本発明のインクジェット記録装置は、複数のインク吐出口が形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記複数のインク吐出口の分布範囲よりも広く且つ前記インク吐出面よりも狭い開口を有した凹部を画定し、前記インク吐出面に当接して密閉空間を形成する第1環状突起を有するキャップと、前記キャップを支持する支持部材と、前記第1環状突起が前記インク吐出面に当接する位置と、前記第1環状突起が前記インク吐出面から離隔した位置との間を、前記インクジェットヘッド及び前記支持部材の少なくとも一方を移動させる移動機構と、前記第1環状突起が前記インク吐出面に当接する位置にあるときに、前記第1環状突起が当接する当接位置と前記インク吐出面の外縁とで区画される吐出面環状領域を包囲して、前記吐出面環状領域に異物が付着するのを回避する異物付着回避手段とを備えている。そして、前記異物付着回避手段が前記支持部材を含み、前記支持部材が、前記キャップを支持する支持面と、前記キャップを取り囲むように前記支持面に形成された第2環状突起とを有しており、前記第1環状突起が前記インク吐出面に当接する位置にあるときに、前記第2環状突起の頭頂部が前記第1環状突起よりも前記支持面から遠くに位置し、前記第2環状突起の内壁面が前記インクジェットヘッドの側周面にその全周に亘って近接しつつ対向する。
これによると、第1環状突起がインク吐出面に当接する位置にあるときに、異物付着回避手段により吐出面環状領域に異物(紙粉などの塵)が付着しにくくなる。そのため、インク吐出面を払拭しても吐出面環状領域に異物がほとんど存在しないので、吐出面環状領域に存在する異物がインク吐出口の分布範囲に移動することによって生じるノズル詰まりやインク吐出方向の乱れを抑制することができる。加えて、インク吐出面を払拭してもインク吐出口の分布範囲に異物が移動しないので、異物を核とするインク溜まりが当該分布範囲に形成されない。また、第1環状突起がインク吐出面に当接する位置にあるときに、第2環状突起の内壁面が側周面にその全周に亘って近接しつつ対向しているので、支持部材とインクジェットヘッドとの間に通じる部分が僅かな隙間となる。そのため、外部から支持部材とインクジェットヘッドとの間に異物が侵入しにくくなり、吐出面環状領域に異物が付着しにくくなる。
また、このとき、前記第2環状突起の前記頭頂部が前記第1環状突起の頭頂部よりも前記支持面から遠くに位置しているとともに、前記第2環状突起の内壁面がその全周に亘り内側に向かって突出した第3環状突起を有し、前記第1環状突起が前記インク吐出面に当接する位置にあるときに、前記第3の環状突起が、前記側周面にその全周に亘って当接していてもよい。これによると、第1環状突起がインク吐出面に当接する位置にあるときに、第3環状突起が側周面にその全周に亘って当接しているので、支持部材とインクジェットヘッドとの間に外部からの異物がほとんど侵入しない。
また、このとき、前記内壁面には、その全周に亘り内側に向かって延在した複数の可撓性針状材が取り付けられており、前記第1環状突起が前記インク吐出面に当接する位置にあるときに、前記可撓性針状材が、前記側周面にその全周に亘って当接していてもよい。これによると、第1環状突起がインク吐出面に当接する位置にあるときに、可撓性針状部材が側周面にその全周に亘って当接しているので、支持部材とインクジェットヘッドとの間に外部からの異物がほとんど侵入しない。
また、このとき、前記異物付着回避手段が、送風機と、空気を濾過するフィルタとをさらに含んでおり、前記支持部材に貫通孔が形成されており、前記第1環状突起が前記インク吐出面に当接する位置にあるときに、前記送風機による前記フィルタ及び前記貫通孔を介した気流が、前記支持部材と前記インクジェットヘッドとの間を流れていてもよい。これにより、第1環状突起がインク吐出面に当接する位置にあるときに、フィルタによって濾過された空気が支持部材とインクジェットヘッドとの間から外部に向かって流れる。そのため、支持部材とインクジェットヘッドとの間に外部からの異物がより侵入しにくくなる。
また、このとき、前記第2環状突起が弾性材料からなっていてもよい。これにより、第2環状突起をインク吐出面の外縁に当接したときに、第2環状突起によってインク吐出面に傷がつきにくくなる。
また、このとき、前記第1環状突起が前記インク吐出面に当接する位置にあるときに、前記支持部材と前記インク吐出面との間に、前記吐出面環状領域の少なくとも一部を内包する外側密閉空間が形成されていてもよい。これにより、第1環状突起がインク吐出面に当接する位置にあるときに、支持部材とインク吐出面との間に外側密閉空間が形成されているので、支持部材とインクジェットヘッドとの間に外部からの異物が侵入しない。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの概略平面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。図4は、図1に示すインクジェットヘッドのインク吐出面の平面図である。インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、4つのインクジェットヘッド2を備えたカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構11が、図1中右方に排紙部12が、それぞれ構成されている。
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙機構11から排紙部12に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構11には、用紙トレイ21内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ22が設けられている。ピックアップローラ22によって用紙は図1中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ6,7と、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とが配置されている。これら2つのベルトローラ6,7及び搬送ベルト8によって用紙を搬送する搬送手段が構成されている。搬送ベルト8の外周面、すなわち搬送面8aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構11のすぐ下流側には、搬送ベルト8と対向する位置に押さえローラ5が配置されており、給紙機構11から送り出された用紙を搬送ベルト8の搬送面8aに押さえ付けている。これにより、搬送面8aに押さえ付けられた用紙は、搬送面8aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって搬送される。このとき、用紙搬送方向下流側のベルトローラ6は、図示しない駆動モータから駆動力が与えられ、図1中時計回り(矢印A方向)に回転している。
用紙搬送経路に沿って搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離部材13が設けられている。剥離部材13は、搬送ベルト8の搬送面8aに保持されている用紙を搬送面8aから剥離して、右方の排紙部12へ向けて送るように構成されている。
搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置、つまり上側にある搬送ベルト8の下面と接触することによって内周側からこれを支持するほぼ直方体形状のプラテン9が配置されている。
4つのインクジェットヘッド2は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応して、用紙搬送方向(図2中下方から上方に向かう方向)Bに沿って4つ並べて設けられている。つまり、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。インクジェットヘッド2は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交した方向に長尺な細長い長方形形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、図1及び図3に示すように、ヘッド本体(圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体)3を有している。ヘッド本体3の上面には、インクを一時的に貯溜するリザーバユニット10が固定されており、その内部にはチューブジョイント10aから供給されたインクを貯溜するインク溜まりが形成されている。ヘッド本体3の底面には、図4に示すように、微小径のノズル(インク吐出口)3bが多数並べて形成されており、この底面が搬送面8aと対向するインク吐出面3aとなっている。また、リザーバユニット10は、用紙搬送方向Bと直交した方向に関してヘッド本体3よりも長く形成されている。このリザーバユニット10は、ヘッド本体3の長手方向両側に延びて形成されており、この両側に飛び出た部分が後述のフレーム4への固定しろとなっている。なお、リザーバユニット10内のインクは、ヘッド本体3の図示しないインク流路に供給されることになる。
ヘッド本体3は、インク吐出面3aと搬送ベルト8の搬送面8aとが平行となり、且つこれらの面の間に少量の隙間が形成されるように配置されている。この隙間部分が用紙搬送経路の一部として構成されている。この構成で、搬送ベルト8上を搬送される用紙が4つのヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズル3bから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像を形成できるようになっている。
また、4つのインクジェットヘッド2は、図2及び図3に示すように、用紙搬送方向Bに沿って互いに隣接配置された状態で、枠状のフレーム4に固定されている。フレーム4は、図3に示すように、リザーバユニット10の長手方向両端部の下面と対向する位置まで突出した支持部4aを有している。そして、支持部4aとリザーバユニット10の両端部とがネジ50で固定されている。また、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが、図3に示すように、フレーム4(支持部4a)の底面とほぼ同じ高さでフレーム4の開口から露出される。
また、フレーム4は、プリンタ1に設けられたフレーム移動機構51により、上下に移動可能に支持されている。フレーム移動機構51は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド2の並びの前後(図2中上下)に配設されている。各フレーム移動機構51は、フレーム4を上下動する駆動源としての駆動モータ52と、各駆動モータ52の軸に固定されたピニオンギヤ53と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにフレーム4に立設されたラックギヤ54と、ピニオンギヤ53とでラックギヤ54を挟む位置に配置されたガイド56とを含んでいる。2つの駆動モータ52は、用紙搬送方向Bに関して互いに対向して配置されたインクジェットプリンタ1の本体フレーム1aに固定されている。2つのラックギヤ54は、上下方向に延在しており、下端部がフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。また、ラックギヤ54のピニオンギヤ53とは反対側の側面は、ガイド56と摺動可能に接している。ガイド56は、本体フレーム1aに固定されている。この構成において、2つの駆動モータ52を同調させて各ピニオンギヤ53を正及び逆方向に回転させると、ラックギヤ54が上下方向に移動する。このラックギヤ54の上下動に伴ってフレーム4及び4つのインクジェットヘッド2が上下方向に移動する。また、ガイド部59が、インクジェットヘッド2の長手方向の両側に配設されている。各ガイド部59は、棒状部材58とこれを挟む一対のガイド57とから構成されている。このうち、一対のガイド57は、図3に示すように上下方向に延在し、用紙搬送方向Bと直交する方向に関して、互いに対向する本体フレーム1bにそれぞれ固定されている。一方、棒状部材58は、ガイド57と同様に上下方向に延在し、本体フレーム1bと平行に対向配置されたフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。さらに、棒状部材58は、一対のガイド57間にそれぞれ摺動可能に挟まれている。このガイド部59により、フレーム移動機構51によってフレーム4が上下方向に移動したときに、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが搬送面8aに対して傾くのを防ぐことができる。つまり、フレーム移動機構51でフレーム4及びインクジェットヘッド2を上下方向に移動させても、インク吐出面3aは対向する搬送面8aと常に平行となる。その結果、印刷時において、用紙に対するインクの着弾精度が向上する。
通常、フレーム4は、4つのインクジェットヘッド2が用紙に対してインクを吐出し印刷する印刷位置(図3に示す位置)に配置されており、インクジェットヘッド2のメンテナンス時(本実施形態ではインクジェットヘッド2からインクを強制的に吐出する(パージする)とき、インク吐出面3aに付着したインクを拭き取るとき及びインク吐出面3aをキャップで覆うとき)にだけ、フレーム移動機構51によって移動されて、4つのインクジェットヘッド2が印刷位置よりも上方(ヘッドメンテナンス位置)に配置される。
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70について説明する。図5(a)は図2に示すVA−VA線に沿った断面図であり、図5(b)は図2に示すVB−VB線に沿った断面図である。インクジェットプリンタ1には、図2及び図3に示すように、ヘッド本体3に対するメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2の左側に配置されている。メンテナンスユニット70は、図3及び図5(a)に示すように、水平移動可能な2つのフレーム71,75を有している。メンテナンスユニット70のすぐ下方には、廃インク受け部材77が配置されている。廃インク受け部材77のインクジェットヘッド2側の端部には、上下方向に貫通したインク排出孔77aが形成されている。インク排出孔77aは、廃インク受け部材77上に流れ込んだインクを図示しない廃インク溜めに流通させる。フレーム71,75が後述のように水平移動する際は、予めフレーム4を上方(図3中矢印C方向)に移動させて4つのインクジェットヘッド2を「ヘッドメンテナンス位置」に配置する(図7参照)。これにより、4つのインクジェットヘッド2と搬送ベルト8との間には、フレーム71,75のためのスペースが確保され、フレーム71,75を図3中矢印D方向に水平移動可能となる。なお、フレーム71は、図2及び図3に示すように、上方に開口したほぼ方形の箱形形状を有し、フレーム75を内包可能に構成されている。フレーム71とフレーム75とは、後述の係合手段(係合部)によって着脱可能に結合されている。フレーム71は、インクジェットヘッド2とは反対側の側面が開放されており、パージ動作時のように両者の係合が解除されているとき、内包するフレーム75を残して、フレーム71のみが移動可能となる。また、前述の廃インク受け部材77は、平面視でフレーム71を内包するサイズを有し、フレーム71が図2において右端まで移動したときでも、フレーム71のインクジェットヘッド2と反対側の辺縁部が重なる形状を有している。
フレーム71内には、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72、インク受け取り部材73及びフレーム75が配置されている。フレーム(支持部材)75内には、図2に示すように、各インクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対応して、矩形平面形状を有した4つのキャップ76が並べて設けられている。各キャップ76は、その長手方向をインクジェットヘッド2の長手方向に平行とされ、用紙搬送方向Bにインクジェットヘッド2と同じピッチで配置されている。キャップ76は、図5(b)に示すように、その底部76bから上方に突出した環状突起(第1環状突起)76aを有している。環状突起76aは、インク吐出面3aにおける複数のノズル3bが形成された形成領域3cの周囲近傍に当接される。なお、図4に、この形成領域3cの周囲近傍が二点鎖線で示されている。ここでは、形成領域3cを、インク吐出面3aに形成されたノズル3bのうち、外側に位置する各ノズル3bを繋ぐ輪郭線内の領域としている。つまり、キャップ76は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、ノズル3bの形成領域3c(分布範囲)よりも若干広く且つインク吐出面3aよりも狭い開口を有した凹部として形成されている。このようにキャップ76は、インク吐出面3aのノズル3bの形成領域3cを覆うことが可能となっており、ノズル3b内のインクの乾燥を防止している。また、キャップ76は、ゴムなどの弾性材料で構成されている。そのため、インク吐出面3aと環状突起76aとが密着しやすくなり、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、キャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内の気密性が向上する。また、各キャップ76は、2つのバネ88と共にフレーム75に支持されており、バネ88によってフレーム75の支持面75aから離れる方向に付勢されている。このように、キャップ76が2つのバネ88とともに支持されていることで、キャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、バネ88がその衝撃力を緩和する。したがって、環状突起76aによってインク吐出面3aに傷が付きにくくなる。さらに、搬送面8aに対するインク吐出面3aの平行度に多少誤差が生じていても、インク吐出面3aのその傾きにキャップ76が追従することが可能となる。そのため、キャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内を密閉空間とすることができる。
フレーム75の支持面75aには、各キャップ76を取り囲み且つ上方に向かって突出した環状突起(第2環状突起)78が形成されている。環状突起78は、図5(b)に示すように、インク吐出面3aと環状突起76aとが当接していないときに、先端(頭頂部)78aが環状突起76aの先端(頭頂部)76cよりも上方位置になるように形成されている。また、環状突起78は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接しているときに、先端部78bがヘッド本体3の側周面と近接しつつ対向するように形成されている(図9参照)。また、フレーム75及び各環状突起78には、図5(a)に示すように、水平方向に貫通した貫通孔61が形成されている。フレーム75の貫通孔61の周囲近傍には、左方に突出したジョイント部63が形成されており、ジョイント部63に可撓性チューブ64がそれぞれ接続されている。可撓性チューブ64は、図2に示すように、一方の端部がジョイント部63に接続され、他方の端部が送風機65に接続されている。可撓性チューブ64と送風機65との接続部分には、それぞれフィルタ67が設けられている。この構成により、送風機65から送られ且つフィルタ67によって濾過された気流を可撓性チューブ64及び貫通孔61を介して環状突起78によって囲まれた領域内に送り込むことが可能となる。これらフレーム75及び支持面75aに形成された環状突起78、さらには、送風機65、フィルタ67、可撓性チューブ64などによって、異物付着回避手段が構成されている。この異物回避手段は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接しているときに、その当接位置(図4中二点鎖線で示す部分)とインク吐出面3aの外縁とで区画される吐出面環状領域3dを包囲して、吐出面環状領域3dに異物が付着するのを回避する。先端部78bの内壁面には、全周に亘ってキャップ76側(すなわち、内側)に向かって突出した環状突起(第3環状突起)79が形成されている。環状突起79は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接しているときにヘッド本体3の側周面と当接するように形成されている(図9参照)。本実施形態において、環状突起79には、多孔質弾性材料からなるスポンジが採用されているが、変形例として図6に示すような内側に向かって延在した複数の可撓性針状材80からなるブラシであってもよい。いずれも、通気性を有していることが好適である。このように、環状突起79がスポンジやブラシのような柔軟性を有していることで、ヘッド本体3の側周面と当接しても傷が付きにくくなる。さらに、環状突起79がヘッド本体3の側周面の形状に沿って当接しやすくなる。
フレーム71のインクジェットヘッド2側には、図2に示すように、ワイパー72及びインク受け取り部材73が保持された保持部材74が固定されている。保持部材74は、平面形状がコ型形状となっており、保持部材74の用紙搬送方向Bに沿う部分にワイパー72及びインク受け取り部材73が保持されている。一方、保持部材74の用紙搬送方向Bと直交する方向に延在した部分の端部には、凹部74aが形成されている。
インク受け取り部材73は、図2及び図5(a)に示すように、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅よりも若干長い複数の薄板73aを備えている。各薄板73aは、インクに対する毛管力に合わせた間隔で互いに平行に配置されている。ワイパー72は、薄板73aと同様に、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅より若干長く、その長手方向が用紙搬送方向Bに平行となるように配置されている。ワイパー72は、ゴムなどの弾性材料からなる。
フレーム71とフレーム75とは、上述したように係合部によって着脱可能に係合されている。図2に示すように、係合部は、フレーム71,75の上下方向の各辺にそれぞれ設置され、主には、フレーム71の保持部材74に設けられた凹部74aと、フレーム75に回動可能に支持された引っ掛け部材83とから構成されている。凹部74aは、フレーム71のインクジェットヘッド2側の端部付近に位置している。引っ掛け部材83は、用紙搬送方向Bと直交する方向に延在しており、そのほぼ中央部において支持面75aに設けられた2つのフランジによって回動可能に支持されている。また、引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2側の端部には、凹部74aに係合する引っ掛け部83aが形成されている。メンテナンスユニット70の上方には、各引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2と最も離れた端部83bに当接可能な当接部材84がそれぞれ回動可能に支持されている。この当接部材84のインクジェットヘッド2と最も離れた端部84aは、図示しない伸縮可能なシリンダと連結されており、図3に示す状態からシリンダが縮むと当接部材84が図3中時計回りに回動し、当接部材84のインクジェットヘッド2に最も近い端部84bが引っ掛け部材83の端部83bに当接する。これによって、引っ掛け部材83が反時計回りに回動し、引っ掛け部83aと凹部74aとの係合が解除される。一方、シリンダが伸びると当接部材84が反時計回りに回動し、引っ掛け部材83の端部83bから当接部材84が離隔する。すると、引っ掛け部83が時計回りに回動し、引っ掛け部83aが凹部74aと係合し、図3に示す状態に戻る。
メンテナンスユニット70は、後述のメンテナンスが行われないとき、図3に示すように、インクジェットヘッド2から離れた「退避位置」(図2において、インクジェットヘッド2と対向しない左側位置)にて静止している。そして、例えばパージ動作時には、この退避位置からフレーム71がインクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対向した「メンテナンス位置」へ水平移動される。このとき、インクジェットヘッド2はヘッドメンテナンス位置に配置されているので、ワイパー72が、インク吐出面3aに接触しないようになっている。なお、インク受け取り部材73は、ワイパー72がインク吐出面3aに当接した状態において、インク吐出面3aとの間に僅かな隙間(例えば、0.5mm)が常に形成されるようになっている。また、このパージ動作時には、キャップ76を有するフレーム75は残して、フレーム71が移動される。フレーム71は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交する方向に延びた一対のガイド軸96a,96bに移動可能に支持されている。ガイド軸96a,96bは、フレーム71の上下方向両側縁部に対向して配置され、フレーム71がこのガイド軸96a,96bに沿って図中左右方向に移動される。
ここで、フレーム71,75を水平移動させる駆動機構91について説明する。駆動機構91は、図2に示すように、モータ92、モータプーリ93、アイドルプーリ94、タイミングベルト95、及び、ガイド軸96a,96b等を有する。モータ92は、インクジェットヘッド2の長手方向に平行に延びる本体フレーム1aに取り付けられている。本体フレーム1aの図2中右側端部には、その取り付け部1cが設けられており、ここにモータ92がネジなどで固定されている。モータプーリ93は、モータ92に接続されており、モータ92の駆動に伴って回転する。アイドルプーリ94は、図2中最も左側の本体フレーム1dに回転可能に支持されている。タイミングベルト95は、モータプーリ93とこれと対になったアイドルプーリ94との間に架け渡されるように巻回されている。また、タイミングベルト95には、フレーム71が固定されている。詳細には、保持部材74の両側面から突出した2つの軸受け部材97a,97bのうち図2中上方に位置する軸受け部材97aと接続されている。各ガイド軸96a,96bは、タイミングベルト95と平行に配設されている。ガイド軸96a,96bの両端は、用紙搬送方向Bと平行な本体フレーム1b,1dにネジなどで固定されている。フレーム71は2つの軸受け部材97a,97bによって、またフレーム75はその両側面から突出した軸受け部材98a,98bによってそれぞれガイド軸96a,96bに支持されている。なお、フレーム75は、保持部材74の凹部74aと引っ掛け部83aとが係合しているときにおいて、フレーム71とともに一緒にスライド可能となっている。
この構成において、モータ92を駆動すると、モータプーリ93が正又は逆方向に回転するに伴ってタイミングベルト95が走行する。このタイミングベルト95の走行により、タイミングベルト95に軸受け部97aを介して接続されたフレーム71が、図2左又は右方向に、即ち退避位置又はメンテナンス位置に向かう方向に移動する。なお、保持部材74の凹部74aと引っ掛け部83aとが係合しフレーム71とフレーム75とが連結しているときは、フレーム71内のワイパー72及びインク受け取り部材73と、フレーム75内のキャップ76及び環状突起78とが一緒にメンテナンス位置又は退避位置に移動する。一方、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔してフレーム71とフレーム75とが連結されていないときは、フレーム71内のワイパー72及びインク受け取り部材74がメンテナンス位置又は退避位置に移動する。
次に、メンテナンスユニット70の動作ついて、図7〜図9を参照しつつ以下に説明する。図7は、インクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動したときの状況図である。図8(a)はメンテナンスユニット70のフレーム71がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図8(b)はインク受け取り部材73及びワイパー72によりインク吐出面3aに付着したインクを払拭しているときの状況図である。図9(a)はメンテナンスユニット70全体(フレーム71とフレーム75)がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図9(b)はキャップ76によりノズル3bの形成領域3cを覆い且つ環状突起79がヘッド本体3の側周面と当接しているときの状況図である。
吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作を行う場合は、図7に示すように、フレーム移動機構51によりフレーム4を上方に移動させる。このとき、2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、各ピニオンギヤ53を正方向(図7中時計回り方向)に回転させる。すると、ラックギヤ54がピニオンギヤ53の回転に伴って上方に移動する。ラックギヤ54に固定されたフレーム4は4つのインクジェットヘッド2とともに上方に移動する。そして、フレーム4及びインクジェットヘッド2が、図7に示すように、ヘッドメンテナンス位置に到達したときに駆動モータ52の回転を停止する。こうして、インク吐出面3aと搬送ベルト8との間にメンテナンスユニット70が配置可能なスペースが形成される。このようにヘッドメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド2のインク吐出面3a及びフレーム4の底面は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動してきたときに、ワイパー72及び環状突起78の先端78aと接触しない位置となっている。
次に、図示しないシリンダを縮める。すると、当接部材84が時計回りに回動して、図7に示すように、引っ掛け部材83の端部83bに当接するとともに、端部83bを下方に押し下げる。この動作によって引っ掛け部材83は反時計回りに回動し、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔し凹部74aと引っ掛け部83aとの係合が解除される。つまり、フレーム71とフレーム75との連結が解除された状態となる。そして、この状態で、フレーム71をメンテナンス位置に移動させるように、駆動機構91のモータ92を駆動してタイミングベルト95を走行させる。フレーム71が、図8(a)に示すように、メンテナンス位置に到達したときにモータ92の駆動を停止する。次に、インクタンク内のインクをインクジェットヘッド2へ強制的に送るポンプ(ともに図示せず)を駆動し、インクジェットヘッド2のノズル3bからフレーム71内にインクを吐出する(パージ動作)。このパージ動作によって、吐出不良に陥っていたノズル3bの詰まりやノズル3b内のインクの増粘が解消される。フレーム71内に吐出されたインクはフレーム71の底面に沿って図8中左側に移動し、廃インク受け部材77に流れ込む。そして、廃インク受け部材77のインク排出孔77aからパージされたインクが排出される。しかし、一部のインクは、インク滴となってインク吐出面3aに残留する。
次に、フレーム移動機構51によってインクジェットヘッド2を下方に移動させる。このとき、インクジェットヘッド2は、フレーム71が左側(すなわち、退避位置)に移動するときに、ワイパー72の先端がインク吐出面3aと当接可能な位置であって、インク吐出面3aとインク受け取り部材73の薄板73aの上端との間に、例えば、0.5mmの隙間が形成されるような位置に配置される。そして、図8(b)に示すように、駆動機構91によってフレーム71を、左側に移動させ(すなわち、フレーム71をメンテナンス位置から退避位置に移動させる)ワイプ動作を行う。このとき、フレーム71の退避位置への移動に伴って、インク受け取り部材73及びワイパー72が、パージによってインク吐出面に付着したインクを拭き取る。インク受け取り部材73の各薄板73aの上端は、インク吐出面3aに接触せずに所定の微小な間隔をおいて近接している。これより、インク吐出面3aに付着しているインクのうち比較的大きな液滴は、インク受け取り部材73の各薄板73a間に毛管現象によって移動する。そして、ワイパー72は、その上端がインク吐出面3aより上側にあるので、図8(b)に示すように、インク吐出面3aに対向する位置に至ると、インク吐出面3aと撓みながら接触する。これより、インク受け取り部材73で除去されなかったインク吐出面3aに付着したインクを拭き取る。こうして、インク吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2をパージで回復し、パージによってインク吐出面3aに付着したインクを拭き取るメンテナンス動作が終了する。
次に、プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、インク吐出面3aをキャップ76で覆うキャップ動作について以下に説明する。この場合においても、上述と同様に、図7に示すように、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2を印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動する。そして、図9(a)に示すように、フレーム71とフレーム75とが引っ掛け部材83によって連結された状態で、フレーム71及びフレーム75を駆動機構91によりメンテナンス位置に移動させる。このとき、キャップ76がノズル3bの形成領域3cと対向する位置に配置され、環状突起78の先端78aがヘッド本体3の側周面外側近傍と対向する位置に配置される。次に、図9(b)に示すように、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2を下方に移動させ、図4中二点鎖線で示す当接位置において、環状突起76aの先端(上端)76cをインク吐出面3aと当接させる。こうして、インク吐出面3aとキャップ76との間が密閉空間となってノズル3b内のインクの乾燥を防止する。このとき、図9(b)に示すように、環状突起78の先端部78bがヘッド本体3の側周面と対向しつつ近接するとともに、環状突起79がヘッド本体3の側周面と当接する。これにより、インク吐出面3aとキャップ76とが当接しているときに、吐出面環状領域3dに異物が付着しにくくなる。また、このとき、送風機65が駆動され、フィルタ67によって濾過された気流が可撓性チューブ64及び貫通孔61を介して環状突起78によって囲まれた領域内に送り込まれる。この送り込まれた空気は、環状突起79が当接後でも一定時間だけスポンジからなる環状突起79を通過して、さらには、環状突起79とヘッド本体3の側周面との間から外部に流れる。このように、キャップ76とインク吐出面3aとの当接前後に、環状突起78によって囲まれる領域内に清浄な空気を送り込むことで、外部から環状突起78によって囲まれた領域内に異物が侵入しにくくなる。
本実施形態においては、環状突起78の先端78aがキャップ76の環状突起76aの先端76cよりも支持面75aから離れた位置(すなわち、環状突起76aの先端76cよりも上方位置)に配置されているので、キャップ76とインク吐出面3aとが当接するときに環状突起78の先端部78bがヘッド本体3の側周面と対向しつつ近接し環状突起79がその側周面と当接しているが、環状突起78の先端78aを環状突起76aの先端76cと同じ高さレベル又は環状突起76aの先端76cよりも若干下方に配置していてもよい。この場合、キャップ76とインク吐出面3aとが当接した後、さらにキャップ76を支持するバネ88が縮むようにキャップ76をインク吐出面3aで押し下げ、ヘッド本体3aの側周面と環状突起78の先端部78bと近接させつつ対向させ、環状突起79をその側周面と当接させる。また、環状突起78の先端部78bをさらに上方に配置していてもよい。この場合、キャップ76とインク吐出面3aとが当接する前に、先端部78bとヘッド本体3の側周面とが近接しつつ対向し且つ環状突起79が側周面に当接する。このように、インク吐出面3aとキャップ76とが当接する前、及び、後であっても効果は同様なものとなる。また、本実施形態において、環状突起79は環状突起78の先端部78bに形成されているが、キャップ76とインク吐出面3aとが当接しているときに、環状突起79をヘッド本体3の側周面に当接可能であれば、環状突起78の内壁面のどの位置に形成されていてもよい。
以上のような本実施の形態によるインクジェットプリンタ1によると、フレーム75及び環状突起78が異物付着回避手段に含まれているので、キャップ76とインク吐出面3aとが当接しているときに、吐出面環状領域3dに異物(紙粉などの塵)が付着しにくくなる。そのため、インク吐出面3aをワイパー72で払拭しても吐出面環状領域3dに異物がほとんど存在しないので、吐出面環状領域3dに存在する異物がノズル3bの形成領域3cに移動することによって生じるノズル3bの詰まりやインク吐出方向の乱れを抑制することができる。加えて、インク吐出面3aを払拭してもノズル3bの形成領域3cに異物が移動しないので、異物を核とするインク溜まりが形成領域3cに形成されない。
また、環状突起78の先端部78bの内壁面が、キャップ76とインク吐出面3aとが当接しているときに、ヘッド本体3の側周面と対向しつつ近接しているので、フレーム75とヘッド本体3との間に通じる部分、すなわち、環状突起78の先端部78bとヘッド本体3の側周面との間が僅かな隙間となる。そのため、外部からフレーム75とヘッド本体3との間に異物が侵入しにくくなり、吐出面環状領域3dに異物がより付着しにくくなる。また、キャップ76とインク吐出面3aとが当接しているときに、ヘッド本体3の側周面3aと全周に亘って当接する環状突起79が環状突起78に形成されているので、外部からフレーム75とヘッド本体3との間に異物がほとんど侵入しない。
続いて、本発明の第2実施形態について図10及び図11を参照しつつ以下に説明する。本実施形態においては、フレーム75の支持面75aに形成された環状突起78の構成が若干異なる環状突起178が支持面75aに形成されているだけで、それ以外は第1実施形態とほぼ同様なものである。なお、本実施形態においては、送風機65、可撓性チューブ64及びフィルタ67が設けられておらず、フレーム75及び環状突起178には、貫通孔61及びジョイント部63が形成されていない。また、第1実施形態と同様なものについては同符号で示し、説明を省略する。
図10は、第2実施形態によるインクジェットプリンタのフレーム75に形成されたキャップ76及び環状突起178を示しており、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すXB−XB線に沿った断面図である。環状突起178は、図10(a)、(b)に示すように、第1実施形態と同様に、キャップ76をそれぞれ取り囲みつつ支持面75aから上方に向かって突出して形成されている。また、環状突起178は、インク吐出面3aとキャップ76とが当接していないときに、先端(上端)178aが環状突起76aの先端(上端)76cと同じ高さレベルとなるように形成されている。なお、キャップ76はバネ88で支持されているので、環状突起178の先端178aが環状突起76aの先端76cよりも若干下方にあってもよい。また、環状突起178は、インク吐出面3aとキャップ76とが当接しているときに、先端178aがインク吐出面3aの外縁に全周に亘って当接するように形成されている(図11参照)。これらフレーム75及び支持面75aに形成された環状突起178によって、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接しているときに、その当接位置(図4中二点鎖線で示す部分)とインク吐出面3aの外縁とで区画される吐出面環状領域3dを包囲して、吐出面環状領域3dに異物が付着するのを回避する異物付着回避手段が構成されている。また、環状突起178は、ゴムなどの弾性材料から構成されている。これにより、環状突起178をインク吐出面3aの外縁に当接したときに、環状突起178によってインク吐出面3aに傷がつきにくくなる。
次に、キャップ76及び環状突起178がインク吐出面3aに当接するときの動作について以下に説明する。図11(a)は図10に示すキャップ76及び環状突起178がインク吐出面3aと当接しているときの状況図であり、図11(b)は環状突起178の先端178aがインク吐出面3aの外縁と若干ずれて当接する状況図である。なお、キャップ76をインク吐出面3aに当接する動作は上述した第1実施形態と同様である。つまり、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2がヘッドメンテナンス位置にあるときに、フレーム71及びフレーム75を駆動機構91によりメンテナンス位置に移動させる。そして、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2を下方に移動させ、図4中二点鎖線で示す当接位置において、環状突起76aの先端76cをインク吐出面3aと当接させる。これより、インク吐出面3aとキャップ76との間が密閉空間となってノズル3b内のインクの乾燥を防止する。このとき、図11(a)に示すように、環状突起178の先端178aがインク吐出面3aの外縁の全周に亘って当接する。これより、キャップ76とインク吐出面3aとが当接しているときに、環状突起178に囲まれた領域内に外部から異物がほとんど侵入しない。つまり、吐出面環状領域3dに異物が付着しにくくなる。また、このとき、キャップ76、インク吐出面3aの吐出面環状領域3d及び環状突起178とで囲まれた領域が密閉空間(外側密閉空間)となっている。そのため、キャップ76とインク吐出面3aとが当接しているときにおいて、キャップ76、インク吐出面3aの吐出面環状領域3d及び環状突起178とで囲まれた領域内に異物が侵入しなくなる。
図11(b)に示すように、インク吐出面3aの外縁が環状突起178の先端178aから若干内側にずれた位置で、インク吐出面3aと環状突起178とが当接している。この場合でも環状突起178が弾性材料から構成されていることで、インク吐出面3aの外縁が環状突起178の先端部178bにめり込むような状態で、インク吐出面3aと環状突起178とが当接しておれば、上述のような効果を得ることができる。さらに、図11(b)に示すように、環状突起178の先端部178bはインク吐出面3aの外縁のみならず、ヘッド本体3aの側周面の一部にも当接しているので、キャップ76、インク吐出面3aの吐出面環状領域3d及び環状突起178とで囲まれた領域の密閉状態が向上する。また、環状突起178がインク吐出面3aに及ぼす当接力は、その大きさによってはインク吐出面3aを変形させることがある。しかし、この環状突起178は、環状突起76aほどにインク吐出面3aとの間での密閉性が要求されない。そのため、環状突起178は、インク吐出面3aに対して単に接触(力を及ぼさない程度に接触)する程度に配置されればよく、環状突起178と環状突起76aとの位置関係、バネ88の付勢力、環状突起76aとインク吐出面3aとの当接後の移動量などが調節される。あるいは、環状突起178の先端部178aが、環状突起76aの先端部76cに比べて容易に変形しやすい形状(例えば、先端部76cよりもさらに先細り形状)やより低剛性な材質で形成されていてもよい。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第1実施形態においては、環状突起79が先端部78bの内壁面に設けられた環状突起78によって囲まれた領域内に清浄な空気を送り込むための送風機65、フィルタ67等が設けられているが、環状突起78には環状突起79が形成されていなくてもよい。つまり、環状突起79が形成されていない環状突起78、環状突起78によって囲まれた領域内に清浄な空気を送り込むための送風機65、フィルタ67等だけが設けられていてもよい。また、送風機65によって送り込まれる空気は、フレーム75の支持面75aから送り込まれてもよい。また、第2実施形態においては、環状突起178がインク吐出面3aの外縁と当接するように形成されているが、キャップ76の環状突起76aが図4中二点鎖線で示された当接位置に当接しているときに、環状突起178が外縁のみならず吐出面環状領域3dの少なくとも一部と当接するものであってもよいし、外縁のみならずヘッド本体3の側周面の少なくとも一部と当接するものであってもよい。この場合、環状突起178とヘッド本体3との接触面積が大きくなるので、キャップ76、インク吐出面3aの吐出面環状領域3d及び環状突起178とで囲まれた領域の密閉状態がさらに向上する。
また、環状突起78の先端部78bの内壁面に形成された環状突起79は、スポンジ、ゴム、可撓性針状材80のような柔軟性を有していない材料から構成されていてもよい。また、各実施形態におけるインクジェットヘッドは、ラインタイプのインクジェットヘッドであるが、シリアルタイプのインクジェットヘッドでも適用可能である。すなわち、シリアルタイプのインクジェットプリンタであっても、上述のような効果を有することが可能である。