JP4524510B2 - 電池の製造方法およびそれに用いる塗布装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の電池を製造する場合に好適な電池の製造方法およびそれに用いる塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯型の電子機器が次々と開発されており、その電源として電池が重要な位置を占めるようになっている。携帯型電子機器には小型でかつ軽量であることが要求されているので、それに伴い電池に対しても、機器内の収納スペースに応じるために小型であり、また機器の重量を極力増やさないように軽量であることが求められている。
【0003】
このような要求に応える電池としては、これまで二次電池の主流であった鉛蓄電池やニッケル・カドミウム電池に代わり、これらの電池よりもエネルギー密度および出力密度が大きなリチウム二次電池あるいはリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0004】
従来、これらのリチウム二次電池あるいはリチウムイオン二次電池では、イオン伝導を司る物質として非水溶媒にリチウム塩を溶解させた液状の電解質(以下、電解液という。)が用いられてきた。そのため、液漏れを防止するために外装を金属製の容器により構成し、電池内部の気密性を厳重に確保する必要があった。しかし、外装に金属製の容器を用いると、薄くて大面積のシート型電池,薄くて小面積のカード型電池あるいは柔軟でより自由度の高い形状の電池などを作製することが極めて困難であった。
【0005】
そこで、電解液に代えて、リチウム塩を含有する電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質、イオン伝導性を有する高分子化合物にリチウム塩を分散させた固体状の電解質あるいは固体状の無機伝導体にリチウム塩を保持させた電解質を用いた二次電池が提案されている。これらの電池では、液漏れの問題がないので外装の金属製容器が不要となり、ラミネートフィルムなどを外装部材としてより一層の小型化,軽量化および薄型化を図ることができ、形状の自由度が高いものを実現することができる。
【0006】
ゲル状の電解質などを用いる場合には、電極集電体上に形成された電極反応層に例えば以下に述べる方法により電解質層が形成される。すなわち、まず、帯状の電極集電体の上に間欠的に複数の電極反応層を形成した帯状の電極体を、電解質を貯えたタンク内に通す。次いで、帯状の電極体をタンクから引き上げて、その両面に付着している電解質を一対のへら(ドクターナイフ)で擦り切ることにより帯状の電極体の両面に所定の厚さの電解質層を形成する。そののち、電極反応層間で切断して複数のものに分離する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した方法では、電極集電体上に間欠的に複数の電極反応層が形成された帯状の電極体をタンク内に浸漬させて電解質層を形成するようにしているので、電極反応層が形成されていない領域においても、電極集電体上に直接電解質が付着する。しかしながら、この領域には、電極集電体と外部端子とを接続するためのリード線が取り付けられるため、付着した電解質の剥離作業が必要になり、生産効率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、生産効率を高めることができる電池の製造方法およびそれに用いる塗布装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による電池の製造方法は、電極集電体の少なくとも一面側に複数の電極反応層が間欠的に形成された電極体の各電極反応層上にリチウム塩と非水溶媒と高分子化合物とを含む電解質を塗設することにより複数の電解質層を間欠的に形成する工程と、複数の電解質層が間欠的に形成された電極体を複数の電解質層の層間において切断する工程とを含むものである。
【0010】
本発明による塗布装置は、正極および負極のうちの少なくとも一方として電極集電体の少なくとも一面側に複数の電極反応層が間欠的に形成された電極体の電極反応層の層間を切断して形成された電極と、電解質層とを備えた電池の電解質層を形成する塗布装置であって、塗布材料としてリチウム塩と非水溶媒と高分子化合物とを含む電解質を塗出するノズル部と、このノズル部と対向する位置において、被塗布体として電極体をノズル部に対して相対的に移動させる移動手段と、電極反応層がノズル部への到達を検出する検出手段と、移動手段により移動中の電極反応層上にノズル部を介して加圧することにより電解質を塗布する手段と、ノズル部内の電解質の流路を遮断するための遮断手段と、ノズル部からの電解質の吐出が間欠的に行われるよう遮断手段を間欠的に駆動する制御手段とを備え、検出手段による検出タイミングに基づいて、制御手段が塗布する手段および遮断手段の動作を制御して、各電極反応層上に電解質層を形成するものである。
【0011】
本発明による電池の製造方法では、電極体の少なくとも一面側の電極反応層に電解質が塗設されて、複数の電解質層が形成される。そののち、電解質層の層間において電極体が切断され、電極に電解質層が設けられた積層体が連続的に形成される。
【0012】
本発明による塗布装置では、検出手段による検出タイミングに基づいて、制御手段が塗布する手段および遮断手段の動作を制御して加圧された塗布材料が、移動中の電極反応層に対してノズル部を介して間欠的に塗出される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明の一実施の形態に係る電池の製造方法によって製造される二次電池の構成について説明する。
【0015】
図3は本発明の一実施の形態に係る電池の製造方法によって製造された二次電池の外観構造を表すものであり、図4は図3に示した二次電池の構造を分解して表すものである。この二次電池は、正極リード線11および負極リード線12が取り付けられた巻回電極体20を外装部材30により封入したものである。
【0016】
図5は、図4に示した巻回電極体20のV−V線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体20は、正極21と負極22とが例えばゲル状の電解質層23を間にして積層されたものであり、これが多数回巻回されている。正極21と負極22との間には電解質層23を介してセパレータ24が挿入されている。なお、図5では、図面の簡略化のため、1回巻回された巻回電極体20を示している。
【0017】
正極21は、例えば、正極集電体層25と、この正極集電体層25の両面に設けられた正極反応層26とを有している。正極集電体層25の長手方向の一方の端部においてはその一面が露出している。また、負極22は、例えば、負極集電体層27と、この負極集電体層27の両面に設けられた負極反応層28とを有しており、負極集電体層27の長手方向の一方の端部においてはその一面が露出している。
【0018】
正極リード線11および負極リード線12は、外装部材30の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード線11の一部は、外装部材30の内部において正極集電体層25の露出部分に接続されている。また、負極リード線12の一部は、外装部材30の内部において負極集電体層27の露出部分に接続されている。なお、図3および図4に示したように、外装部材30は例えば2枚の矩形状のフィルム30a,30bにより構成されており、正極リード線11および負極リード線12とフィルム30a,30bとは、例えば密着性向上用のフィルム31を介して、外気の侵入が防止されるように十分に密着している。
【0019】
次に、この二次電池の製造方法について説明する。
【0020】
まず、例えば、帯状正極集電体25a(図1参照)上に一定の間隔をおいて複数の正極反応層26が連続して形成された電極体としての帯状正極体21a(図1参照)を作製する。なお、この帯状正極体21aは、個々に分離すると上述した正極21(図5参照)となるものである。帯状正極体21aの作製は、例えば、正極活物質と、カーボンブラックあるいはグラファイトなどの導電剤と、ポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを含有した正極合剤をジメチルホルムアルデヒドあるいはN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散して正極合剤スラリーとしたのち、この正極合剤スラリーをアルミニウム(Al)箔,ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス箔などの金属箔よりなる帯状正極集電体25aに間欠的に塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより行う。
【0021】
その際、正極活物質としては、例えば、金属酸化物,金属硫化物あるいは特定の高分子材料のうちのいずれか1種または2種以上を用いることが好ましい。正極活物質は、電池の使用目的に応じて適宜に選択可能であるが、エネルギー密度を高くするには、Lix MO2 (但し、xの値は電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.12である。)を主体とするリチウム(Li)複合酸化物とすることが好ましい。この組成式において、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、コバルト(Co),ニッケルおよびマンガン(Mn)のうちの少なくとも1種がより好ましい。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiNiy Co1-y O2 (但し、0≦y≦1)あるいはLiMn2 O4 が挙げられる。
【0022】
図1は、帯状正極体21aに電解質層23を形成する際などに用いる塗布装置の構成を表すものである。この塗布装置は、塗布材料(図1においては、電解質E)を吐出するノズル部40と、このノズル部40の直下において被塗布体(図1においては、帯状正極体21a)を移動させるための移動手段としての巻出ロール51および巻取ロール52とを備えている。
【0023】
ノズル部40は、塗布材料を充填しておく塗布材料溜41を有している。塗布材料溜41には供給管53の一端が連通しており、供給管53の他端は塗布材料が収容されたタンク54に連通している。供給管53の途中には、加圧手段としての供給ポンプ55が設けられている。塗布材料溜41の塗布材料が通過する流路41aの途中には、この流路41aを開閉可能な流路遮断手段としてのシャッタ42が設けられている。シャッタ42は図示しない駆動機構によって流路41aを閉鎖する位置と流路41aを開放する位置のいずれかの位置に変移可能となっている。なお、ここでは、供給ポンプ55をノズル部40の外部に備えるようにしたが、塗布材料溜41に加圧機構として例えばギヤポンプを内蔵するような構成としてもよい。
【0024】
この塗布装置は、また、ノズル部40近傍のノズル部40よりも巻出ロール51側に検出手段としてのセンサ56(例えば、反射型光電スイッチ)を備えている。このセンサ56は、搬送中の被塗布体の所定の位置を検出するものであり、検出信号を制御部57に送るようになっている。制御部57では、この検出信号を受けて供給ポンプ55およびシャッタ42を後述のように制御するようになっている。
【0025】
この塗布装置では、被塗布体が巻出ロール51から水平方向に送り出され、図1に矢印Aで示した方向に一定の速度で搬送され、搬送中に被塗布体の上にシャッタ42の開閉に応じて塗布材料が間欠的に塗設されて、巻取ロール52によって巻き取られるようになっている。
【0026】
本実施の形態では、例えばこのような塗布装置を用いて帯状正極体21aの上に電解質層23を形成する。
【0027】
具体的には、まず、タンク54に電解質Eを収容する。電解質Eには、例えば、リチウム塩と、このリチウム塩を溶解する非水溶媒と、高分子化合物とを含むものを用いる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6 ,LiAsF6 ,LiBF4 ,LiClO4 ,LiCF3 SO3 ,Li(CF3 SO2 )2 NあるいはLiC4 F9 SO3 が適当であり、これらのうちのいずれか1種または2種類以上を混合して使用してもよい。なお、電解質層23における溶媒に対するリチウム塩の濃度は、0.10〜2.0モル/リットルの範囲内であることが好ましい。良好なイオン伝導性が得られるからである。
【0028】
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、2,4−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソールあるいは4−ブロモベラトロールが適当であり、これらのうちのいずれか1種または2種類以上を混合して用いてもよい。なお、外装部材30として後述するラミネートフィルムを用いる場合には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、2,4−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソールあるいは4−ブロモベラトロールなどの沸点が150℃以上のものを用いることが好ましい。簡単に気化すると、外装部材30(ラミネートフィルム)が膨らみ、外形不良となるからである。
【0029】
高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン,ポリアクリロニトリル,アクリロニトリルブタジエンゴム,アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂,アクリロニトリル塩化ポリエチレンプロピレンジエンスチレン樹脂,アクリロニトリル塩化ビニル樹脂,アクリロニトリルメタアクリレート樹脂,アクリロニトリルアクリレート樹脂,ポリエチレンオキサイドあるいはポリエーテル変性シロキサンが適当であり、これらのうちの2種以上を混合して使用してもよい。また、ポリフッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンあるいはテトラフルオロエチレンとの共重合体を用いることもできる。更に、ポリアクリロニトリルと、酢酸ビニル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ブチル,アクリル酸メチル,アクリル酸ブチル,イタコン酸,水素化メチルアクリレート,水素化エチルアクリレート,アクリルアミド,塩化ビニル,フッ化ビニリデンあるいは塩化ビニリデンなどのビニル系モノマとの共重合体を用いることもできる。また、ポリエチレンオキサイドと、ポリプロピレンオキサイド,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ブチル,アクリル酸メチルあるいはアクリル酸ブチルとの共重合体を用いることもできる。加えて、フッ化ビニリデンあるいはエーテル変性シロキサンの共重合体を用いることもできる。
【0030】
タンク54に電解質Eを収容したのち、図2(A),(B)にも示したように、帯状正極体21aの正極反応層26の上に電解質層23を形成する。なお、図2(A)は、巻出ロール51および巻取ロール52により矢印Aで示した方向に移送される帯状正極体21aの反応層露出域Bがノズル部40の吐出口の直下に位置し、電解質層23を形成している状態を表している。一方、図2(B)は、帯状正極体21aの集電体露出域Cがノズル部40の吐出口41bの直下に位置し、電解質Eの供給が停止されている状態を表したものである。
【0031】
ここでは、センサ56が帯状正極体21aの集電体露出域Cから反応層露出域Bに変わる境界を検出すると、そのタイミングに基づいて、制御部57の制御の下にそれまで塗布材料溜41の流路41aを閉鎖していたシャッタ42が退避し、流路41aが開放されると共に、それまで停止していた供給ポンプ55が例えば0.01MPa〜0.3MPa程度の圧力で駆動される。これにより図2(A)に示したように、電解質Eがノズル部40の吐出口から吐出され、正極反応層26上に塗布されて電解質層23が形成される。
【0032】
そののち、センサ56が反応層露出域Bから集電体露出域Cに変わる境界を検出すると、そのタイミングに基づいて流路41aを開放していたシャッタ42が流路41a内に突出して流路41aが閉鎖されると共に、供給ポンプ55の駆動が停止される。これにより電解質Eのノズル部40からの吐出が停止される。よって、図2(B)に示したように、集電体露出域Cでは、電解質層23が形成されることはなく、帯状正極集電体25aが露出している状態となる。次に、センサ56が再び帯状正極体21aの集電体露出域Cから反応層露出域Bに変わる境界を検出すると、上記と同様に正極反応層26上に電解質層23が形成される。以下、同様の動作が繰り返される。なお、塗布材料溜41から塗出される際の電解質Eの粘度は、例えば0.001〜0.05Pa・s程度とする。
【0033】
このように本実施の形態では、センサ56により集電体露出域Cと反応層露出域Bとの境界を検出し、その検出信号に基づいて制御部57が供給ポンプ55およびシャッタ42を制御するようになっているので、帯状正極集電体25a上に一定間隔をおいて形成された複数の正極反応層26の上に、電解質層23が選択的に形成される。また、供給ポンプ55が駆動されることにより塗布材料溜41から電解質Eが押し出されるので、電解質層23の厚さが均一になる。なお、電解質層23の厚さは、ノズル部40を昇降移動させてノズル部40の塗出口41bと正極反応層26との間隔を変えることにより調節することが可能である。ちなみに、ここでは正極反応層26の全面(すなわち、上面および側面)を覆うように電解質層23を形成しているが、正極反応層26の側面を除く上面のみに形成するようにしてもよい。
【0034】
なお、塗布装置の例えば巻取ロール52の近傍には、塗布した電解質を乾燥させるための図示しない乾燥機が配設されている。形成された電解質層23がこの乾燥機に対応する位置まで搬送されると電解質が乾燥し、その後に帯状電極体21aと共に例えばプロピレンよりなる図示しないプラスチックフィルムにより覆われ、巻取ロール52に巻き取られる。このようにプラスチックフィルムにより覆うのは、電解質層23中の非水溶媒が蒸発したり、電解質層23が湿気を吸収したりすることを防止するためである。
【0035】
一方、上述した方法と同様にして、電極体としての帯状負極体(すなわち、帯状負極集電体上に負極反応層が間欠的に設けられたもの)に上に電解質層を間欠的に形成する。なお、帯状負極体の作製は、例えば、リチウム金属、リチウム合金(例えば、リチウムとアルミニウムとの合金)またはリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料とポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを均一に混合し、これをジメチルホルムアルデヒドあるいはN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散して負極合剤スラリーとしたのち、この負極合剤スラリーを銅(Cu)箔などの金属箔よりなる帯状負極集電体に間欠的に塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより行う。
【0036】
リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としては、例えば、炭素質材料,ケイ素またはケイ素化合物,金属酸化物あるいは高分子材料のいずれか1種または2種以上を含むものを用いることができる。なお、炭素質材料としては、例えば、熱分解炭素類、ピッチコークス,ニードルコークスもしくは石油コークスなどのコークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(例えば、セルロース,フェノール樹脂またはフラン樹脂を適当な温度で焼成したもの)、炭素繊維あるいは活性炭などが挙げられる。また、ケイ素化合物としてはMg2 Siなどが挙げられ、酸化物としてはSnO2 などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン,ポリアニリン,ポリピロールあるいはジスルフィド系のポリマなどが挙げられる。
【0037】
帯状正極体21aおよび帯状負極体に複数の電解質層23を間欠的に形成したのち、巻取ロール52から帯状正極体21aおよび帯状負極体をそれぞれ引き出すと共に、帯状正極体21aおよび帯状負極体を覆っているプラスチックフィルムを剥離する。
【0038】
次いで、図6(A)に示したように、正極反応層26の層間の帯状正極集電体25aが露出している領域に、例えば、アルミニウムよりなる正極リード線を溶接あるいは接着剤などによって取り付ける。また、図6(B)に示したように、負極反応層28の層間の帯状負極集電体27aが露出している領域に、例えば、銅よりなる負極リード線を溶接あるいは接着剤などによって取り付ける。
【0039】
続いて、例えばシャーカット(share cut )することにより、電解質層23の層間(すなわち、正極反応層26の層間)において帯状正極集電体25aを切断し、個々に分離する。これにより、正極リード線11を備え、正極集電体層25上に正極反応層26および電解質層23が順次積層された積層体が複数形成される。また、同様にして、電解質層23の層間(すなわち、負極反応層28の層間)において帯状負極集電体27aを切断し、個々に分離することにより、負極リード線12を備え、負極集電体層27上に負極反応層28および電解質層23が順次積層された積層体を形成する。そののち、図4および図5に示したように、各積層体を電解質層23同士が向き合うようにセパレータ24を介して張り合わせ、巻回して巻回電極体20を形成する。なお、セパレータ24には、例えばポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料を主成分とする多孔質膜を用いる。ちなみに、このような多孔質膜を2種以上積層したものを用いるようにしてもよい。
【0040】
巻回電極体20を形成したのち、例えば、外装部材30であるフィルム30a,30bを用意し、巻回電極体20をフィルム30aとフィルム30bとの間に挟み込む。なお、各フィルム30a,30bの正極リード線11および負極リード線12が導出される端部においては、例えば、正極リード線11および負極リード線12を挟むようにフィルム31を配置し、フィルム31を介して外装部材30で正極リード線11および負極リード線12をそれぞれ挟むようにする。
【0041】
フィルム30a,30bとしては、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に張り合わせたラミネートフィルムを用い、ポリエチレンフィルムと巻回電極体20とが対向するように配設する。なお、一方のフィルム30aは、例えば収納する巻回電極体20の形状に合わせて、外縁部を残して膨らみを持たせた形状とする。
【0042】
巻回電極体20をフィルム30a,30bで挟んだのち、例えば減圧雰囲気中において外装部材30を巻回電極体20に圧着させると共に、各フィルム30a,30bの外縁部同士を熱融着などにより密着させる。これにより、図3に示した電池が完成する。
【0043】
このようにして製造される二次電池では、充電を行うと、例えば、正極反応層26からリチウムがイオンとなって離脱し、電解質層23およびセパレータ24を介して負極反応層28に吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極反応層28からリチウムがイオンとなって離脱し、電解質層23およびセパレータ24を介して正極反応層26に吸蔵される。
【0044】
次に、図7(A),(B)を参照して、電解質層23を間欠的に形成することによる作用について説明する。
【0045】
図7(A)は、上述した方法により帯状正極体21aに電解質層23を間欠的に形成した後の状態を表したものである。これに対して、図7(B)は、従来の方法により、帯状正極集電体125aの両面に複数の正極反応層126が間欠的に形成された帯状正極体121aの全面に電解質層123を形成した後の状態を表したものである。すなわち、電解質層123は、電解質を貯えたタンク内に帯状正極集電体125aを通して、帯状正極集電体125aの両面に付着した電解質を一対のヘラ(ドクターナイフ)で擦り切って形成したものである。
【0046】
図7(B)に示した従来の方法では、帯状正極体121a(具体的には、帯状正極集電体125a)に対して正極リード線11(図6(A)参照)を電気的に接続させるためには、正極リード線取付域11aに形成された電解質を剥離し、その部分に正極リード線11を取り付ける必要がある。
【0047】
一方、本実施の形態の帯状正極体21aでは、電解質層23が正極反応層26側のみに形成されており、正極リード線取付域11aに電解質が付着していないので、上述したような剥離作業が不要であり、直ちに正極リード線取付域11aに正極リード線11を取り付けることができる。
【0048】
このように本実施の形態に係る電池の製造方法によれば、帯状電極集電体(帯状正極集電体25aおよび帯状負極集電体27a)の上に複数の電極反応層(正極反応層26および負極反応層28)を間欠的に形成し、その上に電解質層23を形成したのち、帯状電極集電体を切断するようにしたので、リード線取付域に電解質が付着するおそれがない。よって、従来行っていた電解質の剥離作業が不要となり、生産効率を高めることができる。また、不要な部分に電解質が塗布されることがないので、製造コストを低減することができる。
【0049】
更に、電解質層23を形成する際に本実施の形態に係る塗布装置を用いるようにしたので、センサ56により反応層露出域Bと集電体露出域Cとの境界を検出し、その検出信号に基づいて制御部57が供給ポンプ55およびシャッタ42を制御することができる。よって、電解質の間欠塗布を容易に行うことができ、この点においても電池の生産効率を高めることができる。
【0050】
加えて、供給ポンプ55を駆動させて塗布材料溜41から電解質Eを押し出すようにしたので、幅方向においても長手方向においても厚さが均一な電解質層23を形成することができる。
【0051】
なお、電解質層23を形成する際、図1に示した塗布装置に代えて、例えば図8に示した塗布装置を用いることもできる。以下の説明では、図1に示した塗布装置と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図8に示した塗布装置のノズル部60では、塗布材料溜41の流路41aの途中に断面が円形状の軸受部が設けられ、この軸受部に開閉軸61が回転可能に装着されている。開閉軸61はその一部が切り欠かれている(切欠き部61a)。
開閉軸61は図示しない駆動機構により塗布材料の塗布,未塗布のタイミング (すなわちセンサ56による検出タイミング)に合わせて駆動され、塗布時には切欠き部61aが流路41aの壁面と例えば平行に位置し、未塗布時には切欠き部61aが流路41aを横断するようになっている。これにより、塗布時には流路41aが開放されて切欠き部61aを通過した電解質が塗出口41bから塗出される。一方、未塗布時には流路41aが閉鎖される。
【0053】
なお、この塗布装置は、ノズル部60の下方に図8に矢印Dで示した方向に回転可能な支持ロール62を備えている。従って、被塗布体(例えば、帯状正極体21a)はこの支持ロール62により案内されつつ巻出ロール51(図1参照)から巻取ロール52(図1参照)へと搬送されるようになっている。また、この塗布装置では、塗布材料溜41の周囲近傍に図示しないオイルバスが設けられている。これにより、オイルバスの内部において加熱したオイルを循環させ、塗布材料溜41を加熱して例えばゲル状の電解質を温めることにより、その粘度を低下させるようになっている。その結果、電解質は流路41aを円滑に通過する。
【0054】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、塗布装置を用いて電解質層23を間欠的に形成する例について説明したが、帯状電極集電体上に電極反応層を形成する際にも、上述した塗布装置を用いることができる。その場合には、タンク54に上述した正極合剤スラリーあるいは負極合剤スラリーを収容して、被塗布体としての電極集電体上に正極反応層26あるいは負極反応層28を形成すればよい。更に、電極反応層形成用の塗布装置と電解質層形成用の塗布装置とを並設することにより、電極反応層および電解質層を連続して間欠的に形成するようにしてもよい。また、本発明の塗布装置は、外装部材30の端部と巻回電極体20との間の空隙に樹脂を充填する場合などにおいても用いることができる。
【0055】
更に、上記実施の形態では、図1または図8に示した塗布装置を用いて電解質層23を間欠的に形成する場合について説明したが、必ずしもこのような塗布装置を用いる必要はなく、他の手段により電解質層23を間欠的に形成するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、ゲル状の電解質層23を形成するようにしたが、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた固体状の電解質あるいは固体状の無機電解質などよりなる電解質層としてもよい。このような固体状の電解質層は、電極反応層上に流動性のある電解質を塗布したのち、非水溶媒を完全に蒸発させることにより得ることができる。
【0057】
更に、上記実施の形態では、電極反応層を帯状電極集電体の両面に形成する場合について説明したが、電極反応層を帯状電極集電体の片面のみに形成する場合についても適用できる。また、電解質層を帯状電極体の両面に形成するようにしたが、各々片面のみに形成するようにしてもよい。
【0058】
更に、上記実施の形態では、リード線(正極リード線11および負極リード線12)を帯状電極集電体に取り付けた後に帯状電極集電体を切断するようにしたが、帯状電極集電体を切断した後にリード線を取り付けるようにしてもよい。また、上記実施の形態では、電解質層23を形成した後にリード線を取り付けるようにしたが、リード線を取り付けた後に電解質層23を形成するようにしてもよい。
【0059】
更に、上記実施の形態では、巻回電極体20がラミネートフィルムの内部に封入された構造の電池を例に挙げて説明したが、本発明は、いわゆるコイン型,ボタン型あるいは円筒型などの他の形状の電池を製造する際にも同様に適用することができる。
【0060】
また、上記実施の形態では、電池反応種がリチウムである電池について説明したが、本発明は、電池反応種がナトリウム(Na)あるいはカルシウム(Ca)などの他の種である電池を製造する際にも同様に適用することができる。その場合、電解質塩としてリチウム塩に代えてナトリウム塩あるいはカルシウム塩などを用いると共に、正極活物質には適宜の金属酸化物あるいは金属硫化物などを用いるようにする。
【0061】
加えて、上記実施の形態では、二次電池を製造する場合について説明したが、本発明は、一次電池を製造する際にも適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の電池の製造方法によれば、電極体の電極反応層上に電解質を間欠的に塗布することにより複数の電解質層を形成し、電解質層の層間において電極体を切断するようにしたので、電解質層が形成されていない領域にリード線を取り付けることにより生産効率を高めることができるという効果を奏する。
【0063】
また、請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の塗布装置によれば、電解質を塗出するノズル部と、このノズル部と対向する位置において、電極体をノズル部に対して相対的に移動させる移動手段と、電極反応層がノズル部への到達を検出する検出手段と、移動手段により移動中の電極反応層上にノズル部を介して加圧することにより電解質を塗布する手段と、ノズル部内の電解質の流路を遮断するための遮断手段と、ノズル部からの電解質の吐出が間欠的に行われるよう遮断手段を間欠的に駆動する制御手段とを備え、検出手段による検出タイミングに基づいて、制御手段が塗布する手段および遮断手段の動作を制御して、各電極反応層上に電解質層を形成するようにした。これにより、本発明の電池の製造方法を容易に実現することができ、電池の製造時間を著しく短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る塗布装置の概略を表す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る電池の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る電池の製造方法を用いて作製された電池の構成を表す斜視図である。
【図4】図3に示した電池を分解して表す分解斜視図である。
【図5】図4に示した巻回電極体の・−・線に沿った断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る電池の製造方法を説明するための平面図である。
【図7】(A)は本発明の方法によって作製された帯状正極を表す断面図であり、(B)は従来の方法によって作製された帯状正極の断面図である。
【図8】図1に示した塗布装置の変形例に係る塗布装置の概略を表す構成図である。
【符号の説明】
11…正極リード線、12…負極リード線、20…巻回電極体、21…正極、21a…帯状正極体、22…負極、23…電解質層、24…セパレータ、25…正極集電体層、25a…帯状正極集電体、26…正極反応層、27…負極集電体層、28…負極反応層、30…外装部材、30a,30b,31…フィルム、40,60…ノズル部、41…塗布材料溜、41a…流路、41b…塗出口、42…シャッタ、51…巻出ロール、52…巻取ロール、53…供給管、54…タンク、55…ポンプ、56…センサ、57…制御部、61…開閉軸、61a…切欠き部、62…支持ロール、E…電解質
Claims (13)
- 電極集電体の少なくとも一面側に複数の電極反応層が間欠的に形成された電極体の各電極反応層上にリチウム塩と非水溶媒と高分子化合物とを含む電解質を塗設することにより複数の電解質層を間欠的に形成する工程と、
前記複数の電解質層が間欠的に形成された電極体を前記複数の電解質層の層間において切断する工程と
を含む電池の製造方法。 - 前記電解質を加熱することにより前記電解質の粘度を低下させて前記各電極反応層上に塗設する、請求項1記載の電池の製造方法。
- 前記電解質として0.001Pa・s以上0.05Pa・s以下の粘度のものを前記各電極反応層上に塗設する、請求項1記載の電池の製造方法。
- 前記電解質層を形成したのち、前記電解質層を乾燥させる、請求項1記載の電池の製造方法。
- 前記電解質層を乾燥させたのち、前記電解質層をプラスチックフィルムにより覆う、請求項4記載の電池の製造方法。
- 前記リチウム塩として、LiPF6 ,LiAsF6 ,LiBF4 ,LiClO4 ,LiCF3 SO3 ,Li(CF3 SO2 )2 NおよびLiC4 F9 SO3 のうちの少なくとも1種を用いる、請求項1記載の電池の製造方法。
- 前記高分子化合物として、ポリフッ化ビニリデン,ポリアクリロニトリル,アクリロニトリルブタジエンゴム,アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂,アクリロニトリル塩化ポリエチレンプロピレンジエンスチレン樹脂,アクリロニトリル塩化ビニル樹脂,アクリロニトリルメタアクリレート樹脂,アクリロニトリルアクリレート樹脂,ポリエチレンオキサイド,ポリエーテル変性シロキサン,ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体,ポリフッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体,ポリアクリロニトリルと酢酸ビニルとの共重合体,ポリアクリロニトリルとメタクリル酸メチルとの共重合体,ポリアクリロニトリルとメタクリル酸ブチルとの共重合体,ポリアクリロニトリルとアクリル酸メチルとの共重合体,ポリアクリロニトリルとアクリル酸ブチルとの共重合体,ポリアクリロニトリルとイタコン酸との共重合体,ポリアクリロニトリルと水素化メチルアクリレートとの共重合体,ポリアクリロニトリルと水素化エチルアクリレートとの共重合体,ポリアクリロニトリルとアクリルアミドとの共重合体,ポリアクリロニトリルと塩化ビニルとの共重合体,ポリアクリロニトリルとフッ化ビニリデンとの共重合体,ポリアクリロニトリルと塩化ビニリデンとの共重合体,ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドとの共重合体,ポリエチレンオキサイドとメタクリル酸メチルとの共重合体,ポリエチレンオキサイドとメタクリル酸ブチルとの共重合体,ポリエチレンオキサイドとアクリル酸メチルとの共重合体,およびポリエチレンオキサイドとアクリル酸ブチルとの共重合体からなる群のうちの少なくとも1種を用いる、請求項1記載の電池の製造方法。
- 前記非水溶媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、2,4−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソールおよび4−ブロモベラトロールからなる群のうちの少なくとも1種を用いる、請求項1記載の電池の製造方法。
- 正極の電極反応層において、正極活物質として、Lix MO2 (xは0.05≦x≦1.12の範囲内であり、Mは遷移金属のうちの少なくとも1種である。)を含むリチウム複合酸化物が含有され、
負極の電極反応層において、リチウムを吸蔵および離脱することが可能な材料として、炭素質材料、ケイ素化合物、金属酸化物および高分子材料からなる群のうちの少なくとも1種が含まれている、請求項1記載の電池の製造方法。 - 正極および負極のうちの少なくとも一方として電極集電体の少なくとも一面側に複数の電極反応層が間欠的に形成された電極体の前記電極反応層の層間を切断して形成された電極と、電解質層とを備えた電池の前記電解質層を形成する塗布装置であって、
塗布材料としてリチウム塩と非水溶媒と高分子化合物とを含む電解質を塗出するノズル部と、
前記ノズル部と対向する位置において、被塗布体として前記電極体を前記ノズル部に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記電極反応層が前記ノズル部への到達を検出する検出手段と、
前記移動手段により移動中の前記電極反応層上に前記ノズル部を介して加圧することにより前記電解質を塗布する手段と、
前記ノズル部内の前記電解質の流路を遮断するための遮断手段と、
前記ノズル部からの前記電解質の吐出が間欠的に行われるよう前記遮断手段を間欠的に駆動する制御手段とを備え、
前記検出手段による検出タイミングに基づいて、前記制御手段が前記塗布する手段および前記遮断手段の動作を制御して、各電極反応層上に前記電解質層を形成する
塗布装置。 - 前記塗布する手段において、前記電解質は、0.01MPa以上0.3MPa以下で加圧される、請求項10記載の塗布装置。
- 前記移動手段は、前記ノズル部に対して前記電極体の反対側に、前記電極体を支持する回転可能な支持ロールを有する、請求項10記載の塗布装置。
- 前記遮断手段は、前記ノズル部の流路の途中に設けられた断面が円形状の軸受部と、前記軸受部に回転可能に装着されると共に一部が切り欠かれている開閉軸とを有する、請求項10記載の塗布装置。
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