JP4765969B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インク滴を噴射するインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置に関する。
特許文献1には、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニットとを含むインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置において、メンテナンスユニットは、インクジェットヘッドのノズル面(インク吐出面)を覆うゴムなどの弾性部材からなるキャップと、インクジェットヘッドのノズル面に付着したインクを払拭するブレード(ワイパー)とを有している。そして、メンテナンスユニットがパージ位置にあるときにインクジェットヘッドのノズル面がキャップにより覆われる。このとき、インクジェットヘッドのパージ動作が行われる。その後、メンテナンスユニットがパージ位置から退避位置に移動するときに、ブレードがノズル面を払拭し、ノズル面に付着したインクが除去される。また、インクジェット記録装置が待機状態にあるとき、キャップがノズル面を覆うことによって、ノズル内のインクが乾燥するのを防止する。
特開2004−142450号公報
上述した特許文献1に記載のインクジェット記録装置によると、キャップには凹部を画定する突起が形成されており、インクジェットヘッドのノズル面がキャップの凹部に覆われるように、キャップの突起をノズル面に接触させる。キャップの突起がノズル面に当接すると、ノズル面に残存しているインクとキャップの弾性材料とが反応して析出物が析出することがある。また、キャップの突起とノズル面との境界に溜まったインクに周囲に飛散している塵などが付着して固着物となる。このため、ノズル面からキャップが離隔した状態においても、ノズル面におけるキャップの突起が当接する領域に析出物や固着物などの不純物が付着している。このとき、ブレードがノズル面全域を払拭すると、ノズル面に付着した不純物が、ブレードによってノズル面全体に広げられる。これにより、不純物がノズルの開口(吐出口)周辺に付着してノズル面の撥水性を低下させたり、ノズル内に入り込んでノズルを封止したりする。この場合、インク吐出特性が悪化する。
そこで、本発明の目的は、インク吐出面に付着した不純物が、吐出口周辺に再付着してインク吐出面の撥水性を低下させたり、吐出口に入り込んで吐出口を封止したりするのを抑制するインクジェット記録装置を提供することである。
本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を吐出する複数の吐出口が形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記インク吐出面に接触して前記複数の吐出口を覆う凹部を画定する環状突起を有するキャップと、前記環状突起が前記インク吐出面に接触している状態と、前記環状突起が前記インク吐出面から離隔している状態とを選択的に取り得るように、前記キャップ及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるキャップ移動機構と、板形状を有するワイパーと、前記ワイパーが、前記インク吐出面に接触しつつ前記インク吐出面の一方から他方に向かって前記インク吐出面を払拭するように、前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるワイパー移動機構と、前記ワイパーの払拭方向に沿って延在しているガイド、前記インク吐出面に直交する方向に関して常に前記ワイパーとともに移動するように配置されているとともに前記ガイドと当接する当接面を有する位置決め部材、及び、前記位置決め部材の前記当接面を前記ガイドに向かって付勢する付勢機構、を有する規制機構と、を備えている。そして、前記ガイドには段差面が形成されており、前記位置決め部材の前記当接面が前記段差面を通って前記ガイドにガイドされて、前記ワイパーが前記インク吐出面における前記環状突起の前記払拭方向に関する両側の縁部が接触する領域を含む規制領域間の領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面に接触し、且つ、前記ワイパーが前記規制領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面から離隔することで、前記ワイパーが前記インク吐出面を払拭するとき、前記インク吐出面における前記規制領域に、前記ワイパーが接触するのが規制されている。
本発明によると、ワイパーが、インク吐出面における環状突起の払拭方向に関する両側の縁部が接する規制領域を払拭しないため、規制領域に付着した不純物が、ワイパーにより吐出口まで広がるのを抑制することができる。これにより、不純物が、吐出口周辺に付着してインク吐出面の撥水性を低下させたり、吐出口に入り込んで吐出口を封止したりするのが抑制され、インク吐出特性が悪化するのを防止することができる。
また、簡単な機構でワイパーをインク吐出面と直交する方向に関して移動させて、ワイパーが、ワイパーが規制領域に接触するのを規制することができる。
このとき、前記払拭方向に延在する枠体部を有しているとともに、前記枠体部の内側に配置された前記インクジェットヘッドを支持するフレームをさらに備えており、前記ガイドが、前記フレームの前記払拭方向に延在する部分に備えられていることがより好ましい。これによると、ガイドを確実に固定することができる。
また、本発明においては、前記段差面及び前記当接面の少なくとも一方が曲面で形成されていることがより一層好ましい。これによると、ワイパーがスムーズにインク吐出面に接触するため、インク吐出面が損傷するのを防止することができる。
さらに、本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を吐出する複数の吐出口が形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、前記インク吐出面に接触して前記複数の吐出口を覆う凹部を画定する環状突起を有するキャップと、前記環状突起が前記インク吐出面に接触している状態と、前記環状突起が前記インク吐出面から離隔している状態とを選択的に取り得るように、前記キャップ及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるキャップ移動機構と、板形状を有するワイパーと、前記ワイパーが、前記インク吐出面に接触しつつ前記インク吐出面の一方から他方に向かって前記インク吐出面を払拭するように、前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるワイパー移動機構と、前記ワイパーが前記インク吐出面における前記環状突起の前記払拭方向に関する両側の縁部が接触する領域を含む規制領域間の領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面に接触するように、且つ、前記ワイパーが前記規制領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面から離隔するように、前記インクジェットヘッド及び前記ワイパーの少なくともいずれかを前記インク吐出面に直交する方向に移動させることで、前記ワイパーが前記インク吐出面を払拭するとき、前記インク吐出面における前記規制領域に、前記ワイパーが接触するのを規制するヘッド移動制御手段と、を備えている。本発明によると、ワイパーが、インク吐出面における環状突起の払拭方向に関する両側の縁部が接する規制領域を払拭しないため、規制領域に付着した不純物が、ワイパーにより吐出口まで広がるのを抑制することができる。これにより、不純物が、吐出口周辺に付着してインク吐出面の撥水性を低下させたり、吐出口に入り込んで吐出口を封止したりするのが抑制され、インク吐出特性が悪化するのを防止することができる。また、ワイパーが規制領域に接触するのを容易に規制することができる。
加えて、本発明においては、前記ワイパーが、前記インク吐出面に接触しているとき、前記インク吐出面から離隔するに伴って前記払拭方向に関する前方に位置するように配置されていることがより一層好ましい。これによると、ワイパーがインク吐出面と接触するときに、インク吐出面が損傷するのを防止することができる。
また、本発明においては、前記インク吐出面に直交する方向から見て、前記ワイパーが、前記払拭方向に直交する方向に関する中央から両端に向かって前記払拭方向の反対方向に傾斜するように延在していることがさらにより一層好ましい。これによると、ワイパーがインク吐出面を払拭するときに、インク吐出面における環状突起の払拭方向に直交する方向に関する両側の縁部が接する領域に付着した不純物が、外側に向かって移動するため、不純物が吐出口周辺に付着して撥水性を低下させたり、吐出口に入り込んで吐出口を封止したりするのをさらに抑制することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ要部の概略平面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。図4は、4つのインクジェットヘッドを下方から見たときの図である。
インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、4つのインクジェットヘッド2を有するカラーインクジェットプリンタであり、インクジェットプリンタ1全体を制御する制御装置20を備えている。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構11が、図1中右方に排紙部12が、それぞれ構成されている。
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙機構11から排紙部12に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構11には、用紙トレイ21内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ22が設けられている。ピックアップローラ22によって用紙は図1中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とが配置されている。搬送ベルト8の外周面、すなわち搬送面8aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構11のすぐ下流側には、搬送ベルト8と対向する位置に押さえローラ5が配置されており、給紙機構11から送り出された用紙を搬送ベルト8の搬送面8aに押さえ付けている。これにより、搬送面8aに押さえ付けられた用紙は、搬送面8aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって搬送される。このとき、用紙搬送方向下流側のベルトローラ6は、図示しない駆動モータから駆動力が与えられ、図1中時計回り(矢印A方向)に回転している。
用紙搬送経路に沿って搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離部材13が設けられている。剥離部材13は、搬送ベルト8の搬送面8aに保持されている用紙を搬送面8aから剥離して、右方の排紙部12へ向けて送るように構成されている。
搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置、つまり上側にある搬送ベルト8の下面と接触することによって内周側からこれを支持するほぼ直方体形状のプラテン9が配置されている。
4つのインクジェットヘッド2は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応して、用紙搬送方向(図2中下方から上方に向かう方向)Bに沿って4つ並べて設けられている。つまり、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。インクジェットヘッド2は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交した方向に長尺な細長い直方体形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、図1及び図3に示すように、ヘッド本体(圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体)3を有している。
ヘッド本体3の上面には、カバー14によって部分的に覆われた、インクを一時的に貯溜するリザーバユニット10が固定されている。リザーバユニット10は、カバー14の上面に固定されたチューブジョイント10aと接続されており、チューブジョイント10aから供給されたインクを貯溜するインク溜まりが内部に形成されている。ヘッド本体3の底面には、図4に示すように、微小径のノズル(吐出口)3bが多数並べて形成されており、この底面が搬送面8aと対向するインク吐出面(インク吐出面)3aとなっている。このインク吐出面3aの表面には図示しない撥水膜が形成されている。この撥水膜が、ノズル3bの周囲に余分なインクが付着するのを防止している。また、リザーバユニット10は、用紙搬送方向Bと直交した方向に関してヘッド本体3よりも長く形成されたヘッド固定部10bを有している。このヘッド固定部10bは、ヘッド本体3の長手方向両側に延びて形成されており、リザーバユニット10の両側に延設された部分が後述のフレーム4への固定部となっている。
ヘッド本体3は、インク吐出面3aと搬送ベルト8の搬送面8aとが平行となり、且つこれらの面の間に少量の隙間が形成されるように配置されている。この隙間部分が用紙搬送経路の一部として構成されている。この構成で、搬送ベルト8上を搬送される用紙が4つのヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズル3bから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像を形成できるようになっている。
また、4つのインクジェットヘッド2は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに沿って互いに隣接配置された状態で、枠状のフレーム(枠体部を含む)4に固定されている。フレーム4は、図3及び図4に示すように、リザーバユニット10の長手方向両端部の下面と対向する位置まで突出した支持部4aを有している。そして、支持部4aとリザーバユニット10の両端部とがネジ50で固定されている。こうして、4つのインクジェットヘッド2がフレーム4に取り囲まれて固定されている。さらに、フレーム4の用紙搬送方向Bの下流側に位置する用紙搬送方向Bに直交する方向(払拭方向E:図6参照)に延在している部分の下面には、後述するワイパーユニット72が有する位置決め部材72cをガイドするガイドレール(ガイド)73が形成され(備えられ)ている(図5及び図7参照)。ガイドレール73の中央には凹部73aが形成されている。また、凹部73aの用紙搬送方向Bに直交する方向(払拭方向E)に関する両端が、凹部73aの底面と直交する2つの段差面73bを形成している。
また、フレーム4は、図2及び図3に示すように、プリンタ1に設けられたフレーム移動機構51により、上下に移動可能に支持されている。フレーム移動機構51は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド2の並びの外側(図2中上下)に配設されている。各フレーム移動機構51は、フレーム4を上下動する駆動源としての駆動モータ52と、各駆動モータ52の軸に固定されたピニオンギヤ53と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにフレーム4に立設されたラックギヤ54と、ピニオンギヤ53とでラックギヤ54を挟む位置に配置されたガイド56とを含んでいる。
2つの駆動モータ52は、用紙搬送方向Bに関して互いに対向して配置されたインクジェットプリンタ1の本体フレーム1aに固定されている。2つのラックギヤ54は、上下方向に延在しており、下端部がフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。また、ラックギヤ54のピニオンギヤ53とは反対側の側面は、ガイド56と摺動可能に接している。ガイド56は、本体フレーム1aに固定されている。
この構成において、2つの駆動モータ52を同調させて各ピニオンギヤ53を正及び逆方向に回転させると、ラックギヤ54が上下方向に移動する。このラックギヤ54の上下動に伴ってフレーム4及び4つのインクジェットヘッド2が上下方向に移動する。
また、ガイド部59が、インクジェットヘッド2の長手方向の両側に配設されている。各ガイド部59は、棒状部材58とこれを挟む一対のガイド57とから構成されている。このうち、一対のガイド57は、図3に示すように上下方向に延在し、用紙搬送方向Bと直交する方向に関して、互いに対向する本体フレーム1bにそれぞれ固定されている。一方、棒状部材58は、ガイド57と同様に上下方向に延在し、本体フレーム1bと平行に対向配置されたフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。さらに、棒状部材58は、一対のガイド57間にそれぞれ摺動可能に挟まれている。このガイド部59により、フレーム移動機構51によってフレーム4が上下方向に移動したときに、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが搬送面8aに対して傾くのを防ぐことができる。
通常、フレーム4は、4つのインクジェットヘッド2が用紙に対してインクを吐出し印刷する印刷位置(図3に示す位置)に配置されており、インクジェットヘッド2のメンテナンス時(本実施形態ではインクジェットヘッド2からインクを強制的に吐出するパージのとき、インク吐出面3aに付着したインクを拭き取るとき及びインク吐出面3aをキャップで覆うとき)にだけ、フレーム移動機構51によって移動されて、4つのインクジェットヘッド2が印刷位置よりも上方(ヘッドメンテナンス位置)に配置される。
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70について説明する。インクジェットプリンタ1には、図2及び図3に示すように、ヘッド本体3に対するメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2の左側に配置されている。メンテナンスユニット70は、図3に示すように、水平移動可能な2つのトレイ71、75を有している。このうち、トレイ71は、図2及び図3に示すように、上方に開口したほぼ方形の箱形状を有し、トレイ75を内包可能に構成されている。トレイ71とトレイ75とは、後述の係合手段によって着脱可能に結合されている。両者は、メンテナンス処理の内容に応じて着脱される。
図3に示すように、トレイ71は、インクジェットヘッド2とは反対側の側面が開放されており、例えばパージ動作時のように両者の係合が解かれているとき、内包するトレイ75を残して、トレイ71のみが移動可能となる。また、係合手段の係合状態に係わらず、メンテナンスユニット70が後述のように水平移動する際には、予めフレーム4が上方(図3中矢印C方向)のヘッドメンテナンス位置まで移動され、4つのインク吐出面3aと搬送面8aとの間にメンテナンスユニット70用のスペースが確保される。この後、メンテナンスユニット70が、図3中矢印D方向に水平移動されることになる。
また、メンテナンスユニット70のすぐ下方には、廃インク受けトレイ77が配置されている。この廃インク受けトレイ77は、平面視でトレイ71を内包するサイズを有し、トレイ71が図2において右端まで移動したときでも、トレイ71のインクジェットヘッド2と反対側の辺縁部が重なる形状を有している。廃インク受けトレイ77のインクジェットヘッド2側の端部には、上下方向に貫通したインク排出孔77aが形成されている。インク排出孔77aは、廃インク受けトレイ77上に流れ込んだインクを図示しない廃インク溜めに流通させる。
トレイ71内には、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパーユニット72及びトレイ75が配置されている。ここで、ワイパーユニット72について、図5をさらに参照しつつ説明する。図5は、図3に示すワイパーユニット72の側面図である。図2及び図5に示すように、ワイパーユニット72は、インク受け取り部材72a、ワイパー72b、位置決め部材72c、支持部材15及び付勢機構16を有している。
インク受け取り部材72aは、図2及び図3に示すように、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅よりも若干長いステンレス製の4つの薄板を有している。各薄板は、その長手方向が用紙搬送方向Bと平行に、且つ、インクに対する毛管力に合わせた間隔で互いに平行に配置されている。ワイパー72bは、ゴムなどの弾性材料で形成された板部材であり、インク受け取り部材72aと同様に、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅より若干長く、その長手方向が用紙搬送方向Bに平行となるように、且つ、その短手方向がインク吐出面3aを含む平面に直交するように配置されている。また、ワイパー72bは、退避位置において、インク受け取り部材72aよりインクジェットヘッド2に近い位置に配置されている。さらに、ワイパー72bの上端が、インク受け取り部材72aの上端より上方に位置している。
位置決め部材72cは、インク受け取り部材72aの用紙搬送方向Bの下流側端部近傍に配置されており、上方に向かって緩やかな凸となる曲面からなる当接面72dが上面に形成されている。支持部材15は、インク受け取り部材72a、ワイパー72b及び位置決め部材72cを下方から支持する部材である。付勢機構16は、支持部材15を上下方向に関して摺動自在に支持しているとともに、支持部材15を上方に付勢するものであり、保持部材74に保持されている。これにより、インク受け取り部材72a、ワイパー72b及び位置決め部材72cが一体となって上下方向(インク吐出面3aに対して直交する方向)に移動可能となっている。
なお、インク受け取り部材72aとワイパー72bとは、各先端が位置決め部材72cの当接面72dよりそれぞれの予め設定された距離を介して下方に配置されている。インク受け取り部材72aの先端は、ワイパー72dの先端より当接面72dから離隔している。また、両先端間距離に規定はない。しかし、ワイパー72dがインク吐出面3aを払拭するとき、インク受け取り部材72aの先端がインク吐出面3aから所定距離だけ離隔するように、インク受け取り部材72aの先端と当接面72dとの距離が定められている。
また、トレイ75内には、図2に示すように、各インクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対応して、矩形平面形状を有した4つのキャップ76が並べて設けられている。各キャップ76は、その長手方向をインクジェットヘッド2の長手方向に平行とされ、用紙搬送方向Bにインクジェットヘッド2と同じピッチで配置されている。キャップ76は、その底部76bから上方に突出した環状突起76aを有している。キャップ76は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、密閉空間を形成する凹部として形成されている。このようにキャップ76は、インク吐出面3aを覆うことが可能となっており、ノズル内のインクの乾燥を防止することができる。また、キャップ76は、ゴムなどの弾性材料で構成されている。そのため、インク吐出面3aと環状突起76aとが密着しやすく、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときにキャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内の気密性が保持できる。また、インク吐出面3aが傷付きにくくなる。
また、各キャップ76は、2つのバネ88(図8(b)参照)によってトレイ75の底面に支持されつつ上方に付勢されている。これにより、キャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、バネ88がその衝撃力を緩和すると共に、環状突起76aによってインク吐出面3aとキャップ76を弾性的に保持している。
トレイ71のインクジェットヘッド2側には、図2に示すように、ワイパーユニット72を保持する保持部材74が固定されている。保持部材74は、図2に示すように、平面形状がU型形状となっており、保持部材74の用紙搬送方向Bに沿う部分にワイパーユニット72が保持されている。一方、保持部材74の用紙搬送方向Bと直交する方向に延在した部分の端部には、係合手段を構成する凹部74aが形成されている。
トレイ71とトレイ75とは、上述したように係合手段によって着脱可能に係合されている。図2に示すように、係合手段は、トレイ71、75の図中上下の各辺近傍にそれぞれ設置され、主には、トレイ71の保持部材74に設けられた凹部74aと、トレイ75に回動可能に支持された引っ掛け部材83とから構成されている。引っ掛け部材83は、用紙搬送方向Bと直交する方向に延在しており、中央において回動可能に支持されている。また、引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2側の端部には、凹部74aに係合する引っ掛け部83aが形成されている。メンテナンスユニット70の上方には、各引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2と最も離れた端部83bに当接可能な当接部材84がそれぞれ回動可能に支持されている。これら当接部材84が回動し、端部83bに当接すると、引っ掛け部83aと凹部74aとの係合が解除される。一方、当接部材84が端部83bから離れると、引っ掛け部83aが凹部74aと係合し、図3に示す状態に戻る。
メンテナンスユニット70は、後述のメンテナンスが行われないとき、図3に示すように、インクジェットヘッド2から離れた「退避位置」(図2において、インクジェットヘッド2と対向しない左側位置)にて静止している。そして、メンテナンスが行われるときに、この退避位置からメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対向した「メンテナンス位置」へ水平移動される。このとき、インクジェットヘッド2はヘッドメンテナンス位置に配置されているので、ワイパー72bや環状突起76aの先端が、インク吐出面3aに接触しない。
なお、メンテナンスでもパージ動作時には、トレイ75は残してトレイ71だけが退避位置からヘッド下部に移動して排出されたインクを受け取る。インク吐出面3aをキャップ76で覆うときには、トレイ71とトレイ75が係合手段によって結合されて、メンテナンス位置に移動されることになる。各トレイ71、75は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交する方向に延びた一対のガイド軸96a、96bに移動可能に支持されている。トレイ71には、2つの軸受け部材97a、97bが設けられており、保持部材74の上下両側面から突出している。トレイ75には、2つの軸受け部材98a、98bが設けられており、トレイ75の上下両側面から突出している。また、一対のガイド軸96a、96bは、それぞれの両端が本体フレーム1b、1dに固定されており、両フレーム1b、1d間に互いに平行に配置されている。このような構成で、各トレイ71、75がこのガイド軸96a、96bに沿って図中左右方向(矢印D方向)に移動される。
ここで、トレイ71、75を水平移動させる水平移動機構(ワイパー移動機構)91について説明する。水平移動機構91は、図2に示すように、モータ92、モータプーリ93、アイドルプーリ94、タイミングベルト95、及び、ガイド軸96a、96b等を有する。モータ92は、用紙搬送方向Bに平行に延びる本体フレーム1bの端部に形成された取り付け部1cにネジなどで固定されている。モータプーリ93は、モータ92に接続されており、モータ92の駆動に伴って回転する。アイドルプーリ94は、図2中最も左側の本体フレーム1dに回転可能に支持されている。タイミングベルト95は、ガイド軸96aと平行に配設され、モータプーリ93とこれと対になったアイドルプーリ94との間に架け渡されるように巻回されている。また、タイミングベルト95は、保持部材74に設けられた軸受け部材97aが接続されている。
この構成において、モータ92を駆動すると、モータプーリ93が正又は逆方向に回転するに伴ってタイミングベルト95が走行する。このタイミングベルト95の走行により、タイミングベルト95に軸受け部97aを介して接続されたトレイ71が、図2左又は右方向に、即ち退避位置又はメンテナンス位置に向かう方向に移動する。なお、保持部材74の凹部74aと引っ掛け部83aとが係合しているときは、トレイ71内のワイパーユニット72と、トレイ75内のキャップ76とが一緒にメンテナンス位置又は退避位置に移動する。一方、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔しているときは、トレイ71内のワイパーユニット72がメンテナンス位置又は退避位置に移動する。
次に、メンテナンスユニット70の動作について、図6〜図8を参照しつつ以下に説明する。図6(a)はインクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動しメンテナンスユニット70のトレイ71がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図6(b)はワイパーユニット72がインク吐出面3aに付着したインクを払拭しているときの状況図である。図7(a)はガイドレール73の平面図である。図7(b)は、ワイパーユニット72がインク吐出面3aに付着したインクを払拭するときの、ワイパーユニット72の動作を示す状況図である。図8(a)はメンテナンスユニット70全体がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図8(b)はキャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが当接しているときの状況図である。
吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作を行う場合は、フレーム移動機構51によりフレーム4を上方に移動させる。このとき、2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、各ピニオンギヤ53を正方向(図3中時計回り方向)に回転させる。すると、ラックギヤ54がピニオンギヤ53の回転に伴って上方に移動する。ラックギヤ54に固定されたフレーム4は4つのインクジェットヘッド2とともに上方に移動する。そして、フレーム4及びインクジェットヘッド2が、ヘッドメンテナンス位置に到達したときに駆動モータ52の回転を停止する。こうして、インク吐出面3aと搬送ベルト8との間にメンテナンスユニット70が配置可能なスペースが形成される。このようにヘッドメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド2のインク吐出面3a及びフレーム4の底面は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動してきたときに、ワイパー72b及び環状突起76aの先端と接触しない位置となっている。
次に、当接部材84を引っ掛け部材83の端部83bに当接させて引っ掛け部83aを凹部74aから離隔させ、凹部74aと引っ掛け部83aとの係合を解除させる。つまり、トレイ71とトレイ75との連結が解除された状態となる。そして、この状態で、トレイ71をメンテナンス位置に移動させるように、水平移動機構91のモータ92を駆動してタイミングベルト95を走行させる。トレイ71が、図6(a)に示すように、メンテナンス位置に到達したときにモータ92の駆動を停止する。次に、インクタンク内のインクをインクジェットヘッド2へ強制的に送るポンプ(ともに図示せず)を駆動し、インクジェットヘッド2のノズル3bからトレイ71内にインクを吐出するパージ動作を行う。このパージ動作によって、吐出不良に陥っていたノズル3bの詰まりやノズル3b内のインクの増粘が解消される。トレイ71内に吐出されたインクはトレイ71の底面に沿って図8中左側に移動し、廃インク受けトレイ77に流れ込む。そして、廃インク受けトレイ77のインク排出孔77aからパージされたインクが排出される。しかし、一部のインクは、インク滴となってインク吐出面3aに残留する。
次に、フレーム移動機構51によってインクジェットヘッド2を下方に移動させる。そして、図6(b)に示すように、水平移動機構91によってトレイ71を、メンテナンス位置から退避位置に向かう払拭方向Eに移動させ、ワイパー72bによりインク吐出面3aを払拭するワイプ動作を行う。
ここで、ワイプ動作時におけるワイパーユニット72の動作の詳細について説明する。図7(a)に示すように、後述するキャップ動作を行うことにより、キャップ76の環状突起76aがインク吐出面3aに接触する。そして、インク吐出面3aにおける、環状突起76aの払拭方向Eに関する両側の縁部が接触する領域を含む矩形領域が、規制領域3cとなっている。インク吐出面3aに環状突起76aが当接すると、インク吐出面3aに残存している微量のインクと環状突起76aとが反応して析出物が析出することがある。また、インク吐出面3aと環状突起76aとの境界に溜まったインクに周囲に飛散している塵などが捕獲されて固着物となる。このため、インク吐出面3aから環状突起76aが離隔した状態においても、インク吐出面3aにおける環状突起76aが接触する領域に析出物や固着物などの不純物が付着している。したがって、インク吐出面3aにおける規制領域3cは、インク吐出面3aの払拭方向Eの両端近傍において、析出物や固着物などの不純物が払拭方向Eに直交する方向に延在して付着している領域を含んでいる。
ワイプ動作において、水平移動機構91によりトレイ71がメンテナンス位置に移動した後、フレーム移動機構51によってインクジェットヘッド2が下方に移動したとき、図7(b)に示すように、ワイパーユニット72の位置決め部材72cの当接面72dが、ガイドレール73における凹部73aより払拭方向Eに関する上流側の領域と当接する。この領域(フレーム4の下面)は、後述のように、ワイパー72bの先端がインク吐出面3aから離隔した位置に規制される規制面73cとなっている。この規制面73cは、凹部73aよりも払拭方向Eの下流側にも形成されている。これにより、位置決め部材72cがガイドレール73(上流側の規制面73c)により押圧されて、インク受け取り部材72a、ワイパー72b及び位置決め部材72cが、支持部材15とともに下方(インク吐出面3aに対して直交する方向)に移動する。このとき、インク吐出面3aは規制面73cと同じ高さに配置されているので、ワイパー72bの先端が、インク吐出面3aを含む平面より下方に位置する(P1参照)。
この状態で、水平移動機構91によりトレイ71がメンテナンス位置から払拭方向Eに移動することによって、位置決め部材72cの当接面72dが、規制面73cと当接しつつ払拭方向Eに移動する。このとき、位置決め部材72cの当接面72dが、ガイドレール73の払拭方向Eに関する上流側の段差面73bに到達するまでは、位置決め部材72cの当接面72dが規制面73cにより押圧されるため、ワイパー72bの先端が、インク吐出面3aを含む平面より下方に位置した状態が維持される。さらにこのとき、ワイパー72bの先端が、インク吐出面3aから離隔したまま払拭方向Eに関する上流側の規制領域3cと対向する領域を通過する。
水平移動機構91によりトレイ71がさらに払拭方向Eに移動することによって、位置決め部材72cの当接面72dが、ガイドレール73の上流側の段差面73bを超えて凹部73aに到達する。このとき、当接面72dが凹部73aと当接するように、付勢機構16により、インク受け取り部材72a、ワイパー72b及び位置決め部材72cが、支持部材15とともに上方(インク吐出面3aに対して直交する方向)に移動する。
凹部73aの深さは、当接面72dが凹部73aに当接したとき、インク受け取り部材72aの先端とインク吐出面3aとの距離がちょうど所定距離となるように設定されている。これにより、パージによってインク吐出面3aに付着している比較的大きなインクは、インク受け取り部材72aの各薄板間に毛管現象によって移動する。さらに、ワイパー72bは、インク吐出面3aにおける規制領域3c間の領域に対向している間、その上端がフレーム4の下面より上側にあるので、実際にはインク吐出面3a上を撓んで摺動しながら、インク受け取り部材72aとともに移動する。これにより、インク吐出面3aに残存したインクを払拭する(P2参照)。
水平移動機構91によりトレイ71がさらに払拭方向Eに移動することにより、位置決め部材72cの当接面72dが、ガイドレール73の払拭方向に関する下流側の段差面73bを超えて、さらに、下流側の領域(下流側の規制面73c)と当接する。これにより、位置決め部材72cが規制面73cにより押圧されて、インク受け取り部材72a、ワイパー72b及び位置決め部材72cが、支持部材15とともに下方に移動する。このとき、ワイパー72bの先端が、インク吐出面3aを含む平面より下方に位置する(P3参照)。そして、水平移動機構91によりトレイ71が退避位置まで払拭方向Eに移動するとき、ワイパー72bの先端は、インク吐出面3aから離隔したまま下流側の規制領域3cと対向する領域を通過する。
このように、ガイドレール73、位置決め部材72c及び付勢機構16が規制機構を構成しており、この規制機構により、ワイパー72bがインク吐出面3aに対して直交する方向に移動し、ワイパー72bの先端が規制領域3cと接触するのが規制されている。そして、水平移動機構91によりトレイ71が退避位置に到達するとワイプ動作が終了する。
こうして、インク吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2をパージで回復し、パージによってインク吐出面3aに付着したインクを拭き取るメンテナンス動作が終了する。
次に、プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、インク吐出面3aをキャップ76で覆うキャップ動作について以下に説明する。この場合においても、上述と同様に、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2を印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動する。図8(a)に示すように、トレイ71とトレイ75とが引っ掛け部材83によって連結された状態で、トレイ71及びトレイ75を水平移動機構91によりメンテナンス位置に移動させる。このとき、キャップ76の環状突起76aがノズル3bの形成領域の周囲と対向する位置に配置される。
次に、図8(b)に示すように、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2を下方に移動させ、環状突起76aの先端をインク吐出面3aと当接させる。こうして、インク吐出面3aとキャップ76との間が密閉空間となってノズル3b内のインクの乾燥を防止する。以上のように、水平移動機構91及びフレーム移動機構51がキャップ移動機構を構成している。
以上のような本実施形態によるインクジェットプリンタ1によると、ワイプ動作において、ワイパー72bの先端が規制領域3cと接触するのが規制されているため、規制領域3cに付着した不純物が、ワイパー72bによりノズル3bまで広がるのを抑制することができる。これにより、不純物が、ノズル3bの開口周辺に付着してインク吐出面3aの撥水性を低下させたり、ノズル3bに入り込んでノズル3bを封止したりするのが抑制され、インク吐出特性が悪化するのを防止することができる。
また、段差面73bが形成されたガイドレール73、当接面72dを有する位置決め部材72c及び付勢機構16という簡単な規制機構の構成でワイパー72bをインク吐出面3aと直交する方向に関して移動させることができる。
さらに、ガイドレール73が、フレーム4の用紙搬送方向Bの下流側に位置する、用紙搬送方向Bに直交する方向に延在している部分の下面に形成されている。フレーム4の一部がガイドレール73でもあるので、インク吐出面3a、インク受け取り部材72aの先端およびワイパー72dの位置関係を簡便な構成で高精度に規定できる。
<変形例1>
なお、上述した本実施形態においては、ガイドレール73における凹部73aの払拭方向Eに関する両端が、凹部73aの底面と直交する2つの段差面73bを形成する構成であるが、図9に示すように、ガイドレール173に湾曲した段差面173bが形成されてもよい。これによると、ワイプ動作において、位置決め部材72cが段差面173bを超えるとき、ワイパー72bの先端がインク吐出面3aに対してスムーズに接離できる。ワイパー72bが接触するときは、インク吐出面3aに形成された撥水膜が損傷するのを防止することができる。ワイパー72bが離隔するときは、ワイパー72bの撓みの回復が滑らかなので、ワイパー72bに付着したインクの飛散を防止することができる。なお、この場合、位置決め部材72cの当接面72dが曲面となっていなくてもよい。
<変形例2>
また、上述した本実施形態においては、ワイパーユニット72において、ワイパー72bが、インク吐出面3aと直交するように配置される構成であるが、図10に示すように、ワイパーユニット172において、ワイパー172bが、インク吐出面3aに接触しているとき、インク吐出面3aから離隔するに伴って払拭方向Eに関する前方に位置するように、インク吐出面3aに対して角度θで接触するように配置されていてもよい。ワイパー172bの先端は、払拭方向Eに関して、後方(下流側)にあって、その基端部は前方(上流側)となるように傾斜している。これによると、ワイパー172bがインク吐出面3aと接触するときに、その衝撃力が抑えられるので、インク吐出面3aの撥水膜が損傷するのを防止することができる。また、ワイパー172bが離隔するときには、これが垂直に立設されているときに比べて、その撓みがより滑らかに回復するので、インクの飛散を確実に抑えることができる。
<変形例3>
さらに、上述した本実施形態においては、ワイパー72bが、その長手方向が用紙搬送方向Bに平行となるように配置される構成であるが、図11に示すように、インク吐出面3aに直交する方向から見て、ワイパー272bが、払拭方向Eに直交する方向に関する中央から両端に向かって払拭方向Eの反対方向に傾斜するように延在してもよい。ワイパー272bは、全体としてV字形状を有し、インク吐出面3aの短手方向中央部を払拭方向の先頭とし、短手方向両端部が払拭方向の後方に配置されている。これによると、ワイパー272bがインク吐出面3aを払拭するときに、インク吐出面3aにおけるキャップ76の環状突起76aの払拭方向Eに直交する方向に関する両側の縁部が接する領域に付着した不純物が、外側に向かって移動するため(図中矢印参照)、不純物がノズル3b周辺に付着して撥水膜の撥水性を低下させたり、ノズル3bに入り込んでノズル3bを封止したりするのをさらに抑制することができる。
<変形例4>
加えて、上述した本実施形態においては、段差面73bが形成されたガイドレール73、当接面72dを有する位置決め部材72c及び付勢機構16を含む規制機構で、ワイパー72bをインク吐出面3aに直交する方向に移動させることによって、ワイパー72bの先端が規制領域3cと接触するのを規制する構成であるが、図12(a)〜図12(c)に示すように、ワイパー72bを保持部材74に直接固定した状態で払拭方向Eに移動可能に構成し、制御装置(ヘッド移動制御手段)20が、ワイパー72bがインク吐出面3aにおける規制領域3c間の領域と対向するときに、ワイパー72bがインク吐出面3aに接触するように、且つ、ワイパー72bが規制領域3cと対向するときに、ワイパー72bがインク吐出面3aから離隔するように、インクジェットヘッド2をインク吐出面3aに直交する方向に移動させる構成であってもよい。これによると、ワイパー72bが規制領域3cに接触するのを容易に規制することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態においては、ワイプ動作において、水平移動機構91が、トレイ71とともにワイパー72bを払拭方向Eに移動させることによって、ワイパー72bによりインク吐出面3aを払拭する構成であるが、インクジェットヘッド2を払拭方向Eの反対方向に移動させることによって、ワイパー72bによりインク吐出面3aを払拭する構成であってもよい。
また、上述した実施形態においては、ガイドレール73が、フレーム4の用紙搬送方向Bの上流側に位置する用紙搬送方向Bに直交する方向に延在している部分の下面に形成される構成であるが、ガイドレールは任意の場所に設置されてもよい。
さらに、上述した実施形態においては、位置決め部材72cの当接面72dが、ガイドレール73の上流側の段差面73bを超えて凹部73aに到達したとき、当接面72dが凹部73aと当接する構成であるが、ワイパー72bがインク吐出面3aを払拭することができれば、当接面72dが凹部73aと当接しない構成であってもよい。
本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。 図1に示すインクジェットプリンタ要部の概略平面図である。 図2に示すIII−III線に沿った断面図である。 図1に示す4つのインクジェットヘッドを下方から見たときの図である。 図3に示すワイパーユニットの側面図である。 (a)は図2に示すインクジェットヘッドが印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動しメンテナンスユニットのトレイがメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、(b)は図2に示すインク受け取り部材及びワイパーによりインク吐出面に付着したインクを払拭しているときの状況図である。 (a)は図4に示すガイドレールの平面図であり、(b)は図2に示すワイパーユニットがインク吐出面に付着したインクを払拭するときの、ワイパーユニットの動作を示す状況図である。 (a)は図2に示すメンテナンスユニット全体がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、(b)は図2に示すキャップの環状突起とインク吐出面とが当接しているときの状況図である。 本発明の第1変形例に係るガイドレールの側面図である。 本発明の第2変形例に係るワイパーの側面図である。 本発明の第3変形例に係るワイパーの平面図である。 本発明の第4変形例に係るインクジェットヘッドの動作状態を示す状況図である。
符号の説明
1 インクジェットプリンタ
2 インクジェットヘッド
3 ヘッド本体
3a インク吐出面
3b ノズル
3c 規制領域
4 フレーム
15 支持部材
16 付勢機構
51 フレーム移動機構
70 メンテナンスユニット
71 トレイ
72、172 ワイパーユニット
72a インク受け取り部材
72b、172b、272b ワイパー
72c 位置決め部材
72d 当接面
73、173 ガイドレール
73a 凹部
73b、173b 段差面
73c 規制面
74 保持部材
75 トレイ
76 キャップ
76a 環状突起
76b 底部
91 水平移動機構

Claims (6)

  1. インク滴を吐出する複数の吐出口が形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、
    前記インク吐出面に接触して前記複数の吐出口を覆う凹部を画定する環状突起を有するキャップと、
    前記環状突起が前記インク吐出面に接触している状態と、前記環状突起が前記インク吐出面から離隔している状態とを選択的に取り得るように、前記キャップ及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるキャップ移動機構と、
    板形状を有するワイパーと、
    前記ワイパーが、前記インク吐出面に接触しつつ前記インク吐出面の一方から他方に向かって前記インク吐出面を払拭するように、前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるワイパー移動機構と
    前記ワイパーの払拭方向に沿って延在しているガイド、前記インク吐出面に直交する方向に関して常に前記ワイパーとともに移動するように配置されているとともに前記ガイドと当接する当接面を有する位置決め部材、及び、前記位置決め部材の前記当接面を前記ガイドに向かって付勢する付勢機構、を有する規制機構と、を備えており、
    前記ガイドには段差面が形成されており、前記位置決め部材の前記当接面が前記段差面を通って前記ガイドにガイドされて、前記ワイパーが前記インク吐出面における前記環状突起の前記払拭方向に関する両側の縁部が接触する領域を含む規制領域間の領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面に接触し、且つ、前記ワイパーが前記規制領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面から離隔することで、前記ワイパーが前記インク吐出面を払拭するとき、前記インク吐出面における前記規制領域に、前記ワイパーが接触するのが規制されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記インクジェットヘッドを支持するフレームをさらに備えており、
    前記ガイドが、前記フレームの前記払拭方向に延在する部分に備えられていることを特徴とする請求項に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記段差面及び前記当接面の少なくとも一方が曲面で形成されていることを特徴とする請求項又はに記載のインクジェット記録装置。
  4. インク滴を吐出する複数の吐出口が形成されたインク吐出面を有するインクジェットヘッドと、
    前記インク吐出面に接触して前記複数の吐出口を覆う凹部を画定する環状突起を有するキャップと、
    前記環状突起が前記インク吐出面に接触している状態と、前記環状突起が前記インク吐出面から離隔している状態とを選択的に取り得るように、前記キャップ及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるキャップ移動機構と、
    板形状を有するワイパーと、
    前記ワイパーが、前記インク吐出面に接触しつつ前記インク吐出面の一方から他方に向かって前記インク吐出面を払拭するように、前記ワイパー及び前記インクジェットヘッドの少なくともいずれかを移動させるワイパー移動機構と、
    前記ワイパーが前記インク吐出面における前記環状突起の前記払拭方向に関する両側の縁部が接触する領域を含む規制領域間の領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面に接触するように、且つ、前記ワイパーが前記規制領域と対向するときに、前記ワイパーが前記インク吐出面から離隔するように、前記インクジェットヘッド及び前記ワイパーの少なくともいずれかを前記インク吐出面に直交する方向に移動させることで、前記ワイパーが前記インク吐出面を払拭するとき、前記インク吐出面における前記規制領域に、前記ワイパーが接触するのを規制するヘッド移動制御手段と、を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
  5. 前記ワイパーが、前記インク吐出面に接触しているとき、前記インク吐出面から離隔するに伴って前記払拭方向に関する前方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記インク吐出面に直交する方向から見て、前記ワイパーが、前記払拭方向に直交する方向に関する中央から両端に向かって前記払拭方向の反対方向に傾斜するように延在していることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
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