以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略平面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、4つのインクジェットヘッド2を備えたカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構11が、図1中右方に排紙部12が、それぞれ構成されている。また、本発明に係るメンテナンス機構が、図1中のインクジェットヘッド2に隠れる形で紙面裏側に配設されている。
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙機構11から排紙部12に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構11には、用紙トレイ21内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ22が設けられている。ピックアップローラ22がモータ132(図7参照)によって駆動されると、用紙は図1中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ6,7と、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とが配置されている。このうち、ベルトローラ6には、搬送モータ133(図7参照)から駆動力が与えられて、図1中時計回り(矢印A方向)に回転される。これら2つのベルトローラ6,7及び搬送ベルト8によって用紙を搬送する搬送手段が構成されている。搬送ベルト8の外周面、すなわち搬送面8aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構11のすぐ下流側には、搬送ベルト8と対向する位置に押さえローラ5が配置されており、給紙機構11から送り出された用紙を搬送ベルト8の搬送面8aに押さえ付けている。これにより、搬送面8aに押さえ付けられた用紙は、搬送面8aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって搬送される。
用紙搬送経路に沿って搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離部材13が設けられている。剥離部材13は、搬送ベルト8の搬送面8aに保持されている用紙を搬送面8aから剥離して、右方の排紙部12へ向けて送るように構成されている。
搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置、つまり上側にある搬送ベルト8の下面と接触することによって内周側からこれを支持するほぼ直方体形状のプラテン9が配置されている。
4つのインクジェットヘッド2は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応して、用紙搬送方向(図2中下方から上方に向かう方向)Bに沿って4つ並べて設けられている。つまり、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。インクジェットヘッド2は、図2に示すように、長手方向が用紙搬送方向Bに直交した方向に配置され、長尺な細長い長方形形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、図1及び図3に示すように、ヘッド本体(圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体)3を有している。ヘッド本体3の上面には、インクを一時的に貯溜するリザーバユニット10が固定されており、その内部にはインク溜まりが形成されている。インク溜まりには、チューブジョイント10aから供給されたインクが貯溜される。このリザーバユニット10は、ヘッド本体3よりも長く、その長手方向(用紙搬送方向Bと直交方向)両側に飛び出て形成されている。飛び出た部分は、後述のフレーム4への固定しろとなっている。一方、ヘッド本体3の底面は、搬送面8aと対向するインク吐出面3aとなっており、微小径のノズル(インク吐出口)が多数並べて形成されている。
なお、チューブジョイント10aは、ポンプ134(図7参照)を介してインクタンク(不図示)とチューブで接続されている。通常の画像形成時には、この経路を辿ってインクタンクからインクがヘッド本体3に供給される。このとき、ポンプ134は、その内部をインクが流通可能となっており、このインク流路の一部を構成している。インクジェットヘッド2へのインク初期導入及びパージを行うときには、ポンプ134が駆動される。これにより、インクがインクジェットヘッド2側に強制的に送られる。
ヘッド本体3は、インク吐出面3aと搬送ベルト8の搬送面8aとが平行となり、且つこれらの面の間に少量の隙間が形成されるように配置されている。この隙間部分が用紙搬送経路の一部として構成されている。この構成で、搬送ベルト8上を搬送される用紙が4つのヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズルから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像を形成できるようになっている。つまり、搬送面8aと4つのインク吐出面3aが対向する領域が、用紙に画像が形成される画像形成領域となっている。
また、4つのインクジェットヘッド2は、図2及び図3に示すように、用紙搬送方向Bに沿って互いに隣接配置された状態で、枠状のフレーム4に固定されている。フレーム4は、図3に示すように、リザーバユニット10を支持する支持部4aを有している。支持部4aは、リザーバユニット10がフレーム4に固定されるとき、リザーバユニット10の長手方向両端部と対向する位置まで内側に向かって突出している。そして、支持部4aとリザーバユニット10の両端部とがネジ50で固定されている。また、インク吐出面3aが、図3に示すように、フレーム4(支持部4a)の底面とほぼ同じ高さでフレーム4の開口から露出される。
また、フレーム4は、プリンタ1に設けられたフレーム移動機構51により、上下に移動可能に支持されている。フレーム移動機構51は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド2の並びの前後に配設されている。各フレーム移動機構51は、フレーム4を上下動する駆動源としての駆動モータ52と、各駆動モータ52の軸に固定されたピニオンギヤ53と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにフレーム4に立設されたラックギヤ54と、ピニオンギヤ53とでラックギヤ54を挟む位置に配置されたガイド56とを含んでいる。
2つの駆動モータ52は、インクジェットプリンタ1の本体フレーム1aにそれぞれ固定されている。本体フレーム1aは、用紙搬送方向に関して互いに対向して配置され、フレーム4が前後から挟まれている。2つのラックギヤ54は、上下方向に延在しており、下端部がフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。また、ラックギヤ54のピニオンギヤ53とは反対側の側面は、ガイド56と摺動可能に接している。ガイド56は、本体フレーム1aに固定されている。
この構成において、2つの駆動モータ52を同調させて各ピニオンギヤ53を正及び逆方向に回転させると、ラックギヤ54が上下方向に移動する。このラックギヤ54の上下動に伴ってフレーム4及び4つのインクジェットヘッド2が上下方向に移動する。
また、ガイド部が、インクジェットヘッド2の長手方向の両側に配設されている。各ガイド部は、棒状部材58とこれを挟む一対のガイド57とから構成されている。このうち、一対のガイド57は、図3に示すように上下方向に延在し、用紙搬送方向Bと直交する方向に関して、互いに対向する本体フレーム1bにそれぞれ固定されている。一方、棒状部材58は、ガイド57と同様に上下方向に延在し、本体フレーム1bと平行に対向配置されたフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。棒状部材58は、一対のガイド57間にそれぞれ摺動可能に配置されている。このガイド部により、フレーム移動機構51がフレーム4を上下方向に移動したときに、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが搬送面8aに対して傾くのを防ぐことができる。つまり、フレーム移動機構51でフレーム4及びインクジェットヘッド2を上下方向に移動させても、インク吐出面3aは対向する搬送面8aと常に平行となる。その結果、印刷時において、用紙に対するインクの着弾精度が向上する。
通常、フレーム4は、4つのインクジェットヘッド2が用紙に対してインクを吐出し印刷する印刷位置(図3に示す位置)に配置されており、インクジェットヘッド2のメンテナンス時(本実施形態では、インクを強制的に吐出してパージするとき、インク吐出面3aに付着したインクを拭き取るとき及びインク吐出面3aをキャップで覆うとき)にだけ、フレーム移動機構51によって4つのインクジェットヘッド2が移動されて、印刷位置よりも上方(ヘッドメンテナンス位置)に配置される。
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70について説明する。図4は、図2に示すメンテナンスユニット70の断面図である。インクジェットプリンタ1には、図2及び図3に示すように、通常の印字中には、メンテナンスユニット70がヘッド本体3(インクジェットヘッド2)の左側に配置されている。メンテナンスユニット70は、図3及び図4に示すように、水平移動可能な2つのフレーム71,75を有している。このうち、フレーム71は、図2及び図3に示すように、上方に開口したほぼ方形の箱形形状を有し、フレーム75を内包可能に構成されている。フレーム71とフレーム75とは、後述の係合手段(係合部)によって着脱可能に結合されている。両者は、メンテナンス処理の内容に応じて着脱される。フレーム71は、インクジェットヘッド2とは反対側の側面が開放されており、例えばパージ動作時のように両者の係合が解かれているとき、内包するフレーム75を残して、フレーム71のみが移動可能となる。また、係合部の係合状態に係わらず、メンテナンスユニット70が後述のように水平移動する際には、予めフレーム4が上方(図3中矢印C方向)のメンテナンス位置まで移動され、4つのインク吐出面3aと搬送面8aとの間にメンテナンスユニット70用のスペースが確保される。この後、メンテナンスユニット70が、図3中矢印D方向に水平移動されることになる。
また、メンテナンスユニット70のすぐ下方には、廃インク受け部材77が配置されている。この廃インク受け部材77は、平面視でフレーム71を内包するサイズを有し、フレーム71が図2において右端まで移動したときでも、フレーム71のインクジェットヘッド2と反対側の辺縁部が重なる形状を有している。廃インク受け部材77のインクジェットヘッド2側の端部には、上下方向に貫通したインク排出孔77aが形成されている。インク排出孔77aは、廃インク受け部材77上に流れ込んだインクを図示しない廃インク溜めに流通させる。
フレーム71内には、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72、インク受け取り部材73及びフレーム75が配置されている。いずれも、用紙搬送方向と平行に配設されている。フレーム75内には、図2に示すように、各インクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対応して、矩形平面形状を有した4つのキャップ76が並べて設けられている。各キャップ76は、その長手方向をインクジェットヘッド2の長手方向に平行とされ、用紙搬送方向にインクジェットヘッド2と同じピッチで配置されている。キャップ76は、図4に示すように、その底部76bから上方に突出した環状突起76aを有している。つまり、キャップ76は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、密閉空間を形成する凹部として形成されている。このようにキャップ76は、インク吐出面3aを覆うことが可能となっており、ノズル3b内のインクの乾燥を防止することができる。また、キャップ76は、ゴムなどの弾性材料で構成されている。そのため、インク吐出面3aと環状突起76aとが密着しやすくなり、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときにキャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内の気密性が向上する。
また、各キャップ76は、2つのバネ88によってフレーム75の支持面75b(底面)支持されている。2つのバネ88は、キャップ76の底部76bと支持面75bとの間に挟まれて、キャップ76をフレーム75から離れる方向に常に付勢している。逆に、キャップ76が2つのバネ78によって支持されていることで、キャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、バネ78がその衝撃力を緩和する。したがって、環状突起76aによってインク吐出面3aに傷が付きにくくなる。さらに、インク吐出面3aに対するキャップ76の平行度に多少誤差が生じていても、インク吐出面3aに対する傾きにキャップ76が追従することが可能となる。そのため、キャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内を密閉空間とすることができる。
フレーム71のインクジェットヘッド2側には、図2に示すように、ワイパー72及びインク受け取り部材73が保持された保持部材74が固定されている。保持部材74は、平面形状がコ型形状となっており、図4に示すように、保持部材74の用紙搬送方向Bに沿う部分にワイパー72及びインク受け取り部材73が保持されている。一方、保持部材74の用紙搬送方向Bと直交する方向に延在した部分の端部には、係合部を構成する凹部74aが形成されている。
インク受け取り部材73は、図2及び図4に示すように、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅よりも若干長い複数の薄板73aを有している。各薄板73aは、インクに対する毛管力に合わせた間隔で互いに平行に配置されている。各薄板73aはステンレス製である。ワイパー72は、薄板73aと同様に、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅より若干長く、その長手方向が用紙搬送方向Bに平行となるように配置されている。ワイパー72は、ゴムなどの弾性材料からなる。
フレーム71とフレーム75とは、上述したように係合部によって着脱可能に係合されている。図2に示すように、係合部は、フレーム71,75の図中上下の各辺近傍にそれぞれ設置され、主には、フレーム71の保持部材74に設けられた凹部74aと、フレーム75に回動可能に支持された引っ掛け部材83とから構成されている。凹部74aは、フレーム71のインクジェット2側の端部付近(保持部材74のインクジェットヘッド2と反対側端部付近)に位置している。引っ掛け部材83は、用紙搬送方向Bと直交する方向に延在しており、その中央部において支持面75aに設けられた2つのフランジによって回動可能に支持されている。また、引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2側の端部には、凹部74aに係合する引っ掛け部83aが形成されている。メンテナンスユニット70の上方には、各引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2と最も離れた端部83bに当接可能な当接部材84がそれぞれ回動可能に支持されている。
当接部材84のインクジェットヘッド2と最も離れた端部84aは、伸縮可能なシリンダ85(図7参照)と連結されており、図3に示す状態からシリンダ85が縮むと当接部材84が時計回りに回動し、当接部材84のインクジェットヘッド2に最も近い端部84bが引っ掛け部材83の端部83bに当接する。これによって、引っ掛け部材83が反時計回りに回動し、引っ掛け部83aと凹部74aとの係合が解除される。一方、シリンダ85が伸びると当接部材84が反時計回りに回動し、引っ掛け部材83の端部83bから当接部材84が離隔する。すると、引っ掛け部83が時計回りに回動し、引っ掛け部83aが凹部74aと係合し、図3に示す状態に戻る。
メンテナンスユニット70は、後述のメンテナンスが行われないとき、図3に示すように、インクジェットヘッド2から離れた「退避位置」(図2において、インクジェットヘッド2と対向しない左側位置)にて静止している。そして、メンテナンスが行われるときに、この退避位置からメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対向した「メンテナンス位置」へ水平移動される。このとき、インクジェットヘッド2はヘッドメンテナンス位置に配置されているので、ワイパー72や環状突起76aの先端が、インク吐出面3aに接触しない。さらに、インク受け取り部材73は、ワイパー72がインク吐出面3aに当接した状態において、インク吐出面3aとの間に僅かな隙間(例えば、0.5mm)が常に形成されるようになっている。
なお、メンテナンスでもパージ動作時には、フレーム75は残してフレーム71だけが待機位置から移動され、インク吐出面3aをキャップ76で覆うときには、フレーム71とフレーム75が係合されて、メンテナンス位置に移動されることになる。各フレーム71,75は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交する方向に延びた一対のガイド軸96a,96bに移動可能に支持されている。フレーム71には、2つの軸受け部材97a,97bが設けられており、保持部材74の上下両側面から突出している。フレーム75には、2つの軸受け部材98a,98bが設けられており、フレーム75の上下両側面から突出している。ガイド軸96a,96bは、フレーム71の上下両側縁部に対向して配置されており、このうちガイド軸96aには軸受け部材97a,98aが、ガイド軸96bには軸受け部材97b,98bがそれぞれ支持されている。また、一対のガイド軸96a,96bは、それぞれの両端が本体フレーム1b,1dに固定されており、両フレーム1b,1d間に互いに平行に配置されている。ここでは、それぞれネジで固定されている。このような構成で、各フレーム71,75がこのガイド軸96a,96bに沿って図中左右方向に移動される。
ここで、フレーム71,75を水平移動させる水平移動機構(第1移動機構)91について説明する。水平移動機構91は、図2に示すように、モータ92、モータプーリ93、アイドルプーリ94、タイミングベルト95、及び、ガイド軸96a,96b等を有する。モータ92は、用紙搬送方向Bに平行に延びる本体フレーム1bの端部に取り付けられている。図2中右側の本体フレーム1b端部には、インクジェットヘッド2の長手方向に平行に延びる取り付け部1cが設けられており、モータ92がネジなどで固定されている。モータプーリ93は、モータ92に接続されており、モータ92の駆動に伴って回転する。アイドルプーリ94は、図2中最も左側の本体フレーム1dに回転可能に支持されている。タイミングベルト95は、ガイド軸96aと平行に配設され、モータプーリ93とこれと対になったアイドルプーリ94との間に架け渡されるように巻回されている。また、タイミングベルト95は、保持部材74に設けられた軸受け部材97aが接続されている。
この構成において、モータ92を駆動すると、モータプーリ93が正又は逆方向に回転するに伴ってタイミングベルト95が走行する。このタイミングベルト95の走行により、タイミングベルト95に軸受け部97aを介して接続されたフレーム71が、図2左又は右方向に、即ち退避位置又はメンテナンス位置に向かう方向に移動する。なお、保持部材74の凹部74aと引っ掛け部83aとが係合しているときは、フレーム71内のワイパー72及びインク受け取り部材73と、フレーム75内のキャップ76とが一緒にメンテナンス位置又は退避位置に移動する。一方、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔しているときは、フレーム71内のワイパー72及びインク受け取り部材74がメンテナンス位置又は退避位置に移動する。
次に、メンテナンスユニット70を覆うカバー60について以下に説明する。図5は、図2に示すカバー60及びその近傍の拡大平面図である。図6は、図5に示すVI−VI線に沿った断面図である。カバー60は、図2及び図3に示すように、退避位置にあって、メンテナンスユニット70の上方に設けられている。カバー60は、平面形状が長方形の天井部60aと、この天井部60aから下方に延びた外周側壁部60b〜60eとを有し、全体として、メンテナンスユニット70に向かって開口する箱状に形成されている。カバー60は、図3、図5及び図6に示すように、矢印D方向に長手方向を持つ。また、カバー60の内部は、3つの領域に区画されており、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72を覆う領域、インク受け取り部材73を覆う領域及び4つのキャップ76を覆う領域から構成されている。各領域間には、2つの仕切り壁61,62が形成されており、ともに外周側壁60b,60cと平行に配置されている。本実施の形態では、各領域に対応した3つのカバーが一体に成形されている。そのため、カバー60は、4つのキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72のそれぞれを同時に個別に覆うことが可能となっている。さらに、これら3つのカバーを個別に移動させる必要がなくなり、後述するカバー移動機構80の構成が簡易になる。
カバー60の外周側壁60d,60eの保持部材74と対向する部分には、図6に示すように、凹部63が形成されており、カバー60がキャップ76、ワイパー72及びインク受け取り部材73を覆ったときに、保持部材74と外周側壁60d,60eが接触しないようになっている。これに対応して、仕切り壁62は仕切り壁61より背が低く形成されている。外周側壁60bと仕切り壁61との間には、天井部60aから下方に向かって延在した複数の可撓性針状材65が設けられている。これら可撓性針状材65は、キャップ76の環状突起76aと対向する環状領域に配列されている。さらに、複数の可撓性針状材65は、図3に示すようにカバー60でキャップ76を覆ったときに、各キャップ76の環状突起76aとそれぞれ当接するような長さに形成されている。また、外周側壁60cと仕切り壁62との間には、外周側壁60cの下端部に対応した部分に、外周側壁60cから仕切り壁62に向かって、仕切り壁62から外周側壁60cに向かって水平に延在した複数の可撓性針状材66が設けられている。これら可撓性針状材66は、カバー60でワイパー62を覆ったときに、ワイパー72を挟み込むように配列されている。
次に、カバー60を上下移動するカバー移動機構(第2移動機構)80について説明する。カバー移動機構80は、図2、図3及び図5に示すように、用紙搬送方向に関して互いに対向する本体フレーム1eにそれぞれ設けられ、カバー60が両側のカバー移動機構80によって上下に移動可能に支持されている。カバー移動機構80は、本体フレーム1eに固定された駆動モータ86と、各駆動モータ86の軸に固定されたピニオンギヤ87と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにカバー60の外周側壁60d,60eにそれぞれ固定されたラックギヤ88と、ピニオンギヤ87とでラックギヤ88を挟む位置に配置されたガイド89とを含んでいる。ガイド89は、本体フレーム1eに固定されている。2つのラックギヤ88は、上下方向に延在している。また、ラックギヤ88のピニオンギヤ87とは反対側の側面は、ガイド89と摺動可能に接している。この構成において、2つの駆動モータ86を同調させて各ピニオンギヤ87を正又は逆方向に回転させると、ラックギヤ88が上下方向に移動する。このラックギヤ88の上下動に伴ってカバー60が上下方向に移動する。
通常、カバー60は、メンテナンスを行わないでメンテナンスユニット70が退避位置に静止しているときは、メンテナンスユニット70を覆う「カバー位置」(図3に示す位置)に配置されるように位置し、メンテナンスを行うときには、カバー移動機構80によって図3に示す位置よりも上方(カバー退避位置)に配置される。
また、カバー60の天井部60aには、図5及び図6に示すように、複数の洗浄液供給孔67a,67b及びエア供給孔68a〜68cが形成されている。洗浄液供給孔(第1貫通孔)67aは、キャップ76の環状突起76aと対向する領域にそれぞれ4つずつ形成されている。洗浄液供給孔(第2貫通孔)67bは、ワイパー72と対向する領域に3つずつ形成されている。また、エア供給孔(第3貫通孔)68aは、キャップ76の中央と対向する領域にそれぞれ1つずつ形成されている。エア供給孔68bは、インク受け取り部材73と対向する領域に4つずつ形成されている。エア供給孔(第4貫通孔)68cは、ワイパー72と対向する領域に3つずつ形成されている。また、カバー60の天井部60a上には、複数の洗浄液供給孔67a,67bと接続された配管41と、複数のエア供給孔68a〜68cと接続された配管42とが設けられている。配管41は、図5中上方側の本体フレーム1eに固定されたポンプ43と接続されている。そして、ポンプ(洗浄液供給手段)43を駆動することによって、図示しないタンクに貯溜された洗浄液(例えば、純水)を配管41及び洗浄液供給孔67a,67bを介してキャップ76の環状突起76a及びワイパー72にかけることが可能となる。一方、配管42は、図5中下方側の本体フレーム1eに固定された送風機45とフィルタ46を介して接続されている。そして、送風機45を駆動することによって、送風機45から送られ且つフィルタ46によって濾過された気流を配管42及びエア供給孔68a〜68cを介してキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に向かって送り込むことが可能となる。
次に、インクジェットプリンタ1の制御系について、図7を参照して説明する。図7は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの制御構成を示す概略ブロック図である。インクジェットプリンタ1には、プリンタの各動作を制御する制御部101が設けられている。制御部101は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラム及び制御プログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)とで構成されており、図7に示すように、ヘッド制御部111と、搬送制御部112と、パージ制御部113と、カバー制御部(制御手段)114とを備えている。
ヘッド制御部111は、制御部101がPC(パーソナルコンピューター)100からの印刷データを受信したときに、ヘッド駆動回路121を制御して対応するインクジェットヘッド2からインクを吐出させる。
搬送制御部112は、制御部101がPC100からの印刷データを受信したときに、ピックアップローラ22を回転させ搬送ベルト8上に用紙を搬送するようにモータ132をモータドライバ122で制御するとともに、搬送モータ133を駆動して搬送ベルト8上の用紙を搬送するようにモータドライバ123を制御する。
パージ制御部113は、ポンプ制御部116と、ヘッド移動制御部117と、メンテナンスユニット移動制御部118とを有している。ポンプ制御部116は、制御部101がPC100からのパージ信号を受信したとき及びインクジェットヘッド2へのインク初期導入時に、ポンプ134を駆動して強制的にインクをインクジェットヘッド2へ送るようにポンプドライバ124を制御する。ヘッド移動制御部117は、制御部101がPC100からのパージ信号を受信したとき、インクジェットヘッド2へのインク初期導入時及びプリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、駆動モータ52を駆動して4つのインクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動するようにモータドライバ125を制御する。また、ヘッド移動制御部117は、インクジェットヘッド2に対するメンテナンス動作が終了したときに、駆動モータ52を駆動して4つのインクジェットヘッド2がヘッドメンテナンス位置から印刷位置に移動するようにモータドライバ125を制御する。
メンテナンスユニット移動制御部118は、制御部101がPC100からのパージ信号を受信したとき及びインクジェットヘッド2へのインク初期導入時に、シリンダ85を縮めて引っ掛け部83aの凹部74aに対する係合を解除するようにシリンダドライバ126を制御するとともに、モータ92を駆動してフレーム71がメンテナンス位置に移動するようにモータドライバ127を制御する。また、メンテナンスユニット移動制御部118は、インクジェットヘッド2からのパージ及びインク初期導入が終了すると、モータ92を駆動してフレーム71が退避位置に移動するようにモータドライバ127を制御するとともに、シリンダ85を伸ばして引っ掛け部83aを凹部74aに係合させるようにシリンダドライバ126を制御する。さらに、メンテナンスユニット移動制御部118は、プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、モータ92を駆動してフレーム71及びフレーム75がメンテナンス位置に移動するようにモータドライバ127を制御する。また、メンテナンスユニット移動制御部118は、制御部101がPC101からの印刷データを受信したときに、モータ92を駆動してフレーム71及びフレーム75が退避位置に移動するようにモータドライバ127を制御する。
カバー制御部114は、カバー移動制御部115と、気流制御部119と、洗浄制御部120とを有している。カバー移動制御部115は、メンテナンスユニット70が退避位置で静止しているときに、駆動モータ86を駆動してカバー60をカバー位置に移動するようにモータドライバ128を制御する。また、カバー移動制御部115は、インクジェットヘッド2に対してメンテナンス動作が行われるときに、駆動モータ86を駆動してカバー60をカバー退避位置に移動するようにモータドライバ128を制御する。このように制御部101がカバー制御部114を含んでいることで、キャップ76及びワイパー72を覆うタイミングを容易に制御することができる。
気流制御部119は、カバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動するとき及びカバー60がカバー退避位置からカバー位置に移動するときに、送風機45を駆動して各エア供給孔68a〜68cからフィルタ46によって濾過された気流がカバー60内に供給されるように送風機ドライバ129を制御する。洗浄制御部120は、カバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動するとき及びカバー60がカバー退避位置からカバー位置に移動するときに、ポンプ43を駆動して各洗浄液供給孔67a,67bから洗浄液がカバー60内に供給されるようにポンプドライバ130を制御する。
次に、メンテナンスユニット70のメンテナンス動作及びカバー60の動作について図8〜図11を参照しつつ以下に説明する。図8は、インクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動したとき、及び、カバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動したときの状況図である。図9(a)はメンテナンスユニット70のフレーム71がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図9(b)はインク受け取り部材73及びワイパー72によりインク吐出面3aに付着したインクを払拭しているときの状況図である。図10(a)はメンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図10(b)はキャップ76がインク吐出面3aを覆っているときの状況図である。図11(a)はカバー60がカバー位置にあるときの状況図であり、図11(b)はカバー60がカバー位置からカバー退避位置に移動したときの状況図である。
インクジェットヘッド2へのインク初期導入及び吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作を行うときは、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッド2を上方に移動させる。そして、インクジェットヘッド2が、図8に示すように、ヘッドメンテナンス位置に到達したときに、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を停止させる。このとき、インク吐出面3aと搬送ベルト8との間にはメンテナンスユニット70が配置可能なスペースが形成される。なお、ヘッドメンテナンス位置では、インクジェットヘッド2のインク吐出面3a及びフレーム4の底面は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動してきても、ワイパー72や環状突起76aのメンテナンス部材と接触しない位置となっている(図9(a)参照)。
次に、メンテナンスユニット移動制御部118が、シリンダドライバ126を介してシリンダを縮める。すると、当接部材84が回動して、図8に示すように、引っ掛け部材83の端部83bに当接するとともに、端部83bを下方に押し下げる。この動作によって引っ掛け部材83は反時計回りに回動し、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔し凹部74aと引っ掛け部83aとの係合が解除される。つまり、フレーム71とフレーム75との連結が解除された状態となる。次に、メンテナンスユニット移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を駆動し、矢印D方向(退避位置からメンテナンス位置へ移動する方向)に移動させる。そして、フレーム71が、図9(a)に示すように、メンテナンス位置に到達したときに、メンテナンス移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を停止させる。このとき、フレーム71の図中左端部は、平面視で退避位置に配置されている廃インク受け部材77の右端部と重なっている。
次に、ポンプ制御部116が、ポンプドライバ124を介してポンプ134を駆動し、インクをインクジェットヘッド2に強制的に供給し、インクジェットヘッド2のノズルからフレーム71内にインクを吐出させる(パージ動作)。このパージ動作によって、吐出不良に陥っていたノズルの詰まりやノズル内のインクの増粘が解消され、吐出特性が回復される。なお、インクジェットヘッド2内へのインク初期導入時の動作もパージ動作とはほぼ同様な動作で行われる。また、フレーム71内に吐出されたインクはフレーム71の底面に沿って図9(a)中左側に移動し、廃インク受け部材77に流れ込む。そして、廃インク受け部材77のインク排出孔77aからインクが排出される。
次に、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッド2を下方に移動させる。そして、インクジェットヘッド2が、インク吐出面3aとインク受け取り部材73(薄板73a)の上端との間に、例えば、0.5mmの隙間を残す位置まで下降したところで、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を停止させる。
次に、メンテナンスユニット移動制御部118がモータドライバ127を介してモータ92を駆動し、図9(b)に示すように、フレーム71を左側に移動させ(すなわち、フレーム71をメンテナンス位置から退避位置に移動させる)ワイプ動作を行う。インク受け取り部材73に並設されたワイパー72は、その先端が薄板73aの上端より上方に突出して配置されているので、フレーム71が退避位置に向けて移動することで、インク吐出面3aに当接する。このとき、ワイパー72の先端部は、移動方向と反対側に撓んでいる。さらに、フレーム71の退避位置への移動に伴って、インク受け取り部材71がインク吐出面3aに付着しているインクを毛管力によって吸い取り、ワイパー72がさらに残留しているインクを払拭する。こうして、インク初期導入時の動作及びパージ動作に係るメンテナンスユニット70のメンテナンス動作が終了する。
なお、メンテナンス動作が終了すると、ヘッド移動制御部117が、モータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッドを下方に移動させる。そして、インクジェットヘッド2が印刷位置に到達したときに、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータを停止させる。一方、フレーム71が退避位置に到達したときに、メンテナンスユニット移動制御部118がシリンダドライバ126を介してシリンダ85を伸ばす。これにより、引っ掛け部83aと凹部74aとが係合しフレーム71とフレーム75とが連結状態とされる。
次に、インク吐出面3aをキャップ76で覆うキャップ動作について説明する。プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、ヘッド移動制御部117が上述と同様にインクジェットヘッド2をヘッドメンテナンス位置に移動させる。次に、メンテナンスユニット移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を駆動し、矢印D方向(退避位置からメンテナンス位置へ移動する方向)にフレーム71及びフレーム75を移動させる。そして、フレーム71,75が、図10(a)に示すように、メンテナンス位置に到達したときに、メンテナンス移動制御部118が、モータドライバ127を介してモータ92を停止させる。
次に、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、インクジェットヘッド2を下方に移動させる。そして、図10(b)に示すように、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aとキャップ76の環状突起76aの先端とが当接したときに、ヘッド移動制御部117がモータドライバ125を介して2つの駆動モータ52を停止させる。こうして、インク吐出面3aとキャップ76との間が密閉空間となってノズル内のインクの乾燥を防止する。なお、制御部101がPC100からの印刷データを受信したときなどに、メンテナンスユニット70を退避位置に戻す動作は上述と逆の手順となる。こうして、キャップ動作に係るメンテナンスユニット70のメンテナンス動作が終了する。
メンテナンスユニット70によるメンテナンス動作が行われる前及び後には、カバー60の移動が行われる。カバー60は、図11(a)に示すように、メンテナンスユニット70が退避位置で静止しているときに、メンテナンスユニット70を上方から覆っている。そして、インクジェットヘッド2へのインク初期導入時やパージ信号を受信したとき及びプリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時には、ブラシ63によるキャップ76の環状突起76a及びワイパー72のクリーニング動作が行われる。例えば、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動する直前において、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を同調させて駆動し、カバー60を上方に移動させる。このとき、キャップ76の環状突起76a及びワイパー72に当接していた複数の可撓性針状材65,66も上方に移動するため、その移動に伴って環状突起76a及びワイパー72の先端近傍部分が複数の可撓性針状材65,66によって払われる。カバー60が、図11(b)に示すように、カバー退避位置に到達したときに、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を停止させる。なお、カバー退避位置は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動したときに、カバー60の下端がワイパー72及びキャップ76の環状突起76aの先端と接触しない位置となっている。こうして、メンテナンスユニット70がカバー60によって覆われていないときに、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動し上述したメンテナンス動作を行う。
また、カバー移動制御部115がカバー60を上方に移動させるときに、気流制御部119が送風機ドライバ129を介して送風機45を駆動し、エア供給孔68a〜68cからカバー60内にエアを供給する。これにより、カバー60とメンテナンスユニット70との間からその供給されたエアが排出されるため、カバー60内に外部からの異物が侵入しにくくなる。また、エア供給孔68a〜68cから供給されたエアがキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に向かって送られるので、キャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に異物が付着しにくくなる。そして、カバー60がカバー退避位置に到達したときに、気流制御部119が送風機ドライバ129を介して送風機45の駆動を停止する。
なお、複数の可撓性針状材65,66に環状突起76aやワイパー72から移った異物を外部に排出するには、カバー60がカバー退避位置に移動を完了し、メンテナンスユニット70がカバー60との対向領域から外に移動した後に、送風機45を駆動してもよく、カバー60の移動中よりも強く送風するようにしてもよい。これにより、メンテナンスユニット70への移動の再付着が防がれる。
また、気流制御部119と同様なタイミング(すなわち、エアと洗浄液とが同時に供給されるとともに同時に供給の停止も行われるタイミング)で、洗浄制御部120がポンプドライバ130を介してポンプ43を駆動し、洗浄液供給孔67a,67bからカバー60内に洗浄液を供給する。このとき、洗浄液供給孔67a,67bは、環状突起76a及びワイパー72のそれぞれに対向して形成されているので、洗浄液が環状突起76a及びワイパー72にかけられる。これにより、環状突起76a及びワイパー72に付着して増粘したインク及び異物を洗い流すことができる。また、洗浄液が複数の可撓性針状材65,66が移動するときに供給されるので、増粘インク及び異物がより複数の可撓性針状材65,66の移動によって掻き落とすことができる。そのため、環状突起76a及びワイパー72の先端にほとんど増粘インク及び異物が付着していない状態となって、環状突起76a及びワイパー72の先端から増粘インク及び異物がインク吐出面3aに付着するのを防ぐことができる。
次に、メンテナンスユニット70がメンテナンス動作を終え退避位置で静止していると、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を同調させて駆動し、カバー60を下方に移動させる。このとき、複数の可撓性針状材65,66も下方に移動するため、その移動に伴って環状突起76a及びワイパー72の先端近傍部分が複数の可撓性針状材65,66によって払われる。具体的には、複数の可撓性針状材65が環状突起76aと対向する位置に形成されており且つ天井部65aから環状突起76aに向かって延在しているので、カバー60のカバー位置への移動に伴って複数の可撓性針状材65の先端と環状突起76aの先端とが接触した後、環状突起76aの先端近傍の内外面とも接触する。つまり、環状突起76aの先端に異物が付着していても、その異物が可撓性針状材65によって払い飛ばされるか、環状突起76aの先端近傍部分から離れるように移動させられる。また、複数の可撓性針状材66が、カバー60がカバー位置に到達したときにちょうどワイパー72を挟み込むように外周側壁60c及び仕切り壁62から矢印D方向に平行に延在して形成されているので、カバー60のカバー位置への移動に伴って複数の可撓性針状材66の先端とワイパー72の先端とが接触した後、ワイパー72の仕切り壁62及び外周側壁60cと対向する側面の先端近傍部分とも接触する。つまり、ワイパー72の先端に異物が付着していても、その異物が可撓性針状材66によって払い飛ばされるか、ワイパー72の先端近傍部分から離れるように移動させられる。そして、カバー60がカバー位置に到達したときに、カバー移動制御部115がモータドライバ128を介して2つの駆動モータ86を停止する。
また、カバー移動制御部115がカバー60を下方に移動させるときに、気流制御部119が送風機ドライバ129を介して送風機45を駆動し、エア供給孔68a〜68cからカバー60内にエアを供給する。これにより、上述と同様に、カバー60とメンテナンスユニット70との間からその供給されたエアが排出されるため、カバー60内に外部からの異物が侵入しにくくなる。さらに、複数の可撓性針状材65,66によって環状突起76a及びワイパー72の先端から払われた異物をカバー60から外部に排出することも可能となる。また、エア供給孔68a〜68cから供給されたエアがキャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に向かって送られるので、キャップ76、インク受け取り部材73及びワイパー72に異物が付着しにくくなる。そして、カバー60がカバー位置に到達したときに、気流制御部119が送風機ドライバ129を介して送風機45の駆動を停止する。
また、気流制御部119と同様なタイミングで、洗浄制御部120がポンプドライバ130を介してポンプ43を駆動し、洗浄液供給孔67a,67bからカバー60内に洗浄液を供給する。このとき、洗浄液供給孔67a,67bは、環状突起76a及びワイパー72のそれぞれに対向して形成されているので、洗浄液が環状突起76a及びワイパー72にかけられる。これにより、上述と同様に、環状突起76a及びワイパー72に付着して増粘したインク及び異物を洗い流すことができる。また、洗浄液が複数の可撓性針状材65,66が移動するときに供給されるので、増粘インク及び異物を複数の可撓性針状材65,66の移動によってより掻き落とすことができる。さらに、メンテナンス動作が終了してから比較的すぐに洗浄液が供給されるので、環状突起76a及びワイパー72に付着したインクを増粘が初期段階のうちに洗い流すことができる。そのため、環状突起76a及びワイパー72の先端にほとんど増粘インクが付着していない状態となる。したがって、環状突起76a及びワイパー72の先端から増粘インク及び異物がインク吐出面3aに付着するのを防ぐことができる。
以上のような本実施の形態によるインクジェットプリンタ1によると、メンテナンスユニット70が退避位置に静止しているときに、4つのキャップ76及びワイパー72をカバー60で覆うことが可能になる。そのため、気中に漂う異物がキャップ76の環状突起76aやワイパー72に付着しにくくなる。したがって、ノズル内のインクの乾燥を防止するために、環状突起76aをインク吐出面3aに当接するキャップ動作のとき、及び、ワイパー72でインク吐出面3aに付着したインクを払拭するメンテナンス動作のときに、インク吐出面3aに異物が付着しにくくなる。また、インク吐出面3aに異物が付着しにくくなることで、インク吐出面3aに付着した異物を核とするインク溜まりが生じにくくなる。さらに、ノズルに異物が侵入しにくくなり、不必要なパージ動作を減少させることができる。そのため、消費インクが低減する。
また、カバー60には仕切り壁61,62が形成されているため、4つのキャップ76及びワイパー72を個別に覆うことが可能になる。そのため、カバー60の天井部60a、外周側壁60b,60d,60e及び仕切り壁61で囲まれた領域内の異物が、カバー60の天井部60a、外周側壁60c,60d,60e及び仕切り壁62で囲まれた領域に移動しなくなる。
カバー60内には、カバー60がカバー位置に配置されているときに、環状突起76aと当接する複数の可撓性針状材65が形成されているので、カバー60で4つのキャップ76を覆うときに、複数の可撓性針状材65によって環状突起76aに付着した異物を除去することができる。そのため、環状突起76aをインク吐出面3aに当接するとき、インク吐出面3aに異物がより付着しにくくなる。また、複数の可撓性針状材65が、環状突起76aの突出方向と平行な方向に延在し、且つ、天井部60aの環状突起76aと対向する領域に配列されているので、環状突起76aに付着した異物をより除去することができる。そのため、環状突起76aをインク吐出面3aに当接するとき、インク吐出面3aにより一層異物が付着しにくくなる。
カバー60内には、カバー60がカバー位置に配置されているときに、ワイパー72と当接する複数の可撓性針状材66が形成されているので、カバー60でワイパー72を覆うときに、複数の可撓性針状材66によってワイパー72に付着した異物を除去することができる。そのため、ワイパー72をインク吐出面3aに付着したインクを払拭するときに、インク吐出面3aに異物がより付着しにくくなる。また、複数の可撓性針状材66が、環状突起76aの突出方向と直交する方向(水平方向であって矢印D方向)に平行な方向に延在し、且つ、仕切り壁62及び外周側壁60cにおいてワイパー72を挟み込むように配列されているので、ワイパー72に付着した異物をより除去することができる。そのため、ワイパー72でインク吐出面3aに付着したインクを払拭するときに、インク吐出面3aに異物がより一層付着しにくくなる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態においては、カバー60内に洗浄液を供給する手段(ポンプ43など)やエアを供給する手段(送風機45、フィルタ46など)が設けられているが、これらがプリンタに設けられていなくてもよい。つまり、カバー60が設けられておればよい。また、カバー60内には、複数の可撓性針状材65,66が取り付けられていなくてもよい。さらに、カバー60内に仕切り壁61,62が形成されていなくてもよい。つまり、天井部60aと外周側壁60b〜60eからなるカバーであってもよい。また、プリンタには、キャップ76だけを覆うカバー(例えば、外周側壁60b、仕切り壁61、外周側壁60d,60eの外周側壁60bと仕切り壁61との間の部分、及び、天井部60aの外周側壁60bと仕切り壁61との間の部分から構成されたカバー)と、ワイパー72だけを覆うカバー(例えば、外周側壁60c、仕切り壁62、外周側壁60d,60eの外周側壁60cと仕切り壁62との間の部分、及び、天井部60aの外周側壁60cと仕切り壁62との間の部分から構成されたカバー)との2つのカバーを有していてもよい。この場合、それぞれのカバーにカバー移動機構を設けるか、メンテナンスユニット70を上下動させる移動機構を設ける。これにより、カバー60でメンテナンスユニット70を覆うこと得られる効果と同様な効果を得ることができる。また、上述した実施形態におけるインクジェットヘッドは、ラインタイプのインクジェットヘッドであるが、シリアルタイプのインクジェットヘッドでも適用可能である。すなわち、シリアルタイプのインクジェットプリンタであっても、上述のような効果を有することが可能である。