のスリット開口を密閉する密閉手段を備えていることが好ましく、この密閉手段は、ヘッドと一体的に設けられ、ヘッドの昇降動作に合わせて昇降可能に設けられていることが好ましい。
【0030】
本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置は、ヘッドの吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口を形成した吐出口面を清掃するためのインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口を密閉するキャップ手段とを有する構成とした。
【0031】
ここで、場合インク除去払拭手段は、キャップ手段の排出口に連通するインク排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に配設され、吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とからなり、軸部材の排出開口はスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、ヘッドの吐出口から排出されるインクはキャップ手段の排出口より排出されることが好ましい。
【0032】
あるいは、インク除去払拭手段は、一方が閉じられ、他方に排出口を有する中空状で、その一部に排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に設けられ、吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とを有し、軸部材の排出開口は弾性部材のスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、ヘッドの吐出口から排出されるインクは軸部材の排出口より排出されることが好ましい。
【0033】
これらの場合、インク除去払拭手段は、ヘッドの吐出口面の全体を覆うように圧接され、キャップ手段はヘッドの側面に配設されたキャップ受け部材の下面に圧接されるこが好ましい。
【0034】
また、本発明に係るインクジェット記録用回復装置において、インク除去払拭手段は回転可能に配設され、このインク除去払拭手段の回転により吐出口面を清掃することが好ましい。
【0035】
本発明に係るインクジェット記録装置は、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置を備えているものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。本発明に係る回復装置を含む本発明に係るインクジェット記録装置の第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の要部模式的構成図、図2は同記録装置の回復装置の要部構成図、図3は同回復装置の平面説明図である。
【0037】
このインクジェット記録装置は、フルライン型インクジェット記録装置であり、被記録媒体(以下「用紙」又は「記録紙」というが、紙に限定するものではない。)に対してインク滴を吐出して画像を形成するためのフルライン型のインクジェット記録ヘッド1を備えている。
【0038】
この記録ヘッド1は、複数の色に対応する、複数の吐出口からなる複数の吐出口列2A〜2Dが同一の吐出口面3に形成されたヘッドである。各吐出口列2A〜2Dは、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各インクに対応しており、用紙4の記録幅を略覆う長さを有している。
【0039】
この記録ヘッド1としては、例えば、サーマル方式のヘッドを用いることができ、用紙の記録面に対向してインク吐出口が記録面全域に亘って複数個形成されるインク吐出部を有しており、各インク吐出口は、図1の紙面垂直方向に所定の間隔で形成されている。この間隔は、画像品質の点から600dpi以上の記録密度に相当する間隔であることが好ましい。また、各インク吐出口は各インク流路に連通し、各インク流路内には、インクを加熱し膜沸騰現象によりインク吐出口を通じて液滴として吐出させる電気熱変換体(発熱体素子)としてのヒータが保護層を介して形成されている。この場合、各吐出口列2A〜2Dの各吐出口に対応する電気熱変換体は一枚の基板上に形成されている。
【0040】
なお、記録ヘッド1は、サーマル型に限らず、振動板を圧電素子などの電気機械変換素子で変形させてインクを吐出させるヘッド、振動板を静電力で変形させて液滴を吐出させるヘッドなど、各種のヘッドを用いることができる。
【0041】
また、記録ヘッド1の下方側には、記録ヘッド1に対応して回復桶5を配置している。この回復桶5の上部には、ゴム等の弾性体からなるキャップ手段6を設けている。このキャップ手段6は待機時には記録ヘッド1の吐出口面3に圧接されることにより、複数の吐出口列2A〜2Dの外側の領域で吐出口面3の周辺を密閉する。
【0042】
回復桶5の内部には吐出口列2A〜2Dに対応してインク除去払拭部材7A〜7Dを配置している。このインク除去払拭部材7a〜7は待機状態で吐出口列2A〜2Dを密閉し、キャップ手段6と併せて吐出口でのインク粘度増加を防止する。
【0043】
一方、用紙4を搬送する搬送装置としては静電吸着方式の搬送手段を用いている。すなわち、帯電ベルト8は、絶縁層を有し、メインローラ9と従動ローラ10とに掛け渡されており、矢印A方向に周回するように構成されている。帯電ベルト8の内側には、フルラインヘッドである記録ヘッド1に対応する位置に、用紙4の平面性を保持するためのプラテン11を配置している。
【0044】
また、帯電ベルト8に接して帯電ローラ12を設け、この帯電ローラ12は帯電ベルト8に対して従動する構成としている。帯電ローラ12は導電ゴムを主体としており高圧回路13によって高圧が印加されて帯電ベルト8を帯電させる。制御回路14は高圧回路13の出力をプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すようにコントロールする。これにより、帯電ベルト8上の帯電パターンは、帯電ベルト8の周回方向である副走査方向にプラスとマイナスが所定の幅の帯状に交互に帯電されたパターンとなる。
【0045】
用紙4が給紙ローラ15a、15bにより給紙されると、用紙4が帯電ベルト8上に吸着されて搬送され、記録ヘッド1の直下で、吐出口列2A〜2Dよりインクが吐出され記録が行われる。
【0046】
ここで、回復桶5とインク除去払拭部材7A〜7Dの構成について図2及び図3を参照して説明する。
インク除去払拭部材7A〜7Dは、図2に示すように、いずれも、軸部材17と、この軸部材17の周囲に設けられた弾性部材18とから構成している。軸部材17は、一端が閉じられ、他端が開放された内部に中空部17aを有する有底のパイプ状に形成している。
【0047】
そして、図3に示すように、軸部材17の中空部17aの開放側は、回復桶5の一方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部はインクを排出する排出口19A〜19Dとなっている。この排出口19A〜19Dはチューブ等により、インク加圧循環系の吸引ポンプ20A〜20Dに接続している。また、他方の閉塞側は回復桶5の他方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部には歯車21A〜21Dを取り付けている。さらに、軸部材17には記録ヘッド1の複数の各吐出口列2A〜2Dを幅方向に全て覆う領域にインク排出開口22を形成している。
【0048】
一方、弾性部材18は、ゴムや樹脂等の弾性体からなり、その周囲方向に複数のスリット開口23を形成している。この複数のスリット開口23の内の1つのスリット開口だけが軸部材17のインク排出開口22に対応している。
【0049】
次に、このように構成した回復装置によって加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を保守回復させる方法、及び吐出口のワイピング方法について説明する。
【0050】
まず、記録ヘッド内にインクを充填させて吐出口を回復させる保守回復装置として前述したインク加圧循環系を用いる。加圧ポンプによりヘッド1の吐出口列2A〜2Dから空気と共にインクを排出し、このインクをサブタンクに回収し、このインクを再利用する。
【0051】
ここでは、吐出口列2A〜2Dはインク除去払拭部材7A〜7Dの弾性部材18によりその周囲を密閉されている。このため、吐出口列2A〜2Dから吐出されたインクは、吐出口面3の全面を覆うことがなく、各インクはインク除去払拭部材7A〜7Dのインク排出開口22を通じて軸部材17の中空部17aに排出される。この軸部材17の中空部17aに排出されたインクは、吸引ポンプ20A〜20Dにより排出口19A〜19Dに導かれ、サブタンクに回収され、再利用される。
【0052】
このとき、インク除去払拭部材7A〜7Dの軸部材17の中空部17aの容積が小さいため、吸引ポンプ20A〜20Dの容量を大きくすることなく、かつ効率良くインクを吸引することができる。
【0053】
このようにして吐出口列2A〜2Dの吐出口からの回復動作を終了後にワイピングを行う。このワイピングは、歯車21A〜21Dをモータなどの図示しない駆動源に係合してインク除去払拭部材7A〜7Dの軸部材17が回転するように駆動制御して行う。
【0054】
この場合、インク除去払拭部材7A〜7Dの弾性部材18の回転時のモータへの負荷が少なくなるように、弾性部材18の材質、圧縮量及びスリット開口22の数と幅は決定している。その結果、弾性部材18がワイピングブレードとしての機能を有することとなり、各吐出口列2A〜2D周辺の吐出口面はワイピングにより清掃される。
【0055】
また、このワイピング時の回転制御方法としては、時計方向、反時計方向、及びその両方向に回転制御可能であるが、排出口19A〜19Dがチューブ等によりインク加圧循環系の吸引ポンプ20A〜20Dに接続されていることから、例えば時計方向と反時計方向に1/2回転を複数回繰り返す制御方法を採用することが好ましい。
【0056】
このように、複数色のインクに対応する複数の吐出口からなる複数の吐出口列が同一の吐出口面に形成された記録紙ヘッドに本発明に係る回復装置を適用した場合、各吐出口列がそれらに対応した独立のインク除去払拭部材に圧接されるため、吐出口面が複数のインクで混色されることはない。また、インク除去払拭部材の容積の小さい軸部材の中空部からインクを吸引するため、インクの吸引を効率良く行うことができる。さらに、キャップ手段と弾性部材の両方で吐出口を密閉するため、2重密閉構造となり、待機時や放置時のインク乾燥に伴う粘度増加を確実に防止することができ、インク増粘に対する長期信頼性が著しく向上する。
【0057】
次に、予備吐出による保守回復、回復動作のシーケンスについて図4を参照して説明する。
記録開始の指令が発せられると、図4(a)に示す待機状態で、記録ヘッド1を正常なインク吐出状態に回復するため、吐出口列2A〜2Dの吐出口から予備吐出を行う。この予備吐出は、各記録ヘッド1を駆動することにより、各インク除去払拭部材7A〜7Dに向けてインクを吐出させることにより行う。その後、前述の方法で吐出口面3はワイピングにより清掃する。
【0058】
次に、図4(b)に示すように、記録ヘッド1を一定量だけ矢印D方向に上昇させることにより、各記録ヘッド1の吐出口面3をインク除去払拭部材7A〜7D及びキャップ手段6から離隔させる。そして、回復桶5を矢印E方向に所定量だけ移動させ、記録ヘッド1の吐出口面3が用紙4に直接対向するようにする。
【0059】
続いて、図4(c)に示すように、記録ヘッド1を、帯電ベルト8上の用紙4に記録可能な状態になる記録位置まで、矢印F方向に下降させる。そして、用紙4の搬送に同期して記録ヘッド1を記録データに基づいて駆動することにより、用紙4に対する記録を行う。記録終了時には、記録ヘッド1を上昇させ、回復桶5を水平方向に記録ヘッド1の下に移動させ、記録ヘッド1を下降させることにより、図4(a)の待機状態に復帰する。
【0060】
このように、本回復装置における回復動作のシーケンスでは、インク除去払拭部材の回転によりワイピングが可能となるため、回復動作のシーケンスが簡素化され、回復動作に要する時間が短くなる。
【0061】
さらに続いて、密閉部材24の作用について上述した図4(a)〜(c)を参照して説明する。
密閉部材24は記録ヘッド1に一体的に設けられていて、記録ヘッド1の昇降動作と同期して昇降することが好ましい。また、密閉部材24は回復桶5のキャップ手段6を覆う大きさに形成している。
【0062】
前述した図4(c)に示すように、記録ヘッド1を用紙4に記録可能な状態になる記録位置まで下降させた場合、密閉部材24はキャップ手段6に圧接して密閉すると共に、インク除去払拭部材7A〜7Dの弾性部材18と圧接してスリット開口23を密閉するように設定される。このため、図4(c)の記録時においても、インク加圧循環系の吸引ポンプ20A〜20Dの動作により、インク除去払拭部材7A〜7Dの軸部材17の排出口19A〜19Dからインクをサブタンクに回収することができる。
【0063】
このように、密閉部材を記録ヘッドと一体的に設け、記録ヘッドの昇降動作に併せて記録時にキャップ手段及びインク除去払拭部材の弾性部材を密閉できるようにすることで、回復動作時間を短縮することができる。それとともに、記録時にもキャップ内に残ったインクを効率良く排出することができるため、インク系全体のインク粘度増加を防止することができる。
【0064】
次に、本発明に係る回復装置を含む本発明に係るインクジェット記録装置の第2実施形態について図5ないし図7を参照して説明する。なお、図5は同記録装置の要部模式的構成図、図6は同記録装置の回復装置の要部拡大説明図、図6は同回復装置の平面説明図である。
【0065】
ヘッドホルダ30は上下方向に移動可能な構成となっており、4個の記録ヘッド31A〜31Dが記録紙34の搬送方向に個々に所定間隔で位置決め固定されている。ここで、記録ヘッド31A〜31Dは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを吐出する記録ヘッドであり、記録紙34の記録幅を略覆う長さを有するフルライン型ヘッドである。
【0066】
この記録ヘッド31A〜31Dとしては、例えば、サーマル方式のヘッドであり、用紙の記録面に対向してインク吐出口が記録面全域に亘って複数個形成されるインク吐出部を有しており、各インク吐出口は、図5の紙面垂直方向に所定の間隔で形成されている。この間隔は、画像品質の点から600dpi以上の記録密度に相当する間隔であることが好ましい。また、各インク吐出口は各インク流路に連通し、各インク流路内には、インクを加熱し膜沸騰現象によりインク吐出口を通じて液滴として吐出させる電気熱変換体(発熱体素子)としてのヒータが保護層を介して形成されている。
【0067】
なお、記録ヘッド31A〜31Dは、サーマル型に限らず、振動板を圧電素子などの電気機械変換素子で変形させてインクを吐出させるヘッド、振動板を静電力で変形させて液滴を吐出させるヘッドなど、各種のヘッドを用いることができるが、吐出口の高密度化、長尺化の容易性等の点からサーマル方式の記録ヘッドを使用することが有利である。
【0068】
回復桶ホルダ35は、金属や樹脂で形成され、記録ヘッド31A〜31Dに対して左右方向に移動可能な構成となっており、その溝部に記録ヘッド31A〜31Dに対応する回復桶36A〜36Dが配置される。さらに、回復桶ホルダ35には記録ヘッド31A〜31Dが記録時に記録紙34に近接するために通過する開口37A〜37Dが設けられている。
【0069】
回復桶36A〜36D(以下「回復桶36」とも総称する。)は、、いずれも記録ヘッド31A〜31D(以下「記録ヘッド31」とも総称する。)の吐出面33を覆うキャップ部材38が、回復桶ホルダ35の溝底部に、ガイド枠39に保持されて配置される。
【0070】
このキャップ部材38はゴム等の弾性体で一体的に形成されており、その一方の底部にはキャップ部材38内に排出されたインクを各吸引ポンプ40A〜40Dでサブタンクに排出するための排出口41A〜41Dを形成している。また、キャップ部材38の先端は吐出口列32を形成する吐出口面33に圧接されて吐出口面33を密閉するようにしている。
【0071】
そして、各キャップ部材38の内部には、インク除去払拭部材44A〜44Dが配置される。このインク除去払拭部材44A〜44D(以下「インク除去払拭部材44」とも総称する。)は、いずれも、軸部材45と、この軸部材45の周囲に設けられた弾性部材46とから構成される。
【0072】
軸部材45としては耐インク性に優れるSUSや樹脂などを使用することができる。この軸部材45の一方は回復桶ホルダ35の一方の側面まで延びて回転可能に保持され、他方は回復桶ホルダ35の他方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部には歯車48A〜48Dが取り付けられている。この歯車48A〜48Dはモーターなどの図示しない駆動源によって駆動制御されることにより、時計方向、反時計方向、及びその両方向に回転可能となっている。
【0073】
また、軸部材45にはインク排出開口49が形成されている。このインク排出開口49の幅は、記録ヘッド31A〜31Dの吐出口から排出されるインクの抵抗が大きくならない所望の幅に設定される。また、このインク排出開口49の長さは、記録ヘッド31A〜31Dの吐出口列32(紙面に垂直方向に入れる)を全て覆う長さで形成される。
【0074】
弾性部材46はゴムや樹脂等の弾性体からなり、その周囲方向に複数のスリット開口50が形成されている。このスリット開口50の幅と長さはインク排出開口49の幅と長さに略一致して設定される。この複数のスリット開口50の一部はインク排出開口49に対応し、吐出口列32の吐出口から排出されたインクは、スリット開口50及びインク排出開口49を経て、キャップ部材38の底部に排出される。
【0075】
次に、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法及び吐出口をワイピングする方法について説明する。
記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復方法には前述したインク加圧循環系を用いる。
【0076】
加圧ポンプにより記録ヘッド31A〜31Dの吐出口列32の吐出口より空気と共にインクを排出し、回復桶36A〜36Dのインクを吸引ポンプ40A〜40Dでサブタンクに回収し、このインクを再利用する。加圧ポンプにより吐出口列32より空気と共にインクを排出する時、吐出口面33はキャップ部材38によりその周囲で密閉され、更に吐出口列32周辺の領域はインク除去払拭部材44A〜44Dの弾性部材46でシールされている。
【0077】
したがって、インク排出時には弾性部材46でシールされた内側領域部分のみがインクで覆われ、吐出口面33全体がインクで覆われることはない。吐出口列32の吐出口より排出されたインクは、インク排出開口49からキャップ部材38の底部に導かれる。このキャップ部材38の底部のインクは、吸引ポンプ40A〜40Dにより排出口41A〜41Dを経てサブタンクに回収され再利用される。
【0078】
この後、インク除去払拭部材44A〜44Dの弾性部材46は、歯車48A〜48Dがモーターなどの図示しない駆動源により駆動されて回転される。このとき、インク除去払拭部材44A〜44Dの弾性部材46の回転によるモーターへの負荷が少なくなるように、弾性部材46の材質、圧縮量、及びスリット開口50の数と幅が決定される。この結果、弾性部材46がブレードとしての機能を有することとなり、吐出口面33はワイピングにより清掃される。
【0079】
続いて、記録ヘッド31A〜31Dと回復桶36A〜36Dの保守回復時の動作と予備吐出による保守回復について図8を参照して説明する。
記録開始の指令が発せられると、図8(a)に示す記録ヘッド31A〜31D及び回復桶ホルダ35の待機状態で、記録ヘッド31A〜31Dを正常なインク吐出状態に回復するため、記録ヘッド31A〜31Dの予備吐出を行う。この予備吐出は、各記録ヘッド31A〜31Dを駆動することにより、各回復桶36A〜36Dのキャップ部材38内にインクを吐出させることにより行う。
【0080】
その後、図8(b)に示すように、ヘッドホルダ30を一定量だけ矢印G方向に上昇させることにより、各記録ヘッド31A〜31Dの吐出口面33を各キャップ部材38から離隔させる。そして、回復桶ホルダ35を矢印H方向に所定量だけ移動させ、各記録ヘッド31A〜31Dを回復桶ホルダ35に設けられた開口37A〜37Dに対向させる。
【0081】
次いで、図8(c)に示すように、各記録ヘッド31A〜31Dを図示しない帯電ベルト(第1実施形態の用紙搬送装置と同様な構成)上の記録紙34に記録可能な状態になる記録位置までヘッドホルダ30を下降させて記録ヘッド31A〜31Dを開口37A〜37Dを通して矢印I方向に下降させる。
【0082】
そして、記録紙34の搬送に同期して各記録ヘッド31A〜31Dを記録データに基づいて駆動することにより、該記録紙34に対する記録を行う。記録終了時には、記録ヘッド31A〜31Dを上昇させ、回復桶ホルダ35を水平方向に移動させ、記録ヘッド31A〜31Dを上昇させることにより、図8(a)の待機状態に復帰させることができる。
【0083】
このように、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を回復させる保守回復動作中に吐出口全面がインクで汚されることを防ぐことができる。このため、従来ワイピング時に生じていたブレードの跳ね返りによるインク飛散を防止することができる。また、予備吐出とワイピングによる保守回復時の回復動作のシーケンスが簡素化され、回復動作を短時間で行うことができる。さらに、キャップ手段と弾性部材の両方で吐出口を密閉するため、2重密閉構造となり、待機時や放置時のインク乾燥に伴う粘度増加を確実に防止することができ、インク増粘に対する長期信頼性が著しく向上する。
【0084】
次に、本発明の第3実施形態について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は1つの記録ヘッド及び回復桶の拡大説明図、図10は図9の回復桶部分の平面説明図である。
この実施形態が第2実施形態と異なるところは、インク除去払拭部材54の構成である。インク除去払拭部材54は、軸部材55と、この軸部材55の周囲に設けられた弾性部材56とから構成される。ここで、軸部材55は一端が閉塞され、他端が開放された中空部55aを有する有底パイプ状となっている。
【0085】
軸部材55の開放側は回復桶ホルダの一方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部はインクを排出する排出口61が形成されている。また、他方の閉塞側は回復桶ホルダの他方の側面を突き抜けて回転可能に保持され、その端部には歯車48が取り付けられている。また、軸部材54には記録ヘッド31の複数の吐出口からなる吐出口列32を全て覆う長さでインク排出開口59が形成されている。
【0086】
弾性部材56は、ゴムや樹脂等の弾性体からなり、その周囲方向に複数のスリット開口60が形成されている。この複数のスリット開口60の内の1つのスリット開口だけが軸部材55のインク排出開口59に対応している。キャップ部材38の排出口41と軸部材55端部の排出口の両者は切換え弁62を介して吸引ポンプ40に接続されている。
【0087】
次に、加圧手段などでインクを記録ヘッド内に充填させて吐出口を保守回復させる方法について説明する。
記録ヘッド31の吐出口面33はキャップ部材38によりその周囲で密閉され、更に吐出口列32の吐出口周辺の領域は弾性部材56で密閉されている。このため、インクは、吐出口面33の全面を覆うことがなく、インク排出開口59から軸部材55の中空部55aに排出される。このとき、切換え弁62は排出口61と吸引ポンプ40間を開状態に、排出口41と吸引ポンプ40間を閉状態になるように制御される。
【0088】
その結果、吐出口列32の吐出口から排出されたインクは、インク排出開口59から軸部材55の中空部55aを通って排出口61に導かれ、サブタンクに回収、再利用される。このとき、インク除去払拭部材44A〜44Dの軸部材44の中空部分容積が小さいため、効率良くインクを吸引することができる。この後、歯車48A〜48Dを図示しないをモーターなどで駆動制御することにより吐出口面33をインク除去払拭部材54A〜54Dの弾性部材56でワイピングする。
【0089】
以上の保守回復方法ではキャップ部材38内にインクが流出しないため、通常はキャップ部材38の排出口41からのインク吸引を必要としない。何らかの原因でインクがキャップ部材38内に流出した場合には、切換え弁62を、排出口61と吸引ポンプ40との間を閉状態に、排出口41と吸引ポンプ40間を開状態になるように切り換換制御することにより、キャップ部材38内のインクを吸引回収することができる。
【0090】
なお、記録ヘッド31と回復桶36の保守回復時の動作と予備吐出による保守回復については第2実施形態と同じである。
【0091】
このように、本実施形態では、第2実施形態の効果に加えて、第1実施形態よ同様に、容積の小さい軸部材55の中空部のインクを吸引するため、インクの吸引を効率良く行うことができる。また、キャップ部材38と弾性部材56の両方で記録ヘッドの吐出口面を密閉するため、待機時や放置時の吐出口でのインク乾燥に伴う粘度増加を確実に防止することができる。
【0092】
次に、本発明の第4実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は1つの記録ヘッド及び回復桶の拡大説明図、図12は図11の回復桶部分の平面説明図である。
この実施形態では、記録ヘッド71の外周部に、記録ヘッド71の吐出口列72を有する吐出口面73に対して後退した位置にキャップ受け面74が配置されるキャップ受け部材75を設けている。また、キャップ部材38の内部には第1実施形態のインク除去払拭部材7A〜7Dと同様な構成のインク除去払拭部材7を配置している。
【0093】
したがって、待機状態では、キャップ部材38はキャップ受け面74を、インク除去払拭部材7の弾性部材18は記録ヘッド71の吐出口面72を密閉している。
【0094】
そして、加圧手段によるインク排出と吸引回収方法は第3実施形態と同じであり、記録ヘッド71の吐出口からのインクは排出口61を介して吸引ポンプ40でサブタンクに回収される。この後、歯車48をモーターなどの駆動源で駆動することにより記録ヘッド71の吐出口面72を弾性部材18でワイピングする。
【0095】
このとき、インク除去払拭部材7の弾性部材18のスリット開口23の幅を、吐出口面72の幅より大きく設定することにより、吐出口面72の全面をワイピングすることができる。
【0096】
このように、本実施形態では、第3実施形態の効果に加えて、吐出口面の全面をワイピングすることができるため、吐出口面に付着した記録時の跳ね返りミストや異物に起因するインク吐出不良を確実に防止することができる。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置によれば、記録ヘッドの吐出口列の吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口面を清掃するための複数の吐出口列に対応するインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口面を密閉するキャップ手段とを有する構成としたので、簡単なシーケンスで且つ短時間で保守回復を行うことができるようになるとともに、増粘に対する長期信頼性にも優れ、更に混色を防止することができる。
【0098】
また、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置によれば、ヘッドの吐出口から排出されるインクを除去し、吐出口を形成した吐出口面を清掃するためのインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域においてヘッドの吐出口を密閉するキャップ手段とを有する構成としたので、簡単なシーケンスで且つ短時間で保守回復を行うことができるようになるとともに、増粘に対する長期信頼性にも優れる。
【0099】
本発明に係るインクジェット記録装置は、本発明に係るインクジェット記録ヘッド用回復装置を備えているので、保守回復動作に要する時間が短くなり、また長期信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第1実施形態の要部模式的構成図
【図2】同記録装置の回復装置の要部構成図
【図3】同回復装置の平面説明図
【図4】同回復装置による予備吐出による保守回復、回復動作のシーケンスの説明に供する説明図
【図5】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第2実施形態の要部模式的構成図
【図6】同記録装置の回復装置の要部拡大説明図
【図7】同回復装置の平面説明図
【図8】同回復装置の保守回復時の動作と予備吐出による保守回復の説明に供する説明図
【図9】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第3実施形態の要部拡大説明図
【図10】同記録装置の回復装置の平面説明図
【図11】本発明に係る回復装置を備えた本発明に係るインクジェット記録装置の第4実施形態の要部拡大説明図
【図12】同記録装置の回復装置の平面説明図
【図13】従来の回復装置の説明に供する要部模式的構成図
【図14】同回復装置による保守回復シーケンスの説明に供する説明図
【図15】図14に続くシーケンスの説明に供する説明図
【図16】図15に続くシーケンスの説明に供する説明図
【図17】従来のインク加圧循環による保守回復装置の説明に供する説明図
【符号の説明】
1…インクジェット記録ヘッド、2A〜2D…吐出口列、3…吐出口面、5…回復桶、6…キャップ手段、7A〜7D…インク除去払拭部材、17…軸部材、18…弾性部材、19…排出口、22…インク排出開口、23…スリット開口、30…ヘッドホルダ、31A〜31D…インクジェット記録ヘッド、35…回復桶ホルダ、36A〜36D…回復桶、44A〜44D…インク除去払拭部材、45…軸部材、46…弾性部材、49…インク排出開口、50…スリット開口。
Claims (10)
- 複数の吐出口からなる複数列の吐出口列が同一の吐出口面に形成されたインクジェット記録ヘッドの前記吐出口の回復を行うためのインクジェット記録ヘッド用回復装置において、前記ヘッドの吐出口列の吐出口から排出されるインクを除去し、前記吐出口面を清掃するための前記複数の吐出口列に対応するインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域において前記ヘッドの吐出口面を密閉するキャップ手段とを有することを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- 請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド用回復装置において、前記インク除去払拭手段は、一方が閉じられ、他方に排出口を有する中空状で、その一部に排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に設けられ、前記吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とを有し、前記軸部材の排出開口は前記弾性部材のスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、前記ヘッドの吐出口列から排出されるインクは前記軸部材の前記排出口より排出されることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- 請求項2に記載のインクジェット記録用回復装置において、前記ヘッドによる記録時に、前記キャップ手段と、前記インク除去払拭手段のスリット開口を密閉する密閉手段を備えていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- 請求項3に記載のインクジェット記録用回復装置において、前記密閉手段は、前記ヘッドと一体的に設けられ、前記ヘッドの昇降動作に合わせて昇降可能に設けられていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- インクジェット記録ヘッドの吐出口の回復を行うためのインクジェット記録ヘッド用回復装置において、前記ヘッドの吐出口から排出されるインクを除去し、前記吐出口を形成した吐出口面を清掃するためのインク除去払拭手段と、このインク除去払拭手段の外側の領域において前記ヘッドの吐出口を密閉するキャップ手段とを有することを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- 請求項5に記載のインクジェット記録ヘッド用回復装置において、前記インク除去払拭手段は、前記キャップ手段の排出口に連通するインク排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に配設され、前記吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とからなり、前記軸部材の排出開口は前記スリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、前記ヘッドの吐出口から排出されるインクは前記キャップ手段の排出口より排出されることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- 請求項5に記載のインクジェット記録ヘッド用回復装置において、前記インク除去払拭手段は、一方が閉じられ、他方に排出口を有する中空状で、その一部に排出開口を有する軸部材と、この軸部材の周囲に設けられ、前記吐出口に対応した複数のスリット開口を有する弾性部材とを有し、前記軸部材の排出開口は前記弾性部材のスリット開口の少なくとも1つに対応して設けられ、前記ヘッドの吐出口から排出されるインクは前記軸部材の前記排出口より排出されることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- 請求項5ないし8のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用回復装置において、前記インク除去払拭手段は、前記ヘッドの吐出口面の全体を覆うように圧接され、前記キャップ手段は前記ヘッドの側面に配設されたキャップ受け部材の下面に圧接されることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載のインクジェット記録用回復装置において、前記インク除去払拭手段は回転可能に配設され、このインク除去払拭手段の回転により前記吐出口面を清掃することを特徴とするインクジェット記録ヘッド用回復装置。
- インクジェット記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、請求項1ないし9のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用回復装置を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
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- 2002-11-12 JP JP2002327782A patent/JP2004160760A/ja active Pending
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