JP4325656B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents

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Description

本発明は、液体を噴射する複数の液体噴射ヘッドを有するインクジェットプリンタに関する。
特許文献1には、用紙搬送方向に互いに近接配置された4つのインクジェットヘッドと、4つのインクジェットヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニットとを含むインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置において、メンテナンスユニットは、インクジェットヘッドのノズル面(液体噴射面)に付着したインクを払拭するブレード(ワイパー)を有している。そして、メンテナンスユニットがパージ位置にあるときにインクジェットヘッドのパージ動作が行われ、メンテナンスユニットがパージ位置から退避位置に移動しているときに、パージによってノズル面に付着したインクがブレードで拭き取られ、インクジェットヘッドのメンテナンスが行われる。
特開2004−142450号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載のインクジェット記録装置においては、4つのインクジェットヘッドが単に近接配置されているだけなので、4つのインクジェットヘッドのノズル面間には、微小な隙間が形成されている。この隙間には、記録装置内のインクミストや埃、及び、ノズル面に付着したインクをブレードで掻き寄せるときにブレードの移動方向と直交する方向に広がったインクが入り込み溜まる。この隙間に溜まったインクなどは、隙間から不意に滴下するので、用紙に印刷しているときに滴下が生じると用紙が汚れる。さらに、隙間にインクが溜まっていると、ブレードでノズル面を拭き取るときにブレードによってそのインクが引き出されノズル面が汚れる。
そこで、本発明の目的は、複数の液体噴射ヘッドの液体噴射面間に異物が溜まらないインクジェットプリンタを提供することである。
本発明のインクジェットプリンタは、複数の液体噴射口が形成された液体噴射面をそれぞれ有し且つ互いに隣接して並べられた複数の液体噴射ヘッドと、前記複数の液体噴射ヘッドを取り囲んだ状態で支持する枠体と、複数の前記液体噴射面間の微小な隙間に液体が侵入しないように、前記隙間に配置された第1隙間埋め材と、前記枠体に隣接した前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面と前記枠体との間に配置された第2隙間埋め材と、前記液体噴射面を払拭するためのワイパーとを備え、前記第1及び第2隙間埋め材が、40℃未満では固化しており40℃以上に加熱されると溶融するワックスである
これによると、液体噴射面間の微小な隙間に第1隙間埋め材が配置されているので、これら隙間に異物(例えば、ワイパーで液体噴射面に付着した液体を払拭したときにワイパーによって掻き寄せられた液体、雰囲気中の液体ミスト及び埃など)が溜まらなくなる。そのため、隙間に溜まった液体が記録媒体に滴下して記録媒体を汚したり、隙間に溜まった異物が払拭時にワイパーによって隙間から引き出されて液体噴射面を汚したりすることがなくなる。また、液体噴射面間において液体噴射面の端の角とワイパーとが接触しにくくなる。そのため、ワイパーが損傷しにくくなる。
また、ワックスを40℃以上に加熱して溶融させることで、容易に液体噴射ヘッドの交換を行うことができる。
また、本発明において、前記第1隙間埋め材が、前記液体噴射面と同一平面レベルに平面を有していることが好ましい。これにより、ワイパーで液体噴射面を滑らかに払拭することができる。
また、本発明において、前記ワックスが、40℃から70℃の間で溶融することが好ましい
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。図2は、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ要部の概略平面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。図4(a)は4つのインクジェットヘッドを下方から見たときの図であり、図4(b)は図4(a)に示すIV−IV線に沿った断面図である。
インクジェットプリンタ(液体噴射装置)1は、図1に示すように、4つのインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)2を有するカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ1には、図1中左方に給紙機構11が、図1中右方に排紙部12が、それぞれ構成されている。
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙機構11から排紙部12に向かって記録媒体である用紙が搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙機構11には、用紙トレイ21内に収納された複数の用紙のうち、最も上方に位置する用紙を送り出すピックアップローラ22が設けられている。ピックアップローラ22によって用紙は図1中左方から右方へ送られる。用紙搬送経路の中間部には、二つのベルトローラ6,7と、両ローラ6,7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とが配置されている。搬送ベルト8の外周面、すなわち搬送面8aにはシリコーン処理が施され粘着性を有している。給紙機構11のすぐ下流側には、搬送ベルト8と対向する位置に押さえローラ5が配置されており、給紙機構11から送り出された用紙を搬送ベルト8の搬送面8aに押さえ付けている。これにより、搬送面8aに押さえ付けられた用紙は、搬送面8aの粘着力により保持されながら、下流側に向かって搬送される。このとき、用紙搬送方向下流側のベルトローラ6は、図示しない駆動モータから駆動力が与えられ、図1中時計回り(矢印A方向)に回転している。
用紙搬送経路に沿って搬送ベルト8のすぐ下流側には、剥離部材13が設けられている。剥離部材13は、搬送ベルト8の搬送面8aに保持されている用紙を搬送面8aから剥離して、右方の排紙部12へ向けて送るように構成されている。
搬送ベルト8によって囲まれた領域内には、インクジェットヘッド2と対向する位置、つまり上側にある搬送ベルト8の下面と接触することによって内周側からこれを支持するほぼ直方体形状のプラテン9が配置されている。
4つのインクジェットヘッド2は、4色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)に対応して、用紙搬送方向(図2中下方から上方に向かう方向)Bに沿って4つ並べて設けられている。つまり、このインクジェットプリンタ1は、ライン式プリンタである。インクジェットヘッド2は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交した方向に長尺な細長い直方体形状となっている。また、インクジェットヘッド2の下端には、図1及び図3に示すように、ヘッド本体(圧力室を含むインク流路が形成された流路ユニットと、圧力室のインクに圧力を与えるアクチュエータとが貼り合わされた積層体)3を有している。
ヘッド本体3の上面には、カバー14によって部分的に覆われた、インクを一時的に貯溜するリザーバユニット10が固定されている。リザーバユニット10は、カバー14の上面に固定されたチューブジョイント10aと接続されており、チューブジョイント10aから供給されたインクを貯溜するインク溜まりが内部に形成されている。ヘッド本体3の底面には、図4に示すように、微小径のノズル(液体噴射口)3bが多数並べて形成されており、この底面が搬送面8aと対向するインク吐出面(液体噴射面)3aとなっている。また、リザーバユニット10は、用紙搬送方向Bと直交した方向に関してヘッド本体3よりも長く形成されたヘッド固定部10bを有している。このヘッド固定部10bは、ヘッド本体3の長手方向両側に延びて形成されており、リザーバユニット10の両側に延設された部分が後述のフレーム4への固定部となっている。なお、リザーバユニット10内のインクは、ヘッド本体3の図示しないインク流路に供給されることになる。
ヘッド本体3は、インク吐出面3aと搬送ベルト8の搬送面8aとが平行となり、且つこれらの面の間に少量の隙間が形成されるように配置されている。この隙間部分が用紙搬送経路の一部として構成されている。この構成で、搬送ベルト8上を搬送される用紙が4つのヘッド本体3のすぐ下方側を順に通過する際に、この用紙の上面すなわち印刷面に向けてノズル3bから各色のインクが吐出されることで、用紙上に所望のカラー画像を形成できるようになっている。
また、4つのインクジェットヘッド2は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに沿って互いに隣接配置された状態で、枠状のフレーム(枠体)4に固定されている。フレーム4は、図3及び図4に示すように、リザーバユニット10の長手方向両端部の下面と対向する位置まで突出した支持部4aを有している。そして、支持部4aとリザーバユニット10の両端部とがネジ50で固定されている。こうして、4つのインクジェットヘッド2がフレーム4に取り囲まれて固定されている。本実施形態において、フレーム4の下面は、インク吐出面3aが面方向に沿って延在した仮想延長面上に存在する。つまり、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが、図3に示すように、フレーム4(支持部4a)の底面とほぼ同じ高さ(略同一平面上)でフレーム4の開口から露出されている。
図4(a)及び(b)に示すように、4つのインク吐出面3a間の微小な隙間3cには、隙間埋め材(第1隙間埋め材)15がそれぞれ充填されている。この隙間埋め材15は、インク吐出面3aと同じ平面レベルに平面15aが形成されるように配置されている。このため、後述するように、ワイパー72でインク吐出面3aを滑らかに払拭することができる。
また、用紙搬送方向Bの最も外側に位置する2つのインク吐出面3aとフレーム4の長手方向に沿う部分の下面との間の微小な隙間4bにも、隙間埋め材(第2隙間埋め材)16が充填されている。さらに、各インク吐出面3aと支持部4aとの間の微小な隙間4cにも、隙間埋め材(第2隙間埋め材)17が充填されている。これら隙間埋め材16,17も、インク吐出面3a及びフレーム4の下面と同じ平面レベルに平面16a,17aが形成されるように配置されている。
このように、フレーム4の下面と4つのインク吐出面3aとの間、及び、各インク吐出面3a間に存在するすべての隙間3c,4b,4cに、隙間埋め材15〜17がそれぞれ配置されることで、フレーム4と4つのインクジェットヘッド2で構成されたヘッドユニットの下端部分の隙間3c,4b,4cがなくなっている。
これら隙間埋め材15〜17は、すべて同じ材質から構成され、ホットメルト系に属するワックスからなる。本実施形態において、隙間埋め材15〜17は40℃以上に加熱すると溶融する(すなわち、40℃未満では固化している)ワックス(日化精工社製)からなる。このように、40℃以上に加熱すると溶融するワックスを用いることで、インクジェットヘッド2が故障しても容易に隙間埋め材15〜17を溶融してインクジェットヘッド2を交換することができる。さらに、隙間埋め材15〜17が40℃以上で溶融するので、40℃未満の温度では溶融しない。そのため、インクジェットプリンタ1内の温度が上昇しても、40℃を超えることはほとんどないので、ワックスが使用中に溶融することがなくなる。また、ワックスとしては、常温では液状であって空気に触れると含まれた有機溶剤が揮発して硬化する液状ワックスであってもよいし、常温では常に固形のワックスであってもよい。液状ワックスの場合は、ディスペンサを用いて所望の隙間に液状ワックスを充填する。また、固形ワックスの場合は、ヒートガンを用いて所望の隙間に溶融したワックスを充填する。
また、ワックスとしては、40℃〜70℃の間で溶融するものが好ましい。これは、例えば、1つのインクジェットヘッド2が故障などしてフレーム4から取り外すときに、ワックスを70℃以上には加熱しないので、他のインクジェットヘッド2内に実装されている電子部品が熱影響によって故障することはない。一方、交換するインクジェットヘッド2の周囲にあるワックスだけを加熱するのであれば、70℃以上に加熱すると溶融するワックスであってもよい。この場合は、交換するインクジェットヘッド2の電子部品だけに熱影響が生じるからであって、他のインクジェットヘッド2の電子部品に熱影響が生じにくいからである。なお、隙間埋め材15〜17は、40℃以上に加熱すると溶融するワックスであれば、それぞれ異なる材質からなるワックスであってもよい。
また、フレーム4は、図2及び図3に示すように、プリンタ1に設けられたフレーム移動機構51により、上下に移動可能に支持されている。フレーム移動機構51は、図2に示すように、4つのインクジェットヘッド2の並びの外側(図2中上下)に配設されている。各フレーム移動機構51は、フレーム4を上下動する駆動源としての駆動モータ52と、各駆動モータ52の軸に固定されたピニオンギヤ53と、各ピニオンギヤ53と噛合されるようにフレーム4に立設されたラックギヤ54と、ピニオンギヤ53とでラックギヤ54を挟む位置に配置されたガイド56とを含んでいる。
2つの駆動モータ52は、用紙搬送方向Bに関して互いに対向して配置されたインクジェットプリンタ1の本体フレーム1aに固定されている。2つのラックギヤ54は、上下方向に延在しており、下端部がフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。また、ラックギヤ54のピニオンギヤ53とは反対側の側面は、ガイド56と摺動可能に接している。ガイド56は、本体フレーム1aに固定されている。
この構成において、2つの駆動モータ52を同調させて各ピニオンギヤ53を正及び逆方向に回転させると、ラックギヤ54が上下方向に移動する。このラックギヤ54の上下動に伴ってフレーム4及び4つのインクジェットヘッド2が上下方向に移動する。
また、ガイド部59が、インクジェットヘッド2の長手方向の両側に配設されている。各ガイド部59は、棒状部材58とこれを挟む一対のガイド57とから構成されている。このうち、一対のガイド57は、図3に示すように上下方向に延在し、用紙搬送方向Bと直交する方向に関して、互いに対向する本体フレーム1bにそれぞれ固定されている。一方、棒状部材58は、ガイド57と同様に上下方向に延在し、本体フレーム1bと平行に対向配置されたフレーム4の側面にそれぞれ固定されている。さらに、棒状部材58は、一対のガイド57間にそれぞれ摺動可能に挟まれている。このガイド部59により、フレーム移動機構51によってフレーム4が上下方向に移動したときに、インクジェットヘッド2のインク吐出面3aが搬送面8aに対して傾くのを防ぐことができる。つまり、フレーム移動機構51でフレーム4及びインクジェットヘッド2を上下方向に移動させても、インク吐出面3aは対向する搬送面8aと常に平行となる。その結果、印刷時において、用紙に対するインクの着弾精度が向上する。
通常、フレーム4は、4つのインクジェットヘッド2が用紙に対してインクを吐出し印刷する印刷位置(図3に示す位置)に配置されており、インクジェットヘッド2のメンテナンス時(本実施形態ではインクジェットヘッド2からインクを強制的に吐出するパージのとき、インク吐出面3aに付着したインクを拭き取るとき及びインク吐出面3aをキャップで覆うとき)にだけ、フレーム移動機構51によって移動されて、4つのインクジェットヘッド2が印刷位置よりも上方(ヘッドメンテナンス位置)に配置される。
次に、インクジェットヘッド2に対してメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70について説明する。インクジェットプリンタ1には、図2及び図3に示すように、ヘッド本体3に対するメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2の左側に配置されている。メンテナンスユニット70は、図3に示すように、水平移動可能な2つのトレイ71,75を有している。このうち、トレイ71は、図2及び図3に示すように、上方に開口したほぼ方形の箱形状を有し、トレイ75を内包可能に構成されている。トレイ71とトレイ75とは、後述の係合手段によって着脱可能に結合されている。両者は、メンテナンス処理の内容に応じて着脱される。
図3に示すように、トレイ71は、インクジェットヘッド2とは反対側の側面が開放されており、例えばパージ動作時のように両者の係合が解かれているとき、内包するトレイ75を残して、トレイ71のみが移動可能となる。また、係合手段の係合状態に係わらず、メンテナンスユニット70が後述のように水平移動する際には、予めフレーム4が上方(図3中矢印C方向)のヘッドメンテナンス位置まで移動され、4つのインク吐出面3aと搬送面8aとの間にメンテナンスユニット70用のスペースが確保される。この後、メンテナンスユニット70が、図3中矢印D方向に水平移動されることになる。
また、メンテナンスユニット70のすぐ下方には、廃インク受けトレイ77が配置されている。この廃インク受けトレイ77は、平面視でトレイ71を内包するサイズを有し、トレイ71が図2において右端まで移動したときでも、トレイ71のインクジェットヘッド2と反対側の辺縁部が重なる形状を有している。廃インク受けトレイ77のインクジェットヘッド2側の端部には、上下方向に貫通したインク排出孔77aが形成されている。インク排出孔77aは、廃インク受けトレイ77上に流れ込んだインクを図示しない廃インク溜めに流通させる。
トレイ71内には、インクジェットヘッド2に近い側から順に、ワイパー72、インク受け取り部材73及びトレイ75が配置されている。いずれも、用紙搬送方向Bと平行に配設されている。トレイ75内には、図2に示すように、各インクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対応して、矩形平面形状を有した4つのキャップ76が並べて設けられている。各キャップ76は、その長手方向をインクジェットヘッド2の長手方向に平行とされ、用紙搬送方向Bにインクジェットヘッド2と同じピッチで配置されている。キャップ76は、その底部76bから上方に突出した環状突起76aを有している。キャップ76は、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、密閉空間を形成する凹部として形成されている。このようにキャップ76は、インク吐出面3aを覆うことが可能となっており、ノズル内のインクの乾燥を防止することができる。また、キャップ76は、ゴムなどの弾性材料で構成されている。そのため、インク吐出面3aと環状突起76aとが密着しやすく、環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときにキャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内の気密性が保持できる。また、インク吐出面3aが傷付きにくくなる。
また、各キャップ76は、2つのバネ88(図6(b)参照)によってトレイ75の底面に支持されつつ上方に付勢されている。これにより、キャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが当接したときに、バネ88がその衝撃力を緩和すると共に、環状突起76aによってインク吐出面3aとキャップ76を弾性的に保持している。さらに、インク吐出面3aに対するキャップ76の平行度に多少誤差が生じていても、インク吐出面3aに対する傾きにキャップ76が追従することが可能となる。そのため、キャップ76とインク吐出面3aとで囲まれた領域内を密閉空間とすることができる。
トレイ71のインクジェットヘッド2側には、図2に示すように、ワイパー72及びインク受け取り部材73が保持された保持部材74が固定されている。保持部材74は、図2に示すように、平面形状がコ型形状となっており、保持部材74の用紙搬送方向Bに沿う部分にワイパー72及びインク受け取り部材73が保持されている。一方、保持部材74の用紙搬送方向Bと直交する方向に延在した部分の端部には、係合手段を構成する凹部74aが形成されている。
インク受け取り部材73は、図2及び図3に示すように、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅よりも若干長い複数の薄板73aを備えている。各薄板73aは、インクに対する毛管力に合わせた間隔で互いに平行に配置されている。各薄板73aは、ステンレス製である。ワイパー72は、薄板73aと同様に、並列した4つのインクジェットヘッド2全体の幅より若干長く、その長手方向が用紙搬送方向Bに平行となるように配置されている。ワイパー72は、ゴムなどの弾性材料からなる。
トレイ71とトレイ75とは、上述したように係合手段によって着脱可能に係合されている。図2に示すように、係合手段は、トレイ71,75の図中上下の各辺近傍にそれぞれ設置され、主には、トレイ71の保持部材74に設けられた凹部74aと、トレイ75に回動可能に支持された引っ掛け部材83とから構成されている。引っ掛け部材83は、用紙搬送方向Bと直交する方向に延在しており、中央において回動可能に支持されている。また、引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2側の端部には、凹部74aに係合する引っ掛け部83aが形成されている。メンテナンスユニット70の上方には、各引っ掛け部材83のインクジェットヘッド2と最も離れた端部83bに当接可能な当接部材84がそれぞれ回動可能に支持されている。これら当接部材84が回動し、端部83bに当接すると、引っ掛け部83aと凹部74aとの係合が解除される。一方、当接部材84が端部83bから離れると、引っ掛け部83aが凹部74aと係合し、図3に示す状態に戻る。
メンテナンスユニット70は、後述のメンテナンスが行われないとき、図3に示すように、インクジェットヘッド2から離れた「退避位置」(図2において、インクジェットヘッド2と対向しない左側位置)にて静止している。そして、メンテナンスが行われるときに、この退避位置からメンテナンスユニット70がインクジェットヘッド2のインク吐出面3aに対向した「メンテナンス位置」へ水平移動される。このとき、インクジェットヘッド2はヘッドメンテナンス位置に配置されているので、ワイパー72や環状突起76aの先端が、インク吐出面3aに接触しない。さらに、インク受け取り部材73は、ワイパー72がインク吐出面3aに当接した状態において、インク吐出面3aとの間に僅かな隙間(例えば、0.5mm)が常に形成されるようになっている。
なお、メンテナンスでもパージ動作時には、トレイ75は残してトレイ71だけが退避位置からヘッド下部に移動して排出されたインクを受け取る。インク吐出面3aをキャップ76で覆うときには、トレイ71とトレイ75が係合手段によって結合されて、メンテナンス位置に移動されることになる。各トレイ71,75は、図2に示すように、用紙搬送方向Bに直交する方向に延びた一対のガイド軸96a,96bに移動可能に支持されている。トレイ71には、2つの軸受け部材97a,97bが設けられており、保持部材74の上下両側面から突出している。トレイ75には、2つの軸受け部材98a,98bが設けられており、トレイ75の上下両側面から突出している。また、一対のガイド軸96a,96bは、それぞれの両端が本体フレーム1b,1dに固定されており、両フレーム1b,1d間に互いに平行に配置されている。ここでは、それぞれネジで固定されている。このような構成で、各トレイ71,75がこのガイド軸96a,96bに沿って図中左右方向(矢印D方向)に移動される。
ここで、トレイ71,75を水平移動させる水平移動機構91について説明する。水平移動機構91は、図2に示すように、モータ92、モータプーリ93、アイドルプーリ94、タイミングベルト95、及び、ガイド軸96a,96b等を有する。モータ92は、用紙搬送方向Bに平行に延びる本体フレーム1bの端部に形成された取り付け部1cにネジなどで固定されている。モータプーリ93は、モータ92に接続されており、モータ92の駆動に伴って回転する。アイドルプーリ94は、図2中最も左側の本体フレーム1dに回転可能に支持されている。タイミングベルト95は、ガイド軸96aと平行に配設され、モータプーリ93とこれと対になったアイドルプーリ94との間に架け渡されるように巻回されている。また、タイミングベルト95は、保持部材74に設けられた軸受け部材97aが接続されている。
この構成において、モータ92を駆動すると、モータプーリ93が正又は逆方向に回転するに伴ってタイミングベルト95が走行する。このタイミングベルト95の走行により、タイミングベルト95に軸受け部97aを介して接続されたトレイ71が、図2左又は右方向に、即ち退避位置又はメンテナンス位置に向かう方向に移動する。なお、保持部材74の凹部74aと引っ掛け部83aとが係合しているときは、トレイ71内のワイパー72及びインク受け取り部材73と、トレイ75内のキャップ76とが一緒にメンテナンス位置又は退避位置に移動する。一方、引っ掛け部83aが凹部74aから離隔しているときは、トレイ71内のワイパー72及びインク受け取り部材74がメンテナンス位置又は退避位置に移動する。
次に、メンテナンスユニット70の動作について、図5及び図6を参照しつつ以下に説明する。図5(a)はインクジェットヘッド2が印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動しメンテナンスユニット70のトレイ71がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図5(b)はインク受け取り部材73及びワイパー72によりインク吐出面3aに付着したインクを払拭しているときの状況図である。図6(a)はメンテナンスユニット70全体がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、図6(b)はキャップ76の環状突起76aとインク吐出面3aとが当接しているときの状況図である。
吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2を回復させるパージ動作を行う場合は、フレーム移動機構51によりフレーム4を上方に移動させる。このとき、2つの駆動モータ52を同調させて駆動し、各ピニオンギヤ53を正方向(図3中時計回り方向)に回転させる。すると、ラックギヤ54がピニオンギヤ53の回転に伴って上方に移動する。ラックギヤ54に固定されたフレーム4は4つのインクジェットヘッド2とともに上方に移動する。そして、フレーム4及びインクジェットヘッド2が、ヘッドメンテナンス位置に到達したときに駆動モータ52の回転を停止する。こうして、インク吐出面3aと搬送ベルト8との間にメンテナンスユニット70が配置可能なスペースが形成される。このようにヘッドメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド2のインク吐出面3a及びフレーム4の底面は、メンテナンスユニット70がメンテナンス位置に移動してきたときに、ワイパー72及び環状突起76aの先端と接触しない位置となっている。
次に、当接部材84を引っ掛け部材83の端部83bに当接させて引っ掛け部83aを凹部74aから離隔させ、凹部74aと引っ掛け部83aとの係合を解除させる。つまり、トレイ71とトレイ75との連結が解除された状態となる。そして、この状態で、トレイ71をメンテナンス位置に移動させるように、駆動機構91のモータ92を駆動してタイミングベルト95を走行させる。トレイ71が、図5(a)に示すように、メンテナンス位置に到達したときにモータ92の駆動を停止する。次に、インクタンク内のインクをインクジェットヘッド2へ強制的に送るポンプ(ともに図示せず)を駆動し、インクジェットヘッド2のノズル3bからトレイ71内にインクを吐出するパージ動作を行う。このパージ動作によって、吐出不良に陥っていたノズル3bの詰まりやノズル3b内のインクの増粘が解消される。トレイ71内に吐出されたインクはトレイ71の底面に沿って図8中左側に移動し、廃インク受けトレイ77に流れ込む。そして、廃インク受けトレイ77のインク排出孔77aからパージされたインクが排出される。しかし、一部のインクは、インク滴となってインク吐出面3aに残留する。
次に、フレーム移動機構51によってインクジェットヘッド2を下方に移動させる。このとき、インクジェットヘッド2は、トレイ71が左側(すなわち、退避位置)に移動するときに、ワイパー72の先端がインク吐出面3a及びフレーム4の下面と当接可能な位置であって、インク吐出面3aとインク受け取り部材73の薄板73aの上端との間に、例えば、0.5mmの隙間が形成されるような位置に配置される。そして、図5(b)に示すように、駆動機構91によってトレイ71を、左側に移動させ(すなわち、トレイ71をメンテナンス位置から退避位置に移動させる)ワイプ動作を行う。
このとき、ワイパー72は、その上端がフレーム4の下面より上側にあるので、フレーム4の下面及びインク吐出面3aと撓みながら接触し、パージによってインク吐出面3aに付着したインクを拭き取る。また、このとき、インク受け取り部材73の各薄板73aの上端は、インク吐出面3aに接触せずに所定の微小な間隔をおいて近接している。これより、インク吐出面3aに付着しているインクのうち比較的大きな液滴は、インク受け取り部材73の各薄板73a間に毛管現象によって移動する。
このとき、フレーム4の下面に当接したワイパー72が隙間埋め材15〜17を通過しても隙間埋め材15〜17の平面15a〜17aが、インク吐出面3a及びフレーム4の下面と同じ平面レベルであるため、ワイパー72でインク吐出面3aを滑らかに払拭することができる。また、フレーム4とインク吐出面3aとの間に隙間埋め材16,17を配置していることで、ワイパー72がフレーム4からインク吐出面3aに移動するときに、ヘッド本体3の角部とワイパー72との接触をなくすことができる。そのため、ワイパー72の損傷を防止できる。
こうして、インク吐出不良などに陥っていたインクジェットヘッド2をパージで回復し、パージによってインク吐出面3aに付着したインクを拭き取るメンテナンス動作が終了する。なお、フレーム4の下面がインク吐出面3aと同一レベルにあるため、トレイ71の退避位置への移動に伴って、ワイパー72はフレーム4の下面も拭き取る。
次に、プリンタ1で用紙に対する印刷などが長時間行われない休止時に、インク吐出面3aをキャップ76で覆うキャップ動作について以下に説明する。この場合においても、上述と同様に、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2を印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動する。そして、図6(a)に示すように、トレイ71とトレイ75とが引っ掛け部材83によって連結された状態で、トレイ71及びトレイ75を駆動機構91によりメンテナンス位置に移動させる。このとき、キャップ76の環状突起76aがノズル3bの形成領域の周囲と対向する位置に配置される。
次に、図6(b)に示すように、フレーム移動機構51によりインクジェットヘッド2を下方に移動させ、環状突起76aの先端をインク吐出面3aと当接させる。こうして、インク吐出面3aとキャップ76との間が密閉空間となってノズル3b内のインクの乾燥を防止する。
以上のような本実施の形態によるインクジェットプリンタ1によると、インク吐出面3a間の微小な隙間3cに隙間埋め材15が配置されているので、これら隙間3cに異物(例えば、ワイパー72でインク吐出面3aに付着したインクを払拭したときにワイパー72によって掻き寄せられたインク、雰囲気中のインクミスト及び埃など)が侵入しない。そのため、隙間3cに溜まったインクが用紙に滴下して用紙を汚したり、隙間3cに溜まったインクが払拭時にワイパーによって隙間3cから引き出されてインク吐出面3aに付着するのを防止できる。また、ワイパーを用紙搬送方向Bに移動させてインク吐出面を払拭する場合でも、インク吐出面3aの端の角(ヘッド本体3の下端角部)とワイパー72とが接触しにくくなる。そのため、ワイパー72の損傷を防止することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した実施形態においては、隙間埋め材15〜17にワックスを用いているが、インクジェットヘッド1の交換の容易性を考慮しなければ、接着剤などであってもよいし、これら隙間に適合する樹脂などからなる部材を嵌め込んでいてもよい。つまり、隙間を埋めて、その隙間に異物が侵入しないようにすることができるものであれば、どのような材質からなるものであってもよい。また、フレーム4や隙間埋め材16,17がなくてもよい。つまり、複数のインクジェットヘッドが直接、プリンタ本体に固定されている場合は、これらインクジェットヘッドのインク吐出面3a間に隙間埋め材を配置すればよい。また、隙間埋め材15〜17は、インク吐出面3aと同一レベルの平面を有していなくてもよい。
また、上述した実施形態は、ノズルからインクを吐出(噴射)する複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドに限られない。例えば、導電ペーストを噴射して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に噴射して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に噴射して光導波路等の微小電子デバイスを形成するための、複数の液体噴射ヘッドを有する、種々の液滴噴射装置に適用することができる。
本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの概略側断面図である。 本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ要部の概略平面図である。 図2に示すIII−III線に沿った断面図である。 (a)は4つのインクジェットヘッドを下方から見たときの図であり、(b)は図4(a)に示すIV−IV線に沿った断面図である。 (a)はインクジェットヘッドが印刷位置からヘッドメンテナンス位置に移動しメンテナンスユニットのトレイがメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、(b)はインク受け取り部材及びワイパーによりインク吐出面に付着したインクを払拭しているときの状況図である。 (a)はメンテナンスユニット全体がメンテナンス位置に移動したときの状況図であり、(b)はキャップの環状突起とインク吐出面とが当接しているときの状況図である。
符号の説明
1 インクジェットプリンタ(液体噴射装置)
2 インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
3a インク吐出面(液体噴射面)
3b ノズル(液体噴射口)
3c,4b,4c 隙間
4 フレーム(枠体)
15 隙間埋め材(第1隙間埋め材)
16,17 隙間埋め材(第2隙間埋め材)
15a,16a,17a 平面
72 ワイパー

Claims (3)

  1. 複数の液体噴射口が形成された液体噴射面をそれぞれ有し且つ互いに隣接して並べられた複数の液体噴射ヘッドと、
    前記複数の液体噴射ヘッドを取り囲んだ状態で支持する枠体と、
    複数の前記液体噴射面間の微小な隙間に液体が侵入しないように、前記隙間に配置された第1隙間埋め材と、
    前記枠体に隣接した前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面と前記枠体との間に配置された第2隙間埋め材と、
    前記液体噴射面を払拭するためのワイパーとを備え
    前記第1及び第2隙間埋め材が、40℃未満では固化しており40℃以上に加熱されると溶融するワックスであることを特徴とするインクジェットプリンタ
  2. 前記第1隙間埋め材が、前記液体噴射面と同一平面レベルに平面を有していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ
  3. 前記ワックスが、40℃から70℃の間で溶融することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ
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