JP4527280B2 - 示差スクリーニング - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、バイオテクノロジー医学、生物学及び生化学の分野に関する。その応用は、人間の健康、動物及び植物のケアを目指している。より特定的に言うと、本発明は、核酸配列を同定することを可能にし、かくして、治療的利点をもつ分子を同定するための新しいスクリーニング方法及び新規の遺伝子治療手段の両方を開発することが可能となっており、又、本発明はさらに、分子の毒性及び効能に関する情報及び薬理ゲノムデータをも提供する。
【0002】
本発明は、まず第1に、比較すべき2つの全く異なる状態に由来するRNA間、特に病気を患う器官又は組織から及び健康な等価物に由来するRNAの間の質的差異を実証することに基づく、核酸配列を同定するための独創的な一組の方法について記述している。より特定的に言うと、これらの方法は、病的状態及び健康な状態に関して又は比較したい2つの生理学的状態に関して差異のあるようにスプライシングされている選択的なエキソン又はイントロンを特異的にクローニングするように意図されている。RNAにおけるこれらの質的差異は同様に、RNAに転写されるべき領域内の挿入又は欠失といったゲノム変化に起因するものでもあり得る。この一組の方法は、略称DATASつまり選択的スプライシングを伴う転写物の差異のある分析(Differential Analysis of Transcripts with Alternative Splicing)により同定される。
【0003】
根本的又は一定の所定の無秩序に結びつけられる遺伝子発現変化の特徴づけは、新しい治療標的及び独創的な診断手段の発見に関する実質的な希望を高めさせるものである。しかしながら、ゲノム又は相補的DNA配列の同定は、位置クローニング又は質的差異のあるスクリーニング技術のいずれを通してのものであれ、機能についての情報を、あったとしてもわずかしか生み出さず、研究中の疾病に関する調節欠陥に関与する機能的ドメインについてはさらにわずかな情報しか生み出さない。本発明は、2つの全く異なる病態生理学的状態の間に発生するRNAスプライシングの差異を同定することを目指した一組の独創的な方法について記述している。かかる差異を同定することで、これまで記述されてきた技術についてそうであったような量的差異ではなく質的差異についての情報が提供される。従って、本発明中で開示されている技術は全て、「質的差異のあるスクリーニング」つまりDATASの語の下に包含される。本発明の方法は、新しい標的又は治療用産物を同定し、遺伝的研究及び/又は診断用手段を考案し、核酸ライブラリーを構築し、例えば1つの化合物の毒物学的プロフィール又は効能を測定する方法を開発するために使用可能である。
【0004】
本発明の第1の目的は、より特定的には、2つの生物学的試料間に発生する質的な遺伝的差異に対応する核酸領域を同定しかつ/又はクローニングするための方法において、第1の生物学的試料に由来するRNA又は2本鎖cDNAの個体群を、第2の生物学的試料に由来するcDNAの個体群とハイブリダイズさせることを含む方法に基づいている(図1A)。
【0005】
以下に示すように、質的な遺伝的差異は、RNAに転写されるゲノムの領域内での欠失及び/又は挿入又はRNAスプライシングの変化に起因すると考えられる。
【0006】
第1の実施形態においては、ハイブリダイゼーションは、第1の生物学的試料に由来するRNAと、第2の生物学的試料に由来するcDNA(1本鎖又は2本鎖)の間で実施される。
【0007】
もう1つの実施形態においては、ハイブリダイゼーションは第1の生物学的試料に由来する2本鎖cDNAと、第2の生物学的試料に由来するcDNA(2本鎖、又は好ましくは1本鎖)の間で実施される。
【0008】
発明のより特定的な目的は、2つの生理学的状態間で発生する差異のあるようにスプライシングされた核酸領域を同定するための方法において、テスト状態に由来するRNA又は2本鎖cDNAの個体群を、基準状態に由来するcDNAの個体群とハイブリダイズさせること及び、差異のあるスプライシング事象に対応する核酸を同定することを含む方法を提供することにある。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、2つの生理学的状態間に発生する差異のあるようにスプライシングされた核酸をクローニングするための方法において、テスト状態に由来するRNA又は2本鎖cDNAの個体群を、基準状態に由来するcDNAの個体群とハイブリダイズさせること及び差異のあるスプライシング事象に対応する核酸をクローニングすることを含む方法を提供することにある。
【0010】
1つの特定的実施形態においては、本発明に従った核酸の同定及び/又はクローニングの方法は、
(a) 第1の試料(テスト状態)に由来するRNAを第2の試料(基準状態)に由来するcDNAとハイブリダイズさせること、
(b) 第2の試料(基準状態)に由来するRNAを第1の試料(テスト状態)に由来するcDNAとハイブリダイズさせること、及び
(c) 工程(a)及び(b)で形成されたハイブリッドから質的遺伝的差異に対応する核酸を同定しかつ/又はクローニングすること、
から成る、2回のハイブリッドを並行して実行することを含んでいる。
【0011】
本発明は同様に、以下で例示するような核酸ライブラリーの調製、かくして調製された核酸及びライブラリー、ならびに、全ての生物学/バイオテクノロジー分野におけるかかる材料の使用にも向けられている。
【0012】
この点において、本発明は同様に、2つの生物学的試料間に発生する質的差異を表わす、プロフィールされた核酸組成物又はライブラリーの調製方法において、第1の生物学的試料に由来するRNAを第2の生物学的試料に由来するcDNAとハイブリダイズさせることを含む方法にも向けられている。
【0013】
本発明はさらに、cDNA組成物をプロフィールするための方法において、RNAでこの組成物をハイブリダイズさせるか又はその反対を行なうことを含む方法にも関する。
【0014】
以上で記したように、本発明は特に、生理学的状態を表わす核酸を同定しクローニングするための方法に関する。さらに、同定されかつ/又はクローニングされた核酸は、これらの核酸が一般に、観察されている生理学的状態に大きく関与しているという点で、生理学的状態の質的特性を表わす。かくして、本発明の質的方法は、病態生理学的状態の展開において機能的役割を果たす遺伝的要素又はそのタンパク質産物の直接的探査を提供する。
【0015】
本発明の方法は、部分的に、全く異なる生理学的状態に属するRNAとcDNAとの間の交差ハイブリダイゼーションから成る独創的なことに基づいている。この単数又は複数の交差ハイブリダイゼーション手順により有利にも、形成されたハイブリッドの中で未対合領域、すなわち一定の所定の生理学的状態でRNA内に存在し、そしてもう1つの生理学的状態からのRNA内では存在しない領域を実証することが可能となる。かかる領域は基本的に、生理学的状態に典型的な選択的スプライシング形態に対応するか、同様に、挿入又は欠失といったような遺伝的変化を反映するものでもあり得、かくして、以下に記すような治療及び診断の分野で特に有用な遺伝的要素を形成する。従って、本発明は特に、交差ハイブリダイゼーションの後に形成された複合体を保ち、そこから質的差異に対応する領域を演繹することから成る。この方法論は、ハイブリダイズされていない核酸のみを保存するべくハイブリダイゼーションの後に形成されたハイブリッドを廃棄する、当業者にとって既知の量的減算技術とは区別できるものである(Sargent及びDawid(1983),Science,222;135−139:Davis et al.(1984),PNAS,81;2194−2198:Duguid及びDinauer(1990),Nucl. Acid Res.,18;2789−2792;Diatchenko et al.(1996),PNAS,93;6025−6030)。
【0016】
従って、本発明はまず第1に、テスト試料のRNAを基準試料のcDNAでハイブリダイズさせることを含む、問題の核酸を同定するための方法を扱っている。このハイブリダイズ手順は、形成された複合体の中で、研究対象の状態の間の質的な遺伝的差異を同定すること、そしてかくして例えばテスト状態の特徴であるスプライシングを同定しかつ/又はクローニングすることを可能にする。
【0017】
従って、本発明の第1の変形形態に従うと、この方法は、基準状態と比較して生理学的テスト状態下で発生するスプライシング事象の特徴である核酸を生成することを可能にする(図1A、1B)。以下で記述するように、この個体群は、核酸のクローニング及び特徴づけ、診断、スクリーニング、治療及び抗体産生におけるその使用、又は全タンパク質又はタンパク質フラグメントの合成のために使用可能である。この個体群は同様に、以下で示すような異なる利用分野において使用されうるライブラリーを生成するため及び標識づけされたプローブを生成するためにも使用可能である(図1D)。
【0018】
本発明のもう1つの変形形態に従うと、この方法には、基準状態に由来するRNAとテスト状態に由来するcDNAの間で並行して行なわれる、以上で記述したような第1のハイブリダイゼーション及び第2のハイブリダイゼーションが含まれる。この変形形態は、基準状態との関係におけるテスト状態の質的特性を表わすもの及びテスト状態との関係における基準状態の質的特性を表わすものという2つの核酸個体群を生成することを可能にする(図1C)。これら2つの個体群は同様に、以下でさらに詳しく記述するように、核酸供給源として、又は特定の生理学的状態の遺伝的指紋として役立つライブラリーとしても利用可能である(図1D)。
【0019】
本発明は、あらゆるタイプの生物学的試料に適用できる。特に、生物学的試料は、核酸を含有するあらゆる細胞、器官、組織、試料、生検材料などであってよい。器官、組織又は生検材料の場合には、構成細胞へのアクセスを容易にするべく試料を培養することができる。試料は、哺乳動物(特に人間)、植物、細菌及び下等真核生物(酵母、真菌細胞など)由来であることができる。関連する材料の例としては、特に、腫瘍生検材料、神経変性溶菌斑又は神経変性徴候を示す脳ゾーン生検材料、皮ふ試料、血液収集により得られた血液試料、結腸直腸生検材料、気管支肺胞洗浄に由来する生検材料などがある。細胞の例としては、特に、筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、神経細胞、表皮細胞及び皮ふ細胞、B及びTリンパ球、マスト細胞、単球、顆粒球及びマクロファージといった血液細胞が含まれる。以上で記述されている通り、本発明に従った質的な差異のあるスクリーニングは、クローニングされその他の利用分野で使用される予定の、標準生理学的状態(状態A)との関係における一定の所定の生理学的状態(状態B)に特徴的な核酸の同定を可能にする。一例としては、調査対象である生理学的状態A及びBを以下の中から選ぶことができる。
【0020】
【表1】
Figure 0004527280
【0021】
RNA個体群
本発明は、全RNA又はメッセンジャーRNAを使用することによって実施されうる。これらのRNAは、当業者にとっては親しみのある従来のあらゆる分子生物学方法によって調製されうる。かかる方法は一般に、細胞、組織又は試料の溶解及び抽出手順を用いたRNA回収を含む。これは、(RNAに影響を及ぼすことなく細胞を分断する)チオシアン酸グアニジウムといったようなカオトロピック剤での処置とそれに続く溶剤(例えば、フェノール、クロロホルム)でのRNA抽出によって行なうことができる。かかる方法は、当該技術分野において周知のものである(Maniatis et al., Chomczynski et al.,(1987).Anal. Biochem., 162:156参照)。これらの方法は、全RNAについて例えばUS73 750キット(Amersham)又はRneasyキット(Quiagen)といったような市販のキットを使用することによって容易に実現可能である。RNAが完全に純粋な状態にある必要はなく、特に、調製物の中に残留する微量のゲノムDNA又はその他の細胞成分(タンパク質など)は、それらがRNAの安定性に著しく影響せず、そして比較対象の異なる試料の調製様式が同じであるかぎりにおいて、干渉しない。任意には、さらに、全RNA調製物に代わってメッセンジャーRNAを使用することも可能である。これらは、標準的方法に従って、ポリT配列を用いて、全RNAからか又は生物学的試料から直接単離することができる。この点において、メッセンジャーRNAの調製を、例えばUS72700キット(Amersham)又はオリゴ−(dT)ビーズの使用が関与するキット(Dynal)を用いて実施することができる。RNA調製の有利な方法は、まずはシトゾルRNA、次にシトゾルポリA+RNAを抽出することから成る。スプライシングを受けていないエキソン及びイントロンを支持するプリメッセンジャーRNAによる汚染を受けていないシトゾルRNAの選択的調製を可能にするキットが市販されている。特にQiagenにより商品化されたRneasyキットの場合がそれである(カタログ番号例:74103)。RNAは、適切な状態下で保管された、収集物から入手可能な及び/又は予め調製されたライブラリー又はその他の試料から直接得ることもできる。
【0022】
一般に、有利に使用されるRNA調製物は、少なくとも0.1μgのRNA、好ましくは少なくとも0.5μgのRNAを含む。数量は、本発明の実践方法を変更しないままで、使用されている特定の細胞及び方法に応じて変動しうる。充分な量のRNA(好ましくは少なくとも0.1μg)を得るためには、少なくとも105個の細胞を内含する生物学的試料を使用することが一般に推奨される。この点に関して、標準的な生検試料は一般に105〜108個の細胞を含んで成り、標準的ペトリ皿(直径6〜10cm)上の細胞培養は約106個の細胞を含有し、かくして充分な量のRNAを容易に得ることができるようになっている。
【0023】
RNA調製物は、即座に使用することもできるし或いは又、後日使用するため好ましくは溶液として低温の場所か又は凍結された状態で保管可能である。
【0024】
cDNAの個体群
本発明の範囲内で使用されるcDNAは、従来の分子生物学技術に従って逆転写によって得ることができる。特に、Maniatis et al.を参照されたい。逆転写は一般に、酵素、逆転写酵素及びプライマーを用いて実施される。
【0025】
この点において、数多くの逆転写酵素が、文献中に記述されてきており、市販されている(1483188キット、Boehringer)。最も一般的に利用される逆転写酵素の例としては、鳥類ウイルスAMV(鳥類骨髄芽球症ウイルス)及びマウス白血病ウイルスMMLV(モロニーマウス白血病ウイルス)から誘導されるものが含まれる。又、Thermus flavus及びThermus thermophilusHB−8から単離されたもののような、逆転写酵素活性をもついくつかの熱安定性DNAポリメラーゼも言及に値する(市販されているもの:Promegaカタログ番号M1941及びM2101)。有利な変形形態に従うと、本発明は、AMV逆転写酵素を用いて実践される、というのも(37℃で活性なMMLVのものとは対照的に)42℃で活性なこの酵素は、伸長を停止させる可能性のあるいくつかのRNA二次構造を不安定にし、従ってより長いRNAの逆転写を可能にし、はるかに忠実なRNAコピーであるcDNA調製物を高収量で提供する。
【0026】
本発明のさらなる有利な変形形態に従うと、RNase H活性が欠如した逆転写酵素が利用される。このタイプの酵素の使用は、特にcDNA合成の収量を増大させること及びRNAのあらゆる分解を回避すること(これが、次に新たに合成されたcDNAとのヘテロ2本鎖形成に関与し、かくして場合によりこのcDNAのフェノール抽出を省くことを可能にする)といったいくつかの利点を有する。RNase H活性が欠如した逆転写酵素は、欠失及び/又は突然変異誘発により、あらゆる逆転写酵素から調製可能である。さらに、かかる酵素は同様に、市販もされている(例えば、Life Technologies, カタログ番号18053−017)。
【0027】
逆転写酵素に適用される作業状態(濃度及び温度)は、当業者にとって周知である。特に、10〜30単位の酵素が一般に、10mMの最適なMg2+濃度の存在下で、単一の反応において使用される。
【0028】
逆転写に使用されるプライマーは、さまざまなタイプのものであってよい。これは特に、好ましくは4〜10個のヌクレオチド、有利にはヘキサヌクレオチドを含むランダムオリゴヌクレオチドである。このタイプのランダムプライマーの使用については文献に記述されてきており、RNA分子内部での異なる部位における逆転写の無作為の開始を可能にする。この技術は、特に、全RNA(すなわちmRNA、tRNA及びrRNAを特に含む)を逆転写するために利用される。mRNAのみの逆転写を実施することが望まれる場合には、メッセンジャーRNAに特異的なポリAテールから出発して、逆転写の開始を可能にするオリゴ−dTオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用することが有利である。オリゴ−dTオリゴヌクレオチドは4〜20マー、有利には約15マーを含んでいてよい。かかるプライマーの使用は、本発明の好ましい実施形態を表わしている。さらに、逆転写のために標識づけされたプライマーを使用することが有利であるかもしれない。実際、こうしてRNAの認識及び/又は選択及び/又はその後のcDNAからの選別が可能となる。このことは又、本発明を実践する上でその形成がきわめて重要なことであるRNA/DNAヘテロ2本鎖を分離することをも可能にする。プライマーの標識づけは、あらゆるリガンド−レセプターベースのシステムによって、すなわちプライマーを支持する分子の親和性を媒介とした分離を提供することによって行なうことができる。これは例えば、前もってストレプトアビジンがコーティングされたあらゆる支持体(ビーズ、カラム、プレートなど)の上で捕獲されうるビオチン標識づけから成っていてよい。プライマーの特性に影響を及ぼすことなく分離を可能にするその他のあらゆる標識づけシステムが、同時に利用可能である。
【0029】
標準的な作業状態下で、この逆転写は1本鎖相補的DNA(cDNA)を生成する。これは、本発明の第1の有利な実施形態を表わす。
【0030】
本発明の第2の変形実施形態においては、2本鎖cDNAが調製されるような形で逆転写が達成される。この結果は、第1のcDNAストランドの転写の後、ファージT4DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼI及びファージT4DNAポリメラーゼといったような、DNAを修飾する能力をもつ酵素が関与する従来の分子生物学技術を用いて第2のストランドを生成することによって達成される。
【0031】
cDNA調製物は、その場で使用できるし又は、後日使用するため好ましくは低温の場所で溶液として又は凍結された状態で保管することもできる。
【0032】
ハイブリダイゼーション
以上で記述したように、本発明に従った方法は、部分的に、全く異なる生理学的状態下で生物学的試料から又は異なる供給源に由来するcDNAとRNAとの間の独創的な交差ハイブリダイゼーションに基づくものである。好ましい実施形態においては、本発明に従ったハイブリダイゼーションは有利には液相内で行なわれる。さらに、これは例えばチューブ(例えばEppendorffチューブ)、プレート又は一般に分子生物学で使用されるその他のあらゆる適切な支持体といったような、該当する任意の装置の中で実施することも可能である。10〜1000μl、例えば10〜500μlの範囲の体積で、ハイブリダイゼーションが有利に実施される。使用される特定の装置ならびに体積は当業者によって容易に適合され得るということを理解すべきである。ハイブリダイゼーションのために使用される核酸の量は、同様に当該技術分野において周知である。一般に、数マイクログラム、例えば0.1〜100μgの範囲内の核酸を使用すれば充分である。
【0033】
ハイブリダイゼーションを実施する場合に考慮すべき重要な要因は、使用される核酸のそれぞれの量である。かくして、約50〜0.02、好ましくは40〜0.1の範囲のcDNA/RNA比で核酸を用いることが可能である。さらに特に有利には、cDNA/RNA比は好ましくは1に近いか又は1より大きい。実際、このような実験では、RNAはテスター化合物を形成し、cDNAはドライバーを形成する。従って、この方法の特異性を改善するためには、ドライバーがテスターに比べ過剰であるような作業状態を選ぶことが好ましい。実際、このような状態下では、核酸間の協同性効果が発生し、不整合は強く疎んぜられる。その結果、観察される唯一の不整合は一般に、ドライバーcDNAからは欠落しており従って特異的とみなすことのできるテスターDNA内の領域の存在に起因するものである。従って、この方法の特異性を増強するためには、有利には、約1〜約10の間に含まれたcDNA/RNA比を用いてハイブリダイゼーションが行なわれる。この比率は作業状態(入手可能な核酸量、生理学的状態、必要とされる結果など)に応じて当業者により適合され得るということがわかる。その他のハイブリダイゼーションパラメータ(時間、温度、イオン強度)も同様に当業者により適合可能である。一般的に言うと、テスター及びドライバーの(例えば加熱による)変性の後、約37℃の温度で(そして以下で記述されている通り任意には温度シフトを行なうことにより)、かつ(例えば0.1M〜5MのNaClの範囲内の)標準的イオン強度状態下で、約2〜24時間、ハイブリダイゼーションが達成される。イオン強度は、特に個体支持体上でのハイブリダイゼーションの場合に、ハイブリダイゼーション緊縮性(stringency)を定義する要因の1つであることが知られている。
【0034】
本発明の特定の実施形態に従うと、ハイブリダイゼーションは、例えばD.E. et al.(Biochemistry,(1977),16(24):5329〜5341)によって記述されているPERT技術(フェノールエマルジョンDNA再会合技術)に従って、フェノールエマルジョン内で実施される。有利には、本発明の範囲内で、Miller及びRibletの技術(NAR,(1995),23:2339)に従って、撹拌する代りに温度循環の下で(約37℃〜約60/65℃の温度シフト)フェノールエマルジョンハイブリダイゼーションが使用される。特にエマルジョン相でのその他の任意の液相ハイブリダイゼーション技術を、本発明の範囲内で使用することができる。かくして、もう1つの特に有利な実施形態では、ハイブリダイゼーションは、例えば40℃の温度で、80%のホルムアミドを含有する溶液中で実施される。
【0035】
ハイブリダイゼーションは同様に、支持体に固定されたパートナーの一つを用いて実施することもできる。有利には、cDNAは固定化される。これはcDNA標識づけ(上記参照)を活用することによって、特にビオチニル化されたプライマーを用いることによって行なうことができる。ビオチン部分は、ストレプトアビジン分子でコーティングされた磁気ビーズと接触させられる。このとき、磁場を適用することによってフィルター又はマイクロタイター皿のウェルと接触した状態にcDNAを保持することができる。適切なイオン強度状態下で、RNAは実質的にcDNAと接触させられる。未対合RNAは、洗浄により除去される。磁界をとり除いた時点で、ハイブリダイズされたRNAならびにcDNAが回収される。
【0036】
cDNAで2本鎖である場合、使用されるハイブリダイゼーション状態は基本的に以上で記述したものと類似しており、当業者により適合可能である。この場合、ハイブリダイゼーションは好ましくは、ホルムアミドの存在下で行なわれ、複合体は、R−ループ複合体の形成を促進するべく、例えば60〜40℃、好ましくは56℃〜44℃まで変動する範囲の温度にさらされる。さらに、ハイブリダイゼーションの後、例えばグリオキサールといったような培体からひとたびホルムアミドが除去された時点で、形成された3重式構造を安定化するための安定剤を添加することが望ましい(Kaback et al.,(1979),Nuc, Acid Res., 6:2499−2517)。
【0037】
かくして、本発明に従ったこれらの交差ハイブリダイゼーションは、テスト対象である各々の生理学的状態の質的特性を表わすcDNA/RNAヘテロ2本鎖又はヘテロ3本鎖構造を含む組成物を生成する。すでに指摘した通り、当該組成物の各々において、基本的に差異のある選択的スプライシング又は各々の生理学的状態に特異的なその他の遺伝子改変に対応する核酸を同定しかつ/又はクローニングすることができる。
【0038】
従って本発明は、有利には、2つの生理学的状態の間に発生する遺伝的差異を表わす核酸領域を同定しかつ/又はクローニングするための方法において、第1の生理学的状態下で生物学的試料に由来するRNAを、第2の生理学的状態下で生物学的試料に由来する1本鎖DNAとハイブリダイズさせること、及びかくして形成されたハイブリッドから未対合RNA領域を同定しかつ/又はクローニングするすることを含む方法に関する。
【0039】
この第1の変形形態はより特定的に言うと、RNAと1本鎖cDNAの間のヘテロ2本鎖構造の形成に基づいている(図2〜4)。この変形形態は、有利には、基本的にメッセンジャーのmRNAの逆転写によって、すなわちオリゴ−dTプライマーの存在下で産生されたcDNA又はメッセンジャーRNAを用いて有利にも実現される。
【0040】
特定の一実施形態では、本発明に従った核酸を同定しかつ/又はクローニングするための方法には、以下のことが含まれている:
(a) テスト状態に由来するRNAを、基準状態に由来する1本鎖cDNAとハイブリダイズさせること、
(b) 基準状態に由来するRNAを、テスト状態に由来する1本鎖cDNAとハイブリダイズさせること、
(c) 工程(a)及び(b)で形成されたハイブリッドから、未対合RNA領域を同定しかつ/又はクローニングすること。
【0041】
特定の一変形実施形態においては、本発明の方法は、以下のことを含む:
(a) 生理学的状態A(rA)内で生物学的試料からRNAを得ること、
(b) 生理学的状態B(rB)内で同一の生物学的試料からRNAを得ること、
(c) 工程(a)内で提供されたrA RNAの一部分から及び工程(b)で提供されたrB RNAの一部分から、ポリTプライマーを用いてcDNAを調製すること、
(d) (rA/cB ヘテロ2本鎖を生成するべく)rA RNAの一部分を、cB DNAの一部分と液相内でハイブリダイズさせること、
(e) (rB/cAヘテロ2本鎖を生成するべく)cA DNAの一部分とrB RNAの一部分を液相内でハイブリダイズさせること、
(f) 工程(d)及び(e)で得られたrA/cB及びrB/cAヘテロ2本鎖内で未対合RNA領域を同定しかつ/又はクローニングすること。
【0042】
本発明の一変形実施形態に従うと、本発明の方法には、テスト状態に由来するRNAを基準状態に由来する2本鎖cDNAとハイブリダイズさせること及び、結果として得た2本鎖DNA領域を同定しかつ/又はクローニングすること、が含まれている。この第2の変形形態は、より特定的には、R−ループタイプの構造に由来する、2本鎖cDNAとRNAの間のヘテロ2本鎖構造の形成に基づくものである(図5参照)。この変形形態は、同様に好ましくは、基本的メッセンジャーのRNAの逆転写によって、すなわちポリTプライマーの存在下で産生されたcDNA又はメッセンジャーRNAを使用することによって実施される。この変形形態でも又、特定の実施例には、2回のハイブリダイゼーションを並行して行ない、かくして本発明に従った2つの核酸個体群を生成することが含まれる。この変形形態では、選択的スプライシング事象に特定的である望ましい領域は、未対合RNA領域ではなく、相同なRNA配列によって置換されなかった2本鎖DNAである(図5参照)。
【0043】
発明のもう1つの変形形態においては、2つの試料の間に発生する質的な遺伝的差異(例えば選択的スプライシング事象)を検出するための方法には、第1の生物学的試料に由来する2本鎖cDNAを、第2の生物学的試料に由来するcDNA(2本鎖又は好ましくは1本鎖)とハイブリダイズさせることが含まれる(図6)。
【0044】
上述の変形形態とは異なり、この変形形態では、DNA/RNAヘテロ2本鎖又はヘテロ3本鎖構造を使用せず、代りにDNA/DNAホモ2本鎖分子を用いる。この変形形態は、それが選択的イントロン及びエキソンのみならず同じ核酸ライブラリー内で、エキソン又はイントロンの欠失によって形成された特位的接合部を明らかにしているという点で有利である。その上、かかるライブラリー内の配列は、選択的イントロン及びエキソンのフランキング配列についての情報を提供する。
【0045】
研究中の両方の試料(すなわち病態生理学的状態)について、サイトゾルポリA+RNAが、当該技術分野において既知でかつ以前に記述された技術により抽出される。これらのRNAは、以上で記述したように、内因性RNase H活性を伴う又は伴わない逆転写酵素の作用を通してcDNAに変換される。これらの1本鎖cDNAのうちの1つは、次に、当業者にとって既知の技術に従い、ランダム六量体を用いたプライミングにより2本鎖cDNAに変換される。従って研究中の状態のうちの1つのためには、1本鎖cDNA(「ドライバー」と呼ばれる)が得られ、もう1つの状態については2本鎖cDNA(「テスター」と呼ばれる)が得られる。これらのcDNAは、加熱により変性され、その後テスターに比べドライバーが余剰となるように混合される。この余剰は、1〜50倍、有利には10倍として選択される。2つの病態生理学的状態から出発して行なわれた一定の所定の実験において、ドライバーを生成する状態の選択は任意的であり、収集されたデータの性質に影響を及ぼしてはならない。実際、上述のアプローチの場合のように、2つのmRNA個体群の間で発生する質的差異を同定する計画は、共通のメッセンジャー内に存在するこれらの差異をクローニングすることに基づいている:すなわち、この計画は、研究中の状態のうちの1つにおいて余剰の単数又は複数のユニーク配列に対応する1本鎖の代りに、2本鎖分子内に存在する配列をクローニングすることに基づいている。cDNAの混合物は沈降させられ、次に(例えば80%の)ホルムアミドを含有する溶液中に取り上げられる。ハイブリダイゼーションは16時間〜48時間、有利には24時間実施される。ハイブリダイゼーション産物は沈降させられ、次に2本鎖DNAのための4塩基認識部位をもつ限定エンドヌクレアーゼの作用に付される。このような限定酵素は従って、平均256塩基毎にハイブリダイゼーション中に形成された2本鎖cDNAを分割することになる。この酵素は、有利には、付着末端を生成するように選択される。かかる酵素は、Sau 3AI、HpaII、TaqI及びMseIといったような限定酵素によって例証される。これらの酵素により消化された2本鎖フラグメントは、従って、分割された限定部位を使用するクローニング計画にアクセス可能である。かかるフラグメントは、2つのタイプをもつ。すなわち、その2つのストランドが完全に相補的である完全にハイブリダイズされたフラグメントと、2本鎖領域によってフランキングされた1本鎖ループを含む部分的にハイブリダイズされたフラグメントである(図6A)。少数派であるこの後者のフラグメントは、関心の対象である情報を含んでいる。cDNA長の大部分から誘導されることから多数派である完全にハイブリダイズされたフラグメントからこれらを分離するためには、ゲル上又はその他の任意の適当なマトリクス上での分離方法が用いられる。これらの方法は、特に電気泳動又はゲルろ過中、1本鎖DNAループを含むDNAフラグメントのより低速な移動を活用する。この要領で、望ましい情報を含む少数派フラグメントを、両方の個体群内の同一のDNA領域に対応するフラグメントの大部分から、準備として分離することができる。同じ個体群から、質的差異に結びつけられた正及び負の指紋を分離することを可能にするこの変形形態は同様に、RNA/DNAヘテロ2本鎖構造についても実施可能である。この点において、全ての配列が対合されている相同なヘテロ2本鎖分子に比べ、RNAの一部分が対合されていないRNA/DNAヘテロ2本鎖分子のより低速の移動の一例が、実施例に記述されたgrb2/grb33モデル内で例示されている(特に図8、レーン2及び3参照)。
【0046】
同定及び/又はクローニング
ハイブリダイゼーションによって生成された核酸個体群から出発して、質的差異(例えば差異のある選択的スプライシング事象)を特徴づけする領域を、当業者にとって既知のあらゆる技術により同定することができる。
【0047】
RNA/DNAヘテロ2本鎖から出発した同定及び/又はクローニング
従って、RNA/DNAヘテロ2本鎖の場合(この方法の第1の変形形態)、これらの領域は基本的に、図3に示されているように未対合RNA領域(RNAループ)として現われる。かくしてこれらの領域は、ヘテロ2本鎖分子と1本鎖核酸(DNA、RNA)(余剰の未反応核酸)を分離し、2本鎖RNA(ヘテロ2本鎖構造に組込まれる部分)を選択的に消化させ、最後に1本鎖DNAから、結果としての1本鎖RNAを分離することによって、同定しクローニングできる。
【0048】
この点において、図3に例示された第1のアプーチに従うと、未対合RNA領域は、RNA/DNAヘテロ2本鎖分子に組込まれるRNAドメインを選択的に消化する能力をもつ酵素を用いて、ヘテロ2本鎖分子を処置することによって同定される。このような活性をもつ酵素は、先行技術から既知のものであり、市販されている。特に、組換え技術によってE.coliに由来するもののような、市販のRNases Hを挙げることができる(Promega カタログ番号M428;Life Technologies−カタログ番号18021)。かくして、この第1の処置は、未対合の1本鎖RNA領域及び1本鎖cDNAを含む混合物を生成する。RNAは、当該技術分野において既知のあらゆる技術によって、そして特にcDNAを調製するのに使用されるこれらのプライマーの標識づけをベースとして、cDNAから分離され得る(上記参照)。これらのRNAは標的、つまり問題の産物を同定するため又はその他の任意の利用分野のための材料供給源として使用することができる。これらのRNAは、同等の形でcDNAへと変換され、次に以下で詳述するようにベクター内にクローニングされ得る。
【0049】
この点において、RNAをクローニングすることを異なる方法で行なうことが可能である。1つの方法は、各RNA末端において、適合性プライマーの存在下での逆転写反応のための鋳型として作用するオリゴヌクレオチドを挿入することである。プライマーは、当業者にとって周知の技術に従って、ファージT4に由来するRNAリガーゼといったような、供与体分子の5´リン酸基と受容体分子の3´ヒドロキシル基との間の分子間ホスホジエステル結合形成の触媒として作用する酵素を用いて、付加することができる。かかるRNAリガーゼは、市販されている(例えばLife Technologies−GIBCO BRLカタログ番号18003)。このように得られたcDNAは次に、図3に例示されているように、適切なプライマーを用いて、従来の技術(例えばPCR)により増幅可能である。この技術は、特に短かいRNA分子(1000塩基未満)に適合されている。
【0050】
特定のRNA領域をクローニングしかつ/又は同定するためのもう1つのアプローチには、例えば、RNAに沿って転写を無作為に開始することになるランダムプライマーを用いてRNase Hといったような2本鎖RNAに特異的に作用する酵素の消化物について行なわれる逆転写反応が関与する。かくして得られたcDNAは次に、例えばT4ファージDNAリガーゼ(市販のもの;例えばLife Technologies−GIBCO BRLカタログ番号18003より)を用いてcDNA末端にオリゴヌクレオチドを付加することによって形成されたプライマーを用いてPCRなどによって、従来の分子生物学技術に従って増幅される。この第2の技術は、図4及び実施例中で例示されている。この技術は特に、長いRNAに適合し、その後初期配列全体を再構築するのに充分な配列データ部分を提供する。
【0051】
特異的RNA領域をクローニングしかつ/又は同定するためのさらなるアプローチは、同等に、ランダムプライマーを用いた逆転写反応に基づいている(図4)。しかしながらこの変形形態に従うと、使用されるプライマーは、少なくとも部分的にセミランダムプライマー、すなわち、
− ランダム(縮重された)領域、
− 定義された制約度をもつ最小プライミング領域
− 安定化領域
を含むオリゴヌクレオチドである。
【0052】
好ましくは、これらは、5´→3´の方向に、以下のものを含むオリゴヌクレオチドである:すなわち
− 8〜24個の定義されたヌクレオチド好ましくは10〜18個のヌクレオチドを含む安定化領域。この安定化領域はそれ自体、本発明のセミランダムプライマーを用いて実施される初期増幅に由来するフラグメントを再度増幅するのに使用されるオリゴヌクレオチドの配列に対応していてよい。さらに、この安定化領域は、限定酵素に対応する、好ましくは非パリンドロームの単数又は複数の部位の配列を含むことができる。こうして、例えば、このように増幅されたフラグメントのクローニングを単純化することが可能になる。安定化領域の特定の1例は、配列GAGAAGCGTTAT(配列番号1の残基1〜12)により与えられる;
− 3〜8個のヌクレオチド、より特定的には5〜7個のヌクレオチドを有するランダム領域、及び
− オリゴヌクレオチドが平均して少なくとも約60塩基対毎に、好ましくは約250塩基対毎にハイブリダイズするような形で定義された最小プライミング領域。より好ましくは、プライミング領域は2〜4個好ましくは3又は4個の定義されたヌクレオチド、例えばAGGXを含み、ここでXは4つの塩基A、C、G又はTのうちの1つである。かかるプライミング領域の存在は、オリゴヌクレオチドに対し平均して約256塩基対毎にハイブリダイズする能力を与える。
【0053】
特に好ましくは、オリゴヌクレオチドは次のような構造式を有する:GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGX(配列番号1)。なおここで、固定された塩基は、PCR実験での自己対合に起因するバックグラウンドを最小限におさえるように順序づけされており、Nは、指示された位置に無作為な形で4つの塩基が存在しうることを表わし、Xは、4つの塩基対A、C、G又はTのうちの1つである。かかるオリゴヌクレオチド同じく本発明の目的を構成している。
【0054】
この点において、クローニングされるべきRNA上のプライミング事象を増大させるために、
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGT(オリゴヌクレオチドA)
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGA(オリゴヌクレオチドB)
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGC(オリゴヌクレオチドC)
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGG(オリゴヌクレオチドD)
といったようなオリゴヌクレオチドで並行して反応を行なうことができ、ここで各々のオリゴヌクレオチド個体群(A、B、C、D)は、単独でも、又はもう1つのものと組合わせた形ででも使用可能である。
【0055】
逆転写反応の後、cDNAは、オリゴヌクレオチドA又はB又はC又はDを用いてPCRにより増幅される。
【0056】
上述のように、望ましいオリゴヌクレオチド個体群の複雑性及び特異性に応じて、変性された位置の数は3〜8個好ましくは5〜7個の範囲にありうる。3個より少ない場合には、ハイブリダイゼーションは限定されており、8個より多い場合には、オリゴヌクレオチド個体群は、特異的バンドの優れた増幅を確保するには複雑すぎる。
【0057】
さらに、これらのオリゴヌクレオチドの固定された3´末端(制約されたプライミング領域)の長さも同様に修正可能である;4つの固定された塩基を伴う上述のプライマーは、平均して256の塩基対フラグメントの増幅を可能にするが、一方、3つの固定塩基を伴うプライマーは、より短かいフラグメント(平均して64塩基対)の増幅を可能にする。本発明の第1の好ましい実施形態においては、プライミング領域が4つの固定塩基を含むオリゴヌクレオチドが使用される。本発明のもう1つの好ましい実施形態においては、3つの固定塩基のプライミング領域をもつオリゴヌクレオチドが使用される。実際、エキソンは、137塩基対という平均サイズを有することから、これらはかかるオリゴヌクレオチドで有利に増幅される。この点において、例えば、配列番号2、3及び4の配列をもつオリゴヌクレオチドも参照されたい。
【0058】
最後に、一般にはRNAの同定及び/又はクローニングは、可能なかぎり多くの情報を生成するべく、異なるPCR及びクローニング方法に基づいている。
【0059】
・ ヘテロ3本鎖分子から出発する同定及び/又はクローニング
ヘテロ3本鎖構造(方法のもう1つの変形形態)の場合、質的に異なる領域(挿入、欠失、差異のあるスプライシング)は基本的に、図5に示されているように、2本鎖DNA領域の形で現われる。かかる領域はかくして、まずはRNAを消化する能力をもつ酵素といったような適切な酵素の存在下でそして次に1本鎖DNAを消化する能力をもつ酵素によって、それらを処置することにより同定されクローニングすることができる。かくして核酸は、2本鎖DNAの形で直接得られ、例えばベクターpMos−Blue(Amersham,RPN5110)といったような任意の適切なベクター内にクローニングされ得る。この方法は、ヌクレアーゼ活性を有するように修飾された予め定められた配列のオリゴヌクレオチド又はRNAを用いた以前に記述されたアプローチとは区別されるべきである(Landgraf et al.,(1994),Biochemistry, 33;10607−10615)。
【0060】
DNA/DNAホモ2本鎖分子から出発する同定及び/又はクローニング(図6)
その非定型構造に基づいて分離されたフラグメントは次に、その各々の末端において、その1つの末端で分割された限定部位をもつアダプタ又はリンカーに連結される。このことは、当業者にとって既知の技術に従って、例えばファージT4 DNAリガーゼでの連結によって行なうことができる。このように導入された限定部位は、cDNAフラグメントの部位と適合性あるものとして選択される。導入されたリンカーは、既知の配列の2本鎖cDNA配列であり、酵素増幅(PCR)のためのプライマーを生成することを可能にしている。次のことは、各々同定すべき質的差異を支持する2つのストランドを増幅することにあるため、リン酸化された5´末端を伴うリンカーを使用することが必要である。かくして、リンカーが付加された2本鎖cDNAの熱変性の後、これらのcDNA末端の各々は、特異的プライミング配列に対し共有結合される。該当する特異的プライマーを用いたPCRの後、2つのカテゴリーの2本鎖cDNAが得られる。すなわち、2つの病態生理学的状態を区別する質的差異に特異的な配列を含むフラグメント、及びこれらのスプライシング事象の負の指紋を含むフラグメントである。これらのフラグメントをクローニングすることによって、各スプライシング事象について正及び負の指紋が存在する選択的なスプライシングライブラリーが生成される。従って、このライブラリーは、選択的エキソン及びイントロンのみならず、これらのスプライシングされた配列の切除により形成された特異的接合部に対するアクセスをも提供する。同じライブラリー内で、この差異のある遺伝情報は、2つの病態生理学的状態から無差別に誘導され得る。さらに、同定されたスプライシング事象の差異のある性質を試験するため及びそれらが特異的に惹起される状態を測定するため、ライブラリー内のクローンを、全mRNA個体群の各々に由来するプローブを用いてハイブリダイズさせることができる。
【0061】
このように同定された質的差異に由来するcDNAフラグメントは、以下のような2つの主たる用途をもつ。
− 研究中の2つの病態生理学的状態間で発生する質的差異を表わすライブラリーを構築することを目的とした適切なベクター内へのクローニング、
− 差異のあるスプライシング事象の同定を可能にするDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとしての使用。
【0062】
本発明で使用されるベクターは、特にプラスミド、コスミド、ファージ、YAC、HACなどであってよい。これらの核酸はかくしてそのままの状態で保管されるか、複製を目的として、使用中のクローニングベクターと適合性のある微生物の中に導入されるか、かつ/又は培養の形で保管されてよい。
【0063】
各試料について本書で記述されている方法を実施するのに必要とされる時間的間隔は、一般に2カ月未満、特に6週間未満である。さらに、これらの異なる方法は、全体的時間の長さが短縮され、多数の試料の処置が単純化されるように自動化することができる。
【0064】
この点で、本発明のもう1つの目的は、本発明の方法により同定しクローニングした核酸に関する。すでに指摘したように、これらの核酸はRNA又はcDNAであってよい。より一般的に言うと、本発明は、基本的に2つの生理学的状態を識別するものである選択的スプライシングに対応する核酸を含む核酸組成物に関する。より特定的には、これらの核酸は、生体テスト試料の中で同定されかつ基本状態下では同じ生物学的試料中に存在しない選択的スプライシングに対応する。本発明は、同じく、以下で記述するような治療用又は診断用産物として又は活性分子を同定するためのスクリーニング手段としての、このようにクローニングされた核酸の使用にも関する。
【0065】
以上で開示された異なる方法はかくして全て、2つの病態生理学的状態間の差異のあるようにスプライシングされた遺伝情報を表わすcDNA配列のクローニングを導くものである。これらの方法のうちの1つに由来するクローンセット全体は、かくして、問題の2つの状態間に発生する質的差異を表わすライブラリーを構築することを可能にする。
【0066】
質的ライブラリーの生成
この点において、本発明はさらに、生物学的試料の一定の所定の生理学的状態を表わす核酸ライブラリーを調製するための方法に向けられている。この方法は、有利には、調査されつつある2つの状態の間に発生する質的差異に特異的なライブラリーを生成するべく、前記生理学的状態の遺伝的発現(例えば選択的スプライシング)の質的マーカーを表わす核酸をクローニングすることを含む。
【0067】
これらのライブラリーは、プラスミド又はファージベクター内に挿入されたcDNAによって構成される。かかるライブラリーは、ニトロセルロースフィルター又は、チップ又はバイオチップといったような当業者にとって既知のその他の任意の支持体上に被着させることができる。
【0068】
質的差異のあるスクリーニングの特長の1つならびに独創的特徴の1つは、この技術が2つの所定の状態の間で発生する質的差異の全セットを表わす、1つの差異のあるライブラリーではなく有利にも2つのライブラリーすなわちライブラリー対を導くという点にある。(図1D参照)
【0069】
かくして、本発明は好ましくは、第1の生物学的試料に由来するRNAを第2の生物学的試料に由来するcDNAとハイブリダイズさせることによって得ることのできるあらゆる核酸組成物又はライブラリーに関する。より好ましくは、本発明のライブラリー又は組成物は、2つの生物学的試料間の発現の質的差異を表わす核酸を含んで成り、(i) 第1の生物学的試料に由来するRNAと第2の生物学的試料に由来するcDNAとの間の少なくとも1回のハイブリダイゼーション、(ii) 発現の質的差異を表わすような核酸を選択すること、及び場合により(iii) 前記核酸をクローニングすることを含む方法により生成される。
【0070】
さらに、かかるライブラリーがひとたび構築された時点で、結果として得られたライブラリーの特異性を改善するべくクローン選択に着手することが可能である。実際、観察されるいくつかの不整合が単に質的差異(例えば差異のある選択的スプライシング)のみに起因するのではなく、例えば逆転写の欠陥の結果でありうるということも考えられる。かかる事象は、一般に有意なものではないにしても、核酸クローニングに先立ちそれを防止するか又はその発生率を低減させることが好ましい。このことを達成するため、ライブラリークローンを、調査中の両方の生理学的状態で発生するcDNA個体群でハイブリダイズさせることができる(上述の工程(c)を参照のこと)。両方の個体群と非差異のある形でハイブリダイズするクローンは、非特異的なものとみなされ、任意に廃棄されるか又は第2の優先性として扱かわれる(実際には、テスト試料内の新しいアイソフォームタンパク質の出現は、つねに、基準試料内に存在する初期アイソフォームタンパク質がこのテスト試料中から消えたことを表わすわけではない。いずれかの個体群のうちの1つのみとハイブリダイズするクローン又は個体群のうちの1方と優先的にハイブリダイズするクローンは、特異的であるとみなされ、豊富な又は洗練されたライブラリーを構成するべく優先して選択されうる。
【0071】
洗練工程は、統計的に意味ある数の病理試料に由来するプローブを用いて、クローンをハイブリダイズさせその同一性を試験することによっても同等に実施可能である。
【0072】
従って、本出願は同じく、1つの生理学的状態に典型的な選択的スプライシングに特異的な核酸を含むあらゆる核酸ライブラリーに向けられている。これらのライブラリーは有利には、一般に2本鎖であり、選択的スプライシングに特異的なRNA領域に対応するcDNAを含む。かかるライブラリーは、一般にクローニングベクター内に取込まれた核酸又は前記核酸を含む細胞培養で構成されていてよい。
【0073】
初期RNAの選択は、以下のような結果として得られるライブラリーの特性を、部分的に測定する:すなわち
− 両方の状態A及びBのRNAは、当業者にとって既知の技術に従って分離されたmRNA又は全成熟RNAである。かくして、ライブラリーは、両方の病態生理学的状態の成熟RNAを特徴づけする質的差異に限定されることから、いわゆる限定された質的差異のあるスクリーニングライブラリーである。
− いずれか1方の状態のRNAはmRNA又は成熟全RNAであるのに対し、もう1方の状態のRNAは、スプライシングにより処理されず細胞核から当業者にとって既知の技術に従って分離されたプリメッセンジャーRNAである。この状況下で、結果として得られるライブラリーは、成熟RNA間の差異に限定されずむしろ全てのイントロンを含めもう1方のものからは欠如している一定の所定の状態下のスプライシングされた写しのセット全体を含んでいることから、いわゆる複合差異のあるスクリーニングライブラリーである。
− 最後に、RNAは単一の病態生理学的状態から生じることができ、この場合、差異のあるスクリーニングには、同じ試料の成熟RNA及びプリメッセンジャーRNAが関与する。このような場合には、結果として得られたライブラリーは、自己由来の質的差異のあるスクリーニングライブラリーである。このようなライブラリーの有用性は、それらが、一定の所定の状態下で転写された全範囲のイントロンを排他的に内含するという点にある。それらが全く異なる1つの状態の成熟RNAに由来するプローブとハイブリダイズするか否かによって、我々は、研究中の状態が、持続するイントロンの容易な同定を提供しながらこれらのイントロンによって特徴づけされるか否かを迅速に確認できるようになる。
【0074】
一般的に言うと、ライブラリーは、クローニングされた核酸によって形質転換された細胞培養を固体培地(特に寒天培地)上に展延させることによって生成される。形質転換は、当業者にとって既知のあらゆる技術によって行なわれる(トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降、電気穿孔法、バクテリオファージでの感染など)。細胞培養は一般に、例えばE. coliといった細菌培養である。これは同様に、真核細胞培養、特に下等核細胞(例えば酵母)であってもよい。この展延工程は、図又はその他の任意の適切な支持体上で無菌状態下で実施可能である。さらに、寒天培地上の展延された培養は、例えば凍結状態(グリセロール又はその他の何らかの適切な薬剤中)に保管することができる。当然のことながら、これらのライブラリーを「複製物」すなわち以下でより詳しく記述する一般的技術に従って作られるコピーの産生のために使用することもできる。さらに、かかるライブラリーは一般に、増幅されたライブラリーすなわち各クローンを増幅状態で含むライブラリーを調製するのに用いられる。増幅ライブラリーは、以下のように調製される;すなわち、展延された培養から出発して、全ての細胞クローンを回収し、任意の適合性ある培地を用いて、凍結状態又は低温の場所に保管するべく梱包される。この増幅されたライブラリーは有利には、E.coli細菌培養から調製され、4℃で無菌状態下で保管される。この増幅されたライブラリーは、さまざまな利用分野のため、異なる支持体上で、このようなクローンを含んだその後調製される任意のライブラリーを調製し無限に複製することを可能にする。かかるライブラリーはさらに、問題の任意のクローンの分離及び特徴づけを可能にする。本発明のライブラリーを構成する各クローンは、実際には、1つの生理学的状態の特徴的要素であり、従ってマーカー探査、抗体産生、診断、遺伝子移入療法などといったさまざまな研究のための特に有利な標的を構成する。これらの異なる利用分野について以下でさらに詳細に論述する。ライブラリーは一般に、適切な支持体(例えばペトリ皿)上で、寒天培地内に培養を展延させることによって、上述のとおり調製される。寒天培地を使用することがもつ利点は、各コロニーを分離し全く異なる形で認識できるということにある。この培養から出発して、当該技術分野において既知の技術に従って適切なあらゆる支持体上で複製平板固定することによって単純に、実質的な量で同一の複製物を調製することができる。かくして、複製物は、その上に細胞を付着させることが可能なフィルター、膜(ナイロン、ニトロセルロースなど)を用いて得ることができる。このとき、フィルターは、そのままの状態で、例えば4℃で乾燥状態で、核酸を改変させないあらゆるパッキング用培地の中に保管され得る。フィルターは同じく、細胞、タンパク質などを廃棄し核酸といったような成分のみを保持するような要領で処理することもできる。これらの処置手順には特に、プロテアーゼ、洗浄剤などの使用が含まれていてよい。処置されたフィルターは同様に、核酸にとって受容可能な任意の状態下で又は任意の装置内で保管可能である。
【0075】
核酸ライブラリーは、同様に、バイオチップ又はその他の任意の適切な装置上に移送することによって、核酸から直接調製することができる。
【0076】
本発明は、2つの生理学的状態を区別する選択的スプライシング事象に特異的なオリゴヌクレオチドを含むあらゆるライブラリーにも向けられている。これらは、有利には、5〜100マー、好ましくは50マー未満、例えば25マーの範囲内のものを含む1本鎖オリゴヌクレオチドである。
【0077】
これらのオリゴヌクレオチドは、一定の所定の状態又は生理学的状態タイプを表わす選択的スプライシングに特異的である。かくして、かかるオリゴヌクレオチドは例えば、アポトーシス状態に特徴的な選択的スプライシング事象を表わすオリゴヌクレオチドであってよい。実際に、或る種の選択的スプライシング事象がアポトーシス状態内で観察されることが文献中で報告されてきている。これは、例えばBclx、Bax、Fas又はGrb2遺伝子内でのスプライシングについて特に言えることである。文献及び/又はデータベース内で入手可能な公表済みデータ又は配列を参照することにより、スプライシングされた又はスプライシングされていない形態に特異的なオリゴヌクレオチドを生成することが可能である。これらのオリゴヌクレオチドは例えば、以下の計画に従って生成可能である;すなわち
(a) アポトーシス状態に特徴的なタンパク質又はスプライシング事象及びスプライシングされたドメインの配列を同定すること。この同定手順は、公開されたデータ又はデータベース内の利用可能な配列のコンパイルに基づくものでありうる。
(b) テスト試料のRNA内の未スプライシング形態をハイブリダイゼーションを通して同定できるようにする。このドメインの単数又は複数の領域に対応する単数又は複数のオリゴヌクレオチドを人工的に合成すること。
(c) スプライシングされたドメインによって分離された2つのドメインの間の接合領域に対応する単数又は複数のオリゴヌクレオチドを人工的に合成すること。従ってこれらのオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションを通してのテスト試料のRNA内のスプライシングされた形態の同定を可能にする。
(d) アポトーシス状態に特徴的なその他のタンパク質又はスプライシング事象について、以上に列挙した工程(a)〜(c)を反復すること。
(e) 以上で同定したメッセンジャーのアポトーシス形態に特異的な単数又は複数のオリゴヌクレオチドを第1の適切な支持体上に移し、もう1つの適切な支持体上には、非アポトーシス形態に特異的な単数又は複数のオリゴヌクレオチドを移送すること。
【0078】
かくして得られた2つの支持体は、細胞又はテスト試料の生理学的状態及び特にそのアポトーシス状態を、かかる細胞又は試料に由来する核酸調製物のハイブリダイゼーションを通して評価するために使用することができる。
【0079】
その他の類似のライブラリーは、異なる病態生理学的状態(神経変性、毒性、増殖など)に特異的なオリゴヌクレオチドを使用して生成可能であり、かくして利用分野の範囲は広くなる。
【0080】
選択的イントロン又はエキソンライブラリーは、個々の生体、組織又は細胞培養のゲノムについての情報が記録されるデータベースを系統的に分析することによってコンパイルされたコンピュータ化されたデータベースシステムの形をしていてもよい。このような場合、かかる仮想データベースの作成により得られたデータを用いて、2つの病態生理学的状態を並行してテストする上で役立つオリゴヌクレオチドプライマーを生成することができる。
【0081】
コンピュータ化されたデータベースは、さらに、一定の所定のタンパク質クラスを表わすか又は1つの特定の配列に特異的である汎用ヌクレオチドプローブを誘導するために使用することができる。これらのプローブは、次に、これらの分子ライブラリーの複雑性を評価し、一定の所定のクラスのタンパク質又は一定の所定の定義済み配列が、2つの全く異なる病態生理学的状態に比較したときに差異のあるようにスプライシングされるか否かを迅速に見極める目的で、異なる選択的イントロン及びエキソンクローニング技術に由来するクローンライブラリー上に被着され得る。
【0082】
本発明に従ったさらなる核酸組成物又はライブラリーは、本発明の方法に従って同定された配列から生成されたアンチセンスライブラリーである(DATAS)。このタイプのライブラリーを生成するためには、かかる配列は、DATASのために使用されたメッセンジャーRNAとの関係におけるアンチセンス配向に対応するRNAフラグメントとして発現されるべくクローニングされる。その結果、いわゆるアンチセンスライブラリーが得られる。このアプローチは、好ましくは、クローニングされたフラグメントき配向を可能にするクローニング変形形態を使用する。かかるアンチセンスライブラリーの有用性は、それが細胞系統のトランスフェクションを可能にし、かつ、形態的なものであるか酵素的なものであるか、又は選択的作用物質に対する耐性を付与する遺伝子又はリポータ遺伝子の使用により顕示されたものであるかとは無関係に全ての表現型変化の監視を可能にするということにある。アンチセンス発現ベクターの導入に続く表現型変動の分析は、一般に、いわゆる安定したクローンすなわち発現ベクターと宿主ゲノムの調和のとれた複製を可能にするクローンの選択の後に行なわれる。この調和は、細胞ゲノム内への発現ベクターの組込みを通してか、又は発現ベクターがエピソームのものである場合には選択的圧力を通して可能になる。かかる選択的圧力は、発現ベクターによって支持されている遺伝子の産物が細胞内で発現された時点でのみ解毒されうる毒性作用物質を用いて、トランスフェクションを受けた細胞培養を処置することによって適用される。この結果、宿主とトランスジーン複製の間の同期化が得られる。有利には、一定の所定の細胞内での50〜100個のベクターコピーの発現を可能にするエプスタイン−バーウイルスに由来するエピソームベクターが使用される(Deiss et al.,(1996),EMBO J.,15:3861−3870;Kissil et al.,(1995), J. Biol. Chem,270:27932−27936)。
【0083】
含有するDATAS配列に関係づけた、これらのアンチセンスライブラリーの利点は、それらが、発現が阻害され選択された表現型を生じている遺伝子の同定を可能にするのみならず、この遺伝子のどのスプライシングアイソフォームが影響を受けたかの同定をも可能にするということにある。アンチセンスフラグメントが一定の所定のエキソンをターゲティングするとき、このことから、タンパク質ドメイン、ひいてはこのドメインが関与する機能か観察された表現型を打ち消すということを演繹することができる。この点において、アンチセンスアプローチとDATASの結合は、機能的ゲノミクスへの近道を表わしている。
【0084】
DNAチップ
本発明はさらに、以上で定義されたような核酸組成物又はライブラリーを含むあらゆる支持体材料(膜、フィルター、バイオチップ、チップなど)にも向けられている。これは、より特定的には、細胞ライブラリー又は核酸ライブラリーであり得る。本発明は同様に、本発明に従った複数のライブラリーを含むあらゆるキット又は支持体材料にも関する。特に、基準生理学的状態との関係におけるテスト生理学的状態の質的特長を表わすライブラリー及び、対照として、テスト生理学的状態との関係における基準生理学的状態の特長を表わすライブラリーを並行して使用することが有利でありうる(「ライブラリー対」)。かくして本発明に従った有利なキットは、2つの生理学的状態に属する2つの差異のある質的ライブラリー(「ライブラリー対」)を含む。1つの特定の実施形態に従うと、本発明に従ったキットは、例えば全く異なる生理学的状態又は異なる生物学的試料に対応する上述のとおりの複数のライブラリー対を含む。キットには、例えば、共通の支持体上に連続して配置されたこれらの異なるライブラリー対が含まれていてよい。
【0085】
プローブの生成
2つの病態生理学的状態の間で発生する質的差異を表わす本発明に従ったcDNA組成物のもう1つの用途は、そのプローブを誘導することにある。かかるプローブは実際には、2つの病態生理学的状態の間に差異のあるスプライシング事象をスクリーニングするために用いることができる。
【0086】
これらのプローブ(図1D参照)は、当該技術分野において既知の従来の技術に従って核酸ライブラリー又は個体群を標識づけすることによって調製可能である。かくして、標識づけは、酵素的、放射性、蛍光性、免疫的手段などによって実施可能である。標識づけは好ましくは、放射性又は蛍光性のものである。このタイプの標識づけは、例えば、核酸個体群の中に(合成後か又は合成中に)、標識づけされたヌクレオチドを導入し、従来の方法でそれらの視覚化を可能にすることによって達成できる。
【0087】
従って1つの利用分野は、従来のゲノムライブラリーをスクリーニングすることである。かかるライブラリーは、そのベクターがファージ又はコスミドのいずれに由来するのかに応じて、10kbから40kbのDNAフラグメントを含むことができる。2つの状態間で発生する差異のあるスプライシング事象を表わしDATASによって生成されたプローブとハイブリダイズするクローンの数は、かくして、調査中のいずれの状態下で発現されるかに応じて、選択的スプライシングによる影響を受けた遺伝子の数をおおよそ反映している。
【0088】
好ましくは本発明のプローブは、スプライシング事象を同定するように適合されたゲノムDNAライブラリー(一般にはヒト由来のもの)をスクリーニングするために使用される。かかるゲノムライブラリーは好ましくは、制約あるサイズの(一般にはベクター内にクローニングされた)DNAフラグメントから成り、こうして統計的に、単一の差異のあるようにスプライシング可能な要素すなわち単一エキソン又は単一エキソンのみを生み出すようになっている。従ってゲノムDNAライブラリーは、4つの塩基によって限定された認識部位をもつ酵素により、ゲノムDNAを消化することにより調製され、かくして、平均サイズが1kbのDNAフラグメントを制御された消化によって得る可能性を提供している。かかるフラグメントは、より高等な真核生物ゲノムを表わすDNAライブラリーを構築するのに107個のクローンの生成を必要とする。かかるライブラリーは同様に、本出願の目的である。このライブラリーは次に、質的な差異のあるスクリーニングに由来するプローブでハイブリダイズされる。実際、2つの病態生理学的状態A及びBを比較する調査中の各実験について、2つのプローブ(プローブ対)が得られる。1つのプローブは、状態Aの特徴であるスプライシングマーカーに富み、1つのプローブはBの特徴であるスプライシングマーカーに富んでいる。いずれか一方のプローブと優先的にハイブリダイズするゲノムライブラリー内のクローンは、優先的に対応する病態生理学的状態内でスプライシングされる配列を有している。
【0089】
かくして本発明の方法は、遺伝子発現における質的差異の系統的同定を提供する。これらの方法は、例えば毒物学、薬物学さらには薬理ゲノミクスの分野で、問題の分子の同定及び/又はクローニングに関し数多くの利用分野をもっている。
【0090】
利用分野
従って本発明は、さらに、治療又は診断的価値をもつ分子を同定することを目的とした先に記述した方法、核酸又はライブラリーの使用にも関する。本発明は、より特定的に言うと、1つの疾病において変化したタンパク質又はタンパク質ドメインを同定することを目的とした、前述した方法、核酸又はライブラリーの使用に関する。
【0091】
これらの技術の主たる強味の1つは、実際メッセンジャー内ひいては対応するタンパク質内での、一定の所定の障害を受けた機能的ドメインの同定にある。これによって、病的状態の発生及び持続における一定の所定のドメインの重要性を評価することが可能となる。病的障害の影響を一定の所定のタンパク質ドメインに限定することのもつ直接的利点は、この病的障害を、治療目的で小さな分子をスクリーニングするための意味ある標的として考えることができるという点にある。この情報はさらに、遺伝子療法により送達されうる治療的に活性なポリペプチドを設計するための鍵を成すものである。かかるポリペプチドは、特に、本書で記述されている技術によって同定されたドメインに対して向けられる抗体を中和することに由来する1本鎖抗体でありうる。
【0092】
より特定的に言うと、本発明に従った方法は、
− 選択的エキソンに由来するコーディング配列であってよく、
− 2つの病態生理学的状態の間で差異のあるようにスプライシングされたイントロンが支持する非コーディング配列に対応する可能性がある、
分子を提供する。
【0093】
これら2つの観点から、異なる情報を得ることができる。
【0094】
2つの病態生理学的状態を区別するエキソンの選択的スプライシングが、特定のタンパク質の単数又は複数の機能を調節する(より厳密に言うと抑制又は回復)能力をもつ遺伝子発現の調節メカニズムを反映する。従って大部分の構造的及び機能的ドメイン(SH2、SH3、PTB、PDZ及びさまざまな酵素の触媒ドメイン)が複数の隣接エキソンによってコードされるにつれて、次の2つの形態が考慮される可能性がある:すなわち
i) ドメインは病的状態下で切形にされている(Zhu, Q. et al.,(1994),J. Exp. Med., 180(2):461−470);このことはすなわちかかるドメインが関与するシグナリング経路を治療目的で回復しなければならないということを表わしている。
ii) ドメインは、病的障害の間保持されるが、一方これらは健康状態では存在しない;これらのドメインは、かかるドメインが媒介するシグナルトランスダクションに拮抗するように意図された低分子量化合物のためのスクリーニング標的としてみなすことができる。
【0095】
差異のあるようにスプライシングされた配列は、コーディング配列の5´又は3´に位置設定された非コーディング領域又は2つのコーディングエキソンの間に存在するイントロンに対応する可能性がある。非コーディング領域においては、これらの差異のあるスプライシングは、メッセンジャーの安定性又は翻訳可能性の変化を反映する可能性がある(Bloom, T.J. and Beavo, J.A.,(1995),Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93(24):14188−14192;Ambartsumian, N. et al.,(1995),Gene, 159(1):125−130)。これらの現象の探究は、このような情報に基づいて行なわれるべきであり、その蓄積又は消滅をかんがみ1つの標的候補として対応するタンパク質を認定することができる。コーディング配列内のイントロンの保持は往々にして、読取り枠内に停止コドンを導入することによる未変性タンパク質の切形という結果をもたらす。(Varesco, L., et al.,(1994),Hum. Genet.,93(3):281−286;Canton, H., et al.,(1996),Mol. Pharmacol.,50(4):799−807;Ion, A., et al.,(1996),Am. J. Hum. Genet., 58(6):1185−1191)。このような停止コドンが読みとられる前に、一般に、翻訳された部分に特異的配列を付着させることになる、選択的スプライシングのタンパク質マーカーとして挙動する一定数の付加的なコドンの翻訳が起こる。これらの付加的なアミノ酸は、病的状態に固有の選択的形態に特異的な抗体を産生するのに使用できる。これらの抗体はその後診断用手段として使用可能である。切形タンパク質は、1つの変化さらには特性の改変さえ受ける。かくして、酵素はその触媒又は調節ドメインを失ない、不活性な又は構成的に活性化された状態になる可能性がある。アダプターはシグナルトランスダクションカスケードの異なるパートナーをリンクするその能力を失なう可能性がある。(Watanabe, K. et al.,(1995),J. Biol. Chem., 270(23):13733−13739)。レセプターのスプライシング産物は、対応するリガンドを結合するその能力を失なったレセプターの形成を導く可能性があり(Nakajima, T. et al.,(1996), Life Sci., 58(9):761−768)、同様に、それらの細胞外ドメインの遊離性によりレセプタの可溶性形態を生成する可能性もある(Cheng J.,(1994),Science,263(5154):1759−1762)。この場合、異なる生理的流体内で一定の所定のリガンドと結合する、循環する可溶性形態のレセプターの存在に基づいて、診断テストを設計することができる。
【0096】
本発明はより特定的には、1つの疾病に関与するタンパク質に対し特異的である抗原ドメインを同定するための、上述の方法、核酸又はライブラリーの使用に関する。本発明は、同様に、病的状態を診断するための、上述のとおりの核酸、タンパク質又はペプチドの使用にも向けられている。
【0097】
本発明は同様に、1つの疾病に関与するタンパク質又はタンパク質ドメインを同定及び/又は産生するための方法において、
(a) 健康な試料のcDNAと病的試料のメッセンジャーRNAをハイブリダイズさせるか又はその逆を行なうか、又はその両方を並行して行なうこと、
(b) 健康な状態との関係において病的状態に特異的である質的差異に対応する領域(未対合(RNA)又は対合(2本鎖DNA))を、形成されたハイブリッドの内部で固定すること、
(c) 工程(b)において固定された単数又は複数の領域に対応するタンパク質又はタンパク質ドメインを同定及び/又は産生すること、
を含む方法にも向けられている。
【0098】
このように同定された領域は一般に、差異のあるスプライシングに対応するが、これらは同様に、例えば挿入又は欠失といったようなその他の遺伝子改変にも対応しうる。
【0099】
タンパク質又はタンパク質ドメインを、特に抗体産生のため、治療又は診断の利用分野で、分離、配列測定し、使用することができる。
【0100】
この点をより良く例示するため、本発明の質的な差異のあるスクリーニングにより、腫瘍抑制遺伝子を有利にも同定することが可能となる。実際、抑制遺伝子を腫瘍の進行中に不活性化させる1つの方法が、選択的なスプライシング形態の修飾による不活性化であることを、数多くの例が示している。
【0101】
従って小細胞肺ガン腫において、RB系統群に属するタンパク質p130(網膜芽細胞タンパク質)の遺伝子は、コンセンサススプライシング部位において突然変異している。この突然変異の結果、エキソン2は除去され、早発の停止コドンの存在に起因してタンパク質の合成が存在しなくなる。この観察事実は、この種では初めて腫瘍発生におけるRB系統群メンバーの重要性を強調するものであった。同様にして、一部の非小細胞肺ガンにおいては、サイクリン依存性キナーゼcdk4及びcdk6の阻害物質であるタンパク質、すなわちタンパク質p161NK4Aの遺伝子は、供与体スプライシング部位において突然変異している。この突然変異は、短かい半減期をもつ切形タンパク質の産生を結果としてもたらし、不活性なリン酸化形態のRBの蓄積を導く。その上、ウィルムス腫瘍抑制遺伝子であるWT1は、選択的スプライシングによって生成されるいくつかのメッセンジャーRNAの中に転写される。乳ガンにおいては、異なる変異体の相対的割合は、健康な組織と比べて変化し、かくして腫瘍の進行におけるWT1のさまざまな機能的ドメインの重要性を理解する上での鍵又は診断上の手段を生み出す。異なるメッセンジャーRNA形態とアイソフォームタンパク質との間の細胞形質転換中の比率に影響を及ぼす同じ改変プロセスは、ニューロフィブリンNF1の場合と同様に見い出される。さらに、スプライシング現象の調節が腫瘍進行のマーカーとして挙動するという概念はさらに、腫瘍の発達期に応じてその発現が増大する5つの選択的スプライシング事象が卵巣及び膵臓ガン腫内で検出される、HDM2の例によってさらに裏づけされる。さらに、頭部及び頸部ガンにおいては、p53を不活性化させるメカニズムのうちの1つとして、コンセンサススプライシング部位における突然変異が関与する。
【0102】
これらのいくつかの例は、一定の所定の腫瘍と隣接する健康な組織との間で識別を行なう選択的スプライシングパターンについての系統的スクリーニングに基づいた本発明の方法の利点を、明確に示している。かくして得られた結果は、既知の腫瘍抑制遺伝子の特徴づけを可能にするだけでなく、質的な差異のあるスクリーニング方法の独創的かつ系統的面を考慮して、新しい腫瘍抑制遺伝子に影響を及ぼす可能性の高い腫瘍に特異的な新しい選択的スプライシングの同定をも可能にする。
【0103】
従って、本発明は、先に定義されているように、これらの腫瘍抑制遺伝子内で腫瘍抑制遺伝子又は遺伝的改変(例えばスプライシング事象)を同定しかつ/又はクローニングすることに向けられている。この方法は有利には、以下のことを含むことができる。:
(a) 健康な試料のcDNAと腫瘍試料とのメッセンジャーRNAをハイブリダイズさせるか又はその逆を行なうか、又はその両方を並行して行なうこと、
(b) 健康な試料との関係において腫瘍試料に特異的な領域を、形成されたハイブリッドの内部で同定すること、
(c) 工程(b)において同定された単数又は複数の領域に対応するタンパク質又はタンパク質ドメインを同定及び/又はクローニングすること。
【0104】
同定されたタンパク質又はタンパク質ドメインの腫瘍抑圧特性を、次に、既知の異なるモデルの中でテストすることができる。これらのタンパク質又はその未変性形態(健康な組織の中にみられるスプライシングパターンを表示するもの)を次に、特に抗腫瘍遺伝子療法のため、さまざまな治療用又は診断用利用分野に使用することができる。
【0105】
従って、本発明は、当該技術を実施する異なる態様のみならず、結果として得られた研究対象の情報の開発利用、低分子量の化学的化合物のためのスクリーニング検定の開発、及び遺伝子療法又は診断手段の開発に関係する。
【0106】
これに関連して、本発明はさらに、遺伝子毒性学における上述の方法、核酸又はライブラリーの使用すなわちテスト化合物の毒性を予測するためのその使用に関する。
【0107】
毒性作用物質による細胞又は組織の処置中に開始される遺伝子プログラムは、主としてアポトーシスプロセスすなわちプログラミングされた細胞死に相関される。かかるアポトーシスメカニズムを調節する上での選択的スプライシングプロセスの重要性は、文献中で充分に記述されている。しかしながら、今日まで記述されてきた単一の遺伝子工学技術はいずれも、2つの所定の病態生理学的状態を弁別する選択的スプライシングに起因する配列変動の網羅的スクリーニング及び分離を可能にしない。本発明によって開発された質的な差異のあるスプライシングスクリーニング方法は、cDNAライブラリー内で2つの状態間で発生する全てのスプライシングの差異を収集することを可能にする。標準的毒性化合物で処理された又は処理されていない組織(又は細胞培養)のRNA配列(例えばメッセンジャーRNA)を比較することにより、調査中の毒性効果を特徴づける遺伝子発現の質的差異を含むcDNAライブラリーの生成が可能となる。これらのcDNAライブラリーを次に、毒性について評価中の化学物質で処置された同じ組織又は細胞から生じたRNAに由来するプローブでハイブリダイズさせることができる。一定の所定の標準的毒性状態に特異的な遺伝子配列とハイブリダイズするこれらのプローブの相対的能力によって、化合物の毒性を測定することが可能となる。その上、毒性作用物質によって誘発された質的な差異のあるライブラリーの生成及び利用を目的としたDATASの使用に加えて、本発明の一部分は同様に、或る種のメッセンジャーRNAのスプライシングにおける制御欠損が、当業者にとって既知の細胞毒性及びアポトーシステストにおいて測定されたIC50よりも低い用量で、いくつかの毒性作用物質により誘発されうるということを実証することから成る。かかる制御欠損(又は非制御)は、分子(化学的又は遺伝的)の毒性及び/又は効能を評価するためのマーカーとして使用可能である。
【0108】
従って、本発明は同様に、生物学的試料上でその化合物により誘発されたスプライシング形態及び/又はパターンの検出に基づいて、1つの化合物の毒性及び/又は潜在的治療能力を検出し監視するためのあらゆる方法に関する。さらに本発明は、分子の毒性及び/又は効能を評価するためのマーカーとしての、スプライシング形態及び/又はパターンの何らかの修正の利用にも関する。
【0109】
毒性の評価又は監視は、以下の2つのアプローチに従って、より特定的に実施可能である:
【0110】
第1のアプローチに従うと、一方では処置を受けていない基準組織又は細胞培養と他方ではその毒性を評価すべき製品による処置を受けたものとの間で、質的な差異のあるスクリーニングを達成することができる。この製品により特定的に誘発された質的差異を表わすクローンの分析は、その後、アポトーシスといったような毒性反応に関与するcDNAに密に関係した事象のこれらのクローン内での最終的検出を提供する。
【0111】
かかるマーカーは、それらが、その毒物学的プロフィールを作成できるような形で問題の製品による処置の用量及び持続時間の関数として現われるにつれて監視される。
【0112】
従って、本出願は同様に、毒性を測定すべき化学的化合物によりモデルの生物学的系の中で誘発された毒性マーカーを上述の方法に従った質的な差異のあるスクリーニングを用いて同定するための方法にも向けられている。この点において、本発明は、特に、一定の所定の生物学的試料の毒性状態に特異的な核酸を同定しかつ/又はクローニングするするための方法において、テスト用毒性化合物による処置を受けた又は受けていない試料のcDNAとRNAとの間の質的な差異のあるライブラリーを調製すること及び試料の後処理の特性に特異的な毒性マーカーについて探究することを含む方法に関する。
【0113】
第2のアプローチに従うと、一定の所定の基準組織又は細胞モデルについての用量及び処置持続時間の一関数としての毒性プロフィールを充分に表わすものである計算表が、異なるクラスの毒性製品に関して作成される。各々の計算表ドットについて、質的な遺伝的差異を表わすcDNAライブラリーを生成することができる。後者は、質的な差異のあるライブラリーを表わす。すなわちこれらは、計算表内で選択されたドットから及び対照組織又は細胞モデル内の対応するドットから遺伝情報を抽出することによって得られる。例中で記述されているように、質的な差異のあるスクリーニングは、1つの状態に由来するmRNAをもう1つの状態に由来するcDNAとハイブリダイズさせることに基づいている。上述のとおり、質的な差異のあるスクリーニングは同様に、プリメッセンジャー種を含む核RNA又は完全RNAを用いて行なうことができる。
【0114】
この点において、本発明は、一定の所定の生物学的試料に対するテスト化合物の毒性を測定又は評価するための方法において、
− 健康な状態からの、及び基準毒性化合物で前記試料を処置した結果としてもたらされるさまざまな毒性期における前記生物学的試料のcDNAとRNAの間の差異のあるライブラリーを、
− 前記テスト化合物による処置を受けた生物学的試料の核酸調製物とハイブリダイズさせること、及び
− 異なるライブラリーでのハイブリダイゼーションの程度を測定することによりテスト化合物の毒性を評価すること、
を含む方法に関する。
【0115】
この方法に従うと、
− 状態AからのRNA(テスト)と状態BからのcDNA(基準)(rA/cB)、
− 状態BからのRNA(基準)と状態AからのcDNA(テスト)(rA/cA)、
の間で各状態(化合物用量及び/又はインキュベーション時間)について2回の交差ハイブリダイゼーションに着手することが有利である。
【0116】
各々の計算表ドットにおける各々の基準毒性状態はかくして、2つの質的な差異のあるスクリーニングライブラリーに対応する。かかるライブラリーのうちの1つは質的差異すなわち特に正常な基準状態に特異的な選択的スプライシング事象の完全な収集物であり、一方もう1つのライブラリーは、毒性状況に特異的なスプライシング事象の完全な収集物である。これらのライブラリーは、ナイロン又はニトロセルロースフィルターといったような固体支持体材料上又は有利にはチップ上に、レプリカプレートされる。当初(考慮対象のスプライシング事象に従った)可変的長さのcDNAフラグメントで形成されているこれらのライブラリーは、以前に分離された配列に由来するオリゴヌクレオチドを使用することによって最適化されうる。
【0117】
化学化合物が医薬品開発の候補である場合には、これは毒性計算表ダイアグラム内に記録されているものと同じ組織又は細胞モデルでテストすることができる。このとき分子プローブを、問題の化学化合物で処置された生物学的試料から抽出されたmRNAから合成することができる。これらのプローブはその後、rA/cB及びrB/rAライブラリーのcDNAを支持するフィルター上でハイブリダイズされる。例えば、rA/cBライブラリーは、正常な状態に特異的な配列を含むことができ、rB/cAライブラリーは、毒性状態に特異的な選択的スプライシングを受けた種を含むことができる。化学化合物の無毒性又は毒性はこのとき、テスト化合物により処理された基準組織又は細胞モデルに属するmRNA誘導プローブのハイブリダイゼーションプロフィールを試験することによって直ちに評価される:すなわち
− rA/cBライブラリーとの効率の良いハイブリダイゼーション及びrB/cAライブラリー内にシグナルが全くないことは、その化合物が研究中のモデル中で全く毒性をもたないことを立証している。
− プローブとrB/cAライブラリークローンの間の正のハイブリダイゼーションは、テスト化合物により誘発される毒性の証拠である。
【0118】
かかるライブラリーに関連した実用的利用分野は、エタノール、カンプトテシン又はPMAといった毒性作用物質による処置の後HepG2系統といったような肝細胞培養モデル、HK−2系統といったような腎上皮細胞又はECV304系統といったような上皮細胞によって提供されうる。
【0119】
毒性作用物質又は刺激薬による処置を受けた又は受けない皮ふ培養モデルを化粧品テストにおいて使用することにより、好ましい例が提供されうる。
【0120】
従って、本出願のさらなる目的は、文献中に開示されたチャートに従って広範なクラスの毒性作用物質を表わす化学化合物によって処置された基準器官、組織又は細胞培養から作られた差異のあるスクリーニングライブラリー(cDNAとRNAの間の)にある。本発明はさらに、当業者にとっては既知の支持体材料(ニトロセルロース、ナイロン…)上でのこれらのライブラリーの展延をも包含する。有利には、これらの支持体材料は、かくして遺伝的毒性チップと定義するチップであってよい。本発明はさらに、さまざまな毒性作用物質の作用の基盤を成すメカニズムを理解するためにこれらのライブラリーを構成する異なるクローンについての配列測定データを運用する可能性、ならびに、その毒性を測定すべき化学化合物又は薬学製品によって処置された細胞又は組織に由来するプローブとのハイブリダイゼーションにおけるこのようなライブラリーの使用にも関する。有利には、本発明は、異なる毒性状態下で処理された皮ふ細胞から調製された、上述のタイプのもののような核酸ライブラリーに関する。本発明はさらに、これらの個々の皮ふの差異のあるライブラリーを含むキットにも関する。
【0121】
本発明はさらに、テスト化合物の治療的有効性(遺伝薬理学)を評価(予測)又は増強させるための、前述した方法、核酸又はライブラリーの使用にも向けられている。
【0122】
この特定の用途では、基礎を成す原理は、先に記述したものと非常に類似している。器官の対照細胞培養及び病理モデルをシミュレートするその相対物から、cDNAとRNAの間の基準差異のあるライブラリーを作成する。このとき1つの製品の治療上の効力は、病理モデルに特異的なものである遺伝子発現の質的変動と拮抗するその潜在的治療能力を監視することによって評価可能である。このことは、病理モデルに由来するプローブの基準ライブラリーを用いたハイブリダイゼーションプロフィールの変化により実証される。すなわち処置が無い場合、プローブは、その疾病の特異的マーカーを含むライブラリーとのみハイブリダイズする。有効な製品での処置の後、プローブは、病理モデルに由来するものであるにもかかわらず、健康なモデルの等価物のマーカーを支持するその他のライブラリーと優先的にハイブリダイズする。
【0123】
この点において、該モデルはさらに、一定の所定の生物学的試料上でのテスト化合物の治療的効力を測定又は評価するための方法において、
− 健康な状態及び病的状態(異なる進行期にある)の前記生物学的試料からのcDNA及びRNA間の差異のあるライブラリーを、
− 前記テスト化合物により処置された生物学的試料に由来する核酸調製物、とハイブリダイズさせること、及び
− 異なるライブラリーとのハイブリダイゼーションの範囲を測定することによりテスト化合物の潜在的治療能力を評価すること、
を含む方法に向けられている。
【0124】
かかる利用分野は、標準的栄養因子と拮抗する神経変性のいくつかの局面をシミュレートするアポトーシスモデルによって例証される。かくして、NGFの存在下で神経突起へと分化するPC12褐色細胞腫系統から誘発された細胞は、この成長因子を除去した時点でアポトーシスに入る。このアポトーシスプロセスには、数多くのプログラミングされた細胞死マーカーの発現が随伴し、これらのマーカーのうちのいくつかは、選択的スプライシングによって調節されIGF1によりダウンレギュレートされる。質的な差異のあるスクリーニングに由来する2つのライブラリーが、一方ではNGFの除去に続くアポトーシスプロセス内の分化されたPC12細胞のmRNA抽出物から、又他方では、IGF−1を追加することによってアポトーシスを受けるのを防がれた分化済みPC12細胞から生成される。これらのライブラリーに対して、アポトーシスプロセス中に分化済みPC12に由来するmRNAから調製され、その生存がテスト対象の神経保護物質での処置によって増強されているプローブを、ハイブリダイズさせることができる。質的特性を逆転させるテスト化合物の効率は、かくして、より優れた生存率をもつ細胞を表わすような特異的ライブラリークローンに対して選択的にハイブリダイズするプローブの能力を監視することによって評価されうる。このテストはその後、このような化合物又はその他のあらゆる新しい神経保護化合物系統群の誘導体の効率をテストするため及びその薬学的プロフィールを改善するために使用することができる。
【0125】
特定の一実施形態において、本発明の方法は、健康な神経細胞及びこの神経変性モデル細胞に由来する本発明に従った差異のあるライブラリーとのハイブリダイゼーションを実施することによって、神経保護テスト化合物の効力を評価することを可能にする。
【0126】
もう1つの実施形態においては、腫瘍細胞及び健康な細胞の試料から確立された差異のあるライブラリーを用いて抗腫瘍化合物をテストすることに関心が寄せられる。
【0127】
すでに指摘したとおり、本発明の方法はさらに、健康な試料を表わすライブラリーのものに類似したハイブリダイゼーションプロフィールを誘発する1つの化合物のさまざまな誘導体の能力をテストすることにより、その化合物の特性を改善するために使用することができる。
【0128】
本発明はさらに、薬学ゲノミクスにおける、すなわちテスト化合物又は処置に対する患者の応答を評価(予測)するための、以上に記述した方法、核酸又はライブラリーの使用にも向けられている。
【0129】
薬学ゲノミクスは、一定の所定の疾病にとってどの処置が合理的に成功するものかを測定する目的で患者の遺伝的プロフィールを確立することを目的としている。本発明に記述されている技術は、この点において、一定の所定の処置に対する応答性をもつ病的状態と、それに対し応答性を全く又はわずかしかもたず、かくして異なる治療的計画に対する資格をもち得るもう1つの状態の間で発生する質的差異を表わすcDNAライブラリーを確立することを可能にする。これらの標準ライブラリーがひとたび確立されると、これらを、患者のメッセンジャーRNAから調製したプローブとハイブリダイズさせることができる。このハイブリダイゼーションの結果により、どの患者が応答性状態又は非応答性状態に対応するハイブリダイゼーションプロフィールを有するかを測定し、かくして患者管理における処置の選択を改良することができるようになる。
【0130】
この利用分野では、目的は、1方では患者の病歴に応じて、成功する確率の高い最も適切な治療的投薬計画を提案すること、そして他方ではそれから恩恵を受ける可能性の最も高い患者を、一定の治療的投薬計画に参加させることにある。その他の利用分野の場合と同様に、2つの質的差異のあるスクリーニングライブラリーが調製される。すなわち、一定の所定の処置に応答することがわかっている病理モデル又は試料に基づくものと、治療法に対し応答性を全く又はほとんどもたないさらなる病理モデル又は試料に基づくものである。これら2つのライブラリーはこのとき、個々の患者の生検組織から抽出されたmRNAに由来するプローブとハイブリダイズされる。かかるプローブが、1つの特定の状態に特異的な選択的スプライシングを受けた形態と優先的にハイブリダイズするか否かに応じて、患者は、モデルを定義するのに当初役立った標準的処置に対し応答性をもつ被験者と応答性をもたない被験者に分割されうる。
【0131】
この点において、本発明は同様に、テスト化合物又は処置に対する患者の応答を測定又は評価するための方法において、
− 前記化合物/処置に対する応答性をもつ生物学的試料及び前記化合物/処置に対する応答性をわずかしか又は全くもたない生物学的試料からのcDNAとRNAの間の差異のあるライブラリーを、
− 患者の病的生物学的試料に由来する核酸調製物とハイブリダイズさせること、及び
− 異なるライブラリーでのハイブリダイゼーションの範囲を見極めることにより患者の応答性を評価すること、
を含む方法にも向けられている。
【0132】
薬学ゲノミクスにおける質的差異のあるスクリーニングの有用性の好ましい一例が、抗腫瘍化合物で処置された時点(例えば遺伝子療法による野生型p53タンパク質についてコードするcDNAの移入)で退行を示すもの及びかかる処置に対し応答性をもたないものという、同じ組織学的由来の2つの腫瘍の間の質的な差異のあるスクリーニングによって例示されている。これら2つの状態間の質的な差異のあるライブラリーを構築することから導かれる第1の利点は、これらのライブラリーを構成しているクローンを分析することにより、第1のモデル内では見られ第2のモデル内には不在であるように、どの分子メカニズムが退行中に惹起されるかを測定することができるという点にある。
【0133】
その後、これらのライブラリーに由来するcDNAを支持するフィルター又はその他の支持体材料の使用により、前記処置に対するその応答を予測しなければならない腫瘍生検材料のmRNAに由来するプローブとのハイブリダイゼーションを行なうことが可能になる。結果をみることにより、患者を最適化された治療的投薬計画に割当てることができる。
【0134】
この方法の1つの特定例は、p53腫瘍抑制遺伝子療法に対する腫瘍応答性を測定することから成る。実際には、患者及び腫瘍によってこのタイプの処置に対する応答性に多少の差があるということが報告されてきた(Roth et al.,(1995)Nature Medicine,2:958)。従って、処置を最適化し実施中の臨床的試行への患者の参入に関して最良の選択を行なうために、腫瘍のタイプはどれか及び/又は野生型p53遺伝子療法に対しどの患者が感受性をもつかを測定できることがきわめて重要である。有利には、本発明の方法は、p53に対し応答性をもつ細胞及び応答性をもたない細胞の質的な特徴に特異的なライブラリーを提供することによって手順を単純化することを可能にする。p53に対し感受性をもつか又は耐性をもつ細胞モデルの例は、例えばSabbatini et al.(Genes Dev.,(1995),9:2184)又はRoemer et al.(Oncogene,(1996),12:2069)によって記述されている。患者の生検試料に由来するプローブとこれらのライブラリーのハイブリダイゼーションは、患者の応答性の評価をより容易にすることになる。さらに、特異的ライブラリーは、p53の応答性に関与する核酸の同定を可能にすることになる。
【0135】
従って、本出願は同様に、少なくとも1つの薬学的作用物質に対する応答性が異なる病理試料又は病理モデルからの差異のあるスクリーニングライブラリーの確立にも向けられている。これらのライブラリーは、以上で定義されるように、制約された、複合の又は自己由来のライブラリーでありうる。本出願は同様に、当業者にとって既知のフィルター又は支持体材料(ニトロセルロース、ナイロン…)上でのこれらのライブラリーの展延にも関する。有利には、これらの支持体材料はチップであってもよく、このチップはかくして薬学ゲノムチップと定義される。本発明はさらに、病理試料がさまざまな処置に対し異なる形で応答するよう導くメカニズムを解明する目的でかかるライブラリーを形成する異なるクローンの配列測定データを運用する可能性、ならびに、これらのライブラリーを定義するのに当初用いられた標準的な処置に対する応答性を予測したい考えられている病的状態に由来する生検組織に由来するプローブとのハイブリダイゼーションを行なうためのかかるライブラリーの使用にも関する。
【0136】
本発明はかくして、スプライシング形態及び/又はパターンの変動が薬学ゲノムマーカーの供給源すなわち、患者が処置に対し応答する能力及び要領を測定するマーカーの供給源であるということを記述している。この点において、本発明はかくして、さらに、薬学ゲノムマーカーの供給源としての、選択的スプライシング(スプライセオソーム分析)により生成されたアイソフォームタンパク質の個体間可変性の使用にも向けられている。本発明は同様に、薬学ゲノムマーカーの供給源としての、処置により誘発されたスプライシング修飾の使用にも関する。かくして以上で説明したように、本発明のDATAS方法は、2つの生物学的試料間で発生する質的差異を表わす核酸を生成することを可能にする。かかる核酸又はその誘導体(プローブ、プライマー、相補的酸など)は、処置に応答するその能力及び要領又は一定の所定の処置/疾病に対するその個体素因を立証する目的で、被験体のスプライソソームを分析するのに使用することができる。
【0137】
これらのさまざまな一般的例は、遺伝的毒性、遺伝薬理学及び薬学ゲノミクスの研究ならびに潜在的な診断又は治療用標的についての研究における質的な差異のあるスクリーニングライブラリーの有用性を例示している。かかるライブラリーは2つの病態生理学的状況の間で発生する質的差異をクローニングすることから誘導される。これらの質的差異を表わすcDNAのもう1つの用途は、その特徴を上述したゲノムDNAライブラリーをスクリーニングするように設計されたプローブを生成することにあることから、かかるアプローチは同様に、遺伝的毒性、遺伝薬理学及び薬学ゲノミクスのあらゆる研究のためならびに遺伝子同定のためにも実現可能である。例えば遺伝的毒性研究においては、その挿入サイズによって単一のイントロン又は単一のエキソンに統計的に制約されているゲノムクローンは、基準細胞又は組織試料と基準毒性化合物により処置された同じ細胞又は組織の間の質的な差異のある分析に由来するDATASプローブとのそのハイブリダイゼーションに従ってフィルター上に配置される。異なる毒性クラスを表わすかかるクローニングがひとたび選択された時点で、次にこれらを、その毒性を評価すべき化合物で処置された同じ組織試料又は同じ細胞個体群の完全なメッセンジャーRNAに由来するプローブとハイブリダイズさせることができる。
【0138】
本発明のその他の利点及び実際的利用分野は、限定的な意味なく例示を目的として与えられている以下の例からさらに明確になることだろう。本発明の応用分野は、図7に示されている。
【0139】
本発明の例及び説明においては、以下のフリーテキストを含む配列表からの配列が参考にされている。
<223>OLIGO
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【0140】
実施例
1.1本鎖cDNAを用いたRNA中の選択的スプライシング及びその他の質的修飾の差異のあるクローニング
1方が正常(mN)でありもう1方が疾病に由来する(mP)ものである2つの状態に対応するメッセンジャーRNAを、生検試料又は培養細胞から分離する。これらのメッセンジャーRNAを、逆転写(RT)を用いて相補的DNA(cN)及び(cP)へと変換させる。次に液相でmN/cP及びcN/mPハイブリッドを調製する(cN/mPの形成を導くいずれかのケースを例示する図2のダイアグラムを参照のこと)。
【0141】
これらのハイブリッドは有利には、継続的に熱循環に付されるフェノールエマルジョン(PERT技術又はフェノールエマルジョンDNA再会合技術)の中で調製される(Miller, R.,D. 及び Riblet, R.,(1995),Nucleic Acids Research, 23(12):2339−340)。標準的には、このハイブリダイゼーションは、水相(120mMのリン酸ナトリウム緩衝液、2.5MのNaCl、10mMのEDTA)及び水相の8%を占め2回精製されたフェノールから成る有機物で形成されたエマルジョンの中で、0.1〜1μgの間のポリA+RNAと0.1〜2μgの相補的DNAを用いて実施される。
【0142】
ヘテロ2本鎖を得るためには、もう1つの方法も有利に利用される:すなわち、逆転写反応の後、新たに合成されたcDNAを排除クロマトグラフィーにより、ビオチニル化オリゴdTプライマーから分離する。0.1〜2μgのこのcDNAを、0.3Mの酢酸ナトリウム及び2体積のエタノールの存在下で0.1〜1μgのポリA+RNAで同時沈降させる。これらの同時沈降された核酸を、80%のホルムアミド、40mMのPIPES(ピペラジンビス(2−エタンスルフォン酸))pH6.4、0.4MのNaCl及び1mMのEDTAから成る30μlのハイブリダイゼーション緩衝液中に取り上げる。
【0143】
溶解状態の核酸を10分間85℃で熱変性させ、その後40℃で最低16時間、最高48時間、ハイブリダイゼーションを実施する。
【0144】
ホルムアミドハイブリダイゼーション手順の利点は、それがcDNA及びRNAストランド対合のためのより選択性の高い状態を提供するということにある。
【0145】
これら2つのハイブリダイゼーション技術の結果として、その塩基対合の範囲が全cDNAを合成するRTの能力によって左右されRNA/DNAヘテロ2本鎖分子が得られる。観察されたその他の1本鎖構造は、研究中の2つの病態生理学的状態を区別する選択的スプライシングに対応するRNA(及びDNA)領域である。
【0146】
本方法は、このとき、かかるスプライスループが支持している遺伝情報を特徴づけすることを目的とする。
【0147】
このためには、ヘテロ2本鎖分子を、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズを用いた(ビオチニル化されたオリゴdTでプライミングされた)cDNAの捕捉によって精製する。有利には、これらのビーズは、磁気セパレータの作用によりヘテロ2本鎖構造内に組込まれていないRNAから分離することを可能にしている磁気特性をもつビーズである。かかるビーズ及びかかるセパレータは市販されている。
【0148】
手順のこの工程において、RNAとのハイブリダイゼーションに組込まれていないcDNA及びヘテロ2本鎖分子が分離される。次にこの材料を、cDNAとハイブリダイズされたRNAの領域を選択的に加水分解することになるRNase Hの作用に付す。この加水分解の産物は、一方ではcDNAであり、他方では、不完全な逆転写酵素反応の結果としてのハイブリダイズされていない領域又はスプライスループに対応するRNAフラグメントである。RNAフラグメントは、以上で記述したものと同じ実験的手順に従った磁気分離及び汚染性RNase活性をもたないDNaseでの消化によって、DNAから分離される。
【0149】
1.1. rb 2遺伝子のスプライシング変異体についてのDATAS方法の確証
このアプローチの実施可能性については、一方ではGrb2のコーディング領域に対応するRNA及びGrb3.3のコーディング領域に相補的な1本鎖cDNAを用いて、in vitro系内で実証された。Grb2遺伝子は、651個の塩基対の読取り枠をもつ。Grb33は、選択的スプライシングによって生成され、grb2のSH2機能的ドメイン内の121の塩基対の欠失を含むgrb2のアイソフォームである(Fath et al.,(1994),Science 264:971−4)。Grb2及びGrb33RNAは、RiboMaxキット(Promega)を用いてT7プロモータにより駆動されるGrb2又はGrb33コーディング配列を収容するプラスミドから、当業者にとって既知の方法によって合成される。産物の分析は合成が均質であることを示している(図8A)。視覚化を目的として、Grb2RNAは同様に、Ribo Probeキット(Promega)を用いてインビトロ転写中に標識づけされた塩基を取込むことによって放射線標識づけされた。Grb2及びGrb33cDNAは、Superscript IIキット(Life Technologies)及びGrb2配列(618−639)の補体に対応するGrb2及びGrb33に共通のビオチニル化されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、以上で得られた合成RNA産物から逆転写によって合成された。供給業者の指示事項(Promega, Life Technologies) に従ってRNA及びcDNAを処置し、排除カラム(RNaseを含まないSephadex G25又はG50,5Prime, 3Prime)上で精製し、分光測光法により定量化した。
【0150】
DATASの第1の工程は、標識づけされたGrb2RNAを、80%のホルムアミド、40mMのPIPES(pH6.4)、0.4MのNaCl、1mMのEDTAを含むハイブリダイゼーション緩衝液30μl中で、
1.ビオチニル化された grb33cDNA 100ng、
2.ビオチニル化された grb2 cDNA 100ng、
3.水
と懸濁状態で組合わせることによって実施した。核酸を10分間85℃で加熱して変性させ、その後40℃で16時間ハイブリダイゼーションを実施する。ストレプトアビジンビーズ上での捕捉の後、試料を上述のようにRNase Hで処置する。
【0151】
これらの工程は、6%のアクリルアミドゲル上での電気泳動、及びそれに続く、標識づけされたgrb2RNAに由来する種の定性化及び定量化を可能にする Instant Imager(Packard Instruments)でのゲルの処理によって分析される(図8B)。かくして、レーン2、3及び4は、grb2/grb33及びgrb2/grb22本鎖分子が定量的に形成されることを示している。grb2/grb33複合体の移動はgrb2RNAのもの(レーン2)に比べ緩慢であり、一方grb2/grb2複合体のものは比較的高速である(レーン3)。レーン5、6及び7は、ストレプトアビジンビーズにより保持されない試料に対応し、grb2/grb33及びgrb2/grb2複合体の80%がビーズにより捕捉され、一方ビオチニル化されていないgrb2RNA単独が、ビーズ上清内でのみ発見されたことを示している。ブロモフェノールブルー(BPB)よりも速く移動する遊離ヌクレオチドに加えて、RNase Hでの処置は、キシレンシアノールブルー(XC)の下で移動する種(図中矢印で示されている)を放出し、しかも、これは、grb2/grb2複合体及びgrb2RNAに対応するレーン9及び10に比べgrb2/grb33に対応するレーンにおいて特異的に起こっている。レーン11、12及び13は、遊離ヌクレオチドを除去するため排除カラムの中に試料を通過させた後のレーン8、9及び10に対応する。レーン8及び11で見られる移動は、grb2をgrb33と区別する121−ヌクレオチドの欠失に対応するRNA分子について予想されたものである。
【0152】
この結果は明らかに、2つのスプライシングアイソフォームタンパク質に由来する2つの配列の間のヘテロ2本鎖分子の形成によって生成されるRNAループを得ることが可能であることを示している。
【0153】
1.2.健康な及び毒性の状態にある肝細胞の質的ライブラリーを生成するためのDATAS方法の応用
さらに複雑な状況が検討された。分子の毒性を予測する手段としてのDATAS技術の応用の範囲内で、ヒト肝細胞系統HepG2を18時間0.1Mのエタノール中で処置した。処置を受けた又は受けなかった細胞からRNAを抽出した。上述のDATAS変形形態(ビオチニル化されたSScDNAの調製、液相での交差ハイブリダイゼーション、種を分離するための磁界の適用、RNase H消化)を、基準状態(又は状態A)下の未処置細胞及びテスト状態(又は状態B)下の処置済み細胞で実施した(図9)。抽出されたRNAは放射線標識づけされなかったため、RNase H消化によって生成されたRNAは、T4ポリヌクレオチドキナーゼ及びガンマーP32ATPを用いて、標識づけされたリン酸塩でRNA5´リン酸塩を置換するべく交換反応を実施することによって視覚化された。これらの標識づけされた産物を次にアクリルアミド/尿素ゲル上に投入し、Instant Imager(Packard instruments)を用いた露呈により分析した。A/B及びB/Aハイブリダイゼーションに由来する複合体サインを次に、ゲル内でゆっくりと移動し、大型核酸配列に対応する第1のシグナルグループ及び25〜500ヌクレオチドの間で移動する第2のシグナルグループを用いて視覚化することができた。これらのサインは、A/A状態下ではその強さがはるかに低く、このことはすなわち、A/B及びB/Aシグナルの存在という形で現われるRNAスプライシング事象の再プログラミングをエタノールが誘発しうるということを示唆している。
【0154】
1.3.同定された核酸からのライブラリーのクローニング及び調製
このとき、RNase Hの作用に対する耐性をもつこれらのRNAフラグメントをクローニングするのに、いくつかの実験代替案を考慮することができる:
A.第1のアプローチは、かかるループを分離しクローニングすることから成る(図3)。このアプローチに従うと、当該技術分野で既知の状態に従ってRNAリガーゼを用いて各々の端部にオリゴヌクレオチドを連結する。このときこれらのオリゴヌクレオチドはRTPCRを行なうためのプライマーとして使用される。PCR産物は、問題の2つの生理学的状態に対応する完全な相補的DNAプローブを用いてクローニングされスクリーニングされる。いずれかのプローブの1つと優先的にハイブリダイズするクローンのみが、次に配列測定されかつ/又はライブラリーの生成に使用されるスプライスループを含有する。
B.第2のアプローチ(図4)は、少なくとも部分的にランダムなプライマーを用いて開始される、RNase H消化によりヘテロ2本鎖構造から放出された1本鎖RNA上で逆転写反応を実施することから成る。かくして、これらは、ランダムな3´及び5´配列を伴うプライマー、ランダムな3´末端及び定義された5´配列を伴うプライマー、或いはさらに半ランダムオリゴヌクレオチドすなわち変性領域と定義された領域を含むオリゴヌクレオチドでありうる。
【0155】
この計画に従うと、かくしてプライマーは、1本鎖RNAに沿った任意の場所か又はセミランダムプライマーの選択により測定される各々のひとつづきの塩基においてハイブリダイズすることかできる。このとき、スプライスループ誘導された配列を得るべく上述のオリゴヌクレオチドに従ってプライマーを用いてPCRが実施される。
【0156】
図10(レーン1〜12)は、複数のDATAS実験内で得られ、以下の半ランダムオリゴヌクレオチドの使用に結びつけられたPCRフラグメントのアクリルアミドゲル分析を提示している:
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGT(配列番号1,X=T)
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGA(配列番号1,X=A)
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGC(配列番号1,X=C)
GAGAAGCGTTATNNNNNNNAGGG(配列番号1,X=G)
【0157】
同じオリゴヌクレオチドを用いてただし鋳型として完全cDNAを用いて(レーン13)得られたシグナルの複雑性とこれらの結果を比較すると、DATASが質的差異に対する情報をろ過(プロフィール)することを可能にすることが実証される。
【0158】
この変形形態は、上述のプロトコル(例1.1)に従ったgrb2RNA/grb331本鎖cDNA2本鎖分子のRNase H消化によって生成されたgrb2RNAドメインに対応する事象をクローニングするために使用された(例1.1)。それを行なうために、モデルGAGAAGCGTTATNNNNNNNWXYZ(なお配列中、Nは以上で定義したとおりであり、W、X及びYは各々、定義された固定塩基を表わし、Zは定義された塩基又は3´−OH基を表わす、配列番号3)から選ばれ、grb2欠失内でフラグメントを増幅するべく選定された配列GAGAAGCGTTATNNNNNNNNTCCC(配列番号2)をもつオリゴヌクレオチドが使用され、PCRフラグメントの生成が可能となり、このフラグメントはクローニング及び配列測定の後、まさにgrb2欠失したドメイン(grb2内の194−281)に由来するものであることが示された。
【0159】
従ってこれら2つのアプローチは、プローブとして又は質的な差異のあるcDNAライブラリーを構築するために用いることのできる、テスト対象である両方の状態下での差異のあるスプライシングを表わす核酸組成物の産生を可能にする。質的差異を表わすプロフィールされたcDNAライブラリーを生成するDATAS技術の能力については、以下の例1.4で例示されている。
【0160】
1.4 ヒト内皮細胞を表わすプロフィールされたライブラリーの産生
この例は、ヒト内皮細胞系統(ECV304)を用いて実施された。遺伝子発現の定性分析は、一方では成長中の細胞から、又他方ではアノイキス(付着支持体を除去することにより誘発されたアポストシス)プロセス中の細胞から抽出されたサイトゾルのRNAを用いて達成された。
【0161】
ECV細胞を、Earle塩(Life Sciences)を追加した199培地内で成長させた。ポリHEMA処置された培養皿上で4時間の経過によりアノイキスを誘発させた。RNA調製のためには、Nonidet P−40を含む緩衝液内で細胞を溶解させた。その後、遠心分離により核を除去する。その後、Quiagen社の指示に従い、RneasyシリカマトリクスにRNAを特異的に固定するべく、細胞質溶液を調整した。洗浄後、完全RNAをDEPC処置された水の中で溶離させる。Dynabeadsオリゴ(dT)25磁気ビーズ(Dynal)上での分離により完全RNAからメッセンジャーRNAを調製する。固定用緩衝液中でビーズを懸濁させた後、室温で5分間、完全RNAをインキュベートさせる。磁気分離及び洗浄の後、ビーズを溶離緩衝液中にとり上げ、65℃でインキュベートしメッセンジャーRNAを遊離させる。
【0162】
第1のDNAストランドを、Super Script II又はThermo Script逆転写酵素(Life Technologies)及びオリゴ(dT)プライマーを用いてメッセンジャーRNAから合成する。RNase H消化の後、遊離ヌクレオチドを、Sehpadex G50(5Prime−3Prime)カラムの中に通過させることによって削除する。フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈降の後、試料をUV吸光度により定量する。
【0163】
所要量のRNA及びcDNA(この場合は各々200ng)をプールし、エタノール沈降させる。試料を、脱イオン化ホルムアミド(相反する指示のないかぎり80%(v/v))で補足されたハイブリダイゼーション緩衝液(40mMのHepes(pH7.2)、400mMのNaCl、1mMのEDTA)の中に30μlの体積で取り込む。70℃で5分間変性した後、試料を40℃で一晩インキュベートする。
【0164】
ストレプトアビジンビーズ(Dynal)を洗浄しその後、固定用緩衝液(2X=10mMトリス−HCl(pH7.5)、2M NaCl、1mM EDTA)中で回復させる。ハイブリダイゼーション試料を、水で200μlの体積になるまで希釈し、その後200μlのビーズに適合させ、30℃で60分間インキュベートする。ビーズの磁気捕捉及び洗浄の後、これを150μlのRNase H緩衝液中に懸濁させ、37℃で20分間インキュベートさせる。磁気捕捉の後、ハイブリダイズされなかった領域を上清内に遊離し、この上清をDnaseで処置し、次に酸性フェノール/クロロホルムで抽出しエタノールで沈降させる。少量の核酸のエタノール沈降を、市販の重合体SeeDNA(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて実施し、大幅に希釈した溶液(ng/ml程度)からの核酸の定量的回収を可能にする。
【0165】
RNase H消化由来のRNA試料からのcDNAの合成は、ランダムヘキサヌクレオチド及びSuperscript II逆転写酵素を用いて実施される。その後、RNAをRNase HとRNase T1の混合物で消化させる。Glass MAX Spinカートリッジを用いてcDNAからプライマー、取込まれていないヌクレオチド及び酵素を分離する。その後スプライスループに対応するcDNAを、本発明中で既に説明した半ランダムオリゴヌクレオチドを用いて、PCRに付す。この場合、選択されたオリゴヌクレオチドは以下のとおりである: GAGAAGCGTTATNNNNNCCA(配列番号4)
【0166】
PCR反応は、次のサイクルを30サイクル、Taqポリメラーゼを用いて行なわれる:
・ 初期変性:1分間94℃
・ 30秒間 94℃
・ 30秒間 55℃
・ 30秒間 72℃
・ 最終的伸長:5分間 72℃
【0167】
PCR産物は、Taqポリメラーゼの活性に由来するフラグメントのクローニングを単純化するように3´末端で浮遊性Tを用いてpGEM−Tベクター(Promega)内にクローニングされる。コンピテントJM109細菌(Promega)内での形質転換の後、結果として得たコロニーをニトロセルロースフィルターへと移し、一方では成長中の細胞から又他方ではアノイキス中の細胞からの完全cDNA上で行なわれたPCRの産物に由来するプローブとハイブリダイズさせる。同じオリゴヌクレオチド、GAGAAGCGTTATNNNNNCCAをこれらのPCR反応でも使用する。第1の実験的実施形態では、アポトーシス中の細胞からのプローブと優先的にハイブリダイズする34のクローン及び成長中の細胞からのプローブを優先的にハイブリダイズする13のクローンが単離された。
【0168】
これらの13のクローンのうち、3つのクローンは、SHCタンパク質のSH2ドメインに由来する同じcDNAフラグメントを含有する。
【0169】
このフラグメントは、以下の配列を有する:
CCACACCTGGCCAGTATGTGCTCACTGGCTTGCAGAGTGGGCAGCCAGCCTAAGCATTTGCACTGG(配列番号5)
【0170】
SHC SH2ドメイン(5´オリゴ:GGGACCTGTTTGACATGAAGCCC(配列番号6);3´オリゴ:CAGTTTCCGCTCCACAGGTTGC(配列番号7))をフランキングするPCRプライマーの使用により、アノイキス中のECV細胞内で特異的にみられるSHC SH2ドメインの欠失の特徴づけが可能となった。このプライマー対を用いて、無傷のSH2ドメインを含む382塩基対のcDNAフラグメントに対応する単一の増幅産物が、対数増殖するECV細胞からのRNAから得られる。アノイキス中の細胞からのRNAでPCRが実施された時点で、さらなる287塩基対のフラグメントが観察される。この付加的なフラグメントは、SCHメッセンジャーに由来する、ただし欠失を伴うメッセンジャーRNAに由来する。
【0171】
この欠失は以下の配列を有する:
GTACGGGAGAGCACGACCACACCTGGCCAGTATGTGCTCACTGGCTTGCAGAGTGGGCAGCCTAAGCATTTGCTACTGGTGGACCCTGAGGGTGTG(配列番号8)。
【0172】
この欠失は、SHCタンパク質の52kDa及46kDa形態をコードするメッセンジャー読取り枠の塩基1198〜1293に対応する(Pelicci G. et al.,(1992), Cell, 70:93−104)。
【0173】
文献と合わせてSH2ドメインについての構造データから、かかる欠失が、リン酸化チロシンとの相互作用に関与するアミノ産を包含することからホスホチロシンに対する親和力の喪失を導く、ということがわかる(Waksman, G. et al.,(1992), Nature, 358:646−653)。SHCタンパク質は、そのSH2及びPTBドメイン(ホスホチロシン結合ドメイン)を介して異なるパートナーとリンクするアダプターであることから、この欠失は従って、我々が△SHCと呼んでいるSHCの未変性の負の優性形質を生成する。遺伝子が配列測定されたタンパク質のSH2ドメインは、2つのエキソン上に支持されることから、DATASにより同定された欠失がSHC遺伝子の選択的エキソンに対応する可能性は高い。
【0174】
△SHCのタンパク質及び核酸配列は、図17に示されている(配列番号9及び10)。
【0175】
SHC SH2ドメインは細胞増殖及び生存度に関与する数多くのシグナルのトランスダクションに関与することから、△SHC配列を試験することによって、SHCタンパク質に対するその負の優性特性及びさまざまな細胞シグナルと干渉するその能力を予測することが可能となる。
【0176】
本発明は同様に、この新しいスプライシングされた形のSHC、スプライシングに対応するタンパク質ドメイン、生物学的試料中でのその検出を可能にするあらゆる抗体又は核酸プローブ、及び例えば診断又は治療を目的としたその使用にも関する。
【0177】
本発明は特に、塩基1198〜1293に対応する少なくとも1つの欠失、より特定的には配列番号8の配列の欠失を含むあらゆるSHC変異体に関する。本発明はより特定的には、配列番号10の配列によってコードされる配列番号9の配列を有する△SHC変異体にも関する。
【0178】
従って、本発明は、上述の△SHC変異体及び/又は、生物学的試料中のSHC/△SHC比の何らかの変更を同定するあらゆる核酸プローブ、オリゴヌクレオチド又は抗体に関する。これは特に配列番号8の配列の全て又は一部分に相補的なプローブ又はオリゴヌクレオチド又はこの配列によりコードされるタンパク質ドメインに対し向けられた抗体であってよい。かかるプローブ、オリゴヌクレオチド又は抗体は、生物学的試料中のスプライシングされていない形態(例えばSHC)の存在を検出することを可能にする。
【0179】
この材料はさらに、スプライシングされた形態(例えば△SHC)に特異的なすなわち例えば(配列番号10の配列中でヌクレオチド1198のまわりに位置設定された)スプライシングの結果もたらされる接合領域に対応するプローブ、オリゴヌクレオチド及び/又は抗体と並行して使用することができる。
【0180】
かかる材料は、免疫抑制に関連する疾患(ガン、免疫抑制療法、エイズなど)の診断のために使用可能である。
【0181】
本発明は同様に、(i)(特に自己免疫疾患又は移植片拒絶及びガンにおける免疫寛容状態を誘発するための)SHCタンパク質内のスプライシングされたドメイン又は(ii) △SHCタンパク質により獲得された付加された機能を遮断することに基づく、あらゆる分子スクリーニング方法に関する。
【0182】
本発明はさらに、△SHCの治療的使用、そして特に、例えばSHCタンパク質の過リン酸化を実証できるガン性細胞又はガンの処置(ex vivo 又は in vivo)に向けられる。従ってこの点において、本発明は、△SHCをコードする配列を含むあらゆるベクター、特にウイルスベクターに関する。このベクターは、好ましくは哺乳動物、特にヒト由来の、平滑筋細胞、内皮細胞(再狭窄)、線維芽細胞(線維症)といったようなガン性のか又は成長中の細胞をトランスフェクションする能力を好ましくは有している。ウイルスベクターは、特にアデノウイルス、レトロウイルス、AAV、ヘルペスベクターなどにより例証される。
【0183】
2.2本鎖cDNAを使用したRNAの選択的スプライシング及びその他の質的修飾の差異のあるクローニング(図5)
標準的な分子生物学手順により、正常な(mN)及び病的な(mP)状態に対応するメッセンジャーRNA、ならびに対応する2本鎖相補的なDNA(dsN 及びdsP)が産生される。その後、70%のホルムアミドを含有する溶液中でmNをdsPと、又mPをdsNとハイブリダイズさせることによってR−ループ構造を得る。N及びPの状態間の差異のあるようにスプライシングされた核酸ドメインは、2本鎖DNAの形にとどまることになる。置換された1本鎖DNAは次に、ホルムアミドの除去の時点でRNAストランドのさらなる置換を回避すへるべく、グリオキサールで処置される。ホルムアミド及びグリオキサールの除去及びRNase Hでの処置の後、ハチタイプの構造が得られ、ここで対合していない1本鎖DNAは、ハチの羽根を表わし、問題の対合した2本鎖ドメインは、ハチの体を思い起こさせる。ヌクレアーゼS1又はヤエナリヌクレアーゼといったような1本鎖DNAを特異的に消化する酵素を使用することにより、次のクローニングされ配列測定される2本鎖形態にとどまっていたDNAの分離が可能になる。この第2の技術は、このドメインのRNAフィングープリントを生み出す第1の手順に比べたとき、問題のドメインの2本鎖DNAフィングープリントの直接的形成を可能にする。
【0184】
このアプローチは、上述のgrb2/grb33モデル上で実施された。Grb2 2本鎖DNAは、grb2の配列(1−22)及びgrb2の相補的配列(618−639)に対応する2つのヌクレオチドプライマーを用いてgrb2 1本鎖cDNAのPCR増幅により産生された。このPCRフラグメントはアガロースゲル上で精製され、アフィニティカラム上で清浄され(Jet Quick, Genomed)、分光測定法により定量化された。同時に、Ribo Maxキット(Promega)を用いて、T7プロモータの制御下でgrb2又はgrb33cDNAを収容するプラスミドベクターから、grb2及びgrb33読取り枠に対応する2つの合成RNAが産生された。供給業者により指示されたとおりにRNAを精製し、排除カラム(Sephadex G50,5prime−3prime)上で清浄した。600ngの2本鎖grb2DNA(1−639)を、100mMのPIPES(pH7.2)、35mMのNaCl、10mMのEDTA、70%の脱イオン化ホルムアミド(Sigma)という緩衝液中で、3回の別々の反応において次のものと組合わせた:
1.3μgのgrb33RNA
2.3μgのgrb2RNA
3.水。
【0185】
試料を56℃まで加熱し、次に、10分毎に−0.2℃の増分で44℃まで冷却した。次にこれらを4℃で保管する。アガロースゲルの分析は、対照レーン3に比べてレーン1及び2の変化した移動パターンを明らかにし(図11A)、新しい複合体が形成されたことを表わしている。その後、試料を12℃で2時間、脱イオン化でグリオキサール(Sigma)(5%v/v又は1M)で処置する。その後複合体をエタノール(0.1MのNaCl、2容量のエタノール)で沈降させ、70%のエタノールで洗浄し、乾燥させ、その後水中に再懸濁させる。次に、これをRNase H(Life Technologies)により処置し、その後1本鎖DNAに特異的な酵素により処置する。ヌクレアーゼS1及びヤエナリヌクレアーゼは、このような特性をもち、市販されている(Life Technologies, Amersham)。かかる消化(酵素が供給された緩衝液中で5分間のインキュベーション)をアガロースゲル上で分析した(図1B)。唯一、反応1(grb2/grb33)に由来する複合体からのみ、有意な消化産物が得られた(図11B、レーン7及び10)。この消化は、ヤエナリヌクレアーゼ(レーン10)の場合よりもヌクレアーゼS1(レーン7)の場合により完全であると思われる。かくして、100塩基対よりもわずかに大きなサイズに対応するバンド(レーン7上で矢印により表わされている)が精製され、pmos-Blueベクター(Amersham)内にクローニングされ、配列測定された。このフラグメントは、grb33内で欠失されたgrb2の120塩基対のドメインに対応する。
【0186】
このアプローチは今、当業者にとって既知の方法に従って産生された完全メッセンジャーRNA個体群及び完全2本鎖cDNA個体群から出発して、実現することができる。基準状態に対応するRNAは、テスト状態に由来する2本鎖cDNAとハイブリダイズされ、その逆も成り立つ。上述のプロトコルを適用した後、50〜300塩基対の範囲内のサイズに対応するバンドを分離し精製するべくアガロースゲル上に消化物をかける。かかるバンドは次に、質的差異のある事象が富化されたインサートのライブラリーを生成するべく、ベクター(pMos-Blue, Amersham)内でクローニングされる。
【0187】
3.質的差異のあるスクリーニングに由来するライブラリーの構築
以上で記述した2つの例は2つの所定の病態生理学的状態間で発生する差異のあるようにスプライシングされた配列の全て又は一部分を表わすcDNAのクローニングを導く。これらのcDNAは、プラスミド又はファージベクター内へのかかるcDNAの挿入によるライブラリーの構築を可能にする。これらのライブラリーは、ニトロセルロースフィルター、又はチップ又はバイオチップ又は膜といったような当該技術において既知のその他のあらゆる支持体材料上に被着されうる。上述のライブラリーは、光から離して、低温の場所に保管することができる。これらのライブラリーは、従来の技術によりひとたび被着され支持体材料上に固定されたならば、プラスミド又はファージの複製を可能にした宿主細菌を除去するべく化合物によって処置され得る。これらのライブラリーは同様に、有利には、選択的スプライシング事象に由来する配列のみをフィルター上に被着させるように、クローニングされたcDNAに対応するもののPCRによって調製されたcDNAフラグメントで構成されていてよい。
【0188】
質的差異のあるスクリーニングの特長の1つでありかつ独創的な特徴の1つであるのは、この方法が有利にも、2つの所定の状態間で発生する質的差異の全アレイを表わす差異のあるライブラリーを1つだけでなく2つ(「ライブラリー対」)導くという点にある。特に、本発明の差異のあるスプライシングライブラリーの1つは、基準生理学的状態に比べたテスト生理学的状態のユニークな質的マーカーを表わしているのに対し、もう1つのライブラリーは、テスト生理学的状態との関係における基準生理学的状態のユニークな質的マーカーを表わしている。この一対のライブラリーは同様にライブラリー対又は「差異のあるスプライシングライブラリー」とも呼ばれる。
【0189】
質的差異のあるスクリーニングの利益の1つは、次の節で記述するようにそれが1つの化合物の毒性を評価することを可能にするという点にあるため、この技術の実現の一つの好例は、一方では未処置のHepG2細胞、他方ではエタノール処置された細胞に特異的な配列に対応するcDNAクローンを得るためのDATASの使用にある。後者の細胞は、1Mのエタノールに対する18時間の露呈から出発してヌクレオソーム内のフラグメント化を介してDNAの分解及び細胞毒性の兆候を示す。エタノール毒性の早期マーカーを得るため、メッセンジャーRNAを、未処置細胞及び、18時間0.1Mのエタノールで処置した細胞から調製した。1本鎖cDNAとRNase Hを使用するDATAS変形形態の実施後、結果として得たクローニング済みのcDNAを、PCRで増幅させ、アガロースゲル上で電気泳動に付し、当業者にとって既知の技術に従ってナイロンフィルターに移した。一方では未処置状態に特異的な質的差異、他方ではエタノール処置された細胞に特異的な配列に特異的な各々のクローンセットについて、2つの同一のフィルター複製物を調製する。かくして、各クローンセットの指紋は、一方では未処置を細胞に特異的なプローブと、又他方では18時間0.1Mのエタノールで処置された細胞に特異的なプローブとハイブリダイズさせられる。
【0190】
図12に示された得られた差異のあるハイブリダイゼーションプロフィールは、DATAS技術によって提供された消去の質の評価を可能にする。かくして、未処置細胞(NT)からのmRNAの処置済み細胞(Tr)からのcDNAでのハイブリダイゼーションから誘導され、未処置状態に特異的な質的差異に対応するはずであるクローンは、未処置細胞の完全メッセンジャーRNA個体群を表わすプローブと優先的にハイブリダイズする。換言すると、RNA(Tr)/cDNA(NT)ヘテロ2本鎖分子に対するRNase Hの作用に対する耐性をもつ産物に由来するクローンは、処置済み細胞からの完全メッセンジャーRNAに由来するプローブと優先的にハイブリダイズする。
【0191】
一方では処置済み状態に又他方では未処置状態に特異的な2つのクローンセットは、2つの全く異なる細胞状態の特徴である質的な差異のあるライブラリーの一例を表わす。
【0192】
4.質的差異のあるライブラリーの用途と利益
本発明の差異のあるスプライシングライブラリーの潜在的利用分野は特に図13〜15に示されている。かくして、これらのライブラリーは、次のことのために有用である。
【0193】
4.1 化合物の毒性を評価する(図13)
この例では、基準状態A、毒性状態をBと呼ぶ。異なる時間さまさまな濃度の基準毒性化合物の存在下で状態Aを処置することによって毒性チャートを得る。毒性チャートの異なるドットについて、質的差異のあるライブラリー、すなわちこの例では限定されたライブラリーrA/rB及びrB/cAを構築する(ライブラリー対)。有利には、ライブラリー対を支持体上に被着させる。次に、異なる用量のテスト化合物、すなわち製品X、Y及びZで処置したもとの生物学的試料が誘導したプローブで支持体をハイブリダイズさせる。テスト化合物の潜在的毒性を測定するため、ハイブリダイゼーション反応を展開させる:この例では、製品Zはきわめて毒性が高く、製品Yは中間プロフィールを示す。毒性計算表チャートを構築することの実施可能性は、エタノール処置及びHtpG2細胞が関与する質的差異のあるスクリーニングライブラリーの構築に関する上述の例で明白に示されている。
【0194】
4.2 薬学組成物の効能の評価(図14)
この例では、本発明に従った制約されたライブラリー対を、病的モデルB及び健康なモデルA(又は基準活性製品で処置された病的モデル)から出発して構築する。任意には差異のあるライブラリーrA/cB及びrB/cAを、支持体上に被着させる。このライブラリー対は、両方の状態の間に発生するスプライシングの差を完全に表わしている。このライブラリー対は、テスト化合物の効力を評価することすなわち、病的タイプのプロフィール(rB/cA)から出発して「健康様の」プロフィール(rA/cB)を生成するその能力を見極めることを可能にする。この例では、ライブラリー対を、テスト化合物で処置された又はされない状態A及びBから調製されたプローブでハイブリダイズさせる。得ることのできるハイブリダイゼーションプロファイルは図14に示されている。この利用分野の実施可能性は、健康な状態及び毒性状態の特徴である質的差異のあるライブラリーの上述の構築のものと同一である。毒性状態は病的状態と置換えられ、基準又は病的状態と多少の差こそあれ優先的にハイブリダイズするプローブを産生するテスト化合物の能力が評価される。
【0195】
4.3 処置に対する病的試料の応答の予測(図15)
この例では、本発明に従った制約されたライブラリー対を、一定の所定の製品での処置に対する応答性をもつもの(例えば野生型p53遺伝子)(状態A)、及び応答しないもの(状態B)という2つの病的モデルから出発して構築する。このライブラリー対(rA/cB;rB/cA)を支持体上に被着させる。
【0196】
次にこのライブラリー対を使用して、同じ製品に対する病的テスト試料の感受性を測定する。その目的のため、基準処置に対する応答性を評価したい患者の生検組織に由来するプローブを用いて、このライブラリー対をハイブリダイズさせる。応答性ある生検試料及び非応答性の生検試料のハイブリダイゼーションプロフィールは図15に示されている。
【0197】
4.4 オーファンレセプターのためのリガンドの同定
膜又は核レセプターのそのリガンドによる活性化は、或る種のRNAのスプライシングにおける調節上の欠陥を誘発する。本発明のDATAS方法によるこれらの事象の同定は、レセプター特にオーファンレセプターのための天然又は合成のリガンドを探索するために使用可能な、レセプタ活性化を監視する手段(マーカー、ライブラリー、キットなど)を提供する。この利用分野に従うと、調節上の欠陥と結びつけられるマーカーが同定され支持体上に被着させられる。異なる組成物及び/又はテスト化合物によって処置された又はされない研究中のレセプターを(過剰)発現する完全細胞RNAが抽出され支持体とのハイブリダイゼーション反応においてプローブとして使用される。支持体上に被着されたマーカーの一部分さらには全部とのハイブリダイゼーションの検出は、問題のレセプターが活性化されたこと、従って対応する組成物/化合物が前記レセプターのリガンドを構成するか又は含有することを表わしている。
【0198】
4.5 治療上有利な標的の同定
これは、疾病又は病的モデルにおいてそのスプライシングが変化する遺伝子を同定することによって、及びより特定的には修飾されたエキソン又はイントロンを同定することにより達成される。このアプローチは、例えば成長、分化又はアポトーシスの現象が関与するあらゆる病態生理学的プロセス又は疾病において変化する機能的ドメインについてコードする配列を測定することを可能にするはずである。
【0199】
差異のあるようにスプライシングされた遺伝子を同定するための質的差異のあるスクリーニングがもたらす利益の1例は、野生型p53発現の誘発を介してのアポトーシス誘発のモデルに対するDATASの応用によって提供されている。この細胞モデルは、誘発可能なp53腫瘍抑制遺伝子発現系をトランスフェクションすることによって確立された。p53誘発されたアポトーシスと特異的に結びつけられる質的差異を同定するために、誘発された又は誘発されていない細胞に由来するメッセンジャーRNAから出発してDATASを実現した。これらの実験のためには、ヘテロ2本鎖形成のために、200ngのポリA+RNA及び200ngのcDNAを使用した。各々の交差ハイブリダイゼーションから約100クローンを得た。これらの細菌クローン、そして次にそれが含有しているcDNAフラグメントの、当初の状態からの完全なメッセンジャーRNAを表わすプローブを用いたハイブリダイゼーションは、細胞死を導く強力なp53誘発の間に特異的に発現される配列の同定を可能にした(図16)。
【0200】
これらのフラグメントは、エキソン又はイントロンから、メッセンジャーの質を変調させる配列を誘発し、それらが参加するか又は中断する機能的ドメインを提示し、細胞死を誘発又は誘導するための処置の標的としての資格をそれらに付与する。
【0201】
かかるアプローチは同様に、非アポトーシス状態とアポトーシス状態の間の差異のあるスプライシング事象全てを含むライブラリー対の構築を導く。このライブラリー対は、もう1つの病態生理学的状態又は一定の所定の処置に由来するプローブのハイブリダイズ能力をテストするために使用可能である。かかるハイブリダイゼーションの結果は、アポトーシスに向けてのテスト状態の遺伝子発現プログラムの潜在的掛り合いに関する表示を与えることになる。
【0202】
以上の記述から明らかであるように、本発明はさらに以下のものに関する:
− 本出願に記述された方法により同定された配列を認識し、病的状態に特徴的なものであることを特徴とするあらゆる核酸プローブ、あらゆるオリゴヌクレオチド、あらゆる抗体、
− 差異のあるスプライシングの結果としてのタンパク質が獲得した機能の阻害に基づくものであることを特徴とする、健康な状態と病的状態の間で発生する差異のあるようにスプライシングされたドメインをターゲティングするという特徴をもつスクリーニング検定を考案することによる、治療目的の有機分子の探究を目的とした、本書に開示されている技術を応用することから導かれた情報の使用、
− 遺伝子療法の利用分野のための本出願に記述された方法に由来する情報の利用、
− cDNAが定義された細胞シグナルトランスダクション経路のアンタゴニスト又はアゴニストとして挙動する、遺伝子療法により送達されたcDNAの使用、
− ・研究を目的とした診断手段又は試薬の商業的生産、
・治療向けの利用分野のための分子、ポリペプチド、核酸の生成又は探究、を目的とする、選択的エキソン又はイントロンの分子ライブラリーのあらゆる構築又は使用、
− 2つの異なる病態生理学的状態を区別する選択的スプライシング形態を特徴づけするため核酸プローブ又はオリゴヌクレオチドプライマーの設計をライブラリーが可能にすることを特徴とする、選択的エキソン又はイントロンのアレイを含有するコンピュータ化された全ての仮想ライブラリーのあらゆる構築又はあらゆる使用、
− 本発明の方法によって同定されクローニングされる選択的スプライシング産物と干渉する能力をもつポリペプチド、センス又はアンチセンス核酸又は化合物を含むあらゆる薬学的又は診断用組成物。
− 病気状態に固有の選択的スプライシング事象とは対照的に正常な状態を表わすスプライシングパターンを回復する能力をもつポリペプチド、センス又はアンチセンス核酸又は化合物を含む、あらゆる薬学又は診断用組成物。
【0203】
5.毒性化合物によるRNAスプライシング構築の調節喪失
この例は、化合物の毒性及び/又は効力を監視しかつ/又は測定するためのマーカーとして差異のあるスプライシング形態及び/又はプロフィールを使用することができるということを示している。
【0204】
RNAスプライシング調節の欠陥に対する毒性化合物の効果を以下のようにテストした。HepG2肝細胞を異なる用量の3つの毒性化合物(エタノール、カンプトセシン、PMA(ホルボール−12−ミリスタート−13−アセタート))で処置した。エタノールについては4時間と18時間、カンプトセシンについては4時間と18時間;PMAについては18時間と40時間という異なる時点で、2つの細胞毒性テスト(トリパンブルー、MTT)を実施した。
【0205】
トリパンブルーは、生きた細胞により取り込まれ得る染料である。顕微鏡で「青色」及び「白色」細胞を単に計数することによって、処置後の生存細胞の百分率すなわち生存率が得られる。実験項目は、同一状態三回で測定される。
【0206】
MTTテストは、可溶性テトラゾリウム塩(MTT)を不溶性ホルマザン沈降物へと変換する生存細胞の能力を測定する比色テストである。これらのダークブルーのフォルマザン結晶を溶解させ、550nmでの吸光度を測定することでその濃度を測定することができる。かくして、15万個の細胞を用いた24ウェルの皿の終夜播種とそれに続く毒性化合物を用いた細胞の処置の後、50μlのMTT(Sigma)を(PBS中5mg/mlの濃度で)添加する。ホルマザン結晶反応は、CO2インキュベータ(37℃、CO25%、湿度95%)内で5時間実施される。500μlの可溶化溶液(イソプロパノール−トリトンX−100(10%)中の0.1NのHCl)を添加した後、結晶を撹拌しながら溶解させ、550〜660nmでその吸光度を測定する。適切な対照を用いて、同一状態で三回測定を行なう(生存度、細胞死、ブランク)。
【0207】
アポトーシス又はプログラミングされた細胞死のテストも同じく、抗ヒストン抗体でのDNAフラグメント化の測定及びELISAによって行なわれた。Roche社からのCell Death ELISA Plusが使用された。
【0208】
これら3つのテストの結果(図18A、B、C)は以下の濃度が、測定されたIC50の値よりもはるかに低かったということを示している:
・エタノール;0.1M
・カンプトセシン;1μg/ml
・PMA;50ng/ml

【0209】
かくしてHep G2を、エタノールとカンプトセシンの場合は4時間、PMAの場合は18時間、これら3つの濃度のこれら3つの化合物で処置した。Rneasyキット(Quiagen)を用いて精製された完全RNAから出発してDynal-Oligo-(dT)ビーズ上でメッセンジャーRNAを精製した。プライマーとしてのランダム六量体及びSuperscript逆転写酵素(Life Technologies)を用いてこれらのメッセンジャーRNAからcDNAを合成した。
【0210】
これらの初期ストランドは、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCR増幅反応(94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 1分、30サイクル)の間鋳型として役立った:
MACH−α:
5´−TGCCCAAATCAACAAGAGC−3´(配列番号 NO;11)
5´−CCCCTGACAAGCCTGAATA−3´(配列番号 NO;12)
【0211】
これらのプライマーは、MACH−αの異なる記述されたアイソフォーム(それぞれ595,550及び343塩基対を増幅する1、2及び3)に共通の領域に対応する。MACH−α(Caspase-8)は、プログラミングされた細胞死に関与するプロテアーゼである(Boldin et al.,(1996),Cell, 85:803−815)。
BCL−X
5´−ATGTCTCAGAGCAACCGGGAGCTG3´(配列番号13)
5´−GTGGCTCCATTCACCGCGGGGCTG3´(配列番号14)
【0212】
これらのプライマーは、bcl-Xの異なる記述されたアイソフォーム(bcl−Xl,bcl−Xs,BCL−Xβ)に共通の領域に対応し(Boise et al.,(1993),Cell 74:597−608;U72398(Genbank))、これら3つのアイソフォームタンパク質のために単一の204塩基対のフラグメントを増幅するはずである。
FASR:
5´−TGCCAAGAAGGGAAGGAGT−3´(配列番号15)
5´−TGTCATGACTCCAGCAATAG−3´(配列番号16)
【0213】
これらのプライマーは、いくつかのFASRアイソフォームタンパク質に共通の領域に対応し、野生型形態FasRについては478塩基対のフラグメント、アイソフォーム△8については452塩基対そしてアイソフォーム△TMについては415塩基対に増幅するはずである。
【0214】
図19に示されている結果は、以下のことを表している:
・ カンプトセシンは、アイソフォームMACH−α1の発現の減少及びアイソフォームMACH−α3における増大を誘発する。
・ カンプトセシンは、新しいbcl−Xアイソフォーム(200塩基対近くの2重線内の上方バンド)の出現を誘発する。
・ カンプトセシンは、Fas△TMに対応しうるより短いアイソフォームの発現により置換されたfasレセプタの野生型形態の減少を誘発する。
・ エタノールは、より短かいアイソフォームによって置換されるbcl−xの消滅を誘発する。
・ エタノールは、より短かいアイソフォームを犠牲にしたfasレセプタの長い野生型形態の増加を誘発する。
【0215】
これらの結果は、低い濃度の毒性化合物での処置が、特異的な形で、或る種のRNAの選択的スプライシング内の調節上の欠陥を誘発しうるということを実証している。特にDATAS技術の適用による転写後のレベルでのこれらの調節上の欠陥の同定は、かくして分子の毒性を予測する1つの手段を構成する。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 1つ(図1B)、又は2つ(図1C)のハイブリダイゼーション手順を用いた本発明に従った差異のあるスクリーニング検定(図1A)及び核酸の使用(図1D)の概略的表示である。
【図1B】 1つ(図1B)、又は2つ(図1C)のハイブリダイゼーション手順を用いた本発明に従った差異のあるスクリーニング検定(図1A)及び核酸の使用(図1D)の概略的表示である。
【図1C】 1つ(図1B)、又は2つ(図1C)のハイブリダイゼーション手順を用いた本発明に従った差異のあるスクリーニング検定(図1A)及び核酸の使用(図1D)の概略的表示である。
【図1D】 1つ(図1B)、又は2つ(図1C)のハイブリダイゼーション手順を用いた本発明に従った差異のあるスクリーニング検定(図1A)及び核酸の使用(図1D)の概略的表示である。
【図2】 病的状態又は健康な状態の特異的マーカーである、1本鎖RNA配列の特徴づけを可能にするRNA/DNAハイブリッドの産生の概略的表示である。
【図3】 病的状態又は健康な状態に特異的な1本鎖RNA配列を配列測定することによる分離及び特徴づけ方法の概略的表示である。
【図4】 病的状態又は健康な状態に特異的な1本鎖RNAの全部又は一部分を配列測定することによる特徴づけのためのもう1つの手段の概略表示である。
【図5】 R−ループ構造に基づく選択的スプライシングを受けた産物の分離の概略的表示である。
【図6A】 ループ制約による質的な差異のあるスクリーニングの概略的表示(ds cDNA/cDNAホモ2本鎖分子の形成及びデータの抽出、図6A)及び得られたデータの描写である(図6B)。
【図6B】 ループ制約による質的な差異のあるスクリーニングの概略的表示(ds cDNA/cDNAホモ2本鎖分子の形成及びデータの抽出、図6A)及び得られたデータの描写である(図6B)。
【図7】 薬学的研究及び開発のさまざまな工程における質的な差異のあるスクリーニングがもたらす利益。
【図8】 grb2/grb33モデルにおける差異のあるようにスプライシングされたドメインの分離。A)合成grb2及びgrb33RNAの産生。B)差異のあるスプライシングを受けたドメインに対応するRNAフラグメントの特徴づけを導くDATASの第1工程の描写:1:grb2RNA、2:grb2RNAとgrb33cDNAの間のハイブリダイゼーション、3:grb2RNAとgrb2cDNAの間のハイブリダイゼーション、4:grb2RNAと水の間のハイブリダイゼーション、5:ストレプトアビジンビーズ上に(2)を通過させた後の上清、6:ストレプトアビジンビーズ上に(3)を通過させた後の上清、7:ストレプトアビジンビーズ上に(4)を通過させた後の上清、8:grb2RNA/grb33cDNA2本鎖分子のRNase H消化、9:grb2RNA/grb2cDNA2本鎖分子のRNase H消化、10:grb2RNAのRNase H消化、11:排除カラム上を通過させた後の(8)と同じもの、12:排除カラム上を通過させた後の(9)と同じもの、13:排除カラム上を通過させた後の(10)と同じもの。
【図9】 エタノールで処置された又は処置されていないHep G2細胞に由来するRNA/1本鎖cDNA2本鎖分子のRNase H消化に由来する未対合RNAの表示。
【図10】 DATA変形形態の1つにより生成された2本鎖cDNAの表示。1〜12:RNase H消化に由来するRNAループ個体群についてのPCR。13:完全cDNAについてのPCR。
【図11】 grb2/grb33モデル内の2本鎖cDNAが関与するDATAS変形形態の応用。A)ハイブリダイゼーションの後の複合体のアガロースゲル分析:1:2本鎖grb2cDNA/grb33RNA、2:2本鎖grb2cDNA/grb2RNA、3:2本鎖grb2cDNA/水。B)ヌクレアーゼS1及びヤエナリヌクレアーゼによる(A)の中での試料1、2及び3の消化:1〜3:グリオキサール処置前の複合体1〜3;4〜6:グリコサール処置後の複合体1〜3;7〜9:1〜3のヌクレアーゼS1消化;10〜12:1〜3のヤエナリヌクレアーゼ消化。
【図12】 0.1Mのエタノールで18時間処置された又は処置されていないHep G2細胞系内のRNase H及び1本鎖cDNAが関与するDATAS変形形態の応用。クローニングされたインサートがアガロースゲル電気泳動法の後膜に移送され、処置された(Tr)及び未処置の(NT)状態に対応するプローブとハイブリダイズされた。
【図13】 製品の毒性を評価するための実験手順。
【図14】 製品の効力を監視するための実験手順。
【図15】 処置に対する病的状態の感受性を調査するための実験手順。
【図16】 誘発された細胞からのRNA及び誘発されていない細胞のcDNAを用いてDATASに由来するクローンの差異のあるハイブリダイゼーションの分析。A)膜上に被着され溶解された細菌コロニーの使用。B)Aからのクローン選択物についてのサザンブロット。
【図17】 △SHCのヌクレオチド及びペプチド配列(配列番号9及び10)。
【図18A】 A)エタノール; B)カンプトテシン; C)PMAで処置されたHep G2細胞についての細胞毒性及びアポトーシステスト。
【図18B】 A)エタノール; B)カンプトテシン; C)PMAで処置されたHep G2細胞についての細胞毒性及びアポトーシステスト。
【図18C】 A)エタノール; B)カンプトテシン; C)PMAで処置されたHep G2細胞についての細胞毒性及びアポトーシステスト。
【図19】 正規化対照としてベータアクチンを用い、MACH−a、BCL−X、FASRドメインに対応するフラグメントの増幅を可能にするエタノール(Eth.) , カンプトセシン(Camp.)及びPMA(PMA)で処置された又はされない(NT)Hep G2細胞に由来するRNAを使用したRT−PCR反応。
【配列表】
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Claims (39)

  1. 2つの生物学的試料間の、挿入及び/又は欠失、またはスプライシングの変化に起因する遺伝的差異を表わす核酸領域を同定し及び/又はクローニングするための方法において、第1の生物学的試料に由来するRNA又は2本鎖cDNAを、第2の生物学的試料に由来するcDNAとハイブリダイズさせ、そしてハイブリダイゼーションによって形成された複合体中の未対合核酸領域、ここで該領域が、2つの試料間の、挿入及び/又は欠失、またはスプライシングの変化に起因する遺伝的差異を表わす、を同定し及び/又はクローニングする工程を含む方法。
  2. (a)第1の試料(テスト状態)に由来するRNAを第2の試料(基準状態)に由来するcDNAとハイブリダイズさせること、
    (b) 第2の試料(基準状態)に由来するRNAを第1の試料(テスト状態)に由来するcDNAとハイブリダイズさせること、及び
    (c) 工程(a)及び(b)で形成されたハイブリッド中の、挿入及び/又は欠失、またはスプライシングの変化に起因する遺伝的差異に対応する未対合核酸領域を同定し及び/又はクローニングすること、
    を含む、請求項1記載の方法。
  3. ハイブリダイゼーションがRNAと1本鎖cDNAの間で実施され、未対合RNA領域を同定し及び/又はクローニングすることを含む、請求項1又は2記載の方法。
  4. 第1の生物学的試料に由来する2本鎖cDNAを第2の生物学的試料に由来する1本鎖cDNAとハイブリダイズさせることを含む、請求項1記載の方法。
  5. 未対合核酸領域のクローニングにおいて、ランダム又はセミランダムプライマーを用いた逆転写及び/又は増幅が含まれる、請求項3又は4に記載の方法。
  6. 生物学的試料が細胞、組織、器官又は生検試料から成る、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 腫瘍細胞と非腫瘍細胞の間の差異のある選択的スプライシングを同定し及び/又はクローニングするための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. テスト化合物による処置を受けた細胞と未処置細胞の間の差異のある選択的スプライシングを同定しかつ/又はクローニングするための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  9. アポトーシスを受けている細胞と非アポトーシス細胞の間の差異のある選択的スプライシングを同定し及び/又はクローニングするための、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
  10. ハイブリダイゼーションが液相内で行われる、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. 2つの生理学的状態A及びBの間の差異のあるようにスプライシングされた核酸領域を同定し及び/又はクローニングするための方法において、
    (a) 状態Aに由来するメッセンジャーRNAと他方で状態Bに由来するcDNAとの間で、液相内でヘテロ2本鎖構造を生成すること、
    (b) 状態Bに由来するメッセンジャーRNAと他方で状態Aに由来するcDNAとの間で、液相内でヘテロ2本鎖構造を生成すること;及び
    (c) 工程(a)及び(b)で得たヘテロ2本鎖構造内部の未対合RNA領域を同定し及び/又はクローニングすること、を含む方法。
  12. 2つの生理学的状態A及びBの間に発生する差異のあるようにスプライシングされた核酸領域を同定し及び/又はクローニングするための方法において、
    (a) 状態Aに由来するメッセンジャーRNAと他方で状態Bに由来するcDNAとの間でヘテロ2本鎖構造を生成することであって、該RNA又はcDNAが支持体材料に固定されていること、
    (b) 状態Bに由来するメッセンジャーRNAと他方で状態Aに由来するcDNAとの間でヘテロ2本鎖構造を生成することであって、該RNA又はcDNAが支持体材料に固定されていること、及び
    (c) 工程(a)及び(b)で得たヘテロ2本鎖構造内部の未対合RNA領域を同定し及び/又はクローニングすること、を含む方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法を使用して同定及び/又はクローニングされた遺伝子またはmRNAに独特な選択的エキソンまたはイントロンに相補的および特異的である配列を含む独特な核酸を調製すること、および
    支持体上に該核酸を提示すること
    を含む、核酸が提示される支持体材料からなる組成物を調製するための方法。
  14. 核酸がcDNAを含む請求項13に記載の方法。
  15. 核酸がオリゴヌクレオチドを含む請求項13に記載の方法。
  16. 核酸がスプライシングされたドメインによって分離された2つのドメイン間の接合領域に特異的なオリゴヌクレオチドを含む請求項15に記載の方法。
  17. オリゴヌクレオチドが1本鎖であり5〜100merの長さである請求項16に記載の方法。
  18. 該オリゴヌクレオチドが
    (a)病態生理学的状態に特徴的なスプライシング事象およびスプライシングされたドメインの配列を同定すること、
    (b)該ドメインの1つ又は複数の領域に対応する1または複数のオリゴヌクレオチドを人工的に合成すること、
    (c)スプライシングされたドメインによって分離された2つのドメイン間の接合領域に対応する1又は複数のオリゴヌクレオチドを人工的に合成すること、
    (d)該病態生理学的状態に特徴的なその他のスプライシング事象について上記(a)〜(c)の工程を繰り返すこと
    を含む方法によって得られる、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 核酸がベクター内にクローニングされる、請求項14記載の方法。
  20. 病態生理学的状態が、アポトーシス、神経変性、毒性および増殖から選択される請求項18に記載の方法。
  21. 支持体材料がフィルタ、膜又はチップから選択される請求項13〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法によって得られる組成物の、治療又は診断目的の分子の同定を目的とした使用。
  23. 疾病において変化しているタンパク質又はタンパク質ドメインを同定するための、請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法によって得られる組成物の使用。
  24. 疾病に関与するタンパク質に特異的な抗原ドメインを同定するための、請求項23の使用。
  25. 化合物の毒性を評価することを目的とする、請求項22に記載の使用。
  26. 化合物の治療的効能を評価することを目的とする、請求項22の使用。
  27. テスト化合物又は処置に応答する被験体の能力を評価するための請求項22に記載の使用。
  28. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法を使用して同定及び/又はクローニングされた遺伝子またはmRNAの独特な選択的エキソン若しくはイントロンに相補的および特異的である配列を含む5〜100merの長さの独特な1本鎖オリゴヌクレオチドのセットからなる組成物の、所定の化合物または処置に応答する被験体の能力を評価するための使用。
  29. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法を使用して同定及び/又はクローニングされた遺伝子またはmRNAの独特な選択的エキソン若しくはイントロンに相補的および特異的である配列を含む5〜100merの長さの独特な1本鎖オリゴヌクレオチドのセットからなる組成物の、病態への被験体の素因を評価するための使用。
  30. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法を使用して同定及び/又はクローニングされた遺伝子またはmRNAの独特な選択的エキソン若しくはイントロンに相補的および特異的である配列を含む5〜100merの長さの独特な1本鎖オリゴヌクレオチドのセットからなる組成物の、化合物または処置の毒性を評価するための使用。
  31. オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用する請求項28〜30のいずれか1項に記載の使用。
  32. オリゴヌクレオチドがスプライシングされたドメインによって分離された2つのドメイン間の接合領域に特異的である請求項28〜31のいずれか1項に記載の使用。
  33. 生物学的試料へのテスト化合物の毒性を測定または評価する方法において、
    − 処置されていない健康状態の生物学的試料および基準毒性化合物による該生物学的試料の処置により生じた1つ又はさまざまな段階の毒性にある該生物学的試料に特徴的である遺伝子またはmRNAの選択的エキソンまたはイントロンに特異的である核酸を含む、請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法によって得られる組成物を、
    − 前記テスト化合物による処置を受けた生物学的試料の核酸調製物とハイブリダイズさせること、および
    − 該調製物と該組成物とのハイブリダイゼーションの程度を分析することにより該テスト化合物の毒性を評価すること
    を含む方法。
  34. 生物学的試料が、毒物による処置を受けているか又は受けていない、肝細胞、腎上皮細胞又は腎内皮細胞の培養物である、請求項33に記載の方法。
  35. 生物学的試料が、毒物又は刺激薬による処置を受けているか又は受けていない皮ふ培養物である、請求項33に記載の方法。
  36. 生物学的試料に対するテスト化合物の治療上の有効性を測定又は評価する方法において、
    − 基準治療化合物で処置されていない生物学的試料および処置された生物学的試料に特徴的である遺伝子またはmRNAの選択的エキソン若しくはイントロンに特異的である核酸を含む、請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法によって得られる組成物を、
    − 前記テスト化合物による処置を受けた生物学的試料の核酸調製物とハイブリダイズさせること、および
    − 該調製物と該組成物とのハイブリダイゼーションの程度を分析することにより該テスト化合物の潜在的治療能力を評価すること
    を含む方法。
  37. テスト化合物又は処置に応答する患者の能力を測定又は評価する方法において、
    − 該化合物/処置に応答する生物学的試料および該化合物/処置に応答しない又はわずかしか応答しない生物学的試料に特徴的である遺伝子またはmRNAの選択的エキソンまたはイントロンに特異的である核酸を含む、請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法によって得られる組成物を、患者の病態生物学的試料の核酸調製物とハイブリダイズさせること、および
    − 該調製物と該組成物とのハイブリダイゼーションの程度を分析することにより患者の能力を評価すること
    を含む方法。
  38. 抗腫瘍化合物又は処置に応答する患者の能力を測定又は評価するための、請求項37に記載の方法。
  39. 野生型p53遺伝子移入による抗腫瘍処置に応答する患者の能力を測定又は評価するための、請求項38に記載の方法。
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